以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明を適用する印刷機の概要図である。
この印刷機は、第1、第2の版胴11、12に保持された画像が記録されていない印刷版に画像を記録して製版した後、この印刷版に供給されたインキを第1、第2のブランケット胴13、14を介して圧胴15に保持された印刷用紙に転写することにより印刷を行うものである。
この印刷機は、図1において実線で示す第1の印刷位置と二点鎖線で示す画像記録位置との間を移動可能な第1の版胴11と、図1において実線で示す第2の印刷位置と上記画像記録位置との間を移動可能な第2の版胴12とを有する。
第1の印刷位置に移動した第1の版胴11の周囲には、印刷版に例えばブラック(K)のインキを供給するためのインキ供給装置20aと、印刷版に例えばマゼンタ(M)のインキを供給するためのインキ供給装置20bと、印刷版に湿し水を供給するための湿し水供給装置21a、21bとが配置されている。また、第2の印刷位置に移動した第2の版胴12の周囲には、印刷版に例えばシアン(C)のインキを供給するためのインキ供給装置20cと、印刷版に例えばイエロー(Y)のインキを供給するためのインキ供給装置20dと、印刷版に湿し水を供給するための湿し水供給装置21c、21dとが配置されている。さらに、画像記録位置に移動した第1の版胴11または第2の版胴12の周囲には、給版部23と、排版部24と、画像記録装置25と、現像処理装置26とが配置されている。
また、この印刷機は、第1の版胴11と当接可能に設けられた第1のブランケット胴13と、第2の版胴12と当接可能に設けられた第2のブランケット胴14と、第1、第2のブランケット胴13、14に対して互いに異なる位置で当接可能に設けられた圧胴15と、給紙部27から供給された印刷用紙を圧胴15に渡すための給紙胴16と、圧胴15から受け取った印刷済の印刷用紙を排紙部28に排出するためのチェーン19を巻回した排紙胴17と、印刷用紙に印刷された検出パッチ(コントロールストリップ)の色濃度を測定するための撮像部40と、ブランケット洗浄装置29とを有する。
上記第1、第2の版胴11、12は、それぞれ図示しない版胴移動機構と連結されており、この版胴移動機構の駆動により、上述した第1または第2の印刷位置と画像記録位置との間を往復移動する。また、図示しないモータの駆動により、第1の版胴11は、第1の印刷位置において第1のブランケット胴13と同期して回転し、第2の版胴12は、第2の印刷位置において第2のブランケット胴14と同期して回転するよう構成されている。さらに、画像記録位置近傍には、図示しない版胴回転機構が配設されており、第1、第2の版胴11、12は、いずれも、画像記録位置に移動した状態において、この版胴回転機構の駆動により回転するよう構成されている。
画像記録位置に移動した第1の版胴11または第2の版胴12の周囲には、給版部23と排版部24とが配置されている。
給版部23には、画像が記録されていない長尺ロール状の印刷版を光密な状態で収納する供給カセット63と、この供給カセット63から引き出した印刷版の先端部を第1の版胴11または第2の版胴12の表面に案内するためのガイド部材64およびガイドローラ65と、長尺の印刷版を切断してシート状の印刷版とするためのカッター66とが配設されている。また、第1、第2の版胴11、12には、給版部23より供給された印刷版の先端部と後端部とをくわえるための図示しない一対のくわえ爪が配設されている。
排版部24は、印刷完了後に第1の版胴11または第2の版胴12上に保持された印刷版を剥がすための爪機構73と、爪機構73の作用により剥がされた印刷版を排出カセット68に搬送するためのコンベア機構69と、排出カセット68を有する。
給版部23における供給カセット63から引き出された印刷版の先端部は、ガイドローラ65およびガイド部材64により案内され、第1の版胴11または第2の版胴12の一方のくわえ爪にくわえられる。そして、第1の版胴11または第2の版胴12が版胴回転機構30の駆動により回転し、印刷版が第1の版胴11または第2の版胴12の外周部に巻き付けられる。そして、カッター66で切断された印刷版の後端部は、他方のくわえ爪によりくわえられる。この状態において、第1の版胴11または第2の版胴12を低速で回転させながら、画像記録装置25により第1の版胴11または第2の版胴12の外周部に保持された印刷版の表面に変調されたレーザビームを照射し、画像を記録する。
なお、第1の版胴11の外周部に装着された印刷版Pには、画像記録装置25により、図2(a)に示すように、ブラックのインキで印刷を行うための画像領域67aと、マゼンタのインキで印刷を行うための画像領域67bとが記録される。また、第2の版胴12の外周部に装着された印刷版Pには、画像記録装置25により、図2(b)に示すように、シアンのインキで印刷を行うための画像領域67cと、イエローのインキで印刷を行うための画像領域67dとが記録される。画像領域67aと画像領域67bとは、第1の版胴11の外周部に装着された状態において、均等に振り分けられた状態(すなわち互いに180度離隔した状態)となる位置に記録される。同様に、画像領域67cと画像領域67dとは、第2の版胴12の外周部に装着された状態において、均等に振り分けられた状態(すなわち互いに180度離隔した状態)となる位置に記録される。
再度図1を参照して、上述したように、第1の印刷位置に移動した第1の版胴11の周囲には、インキ供給装置20aとインキ供給装置20bとが、また、第2の印刷位置に移動した第2の版胴12の周囲には、インキ供給装置20cとインキ供給装置20dとが配置されている。これらのインキ供給装置20a、20b、20cおよび20d(これらを総称する場合には「インキ供給装置20」という)は、各々、複数のインキローラ71とインキ供給部72とを有する。
インキ供給装置20a、20bのインキローラ71は、図示しないカム等の作用で揺動動作を行う。そして、この揺動動作により、第1の版胴11の外周部に保持した印刷版Pに形成された2個の画像領域67a、67bのうちの任意の画像領域に、インキ供給装置20aまたは20bのインキローラ71が接触することにより、必要な画像領域にのみインキを供給しうる構成となっている。また、同様に、インキ供給装置20c、20dのインキローラ71も、図示しないカム等の作用で揺動動作を行う。そして、この揺動動作により、第2の版胴12の外周部に保持した印刷版Pに形成された2個の画像領域67c、67dのうちの任意の画像領域に、インキ供給装置20cまたは20dのインキローラ71が接触することにより、必要な画像領域にのみインキを供給しうる構成となっている。
図3は上述したインキ供給部72の側面概要図であり、図4はインキ供給部72を構成するインキキー2の平面図である。なお、図4においては、インキ3の図示を省略している。
このインキ供給部72は、その軸線方向が印刷物の幅方向(印刷機による印刷方向と直交する方向)に向けて配置されたインキ元ローラ1と、印刷物の幅方向に対して分割されたL個の領域に対応してL個列設され、各々がインキ元ローラ1の外周面に対する開度を調整可能に構成されたインキキー2(1)、2(2)・・・2(L)(この明細書において、これらを総称する場合には「インキキー2」という)とを備え、これらのインキ元ローラ1とインキキー2とで構成されるインキつぼ内にインキ3を貯留可能な構成となっている。
各インキキー2の裏面側には、各インキキー2のインキ元ローラ1に対する開度を変更するために、インキキー2をインキ元ローラ1の表面に向けて各々押圧するための、L個の偏芯カム4が配設されている。これらの偏芯カム4は、各々、軸5を介して、偏芯カム4を回転駆動するためのL個のパルスモータ6と連結されている。
パルスモータ6に対し、インキキー駆動パルスを印加した場合には、パルスモータ6の駆動により軸5を中心に偏芯カム4が回転し、各インキキー2への押圧力が変更されることにより、各インキキー2のインキ元ローラ1に対する開度が変更され、印刷版へのインキの供給量が変更される。
このインキ供給装置72では、インキ元ローラ1を図3に示す時計方向に回転させると、インキ元ローラ1の表面上に、インキキー2のインキ元ローラ1に対する開度に応じたインキの薄膜が形成される。そして、インキ元ローラ1上に形成されたインキの薄膜は、このインキ元ローラ1に対して当接・離間する呼出ローラ7によっていずれかのインキローラ71に伝達される。すなわち、呼出ローラ7は、図示しない駆動手段によりインキ元ローラ1といずれかのインキローラ71との間で揺動し、インキを受け渡す動作を実行する。
なお、一般的には、インキ供給装置72においてはインキ元ローラ1に対するインキキー2の押圧力を変更することでインキの供給量を変更するが、これに加えて、インキ元ローラ1の回転数や呼出ローラ7の揺動回数を変更する場合もある。
このインキ供給装置72は、インキ貯留部120とインキ供給用管路を介して接続されている。そして、このインキ供給用管路内には、インキを圧送するためのインキポンプ121が配設されている。このため、後述するインキ不足の検出時にインキ元ローラ1とインキキー2とで構成されるインキつぼ内のインキが不足すると判定された場合には、インキポンプ121の駆動により、インキ貯留部120からインキつぼ内にインキが供給される。
再度図1を参照して、湿し水供給装置21a、21b、21cおよび21d(これらを総称する場合には「湿し水供給装置21」という)は、上記インキ供給装置20により印刷版Pにインキを供給する前に、印刷版Pに湿し水を供給するものである。これらの湿し水装置21のうち、湿し水供給装置21aは印刷版Pにおける画像領域67aに、湿し水供給装置21bは印刷版Pにおける画像領域67bに、湿し水供給装置21cは印刷版Pにおける画像領域67cに、また、湿し水供給装置21dは印刷版Pにおける画像領域67dに、各々湿し水を供給する。
図5は、上述した湿し水供給装置21bの側面概要図である。
この湿し水供給装置21bは、湿し水を貯留する水舟31と、図示しないモータの駆動により回転する水元ローラ32とからなる湿し水供給部と、水元ローラ32により供給された湿し水を第1の版胴11の外周部に装着された印刷版の表面に転移させるための二本の水ローラ33、34とを備える。この湿し水供給装置においては、水元ローラ32の回転数を変更することにより、印刷版の表面に供給する湿し水の供給量を調整することができる。
なお、他の3個の湿し水供給装置21a、21c、21dも、この湿し水供給装置21bと同様の構成を有する。
再度図1を参照して、画像記録位置に移動した第1の版胴11または第2の版胴12の下方には、現像処理装置26が配設されている。この現像処理装置26は、現像部、定着部および絞り部を有し、図1において二点鎖線で示す待機位置と実線で示す現像処理位置との間を昇降可能に構成されている。
この現像処理装置26によって画像記録装置25により画像が記録された印刷版Pを現像処理する場合においては、第1の版胴11または第2の版胴とともに回転する印刷版Pに対して、現像部、定着部および絞り部を順次接触させる。
第1、第2の版胴11、12と当接可能に設けられた第1、第2のブランケット胴13、14は、第1、第2の版胴11、12と同一の直径を有し、その外周部にはインキ転写用のブランケットが装着されている。そして、この第1、第2のブランケット胴13、14は、第1、第2の版胴11、12および圧胴15に対し、図示しない胴入れ機構により接離自在な構成となっている。
第1、第2のブランケット胴13、14の間に配設されたブランケット洗浄装置29は、巻き出しロールから複数の圧接ローラを介して巻き取りロールに至る経路に貼張された長尺の洗浄布に洗浄液を供給し、この洗浄布を第1、第2のブランケット胴13、14に対して当接させた上、摺動させることにより、第1、第2のブランケット胴13、14の表面を洗浄するものである。
第1、第2のブランケット胴13、14と当接可能に設けられた圧胴15は、第1、第2の版胴11、12および第1、第2のブランケット胴13、14の直径の1/2の直径を有する。また、圧胴15は、印刷用紙の先端を保持して搬送するための図示しないグリッパを有する。
また、圧胴15に隣接して配設された給紙胴16は、圧胴15と同一の直径を有する。この給紙胴16は、往復移動する吸着盤74により給紙部27から1枚ずつ供給された印刷用紙の先端部を図示しないグリッパにより保持して搬送する。グリッパにより保持された印刷用紙の先端部は、給紙胴16から圧胴15への印刷用紙の受け渡し時に、圧胴15のグリッパにより保持される。
また、圧胴15に隣接して配設された排紙胴17は、圧胴15と同一の直径を有する。この排紙胴17は、その両端部に一対のチェーン19を巻回した構造を有し、この一対のチェーン19を連結する図示しない連結部材上に、各々後述するグリッパ41が配設されている。圧胴15のグリッパにより保持された印刷用紙の先端部は、圧胴15から排紙胴17への印刷用紙の受け渡し時に、排紙胴17のいずれかのグリッパ41により保持される。そして、この印刷用紙は、チェーン19の移動に伴って、撮像部40によりそこに印刷された検出パッチの色濃度を測定された後、排紙部28上に搬送されて排出される。
前記給紙胴16は、図示しないベルトを介して駆動モータと連結されている。そして、給紙胴16、圧胴15、排紙胴17、第1、第2のブランケット胴13、14は、各々その端部に付設された歯車により連結されている。さらに、第1のブランケット胴13と第1の印刷位置に移動した第1の版胴11、および、第2のブランケット胴14と第2の印刷位置に移動した第2の版胴12とは、その端部に付設された歯車により各々連結されている。従って、図示しない駆動モータの駆動により、これらの給紙胴16、圧胴15、排紙胴17、第1、第2のブランケット胴13、14、第1、第2の版胴11、12は、互いに同期して回転する。
図6は、上述した印刷用紙に印刷された検出パッチの色濃度を測定するための撮像部40を上述したチェーン19とともに示す側面概要図である。
一対のチェーン19は、図1に示す排紙胴17の両端部と一対の大径のスプロケット18との間に無端状に掛け渡されている。そして、上述したように、一対のチェーン19を連結する図示しない連結部材上には、各々、印刷用紙Sの先端部を咥えて搬送するためのグリッパ41が配設されている。
なお、一対のチェーン19の長さは、排紙胴17の周長の整数倍の長さとなっており、チェーン19上におけるグリッパ41の配置間隔は、排紙胴7の周長と等しくなるように設定されている。そして、各グリッパ41は、図示しないカム機構によって排紙胴7に設けられたグリッパと同期して開閉するように構成されており、排紙胴7から印刷用紙Sを受け取り、チェーン19の回転に伴って印刷用紙Sを搬送した後、排紙部28上に排出する。
この印刷用紙Sの搬送時には、印刷用紙Sの先端部のみをグリッパ41により咥えて搬送するため、印刷用紙Sの後端は固定されていない状態で搬送されることになる。このため、この搬送時には、印刷用紙Sのばたつきが発生し、後述する撮像部40による検出パッチの色濃度測定動作に支障を来すことになる。このため、この印刷機においては、排紙部28の前方側において印刷用紙Sの搬送状態を安定させる吸着ローラ43を備えている。
この吸着ローラ43は、その表面に微細な吸着孔を多数備えた中空状のローラから構成されており、その中空部は図示しない真空ポンプと接続されている。この吸着ローラ43は、その軸線が一対のチェーン19間に掛け渡されたグリッパ41に対し平行となり、チェーン19の下方通過位置と略同じ高さにその頂部が位置するように配置されている。
なお、吸着ローラ43は、グリッパ41の通過速度に合わせて回転駆動する、もしくは、回転自在に構成されている。従って、印刷用紙Sは、吸着ローラ43上を通過する際には吸着ローラ43の表面に吸着された状態となって搬送されることになり、この吸着ローラ43上の部分では印刷用紙Sはばたつかない。なお吸着ローラ43に代えて、前記印刷用紙Sを平面的に吸着するような吸着板部材を使用してもよい。
上記撮像部40は、搬送される印刷用紙Sを照明する照明部44と、この照明部44により照明された印刷用紙S上の検出パッチを撮像してその色濃度を測定するための撮像部45とからなる。照明部44は、吸着ローラ43に沿って配置され、吸着ローラ43上の印刷用紙Sを照明する複数の線状光源からなり、チェーン19の上下走行領域間に設けられている。
撮像部45は、遮光および防塵のための筐体46と、この筐体内部に配置されたミラー49、レンズ48、CCDラインセンサ47とを備える。この撮像部45は、吸着ローラ43上の印刷用紙Sの画像を照明部44のスリットを通して撮像するものであり、ミラー49で折り返された画像の入射光は、レンズ48を通ってCCDラインセンサ47で受光される。
図7は、この印刷機の主要な電気的構成を示すブロック図である。この印刷機は、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM141と、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM142と、論理演算を実行するCPU143とからなる制御部140を備える。この制御部は140は、インタフェース144を介して、インキ供給装置20、湿し水供給装置21、画像記録装置25、現像処理装置26、ブランケット洗浄装置29、撮像部40、第1、第2のブランケット胴13、14の胴入れ機構等における駆動部等の駆動信号を発生させる駆動回路145と接続されている。印刷機はこの制御部140により制御され、後述する製版動作および印刷動作を実行する。
次に、この印刷機による製版および印刷動作について説明する。図8は、この印刷機による製版および印刷動作の概要を示すフローチャートである。なお、この印刷および製版動作は、印刷用紙Sにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインキで多色印刷を行う場合のものである。
まず、第1、第2の版胴11、12上において印刷版Pに画像を記録し、現像処理を行う製版工程を実行する(ステップS1)。この製版工程は、サブルーチンとしての図9のフローチャートに示す工程に従って実行される。
すなわち、最初に第1の版胴11を、図1において二点鎖線で示す画像記録位置に移動させる(ステップS11)。
次に、第1の版胴11の外周に印刷版Pを供給する(ステップS12)。この印刷版Pの供給は、供給カセット63から引き出した印刷版Pの先頭部とカッター66で切断された印刷版Pの後端部とを図示しない一対のくわえ爪でくわえることにより実行される。
続いて、第1の版胴11の外周に保持された印刷版Pに画像を記録する(ステップS13)。この画像の記録は、第1の版胴11を低速で回転させるとともに、画像記録装置25から第1の版胴11の外周に保持された印刷版Pに変調されたレーザビームを照射することにより実行される。
次に、画像が記録された印刷版Pを現像処理する(ステップS14)。この現像処理は、現像処理装置26を図1において二点鎖線で示す待機位置から実線で示す現像処理位置まで上昇させた後、第1の版胴11とともに回転する印刷版Pに対して、現像部、定着部および絞り部を順次接触させることにより実行される。
上記現像処理が終了すれば、第1の版胴11を図1において実線で示す第1の印刷位置まで移動させる(ステップS15)。
続いて、上記ステップS11〜15と同様の動作により、第2の版胴12の外周に保持される印刷版Pに対する製版工程を実行する(ステップS16〜20)。 そして、第1、第2の版胴11、12の外周に保持される印刷版Pへの製版が終了すれば、製版工程を終了する。
再度図8を参照して、製版工程が完了すれば、第1、第2の版胴11、12上の印刷版Pを用いて印刷用紙Sに印刷を行う印刷工程を実行する(ステップS2)。この印刷工程は、次のようにして実行される。
すなわち、先ず、各湿し水供給装置21および各インキ供給装置20を第1、第2の版胴11、12上に保持された印刷版Pのうちの対応する画像領域とのみ当接させる。これにより、各画像領域67a、67b、67c、67dには対応する各湿し水供給装置21および各インキ供給装置20から湿し水とインキとが供給される。そして、印刷版Pに供給されたインキは、第1、第2のブランケット胴13、14の対応する領域に転写される。
そして、印刷用紙Sを給紙胴16に供給する。この印刷用紙Sは、給紙胴16から圧胴15に渡される。この状態で、圧胴15が回転を続けると、圧胴15は、第1、第2の版胴11、12および第1、第2のブランケット胴13、14の1/2の直径を有することから、圧胴15の外周部に保持された印刷用紙Sには、その1回転目においてブラックとシアンのインキが、また、その2回転目においてマゼンタとイエローのインキが転写される。
このようにして、4色の印刷が終了した印刷用紙Sの先端部は、圧胴15から排紙胴17に渡される。そして、4色の印刷が終了した印刷用紙Sは、一対のチェーン19の駆動により、排紙部28に向けて搬送され、撮像部40において検出パッチの色濃度を測定された後、排紙部28上に排出される。
印刷工程が終了すれば、印刷に使用した印刷版Pを排出する(ステップS3)。この印刷版Pの排出を行うためには、最初に第1の版胴11を、図1において二点鎖線で示す画像記録位置に移動させる。そして、第1の版胴11を反時計回りに回転させるとともに、第1の版胴11上に保持された印刷版Pの端部を爪機構73により剥がした後、この印刷版Pをコンベア機構69により案内して、排出カセット68内に排出する。そして、第1の版胴11を第1の印刷位置に復帰させた後、第2の版胴12を第2の印刷位置から画像記録位置に移動させ、上記同様の動作を実行することにより、第2の版胴12上に保持された印刷版Pを排出カセット68内に排出する。
印刷版Pの排出工程が完了すれば、ブランケット胴洗浄装置29により第1、第2のブランケット胴13、14を洗浄する(ステップS4)。
第1、第2のブランケット胴13、14の洗浄が終了すれば、さらに別の印刷物の印刷作業を行うか否かを確認する(ステップS5)。他の印刷作業を行う場合には、ステップ1〜4の動作を繰り返す。
印刷作業が終了した場合には、インキの洗浄を行う(ステップS6)。このインキの洗浄は、各インキ供給装置20に配設された図示しないインキ洗浄装置により、各インキ供給装置20におけるインキローラ71やインキ供給部72に付着するインキを除去および洗浄することにより実行される。
インキの洗浄工程が終了すれば、全ての工程を完了する。
以上のような構成を有する印刷装置において、印刷版Pに供給すべきインキの供給量を制御するためには、管理スケール等とも呼称される検出パッチが利用される。
図10は、印刷が完了した後の印刷用紙S上に印刷された第1の検出パッチ(第1のコントロールストリップ)101および第2の検出パッチ(第2のコントロールストリップ)102を示す説明図である。
これら第1、第2の検出パッチ101、102は、印刷用紙Sの一方の端部とこの印刷用紙Sにおける画像領域の端部との間の領域に印刷されている。第1の検出パッチ101と第2の検出パッチ102とは、上述した各インキキー2と同様、印刷物の幅方向(印刷機による印刷方向と直交する方向)に対して分割されたL個の領域に対応して、各々L個互いに隣り合う状態で配置されている。これら第1、第2の検出パッチ101、102のうち、第1の検出パッチ101としては網点面積率が高いものあるいはベタパッチが使用され、第2の検出パッチ102としては網点面積率が低いものが使用される。
上述した印刷機においては、撮像部40によりこれらの第1、第2の検出パッチ101、102の色濃度を測定する。そして、測定された第1、第2の検出パッチ101、102の色濃度に基づいて、図3および図4に示す各インキキー2の開度をパルスモータ6の駆動により変更することで、インキの供給量を制御する。また、測定された第1、第2の検出パッチ101、102の色濃度に基づいて、図5に示す水元ローラ32の回転数を変更することにより、湿し水の供給量を制御する。
次に、この発明に係るインキ供給方法について説明する。図11は、インキ供給動作を示すフローチャートである。
図8に示す印刷工程(ステップS2)を実行する際には、図6に示す撮像部40により、印刷用紙Sに印刷された第1、第2の検出パッチ101、102の色濃度が経時的に測定される(ステップS21)。この色濃度の測定は、全ての印刷用紙Sに対して実行してもよく、また、例えば5枚毎に印刷される印刷用紙Sに対して実行してもよい。
そして、測定後の色濃度が前回測定した色濃度より所定量以上減少しているか否かを判定する(ステップS22)。色濃度が所定量以上減少していない場合には、最初に戻って次の色濃度測定を実行する。
測定後の色濃度が前回測定した色濃度より所定量以上減少していた場合には、色濃度の減少が2回以上連続しているか否かを判定する(ステップS23)。色濃度の減少が2回以上連続していない場合には、最初に戻って次の色濃度測定を実行する。
色濃度の減少が2回以上連続している場合には、一定時間以内にインキキー2の開度を所定量以上閉じる方向に変更していないか否かを判定する(ステップS24)。一定時間以内にインキキー2の開度を所定量以上閉じる方向に変更している場合には、最初に戻って次の色濃度測定を実行する。
次に、一定時間内にインキの呼出量を所定量以上減少する方向に変更していないか否かを判定する(ステップS25)。ここでいうインキの呼出量の減少とは、例えば、インキ元ローラ1の回転数または呼出ローラ7による呼出回数の減少をいう。一定時間以内にインキの呼出量を減少させている場合には、最初に戻って次の色濃度測定を実行する。
次に、一定時間以内に湿し水の供給量を所定量以上増加させていないか否かを判定する(ステップS26)。一定時間以内に湿し水の供給量を所定量以上増加させている場合には、最初に戻って次の色濃度測定を実行する。
そして、一定時間以内に湿し水の供給量を所定量以上増加させていない場合には、インキつぼ内のインキが不足していると判断する。この場合においては、例えば、色濃度の減少(ステップS22)が生じる前のインキ供給量のパラメータと湿し水供給量のパラメータとを、図7に示すRAM142に記憶する(ステップS27)。ここで、インキ供給量のパラメータとは、印刷用紙Sに印刷する画像に対する各インキキー2の開度に関する情報を含むパラメータである。また、湿し水供給量のパラメータとは、印刷用紙Sに印刷する画像に対する水元ローラ32の回転数に関する情報を含むパラメータである。
そして、インキつぼ内のインキが不足していることを示す警告表示を行う(ステップS28)。この警告表示としては、例えば、CRTへの警告表示、警告ランプの点灯、警告音の発信等が採用可能である。また、この警告表示と並行して、インキつぼ内に自動的にインキを供給する。このインキの供給時においては、図3に示すインキポンプ121の駆動により、インキ貯留部120からインキつぼ内にインキが供給される。なお、インキポンプ121等が設置されていない場合には、警告表示に基づいて印刷機を停止させ、手作業によりインキを補充する。
インキつぼ内に必要な量のインキが供給されれば、RAM142に記憶されたインキ供給量のパラメータと湿し水供給量のパラメータとを読み出す(ステップS29)。そして、読み出したパラメータを利用して、インキと湿し水の供給を実行する。
なお、インキを自動的に供給した後に、インキ供給前のパラメータを利用してインキの供給量と湿し水の供給量とを制御するのは、次のような理由による。すなわち、インキ供給前においては、一定の時間をかけて定常状態が形成されており、インキ供給前と同一の条件で安定した印刷を実行するためには、インキ供給前のパラメータを利用してインキ供給前の定常状態と同一の条件で印刷を実行することが好ましいためである。なお、インキを補充した後、色濃度が復帰するまで、読み出したパラメータを変更せずに所定時間同一制御を行うことが好ましい。
そして、必要な印刷が完了するまで上記の動作を繰り返した後(ステップS30)、必要な印刷が完了した時点で処理を終了する。
なお、上述した各判定は、図7に示す制御部140により実行される。この制御部140は、上述した各判定を実行する判定手段として機能する。
上述した実施形態においては、色濃度が所定量以上減少しているか否かと、色濃度の減少が2回以上連続しているか否かと、一定時間以内にインキキー2の開度を所定量以上閉じる方向に変更していないか否かと、一定時間内にインキの呼出量を減少させていないか否かと、一定時間以内に湿し水の供給量を所定量以上増加させていないか否かとをこの順で判定しているが、これらの判定は、どのような順序で実行してもよい。
また、上述した実施形態においては、この発明を第1、第2の版胴11、12に保持された画像が記録されていない印刷版に画像を記録して製版した後、この印刷版に供給されたインキを第1、第2のブランケット胴13、14を介して圧胴15に保持された印刷用紙に転写することにより印刷を行う印刷機に適用した場合について説明したが、この発明をその他の一般的な印刷機に適用してもよい。