JP3950378B2

JP3950378B2 - 同期機

Info

Publication number: JP3950378B2
Application number: JP2002210350A
Authority: JP
Inventors: 敬介藤崎; 正人榎園
Original assignee: Nippon Steel Corp
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 2002-07-19
Filing date: 2002-07-19
Publication date: 2007-08-01
Anticipated expiration: 2022-07-19
Also published as: JP2004056907A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板を複数枚、厚さ方向に積層・固定して形成したステータを用いる同期機に関する。具体的には、ヨークとティースとから構成されるステータに配置される積層体に電磁鋼板を用いた永久磁石同期機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
永久磁石同期機は、ステータ（固定子）に電流を流すことにより発生する磁場が、ロータ（回転子）に埋め込まれた永久磁石に働いて、ロータが回転する同期機であって、保守性、制御性、耐環境性に優れ、高効率、高力率運転が可能なモータとして産業・民生家電分野を問わず広く用いられている。この場合、電気エネルギーを同期機に流して、回転駆動力を得るようにするのが同期電動機であり、逆に、同期機を回転させて電気エネルギーを同期機より取り出す場合は、同期発電機となる。ここでは、両者を想定し、あわせて、同期機としている、両者の構造は基本的には同じなので、以下詳細説明では、同期電動機の例を中心に説明する。
【０００３】
図７および図８は、従来の同期機の断面を示しており、ヨーク１およびティース２からなるステータ７の中心に、ロータ８が配置されている。
ロータ８には永久磁石９が埋め込まれており、ステータ７に三相交流を流すことにより発生する磁場が、この永久磁石９に働くことによりロータ８が回転する。
従来、同期機のステータは、鉄損を低減するために無方向性電磁鋼板（ＮＯ）を積層することにより作られていた。
無方向性電磁鋼板は、図５に示すように、鋼板表面のどの方向にも一様な比透磁率を有する鋼板であって、比較的鉄損の小さい材料として広く用いられているが、長時間連続運転する同期機のステータに用いる材料としては十分な磁気特性が得られていなかった。
【０００４】
同期機に用いられる電磁鋼板の種類については、特開平７−６７２７２号公報に、ステータのティースとヨークとを分割する構造とし、ヨークには円周方向を磁化容易方向とする方向性電磁鋼板（ＧＯ）を用い、ティースには径方向を磁化容易方向とする方向性電磁鋼板を用いることにより鉄損を低減する方法が開示されている。
【０００５】
しかし、この従来技術は、図７に示すように、ヨークが周方向に分割されており、その分割されたヨークの境界がティースとティースの間に位置していた。
そのため、ティースから隣のティースに磁束が流れる場合に、ティースとヨークの境界、ヨーク同士の境界、ヨークと隣のティースとの境界の３つの境界を磁束が通過することになる。
【０００６】
これらの境界および鋼板同士の積層部は、溶接またはカシメ、または、ボルト締めによって接合されているが、物理的に一体でなく、しかも接合部分に応力が集中するなどの理由から、磁束がこの境界部分を通過する際の磁気抵抗が大きくなり、モータの鉄損が大きくなるという問題点があった。
また、前述の境界が同じ位置にある鋼板を積層すると、他の部分に比べて強度が低い境界部が１箇所に集中するため、鋼板を積層したステータの強度が低下するという問題点があった。
さらに、前述の境界が同じ位置にある鋼板を積層すると、切断する際に、切断部が垂れ下がって下層の鋼板と導通する現象が生じて、渦電流が増加し、結果的に鉄損が増加するという問題点があった。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決し、ヨークが周方向に分割されているステータの磁気抵抗と鉄損を低減し、また、ステータの強度を向上させることができる同期機を提供することを課題とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ヨーク部の鋼板の分割箇所をティースの取り付け位置から周方向にオフセットさせることにより、オフセット方向が異なる鋼板を交互に積層して鋼板同士の境界が重ならないようにし、また、前記境界および積層部を接着剤により固定することにより、磁気抵抗と鉄損を低減するとともに、ステータの強度を向上することができる同期機を提供するものであり、その要旨は特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
【０００９】
（１）鋼板を複数枚、厚さ方向に積層・固定して形成したステータを用いる同期機において、前記鋼板はヨーク部とティース部とに分割され、ヨーク部の鋼板はさらにステータの周方向にティースの数と同数に分割され、前記ヨーク部鋼板の分割位置は前記ティース位置にあり、前記ティース部鋼板の前記ヨーク部鋼板との接続側の端部を前記ティース部鋼板の径方向外側に突出させ、該突出部を前記ティース部鋼板の幅が漸減する形状にして前記ティース部鋼板と前記ヨーク部鋼板との２箇所の境界ならびに分割されたヨーク部鋼板同士の境界はＹ字状をなし、かつ、該分割されたヨーク部鋼板同士の境界と前記ティース部鋼板の径方向の中心軸とを１０ｍｍ以下の範囲でオフセットさせ、該オフセットの方向が異なるＹ字状境界において接する鋼板を交互に積層し、該鋼板は方向性電磁鋼板であって、該ヨーク部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向を前記ステータの周方向とするとともに該ティース部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向を前記ステータの径方向とすることを特徴とする同期機。
（２）前記ヨークと前記ティースを構成する方向性電磁鋼板の積層方向の固定は、接着剤にて固定することを特徴とする（１）に記載の同期機。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図１乃至図６を用いて詳細に説明する。
＜第１の実施形態＞
図１は、本発明の第１の実施形態であるステータ（固定子）の構造を示す図である。
ステータは、外周部分のヨーク１と、コイルが巻き回されるティース２とから主に構成され、ヨーク１とティース２がロータの周囲に円周状に配置されている。
【００１１】
ヨーク１は周方向に分割されており、かつ、該分割されたヨークの境界３をティース２が設けられている周方向の位置から１０ｍｍ以内の範囲でオフセットさせており、図１中のδがオフセット量を示している。
分割されたヨークの境界３をティース２が設けられている周方向の位置から１０ｍｍ以内の範囲でオフセットさせることにより、磁束がティース２から隣のティース２に流れる場合に、ティース２からヨーク４への境界４と、ヨーク４から隣のティース２への境界４の２つの境界しか通過しないので、従来に比べて通過する境界の数が１つ減少しており、その分、磁気抵抗と鉄損を低減することができる。
ここに、オフセット量を１０ｍｍ以内としたのは、オフセット量を１０ｍｍ超とすると、ヨークの境界３を通過する磁束が増加して、磁気抵抗の低減効果が少なくなるからである。
【００１２】
また、ティース２からヨーク４に流れる磁束は、ティース２の付け根で２方向に分岐するので、本実施例のように、この分岐点にヨークの切れ目があった方が、磁束の流れがスムースである。
さらに、このヨーク１およびティース２は、方向性電磁鋼板（ＧＯ）とし、このヨーク１を構成する方向性電磁鋼板の磁化容易方向をステータの周方向（図１の矢印で示す中心方向）とし、ティース２の磁化容易方向をステータの径方向とすることにより、ティースを流れる磁束を隣接するティース２に流れにくくし、ロータ８に流れる磁束を多くすることができ、その結果、ステータにおける鉄損を低減することができる。
ここに、方向性電磁鋼板は、磁化容易方向が特定の方向である電磁鋼板であり、磁化容易方向については無方向性電磁鋼板より優れた磁気特性を有する。
【００１３】
＜第２の実施形態＞
図２は、本発明の第２の実施形態であるステータ（固定子）の構造を示す図である。
ステータを構成するヨーク１およびティース２の構造は、第１の実施形態と同様であるが、ヨーク１の境界とティース２の径方向の中心軸とのオフセットの方向が異なるＡパターンとＢパターンを設けている。
Ａパターンは、ヨーク１の境界がティース２の径方向の中心軸に対して図２の右方向にδだけオフセットしており、Ｂパターンは、右方向にδだけオフセットしている。
【００１４】
このオフセットにより、ティース２とヨーク１との境界４の傾きは図２のように左右で異なっている。
すなわち、Ａパターンでは、右側の境界の傾きθ２より、左側における境界の傾きθ１の方が大きくなっている。（θ１＞θ２）
一方、Ｂパターンでは、右側の境界の傾きθ２より、左側における境界の傾きθ１の方が小さくなっている。（θ１＜θ２）
このように、境界のパターンが異なる鋼板を、図３のように交互に積層すれば、他の部分に比べて機械的強度が小さい境界部が上下に重なり合う箇所を少なくすることができ、その結果、ステータの機械的強度を向上させることができる。
【００１５】
また、境界部の重なりが少なくなることにより、鋼板を積層したステータを切断する場合に、切断部の垂れ下がりによって、下層の鋼板との導電の発生を低減することができるので、渦電流の発生と、それに伴う鉄損の増加を抑制することができる。
なお、本実施形態では、ＡパターンとＢパターンの２種類のパターンとしているが、３種以上のパターンとしてもよく、また、左右のオフセット量を異なる値としてもよい。
【００１６】
＜第３の実施形態＞
図３は、本発明の第３の実施形態であるステータ（固定子）の断面構造を示す図である。
図３のように、境界の位置が異なる鋼板の両面に接着剤５を塗布して交互に積層することにより、比較的強度が小さい境界部が重なり合わないようにしてステータの機械的強度を向上させることができる。
なお、接着剤の種類は問わないが、接合作業効率を高めるために、乾燥しやすい瞬間接着剤を用いることが好ましい。
また、分割されたヨークの境界３および、ヨーク１とティース２との境界４を接着剤にて面支持により固定するので支持部の応力が分散されるので、従来のように溶接、カシメ、ボルト締めなどによる局所的な応力集中が発生せず、磁気抵抗の増加とそれに伴う鉄損の増加を抑制することができる。
【００１７】
図４乃至図６は、本発明に用いる電磁鋼板の特性について示す図である。
図４は、方向性電磁鋼板の磁化容易方向の説明図である。
方向性電磁鋼板は圧延方向であるＲＤ（Rolling Direction）が磁化容易方向となる。
【００１８】
図５は、無方向性電磁鋼板の比透磁率（μ）の特性を示す図である。
無方向性電磁鋼板は、どの方向にも等しい磁気特性を有するが、方向性電磁鋼板および二方向性電磁鋼板に比べて比透磁率（μ）の値は低い。
図６は、方向性電磁鋼板の比透磁率（μ）の特性を示す図である。
方向性電磁鋼板は、圧延方向の比透磁率（μ_R）の値が大きく、その他の方向は無方向性電磁鋼板と同等である。
【００１９】
【発明の効果】
本発明によれば、ヨークの分割箇所をティースの取り付け位置から周方向にオフセットさせることにより、積層したときにヨークの境界が重ならないようにし、また、前記境界および積層部を接着剤により固定することにより、磁気抵抗と鉄損を低減するとともに、ステータの強度を向上することができる同期機を提供できるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の実施形態であるステータ（固定子）の構造を示す図である。
【図２】本発明の第２の実施形態であるステータ（固定子）の構造を示す図である。
【図３】本発明の第３の実施形態であるステータ（固定子）の断面構造を示す図である。
【図４】方向性電磁鋼板の磁化容易方向の説明図である。
【図５】無方向性電磁鋼板の比透磁率（μ）の特性を示す図である。
【図６】方向性電磁鋼板の比透磁率（μ）の特性を示す図である。
【図７】従来の同期機の断面図である。
【図８】従来の同期機の断面図である。

Claims

鋼板を複数枚、厚さ方向に積層・固定して形成したステータを用いる同期機において、前記鋼板はヨーク部とティース部とに分割され、ヨーク部の鋼板はさらにステータの周方向にティースの数と同数に分割され、前記ヨーク部鋼板の分割位置は前記ティース位置にあり、前記ティース部鋼板の前記ヨーク部鋼板との接続側の端部を前記ティース部鋼板の径方向外側に突出させ、該突出部を前記ティース部鋼板の幅が漸減する形状にして前記ティース部鋼板と前記ヨーク部鋼板との２箇所の境界ならびに分割されたヨーク部鋼板同士の境界はＹ字状をなし、かつ、該分割されたヨーク部鋼板同士の境界と前記ティース部鋼板の径方向の中心軸とを１０ｍｍ以下の範囲でオフセットさせ、該オフセットの方向が異なるＹ字状境界において接する鋼板を交互に積層し、該鋼板は方向性電磁鋼板であって、該ヨーク部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向を前記ステータの周方向とするとともに該ティース部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向を前記ステータの径方向とすることを特徴とする同期機。
前記ヨークと前記ティースを構成する方向性電磁鋼板の積層方向の固定は、接着剤にて固定することを特徴とする請求項１に記載の同期機。