JP3946819B2 - ラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、燃費特性、操縦安定性を確保しつつロードノイズを低減したラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
ここで、本明細書で使用される用語について説明すると、「タイヤの断面高さSH」とは、タイヤの外径ODとリム径RDとの差の1/2を指す。「貯蔵たて弾性係数」とは、JIS K 6394に示されるゴムの物性値であり、応力のひずみと同位相の成分の振幅をたわみ振幅で除した商である。本発明では50Hz、動歪1%の引張条件で測定している。
【0003】
【従来の技術】
昨今の自動車の高級化・静粛化により、タイヤ性能にはロードノイズの低減と乗り心地の改良がますます要求されている。ロードノイズとは表面が粗いアスファルト舗装路等を走行するときに発生する騒音であり、タイヤが路面の粗さを拾いそれに対応してタイヤが振動し車体を通して車室内に伝達されてくる周波数が凡そ100〜400Hzの、非常に耳障りな騒音である。ロードノイズ低減のために従来取られてきた方策としては、軟質のゴムをトレッドに用いたり、トレッド部のゴムのボリュウムを増やし振動の入力を抑制する手法や、カーカスの折り返し部の高さを低くしてビード部からサイド部にかけての剛性を下げたり、タイヤの使用内圧を下げたりしてタイヤの固有振動数を下げることが有効とされていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしトレッドのボリュウム増加はタイヤ重量の増加となり、使用内圧を下げて使用すると操縦安定性の低下と燃費特性の低下につながり両立は困難な状況にあった。本発明の目的は、カーカスの折り返し部の高さを低くしてビード部からサイド部にかけての剛性を下げ固有振動数を下げたラジアルタイヤにおいてタイヤサイド部ゴム物性の適正化により、ロードノイズを低減しつつ操縦安定性が同等なラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために次の構成を採用したものである。即ち、ビード部に設けられた左右一対のビードコアーと、一方のビード部から 他方のビード部にトロイド状に延在し、該ビードコアーに巻回されてビード部に係留された、少なくとも1層のラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライの軸方向外側に配置されたサイドウォールゴムとを具えた乗用車用ラジアルタイヤにおいて、(1)該カーカスプライは、一方のビード部から他方のビード部に延びるカーカスプライ本体と、該ビードコアーに巻回されて半径方向に延びるカーカスプライ折り返し部とよりなり、該カーカスプライ折り返し部の終端はビードベース部位置から半径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの8〜30%の位置にあり、(2)該サイドウォールゴムは貯蔵たて弾性係数の小さいゴム環状部と、該貯蔵たて弾性係数の小さいゴム環状部の貯蔵たて弾性係数の140〜300%である貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部とからなるという構成を採用している。さらに、該貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部は、ビードベース部位置から半径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの15%以上の領域に配置されていれば好ましい。
【0006】
さらに、本発明の請求項3では、ビード部に設けられた左右一対のビードコアーと、一方のビード部から 他方のビード部にトロイド状に延在し、該ビードコアーに巻回されてビード部に係留された、少なくとも1層のラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライの軸方向外側に配置されたサイドウォールゴムとを具えたラジアルタイヤにおいて、(1)該カーカスプライは、一方のビード部から他方のビード部に延びるカーカスプライ本体と、該ビードコアーに巻回されて半径方向に延びるカーカスプライ折り返し部とよりなり、該カーカスプライ折り返し部の終端はビードベース部位置から半径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの8〜30%の位置にあり、(2)該サイドウォールゴムの貯蔵たて弾性係数が5.5〜6.5MPaであることを特徴としている。
【0007】
ロードノイズとは表面が粗いアスファルト舗装路等を走行するときに発生する騒音であり、タイヤのトレッド部が路面の粗さを拾い振動し、それがサイドウォール部に伝わり、さらにビード部、リムに伝わりそして車体を通して車室内に伝達されてくる周波数が凡そ100〜400Hzの、非常に耳障りな騒音である。この振動の伝達を途中で吸収すればロードノイズの低減できるわけであるが、発明者は、この伝達の吸収にはタイヤの固有振動数を下げること、即ちばね定数を下げる手法を採用した。このためカーカス折り返し端部の高さを低くしてサイドウォール部のたわみを大きくすることで固有振動数を下げ、そしてロードノイズを低減したわけである。
【0008】
ところが、ロードノイズが低減した一方操縦安定性が低下するという不具合を生じる結果になってしまったわけであるが、これについて発明者は鋭意開発検討した結果、次の知見を得たわけである。即ち、(1)サイドウォール部のゴム物性の変更はロードノイズに対しての寄与は低い。
(2)一方、操縦安定性に関するサイドウォール部のゴム物性の影響は大きく、貯蔵たて弾性係数の大きいゴムを配置すれば操縦安定性は向上する。
(3)上記(1)、(2)を考慮すると、貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部を、タイヤ半径方向に断面高さSHの15%以上の領域に配置すればよい。そしてこの知見より本発明に至ったわけである。
【0009】
なお、ここで、該貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部を、タイヤ半径方向に断面高さSHの15%以上の領域に配置したのは、15%以下では操縦安定性を改善する効果が小さいためである。上限は実質的にサイドウォールゴム全体であるが、55%以下が好ましく、その理由は55%以上だとロードノイズの発生を防ぐ効果が小さくなるためである。そして、貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部の少なくとも一部はタイヤ最大幅位置を含むように配置されていることが好ましい。
【0010】
また、貯蔵たて弾性係数の大きいゴムと貯蔵たて弾性係数の小さいゴムとの貯蔵たて弾性係数の比を140%以上としたのは、140%以下では操縦安定性を向上する効果が小さいためであり、上限は実質的には300%である。なお、貯蔵たて弾性係数の大きいゴムの貯蔵たて弾性係数の絶対値は5.5MPa 以上が好ましい。
【0011】
さらに、本発明では所謂プライの折り返し高さCHがタイヤ断面高さSHの8〜21%と比較的低いタイヤにあっては、操縦安定性を向上させるためにサイドウォールゴムの貯蔵たて弾性係数を5.5MPa以上としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従う実施例のタイヤ、従来例および比較例の空気入りラジアルについてタイヤについて説明する。いずれもタイヤサイズは195/65R14である。図1は、本発明による実施例1乃至4および実施例7乃至10のラジアルタイヤの幅方向半断面図である。このタイヤはビード部に設けられた左右一対のビードコアーと、一方のビード部から 他方のビード部にトロイド状に延在し、該ビードコアーに巻回されてビード部に係留された、少なくとも1層のラジアルコード層よりなるカーカスプライ1と、カーカスプライ1の軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム3とを具えたラジアルタイヤであり、カーカスプライ1は、一方のビード部から他方のビード部に延びるカーカスプライ本体と、ビードコアーに巻回されて半径方向に延びるカーカスプライ折り返し部とよりなり、カーカスプライ折り返し高さCHはタイヤ断面高さSHの21%であり、サイドウォールゴムは貯蔵たて弾性係数が3.90MPa と小さいゴム環状部3−2と、貯蔵たて弾性係数が大きいゴム環状部3−1とからなっている。
【0013】
実施例5および6のタイヤは、サイドウォールゴム全体が、貯蔵たて弾性係数が大きいゴムからなっている以外は実施例1乃至4および実施例7乃至10のタイヤと同一である。比較例1のタイヤは、サイドウォールゴム全体が貯蔵たて弾性係数が3.90MPaと小さいゴムからなっている以外は上記の実施例のタイヤと同一である。比較例2のタイヤは、実施例1のタイヤの貯蔵たて弾性係数が大きいゴム環状部3−1のゴムの貯蔵たて弾性係数が5.0MPaとなっている以外は実施例1のタイヤと同一である。そして、従来例のタイヤは、カーカスプライ折り返し高さCHがタイヤ断面高さSHの52%と高くなっている以外は比較例1のタイヤと同一である。上記、およびその他の比較例3〜5を含む、16種のタイヤの仕様は表1に示してある。
【0014】
次に、本発明のタイヤの効果を確かめるべく、上記のタイヤについて、ロードノイズの比較試験および実車による乗り心地と操縦安定性の比較試験を実施した。試験条件は、タイヤサイズ195/65R14のタイヤを内圧200kPa で6JJリムに組み国産2000ccの乗用車を用いて実施した。ロードノイズは、時速50km/hで車内騒音を測定し、乗り心地および操縦安定性はテスト用総合路を走行させドライバーによる官能検査にておこなっている。数値は従来のタイヤを100として指数表示し、大きい値ほどよい性能である。結果は表1に示す通りである。
【0015】
【表1】
【0016】
以上明らかなように、本発明の空気入りラジアルタイヤはロードノイズが問題となる周波数である100ー200Hz、300ー400Hzにおいての音圧レベルが従来タイヤに比較して向上しているに関わらず、操縦安定性は従来タイヤに比較して特に問題無いレベルとなっていることがよく分かる。そして、比較例のタイヤに対してもロードノイズは同等レベルであるに関わらず操縦安定性が向上していることが分かる。
【0017】
【発明の効果】
以上に述べたところから明らかなように、本発明によれば、ロードノイズを改良しつつ、操縦安定性が同等なラジアルタイヤを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すタイヤ幅方向の半断面図である。
【符号の説明】
1 カーカス
3 サイドウォールゴム
3−1 貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部
3−2 貯蔵たて弾性係数の小さいゴム環状部
S タイヤ最大幅部
SH タイヤ断面高さ
B ビードベース部位置
CH カーカス折り返し部高さ
Claims (3)
- ビード部に設けられた左右一対のビードコアーと、一方のビード部から 他方のビード部にトロイド状に延在し、該ビードコアーに巻回されてビード部に係留された、少なくとも1層のラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライの軸方向外側に配置されたサイドウォールゴムとを具えた乗用車用ラジアルタイヤにおいて、(1)該カーカスプライは、一方のビード部から他方のビード部に延びるカーカスプライ本体と、該ビードコアーに巻回されて半径方向に延びるカーカスプライ折り返し部とよりなり、該カーカスプライ折り返し部の終端はビードベース部位置から半径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの8〜30%の位置にあり、(2)該サイドウォールゴムは貯蔵たて弾性係数の小さいゴム環状部と、該貯蔵たて弾性係数の小さいゴム環状部の貯蔵たて弾性係数の140〜300%である貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部とからなることを特徴とするラジアルタイヤ。
- 該貯蔵たて弾性係数の大きいゴム環状部は、ビードベース部位置から半径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの15%以上の領域に配置されていることを特徴とする請求項1記載のラジアルタイヤ。
- ビード部に設けられた左右一対のビードコアーと、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に延在し、該ビードコアーに巻回されてビード部に係留された、少なくとも1層のラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライの軸方向外側に配置されたサイドウォールゴムとを具えた乗用車用ラジアルタイヤにおいて、(1)該カーカスプライは、一方のビード部から他方のビード部に延びるカーカスプライ本体と、該ビードコアーに巻回されて半径方向に延びるカーカスプライ折り返し部とよりなり、該カーカスプライ折り返し部の終端はビードベース部位置から半径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの8〜30%の位置にあり、(2)該サイドウォールゴムの貯蔵たて弾性係数が5.5〜6.5MPaであることを特徴とするラジアルタイヤ。
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