JP3947317B2 - 陽極酸化の制御方法および陽極酸化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体材料を陽極酸化することにより多孔質化する陽極酸化の制御方法および陽極酸化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体材料を多孔質化する技術の一つとして電解液中の電気化学的反応を利用した陽極酸化が知られている。陽極酸化は、例えば、単結晶シリコンや導電性基板上に形成された多結晶シリコン薄膜などを多孔質化する目的で利用される。
【0003】
ここにおいて、例えば、導電性基板上に形成された多結晶シリコン薄膜を陽極酸化する陽極酸化装置として、図5に示す構成のものが提案されている。すなわち、図5に示す陽極酸化装置は、フッ化水素水溶液を含む電解液1を入れた電解槽2と、電解液1に浸された白金からなる負極4とを備え、n形単結晶シリコン基板3上に多結晶シリコン薄膜5が形成された試料10を、多結晶シリコン薄膜5の表面の一部のみが電解液1に接するように電解槽2に対して設置するようになっている。また、この陽極酸化装置は、n形単結晶シリコン基板3を正極とし、正極と負極4との間に定電流を流す電流源6を備えている。
【0004】
したがって、この陽極酸化装置を用いて、n形単結晶シリコン基板3と負極4との間に電流源6から定電流を流すことにより、多結晶シリコン薄膜5が表面から深さ方向(図5における下方向)に向かって多孔質化される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5に示した陽極酸化装置を用いて、n形単結晶シリコン基板3上に形成された多結晶シリコン薄膜5を多孔質化する場合には、多結晶シリコン薄膜5が深さ方向においてn形単結晶シリコン基板3に達した時点で陽極酸化を終了させることが望まれている。
【0006】
この場合の陽極酸化の条件としては、陽極酸化時に流れる電流の電流値および陽極酸化時間を管理すればよいが、陽極酸化時に流れる電流の電流値が大きすぎた場合、あるいは、陽極酸化時間が長すぎた場合には、多結晶シリコン薄膜5がn形単結晶シリコン基板3に達する深さまで多孔質化された後、さらにn形単結晶シリコン基板3がエッチングされてしまうという問題があった。
【0007】
しかしながら、図5に示した陽極酸化装置では、多結晶シリコン薄膜5の多孔質化がn形単結晶シリコン基板3に達した時点(終点)を検出する終点検出手段を備えていないという不具合があった。また、多結晶シリコン薄膜5が多孔質化された深さを知るためには、陽極酸化を終了させた後に、試料10を破断し、その断面を電子顕微鏡などで観察する必要があった。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、陽極酸化による半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができる陽極酸化の制御方法および陽極酸化装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、電解液に浸された負極との間に定電流を流すことにより陽極酸化による多孔質化を行う際に、導電性基板と負極との間の電位差が5〜15%の範囲の所定値まで低下した時点で陽極酸化を終了させることを特徴とする陽極酸化の制御方法である。この方法によれば、導電性基板と負極との間の電位差が陽極酸化開始直後の電位差から5〜15%の範囲の所定値低下した時点で陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができる。
【0010】
請求項2の発明は、陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、電解液に浸された負極との間に定電圧を印加することにより陽極酸化による多孔質化を行う際に、導電性基板と負極との間に流れる電流が10%上昇した時点で陽極酸化を終了させることを特徴とする陽極酸化の制御方法である。この方法によれば、導電性基板と負極との間に流れる電流が陽極酸化の開始直後の電流から10%上昇した時点で陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができる。
【0011】
請求項3の発明は、電解液を入れた電解槽と、電解液に浸された負極と、陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、導電性基板と負極との間に定電流を流す電流源と、導電性基板と負極との間の電位差を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段により検出した電位差が5〜15%の範囲の所定値まで低下した時点で陽極酸化を終了させる制御手段とを備えることを特徴とするものである。この構成によれば、電圧検出手段にて検出される電位差が陽極酸化開始直後の電位差から5〜15%の範囲の所定値低下した時点で制御手段が陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができるとともに、再現性を高めることができる。
【0012】
請求項4の発明は、電解液を入れた電解槽と、電解液に浸された負極と、陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、導電性基板と負極との間に定電圧を印加する電圧源と、導電性基板と負極との間に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により検出した電流が陽極酸化の開始直後の電流から10%上昇した時点で陽極酸化を終了させる制御手段とを備えることを特徴とするものである。この構成によれば、電流検出手段にて検出される電流が10%上昇した時点で制御手段が陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができるとともに、再現性を高めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の陽極酸化装置は、例えば、導電性基板上に熱酸化された多孔質多結晶シリコン層を有するとともに、この熱酸化された多孔質多結晶シリコン層上に金属薄膜からなる表面電極を有する平面型の電界放射型電子源の製造工程で用いる。さらに説明すると、この電界放射型電子源では、導電性基板上に形成されたノンドープの多結晶シリコン層を多孔質化することにより上記多孔質多結晶シリコン層を形成しているので、本発明の陽極酸化装置は、ノンドープの多結晶シリコン層を多孔質化する工程で用いる。
【0014】
なお、上述の電界放射型電子源は、表面電極を導電性基板に対して正極として表面電極と導電性基板との間に直流電圧を印加するとともに、表面電極を陰極として表面電極に対向配置されたコレクタ電極との間に直流電圧を印加することにより、表面電極の表面から電子を放射させるものである。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態の陽極酸化装置の基本構成は、図5に示した従来構成と略同じであって、図1に示すように、正極として利用する導電性基板(例えば、n形単結晶シリコン基板3)と負極4との間の電位差を検出する電圧検出手段たる電圧検出部11と、電圧検出部11により検出した電位差が低下し始めた時点で電流源6をオフさせる制御部12とを備えている点に特徴がある。ここに、制御部12が、電圧検出部11により検出した電位差が低下し始めた時点で陽極酸化を終了させる制御手段を構成している。なお、図5に示した従来構成と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
ところで、本願発明者は、半導体層と導電性基板との抵抗率の違いに着目して、図5の従来の陽極酸化装置において、陽極酸化中のn形単結晶シリコン基板3と負極4との間の電位差を測定したところ、陽極酸化の開始後からある時間が経過した時点から電位差が低下し始めその後安定するという知見を得た。ここにおいて、本願発明者は、電位差の低下はノンドープの多結晶シリコン薄膜5のほうがn形単結晶シリコン基板3よりも抵抗率が高いことに起因し、多結晶シリコン薄膜5の多孔質化が進み、電解液1がn形単結晶シリコン基板3に到達したときに電位差が低下し始めると考えた。
【0017】
n形単結晶シリコン基板3がエッチングされるのを確実に防ぐために、つまり、陽極酸化による多結晶シリコン薄膜5の多孔質化を過不足なく行うために、上述の電位差が低下し始める直前で陽極酸化を終了させることも考えられるが、上述の電位差が低下し始める直前の時点を検出するのは困難なので、本実施形態では、上述の電位差が低下し始めた時点で陽極酸化を終了させるようにしている。
【0018】
しかして、本実施形態の陽極酸化装置を用いることにより、電圧検出部11にて検出される電位差の低下し始めた時点で、制御部12が電流源6をオフさせることにより陽極酸化を終了させるので、陽極酸化により多結晶シリコン薄膜5を多孔質化する場合に、陽極酸化による多結晶シリコン薄膜5の多孔質化を過不足なく行うことができ、n形単結晶シリコン基板3がエッチングされるのを抑制することができるとともに、再現性を高めることができる。
【0019】
なお、本実施形態では、制御手段として制御部12を用いて電流源6をオフさせることにより陽極酸化を終了させているが、試料10を電解液1から取り出すようにしてもよいし、あるいは、電解液1を電解槽2から排出するようにしてもよい。
【0020】
また、導電性基板としては、n形単結晶シリコン基板3の代わりに、金属基板や、ガラスなどの絶縁基板上に導電性の膜を形成した基板を用いてもよく、半導体層としては、多結晶シリコン薄膜5の代わりに、他の多結晶半導体や、単結晶半導体を用いてもよい。
【0021】
次に、本実施形態の陽極酸化装置の実施例を例示する。本実施例では、試料10として、抵抗率が0.01〜0.02Ωcm、厚さが525μmのn形単結晶シリコン基板3上に、膜厚が1.5μmのノンドープの多結晶シリコン薄膜5を低圧CVD法により堆積したものを用いた。また、負極4には白金を用い、電解液1には50wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合したものを用いた。なお、試料10は、多結晶シリコン薄膜5の表面のうち直径8mmの領域のみが電解液1に接するようにして、その他の部分が電解液1に接しないようにシールを行った。
【0022】
また、本実施例では、500Wのタングステンランプ(図示せず)を用いて多結晶シリコン薄膜5の表面に光照射を行いながら、導電性基板たるn形単結晶シリコン基板3と負極4との間に電流源6から28.3mAの定電流を流した。
【0023】
ところで、図5に示した従来の陽極酸化装置を用いた場合、n形単結晶シリコン基板3と負極4との間の電位差は、図2に示すように、陽極酸化を開始して約10秒間程度は略一定値であるが、10秒経過後ぐらいから低下し、約15秒後以降にはまた安定する。これに対し、本実施例では、電圧検出部11により検出された電位差が陽極酸化の開始直後の電位差から10%低下したとき(図2中の時刻T)に、制御部12により電流源6をオフさせる。
【0024】
なお、n形単結晶シリコン基板3と負極4との間の電位差が低下し始める前に陽極酸化を終了した試料では、n形単結晶シリコン基板3は全くエッチングされておらず、電流源6から28.3mAの定電流を21秒間流して陽極酸化を行った試料では、n形単結晶シリコン基板3がエッチングされてしまっていることが電子顕微鏡による観察で確認された。
【0025】
ここにおいて、本実施形態では、n形単結晶シリコン基板3と負極4との間の電位差が陽極酸化開始直後の電位差から10%低下したときに電流源6をオフさせるようにしてあるが、10%に限定されるものではなく、5〜15%の範囲で適宜決めればよい。
【0026】
なお、n形単結晶シリコン基板3および多結晶シリコン膜5の抵抗率や厚さは、特に限定されるものではなく、多結晶シリコン膜5のほうがn形単結晶シリコン基板3よりも抵抗率が高ければよい。
【0027】
なお、電解液1はフッ化水素水溶液とエタノールとを混合したものに限定されるものではなく、フッ化水素水溶液のみでもよいし、混合比も1:1に限定されるものではない。また、負極4は電解液1に侵食されない材料であれば、白金以外の材料でもよい。
【0028】
(実施形態2)
本実施形態の陽極酸化装置は、図3に示す構成であって、実施形態1の陽極酸化装置における電流源6の代わりに導電性基板(例えば、n形単結晶シリコン基板3)と負極4との間に定電圧を印加する電圧源20を用い、導電性基板と負極4との間に流れる電流を、電流センサ23を介して検出する電流検出手段たる電流検出部21を設け、電流検出部21により検出した電流が上昇し始めた時点で電圧源20をオフさせる制御部22を設けたものである。ここに、制御部22が、電流検出部21により検出した電流が上昇し始めた時点で陽極酸化を終了させる制御手段を構成している。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
ところで、図5に示した従来の陽極酸化装置において電流源6の代わりに電圧源20を用いた場合、n形単結晶シリコン基板3と負極4との間に流れる電流は、図4に示すように、陽極酸化の開始後からある時間が経過した時点から電流が上昇し始めその後安定する。つまり、半導体層たる多結晶シリコン薄膜5が多孔質化されて、単結晶シリコン基板3に電解液1が達すると電流が上昇すると考えられる。
【0030】
これに対し、本実施形態では、電流検出部21により検出された電流が陽極酸化の開始直後の電流から例えば10%上昇したとき(図4中の時刻T)に、制御部22により電圧源20をオフさせる。
【0031】
しかして、本実施形態の陽極酸化装置を用いることにより、電流検出部21にて検出される電流の上昇し始めた時点で、制御部22が電圧源20をオフさせることにより陽極酸化を終了させるので、陽極酸化により多結晶シリコン薄膜5を多孔質化する場合に、陽極酸化による多結晶シリコン薄膜5の多孔質化を過不足なく行うことができ、n形単結晶シリコン基板3がエッチングされるのを抑制することができるとともに、再現性を高めることができる。
【0032】
なお、上記各実施形態の陽極酸化装置は、上述の電界放射型電子源の製造工程以外で用いることができることはもちろんである。
【0033】
【発明の効果】
請求項1の発明の構成によれば、導電性基板と負極との間の電位差が陽極酸化開始直後の電位差から5〜15%の範囲の所定値低下した時点で陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができるという効果がある。
【0034】
請求項2の発明の構成によれば、導電性基板と負極との間に流れる電流が陽極酸化の開始直後の電流から10%上昇した時点で陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができるという効果がある。
【0035】
請求項3の発明の構成によれば、電圧検出手段にて検出される電位差が陽極酸化開始直後の電位差から5〜15%の範囲の所定値低下した時点で制御手段が陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができるとともに、再現性を高めることができるという効果がある。
【0036】
請求項4の発明の構成によれば、電流検出手段にて検出される電流が陽極酸化の開始直後の電流から10%上昇した時点で制御手段が陽極酸化を終了させるので、陽極酸化による多結晶半導体層の多孔質化を過不足なく行うことができるとともに、再現性を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の陽極酸化装置を示す概略構成図である。
【図2】同上における陽極酸化の制御方法の説明図である。
【図3】本発明の実施形態2の陽極酸化装置を示す概略構成図である。
【図4】同上における陽極酸化の制御方法の説明図である。
【図5】従来の陽極酸化装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 電解液
2 電解槽
3 n形単結晶シリコン基板
4 負極
5 多結晶シリコン薄膜
6 電流源
11 電圧検出部
12 制御部
Claims (4)
- 陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、電解液に浸された負極との間に定電流を流すことにより陽極酸化による多孔質化を行う際に、導電性基板と負極との間の電位差が陽極酸化開始直後の電位差から5〜15%の範囲の所定値低下した時点で陽極酸化を終了させることを特徴とする陽極酸化の制御方法。
- 陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、電解液に浸された負極との間に定電圧を印加することにより陽極酸化による多孔質化を行う際に、導電性基板と負極との間に流れる電流が陽極酸化の開始直後の電流から10%上昇した時点で陽極酸化を終了させることを特徴とする陽極酸化の制御方法。
- 電解液を入れた電解槽と、電解液に浸された負極と、陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、導電性基板と負極との間に定電流を流す電流源と、導電性基板と負極との間の電位差を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段により検出した電位差が陽極酸化開始直後の電位差から5〜15%の範囲の所定値低下した時点で陽極酸化を終了させる制御手段とを備えることを特徴とする陽極酸化装置。
- 電解液を入れた電解槽と、電解液に浸された負極と、陽極酸化による多孔質化の対象であって電解液に少なくとも表面の一部が接する多結晶半導体層が導電性基板上に形成されており導電性基板を正極とし、導電性基板と負極との間に定電圧を印加する電圧源と、導電性基板と負極との間に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により検出した電流が陽極酸化の開始直後の電流から10%上昇した時点で陽極酸化を終了させる制御手段とを備えることを特徴とする陽極酸化装置。
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