JP3946563B2 - 装飾用金合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、指輪、ネックレス、ブローチ、ネクタイピン等の装飾具に用いられるAu−Ag−Cu三元系の装飾用金合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、純金(24K)の色、すなわち黄金色は装飾品の色として好まれてきたが、純金そのものは柔らかいため、他元素を添加して実用上問題のない硬さとなるように改善した金合金(例えば、18K)を使用している。
このような金合金として、Au−Ag−Cu三元系の金合金が知られている。かかるAu−Ag−Cu三元系の金合金は、Ag、Cuの添加量により硬さを調整でき、且つNiを含まないことにより金属アレルギーの問題がないため、金合金として広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Au−Ag−Cu三元系の金合金の場合、Ag、Cuの添加量を増やせば増やすほど硬さは向上するが、純金の黄金色とは離れた色となり、見た目の品質が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、Au−Ag−Cu三元系の金合金において、純金に近い色調をもち、且つ硬さも実用上問題ない装飾用金合金を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者は、まず、金属の色の測色を客観的に定量化する方法を確立し、次いで、確立した測色方法により、金に種々の元素を添加した金合金の測色および硬さの調査を鋭意行った結果、純金の色に近く、且つ硬さも実用上問題ない装飾用金合金を開発するに至った。即ち、従来、再現性が低く、定量化が困難であった金属の測色を極めて高精度に定量化する測色方法を確立し、かかる測色方法をもって初めてなし得た発明である。
【0006】
即ち、請求項1記載の発明は、Auが83〜92重量%で、残部がAg、Cu、および不可避的不純物からなるAu−Ag−Cu三元系の装飾用金合金であって、
Ag重量%/Cu重量%が1.4〜1.6であり、
反射物体の測色方法に基づいて、光D65照明、10゜視野で測色した場合の色相角が79.6゜〜80.6゜であることを特徴とする。
ここで、反射物体の測色方法とは、JISに準拠した拡散照明8°(d/8°)受光(正反射光を含む)方式による測色方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の装飾用金合金において、前記Auが87.2〜87.8重量%であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の装飾用金合金において、
反射物体の測色方法に基づいて、光D65照明、10゜視野で測色した場合の彩度が28以上であることを特徴とする。
ここで、彩度は、L*C*h表色系の彩度C*により評価した値である。
【0008】
以下、上記装飾用金合金の各限定理由について説明する。
金の含有量を83〜92重量%としたのは、上限を超えると装飾品として実用的な硬さが得られないからであり、下限に満たないと彩度が26を下回って純金の彩度の70%以下となるので、表面品質が劣り金装飾品としての表面品質が得られないからである。
ここで、実用的な硬さとは、Hv80以上あることを要する。即ち、現在実用化されている装飾用地金合金の中で最も硬さの低いPt900の焼鈍材のHv70〜75よりも硬ければよいと考えるからである。
【0009】
また、金の含有量が87.2〜87.8重量%であることがより好ましいとしたのは、金含有量が87.5重量%程度の金合金の場合、鋳造品の硬さがHv80以上あり、且つ彩度も28以上となるため、表面が純金色により近く、且つ鋳造品および加工品の硬さが実用的な硬さとなるので、表面品質と硬さのバランスが極めて良好な金合金と言えるからである。より具体的には、金の含有量がこれ以上増えると、鋳造ままの状態ではHv80を下回るため柔らかすぎて使えないので、加工品以外には使用できなくなり、使い勝手が悪くなるからである。
なお、かかる金の含有量は、大蔵省造幣局国家検定には無い21Kの組成ではあるが、金合金の一般的検定公差の±0.3%を採用して、87.2〜87.8重量%とした。
【0010】
Ag重量%/Cu重量%(以下、Ag/Cuという)を1.4〜1.6としたのは、この範囲を外れると、色相角の範囲、即ち、純金の色相角を得ることができないからである。
【0011】
色相角が79.6゜〜80.6゜としたのは、純金の色相角がかかる範囲にあるからであり、かかる範囲に限定することにより、純金に近い色あいを持つ金合金を製造することができる。
【0012】
なお、純金の色相角は、本願の測色方法によれば、厳密には80.1゜あたりであるが、色相角の許容範囲は、彩度に依存し、彩度が大きくなればなるほど、単位角度あたりの色差ΔE*abが大きくなる。ここで、純金の彩度は37.02あたりであるから、円周上の1゜に相当するΔE*abは、約0.6程度である。ΔE*ab=0.6レベルは、色彩ハンドブックによれば、1級(厳格色差)に相当する。従って、各種の誤差要因を考慮した場合の実用的な許容差の限界として1゜の範囲、即ち79.6゜〜80.6゜を色相角の範囲とした。よって本来的には、色相角は、80.1゜により近い方が好ましい。
【0013】
彩度が28以上がより好ましいとしたのは、純金に比べて約75%以上の彩度があれば、見た目には純金により近似した色となるからである。
【0014】
以上のように本発明によれば、色相角が金とほぼ同等となるので、色あいは金と同じとなって見た目は金に極めて近いものとなる。同時に、添加元素により鋳造状態或いは加工後の硬さが実用上問題のないレベルとなる。
特に、金の含有量が87.2〜87.8重量%の場合には、表面が純金色の色に近く、且つ鋳造品および加工品の硬さが実用的な硬さとなるので、表面品質と硬さのバランスが極めて良好な金合金となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。なお、本実施例における色の数値化には、JIS Z 8729 に準拠したL*a*b*表色系およびL*C*h表色系を用いるものとする。
【0016】
[測色方法]
まず、本発明における測色方法について説明する。
一般的に、色を感じるには、▲1▼視覚・▲2▼光源・▲3▼物体の3要素が必要である。
【0017】
▲1▼視覚は個人差があり、目視による定量化は困難なため、視覚部分をセンサーに置き換えて、数値化する装置として分光測色計を用いる。
測色方法は、JISにより数種類提案されており、試料に適した測色方法(照明受光光学系:geometry)を選ぶ事ができる。
【0018】
▲2▼光源は、光源そのものをはじめとして、光路(角度等)、視野、正反射光の扱い、等測色条件を特定する事により、最適化することができる。
▲1▼▲2▼は、分光測色計に依存し、測定機、測色条件を最適化することによって解決できる。具体的には、測色方法(Geometry)、測色機の絶対値精度、機器誤差等が、重要となってくる。
【0019】
そこで、今回の測色には、ミノルタ社製の分光測色計(CM-3600d)を用い、Geometry(ジオメトリー);拡散照明8°(d/8°)受光(正反射光を含む)方式、測定条件;10°視野、D65光源とした。
絶対値精度は、測定機のもつ固有の性能であり、今回使用したCM3600d(ミノルタ製)は、本装置のメーカが公表している絶対値精度は、NPL(National Physical Laboratory:イギリス)で値付けされたカラータイル各色22色における色差ΔE*abが、平均0.33、Max0.94(正反射光を含む場合)である。また機差は、ΔE*ab 0.15以内となっている。
従って、測定物に揺らぎがなく、測定環境が一定であれば、CM-3600dの絶対値精度は、平均でΔE*ab<0.48、最大でΔE*ab<1.09と考えることができる。
【0020】
▲3▼物体は金属の場合、組織的に均一であれば、その組成によって分光反射特性が一義的に決まると考えられる。
しかし、測色条件を決定しても、試料の表面状態によって、測色結果、視覚による見え方、のいずれも異なってくるため、金属がもつ本来の色を測色定量化する場合、測色再現性のため表面状態を同一条件にする事が重要である。
試料の表面状態は、見る角度、測色角度の影響を排除する為、表面が拡散反射するように荒らされた粗面の方が鏡面よりも視覚安定性がよいが、数値定量化する場合、表面を再現性良く荒らすのは困難であるため、面粗さを可能な限り排除し、高精度な鏡面で、且つ最適化した測色条件で測色する事によって、数値再現性の高い測色が出来るようした。測定鏡面のレベルは、平均面粗さ30nm前後で、なるべく新生面生成後60min以内に測色することにより安定した結果を得られるようにした。
【0021】
上記測色方法による測色結果について表1に示す。
【表1】
金、銅は、金属の中で特有な色をした金属であり、彩度(C*値)が高い金属である。金属測色面を30nmレベルの鏡面に仕上げた場合、組織が均一であれば、金、銅レベル以上悪い標準偏差は示さない。30nmレベルの鏡面で測色することにより、金属の持つ色を再現性良く測色する事が出来ようになった。
【0022】
今回採用した測色技術のレベルは、標準偏差の色差ΔE*abで評価すると絶対値誤差は、平均で0.63、最大で1.34である。
色彩ハンドブックによれば、0.6〜1.1レベルは,一級(厳格色差)で、各種誤差を考えた場合の実用的な許容差の限界と規定されている。従って、上記測定誤差は、実用色差として問題にならないレベルと考えることができる。
このように測色条件、測色環境をそろえる事により、誰でもいつでも金属の色を上記に示す統計誤差の示す精度で安定して測色する事ができる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明の実施例、従来例ならびに比較例を挙げ、本発明の特徴とするところを明らかとする。
【0024】
(比較例)
まず、本発明の基礎となる純金の測色ならびに硬さの定量化を行った。
具体的には、高周波溶解炉内に純度99.99%以上のAuを入れて溶解し、鋳込んだのち、50%、70%の圧延加工を施し、最終焼鈍(700℃×20分保持して水冷)して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った。
次いで、鏡面加工した試料表面の測色を行った。測色には、前述したとおり、ミノルタ社製の分光測色計(CM-3600d)を用い、Geometry(ジオメトリー);拡散照明8°(d/8°)受光(正反射光を含む)方式、測定条件;10°視野、D65光源を用いた。
また、鋳造ままの試料、50%加工した試料、70%加工した試料に対して硬さ測定を行った。硬さ測定には、ビッカース硬度計を用い、試験荷重200g(1.96N)、保持時間15秒の条件で測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=37.22、色相角(H°)=80.1、鋳造まま材の硬さ(Hv)=25、50%加工材の硬さ(Hv)=68、70%加工材の硬さ(Hv)=77という結果が得られた。
【表2】
【表3】
【0025】
(実施例1)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.50とする22K(Au91.67重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=30.51、色相角(H°)=79.9、鋳造まま材の硬さ(Hv)=63、50%加工材の硬さ(Hv)=138、70%加工材の硬さ(Hv)=146という結果が得られた。
純金に比べると、彩度(C*)は約−20%であるが、見た目は純金色に近く表面品質は良好である。硬さは、加工材であれば問題ないが、しかし、鋳造まま材の硬さがHv80よりも低いので、鋳造まま材では使用が難しい。
【0026】
(実施例2−1〜2−3)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを各々1.42、1.50、1.58とする21K(Au87.50重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=28.12〜28.38、色相角(H°)=79.7〜80.5、鋳造まま材の硬さ(Hv)=81〜82、50%加工材の硬さ(Hv)=167〜173、70%加工材の硬さ(Hv)=176〜177という結果が得られた。
純金に比べると、彩度(C*)は約−25%である。22Kよりはあざやかさが劣るが見た目には純金色に近く表面品質は良好である。また、鋳造まま材の硬さがHv80よりも高いので、鋳造まま材でも使用可能である。
【0027】
(実施例3)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.50とする20K(Au83.34重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=26.04、色相角(H°)=79.6、鋳造まま材の硬さ(Hv)=102、50%加工材の硬さ(Hv)=192、70%加工材の硬さ(Hv)=203という結果が得られた。
純金に比べると、彩度(C*)は約−30%である。純金に比べてくすんで見えるため表面品質は限界レベルである。硬さは、鋳造まま材でもHv102あるため、実用上問題ない。
【0028】
(比較例1)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.22とする22K(Au91.67重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=29.95、色相角(H°)=78.6、鋳造まま材の硬さ(Hv)=67、50%加工材の硬さ(Hv)=146、70%加工材の硬さ(Hv)=152という結果が得られた。
実施例1と比較すると、色相角(H°)が純金の80.1°から大きくずれるため、見た目が劣る。
【0029】
(比較例2−1)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.86とする21K(Au87.50重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=28.99、色相角(H°)=82.1、鋳造まま材の硬さ(Hv)=75、50%加工材の硬さ(Hv)=164、70%加工材の硬さ(Hv)=168という結果が得られた。
実施例2−1〜2−3と比較すると、色相角(H°)が純金の80.1°から大きくずれるため、見た目が劣る。また、鋳造まま材の硬さがHv80よりも低くなるため、鋳造まま材での実用上の問題が生じる。
【0030】
(比較例2−2)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.35とする21K(Au87.50重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=27.50、色相角(H°)=78.7、鋳造まま材の硬さ(Hv)=88、50%加工材の硬さ(Hv)=177、70%加工材の硬さ(Hv)=182という結果が得られた。
実施例2−1〜2−3と比較すると、色相角(H°)が純金の80.1°から大きくずれるため、見た目が劣る。
【0031】
(比較例3−1)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを2.34とする20K(Au83.34重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=27.93、色相角(H°)=85.0、鋳造まま材の硬さ(Hv)=89、50%加工材の硬さ(Hv)=180、70%加工材の硬さ(Hv)=186という結果が得られた。
実施例2−1〜2−3、及び実施例3−1と比較すると、彩度(C*)は実施例2−1〜2−3とほぼ同等の値となるが、色相角(H°)が純金の80.1°から大きくずれるため、見た目が劣る。
【0032】
(比較例3−2)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.00とする20K(Au83.34重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=25.03、色相角(H°)=76.1、鋳造まま材の硬さ(Hv)=120、50%加工材の硬さ(Hv)=211、70%加工材の硬さ(Hv)=221という結果が得られた。
実施例2−1〜2−3、及び実施例3−1と比較すると、彩度(C*)が実施例2−1〜2−3よりも劣り純金の約−33%であり、見た目にもくすんで見える。また、色相角(H°)が純金の80.1°から大きくずれるため、見た目が実施例3−1に比べて大きく劣る。
【0033】
(比較例4)
次いで、高周波溶解炉内にAu、Ag、Cuを入れ溶解し、Ag/Cuを1.50とする18K(Au75.00重量%)のAu−Ag−Cu三元系金合金を鋳込んだのち、上記圧延加工、および最終焼鈍して、測色面径φ6mmの試料を作成した。
次いで、上記と同様に、試料表面粗さが30nm程度になるまで鏡面仕上げを行った後、鏡面加工した試料表面の測色を上記方法により行った。
また、上記と同様の条件で、試料の硬さを測定した。
以上により、表2、表3に示す通り、彩度(C*)=23.80、色相角(H°)=81.1、鋳造まま材の硬さ(Hv)=134、50%加工材の硬さ(Hv)=224、70%加工材の硬さ(Hv)=239という結果が得られた。
純金と比較すると、彩度(C*)が純金の約−36%であり、もはや純金の色とはほど遠く表面品質が劣る。
【0034】
(色相角について)
図1は、色度+a*(赤方向)と色度+b*(黄方向)のL*a*b*表色系の色度図である。3つの線のうち、中央の線は、純金の色相角である80.1°の色相角線であり、上下の線は、80.1°から色相角が±0.5°ずれた色相角線、即ち、79.6゜および80.6゜の色相角線である。
図1から分かる通り、彩度が大きくなればなるほど、単位角度あたりの色差ΔE*abが大きくなる。純金の彩度は37.02であるから、円周上の1゜に相当するΔE*abは、約0.6程度である。ΔE*ab=0.6レベルは、色彩ハンドブックによれば、1級(厳格色差)に相当する。従って、各種の誤差要因を考慮した場合の実用的な許容差の限界として1゜の範囲、即ち79.6゜〜80.6゜を色相角の範囲とした。
【0035】
(Ag、Cuの最適化)
図2は、Ag/Cuと色相角の関係を示す図であって、横軸にAg/Cu、縦軸に色相角を示す。
なお、図2に示す色相角のデータは、上記した方法により20K〜22Kの間で、Ag/Cu比を変えた試料を作成し、上記した測色方法により測色したものである。
図2に示すように、Ag/Cuと色相角との間には相関が見られ、Ag/Cuが大きくなるほど色相角も大きくなる。
ここで、前述した色相角の許容範囲79.6゜〜80.6゜に入る範囲を決定する。20K〜22Kに関しては、Ag/Cuが1.4〜1.6の範囲であれば、色相角の許容範囲に入ることが分かった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、Au−Ag−Cuの三元系の金合金において、純金と近似する色あいが得られ、高級感のある素材を得ることができる。しかも、硬さが変形、キズ、摩耗等の問題が起こらないレベルにあり、硬さも良好である。加えて、Au−Ag−Cuの三元系の金合金であるため、金属アレルギーの問題も発生することなく、汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】色度+a*(赤方向)と色度+b*(黄方向)のL*a*b*表色系の色度図である。
【図2】Ag/Cuと色相角の関係を示す図である。
Claims (3)
- Auが83〜92重量%で、残部がAg、Cu、および不可避的不純物からなるAu−Ag−Cu三元系の装飾用金合金であって、
Ag重量%/Cu重量%が1.4〜1.6であり、
反射物体の測色方法に基づいて、光D65照明、10゜視野で測色した場合の色相角が79.6゜〜80.6゜であることを特徴とする装飾用金合金。 - 請求項1記載の装飾用金合金において、
前記Auが87.2〜87.8重量%であることを特徴とする装飾用金合金。 - 請求項1または2に記載の装飾用金合金において、
反射物体の測色方法に基づいて、光D65照明、10゜視野で測色した場合の彩度が28以上であることを特徴とする装飾用金合金。
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