JP3955725B2 - 魚釣用両軸受型リール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚釣用両軸受型リールに係わり、特に、釣糸放出時(キャスティング時)における糸絡み現象(バックラッシュ現象)を防止するバックラッシュ防止機構を備えた魚釣用両軸受型リールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、魚釣用両軸受型リールは、仕掛け投擲時(キャスティング時)におけるスプールの過回転に起因して発生するバックラッシュ現象を防止するべく、バックラッシュ防止機構と呼ばれる制動装置を備えて成るものが一般的である。このようなバックラッシュ防止機構は、遠心力を利用した摩擦ブレーキ装置や、磁力を利用した磁気ブレーキ装置など、各種のものが知られている。
【0003】
また、バックラッシュ防止機構は、通常、釣り人のレベルや仕掛け投擲の距離に合わせた制動力の調節を可能にする制動力調節部を備えている。この制動力調節部は、リール本体の外部に備え付けられたものが一般的であり、通常、ブレーキ力調節操作を行なうための操作部がリール本体の側板から突出されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように、制動力調節部の操作部がリール本体の側板から突出されていると、リールを手の平で握り込んで握持保持した際に、手に違和感があり、長時間の使用で手が痛くなる場合がある。また、リールを握り込んだ際に操作部が邪魔にならないように、操作部の突出位置(設置位置)を限定しなければならない場合もある。この場合には、デザインの自由度もなくなってしまう。
【0005】
また、制動力調節部の操作部がリール本体の側板から突出されていると、リールを握持した手が制動力調節部の操作部に触れることで誤操作してしまうことを防止するため、制動力調節部に強い節度を持たせる必要がある。そのため、操作部の操作力が重くなってしまう。特に、制動力調節部の操作部が小さい場合には、操作部を爪等で例えば回転操作した際に爪を痛めてしまったり、また、指先を操作部に強く押し付けて指先を痛めてしまうといった問題が生じる虞もあり、早急な改善が必要とされている。
【0006】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、リール本体を握持保持した際に手に違和感がなく且つ制動力調節部の操作力が軽く誤操作の少ないバックラッシュ防止機構を備えた魚釣用両軸受型リールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の魚釣用両軸受型リールは、リール本体の両側の側板間でスプールを回転可能に支持し、一方の側板に配置したハンドルを回転してこのスプールに釣糸を巻回保持するとともに、釣糸繰り出し方向へのスプールの過回転を防止するべくスプールの回転に制動力を付与するバックラッシュ防止機構を他方の側板側に配置した魚釣用両軸受型リールにおいて、前記他方の側板は、外周にリング状の部材が装着されかつ前記スプールのスプール軸を支える支持部と、この支持部から離隔する側方に向けて、このリング状の部材に隣接する支持部の周縁部から滑らかな球面状に膨出し、前記バックラッシュ防止機構の制動力を調節する調節操作部と、この調節操作部の内面に形成した複数の凹部に、前記支持部に設けられかつこれらの凹部に向けて付勢された球状部を係合することで、支持部に対する調節操作部の相対的な回動位置を保持するためのクリック機構とを有し、この調節操作部は、前記リング状の部材よりも側方で前記他方の側板の主外表面を形成し、最も側方に膨出した中心から支持部に向けて突出する軸部を中心として、前記支持部に対して回動可能であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用両軸受型リール1は、釣糸が巻回されるスプール3と、スプール3を回転自在に支持するリール本体とからなる。リール本体は、スプール3の左右両側に位置するフレーム2a,2bと、各フレーム2a,2bの側部に取り付けられる左右の側板1a,1bとによって構成される。なお、リール本体には、図示しない釣竿のリール取付け部に着脱自在に取り付けられる竿取付け部90(図4および図5参照)が設けられている。
【0013】
また、側板1a,1bは、円形状(側方から見て丸型)に構成されており、例えばビス、螺合、嵌合等によってフレーム2a,2bに装着されている。なお、図1に示す側板1bのようにビス19によって装着する場合には、そのビス19を隠蔽するように、側板1a,1bの外周にリング状の部材3a,3bが装着される。
【0014】
図中右側に位置する右側板1bは、スプール3を回転駆動させる巻取り駆動部30を支持している。また、図中右側に位置する右フレーム2bは、軸受10を介してスプール軸5の一端部を回転可能に支持している。更に、右フレーム2bと右側板1bとの間には一定の空間が形成されており、この空間内には、巻取り駆動部30を構成する駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容されている。
一方、図中左側に位置する左側板1aは、軸受10を介してスプール軸5の他端部を回転可能に支持するとともに後述するバックラッシュ防止機構20の一部を支持する内側の支持部40と、支持部40と対向し且つバックラッシュ防止機構20の後述する制動力調節部の操作部を兼ねる外側の調節操作部41とから成る。この場合、左側板1aの外表面は、調節操作部41の外表面と支持部40の周縁部とによって形成されている。また、調節操作部41は、側方に向けて球面状に滑らかに膨出するように側面視で円形(側面視丸型)を成して左側板1aの主外表面を形成するとともに、リール本体と同心的に配置されている。また、支持部40の周縁部の表面は、調節操作部41の外表面と段差無く滑らかに繋がっている。
【0015】
軸受10,10を介して回転可能に支持されるスプール軸5は、左右のフレーム2a,2b間で延びている。右フレーム2bから突出するスプール軸5の端部には、スプール軸5の軸方向に沿って移動可能なピニオンギア6が取り付けられている。この場合、ピニオンギア6は、ピニオン軸11に回転可能に支持されており、図示しない切換手段によって、スプール軸5と係合してスプール軸5と一体に回転する係合位置と、スプール軸5との係合状態が解除される非係合位置との間で移動される。具体的には、ピニオンギア6には、クラッチプレート12が係合する円周溝が形成されている。クラッチプレート12は、図示しない連結機構によってピニオン軸11に沿って移動可能であり、図示しないクラッチ切換部材の操作によって駆動される。すなわち、クラッチ切換部材を押し下げ操作することによって、ピニオンギア6は、クラッチプレート12を介して図1に示す位置から右側に移動され、スプール軸5との係合が外れる(クラッチOFF)。したがって、スプール3はフリー回転可能状態となる。
【0016】
また、ピニオンギア6には駆動歯車7が噛合しており、駆動歯車7には巻取り駆動部30を構成するハンドル軸8が取り付けられている。すなわち、ハンドル軸8は、ピニオンギア6と噛合する駆動歯車7を支持した状態で、支持側板1bに回転可能に支持されている。さらに、ハンドル軸8の外端部には、ハンドル軸8とともに巻き取り駆動部30を構成するハンドル22が取り付けられている。したがって、ハンドル22を回転操作すると、駆動歯車7とピニオンギア6とを介して、スプール軸5が回転駆動され、それに伴ってスプール3が回転される。
【0017】
また、ハンドル軸8の途中にはハンドル軸8の一方向のみの回転を許容する一方向クラッチ23が設けられ、ハンドル軸8の内端部には駆動歯車7と係合する摩擦板25(ドラグ機構)が設けられている。摩擦板25は、ハンドル22に併設されたドラグ操作部材27が回転されることによって軸方向に押圧されて駆動歯車7と摩擦係合し、ドラグ作用を与える。
【0018】
また、ハンドル軸8の内端にはギア28が設けられている。このギア28は、駆動歯車7に連結されてこれと一体に回転するとともに、スプール3の前方側に配されたレベルワインド機構15のウォームシャフト32を駆動する駆動ギア33と噛合している。レベルワインド機構15は、外周面にトラバース溝が形成され且つ端部に駆動ギア33が取り付けられたウォームシャフト32と、このウォームシャフト32を収容する筒体17と、前記トラバース溝と係合してウォームシャフト32の回転により筒体17に沿って左右に摺動する係合子18とを有しており、係合子18に形成された孔を介してスプール3に巻回された釣糸を案内する。したがって、ハンドル22を回転操作すれば、スプール3の回転および係合子18の左右の摺動により、スプール3には釣糸が均等に巻回される。
【0019】
また、左フレーム2a側のスプール軸5の端部には、スプール3の過回転を制御することによって釣糸繰出時のバックラッシュを防止するバックラッシュ防止機構20が設けられている。このバックラッシュ防止機構20は、スプール3の回転に制動力を付与する制動部と、制動力を調整するための制動力調節部とから成る。
【0020】
図2に拡大して示されるように、バックラッシュ防止機構20の前記制動部は、一対の環状の磁石74,75と、これらの磁石74,75間に形成された環状空間に対して挿脱される環状の導電体82とから成る(図3も参照)。具体的には、環状の磁石ホルダ70が支持部40に回転可能に保持されており、この磁石ホルダ70の内周面に環状の外側磁石75が固着されている。また、支持部40には、磁石ホルダ70と対向して位置するとともに軸受10を保持する凸状保持部73が形成されており、この凸状保持部73の外周面には、外側磁石75と対向するように位置された環状の内側磁石74が固着されている。
【0021】
また、導電体82は、スプール軸5の外周に移動可能に取り付けられた移動体80に固定されている。この場合、導電体82は、磁石74,75間に形成された環状空間と対向し且つこの環状空間に対して挿脱され得るようにスプール軸5の軸方向に沿って延びている。また、スプール軸5の端部に固定されたリテーナ85と移動体80との間には圧縮バネ83が設けられている。この圧縮バネ83は、スプール軸5の外周面に巻回され、移動体80をリテーナ85から離間させるスプール3側方向に向けて常時付勢している。
【0022】
一方、バックラッシュ防止機構20の前記制動力調節部は、左側板1aを形成する調節操作部41を有している。調節操作部41は、スプール軸5と略平行に支持部40に向けて内側に突出する軸部69をその中心に有しており、この軸部69には歯車71が固定的に取り付けられている。また、軸部69と平行に対向して延在する磁石ホルダ70の部位には内歯70aが形成されており、この内歯70aは歯車71の外歯71aと噛み合っている。したがって、調節操作部41を回転操作して歯車71を回転させると、歯車71と噛み合う磁石ホルダ70が回転し、磁石ホルダ70に固着された外側磁石75が内側磁石74に対して回転する。なお、調節操作部41の外表面の周縁部近傍には、調節操作部41を回転操作する手の指を当てることができる大きさの複数の凹部65が形成されている。
【0023】
また、バックラッシュ防止機構20は、支持部40に対する調節操作部41の回転を許容しつつ支持部40に対する調節操作部41の相対的な回動位置(したがって、内側磁石74に対する外側磁石75の相対的な位置)を保持するためのクリック機構を備えている。このクリック機構は、調節操作部41の内面に形成された複数の凹部64と、これらの凹部64と係脱可能に係合する球状部66とを有している。凹部64は調節操作部41の周方向に沿って所定間隔で設けられている(図4および図5参照)。また、球状部66は、支持部40に形成された孔67内に収容されており、孔67内に配設されたコイルバネ68により凹部64と係合する方向に向けて常時付勢されている。
【0024】
次に、上記構成のバックラッシュ防止機構20の作用について説明する。
【0025】
まず、ハンドル22を操作してスプール3を回転させると、スプール軸5を介して移動体80もスプール3と一体に回転する。この時、スプール3の回転に伴う遠心力の作用によって、例えば図示しないカラーが径方向外側に移動しつつ移動体80に押圧力を作用させる。そして、スプール3の回転速度が所定の大きさに達して、移動体80に対する前記カラーの押圧力が圧縮バネ83の付勢力よりも大きくなると、移動体80がスプール軸5に沿って左側板1a側に移動し始める。この移動によって、導電体82が磁石74,75間に形成された環状空間(磁界)内に挿入されると、導電体82を有する移動体80は、導電体82の挿入量(移動量)と回転速度とに応じた力を磁界から受ける。したがって、移動体80と一体で回転するスプール3にもこの力に伴う制動力が作用する。つまり、スプール3にはその回転速度に応じた制動力が作用し、その結果、スプール3の過回転が防止され、バックラッシュ現象が抑止される。
【0026】
また、バックラッシュ防止機構20による制動力を調整する場合には、リールを握持している手の指を、調節操作部41の外表面に形成された凹部65に押し当てて引掛けた状態で、調節操作部41を所望の制動力が得られる量だけ所定方向に回転させる。これにより、調節操作部41に付設された歯車71が回転して、歯車71と噛み合う磁石ホルダ70が回転し、磁石ホルダ70に固着された外側磁石75が内側磁石74に対して回転する。その結果、対向する外側磁石75の極性と内側磁石74の極性との間に変化が生じて、磁石74,75間に形成された環状空間内の磁界の強さが変化し、制動力が所望の強さに調整される。
【0027】
また、このように調節操作部41を回転させると、支持部40側に設けられた球状部66が調節操作部41の内面の凹部64に繰り返し衝突し、クリック音が発生する。そして、調節操作部41を所定量回転させた位置で球状部66が対応する凹部64と係合することにより、支持部40に対する調節操作部41の相対的な回動位置、すなわち、内側磁石74に対する外側磁石75の相対的な位置が保持される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用両軸受型リール1では、握持保持することが可能な左側板1aの部位が、バックラッシュ防止機構20の調節操作部41を兼ねている。すなわち、調節操作部41は、その外表面が左側板1aの外表面と略面一であり、左側板1aは、調節操作部41を含めて、その外面から突出する部位がない滑らかな形状を成している。したがって、リール1を手の平で握り込んで握持保持した際に、手に違和感がなく、長時間の使用で手が疲れたり痛くなることを防ぐことができる。また、このように調節操作部41がリール本体の左側板1aの外表面の略全体(主外表面)を形成するため、リール1を把持保持した際に調節操作部41を誤って操作してしまうことがなく、不意のブレーキ力変化によるトラブルを避けられる。
【0029】
また、本実施形態では、第1に、左側板1aの外表面の略全体(主外表面)が回転可能な調節操作部41となっており、第2に、調節操作部41を有する左側板1aが側方視で円形を成し且つ調節操作部41がリール本体と同心的に配置されており、第3に、前述した誤操作防止形状により制動力調節部に強い節度を持たせる必要がないため、バックラッシュ防止機構20の調整操作がし易く、また、操作力量も軽くて済む。
【0030】
また、本実施形態において、左側板1aは、調節操作部41も含めて、その全体がリール本体の側方に向けて球面状に滑らかに膨出しているため、手の平になじみ易く、リール1を確実に握り込むことが可能となる。そのため、細かいアクションを付け易くなる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リール本体を握持保持した際に手に違和感がなく且つ制動力調節部の操作力が軽く誤操作の少ないバックラッシュ防止装置を備えた魚釣用両軸受型リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用両軸受型リールの断面図である。
【図2】図1の魚釣用両軸受型リールの要部を示す拡大断面図である。
【図3】図1の魚釣用両軸受型リールにおけるバックラッシュ防止機構の制動部の断面図である。
【図4】図1の魚釣用両軸受型リールにおけるバックラッシュ防止機構の制動力調節部の断面図である。
【図5】図1の魚釣用両軸受型リールの左側面図である。
【符号の説明】
1…魚釣用両軸受型リール
1a,1b…側板
3…スプール
20…バックラッシュ防止機構
41…調節操作部

Claims (1)

  1. リール本体の両側の側板間でスプールを回転可能に支持し、一方の側板に配置したハンドルを回転してこのスプールに釣糸を巻回保持するとともに、釣糸繰り出し方向へのスプールの過回転を防止するべくスプールの回転に制動力を付与するバックラッシュ防止機構を他方の側板側に配置した魚釣用両軸受型リールにおいて、
    前記他方の側板は、外周にリング状の部材が装着されかつ前記スプールのスプール軸を支える支持部と、この支持部から離隔する側方に向けて、このリング状の部材に隣接する支持部の周縁部から滑らかな球面状に膨出し、前記バックラッシュ防止機構の制動力を調節する調節操作部と、この調節操作部の内面に形成した複数の凹部に、前記支持部に設けられかつこれらの凹部に向けて付勢された球状部を係合することで、支持部に対する調節操作部の相対的な回動位置を保持するためのクリック機構とを有し、この調節操作部は、前記リング状の部材よりも側方で前記他方の側板の主外表面を形成し、最も側方に膨出した中心から支持部に向けて突出する軸部を中心として、前記支持部に対して回動可能であることを特徴とする魚釣用両軸受型リール。
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