JP3952107B2 - 転がり軸受の分割型保持器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受の分割型保持器に係り、例えば大径、かつ、薄肉の転がり軸受に好適な分割型保持器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、大径、かつ、薄肉の転がり玉軸受は、内輪および外輪が接近しているため、複数の帯部材を円環状に配置した分割型保持器を多用している。
図3(A)および図3(B)には、分割型保持器30を構成する帯部材31が示されている。帯部材31は、転動部材である玉32のピッチ円に対応するとともに、内輪および外輪に対して接触しないような適宜な一定曲率で厚み方向に湾曲されている。この帯部材31は、長手方向に沿って所定間隔で複数のポケット部33が設けられている。
【0003】
図3(C)にも示すように、ポケット部33は、帯部材31を厚み方向に同一内径で貫通することにより、玉32を個々に収容可能とされている。なお、ポケット部33の内径寸法Aは、帯部材31が湾曲されると開口形状が若干変形することを考慮して、あらかじめ玉32の直径寸法Bよりも大きく設定されている。
そして、これらの帯部材31は、長手方向両端部にそれぞれ設けられた連結部(図示せず)を雌雄係合させることにより円環状に連結される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、転がり玉軸受においては、保持器と内輪,外輪との接触を防止するため、あるいは玉とポケット部の内面との衝突音を緩和するために、ポケット部の内面を玉の直径に対応した凹状の球面に形成することにより、玉および保持器の相対位置を一定に保持する構造が広く知られている(従来例)。
この従来例において、ポケット部は、開口縁の直径寸法が玉の直径よりも若干小さく設定された略樽形状とされ、玉が圧入される。
【0005】
ところが、前述した分割型保持器30に従来例を適用すると、例えば帯部材31の湾曲率が所望値から外れた場合、帯部材31の湾曲率と各玉32のピッチ円との相違から、ポケット部32の開口縁部を玉32に押し付け、正常な回転を阻害するように玉32を拘束する虞れがある。
一般に、帯部材32を定められた曲率に正確に湾曲させることは難しく、かつ、経時変化により帯部材32の湾曲率が変化する虞れがあるため、分割型保持器30には従来例を適用しにくいという問題があった。
【0006】
また、従来、分割型保持器30は、各帯部材31の連結部が雌雄係合する構造であるため、組み立てにあたって各帯部材31の配向を考慮する必要があり、組立工程が煩雑であるという問題もあった。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は内輪、外輪に対する接触を防止できるとともに、転動部材とポケット部の内面との衝突音を緩和でき、かつ、転動部材の回転を阻害しない転がり軸受の分割型保持器を提供することにある
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した第1の目的を達成するために、本発明は、内輪および外輪間に配置された転動部材を保持するための帯部材を複数有し、前記帯部材の各々には、前記転動部材を収容するポケット部が長手方向に沿って所定間隔で3以上設けられており、前記帯部材の各々を厚み方向に湾曲させて連結することにより略円環状に形成された転がり軸受の分割型保持器であって、前記ポケット部は、前記帯部材の厚み方向に垂直な面での断面形状および寸法が、前記厚み方向の位置により変わらない内面を有する第1ポケット部と、前記断面形状および寸法が、前記厚み方向の位置により、前記転動部材の断面形状および寸法に対応して変わる内面を有する第2ポケット部とを備え、前記帯部材の各々は、長手方向の両端部側に1または複数の前記第1ポケット部を有し、長手方向の中間部に前記第2ポケット部を有していることを特徴としている。
【0008】
ここで、転動部材としては球形状,円筒形状等を例示でき、第1ポケット部および第2ポケット部の開口形状としては円形状,矩形状等を例示できる。
従って、第1ポケット部の内面としては内筒面あるいは矩形内壁面等に形成しておけばよく、第2ポケット部の内面としては凹状の球面や円弧面に形成しておけばよい。
【0009】
このように構成された転がり軸受の分割型保持器においては、第1ポケット部の内面が内筒面あるいは矩形内壁面であるとともに、第2ポケット部の内面が凹状の球面や円弧面であるため、例えば帯部材の湾曲率が所望値から外れても、転動部材が第1ポケット部から帯部材の外周側あるいは内周側に若干突出することにより帯部材の湾曲率誤差を許容することになる。
従って、この転がり軸受の分割型保持器においては、すべてのポケット部の内面を凹状の球面や円弧面に形成した場合と異なり、転動部材の回転を阻害するという問題を回避できることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2には、本発明に基づいて構成された分割型保持器10の帯部材11が示されている。
図1(A)および図1(B)に示すように、帯部材11は所定厚みを有し、その長手方向に沿って所定間隔で第1ポケット部21および第2ポケット部22が設けられているとともに、転動部材である玉12のピッチ円に対応した曲率で厚み方向に湾曲されている。
図1(C)に示すように、帯部材11の長手方向両端部側に設けられた第1ポケット部21は、帯部材11の厚み方向に沿って形状および寸法が連続する内筒面23を有し、その内径寸法Aが玉12の直径寸法Bよりも大きく設定されている。
【0013】
一方、図1(D)および図1(E)に示すように、第2ポケット部22は、玉12の直径寸法Bに対応した内径寸法Cを有する凹状の球面24と、帯部材11の外周面側開口縁部(図中上方)に設けられた一対の爪部25,25とを備えている。
球面24は、玉12の転動方向に沿って湾曲していて、その内径寸法が帯部材11の厚み方向略中央部から内周面側開口縁部(図中下方)まで、徐々に玉12の直径寸法Bよりも小さくなるように形成されている。
【0014】
図2にも示すように、爪部25,25は、帯部材11の外周面に凹部26を切削形成あるいは射出成形することにより、帯部材11の幅方向に沿って対向配置されている。
凹部26は、玉12の直径寸法Bよりも小さな幅寸法を有し、第2ポケット部22の外周面側開口縁部を横断するように形成されている。そして、爪部25,25は、その幅寸法Eが玉12の直径寸法Bに対して概ね40%とされ、内側面が球面24に連続している。
従って、第2ポケット部22の外周面側開口縁部は、帯部材11の幅方向に長軸が沿うとともに、帯部材11の長手方向に短軸が沿う略楕円形状とされている。
【0015】
図1(A)および図1(B)に戻って、このような帯部材11は、長手方向両端部にそれぞれ設けられた連結部13,13を介して円環状に連結される。
連結部13は、帯部材11の長手方向端面から湾曲方向延長面に沿って延びる突出部14と、突出部14に接続されて帯部材11の幅方向に沿って延びる係合部15とを有している。これらの連結部13は、突出部14の突出寸法L1が係合部15の幅寸法L2よりも大きく設定されている。
これらのような連結部13は、帯部材11の厚み方向に沿った線を中心とする点対称形状とされ、隣接する他の帯部材11の連結部13に対して連結可能とされている。
【0016】
前述した分割型保持器10によれば、帯部材11の長手方向両端部側に設けられた第1ポケット部21の内面が内筒面であるとともに、第2ポケット部22の内面が凹状の球面であるため、帯部材11の湾曲率が玉12のピッチ円から外れても、玉12が第1ポケット部21から帯部材11の外周側あるいは内周側に若干突出することにより帯部材11の湾曲率誤差を許容し、第1ポケット部の内面も凹状の球面に形成した場合のような玉12の回転を阻害するという問題を回避できる。
【0017】
また、第2ポケット部22は、その外周面側開口縁部に一対の爪部25,25が設けられているため、爪部25,25を変形させながら玉12を圧入すれば、当該第2ポケット部22に玉12を容易に収容できる。
特に、第2ポケット部22は、爪部25,25が変形可能であるため、当該第2ポケット部22に影響を及ぼすような湾曲率誤差が帯部材11に生じた場合、爪部25,25が変形することにより玉12を帯部材11の外周面側に突出させ、これにより帯部材11の湾曲率誤差を許容できる。
【0018】
さらに、この分割型保持器10によれば、帯部材11の連結部13,13が平面略L字状であるとともに、帯部材11の厚み方向に沿った線を中心とする点対称形状であるため、複数の帯部材11を円環状に連結するにあたって、従来のような帯部材11の配向を考慮する必要性を解消でき、従来に比較して組立工程を簡略化できる。
特に、これらの連結部13,13は、出部14の突出寸法L1が係合部15の幅寸法L2よりも大きく設定されているため、転がり軸受を組み立てるにあたって、周方向への自由度が得られるとともに、分割型保持器10の周方向長さの寸法誤差を吸収できる。
【0019】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態は、転動部材として玉を例示したが、本発明は円筒ころ,円すいころを採用した転がり軸受にも適用可能であり、単列あるいは複列の転動部材にも適用可能である。
【0020】
また、第1ポケット部および第2ポケット部の数はそれぞれ任意であり、帯部材の長手方向両端部側に第1ポケット部が設けられていれば、同数である必要はない。
さらに、第2ポケット部に設けられた爪部は、帯部材の外周面側開口縁部および内周面側開口縁部のうちの一方あるいは双方に設けてもよいが、本発明に必須ではないため適宜省略してもよい。
【0021】
一方、連結部は、前述した実施形態において例示した形状に限定せず、帯部材の厚み方向に沿った線を中心とする点対称形状であれば、平面略J字状,平面略F字状等に形成しておいてもよい。
その他、前述した実施の形態において例示した転動部材,帯部材,第1ポケット部,内面,第2ポケット部,連結部等の材質,形状,寸法,形態,数,配置個所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0022】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、請求項1に記載したように、第1ポケット部の内面が内筒面あるいは矩形内壁面であるとともに、第2ポケット部の内面が凹状の球面や円弧面であるため、帯部材の湾曲率が所望値から外れても、転動部材の回転を阻害する虞れが少ない
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態を示す平面図,側面図および要部拡大断面図である。
【図2】第2ポケット部を示す斜視図である。
【図3】従来の分割型保持器を示す平面図,側面図および要部拡大断面図である。
【符号の説明】
10 分割型保持器
11 帯部材
12 玉(転動部材)
13 連結部
21 第1ポケット部
22 第2ポケット部

Claims (1)

  1. 内輪および外輪間に配置された転動部材を保持するための帯部材を複数有し、前記帯部材の各々には、前記転動部材を収容するポケット部が長手方向に沿って所定間隔で3以上設けられており、前記帯部材の各々を厚み方向に湾曲させて連結することにより略円環状に形成された転がり軸受の分割型保持器であって、
    前記ポケット部は、前記帯部材の厚み方向に垂直な面での断面形状および寸法が、前記厚み方向の位置により変わらない内面を有する第1ポケット部と、前記断面形状および寸法が、前記厚み方向の位置により、前記転動部材の断面形状および寸法に対応して変わる内面を有する第2ポケット部とを備え、
    前記帯部材の各々は、長手方向の両端部側に1または複数の前記第1ポケット部を有し、長手方向の中間部に前記第2ポケット部を有していることを特徴とする転がり軸受の分割型保持器。
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