JP3956050B2 - 推進工法における薬剤の注入装置及び薬剤の注入方法 - Google Patents

推進工法における薬剤の注入装置及び薬剤の注入方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、推進工法において、掘進機あるいは推進管の外周部へ潤滑剤等の薬剤を注入する薬剤の注入装置及び薬剤の注入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下埋設用の推進管(ヒューム管や先導管等)を推進させる推進工法においては、推進時に推進抵抗を低減させるための潤滑剤や、周囲の土壌を改良するための土壌改良剤等の薬剤を推進管の外周部に注入しながら推進作業を行う場合がある。特に、長距離を推進する場合には、推進管の全長にわたって潤滑剤を注入し、推進抵抗を低減させる必要がある。
【0003】
従来、上記潤滑剤等を注入するために、推進管内に薬剤供給管を設けるとともに、推進管の管壁に注入口を設け、逆止弁を介して推進管の外周部へ薬剤を注入できるように構成している。上記のような薬剤の注入装置を設けた場合、推進作業の終了後に、上記薬剤注入管を含む上記薬剤注入装置を推進管から撤去しなければならない。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−8769
【0005】
特許文献1に記載された発明は、推進管の管壁にバルブボディが合成樹脂で形成されたリリーフ弁を設け、これらリリーフ弁を介して潤滑剤を推進管の外周部へ注入する潤滑剤注入装置に関するものである。上記潤滑剤注入装置においては、推進作業終了後に、推進管の内面から突出している上記リリーフ弁を自走車に設けたカッタで切断することにより、潤滑剤注入装置を撤去できるように構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献に記載された潤滑剤注入装置では、切断可能なバルブボディを備えるリリーフ弁を採用しなければならない。このため、専用のリリーフ弁を製作する必要があったり、採用できるリリーフ弁の種類が制限されるという問題がある。
【0007】
また、小口径の推進管においては、上記バルブボディを切断するために特殊な切断装置が必要である。上記特許文献1では、カッタ設けた自走車を用いて上記バルブボディを切断している。このため、装置が複雑になるとともに、工事コストが増加する。
【0008】
また、上記公報に記載されたリリーフ弁は、推進作業終了後に切断撤去するため、推進管の内壁から突出して設けられる。このため、小口径の推進管では、管壁から突出した上記バルブボディが、他の機器を設置する場合の邪魔になったり、推進作業に邪魔になることが多い。
【0009】
さらに、従来の潤滑剤注入装置は、一つの逆止弁を介して潤滑剤を注入していた。ところが、注入される潤滑剤や土壌改良剤等には、固形成分が含まれることが多い。このため、逆止弁の弁座に詰まって逆止効果が低下する場合がある。このような場合、施工後に、推進管の外周部に注入した薬剤のみならず、地下水等が推進管内に浸入するといった問題が生じやすい。
【0010】
本願発明は、上記問題を解決するために案出されたものであって、特殊な切断装置等を用いることなく注入装置を撤去することができるとともに、作業の邪魔にならず、また、注入装置撤去後にも確実な逆止効果を期待できる、推進工法における薬剤の注入装置及び方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0012】
本願発明は、シールド掘進機とその後方に接続される推進管とを用いて行われる推進工法において、上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の外周部へ薬剤を注入する推進工法における薬剤の注入装置であって、上記外周部へ上記薬剤を注入するとともに、上記薬剤の逆流を防止する逆止弁と、上記推進管内に設けられる薬剤供給管から分岐して上記逆止弁へ薬剤を供給するフレキシブルチューブと、推進作業終了後に、上記フレキシブルチューブを切断するチューブ切断機構と、上記逆止弁を収容保持するとともに、上記チューブ切断機構を設けたケーシングとを備えて構成される。
【0013】
本願発明に係る薬剤注入装置によって注入される薬剤は特に限定されることはない。たとえば、推進管の摩擦抵抗を減ずる潤滑剤、推進管の周囲の土壌を改良する土壌改良剤、推進管の周囲を硬化させる硬化剤等を採用することができる。さらに、地中に管路を敷設するためではなく、地中に薬剤を注入する目的で推進作業を行うこともできる。たとえば、汚染された土壌を中和したり無害化するための薬剤を注入する目的で推進作業を行う場合にも適用できる。
【0014】
また、推進管を推進させながら上記薬剤を注入できるのみならず、管路を敷設した後に上記薬剤を注入することもできる。
【0015】
本願発明に係る薬剤注入装置は、柔軟なフレキシブルチューブを逆止弁に接続して薬剤を注入するとともに、推進作業終了後に、このフレキシブルチューブを切断して薬剤供給管路とともに撤去できるように構成したものである。
【0016】
上記逆止弁の形態は特に限定されることはない。たとえば、一般に市販されているリフト式のチェックバルブを採用することができる。また、他の形態の逆止弁を採用することもできる。
【0017】
上記フレキシブルチューブの種類も特に限定されることはなく、刃物で容易に切断できるとともに、切断後推進管の内壁等を傷めることなく撤去できれるものであればよい。たとえば、ゴム製チューブ、樹脂製のチューブ等を採用できる。また、少なくとも切断箇所にのみフレキシブルチューブを採用すればよい。たとえば、金属製の薬剤供給管を推進管の内部に配設するとともに、この薬剤供給管と上記逆止弁の間をフレキシブルチューブで接続することができる。
【0018】
上記チューブ切断機構の形態は特に限定されることはない。たとえば、請求項2に記載した発明のように、上記チューブ切断機構を、上記ケーシングの内側壁に沿って摺動可能に保持されて、上記フレキシブルチューブを上記内側壁に沿って切断する切断刃と、上記切断刃を摺動させる作動手段とを備えて構成することができる。
【0019】
上記切断刃の形態も特に限定されることはなく、直線状のものであっても曲線状のものであってもよい。また、切断刃の摺動態様も特に限定されることはない。直線に沿って摺動させることもできるし、円弧を描くように摺動させることもできる。
【0020】
また、上記切断刃は、上記ケーシングの内側壁に沿って摺動させるのが好ましい。これにより、フレキシブルチューブを上記ケーシングの内面と面一の状態で切断することが可能となり、撤去後にフレキシブルチューブの切断部が推進管内に突出して邪魔になることがない。
【0021】
上記切断刃は、チューブ切断後に、上記作動手段とともに撤去するように構成することもできるし、バルブ近傍に残留させるように構成することもできる。
【0022】
上記作動手段として、請求項3に記載した発明のように、上記切断刃に接続された牽引又は押圧部材を採用できる。たとえば、上記作動手段として、牽引ワイヤ等を用いて切断刃を牽引して摺動させることができる。上記作動手段は、必ずしも推進基点あるいは推進到達点から牽引あるいは押圧操作する必要はなく、排泥管等の撤去動作を利用して上記作動手段を作動させるように構成できる。たとえば、上記牽引ワイヤを排泥管の側面等に連結しておいて、上記排泥管の撤去とともに、上記牽引ワイヤが上記チューブ切断機構を作動させるように構成することができる。
【0023】
また、上記作動手段の作動形態も牽引操作のみに限定されることはなく、切断刃を押圧あるいは回動させるように構成して、上記フレキシブルチューブを切断することができる。
【0024】
本願発明では、上記逆止弁を収容保持するとともに、上記チューブ切断機構を設けたケーシングを備えて構成される。上記ケーシングを設けることにより、上記逆止弁及び上記チューブ切断機構を容易に設けることができる。
【0025】
本願の請求項4に記載した発明は、上記ケーシングを、上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の管壁に埋め込み状に設けたものである。
【0026】
上記ケーシングをシールド掘進機あるいは推進管の管壁に埋め込み状に設けることにより、上記逆止弁を推進管の管壁内に保持することが可能となる。また、推進作業中はもちろん、推進終了後に推進管の内壁から逆止弁等が突出するのを防止できる。したがって、推進作業終了後に、上記逆止弁を切断したり、撤去する必要がなくなる。
【0027】
上記ケーシングの内側面は、上記推進管の内面と面一に形成するのが望ましい。上記ケーシングの内側面を推進管の内面と面一に形成することにより、上記ケーシングの内側壁に沿って上記フレキシブルチューブを切断することが可能となり、推進管から構成される管路に凹凸がなくなる。
【0028】
本願の請求項5に記載した発明は、上記ケーシング内にフレキシブルチューブを導入するチューブ導入口を、上記フレキシブルチューブ切断後に封止する封止機構を備えて構成したものである。
【0029】
上記封止機構を設けることにより、薬剤注入装置を撤去した後に、逆止弁の逆止め効果が低下した場合にも、薬剤等が推進管内に逆流するのを防止できる。また、推進管の内面を滑らかに構成することができるため、管路を下水管として利用する場合等に、下水の流動が阻害されることがなくなる。
【0030】
上記封止機構の構成は特に限定されることはない。たとえば、請求項6に記載した発明のように、上記切断刃とともに摺動して、上記導入口を封止する封止部材を設けて構成することができる。上記切断刃と上記封止部材とを一体的に形成することもできるし、上記封止部材を切断刃から離脱可能に接続しておき、上記切断刃が作動手段ととともに撤去される一方、上記封止部材が上記導入口を封止するように構成することもできる。
【0031】
本願の請求項7に記載した発明は、上記逆止弁を、上記フレキシブルチューブが接続される第1の逆止弁と、上記推進管の外周部に薬剤を吐出する第2の逆止弁とを備えて構成したものである。
【0032】
上記二つの逆止弁を介して薬剤を注入するように構成することにより、確実な逆止効果を期待できる。上記逆止弁の種類は、特に限定されることはなく、同一の逆止弁を採用することもできるし、異なる形態の逆止弁を採用できる。
【0033】
請求項8に記載した発明のように、上記第1の逆止弁と上記第2の逆止弁を、上記ケーシング内で独立した収容空間に保持するのが好ましい。上記第1の逆止弁と上記第2の逆止弁を、上記ケーシング内で独立した収容空間に保持することにより、逆止効果を高めることができる。また、推進工事の終了後に、セメント等の硬化剤を上記第2の逆止弁の収容空間に充填して硬化させることにより、推進管の外周部から水等が逆流するのを防止できる。
【0034】
本願の請求項9に記載した発明は、シールド掘進機とその後方に接続される推進管とを用いて行われる推進工法において、上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の外周部へ薬剤を注入する推進工法における薬剤の注入方法であって、 上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の管壁に埋め込み状に設けたケーシング内に保持される逆止弁と、上記推進管内から上記逆止弁に上記薬剤を供給するフレキシブルチューブとを備え、上記逆止弁を介して、上記外周部に上記薬剤を注入するとともに、推進終了後に、上記フレキシブルチューブを上記ケーシングに設けた切断刃によって切断して撤去するものである。
【0035】
本願の請求項10に記載した発明は、上記フレキシブルチューブを上記推進管の内面に沿って切断するとともに、フレキシブルチューブを上記ケーシング内へ導入する導入口を封止する薬剤の注入方法に係るものである。
【0036】
本願の請求項11に記載した発明は、上記薬剤を、上記フレキシブルチューブが接続される第1の逆止弁と、薬剤を推進管の外周部へ吐出する第2の逆止弁とを介して注入する薬剤の注入方法に係るものである。
【0037】
本願の請求項12に記載した発明は、薬剤が、上記第2の逆止弁を設けた収容空間を介して上記第2の逆止弁に流入するように構成し、推進作業終了後、上記フレキシブルチューブを介して上記第2の逆止弁を保持する収容空間に硬化剤を注入して硬化させることにより、薬剤の注入流路を封止する、薬剤の注入方法に係るものである。
【0038】
第2の逆止弁への流入路である収容空間を硬化剤で充填できるため、推進作業終了後に薬剤や地下水等が推進管内に浸入することはなくなる。上記硬化剤の種類は特に限定されることはなく、たとえば、セメントモルタル等を採用できる。
【0039】
本願の請求項13に記載した発明は、上記薬剤として、上記推進管の推進抵抗を減ずる潤滑剤、上記推進管の周囲の土壌を改良する土壌改良剤、上記推進管の周囲の土壌を硬化させる硬化剤から選ばれた薬剤を採用したものである。
【0040】
上記土壌改良剤として、地盤改良剤等の土木工学的に土壌を改良する薬剤に限定されることはない。たとえば、土壌汚染物質を中和し、あるいは汚染が拡大するのを防止する薬剤を採用することもできる。
【0041】
本願の請求項14に記載した発明は、請求項1から請求項8に記載した薬剤注入装置を備える推進管に関するものである。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。なお、本実施の形態では、薬剤として推進管の推進抵抗を減ずるための潤滑剤を注入する場合について説明するが、土壌改良剤等の他の薬剤を採用することもできる。また、本実施の形態では、推進作業と平行して薬剤を注入したが、推進管を敷設した後に薬剤を注入することもできる。
【0043】
図1に示すように、図示しないシールド掘進機の後方に推進管1,1aが接続されている。本実施の形態では、推進起点に潤滑剤を圧送するポンプ2を設け、潤滑剤貯溜槽3から推進管内に設けた潤滑剤供給管路4を介して、潤滑剤注入装置5に潤滑剤が供給される。
【0044】
選択された推進管1aの管壁6に本実施の形態に係る潤滑剤注入装置5が設けられている。なお、すべての推進管に上記潤滑剤注入装置5を設ける必要はない。また、各推進管に設けられる潤滑剤注入装置5の数も特に限定されることはない。
【0045】
図2は、図1に示す潤滑剤注入装置の拡大断面図である。推進管1aの管壁6は、鋼板製の外壁部7とコンクリート製の内壁部8とを備えて構成されている。本実施の形態に係る潤滑剤注入装置5は、上記管壁6に矩形状の開口部9を設けるとともに、この開口部9に鋼板で形成された直方体状のケーシング10を埋め込み状に設け、このケーシング10に逆止弁11,12を保持して構成される。上記ケーシング10の厚さは、上記推進管1aの管壁6の厚さとほぼ同一に形成されており、上記ケーシング10の縁部外周が上記推進管1aの外壁部7に溶接されている。
【0046】
上記ケーシング10は、外側に開口する箱状の本体13と、この開口14をシート状のパッキン15を介して封止する蓋体16とを備える。上記蓋体16は、複数のねじ17によって上記本体13に連結されている。上記本体13の軸方向中間部には隔壁18が設けられており、この隔壁18を介して二つの逆止弁収容空間19,20が形成されている。そして、これら逆止弁収容空間19,20に、第1の逆止弁11と第2の逆止弁12とがそれぞれ収容保持されている。上記第1の逆止弁11を収容する収容空間19の内側壁21には、上記第1の逆止弁11に潤滑剤を供給するフレキシブルチューブ22を導入するチューブ導入口23が設けられている。
【0047】
本実施の形態では、上記第1の逆止弁11として、リフト式の汎用チャッキ弁を採用する一方、上記第2の逆止弁12として、直径方向に伸びる支持体24の両側で回動可能に保持されたバタフライ型の弁体25を備える逆止弁を採用している。
【0048】
上記第1の逆止弁11の流入口にはホースニップル26が接続さており、柔軟な樹脂で形成された上記フレキシブルチューブ22が上記ホースニップル26を介して上記第1の逆止弁11に接続されている。図3に示すように、上記フレキシブルチューブ22の他端部は、上記潤滑剤供給管4に接続されており、上記フレキシブルチューブ22を介して、上記第1の逆止弁11に潤滑剤が供給されるように構成されている。
【0049】
上記第1の逆止弁11を保持する収容空間19と、上記第2の逆止弁12を保持する収容空間20とは、上記隔壁18を介してそれぞれが独立して形成されている。潤滑剤は、上記第1の逆止弁11から上記第2の逆止弁収容空間20に注入された後、上記第2の逆止弁12を介して推進管1aの外周部へ吐出するように構成されている。
【0050】
図6及び図7に示すように、上記チューブ導入口23を設けたケーシング10の内側壁21には、上記フレキシブルチューブ22を切断するチューブ切断機構27が設けられている。
【0051】
本実施の形態に係るチューブ切断機構27は、上記ケーシング10の内側壁21の外面に形成されたガイド部28と、上記ガイド部28に摺動可能に保持された切断刃29と、上記切断刃29の先端部分に接続された牽引部材30とを備えて構成されている。また、本実施の形態では、上記切断刃29の後部に、上記切断刃29が摺動させられてフレキシブルチューブ22をカットした後に、上記チューブ導入口23を封止する封止部材31が接続されている。
【0052】
上記ガイド部28は、上記ケーシング10の内側壁21の外面に鋼板を積層して、上記切断刃29を直線に沿って摺動させる摺動隙間を設けて構成されている。
【0053】
上記切断刃29は、図8に示すように、矩形板状の部材の内側部に台形状の開口部32を設け、この台形の斜辺に切刃33を設けて構成されている。上記切断刃29は、先端部分に牽引部材30を連結する連結穴34が設けられており、この連結穴34に連結された牽引部材30によって牽引されることにより、上記ガイド部28に沿って摺動できるように構成されている。
【0054】
本実施の形態に係る上記牽引部材30は、図3に示すように、一端が上記連結穴34に連結される一方、他端部は、推進管1aの下部に配置された送泥管35及び排泥管36の外壁に設けた連結部37に連結されている。推進作業が終了した後、上記送泥管36及び排泥管37を撤去する際、上記牽引部材30が牽引されて、上記切断刃29が摺動させられ、上記フレキシブルチューブ22が、上記内側壁21に沿って切断されるように構成されている。
【0055】
上記封止部材31は、上記切断刃29と同一の厚さの鋼板で形成されており、上記切断刃29の後部に離脱可能に接続されている。実施の形態では、一定以上の牽引力が作用すると、破断する図示しないテープ状の部材を介して、上記切断刃29と封止部材31とが連結されている。
【0056】
図8に示すように、上記ガイド部28の一側に、上記フレキシブルチーブ22を切断した後に、上記封止部材31の摺動を阻止する段部38が形成されている。一方、他側には、上記段部38で摺動が阻止された上記封止部材31の後退を阻止するくさび状の切欠き部39が形成されている。また、図6及び図7に示すように、上記フレキシブルチューブ22は、上記切断刃29の開口部32及び上記チューブ導入口23を介して、上記第1の逆止弁11を収容した収容空間19に導入されている。
【0057】
図8から図10に基づいて、上記封止部材31の動きを説明する。上記排泥管36及び送泥管35の撤去によって上記牽引部材30が牽引されると、上記切断刃29及び封止部材31が上記ガイド部28に案内されて摺動させられる。図9に示すように、上記封止部材31が上記段部38に当接すると、それ以上の摺動が阻止されて、上記封止部材31と上記切断刃29との間の張力が大きくなる。すると、上記封止部材31と切断刃29とを連結したテープ状部材に大きな力が作用する。上記段部38は、ガイド部28の片側にのみ形成されているため、上記封止部材31の他端部は、回転するように変位しながら上記切欠き部39に嵌まり込むとともに、上記テープ状部材が破断して上記封止部材31と上記切断刃29とが分離させられる。
【0058】
上記封止部材31は、上記切欠き部39に嵌まり込んで後退できない姿勢で、上記チューブ導入口23を封止する。これにより、上記チューブ導入口23を確実に封止できる。一方、図10に示すように、上記切断刃29は、上記牽引部材30、送泥管35、排泥管36とともに撤去される。
【0059】
本実施の形態では、図11に示すように、上記切断刃29の撤去後に、上記フレキシブルチューブ22の端部が推進管1aの内部に突出することがない。また、上記ケーシング10の内面と上記推進管1aの内面とが同一面になるように設定されている。このため、推進管1aを下水路等に使用に供した場合に、推進管内を流動する流体の流れを阻害することはない。
【0060】
また、二つの逆止弁11,12を介して潤滑剤を注入するように構成しているため、逆止効果が大きく、推進終了後に地下水等が推進管内部に流入することもない。
【0061】
また、上記フレキシブルチューブ22を切断するために、特別な装置を全く必要としないため、潤滑剤供給管等4の撤去作業をきわめて容易に行うことができる。
【0062】
さらに、本実施の形態では、上記第2の逆止弁12を独立した収容空間20に保持するとともに、潤滑剤を上記収容空間20を介して上記第2の逆止弁12に流入させるように構成している。このため、推進終了後にセメントモルタル等の硬化剤を上記収容空間20に充填して、上記第2の逆止弁12とともに潤滑剤の流路を完全に封止することができる。これにより、推進作業終了後に潤滑剤や地下水等が推進管内に逆流することはない。
【0063】
また、上記の実施の形態では、切断刃29を直線に沿って摺動させたが、図12及び図13に示す第2の実施の形態のように、切断刃229を回動するように摺動させることもできる。
【0064】
図12及び図13に示す第2の実施の形態に係るチューブ切断機構227は、軸241回りに回転摺動可能に保持された略扇型状の切断刃229と、牽引部材230に連結されて牽引される棒状部材241とを備えて構成されている。上記切断刃229の外周部には係合凹部242が形成される一方、上記棒状部材241には、上記係止凹部242に係合する係合凸部243が形成されている。
【0065】
上記棒状部材241はガイド部228に直線摺動可能に保持されており、上記棒状部材241を摺動させると、上記係合凸部243が上記係合凹部242に係合して、上記切断刃229を回動させる。上記切断刃229の縁部には切刃233が形成されており、上記切断刃229の回転によってフレキシブルチューブ222が切断される。上記係合凸部243と上記係合凹部242は、フレキシブルチューブ222を切断した後に、上記切断刃229の内側面がチューブ導入口223を封止した回動位置で離脱するように設定されている。これにより、上記第1の実施の形態と同様の効果を期待できる。
【0066】
本願発明は、上述の実施の形態に限定されることはない。実施の形態では、2つの逆止弁11,12を介して潤滑剤を注入するように構成したが、一つの逆止弁のみを介して注入することもできる。
【0067】
実施の形態では、送泥管35及び排泥管36に牽引部材を連結して、切断機構を作動させるように構成したが、推進基点あるいは到達点に延出するワイヤ等の牽引部材を推進管内に別途設けることもできる。
【0068】
実施の形態では、推進管の対向する2箇所に潤滑剤注入装置を設けたが、4箇所に設けることもできる。
【0069】
実施の形態では、箱状本体13を外側に開口する蓋体16を設けたが、推進管の内側に向けて開口するように構成することもできる。また、上記蓋体16をパッキン15及びねじ17を介してを介して箱状本体13に取り付けたが、溶接によって取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る潤滑剤注入装置設けた推進管の概要を示す軸断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る潤滑剤注入装置の縦断面図である。
【図3】図1における III−III 線に沿う断面図であり、潤滑剤注入装置の設置状態を示す拡大断面図である。
【図4】図2示す潤滑剤注入装置の平面図である。
【図5】図2に示す潤滑剤注入装置の蓋体を取り外した状態を示す平面図である。
【図6】図4におけるVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図2の要部の拡大図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図であり、切断刃の作用を示す説明図である。
【図9】図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図であり、切断刃の作用を示す説明図である。
【図10】図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図であり、切断刃の作用を示す説明図である。
【図11】フレキシブルチューブを切断した直後の状態を示す断面図であり、図7に対応する図である。
【図12】本願発明の第2の実施の形態を示す図であり、図8に相当する断面図である。
【図13】本願発明の第2の実施の形態を示す図であり、図10に相当する断面図である。
【符号の説明】
1 推進管
5 注入装置
10 ケーシング
11 逆止弁
12 逆止弁
22 フレキシブルチューブ
27 チューブ切断機構

Claims (14)

  1. シールド掘進機とその後方に接続される推進管とを用いて行われる推進工法において、上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の外周部へ薬剤を注入する推進工法における薬剤の注入装置であって、
    上記外周部へ上記薬剤を注入するとともに、上記薬剤の逆流を防止する逆止弁と、
    上記推進管内に設けられる薬剤供給管から分岐して、上記逆止弁へ薬剤を供給するフレキシブルチューブと、
    推進作業終了後に、上記フレキシブルチューブを切断するチューブ切断機構と、
    上記逆止弁を収容保持するとともに、上記チューブ切断機構を設けたケーシン
    グとを備える、推進工法における薬剤の注入装置。
  2. 上記チューブ切断機構は、
    上記ケーシングの内側壁に沿って摺動可能に保持され、上記フレキシブルチューブを上記内側壁に沿って切断する切断刃と、
    上記切断刃を摺動させる作動手段とを備える、請求項1に記載の薬剤の注入装置。
  3. 上記作動手段が、上記切断刃に接続された牽引又は押圧部材である、請求項2に記載の薬剤の注入装置。
  4. 上記ケーシングが、上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の管壁に埋め込み状に設けられている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の推進工法における薬剤の注入装置。
  5. 上記ケーシング内にフレキシブルチューブを導入するチューブ導入口を、上記フレキシブルチューブ切断後に封止する封止機構を備えて構成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の推進工法における薬剤の注入装置。
  6. 上記封止機構は、上記切断刃とともに摺動して、上記導入口を封止する封止部材を備えて構成されている、請求項5に記載の推進工法における薬剤の注入装置。
  7. 上記逆止弁は、上記フレキシブルチューブが接続される第1の逆止弁と、上記推進管の外周部に薬剤を吐出する第2の逆止弁を備えて構成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の推進工法における薬剤の注入装置。
  8. 上記第1の逆止弁と上記第2の逆止弁は、上記ケーシング内で独立した収容空間に保持されている、請求項7に記載の薬剤の注入装置。
  9. シールド掘進機とその後方に接続される推進管とを用いて行われる推進工法において、上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の外周部へ薬剤を注入する推進工法における薬剤の注入方法であって、
    上記シールド掘進機及び/又は上記推進管の管壁に埋め込み状に設けたケーシング内に保持される逆止弁と、上記推進管内から上記逆止弁に上記薬剤を供給するフレキシブルチューブとを備え、
    上記逆止弁を介して、上記外周部に上記薬剤を注入するとともに、
    推進終了後に、上記フレキシブルチューブを上記ケーシングに設けた切断刃によって切断して撤去する、推進工法における薬剤の注入方法。
  10. 上記フレキシブルチューブを上記推進管の内面に沿って切断するとともに、フレキシブルチューブを上記ケーシング内へ導入する導入口を封止する、請求項9に記載の推進工法における薬剤の注入方法。
  11. 上記薬剤を、上記フレキシブルチューブが接続される第1の逆止弁と、薬剤を推進管の外周部へ吐出する第2の逆止弁とを介して注入する請求項9又は請求項10のいずれかに記載の推進工法における薬剤の注入方法。
  12. 薬剤が、上記第2の逆止弁を設けた収容空間を介して上記第2の逆止弁に流入するように構成し、
    推進作業終了後、上記フレキシブルチューブを介して上記第2の逆止弁を保持する収容空間に硬化剤を注入して硬化させることにより、薬剤の注入流路を封止する、請求項11に記載の推進工法における潤滑剤の注入方法。
  13. 上記薬剤が、上記推進管の推進抵抗を減ずる潤滑剤、上記推進管の周囲の土壌を改良する土壌改良剤、上記推進管の周囲の土壌を硬化させる硬化剤から選ばれた薬剤である、請求項9から請求項12のいずれかに記載の推進工法における薬剤の注入方法。
  14. 請求項1から請求項8に記載した薬剤注入装置を備える推進管。
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