JP6588242B2 - スラスト軸受用保持器およびスラスト軸受 - Google Patents

スラスト軸受用保持器およびスラスト軸受 Download PDF

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Description

本発明は、スラスト軸受用の保持器、および該保持器を備えたスラスト軸受に関する。特に、食品製造装置に使用されるスラスト軸受用の保持器などに関する。
食品製造装置は、食品原料や食用製品(または半製品)を混合、混練、加熱、乾燥、冷却、充填、包装などする際に用いられる装置である。食品製造装置の一例である包あん機として、例えば、搬送装置と、ノズル装置と、シャッタ装置などを備え、ノズル装置から連続的に吐出される食品材料をシャッタ装置により所定大きさや形状に分割するものが知られている。ここで、食品製造装置には、他の装置と同様に軸受などが装着されており、このような部品から古い食品残差などが流出して混入することを防止すべく、食品衛生上の清潔を保つ必要がある。
従来、食肉製品、饅頭や菓子パンなどの食品製造装置に関し、スラスト軸受などを含むノズル装置やシャッタ装置が駆動部に容易に着脱可能であり、ジェット水などによる水洗いが可能な食品製造装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の食品製造装置では、シャッタ装置の駆動ボックスに対しノズル装置を取り付ける部分に階段状の配置部を設ける必要がなく、凹凸のない表面形状に形成することができため洗浄や乾燥が容易であり、また、駆動ボックスにノズル装置と連動連結する回転歯車体を内蔵しないため、駆動ボックスの密閉性が高くなり、ジェット水などの高圧水にて洗浄が可能となり、洗浄作業の効率の図れるとされている。
特開2014−168439号公報
特許文献1の食品製造装置は、ノズル装置を着脱し水洗いする際には分解して各構成部品もジェット水によって水洗いされる。スラスト軸受もノズル装置から取り出され水洗いされる。しかし、図7に示すように、この従来のスラスト軸受11は、一対の軌道輪15、16の間にボール14が挟まれ、該ボール14を保持器12で保持する軸受であり、保持器12のボールポケット13がストレートの貫通穴であるため、ジェット水によって水洗いするとボール14が保持器12から落下するおそれがあった。また、ボール14を保持器12に組み込む場合、上記構造に起因して保持器12からボール14が外れやすいため、組み込むのに細心の注意が必要であった。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、洗浄などのために定期的な組み込み・分解が必要となるスラスト軸受用保持器において、該保持器単独でのボールの保持性に優れるとともに、その脱着も容易である保持器、および該保持器を備えたスラスト軸受の提供を目的とする。
本発明のスラスト軸受用保持器は、スラスト軸受における一対の軌道輪の間に挟まれた複数のボールを保持するスラスト軸受用保持器であって、上記保持器はリング状板部材からなり、該リング状板部材はリング周方向に複数のボールポケットを有し、上記ボールポケットは、上記ボールを脱着可能に保持する2分割以上に分割された爪部を有し、上記爪部は、上記リング状板部材における上記軌道輪との対向面のうちの少なくとも一方の面において、上記ボールポケットの開口部周囲に形成されたスリットによって設けられた部位からなることを特徴とする。
上記ボールポケットの上記軌道輪との対向面における開口部の径が、上記ボールの直径よりも小さいことを特徴とする。また、上記リング状板部材の板厚みは、上記ボールの直径の50%〜80%であることを特徴とする。
上記爪部は、上記リング状板部材における上記対向面の一方にのみ設けられ、上記スリットは、上記リング状板部材の軸方向中央部の深さまで形成されていることを特徴とする。また、上記保持器が、合成樹脂製であることを特徴とする。
本発明のスラスト軸受は、一対の軌道輪と、これら軌道輪間に挟まれた複数のボールと、該ボールを保持する保持器とからなるスラスト軸受であって、上記保持器が、上記本発明のスラスト軸受用保持器であることを特徴とする。また、上記ボールが、セラミックス製であることを特徴とする。
本発明のスラスト軸受用保持器は、リング状板部材からなり、該リング状板部材はリング周方向に複数のボールポケットを有し、このボールポケットは、ボールを脱着可能に保持する2分割以上に分割された爪部を有し、上記爪部はリング状板部材における軌道輪との対向面のうちの少なくとも一方の面において、ボールポケットの開口部周囲に形成されたスリットによって設けられた部位からなるので、ボールをボールポケットに容易に組み込むことができる。また、組み込んだ後にはボールが外れにくい構造のため、ボールをポールポケットに組み込む際に細心の注意を払う必要がない。
上記ボールポケットの軌道輪との対向面における開口部の径が、ボールの直径よりも小さいので、ジェット水などによる水洗いを行なってもボールポケットからボールが外れることがなく、ボールを紛失しない。
上記リング状板部材の板厚みは、ボールの直径の50%〜80%であるので、保持器が軌道輪に接触してトルクアップすることがない。
上記爪部は、リング状板部材における対向面の一方にのみ設けられるので、ボールのボールポケットへの組み込み方向が同じになり組み込み性が優れる。また、上記爪部を有する反対側の対向面には爪部やスリットを有さないので、保持器の製造が容易となる。さらに、上記スリットは、リング状板部材の軸方向中央部の深さまで形成されているので、爪部の弾性力を最適にでき、また、爪部の強度を十分に確保できる。
上記保持器が合成樹脂製であるので、製造が容易である。また、水洗浄による錆の心配がない。
本発明のスラスト軸受は、一対の軌道輪と、これら軌道輪間に挟まれた複数のボールと、該ボールを保持する保持器とからなり、保持器として本発明のスラスト軸受用保持器を用いるので、ジェット水などによる水洗いを行なってもボールが外れることがない。特に、ボールがセラミックス製であるので、食品製造装置として衛生的に使用できる。
本発明のスラスト軸受用保持器の一例(3爪)を示す斜視図および拡大図である。 図1の保持器の平面図、底面図、および切断部端面図である。 保持器とボールとを組み合わせた図である。 本発明のスラスト軸受の一例を示す一部断面図である。 本発明のスラスト軸受用保持器の他の例(2爪)を示す斜視図および拡大図である。 本発明のスラスト軸受用保持器の他の例(4爪)を示す斜視図および拡大図である。 従来のスラスト軸受を示す一部断面図である。
本発明のスラスト軸受用保持器の一実施例として、3分割された爪部を有するスラスト軸受用保持器を図1および図2により説明する。図1(a)はこのスラスト軸受用保持器の斜視図であり、図1(b)はA−A’部分拡大図である。また、図2(a)はこのスラスト軸受用保持器の平面図であり、図2(b)は底面図であり、図2(c)はB−B’線切断部の拡大端面図である。スラスト軸受用保持器1は、スラスト軸受における一対の軌道輪の間に挟まれた複数のボールをボールポケット3で保持するスラスト軸受用(スラスト玉軸受用)の保持器である。図1に示すように、スラスト軸受用保持器1は、リング状板部材2からなる。リング状板部材2は、リング状(円環状)の平板部材であり、軌道輪に対向する対向面2aと2bを貫通するようにボールポケット3が形成されている。対向面2aおよび2bは平面である。スラスト軸受におけるボールは、このボールポケット3により、周方向に等間隔ずつ離間して保持される。この形態では、ボールポケット3は、ボールを脱着可能に保持する3分割された爪部3a、3b、3cをリング状板部材2と一体に有している。爪部3a、3b、3cは、リング状板部材2における軌道輪との対向面2aにおいて、ボールポケット3の開口部3dの周囲に形成されたスリット4によって設けられた部位(薄肉部)からなる。爪部3a、3b、3cは、開口部3dを形成する略円筒薄肉部において、これを円周方向で等間隔に3分割となるようにスリット4と連続する3つの分割隙間3fを設けることで形成している。
爪部およびスリットは、リング状板部材における軌道輪との対向面のうちの少なくとも一方の面に形成すればよい。また、ボールポケット毎に爪部の形成面を変えてもよい。本発明においては、特に図2(a)〜図2(c)に示すように、爪部をリング状板部材2における対向面の一方(対向面2a)にのみ形成し、反対側面である対向面2bには形成しないことが好ましい。爪部を一方の対向面(側面)に形成することで、ボールのボールポケット3への組み込み方向が全て同じとなり、組み込み性に優れる。また、他方の対向面(側面)には爪部を形成しないので、両面に形成する場合と比較して保持器の製造が容易である。
図2(c)に示すように、ボールポケット3は、リング状板部材2の対向面2a側に開口部3dを有し、対向面2b側に開口部3eを有し、これら開口部を介して対向面2aと2bを貫通するように形成されている。ボールポケット3の内面形状(爪部内面を含む)は、ボール5に沿った一部球形状としている。開口部3dと開口部3eの開口径Dは、ボール5の直径dよりも小さいことが好ましい。これにより、ジェット水などによる水洗いを行なってもボールポケット3からボール5が外れることを防止できる。なお、開口径Dの径の下限については、後述する弾性変形によるボール組み込みが可能な径であればよい。
スリット4は、リング状板部材2(保持器)の軸方向中央部の深さまで形成されていることが好ましい。スリットの深さを保持器軸方向中央部までとすることで、爪部の弾性力を最適にできる。また、爪部の強度を十分に確保できる。また、スリットの大きさ(周方向・半径方向の範囲)は、必要な保持器強度を維持できる範囲で適宜決定できる。
リング状板部材2の板厚みTは、ボール5の直径dの50%〜80%であることが好ましい。より好ましくは60%〜70%である。ここで、本発明のスラスト軸受用保持器における爪部は、ボールポケットの開口部周囲に形成されたスリットによって設けられた薄肉部からなるので、該爪部がスラスト軸受用保持器の側面(各対向面)から突出することはなく、リング状板部材2の板厚みTが、スラスト軸受用保持器の幅寸法そのものとなる。幅寸法を上記範囲とすることで、スラスト軸受用保持器が軌道輪に接触してトルク増加することを防止できる。
ボール5の組み込みは、スラスト軸受用保持器の爪部3a、3b、3cにボール5をあてがい、保持器側にボール5を押し込むように挿入して行なう(図1参照)。爪部3a、3b、3cは、円周方向に相互に分割隙間3fを有するとともに、爪部3aの外側にスリット4が形成されているので、各爪部から構成される開口部3dの開口径よりも大きい直径を有するボール5が、各爪部の周縁をスリット4側にめくり上げるように、かつ、分割隙間3fを拡げるようにボールポケット3の内面を弾性変形により拡径しながら押し込まれる(図1、図2参照)。また、各爪部のない対向面2b側では、ボールポケット3の内面を拡径できず、ボール5が対向面2b側のボールポケット3の内面と接触した時点でそれ以上進めなくなり、位置決めされる(図2参照)。これにより、組み込まれたボール5は、両対向面2aおよび2bから一部突出した状態で、ボールポケット3に保持される。この状態から、ボール5を各爪部のない対向面2b側から押すことで、対向面2a側の各爪部を拡径しながら押し出され、ボール5をスラスト軸受用保持器から脱離できる。これらの脱着作業は、手作業で可能である。
図3に示すように、本発明のスラスト軸受用保持器1は、軌道輪によらず保持器単体でボールポケット3にボール5を保持することができる。また、ボールと保持器との脱着も容易である。このため、組み付け時や清掃分解時において、取扱い性に優れる。
本発明のスラスト軸受の一実施例として、図1〜図3に示すスラスト軸受用保持器を用いた場合の例を図4により説明する。図4は、このスラスト軸受の一部断面図である。図4に示すように、スラスト軸受8は、一対の軌道輪6、7と、これら軌道輪間に挟まれた複数のボール5と、各ボール5をボールポケット3で保持する保持器1とからなる。この保持器1が、上述のスラスト軸受用保持器である。ボール5は、一対の軌道輪6、7における軌道溝を転動する。保持器1単独でもボール5を保持できることから、該軸受についてジェット水などによる水洗いを行なってもボール5がボールポケット3から外れず、容易に洗浄でき、食品衛生上の清潔を保つことができる。また、ボール5として、セラミックス製ボールを採用することで、腐食を防止でき、食品製造装置として衛生的に使用できる。
本発明のスラスト軸受用保持器の他の実施例として、2分割された爪部を有するスラスト軸受用保持器を図5により、4分割された爪部を有するスラスト軸受用保持器を図6により、それぞれ説明する。図5(a)はスラスト軸受用保持器(2爪)の斜視図であり、図5(b)はX−X’部分拡大図であり、図6(a)はスラスト軸受用保持器(4爪)の斜視図であり、図6(b)はY−Y’部分拡大図である。図5に示す形態のスラスト軸受用保持器1は、ボールポケット3以外の構成は図1に示す保持器と同様である。この形態では、ボールポケット3は、ボールを脱着可能に保持する2分割された爪部3a、3bをリング状板部材2と一体に有している。爪部3a、3bは、リング状板部材2における軌道輪との対向面2aにおいて、ボールポケット3の開口部3dの周囲に形成されたスリット4によって設けられた部位(薄肉部)からなる。爪部3a、3bは、開口部3dを形成する略円筒薄肉部において、これを円周方向で等間隔に2分割となるようにスリット4と連続する2つの分割隙間3fを設けることで形成している。
図6に示す形態のスラスト軸受用保持器1は、ボールポケット3以外の構成は図1に示す保持器と同様である。この形態では、ボールポケット3は、ボールを脱着可能に保持する4分割された爪部3a、3b、3c、3gをリング状板部材2と一体に有している。爪部3a、3b、3c、3gは、リング状板部材2における軌道輪との対向面2aにおいて、ボールポケット3の開口部3dの周囲に形成されたスリット4によって設けられた部位(薄肉部)からなる。爪部3a、3b、3c、3gは、開口部3dを形成する略円筒薄肉部において、これを円周方向で等間隔に4分割となるようにスリット4と連続する4つの分割隙間3fを設けることで形成している。
以上、図1、図5、図6により、爪部が2〜4分割の場合を説明したが、本発明ではこれに限定されず、2分割以上であればよい。構造が複雑化して成形性が阻害されることを避けるため、8分割以内が好ましい。これらの中でも、ボール保持性と脱着性とのバランスがよく、形状も簡易であることから、図1に示す3分割とすることが最も好ましい。
スラスト軸受用保持器を構成するリング状板部材の材質は特に限定されないが、製造が容易であり、水洗浄による錆の心配もないため、合成樹脂製とすることが好ましい。合成樹脂としては、例えば、ポリアセタール(POM)樹脂、ナイロン樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、分子鎖中に芳香族環を有する半芳香族ナイロンなど)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂やテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂などの射出成形可能なフッ素樹脂、射出成形可能なポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド樹脂などを挙げることができる。これらの各樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。あるいは、上記以外の潤滑特性の低い合成樹脂に上記の合成樹脂を配合したポリマーアロイであってもよい。また、これらの合成樹脂にガラス繊維、炭素繊維、各種鉱物性繊維(ウィスカ)を配合して強度を高めてもよい。さらに、固体潤滑剤などと併用してもよい。
本発明のスラスト軸受は、保持器単独でのボールの保持性に優れるとともに、その脱着も容易であるので、洗浄などのために定期的な組み込み・分解が必要となる用途、特に食品製造機械における軸受として好適に利用できる。
1 スラスト軸受用保持器
2 リング状板部材
3 ボールポケット
4 スリット
5 ボール
6、7 軌道輪
8 スラスト軸受

Claims (6)

  1. 食品製造装置に使用されるスラスト軸受における一対の軌道輪の間に挟まれた複数のボールを保持するスラスト軸受用保持器であって、
    前記保持器は合成樹脂製のリング状板部材からなり、該リング状板部材はリング周方向に複数のボールポケットを有し、前記一対の軌道輪に対向する2つの対向面は突起のない平面であり、
    前記ボールポケットは、前記ボールを脱着可能に保持する2分割以上に分割された爪部を有し、
    前記爪部は、前記2つの対向面の一方の面にのみ形成され、その一方の面から突出しておらず、前記ボールポケットの開口部の全周囲に形成され前記リング状板部材の外周面に連通しないスリットによって設けられた部位からなり、
    前記保持器は水洗い可能であることを特徴とするスラスト軸受用保持器。
  2. 前記ボールポケットの前記2つの対向面における開口部の径が、前記ボールの直径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のスラスト軸受用保持器。
  3. 前記スリットは前記リング状板部材の軸方向中央部の深さまで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスラスト軸受用保持器。
  4. 前記リング状板部材の板厚みは、前記ボールの直径の50%〜80%であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載のスラスト軸受用保持器。
  5. 一対の軌道輪と、これら軌道輪間に挟まれた複数のボールと、該ボールを保持する保持器とからなるスラスト軸受であって、
    前記保持器が、請求項1から請求項のいずれか1項記載のスラスト軸受用保持器であることを特徴とするスラスト軸受。
  6. 前記ボールが、セラミックス製であることを特徴とする請求項記載のスラスト軸受。
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