JP3641921B2 - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や車両の操舵系にモータによる操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、特にモータ駆動系の地絡故障を検出してモータ駆動を停止させると共に、電源とモータ駆動回路との間に接続されたフェールリレーをOFFさせるようにした電動パワーステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や車両のステアリング装置をモータの回転力で補助負荷付勢する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に補助負荷付勢するようになっている。一般的な電動パワーステアリング装置の構成を図6に示して説明する。操向ハンドル1の軸2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b,ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に結合されている。軸2には、操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、操向ハンドル1の操舵力を補助するモータ20がクラッチ21、減速ギア3を介して軸2に結合されている。パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット30には、バッテリ14からイグニションキー11を経て電力が供給され、コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTと車速センサ12で検出された車速Vとに基いてアシスト指令の操舵補助指令値Iの演算を行ない、演算された操舵補助指令値Iに基いてモータ20に供給する電流を制御する。クラッチ21はコントロールユニット30でON/OFF制御され、通常の動作状態ではON(結合)されている。そして、コントロールユニット30によりパワーステアリング装置が故障と判断された時、及びイグニションキー11によりバッテリ14の電源がOFFとなっている時に、クラッチ21はOFF(切離)される。
【0003】
コントロールユニット30は主としてCPUで構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図7のようになる。例えば位相補償器31は独立したハードウェアとしての位相補償器を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示している。尚、コントロールユニット30をCPUで構成せず、各機能要素を独立のハードウェアで構成することも可能である。
【0004】
コントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出されて入力される操舵トルクTは、操舵系の安定性を高めるために位相補償器31で位相補償され、位相補償された操舵トルクTAが操舵補助指令値演算器32に入力される。又、車速センサ12で検出された車速Vも操舵補助指令値演算器32に入力される。操舵補助指令値演算器32は、入力された操舵トルクTA及び車速Vに基いてモータ20に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iを決定し、操舵補助指令値演算器32にはメモリ33が付設されている。メモリ33は車速Vをパラメータとして操舵トルクに対応する操舵補助指令値Iを格納しており、操舵補助指令値演算器32による操舵補助指令値Iの演算に使用される。操舵補助指令値Iは減算器30Aに入力されると共に、応答速度を高めるためのフィードフォワード系の微分補償器34に入力され、減算器30Aの偏差(I−i)は比例演算器35に入力され、その比例出力は加算器30Bに入力されると共にフィードバック系の特性を改善するための積分演算器36に入力される。微分補償器34及び積分補償器36の出力も加算器30Bに加算入力され、加算器30Bでの加算結果である電流制御値Eが、モータ駆動信号としてモータ駆動回路37に入力される。モータ20のモータ電流検出値iはモータ電流検出回路38で検出され、モータ電流検出値iは減算器30Aに入力されてフィードバックされる。
【0005】
モータ駆動回路37の構成例を図8に示して説明すると、モータ駆動回路37は加算器30Bからの電流制御値Eに基いて電界効果トランジスタ(FET)FET1〜FET4の各ゲートを駆動するFETゲート駆動回路371、FET1〜FET4で成るHブリッジ回路、FET1及びFET2のハイサイド側を駆動する昇圧電源372等で構成されている。上段のFET1及びFET2は、電流制御値Eに基いて決定されるデューティ比D1のPWM(パルス幅変調)信号によってON/OFFされ、実際にモータに流れる電流Irの大きさが制御される。下段のFET3及びFET4は、デューティ比D1の小さい領域では所定1次関数式(a,bを定数としてD2=a・D1+b)で定義されるデューティ比D2のPWM信号で駆動され、デューティ比D1の大きい領域ではPWM信号の符号により決定されるモータの回転方向に応じてON/OFFされる。例えばFET3が導通状態にあるときは、電流はFET1、モータ20、FET3、抵抗R1を経て流れ、モータ20に正方向の電流が流れる。又、FET4が導通状態にあるときは、電流はFET2、モータ20、FET4、抵抗R2を経て流れ、モータ20に負方向の電流が流れる。従って、加算器30Bからの電流制御値EもPWM出力となっている。
【0006】
又、モータ電流検出回路38は抵抗R1の両端における電圧降下に基いて正方向電流の大きさを検出すると共に、抵抗R2の両端における電圧降下に基いて負方向の電流の大きさを検出する。モータ電流検出回路38で検出されたモータ電流検出値iは、減算器30Aに入力されてフィードバックされる。モータ20には抵抗R3及びダイオードD1を介して電源Vigが接続されると共に、抵抗R4を経て接地されている。抵抗R3,R4はモータ20の端子間抵抗Rmに比べ非常に大きな値となっており、モータ端子電圧Vmが得られる。
【0007】
上述のような従来の電動パワーステアリング装置では、トルクセンサーが中立付近でモータ20が駆動されていないときに、モータ20の端子電圧Vmを測定してモータ端子の地絡故障を検出していた。図9はその様子を示しており、Hブリッジ回路のFET1〜FET4が全てOFFのときのモータ20の端子電圧Vmを検出し、端子電圧Vm≒0となった場合に地絡が生じたとしている。Riは、モータ電流検出値iを得るための電流検出抵抗であり、Vbはバッテリ14の電圧である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の検出方法では、モータ20が非駆動時にしかモータ地絡を検出できない問題がある。特に操舵中にモータ20の電源側で地絡が発生した場合、地絡によって過電流が発生しているにも拘らず、電流検出抵抗RiがHブリッジ回路の下段側にあるために電流検出ができず、最悪の場合は過電流による過熱によって火災が発生する場合がある。図10はその様子を示しており、地絡による地絡電流irが流れているにも拘らず、電流検出回路の出力iはi≒0であるため、過電流検出が動作せず、地絡電流irが流れ続けるのである。しかも、モータ電流検出値iをフィードバック制御している場合は、電流指令値があるのにモータ電流検出値iが検出されないので、ますますモータ端子電圧Vm又はPWMのデューティ比が増加され、過電流による過熱によって火災が発生する可能性が大きくなる。
【0009】
また、上記従来の検出方法では、ハンドル戻り時にモータ端子間に逆起電圧が発生して、その電圧によってモータ端子電圧Vmが正常時の範囲を越えてしまうことがあった。この場合には、地絡が生じていないにも拘らず、モータ端子が地絡したと誤検出してしまっていた。このような誤検出を防止するために、検出条件(検出時間、検出値)を調整していたが、逆に中途半端な故障に対する検出精度が低下してしまうということで、故障検出までに要する時間が長くなってしまうことが、問題点として指摘されていた。
【0010】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、電動パワーステアリング装置のモータの地絡を確実に検出すると共に、故障が検出されたときにモータ駆動を停止してフェールリレー(電子スイッチを含む)をOFFするようにした電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記ハンドルと一体的に設けられたステアリングシャフトを補助負荷付勢するモータと、前記操舵トルクの大きさに応じて前記モータをフィードバック系のHブリッジ回路でPWM駆動するコントロールユニットとを具備した電動パワーステアリング装置の制御装置に関するもので、本発明の上記目的は、前記Hブリッジ回路の上段のFETに電流検出抵抗及びフェールリレーを接続し、イグニションキーのオン後に前記フェールリレーをオンし、前記Hブリッジ回路の下段のFETをオフした状態で前記上段のFETを同時にオンすることによって所定値以上の電流が発生した場合、前記モータの端子が地絡していると判断してモータ駆動を停止させると共に、前記フェールリレーをオフすることによって達成される。又、前記Hブリッジ回路の下段のFETをオフした状態で前記上段のFETを同時にオンするときに、前記上段のFETをPWM駆動し、そのデューティ比を徐々に増加させるようにしても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
Hブリッジ回路構成のモータ駆動回路に上段側にモータ電流検出抵抗を備えることで、モータ駆動回路に流れ込む電流を確実に検出できるようになる。従って、起動時には、モータ駆動回路の上段のFETを同時にONさせて、モータ地絡が発生している場合は過電流を発生させて検出する。また、上段の2つのFETを同時にONすることでモータ端子間が同電位となり、もし地絡が発生していても、モータを回転することなく地絡を検出することができる。このように、検出用の過電流でモータ線地絡を検出しているので、ハンドル戻り時におけるモータの逆起電力による誤検出をすることはない。大きな逆起電流で過電流が打ち消されて検出が遅れることは考えられるが、その後に過電流が発生すればすぐに地絡を検出することができる。
【0013】
本発明ではモータ線の電源側が地絡した場合、イグニションキーON後に、電源とモータ駆動回路との間に接続されたフェールリレーをONして、モータ駆動回路の上段のFETを同時にONすることで、地絡があれば地絡した個所に過電流が流れることになるので、かかる過電流の検出によって地絡を検出することができる。また、モータ駆動回路の上段のFETを同時にONしているため、モータ端子間が同電位となり、モータを回転することなく検出することができる。また、もし操舵中に地絡が発生した場合でも過電流によって常に監視しているので、過電流検出によって地絡も検出可能である。モータ線の接地側が地絡した場合は、見かけ上正常状態と区別できないため、モータの駆動方向が反転して地絡が電源側となることで、過電流が発生するために検出することができる。
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本発明のブロック構成を図7に対応させて示しており、モータ電流検出回路38からのモータ電流検出値iに基づいて過電流を検出する過電流検出手段40を設けると共に、バッテリ14からモータ駆動回路37への供給路にフェールリレー41を介挿している。過電流検出手段40はモータ電流検出回路38で検出されるモータ電流検出値iをスレッショルドimと比較して、モータ電流検出値iがスレッショルドimを越えたときに過電流検出信号DTを出力するようにしている。フェールリレー41は電子スイッチであっても構わない。また、図2はHブリッジ回路のモータ駆動回路37と、モータ電流検出回路38、フェールリレー41及び電流検出抵抗R3との結線関係を示しており、通常時にはフェールリレー41はONしている。電流検出抵抗R3及びフェールリレー41はHブリッジ回路の上段のFET1及びFET2とバッテリ14との間に接続されており、モータ電流検出回路38は電流検出抵抗R3を流れる電流を検出するようになっている。そして、過電流検出手段40で過電流が検出されると、過電流検出信号DTによってフェールリレー41をOFFすると共に、モータ駆動回路37の駆動を停止、つまりFET1〜FET4をOFFする。
【0015】
このような構成において、その動作を図3のフローチャートを参照して説明する。
起動時には、常時イグニションキーがONになったか否かを検出しており(ステップS1)、イグニションキーがONになった場合には、図4に示すようにHブリッジ回路の下段のFET3及びFET4をOFFし(ステップS2)、フェールリレー41をONし(ステップS3)、上段のFET1、FET2をONする前に、地絡以外のHブリッジ回路内の故障によって、過電流が発生しないかを確認する。この場合、過電流検出手段40はモータ電流検出回路38からのモータ電流検出値iが過電流か否か、つまりスレッショルドimを越えているか否かを検出しており(ステップS4)、正常な場合は上段のFET1をONにし、(ステップS5)、Hブリッジ回路内に地絡が発生していないかを確認する(ステップS6)。そして、上記ステップS4及びS6で過電流irが検出された場合には、過電流検出信号DTによって全てのFET1〜FET4をOFFし(ステップS7)、フェールリレー41をOFFし(ステップS8)、モータ駆動回路37によるモータ20の駆動を停止する。
【0016】
図5はモータ駆動時の動作を示しており、モータ駆動中でもモータ線に地絡が発生した場合、過電流irが発生するので上記のように過電流を検出することができる。過電流irが検出された場合には、起動時と同様に過電流検出手段40から過電流検出信号DTが出力され、フェールリレー41がOFFされると共に、モータ駆動回路37によるモータ20の駆動が停止される。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明の電動パワーステアリング装置の制御装置によれば、モータ駆動系の地絡故障を確実に検出してモータ駆動を停止させると共に、フェールリレーをOFFさせる。したがって、過電流によってモータを焼損する事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコントロールユニットの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の具体的な結線例を示す結線図である。
【図3】本発明の動作例を説明するための図である。
【図4】本発明の動作例を説明するための図である。
【図5】モータ駆動時の動作を説明するための図である。
【図6】従来の電動パワーステアリング装置の一例を示すブロック構成図である。
【図7】コントロールユニットの一般的な内部構成を示すブロック図である。
【図8】モータ駆動回路の一例を示す結線図である。
【図9】モータ非駆動時の地絡を説明するための図である。
【図10】モータ駆動時の地絡を説明するための図である。
【符号の説明】
1 操向ハンドル
5 ピニオンラック機構
10 トルクセンサ
12 車速センサ
20 モータ
30 コントロールユニット
31 位相補償器
37 モータ駆動回路
38 モータ電流検出回路
40 過電流検出手段
41 フェールリレー
Claims (2)
- ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記ハンドルと一体的に設けられたステアリングシャフトを補助負荷付勢するモータと、前記操舵トルクの大きさに応じて前記モータをフィードバック系のHブリッジ回路でPWM駆動するコントロールユニットとを具備した電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記Hブリッジ回路の上段のFETに電流検出抵抗及びフェールリレーを接続し、イグニションキーのオン後に前記フェールリレーをオンし、前記Hブリッジ回路の下段のFETをオフした状態で前記上段のFETを同時にオンすることによって所定値以上の電流が発生した場合、前記モータの端子が地絡していると判断してモータ駆動を停止させると共に、前記フェールリレーをオフすることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記Hブリッジ回路の下段のFETをオフした状態で前記上段のFETを同時にオンするときに、前記上段のFETをPWM駆動し、そのデューティ比を徐々に増加させるようにした請求項1に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
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JP31980097A JP3641921B2 (ja) | 1997-11-20 | 1997-11-20 | 電動パワーステアリング装置の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP31980097A JP3641921B2 (ja) | 1997-11-20 | 1997-11-20 | 電動パワーステアリング装置の制御装置 |
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