JP3951200B2 - 純水製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、純水製造装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、半導体製造などの電子産業分野、医薬用水関連分野などで用いられる、ホウ素濃度を大幅に低減し、比抵抗を高めた純水又は超純水の製造に適した純水製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホウ素を含有する原水を処理して純水又は超純水を製造するために、混床型イオン交換装置に通水することによるホウ素の除去が行われている。しかし、混床型イオン交換装置は、新しい樹脂を充填した直後のホウ素除去率は極めて高いが、再生を行った後に通水すると、ホウ素の除去率が著しく低下するという問題があった。また、混床型イオン交換装置では、ホウ素の破過が他のイオンの破過に比べて早く、水中のホウ素濃度を安定して低減することは困難であった。
電子産業分野や医薬用水関連分野では、ホウ素濃度が0.3ppb以下、より好ましくは0.1ppb以下である純水が要求される。このようにホウ素濃度の低い純水を、混床型イオン交換装置を用いて長時間破過することなく、安定して製造することができる純水製造装置が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、半導体製造などの電子産業分野、医薬用水関連分野などで用いられる、ホウ素濃度を大幅に低減し、かつ比抵抗を高めた純水又は超純水の製造に適した純水製造装置を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ホウ素含有水にアルカリを添加してpHを9.2以上に調整するアルカリ添加装置と、pH調整されたホウ素含有水を通水する耐アルカリ性逆浸透膜と、耐アルカリ性逆浸透膜透過水が通水される混床型イオン交換装置を組み合わせることにより、処理水中のホウ素濃度を顕著に低減し、しかも混床型イオン交換装置の破過時間を延長し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ホウ素含有水にアルカリを添加してpHを9.2以上に調整するアルカリ添加装置、(B)pHの調整されたホウ素含有水が通水される耐アルカリ性逆浸透膜及び(C)耐アルカリ性逆浸透膜透過水が通水される陰イオン交換樹脂を完全に再生した混床型イオン交換装置を有し、前記混床型イオン交換装置の集水管の位置が、再生時の陰イオン交換樹脂層の下端よりもイオン交換装置の塔の直径の1/10以上低いことを特徴とする純水製造装置、
(2)耐アルカリ性逆浸透膜が、前段の膜の透過水が後段の膜の供給水となるよう多段に設けられてなる第(1)項記載の純水製造装置、及び、
(3)(D)前処理工程として、陽イオン交換装置と脱炭酸装置を有する第(1)項又は第(2)項記載の純水製造装置、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、本発明の純水製造装置の一態様の構成図である。本態様の純水製造装置は、アルカリ添加装置、耐アルカリ性逆浸透膜1及び混床型イオン交換装置2を有する。
本発明装置におけるアルカリ添加装置には特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を添加する装置や、塩基性樹脂イオン交換塔、あるいはその両方を設置することができる。アルカリ水溶液を添加する装置としては、例えば、撹拌機つきのpH調整槽を設けたり、通水ラインにアルカリ水溶液注入口を設け、その下流側にスタチックミキサーなどを設置することができる。アルカリ添加装置は、ホウ素含有水にアルカリを添加して、pHをホウ酸のpKa9.2(25℃)以上に調整し得るものであることが好ましく、pHを10以上に調整し得るものであることがより好ましい。
【0006】
本発明装置における耐アルカリ性逆浸透膜は、長期的にpH10以上となっても劣化を受けないものであることが好ましい。この場合、供給されるアルカリ性のホウ素含有水のpHよりも、濃縮水の方がpHが高くなるので、濃縮水のpHを考慮して耐アルカリ性逆浸透膜を選択する必要がある。このような耐アルカリ性逆浸透膜としては、例えば、pH11まで長期耐久性のあるものとして市販されている FILMTEC type FT30などを挙げることができる。また、pH10まで長期耐久性のあるものとしては、日東電工(株)製ES20、ES10、NTR759、東レ(株)製SU700などのポリアミド系の膜などを挙げることができる。
逆浸透膜のホウ素に対する除去性能は、高アルカリ条件の方が高いことは知られていたが、ナトリウムイオンなどのカチオン成分に対する除去性能と異なり、濃度依存性が少なく、特に低濃度においても除去率の低下の度合が少ないことが、新たな知見として明らかになった。このため、逆浸透膜を多段に組み合わせ、少なくとも1段目において、供給水のpHをホウ素のpKaである9.2(25℃)以上に調整とすることにより、ホウ素除去率を向上することができるものと考えられる。
【0007】
本発明装置における混床型イオン交換装置には特に制限はなく、公知の強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したイオン交換塔などを使用することができる。本発明装置において、イオン交換樹脂の再生は、ホウ素の破過が生じたとき、水力分級により比重の大きい陽イオン交換樹脂を下に、比重の小さい陰イオン交換樹脂を上に分離し、陰イオン交換樹脂は上部から水酸化ナトリウムなどの通水により、陽イオン交換脂は下部より塩酸などの通水により再生することができる。これらの再生薬液は、塔中間部に集水管を設けて排出することができる。
混床型イオン交換装置においては、樹脂の再生を行う際に、ホウ素を除去する働きをもつ陰イオン交換樹脂の再生が不十分となる場合がある。このような再生において、集水管周辺の樹脂は十分に再生液と接触しにくいことから、一部の樹脂の再生が不十分となり、特に陰イオン交換樹脂の再生が不十分となったとき、他のイオンよりも樹脂に吸着しにくいホウ素のリーク量が多くなることをつきとめた。
【0008】
このため、本発明装置においては、ホウ素を除去する働きを有する陰イオン交換樹脂の再生を十分に行うために、集水管の位置を再生時の陰イオン交換樹脂層の下端よりも低くすることが好ましく、集水管の位置を陰イオン交換樹脂層の下端よりも塔直径の1/10以上低くすることがより好ましく、塔直径の1/8以上低くすることがさらに好ましい。このように集水管の位置を陰イオン交換樹脂層の下端よりも低くすることにより、通常は陰イオン交換樹脂層の下端から集水管までの間には陽イオン交換樹脂が存在することになるが、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の中間の比重を有する不活性樹脂を用いて、陰イオン交換樹脂層の下端と集水管の間に不活性樹脂層を設けることもできる。
また、陰イオン交換樹脂の再生を十分に行うために、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を分離したのち、分離した樹脂の上部から下部まで水酸化ナトリウム水溶液を通液して、陰イオン交換樹脂を完全に再生したのち、陽イオン交換樹脂のみを中間部より下部まで塩酸を通液することにより再生することもできる。この方法によれば、再生に必要な時間はやや長くなるが、陰イオン交換樹脂の再生を十分に行うことができる。
本発明装置においては、上記の集水管の位置を陰イオン交換樹脂層の下端よりも低くする方法、分離した樹脂の上部から下部まで水酸化ナトリウム水溶液を通液して再生する方法、あるいは、これらの二つの方法の組み合わせにより、陰イオン交換樹脂を完全に再生することができる。
【0009】
本発明装置においては、このようにして陰イオン交換樹脂を完全に再生した混床型イオン交換装置に通水することにより、得られる純水中のホウ素濃度を極めて低くすることができる。従来は、処理水中のホウ素濃度を低減することを目的とした場合は、混床型イオン交換装置でのホウ素の破過が他のイオンに比べて早いことから、再生頻度を多くしなければならないという問題があった。しかし、本発明装置においては、アルカリ添加装置においてホウ素含有水にアルカリを添加してpHを9.2以上に調整したのち、耐アルカリ性逆浸透膜に通水するので、逆浸透膜によるホウ素の除去率が高く、逆浸透膜透過水中のホウ素濃度が低くなり、混床型イオン交換装置の再生頻度を大きく減少することができる。
本発明装置において、耐アルカリ性逆浸透膜への供給水のpHを9.2以上とすることにより、ホウ素の除去率は高くなるが、透過水中にリークするアルカリ成分、例えば、水酸化ナトリウムの量は多くなる。しかし、混床型イオン交換装置における水酸化ナトリウムなどの吸着力は極めて大きく、例えば、耐アルカリ性逆浸透膜透過水の電気伝導率が10μS/cm程度であっても、混床型イオン交換装置に通水することにより、比抵抗15MΩ・cm以上の純水を得ることができる。
【0010】
本発明の純水製造装置においては、耐アルカリ性逆浸透膜を、前段の膜の透過水が後段の膜の供給水となるよう多段に設けることができる。耐アルカリ性逆浸透膜を直列に設置して多段に設けることにより、ホウ素除去率をより一層高めることができる。例えば、耐アルカリ性逆浸透膜を2段に設置し、前段の耐アルカリ性逆浸透膜にホウ素を20ppb程度含有する水のpHを10程度に調整して通水することにより、前段の耐アルカリ性逆浸透膜透過水のホウ素濃度は1ppb程度になり、この透過水をさらに後段の耐アルカリ性逆浸透膜に通水することにより、後段の耐アルカリ性逆浸透膜透過水のホウ素濃度は0.1ppb以下となる。
本発明の純水製造装置においては、前処理工程として、陽イオン交換装置と脱炭酸装置を設けることができる。前処理工程に用いる陽イオン交換装置には特に制限はなく、例えば、一部をNa型とした弱酸性陽イオン交換樹脂を用いた陽イオン交換装置、弱酸性陽イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂を混合した陽イオン交換装置などを挙げることができる。
一部をNa型とした弱酸性陽イオン交換樹脂は、弱酸性陽イオン交換樹脂を塩酸などの酸で再生したのち、水酸化ナトリウム水溶液を通水して一部の弱酸性陽イオン交換樹脂をNa型に変えることにより調製することができる。一部の樹脂がNa型となっていると、通水により、カルシウムが重炭酸カルシウムであっても、塩化カルシウムであっても、その形態によらずカルシウムを除去することができる。すなわち、一部をNa型とした弱酸性陽イオン交換樹脂を用いることにより、安定してカルシウムを除去することができる。
陽イオン交換装置として、弱酸性陽イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂を混合した陽イオン交換装置を用いることにより、水中のカルシウム以外のカチオン成分の交換量を減らし、カルシウムを選択的に除去することが可能となり、イオン交換樹脂の再生頻度を少なくすることができる。
【0011】
本発明装置において、使用する脱炭酸装置には特に制限はなく、例えば、脱気膜などを挙げることができる。脱炭酸装置を設けて水中の炭酸を除去することにより、耐アルカリ性逆浸透膜に通水する前のpH調整に必要なアルカリ添加量を減少することができる。炭酸が存在すると必要なアルカリ添加量が多くなるのは、水中の全炭酸濃度が多いほど、pHの緩衝作用が大きいためであると考えられる。アルカリ添加量が多くなると、耐アルカリ性逆浸透膜からのアルカリリーク量が多くなり、例えば、アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合には、ナトリウムのリーク量が多くなる。脱炭酸装置として脱気膜を用いることにより、炭酸の除去と酸素の除去を同時に行うことができる。
本発明装置においては、上記のような前処理を行ったのち、供給水にアルカリを添加してpHを高め、耐アルカリ性逆浸透膜に通水することにより、高い除去率でホウ素を除去し、しかも耐アルカリ性逆浸透膜におけるスケールの発生を効果的に防ぐことができる。上記の前処理により、特に、高アルカリ条件で析出しやすい炭酸カルシウムのスケールの析出を有効に防止することができる。
【0012】
図1(b)は、本発明の純水製造装置の他の態様の構成図である。原水は、陽イオン交換装置3に導かれ、あらかじめ水中のカルシウムなどのカチオン成分が除去されたのち、脱気膜を用いた脱炭酸装置4において水中の炭酸が除去される。次いで、被処理水は、アルカリ添加装置においてアルカリが添加され、pH9.2以上に調整されたのち、前段の耐アルカリ性逆浸透膜1及び後段の耐アルカリ性逆浸透膜1に通水されて、水中のホウ素が除去される。後段の耐アルカリ性逆浸透膜の透過水は、混床型イオン交換装置2に通水され、水中のナトリウムなどのイオン成分が除去されて、ホウ素濃度が低く、比抵抗の高い純水が得られる。
本発明の純水製造装置によれば、従来は逆浸透膜では除去が困難であったホウ素を、容易に濃度0.1ppb以下まで除去することができる。さらに、処理水中のカチオン成分を効率的に除去して、比抵坑も高い純水を得ることができる。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
図1(c)に示す構成の純水製造装置を用いて、純水の製造を行った。この装置は、限外ろ過装置5、陽イオン交換装置3、脱気膜を用いた脱炭酸装置4、耐アルカリ性逆浸透膜1[FILMTEC type FT30、]2段及び混床型イオン交換装置2[塔径200mm、栗田工業(株)製のEX−AG22リットル及びEX−CG14リットル充填]をこの順に直列に連結し、脱炭酸装置と前段の耐アルカリ性逆浸透膜の間にアルカリ添加装置を設けたものである。なお、混床型イオン交換装置では、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の分離界面より25mm下方に集水管を設けた。
この装置に、厚木市水を2トン/hrで通水した。アルカリ添加装置より水酸化ナトリウムを添加して、前段の耐アルカリ性逆浸透膜への供給水のpHを10.35に調整した。また、それぞれの耐アルカリ性逆浸透膜の回収率は90%とした。
限外ろ過膜透過水の水質は、pH7.44、電気伝導率166μS/cm、ホウ素濃度14.9ppbであった。後段の耐アルカリ性逆浸透膜透過水の水質は、pH8.85、電気伝導率11.2μS/cm、ホウ素濃度0.09ppbであった。混床型イオン交換装置を通過して得られた純水の水質は、pH7.02、比抵抗17.86MΩ・cm、ホウ素濃度0.01ppb以下であった。また、混床型イオン交換装置のホウ素の破過時間は530時間であった。
比較例1
水酸化ナトリウムの添加による前段の耐アルカリ性逆浸透膜への供給水のpH調整を6.82とした以外は、実施例1と同様にして純水を製造した。
後段の耐アルカリ性逆浸透膜透過水の水質は、pH5.40、電気伝導率0.61μS/cm、ホウ素濃度3.10ppbであった。混床型イオン交換装置を通過して得られた純水の水質は、pH7.02、比抵抗17.88MΩ・cm、ホウ素濃度0.68ppbであった。また、混床型イオン交換装置のホウ素の破過時間30時間であった。
実施例1の各段階の水質を第1表に、比較例1の各段階の水質を第2表に示す。
【0014】
【表1】
Figure 0003951200
【0015】
【表2】
Figure 0003951200
【0016】
実施例1と比較例1の結果を比較すると、前段及び後段の耐アルカリ性逆浸透膜透過水のホウ素濃度は実施例1の方が低いが、電気伝導率は比較例1の方が低く、この段階ではイオン成分の除去は比較例1の方が効果的になされている。しかし、混床型イオン交換装置を通過して得られた純水の比抵抗は、実施例1、比較例1のいずれも17.9MΩ・cmという高い値を示し、最終的に得られる純水中のイオン成分は、実施例1も比較例1も同等に除去されていることが分かる。一方、混床型イオン交換装置を通過して得られた純水のホウ素濃度は、実施例1では0.01ppb以下とホウ素がほぼ完全に除去されているのに対して、比較例1では0.68ppbであり、ホウ素の除去が不十分である。さらに、混床型イオン交換装置のホウ素の破過時間は、実施例1が530時間、比較例1が30時間で、実施例1の方が17倍以上長い。
以上の結果から、本発明の純水製造装置を用いることにより、ホウ素濃度が低く、かつ比抵抗の高い純水が、安定して得られることが分かる。
【0017】
【発明の効果】
本発明の純水製造装置によれば、従来は逆浸透膜では除去が困難であったホウ素を、容易に濃度0.1ppb以下まで除去することができ、さらに、処理水中のイオン成分を効率的に除去して、比抵坑も高い純水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の純水製造装置の構成図である。
【符号の説明】
1 耐アルカリ性逆浸透膜
2 混床型イオン交換装置
3 陽イオン交換装置
4 脱炭酸装置
5 限外ろ過装置

Claims (3)

  1. (A)ホウ素含有水にアルカリを添加してpHを9.2以上に調整するアルカリ添加装置、(B)pHの調整されたホウ素含有水が通水される耐アルカリ性逆浸透膜及び(C)耐アルカリ性逆浸透膜透過水が通水される陰イオン交換樹脂を完全に再生した混床型イオン交換装置を有し、前記混床型イオン交換装置の集水管の位置が、再生時の陰イオン交換樹脂層の下端よりもイオン交換装置の塔の直径の1/10以上低いことを特徴とする純水製造装置。
  2. 耐アルカリ性逆浸透膜が、前段の膜の透過水が後段の膜の供給水となるよう多段に設けられてなる請求項1記載の純水製造装置。
  3. (D)前処理工程として、陽イオン交換装置と脱炭酸装置を有する請求項1又は請求項2記載の純水製造装置。
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