JP3951753B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動パワーステアリング装置に関し、特にそのモータ電流検出手段の故障を検出できる電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクと車速を検出し、その検出信号に基づいてモータを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものである。このような電動式パワーステアリング装置の制御は電子制御回路で実行されるが、その制御の概要は、トルクセンサで検出された操舵トルクと車速センサで検出された車速に基づいてモータに供給する電流の大きさを演算し、その演算結果に基づいてモータに供給する電流を制御する。
【0003】
即ち、電子制御回路は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された車速が零あるいは低速の場合は大きな操舵補助力を供給し、検出された車速が速い場合は小さな操舵補助力を供給するように操向ハンドルの操舵力と車速に応じてモータに供給する電流を制御することで、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができるものである。
【0004】
この種の装置では、実際にモータに流れる電流が、操舵トルクや車速に基づいて演算されたモータ電流の制御目標値に一致するようにフィードバック制御を行なっており、このためにモータに流れる電流を検出するモータ電流検出手段を備えている。
【0005】
前記したモータ電流検出手段が故障した場合は正確なモータ電流を測定することができず、この結果、必要以上の電流がモータに流れて過大な操舵補助力を供給したり、或いはモータに必要なだけの電流が流れず、十分な操舵補助力を供給できないという不都合が発生することになる。
【0006】
さらに、車両の制御機構の動作確認はエンジン始動時に行なわれるのが普通であり、モータ電流検出手段の動作確認もこの時点で行われる。モータ電流検出手段の動作確認のためにはモータに電流を流すが、このときモータが回転してしまうと、モータ軸とステアリング機構が結合している状態では操向ハンドルが回転してしまい、不測の事故が発生するおそれがある。
【0007】
この課題への対応として本出願人は、モータの電気的時定数よりも大きく、且つモータの機械的時定数よりも小さい時間だけ前記モータに電圧を印加したときに予測される電流値と、モータ電流検出手段により検出されたモータ電流値に基づいて、モータ電流検出手段の故障を判定する故障判定手段を提案した(特開平8−91239号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したモータ電流検出手段の故障判定手段では、イグニッションキーをONとしたエンジン始動の直後の短時間だけ、即ち、モータの電気的時定数よりも大きく、且つモータの機械的時定数よりも小さい時間だけモータに電圧を印加して、故障を判定している。これは、エンジン始動直後にモータが回転すると、操向ハンドルが突然回転してしまい不測の事故が発生することを防ぐために必要なことである。
【0009】
しかしながら、モータが新しい場合は特に支障はないが、ある程度の期間使用されるとモータの整流子とブラシとの接触面に電気絶縁特性を持つ酸化被膜が形成され、時間経過と共に酸化被膜が厚くなり電気抵抗が高まる傾向があるから、より高い電圧をモータに印加しないとモータ電流が流れなくなる。
【0010】
図5はモータの整流子とブラシとの接触面の酸化被膜の影響を説明する図である。図5の(a)において、線Aはモータが新品で接触面に酸化被膜が無い正常な場合を示しており、印加電圧とモータ電流とは比例関係にあり、印加電圧が高くなるとモータ電流も比例して増加している。線Bは接触面に酸化被膜が生じた場合を示しており、印加電圧が高くなってもモータ電流は殆ど増加せず、印加電圧がある値Sに達すると酸化被膜が絶縁破壊されて電気抵抗が急激に低下し、正常な場合の印加電圧に対応するモータ電流が流れるようになることがわかる。
【0011】
図5の(b)は、時間経過と共に酸化被膜が厚くなった場合に、酸化被膜が絶縁破壊される印加電圧がS1 、S2 、S3 と次第に高まる様子を示している。
【0012】
このように、モータ電流検出手段の故障判定のために短時間だけ低い電圧をモータに印加したのでは、整流子とブラシとの接触面の酸化被膜のためにモータ電流が検出されないか、或いは僅かのモータ電流しか検出されず、モータ電流検出手段が故障していると誤った判定をするおそれがある。この発明は、上記課題を解決することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルク信号に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御する制御手段を備えた電動パワーステアリング装置において、前記制御手段は、モータ電流の指令値を演算する電流指令値演算手段と、モータ電流を検出するモータ電流検出手段と、前記電流指令値とモータ電流検出値との差分を比例積分器を介して積分した電流制御値を出力する電流偏差値演算比例積分手段と、モータ電流検出値が予め設定された限界値の範囲外であるときモータ電流手段の故障を判定する故障判定手段とを備え、前記制御手段は、モータの電気的時定数よりも大きく、且つモータの機械的時定数よりも小さい時間だけモータ電流指令値を設定すると共に、モータの整流子とブラシとの接触面の酸化被膜の絶縁が破壊される電圧まで高められた前記電流偏差値演算比例積分手段から出力された電流制御値に基づいて設定されたモータ印加電圧値によりモータを駆動し、検出されたモータ電流に基づいて故障判定手段によるモータ電流検出手段の故障の判定を実行させることを特徴とする。
【0015】
また、前記故障判定手段は、前記モータ電流検出手段による複数回のモータ電流のサンプリングによる検出結果に基づいてモータ電流検出手段の故障を判定するものとする。
【0016】
さらに、前記故障判定手段は、前記モータ電流検出手段による複数回のモータ電流のサンプリングによる検出結果の中に、予め設定されたモータ電流限界値の範囲内のものと範囲外のものが含まれているときは、直ちにモータ電流検出手段の故障と判定せず、再度複数回のモータ電流のサンプリングによる検出を行なってその検出結果の中にモータ電流限界値の範囲外のものが含まれるとき、或いは時系列的に次第に高められたモータ印加電圧値に対応するモータ電流値の検出結果が予め設定されたモータ電流限界値の範囲外のものであるとき、モータ電流検出手段の故障と判定するようにするとよい。
【0017】
また、前記故障判定手段は、前記モータ電流検出手段による複数回のモータ電流のサンプリングによる検出結果の中に、予め設定されたモータ電流限界値の範囲外の値が連続して指定回数検出されたときモータ電流検出手段の故障と判定するようにしてもよい。
【0018】
そして、前記モータ印加電圧値は、モータの機械的時定数に対応する電圧値を上限とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明を実施するに適した電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバーサルジョイント5a、5b、ピニオンラック機構7を経て操向車輪のタイロッド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモータ10がクラッチ9、減速ギア4を介して軸2に結合している。
【0020】
パワーステアリング装置を制御する電子制御回路13は、バッテリ14からイグニッションキー11を経て電力が供給される。電子制御回路13は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいて電流指令値の演算を行い、演算された電流指令値に基づいてモータ10に供給する電流iを制御する。
【0021】
クラッチ9は電子制御回路13により制御される。クラッチ9は通常の動作状態では結合しており、電子制御回路13によりパワーステアリング装置の故障と判断された時、及び電源がOFFとなっている時に切離される。
【0022】
図2は、制御手段を構成する電子制御回路13のブロック図である。この実施の形態では電子制御回路13は主としてCPUから構成されるが、ここではそのCPU内部においてプログラムで実行される機能を示している。例えば、位相補償器21は独立したハードウエアとしての位相補償器21を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示す。なお、電子制御回路13をCPUで構成せず、これらの機能要素をそれぞれ独立したハードウエア(電子回路)で構成できることは言うまでもない。
【0023】
以下、電子制御回路13の機能と動作を説明する。トルクセンサ3から入力された操舵トルク信号は、位相補償器21で操舵系の安定を高めるために位相補償され、電流指令値演算手段である電流指令値演算部22に入力される。また、車速センサ12で検出された車速も電流指令値演算部22に入力される。電流指令値演算部22は、入力されたトルク信号と車速信号に基づいて所定の演算式によりモータ10に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iを演算する。
【0024】
電流偏差値演算比例積分手段を構成する電流偏差値演算比例積分部23は、電流指令値演算部22から出力された電流指令値Iとモータ電流検出手段を構成するモータ電流検出器25で検出された実際のモータ電流値iとの差の値Δiを演算し、その差Δiに基づく比例・積分動作(PI動作)を実行して、モータを制御する電流制御値Eを出力する演算要素である。
【0025】
電流偏差値演算比例積分部23の動作を説明する。正常にモータ電流値iが検出されているときは、差の値Δiは略零になるから電流偏差値演算比例積分部23から出力される電流制御値Eは電流指令値Iに略等しくなり、差の値Δiが零になるようにフィードバック制御され、モータの駆動制御が行われる。
【0026】
正常にモータ電流値iが検出されないときは、電流指令値Iと検出された実際のモータ電流値iと差の値Δiは大きい。従って、電流指令値Iと検出されたモータ電流値iとの差の値Δiに基づく比例・積分動作(PI動作)の結果、電流制御値Eは次第に増大し、モータ端子間に印加されるモータ印加電圧Vは次第に高くなる。
【0027】
また、モータの整流子とブラシとの接触面が電気絶縁性の酸化被膜で覆われているときは、モータに電圧が印加された当初はモータ電流値iは僅かであるが、僅かに検出されたモータ電流値iが電流偏差値演算比例積分部23にフィードバックされ、差の値Δiが積分されていくから電流制御値Eは次第に増大し、モータ印加電圧Vは次第に高くなる。
【0028】
モータ印加電圧Vが次第に高くなり、ある値を越えると、モータの整流子とブラシとの接触面の酸化被膜が絶縁破壊される。この結果、増大された前記電流制御値Eに基づいた高いモータ印加電圧Vに対応して、大きなモータ電流が急激に流れる。しかし、この後はモータ電流値iが正常に検出されるようになるから、電流指令値Iと検出されたモータ電流値i差の値Δiが零になるようにフィードバック制御されてモータの駆動制御が行われる。
【0029】
モータ電流認識部31は、モータ電流検出器25で検出されたモータ電流値iが予め設定されているモータ電流限界値の範囲の内か外かを判定し、範囲外のときはモータ電流検出器25に障害が発生したことを示す障害信号を出力する。また、範囲内であるときは無障害信号を出力する。
【0030】
故障判定手段を構成する故障判定部33は、モータ電流認識部31から出力された複数の障害信号と、イグニッションキーのONを検出するIGキーON検出器32から出力された信号、及びバッテリ電圧が正常か否かを判定するバッテリ電圧検出器35から出力された信号に基づいてモータ電流検出器25の故障を判定し、故障判定信号を出力する。
【0031】
フェールセーフ処理器34は、故障判定部33から出力された故障判定信号に基づいてリレー回路36を作動させ、モータへの給電を停止する。上記した故障判定とフェールセーフ処理は後で詳細に説明する。
【0032】
図3はモータ駆動回路24の構成の一例を示す回路図である。モータ駆動回路24は、入力された電流制御値EをPWM信号と電流方向信号とに分離変換する変換部41、FET1 〜FET4 、及びそれ等のゲートを開閉駆動するFETゲート駆動回路42等からなる。なお、昇圧電源43はFET1 、FET2 のハイサイド側を駆動する電源である。
【0033】
PWM信号(パルス幅変調信号)は、Hブリツジ接続されたFET(電界効果トランジスタ)スイツチング素子FET1 〜FET2 のゲートを駆動する信号であって、電流制御値Eの絶対値によりPWM信号のデユーテイ比(FETのゲートをON/OFFする時間比)が決定される。
【0034】
電流方向信号は、モータに供給する電流の方向を指示する信号で、電流制御値Eの符号(正負)により決定される信号である。
【0035】
FET1 とFET2 は前記したPWM信号のデユーテイ比に基づいてゲートがON/OFFされるスイツチング素子で、モータに流れる電流の大きさを制御するためのスイツチング素子である。また、FET3 とFET4 は前記した電流方向信号に基づいてゲートがON或いはOFFされる(一方がONの時、他方はOFFとなる)スイツチング素子で、モータに流れる電流の方向、即ちモータの回転方向を切り換えるスイツチング素子である。
【0036】
FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モータ10、FET3 、抵抗R1 を経て流れ、モータ10に正方向の電流が流れる。また、FET4 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モータ10、FET4 、抵抗R2 を経て流れ、モータ10に負方向の電流が流れる。
【0037】
モータ電流検出回路25は、抵抗R1 の両端における電圧降下に基づいて正方向電流の大きさを検出し、また、抵抗R2 の両端における電圧降下に基づいて負方向電流の大きさを検出する。検出された実際のモータ電流値iは電流偏差値演算比例積分部23にフィードバックして入力されるほか、モータ電流認識部31にも入力される(図2参照)。
【0038】
以上説明した電子制御回路は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された操舵トルクが大きく、また検出された車速が零あるいは低速の場合は電流指令値Iを大きく設定し、検出された操舵トルクが小さく、また検出された車速が速い場合は電流指令値Iを小さく設定するから、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができる。
【0039】
次に、モータ電流検出器25の故障の判定、及び検出結果に基づくフェールセーフ処理について説明する。
【0040】
まず、その原理を説明する。イグニッションキー11をONとし、モータに電圧Vを印加したとき、モータ端子間電圧Vとモータに流れる電流iとの間には、以下の式(1)の関係がある。
【0041】
V=L・di/dt+Ri+kT ω・・・・・・・・・(1)
ここで、kT はモータの逆起電力定数、ωはモータの角速度、
Lはモータのインダクタンス、Rはモータの端子間抵抗である。
【0042】
モータの機械的時定数Tm はモータの慣性モーメントJをモータの粘性抵抗Bで割った値で、Tm =J/Bで表され、また、モータの電気的時定数Te はモータのインダクタンスLをモータの抵抗Rで割った値であり、Te =L/Rで表される。
【0043】
モータの機械的時定数Tm よりも十分に小さく、モータの電気的時定数Te よりも十分に大きい時間Tを設定し(Te <<T<<Tm )、初期状態から時間Tだけモータに電圧Vを印加した場合の、モータ電流iとモータの角速度ωの過渡特性、及びモータ電流をサンプリングする時期を図4により説明する。
【0044】
即ち、図4(a)はモータ印加電圧Vと時間Tの関係を示すもので、サンプリングを開始する前の時間T0 まではモータに一定の電圧V0 が印加され、サンプリングが開始されるとモータ印加電圧Vは時間の経過とともに次第に高くなることを示している。
【0045】
また、図4(b)はモータ電流と時間の関係を示すもので、正常な状態、即ちモータの整流子とブラシとの接触面が電気絶縁性の酸化被膜で覆われていない場合には、モータに電圧Vが印加されるとモータ電流は早い時期に立上がり(モータの電気的時定数Te <<電圧Vの印加時間T)、定常電流iが流れることを示している。
【0046】
図4(c)はモータの角速度ωと時間の関係を示すもので、モータに電圧Vが印加される時間Tの範囲では、モータの機械的時定数Tm が大きく、モータの角速度ωは殆ど零であること、即ち回転しないことを示している。更に、前記モータ電流の予測値is をステアリング機構の静止摩擦トルクに対応した値以下になるようにモータ印加電圧を設定すれば、モータが回転しない条件を完全に達成することができる。
【0047】
また、図4(d)は実際にモータに流れるモータ電流iを検出するサンプリング時期を示すもので、モータに電圧Vを印加後、T0 時間後からサンプリングを開始することを示している。
【0048】
このように、モータ電流検出器25の故障の判定は、イグニッションキー11をONにした直後に、複数回のモータ電流値iのサンプリングを行なって実行される。
【0049】
以下、図2によって、この発明のモータ電流検出器25の故障の判定、及び検出結果に基づくフェールセーフ処理の構成と動作について説明する。
【0050】
モータ電流検出器25によるモータ電流値iの検出ができない原因には、モータ電流検出器25は故障していないにも拘らず、モータの整流子とブラシとの接触面が電気絶縁性の酸化被膜で覆われているためモータ電流が流れない或いは僅かの電流しか流れない場合と、モータ電流検出器25そのものが故障している場合とがある。
【0051】
そこで、この発明では、モータの整流子とブラシとの接触面の酸化被膜を絶縁破壊してからモータ電流値iを検出するようにしたものであり、これによりモータ電流検出器25そのものの故障を正確に検出することができる。
【0052】
イグニッションキー11をONにすると、図示しないタイマTMにより予め設定された所定時間Tだけモータに電圧Vが印加される。イグニッションキー11のONはI.G.キーON検出器32により検出され、その検出信号と、バッテリ電圧検出器35により検出されたバッテリ電圧VBAが故障検出部33に入力される。
【0053】
モータ電流検出器25の故障判定の際は、操舵トルクは発生しておらず車速も零であるから、モータを駆動して補助トルクを発生させる状態にない。このため故障判定の際には、モータ10に電圧Vが印加されるよう、電流指令値演算部22から予め定めた故障判定用の電流指令値Iを出力させるものとする。
【0054】
一方、図示しないタイマTMにより予め設定された所定時間T0 (T0 <T)だけ経過した時点において、モータ電流値iのサンプリングが行われる。サンプリングはタイマTMにより予め設定された所定時間Ts だけ実行される。
【0055】
先にも説明したとおり、電流偏差値演算比例積分部23では、電流指令値Iと検出されたモータ電流値iとの差の値Δiが演算され、その差Δiに基づく比例・積分動作(PI動作)が実行され、モータを制御する電流制御値Eが出力される。モータの整流子とブラシとの接触面が酸化被膜で覆われているときは、差の値Δiは大きく電流指令値Iは増大し、電流制御値Eも次第に増大する。このため、モータ印加電圧Vは次第に高くなるから、モータ印加電圧Vがある値を越えると酸化被膜が絶縁破壊されて正常にモータに電流が流れ、モータ電流値iが検出されるようになる。
【0056】
電流偏差値演算比例積分部23で実行される上記の処理は、接触面が酸化被膜で覆われていても覆われていなくても常に実行されるから、モータ電流検出器25によるモータ電流値iの検出は、常に上記した接触面の酸化被膜の影響が排除された状態でモータ電流値iが検出される。
【0057】
以上の処理においては、モータ印加電圧Vは次第に高くなって酸化被膜が絶縁破壊された瞬間に検出されたモータ電流値iは、著しく大きな電流値が検出されるが、次のモータ電流のサンプル検出時には正常にモータ電流値iが検出されるから、複数回のモータ電流のサンプル検出を行うことで、正常なモータ電流値を検出することができる。即ち、1回のモータ電流のサンプル検出でモータ電流限界値の範囲外の電流値が検出されたとしても、それで直ちにモータ電流検出器25が故障であると判断すると誤検出することがある。
【0058】
そして、複数回のモータ電流のサンプル検出によっても、予め設定されたモータ電流限界値の範囲外のモータ電流値が検出されたときは、接触面の酸化被膜の影響はないのであるからモータ電流検出器25が故障であると判断することができる。この複数回のモータ電流のサンプル検出において、予め設定されたモータ電流限界値の範囲外の値が連続して予め指定された回数だけ検出されたとき、モータ電流検出器25が故障であると判断するようにしてもよい。
【0059】
また、前記したとおり、モータ印加電圧Vは時系列的に次第に高まるから、時系列的に次第に高まるモータ印加電圧Vに対応するモータ電流検出値が予め設定されたモータ電流限界値の範囲外の値のとき、モータ電流検出器25が故障であると判断するようにしてもよい。
【0060】
モータ電流認識部31では、モータ電流検出器25で検出されたモータ電流値iが予め設定されているモータ電流限界値の範囲外であるとき、モータ電流検出器25に障害が発生したことを示す障害信号を出力する。モータ電流限界値の範囲内の時は無障害信号を出力する。複数回のモータ電流値iのサンプリングが行なわれるから、複数個の障害信号或いは無障害信号が出力される。
【0061】
故障判定部33は、モータ電流認識部31から出力された複数個の障害信号或いは無障害信号と、IGキーON検出器32から出力された信号、及びバッテリ電圧検出器35から出力された信号に基づき、検出されたこれ等の信号がイグニッションキー11をONにした直後の動作確認の時期での複数回のモータ電流値iのサンプリングで検出された信号であることを確認する。
【0062】
これと共に、サンプリングにおいて全ての検出結果から、或いは時系列的に無障害信号が検出された後の検出結果からモータ電流限界値の範囲外の障害信号が検出された場合には、モータ電流検出手段の故障と判定して故障判定信号をフェール処理器34に出力する。
【0063】
フェール処理器34は出力された故障判定信号に基づいてリレー回路36を作動させて接点36aを開き、モータ10への給電を断ち、電動パワーステアリング装置を不作動とする。
【0064】
なお、本願特許請求の範囲の請求項5において、モータ印加電圧値は、モータの機械的時定数に対応する電圧値を上限とすることを規定しているが、これはモータ印加電圧が高くなるとモータが回転を開始するおそれがあるから、モータ印加電圧値をモータの機械的時定数に対応する電圧値を上限値として、モータが回転しない範囲に留めているのである。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の電動パワーステアリング装置は、イグニッションキーをONにした直後にモータ電流検出手段の故障を調べるものであり、モータの機械的時定数Tm よりも十分に小さく、モータの電気的時定数Te よりも十分に大きい時間T(Te <<T<<Tm )だけモータ電流指令値を設定し、電流偏差値演算比例積分部において、電流指令値と検出されたモータ電流値との差を演算し、その差Δiに基づく比例・積分動作(PI動作)を実行してモータを制御する電流制御値Eを出力する。
【0066】
電流制御値Eはモータ電流が正しく検出されないときは、前記した積分動作により電流制御値Eが時間の経過と共に高まり、モータ印加電圧が高まる。この結果、モータの整流子とブラシとの接触面が酸化被膜で覆われてモータ電流が正確に検出できない場合があっても、モータに高い電圧が印加されるので接触面の酸化被膜が絶縁破壊され、モータ電流が正常に流れる状態が作り出される。
【0067】
これにより、故障検出に際しては常にモータの整流子とブラシとの酸化被膜の影響が排除されるから、検出されたモータ電流値が予め設定されたモータ電流限界値の範囲外の場合にはモータ電流検出手段の故障と判断することができる。
【0068】
さらに、イグニッションキーをONにした直後、モータが実質的に回転しない状態においてモータ電流検出手段の故障検出を行うことができるから、故障検出の際に、操向ハンドルが回転してしまう危険性もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図。
【図2】この発明の実施例の電子制御回路のブロツク図。
【図3】モータ駆動回路の構成の一例を示すブロツク図。
【図4】モータ電流iとモータの角速度ωの過渡特性、及びモータ電流iのサンプリング時期を説明する図。
【図5】モータの整流子とブラシとの接触面の酸化被膜の影響を説明する図。
【符号の説明】
3 トルクセンサ
10 モータ
11 イグニッションキー
12 車速センサ
13 電子制御回路
21 位相補償器
22 電流指令値演算部
23 電流偏差値演算比例積分部
24 モータ駆動回路
25 モータ電流検出器
31 モータ電流認識部
32 I.G.キーON検出器
33 故障判定部
34 フェールセーフ処理器
35 バッテリ電圧検出器
41 変換部
42 FETゲート駆動回路
43 昇圧電源

Claims (5)

  1. 少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルク信号に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御する制御手段を備えた電動パワーステアリング装置において、前記制御手段は、
    モータ電流の指令値を演算する電流指令値演算手段と、
    モータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
    前記電流指令値とモータ電流検出値との差分を比例積分器を介して積分した電流制御値を出力する電流偏差値演算比例積分手段と、
    モータ電流検出値が予め設定された限界値の範囲外であるときモータ電流手段の故障を判定する故障判定手段とを備え、
    前記制御手段は、モータの電気的時定数よりも大きく、且つモータの機械的時定数よりも小さい時間だけモータ電流指令値を設定すると共に、モータの整流子とブラシとの接触面の酸化被膜の絶縁が破壊される電圧まで高められた前記電流偏差値演算比例積分手段から出力された電流制御値に基づいて設定されたモータ印加電圧値によりモータを駆動し、検出されたモータ電流に基づいて故障判定手段によるモータ電流検出手段の故障の判定を実行させること
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記故障判定手段は、前記モータ電流検出手段による複数回のモータ電流のサンプリングによる検出結果に基づいてモータ電流検出手段の故障を判定すること
    を特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記故障判定手段は、前記モータ電流検出手段による複数回のモータ電流のサンプリングによる検出結果の中に、予め設定されたモータ電流限界値の範囲内のものと範囲外のものが含まれているときは、直ちにモータ電流検出手段の故障と判定せず、再度複数回のモータ電流のサンプリングによる検出を行なってその検出結果の中にモータ電流限界値の範囲外のものが含まれるとき、或いは時系列的に次第に高められたモータ印加電圧値に対応するモータ電流値の検出結果が予め設定されたモータ電流限界値の範囲外のものであるとき、モータ電流検出手段の故障と判定すること
    を特徴とする請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記故障判定手段は、前記モータ電流検出手段による複数回のモータ電流のサンプリングによる検出結果の中に、予め設定されたモータ電流限界値の範囲外の値が連続して指定回数検出されたときモータ電流検出手段の故障と判定すること
    を特徴とする請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記モータ印加電圧値は、モータの機械的時定数に対応する電圧値を上限とすることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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