JP3946549B2 - 撥水性粒子担持繊維、撥水性粒子担持繊維シート、およびその製造方法、並びにそれを用いた衣服 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維表面または繊維シートを構成する繊維の繊維表面に撥水性粒子が接着剤などを介さずに直接固着した、撥水性、撥油性、低摩擦性、帯電性などに優れ、特に撥水性に著しく優れた撥水性粒子担持繊維、撥水性粒子担持繊維シート、およびその製造方法、並びにそれを用いた衣服に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維素材を撥水加工や撥油加工する技術としては、例えば溶剤や水に溶解、分散させた撥水性の樹脂、エマルジョン、ディスパーションなどを繊維素材に塗布した後、溶剤や水などを気化させ撥水性の連続皮膜を形成させる方法が一般的に知られている。しかし、このような方法による撥水性の繊維素材は、撥水性や撥油性の樹脂を溶解、分散させる際に界面活性剤を使用したり、場合によっては繊維との接着性を良くするために接着剤を添加したり、他の添加剤を加える必要があった。このため、撥水性樹脂以外に他の物質が介在することになり、撥水性樹脂が本来有する撥水性としての特性が十分に生かされず、このため撥水性の度合いの高度なものを得ることは困難であった。さらに、洗濯耐性に劣るという問題や、耐溶剤性が低くドライクリーニング後の撥水性の低下が大きいという問題があった。
【0003】
また、特開2001−146627号公報には、撥水性粒子を紡糸原液に添加混合することにより、繊維中に撥水性粒子を含有する方法が開示されている。しかし、このような方法によると、撥水性粒子の一部しか繊維表面に現れず、繊維表面には撥水性粒子が散在するため十分な撥水性が得られないという問題があった。かといって、撥水性粒子を多用すると繊維内部に撥水性粒子が多量に混入して、繊維自体の性質が変化し、例えば繊維が硬くなったり脆くなったりするという問題や紡糸できなくなるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、撥水性、撥油性、低摩擦性、帯電性などに優れ、特に撥水性に著しく優れ、かつ洗濯耐性などの耐久性に優れ、繊維自体の特性も損なわれることのない、撥水性粒子担持繊維および撥水性粒子担持繊維シート、およびその製造方法、並びにそれを用いた衣服を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、請求項1の発明では、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、該繊維表面の熱溶融によって撥水性粒子が直接固着しており、撥水繊維洗濯耐性試験または撥水繊維ドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であることを特徴とする撥水性粒子担持繊維による。
【0006】
請求項2の発明では、前記接触角が140度以上であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性粒子担持繊維による。
【0007】
請求項3の発明では、前記撥水性粒子がフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性粒子担持繊維による。
【0008】
請求項4の発明では、請求項1〜3の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維を、繊維シートの構成繊維として含んでいることを特徴とする撥水性粒子担持繊維シートによる。
【0009】
請求項5の発明では、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、該繊維表面の熱溶融によって撥水性粒子が直接固着している該合成繊維を有し、撥水シート洗濯耐性試験または撥水シートドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であることを特徴とする撥水性粒子担持繊維シートによる。
【0010】
請求項6の発明では、前記接触角が140度以上であることを特徴とする請求項5に記載の撥水性粒子担持繊維シートによる。
【0011】
請求項7の発明では、請求項4〜6の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維シートを用いた衣服による。
【0012】
請求項8の発明では、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維において、該合成繊維の繊維表面を構成する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面を溶融して該繊維表面に該撥水性粒子を固着させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維の製造方法による。
【0013】
請求項9の発明では、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維を有する繊維シートにおいて、該合成繊維の繊維表面を構成する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面に該撥水性粒子を固着させることを特徴とする請求項5または6に記載の撥水性粒子担持繊維シートの製造方法による。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の撥水性粒子担持繊維は、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、該繊維表面の熱溶融によって撥水性粒子が直接固着しており、撥水繊維洗濯耐性試験または撥水繊維ドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であることを特徴とする撥水性粒子担持繊維である。
【0015】
前記繊維は、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維であり、繊維表面が加熱により溶融する繊維であれば繊維の種類は問わず適宜選択できる。このような繊維としては、例えば従来の繊維の製法である溶融紡糸による合成繊維や、従来の不織布の製法であるスパンボンド法やメルトブロー法やフラッシュ紡糸法などによって得られる繊維から適宜選択できる。
【0016】
合成繊維や不織布の製法によって得られる繊維としては、例えばポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの熱可塑性樹脂からなる合成繊維があり、合成繊維は1種類の熱可塑性樹脂からなる合成繊維であっても、異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維であっても適宜選択して使用することができる。このような複合繊維としては、融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維があり、例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの樹脂の組み合わせからなる複合繊維がある。このような複合繊維としては、例えば芯に高融点樹脂、鞘に低融点樹脂を有する芯鞘型複合繊維などがある。また、上記の合成繊維や不織布の製法によって得られる繊維がポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリオレフィン樹脂からなる繊維であれば、このような繊維を繊維シートとして衣服に用いた場合、風合いに優れた衣服となる。
【0018】
前記繊維の断面形状や、表面形状は任意の形状とすることができる。例えば、熱可塑性樹脂からなる複合繊維が水流などの機械的応力によって分割された断面形状が菊花状の繊維や、フィブリル状に分割された繊維とすることができる。
【0019】
前記繊維の平均径や長さは、従来の繊維の製法である溶融紡糸による合成繊維や、従来の不織布の製法であるスパンボンド法やメルトブロー法やフラッシュ紡糸法などによって得られる繊維や、天然繊維や、無機繊維などの繊維の平均径や長さのものを適宜選択でき、例えば繊維の平均径は0.1μm〜3mmの範囲の広範囲の平均径とすることができる。また、繊維の平均径は、好ましくは0.5μm〜500μmの範囲であり、更に好ましくは0.5μm〜100μmの範囲である。ここで、繊維の平均径とは繊維の断面積と同じ面積の円の直径とする。
【0020】
本発明の撥水性粒子は、撥水性の性質をもつ粒子であり、撥水性のみならず撥油性の粒子であることができる。このような撥水性の粒子は、撥水性を付与せしめることができる固体粒子であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、耐薬品性、電気絶縁体、低摩擦性、耐侯性、耐溶剤性に優れているフッ素樹脂粒子、フッ素樹脂含有粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーン樹脂含有粒子、ゴム粒子および疎水化処理粒子から選ばれる1種または2種以上が望ましい。本発明ではこのような撥水性粒子が繊維表面に直接固着しているが、目的とする撥水性を妨げない限り、撥水性粒子以外の固体粒子が固着していることも可能である。
【0021】
前記フッ素樹脂粒子、フッ素樹脂含有粒子に用いるフッ素系樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン―フッ化ビニリデン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピオン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン―プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)―テトラフルオロエチレン共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)―テトラフルオロエチレン系共重合体フッ化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン―テトラフルオロエチレン系共重合体樹脂が挙げられる。これらの中で、特に、四フッ化エチレン樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)からなる粒子が好ましい。このPTFEは、広い温度範囲、耐薬品性、電気絶縁体、低摩擦性、耐侯性、耐溶剤性が更に優れているからである。
【0022】
また、フッ素系樹脂には、官能基を含有するフッ素樹脂も含まれる。官能基含有フッ素樹脂は、特に限定されずに、広範囲なものが使用できる。例えば、フルオロオレフィンおよびこれと共重合可能なモノマーであれば何でも良い。フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレンなどの炭素数2または3のフルオロオレフィンが挙げられる。また、フルオロオレフィンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アリルエーテル、カルボン酸アリルエステル、イソプロペニルエーテル、カルボン酸イソプロペニルエーテル、メタリルエーテル、カルボン酸メタクリルエーテル、α―オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどから選ばれる1種以上のモノマーが挙げられる。上記ビニルエーテルとして、例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などアルキルビニルエーテルが挙げられる。上記カルボン酸ビニルエステルとしては、分岐状のアルキル基を有するベオバー10(シェル化学製商品名)、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類が例示される。アリルエーテルとして、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテルなどのアルキルアリルビニルエーテルが例示される。カルボン酸アリルエステルとして、プロピオン酸アリル、酢酸アリルなどの脂肪酸アリルエステルが例示される。上記イソプロペニルエーテルとしては、メチルイソプロペニルエーテルなどのアルキルイソプロペニルエーテルが例示される。α―オレフィンとして、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどが例示される。なお、フルオロオレフィン(モノマー)の共重合割合が少なすぎると、撥水性が十分に発揮されないこととなるので、上記フルオロオレフィンと共重合可能なモノマーからなるフッ素樹脂では、フルオロオレフィンに基づく重合単位が共重合体中30〜70モル%の割合、特に、40〜60モル%の割合である共重合体が好ましい。
【0023】
更に、水酸基またはカルボキシル基を含むフッ素樹脂も挙げられる。例えば、クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどの含フッ素オレフィン類と水酸基またはカルボキシル基を含むモノマーを共重合したものが挙げられる。また、これに必要に応じて、他のモノマーを共重合させても良い。上記水酸基を含むモノマーとして、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどの水酸基を有するビニルエーテル類、エチレングリコールモノアリルエーテルなどのアリルエーテル類などが例示される。上記カルボキシル基を含むモノマーとして、クロトン酸、ウンデゼン酸などの不飽和酸化合物が例示される。また、カルボキシル基は、水酸基を有するフッ素樹脂に無水コハク酸、無水フタル酸などを高分子反応によりハーフエステル化して、カルボン酸基を導入したものであっても良い。また、他のモノマーとして、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテルなどの鎖状または脂環状のアルキルビニルエーテル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル類などが例示される。水酸基またはカルボキシル基を含むフッ素樹脂は、含フッ素オレフィン類を好ましくは20〜80モル%、さらに30〜70モル%の割合で共重合させた含フッ素オレフィン系共重合体が好ましい。また、フルオロオレフィン/イソブチレン共重合体と無水マレイン酸/イソブチレン共重合体からなるフッ素樹脂でも良い。
【0024】
なお、以上の説明で述べたフッ素系樹脂粒子を繊維の繊維表面に固着するに際しては、その繊維成分の融点以上で溶融したり或いは凝集したりすることのない、安定なフッ素系樹脂粒子を選択して用いる必要がある。
【0025】
本発明において用いることができるシリコーン樹脂粒子、シリコーン含有樹脂粒子などのシリコーン系樹脂粒子は、一般に、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性、撥水性、潤滑性などの特性を有するものである。シリコーン樹脂粒子は、シロキサン結合が、(CH3SiO3/2)で表わせる3次元網目状に架橋した構造を有する粒子であれば特に限定されず、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン(ポリメチルシルセスキオキサン)硬化物の樹脂粒子が挙げられる。具体的には、商品名:KMP590、X-52-854、X-52-821、X-52-830、X-52-831、X-52-1034、X-52-1033、X-52-1032、X-52-1186(信越化学工業社製)のシリコーン樹脂粒子や、商品名:トスパール105、トスパール120、トスパール130、トスパール145、トスパール3120、トスパール240(東芝シリコーン社製)のシリコーン樹脂粒子や、商品名:ドレフィルE―500、501、505C、506Cの500シリーズ、E―600、601、602、603の600シリーズ、E―730Sの700シリーズ、E―850の800シリーズ(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)の架橋型シリコーンの樹脂粒子が挙げられる。
【0026】
また、シリコーン含有樹脂粒子としては、例えば、シリコーンゴム粒子などが挙げられる。このシリコーンゴム粒子は、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を有するシリコーンゴム粒子(シリコーンゴム硬化物)であり、形状は球状あるいは不定形の粒子である。具体的には、商品名:KMP597、KMP598、KMP594、8KMP595(信越化学工業社製)のシリコーンゴム粒子が挙げられる。更に、球状シリコーンゴム粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆したものも使用することができる。例えば、信越化学工業社製の商品名:シリコン複合粒子(KMP600、X-52-1139G、 X-52-1139K)が挙げられる。この粒子は、シリコン複合粒子で、球状シリコーンゴム粒子表面を更にシリコーン樹脂で被覆したものである。また、シリコーングラフトアクリル樹脂(シリコーンマクロモノマー(ジメチルポリシロキサン)と(メタ)アクリル酸メチルのアクリル酸系モノマーとの共重合体(例えば、商品名:X-22-8084、信越化学工業社製)となる非反応性グラフト樹脂も使用することができる。
【0027】
なお、以上の説明で述べたシリコーン系樹脂粒子を繊維の繊維表面に固着するに際しては、その繊維成分の融点以上で溶融したり或いは凝集したりすることのない、安定なシリコーン系樹脂粒子を選択して用いる必要がある。
【0028】
本発明において使用することができる疎水化処理粒子としては、例えば、疎水化シリカ粒子の表面を疎水化して撥水性を付与したものが挙げられる。例えば、球状のアモルファスシリカ表面をシリコーン処理した合成シリカ粒子である。具体的には、疎水化シリカ粒子(商品名:KMP110、KMP105 製品信越化学工業(株))が挙げられる。また、本発明において使用することができるゴム粒子は、天然ゴムや合成ゴムから得られるものが挙げられる。合成ゴム粒子として、例えば、NBR粒子(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、IR粒子(イソプレンゴム)、EPT粒子またはEPDM粒子(エチレン・プロピレンゴム)、SBR粒子、ハイスチレンゴム粒子、BR(ブタジエンゴム)粒子、MBS(ブタジエン・スチレン・メチルメタククリレート)粒子、IIR粒子(ブチルゴム)が挙げられる。天然ゴム粒子としては、例えば、シス―1,4―ポリイソプレン(分子量が約1000〜数百万)よりなるものが挙げられる。生ゴムは、熱可塑性高分子であるが、加硫により3次元網目構造を有する粒子としたものが使用できる。
【0029】
本発明の撥水性粒子担持繊維では、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる前記合成繊維の繊維表面に直接固着している。このように前記撥水性粒子が繊維全体が熱可塑性樹脂からなる前記合成繊維の繊維表面に直接固着している繊維を以下の説明のなかで撥水性粒子固着繊維ということがある。直接固着しているとは、熱可塑性樹脂が溶融時にもつ接着力で固体粒子が固着した状態であり、他の接着剤が介在しない固着状態を指すものとする。このように直接固着した状態は、例えば繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維において、該繊維の繊維表面を構成する樹脂のうち最も低い融点を有する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面に該撥水性粒子を固着させる方法によって得ることができる。本発明ではこのように、繊維表面に直接固着している撥水性粒子固着繊維であることを第一の特徴としており、このような繊維表面に撥水性粒子を直接固着させる方法は、これまで優れた方法が見つかっていない。なぜなら従来より撥水性粒子は液体を弾く性質があるため溶融状態の繊維表面には撥水性粒子は固着し難いためである。しかし、鋭意研究の結果、直接固着させることができることを見いだし本発明に至ったのである。
【0030】
本発明の撥水性粒子担持繊維が、上述の、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維において、該繊維の繊維表面を構成する樹脂のうち最も低い融点を有する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面に該撥水性粒子を固着させる方法による場合は、繊維表面に撥水性粒子が接触した部分のみが溶融して撥水性粒子を担持している。そのため撥水性粒子の表面のうち接触部分以外または固着部分以外の表面部分を溶融樹脂が覆ってしまうことが非常に少なくなっている。また、繊維表面の溶融樹脂が流動化して、撥水性粒子が埋没してしまうことも非常に少なくなっている。また、接触した撥水性粒子間の隙間より溶融樹脂が沁み出しそれら撥水性粒子の外側にある撥水性粒子をも固着して、繊維表面上で撥水性粒子が部分的に複層となってしまい、繊維表面に撥水性粒子が均一に担持されないという問題も発生しない。のみならず、場合によっては、均一な、単層の固着または担持も可能である。このため、この方法による撥水性粒子担持繊維は、特に撥水機能を有効に発揮することができる。また、繊維全体を加熱して繊維表面を溶融させてから撥水性粒子を付着させる場合は、繊維の熱収縮や、糸切れのトラブルを生じることがある。しかし、上述の方法ではこのような問題は生じないばかりか、このような繊維全体の熱劣化や繊維の表面の熱劣化が起きないか、もし起きても少なくて済むので品質が優れている。
【0031】
前記撥水性粒子の融点または分解温度は前記繊維表面の融点以上であることが好ましい。もし、撥水性粒子の融点または分解温度が繊維表面の融点より低い場合は、繊維表面に撥水性粒子が担持されないか、または繊維表面に撥水性粒子が担持されたとしても、その形態は撥水性粒子が繊維表面よりも先に溶けて撥水性粒子が凝集体となったり、撥水性粒子が繊維表面に衝突して貫入する力が弱まり、繊維表面との固着力に劣るものとなることがある。
【0032】
前記撥水性粒子の平均粒子径は、前記繊維径以下であることが好ましい。撥水性粒子の平均粒子径が繊維径の大きさを超えると、撥水性粒子は繊維表面より脱落し易くなり、繊維表面に撥水性粒子が固着した状態を保ち難くなる場合がある。また、このような撥水性粒子が担持した繊維を得ようとしても撥水性粒子を繊維表面に固着させることが困難になる場合がある。また、撥水性粒子が樹脂からなる場合は撥水性粒子の平均粒子径は0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。なお、撥水性粒子の平均粒子径とは撥水性粒子の数平均粒子径を表すものとする。また、繊維表面の見かけの面積に対して、好ましくは20%以上の面積が、より好ましくは40%以上が、更に好ましくは50%以上が撥水性粒子によって覆われていることにより、高度な撥水性や撥油性を有することができる。なお、見かけの面積とは撥水性粒子担持繊維の外見の表面積を表すものとし、例えば撥水性粒子担持繊維の写真撮影により求めることができる。
【0033】
前記撥水性粒子担持繊維は前記撥水性粒子固着繊維であるとともに、第二の特徴として撥水繊維洗濯耐性試験または撥水繊維ドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であり、より好ましくは該接触角が140度以上である。また、更に好ましくは前記撥水性粒子担持繊維は、撥水繊維洗濯耐性試験および撥水繊維ドライクリーニング耐性試験の試験の後に、両試験とも水に対する接触角が135度以上であり、より好ましくは該接触角が140度以上である。
【0034】
なお、前記撥水性粒子担持繊維の水に対する接触角の測定方法は、次に示す方法による。
(撥水性粒子担持繊維の接触角の測定方法)
まっすぐに伸ばした複数の撥水性粒子担持繊維を互いの繊維軸が平行となるように、平坦な表面を有するサンプル支持具の平面上に載置して、繊維の両端を粘着テープで止める。次いで、この平面の純水との接触角を協和界面科学株式会社製の接触角計CA−SミクロII型を用いて測定する。接触角を測定する際に該繊維の繊維表面に滴下する純水の量は約30μgとする。また、純水を滴下してから3分間経過後に接触角の測定を行う。
【0035】
また、前記撥水性粒子担持繊維の洗濯耐性試験は次に示す方法による。
(撥水繊維洗濯耐性試験)
撥水性粒子担持繊維を10cm程度の長さにカットし、100〜300本を引き揃え両端をクリップで固定して繊維束とする。次いで、その繊維束をたて方向およびよこ方向が10cm×10cmの洗濯用ネットに入れ、試験体とする。撥水性粒子担持繊維が10cm以下の長さである場合は、総長10〜30mの長さに相当する量の繊維塊を、繊維が抜け出ない程度の目の粗さの洗濯用ネットに入れ、試験体とする。次に、家庭用二槽式洗濯機に約40℃の水40リットルを入れ、これに家庭用の洗濯用洗剤20gを加え、よくかき混ぜて洗剤を溶解する。浴比が50対1となるように、試験体1枚と負荷布として綿布を必要枚数加えて洗濯液に投入し、洗濯操作を行う。洗濯操作は正方向のみの回転方向で90分間攪拌する。その後水ですすぎ洗いを15分間行い、次に洗濯機に付属の脱水機で3分間試験片を脱水し、次に室温で放置して、自然乾燥させる。乾燥後に前記接触角の試験を行う。
【0036】
また、前記撥水性粒子担持繊維のドライクリーニング耐性試験は次に示す方法による。
(撥水繊維ドライクリーニング耐性試験)
ドライクリーナー(三菱重工株式会社製MP508)に浴比が50対1となるように、撥水性粒子担持繊維の洗濯耐性試験で使用する試験体と同様の試験体1枚と負荷布として綿布を必要枚数加えて投入し、ドライクリーニング操作を行う。ドライクリーナーの溶剤にはパークロルエチレンを用いる。ドライクリーニング操作は、ドライクリーニングを5分間行い、その後遠心分離による脱液を2分間行い、その後60℃で17分間乾燥を行う一連の操作を1回として、このドライクリーニング操作を続けて3回行う。その後、前記接触角の試験を行う。
【0037】
本発明の撥水性粒子担持繊維シートは、前記撥水性粒子担持繊維を、繊維シートの構成繊維として含んでいる繊維シート(以下撥水性粒子担持繊維含有シートということがある)であるか、或いは前記撥水性粒子固着繊維を有し、撥水シート洗濯耐性試験または撥水シートドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上である繊維シート(以下撥水性粒子固着撥水シートということがある)である。したがって、本発明の撥水性粒子担持繊維シートは、該撥水性粒子担持繊維含有シートであり且つ該撥水性粒子固着撥水シートである繊維シートをもちろん含むものである。
【0038】
前記撥水性粒子担持繊維含有シートは、繊維シート中に、少なくとも撥水性粒子担持繊維を含んでいる繊維シートであり、前記繊維シートは撥水性粒子担持繊維のみを含むことができるが、撥水性粒子担持繊維以外の繊維を含むこともできる。撥水性粒子担持繊維以外の繊維としては特に限定されず、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる繊維であっても、表面が熱可塑性樹脂でない繊維の例えば無機繊維や融点を有せず分解温度を有する繊維などであってもかまわない。繊維シートの構造としては、例えば織物、編物、不織布などがある。織物や編物の場合は、前記繊維を織機や編機により加工することによって得られる。また、不織布の場合は、従来の不織布の製法である、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、湿式法などによって繊維シートとすることができる。また、これらの製法によって形成される繊維ウエブに、接着性繊維や融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維などを予め混入させてから、加熱処理すれば繊維間が接合された繊維シートとすることができる。また、前記繊維ウエブ間を水流絡合やニードルパンチなどの機械的絡合処理によって絡合させた繊維シートとすることもできる。また、前記繊維ウエブを加熱した平滑なロールと加熱した凹凸のあるロールの間に通して、部分的に結合された繊維シートとすることもできる。また、種類の異なる前記繊維シートを複数積層して更に一体化してなる繊維シートであってもよい。
【0039】
前記撥水性粒子担持繊維含有シートを得る方法としては、例えば撥水性粒子担持繊維を用いて撥水性粒子担持繊維を含んだ繊維シートを上記のようにして形成することによって得る方法や、或いは、撥水性粒子担持繊維を含まない繊維シートを予め形成してから、少なくとも一部の繊維が撥水性粒子担持繊維となるように撥水性粒子を固着させる方法などがある。
【0040】
前記撥水性粒子固着撥水シートは、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、撥水性粒子が直接固着している該繊維(撥水性粒子固着繊維)を有し、撥水シート洗濯耐性試験または撥水シートドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であり、より好ましくは該接触角が140度以上である繊維シートである。また、更に好ましくは前記撥水性粒子固着撥水シートは、撥水シート洗濯耐性試験および撥水シートドライクリーニング耐性試験の後に、両試験とも水に対する接触角が135度以上であり、より好ましくは該接触角が140度以上である。該繊維シートは該撥水性粒子固着繊維のみを含むことができるが、撥水性粒子固着繊維以外の繊維を含むこともできる。
【0041】
前記撥水性粒子固着繊維以外の繊維としては特に限定されず、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる繊維であっても、表面が熱可塑性樹脂でない繊維の例えば無機繊維や融点を有せず分解温度を有する繊維などであってもかまわない。繊維シートの構造としては、例えば織物、編物、不織布などがある。織物や編物の場合は、前記繊維を織機や編機により加工することによって得られる。また、不織布の場合は、従来の不織布の製法である、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、湿式法などによって繊維シートとすることができる。また、これらの製法によって形成される繊維ウエブに、接着性繊維や融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維などを予め混入させてから、加熱処理すれば繊維間が接合された繊維シートとすることができる。また、前記繊維ウエブ間を水流絡合やニードルパンチなどの機械的絡合処理によって絡合させた繊維シートとすることもできる。また、前記繊維ウエブを加熱した平滑なロールと加熱した凹凸のあるロールの間に通して、部分的に結合された繊維シートとすることもできる。また、種類の異なる前記繊維シートを複数積層して更に一体化してなる繊維シートであってもよい。
【0042】
前記撥水性粒子固着撥水シートを得る方法としては、例えば撥水性粒子固着繊維、または撥水性粒子担持繊維を適宜用いて、撥水シート洗濯耐性試験または撥水シートドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上となるように、繊維シートを上記のようにして形成することによって得る方法や、或いは、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維を含むが撥水性粒子固着繊維を含まない繊維シートを予め形成してから、撥水シート洗濯耐性試験または撥水シートドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上となるように、撥水性粒子を繊維シートを構成する、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に固着させる方法などがある。
【0043】
なお、前記撥水性粒子担持繊維シートの水に対する接触角の測定方法は、次に示す方法による。
(撥水性粒子担持繊維シートの接触角の測定方法)
撥水性粒子担持繊維シートを、平坦な表面を有するサンプル支持具の平面上に載置して、繊維シートの両端を粘着テープで止める。次いで、この繊維シートの平面の純水との接触角を協和界面科学株式会社製の接触角計CA−SミクロII型を用いて測定する。接触角を測定する際に該繊維シートに滴下する純水の量は約30μgとする。また、純水を滴下してから3分間経過後に接触角の測定を行う。
【0044】
また、前記撥水性粒子担持繊維シートの洗濯耐性試験は次に示す方法による。(撥水シート洗濯耐性試験)
家庭用二槽式洗濯機に約40℃の水40リットルを入れ、これに家庭用の洗濯用洗剤20gを加え、よくかき混ぜて洗剤を溶解する。浴比が50対1となるように、たて方向およびよこ方向が10cm×10cmの試験片3枚と負荷布として綿布を必要枚数加えて洗濯液に投入し、洗濯操作を行う。洗濯操作は正方向のみの回転方向で90分間攪拌する。その後水ですすぎ洗いを15分間行い、次に洗濯機に付属の脱水機で3分間試験片を脱水し、次に室温で放置して、自然乾燥させる。乾燥後に前記接触角の試験を行う。
【0045】
また、前記撥水性粒子担持繊維シートのドライクリーニング耐性試験は次に示す方法による。
(撥水シートドライクリーニング耐性試験)
ドライクリーナー(三菱重工株式会社製MP508)に浴比が50対1となるように、たて方向およびよこ方向が10cm×10cmの試験片3枚と負荷布として綿布を必要枚数加えて投入し、ドライクリーニング操作を行う。ドライクリーナーの溶剤にはパークロルエチレンを用いる。ドライクリーニング操作は、ドライクリーニングを5分間行い、その後遠心分離による脱液を2分間行い、その後60℃で17分間乾燥を行う一連の操作を1回として、このドライクリーニング操作を続けて3回行う。その後、前記接触角の試験を行う。
【0046】
本発明の撥水性粒子担持繊維は、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、撥水性粒子が直接固着しているので、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートは撥水性に著しく優れている。撥水性粒子が直接固着しているので、従来の技術のように、撥水性や撥油性の樹脂を溶解、分散させる際に界面活性剤を使用したり、繊維との接着性を良くするために接着剤を添加したり、他の添加剤を加える必要がないので、撥水性樹脂以外に他の物質が介在しておらず、撥水性樹脂が本来有する撥水性としての特性が十分に生かされており、高度な撥水性を有している。さらに、洗濯などにより接着剤や添加剤などが劣化して撥水性粒子が脱落する恐れもなく、耐久性に優れている。また、従来の技術の、撥水性粒子を紡糸原液に添加混合して作られた、繊維中に撥水性粒子を含有する繊維では、撥水性粒子の一部しか繊維表面に現れず、繊維表面には撥水性粒子が散在するため十分な撥水性が得られないという問題があり。かといって、撥水性粒子を多用すると繊維内部に撥水性粒子が多量に混入して、繊維自体の性質が変化し、例えば繊維が硬くなったり脆くなったりするという問題や、紡糸できないという問題があったが、本発明では繊維表面のみに密に撥水性粒子が固着しているため、撥水性樹脂が本来有する撥水性としての特性や繊維自体がもつ特性が十分に生かされており、高度な撥水性を有している。
【0047】
さらにまた、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートは、撥水性粒子が粒子状に繊維表面に密に固着しているので、撥水性粒子の材質が本来もっている撥水性能以上の撥水性を有することができる。すなわち、撥水性粒子が繊維表面に密に固着しているので、撥水性粒子担持繊維の繊維表面には撥水性の微細な凹凸が生じる。この凹凸により、該繊維表面と水との接点が少なくなり、該繊維表面の撥水性粒子の材質(例えばフッ素樹脂)が本来有している水との接触角よりも、該繊維表面と水との接触角が大きくなる。この現象は自然界ではハスの葉の上において見られる。また、このように表面に凹凸を付与した場合の撥水現象は、Wenzelの式で説明でき、Cassieの式でその値の予測ができる。このことは、雑誌「高分子」No.45、566頁でも説明されている。このように、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートは、撥水性粒子の材質がもつ撥水特性と撥水性粒子の形態や配置に起因する撥水特性とが相乗された撥水特性を呈することができる。例えば、PTFEフィルムと水との接触角はおよそ108度であるが、このPTFEを粒子状にして本発明に適用すると、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートの水との接触角は140度以上とすることができ、超撥水性とすることができる。
【0048】
さらにまた、本発明の撥水性粒子担持繊維シートは、前記撥水性粒子担持繊維の形態や、配置によっても撥水特性をさらに高めることができる。例えば、撥水性粒子担持繊維シートを構成する撥水性粒子担持繊維を毛羽立たせることにより、また該繊維を極細繊維としたり、分割して極細化したり、フィブリル化することにより、水との接点を少なくすることができる。このようにすることにより、前述と同様の理由により、撥水性粒子担持繊維シート表面と水との接触角が大きくなる。このように、本発明の撥水性粒子担持繊維シートは、撥水性粒子の材質がもつ撥水特性と撥水性粒子の形態や配置に起因する撥水特性とが相乗された撥水特性に、さらに繊維の形態や配置に起因する撥水特性とが相乗された撥水特性を呈することができる。
【0049】
なお、従来技術である特開平9−239211号公報には、フッ素系樹脂粒子を水に分散させたディスパージョンによって、繊維表面にフッ素系樹脂粒子を被膜により固着させた耐酸性フィルターが開示されているが、このような方法によると、分散剤として使用している界面活性剤が撥水性を阻害する。また、接着剤であるブロックドイソシアネート化合物などの被膜が、フッ素系樹脂粒子の表面の一部もしくは全部を覆ってしまい、フッ素系樹脂粒子のもつ撥水性を阻害するばかりか、繊維表面の粒子による凹凸が失われ、凹凸による撥水効果を十分に利用することができない。また、水の中にディスパージョンもしくはエマルジョンの形態で存在できるフッ素樹脂粒子は、重合度の低いものであるため、固着処理時に加熱により粒子の形状が崩れ、フィルム状の被膜になってしまい、繊維表面に凹凸を形成することが困難である。従って、このような従来技術による耐酸性フィルターは耐溶剤性が低く、ドライクリーニングによる撥水性の低下が大きいものとなってしまう。
【0050】
以上の説明のように、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートを衣料、衛生材料、吸収材、カバー材など様々な用途に適した形態とすることにより、撥水性、撥油性、低摩擦性、帯電性などに優れ、特に撥水性に著しく優れ、かつ耐洗濯耐性などの耐久性に優れ、繊維自体の特性も損なわれることのない、各種用途に適した材料とすることができる。特に、本発明の撥水性粒子担持繊維シートを用いた衣服は、通気性を保持しながら、高度な撥水性を得ることができ、また洗濯耐性や、ドライクリーニング耐性にもきわめて優れた衣服とすることができる。なお、本発明では洗濯耐性やドライクリーニング耐性による評価を、耐久性の指標として用いているのであって、本発明を適用する用途は、洗濯やドライクリーニングを必要とする用途にのみ限定されるものではない。
【0051】
本発明の撥水性粒子担持繊維の製造方法は、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維において、該合成繊維の繊維表面を構成する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面を溶融して該繊維表面に該撥水性粒子を固着させることを特徴とする撥水性粒子担持繊維の製造方法である。また、本発明の撥水性粒子担持繊維シートの製造方法は、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維を有する繊維シートにおいて、該合成繊維の繊維表面を構成する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面に該撥水性粒子を固着させることを特徴とする撥水性粒子担持繊維シートの製造方法である。
【0052】
前記撥水性粒子を加熱するには、例えば耐熱性の容器に固体粒子を入れ、オーブンで加熱する方法や、耐熱性のコンベア−上に撥水性粒子を載せコンベア−を移動させながらコンベア−上部のヒーターを用いて連続的に加熱する方法など、撥水性粒子全体を加熱できる方法であれば任意の加熱方法でよいが、この時の加熱の温度は前記繊維表面を構成する樹脂のうち最も低い融点を有する樹脂の融点以上に高く加熱する必要がある。次に、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる前記合成繊維、または繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維を有する前記繊維シートを常温または必要に応じて該樹脂の融点より低い温度に保持しながら、加熱した前記撥水性粒子を接触させれば良く、接触の方法は任意の方法でよい。このような接触方法としては、例えば容器の中に繊維や繊維シートを加熱した撥水性粒子と共に入れ容器を振盪する方法、コンベア−に繊維や繊維シートを載せコンベア−上部より加熱した撥水性粒子を散布または吹き付ける方法、繊維や繊維シートを加熱した撥水性粒子の層の中に浸漬する方法、加熱した撥水性粒子の流動層の中に繊維や繊維シートを曝す方法などがある。なお、本発明の製造方法で用いる撥水性粒子、繊維および繊維シートは、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートの説明の項で述べた繊維または繊維シートと同様のものを用いることができる。
【0053】
加熱した前記撥水性粒子を接触させる方法としては、例えば、前記繊維または前記繊維シートを耐熱性の容器の中に入れ、その後加熱した前記撥水性粒子を容器の中に入れ、容器の蓋を閉め、容器全体を振盪して、繊維表面に加熱した撥水性粒子が接触すると同時に、加熱した撥水性粒子が繊維表面の熱可塑性樹脂を接触点のみ溶かした状態で保持されるようにする。次に容器より素早く繊維または繊維シートを取り出し、繊維または繊維シートを冷却して、撥水性粒子を繊維表面に固着させる。次に撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートに固着しなかった撥水性粒子を例えば、水洗により除去する。このような方法により、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートを得ることができる。
【0054】
また、加熱した前記撥水性粒子を接触させる別の方法としては、前記繊維または前記繊維シートを移動する耐熱性のコンベア−上に載せ、次にコンベア−の上部より加熱した前記撥水性粒子を例えば散布するか、吹き付ける方法などにより、繊維表面に加熱した撥水性粒子が接触すると同時に、加熱した撥水性粒子が繊維表面の熱可塑性樹脂を接触点のみ溶かした状態で保持されるようにする。次にコンベア−上部より冷却空気を吹き付け繊維または繊維シートと撥水性粒子を冷却して、撥水性粒子を繊維表面に固着させる。次に撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートに固着しなかった撥水性粒子を、例えばコンベア−を傾斜させ振動により落下させたり、気流で吹き飛ばすなどの方法によって除去する。このような方法などにより、本発明の撥水性粒子担持繊維または撥水性粒子担持繊維シートを得ることができる。
【0055】
本発明の製造方法によれば、加熱した撥水性粒子を繊維表面に接触させているので、繊維表面に撥水性粒子が接触した部分のみが溶融して撥水性粒子を担持している。そのため撥水性粒子の表面のうち接触部分以外または固着部分以外の表面部分を溶融樹脂が覆ってしまうことが非常に少なくなっている。また、繊維表面の溶融樹脂が流動化して、撥水性粒子が埋没してしまうことも非常に少なくなっている。また、接触した撥水性粒子の隙間より溶融樹脂が沁み出しその撥水性粒子の外側にある撥水性粒子をも固着して、繊維表面上で撥水性粒子が部分的に複層となってしまい、繊維表面に撥水性粒子が均一に担持されないという問題が発生しない。のみならず、場合によっては、均一な、単層の固着または担持も可能である。このため、この方法による撥水性粒子担持繊維は、特に撥水機能を有効に発揮することができる。また、この製造方法によれば、撥水性粒子が繊維表面のみを溶融するので、繊維が複合繊維でなく単一の樹脂成分からなる繊維であっても接触処理時または固着処理時に繊維が収縮したり、繊維全体が溶融して糸切れが生じるようなことはない。また、繊維全体の熱劣化や繊維表面の熱劣化が起きないか、もし起きても少なくて済むという有利な効果がある。すなわち、糸切れ防止のためだけに、わざわざ高融点の樹脂成分との複合繊維とする必要がない。例えば芯鞘構造や、断面が菊花型の構造などの複合繊維とする必要がない。
【0056】
また、本発明の製造方法によれば、繊維表面に撥水性粒子が接触された後、冷却されることによって繊維表面に強固に撥水性粒子が固着され担持されているので、洗濯耐性試験やドライクリーニング耐性試験による撥水性の低下も極めて少ない。例えば洗濯耐性試験またはドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上の撥水性粒子担持繊維、または撥水性粒子担持繊維シートとすることができる。また例えば、洗濯後の接触角の低下を5度以下とすることができる。また、ドライクリーニング後の接触角の低下を8度以下とすることができる。また、この製造方法によれば、撥水性粒子を繊維表面に直接固着させることができるので、従来の方法のように撥水性粒子以外の接着剤や分散剤などを使用する必要がなく、また接着剤や分散剤などを使用するに要する工程を省略することができる。したがって、この製造方法によれば、工程も簡略で、材料費や工程費も少なくすることができるので製造コストの少ない優れた製品を得ることができる。
【0057】
【実施例】
つぎに、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、この実施例は本発明が理解できる程度に特定の条件を例示して説明するものであって、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
繊度2デシテックスのポリエステル繊維に、270℃に加熱したセントラル硝子株式会社製のポリテトラフルオロエチレン粒子で、商品名がセフラルルーブI(コールターカウンターによる測定での平均粒子径6.8μm)を吹き付けた。次に、固着しなかったポリテトラフルオロエチレン粒子を流水により洗浄除去し、その後60℃で乾燥し、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に均一に固着された、撥水性粒子担持繊維を得た。また、この撥水性粒子担持繊維はポリテトラフルオロエチレン粒子の固着前後で、繊維の収縮や糸切れは起こらなかった。また、固着処理前の前記繊維の接触角を測定しようとしたが、水が引き揃えた繊維間に染み込んでしまい測定できなかった。しかし、この撥水性粒子担持繊維の接触角は144度であり、撥水繊維洗濯耐性試験後は142度であり、撥水繊維ドライクリーニング耐性試験後は143度であった。このように撥水性粒子担持繊維は、優れた撥水性を有しているばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性にも極めて優れていた。
【0059】
(実施例2)
繊度2.2デシテックス、繊維長10mmの芯成分が融点160℃のポリプロピレン樹脂で、鞘成分が融点132℃の高密度ポリエチレン樹脂からなる芯鞘型の複合繊維を水に分散させてスラリーとし、常法の湿式抄造法により、繊維ウエブを形成した。次に、この繊維ウエブを温度137℃に設定されたドライヤーにより加熱処理した後、線圧10N/cmに設定されたカレンダーにより、押圧して、この芯鞘型複合繊維の鞘成分を融着させた不織布を作製した。この不織布の面密度は、50g/m2であった。次に、セントラル硝子株式会社製のポリテトラフルオロエチレン粒子で、製品名がセフラルルーブI(コールターカウンターによる測定での平均粒子径6.8μm)を内径20cmのシャーレに約100g入れ137℃に加熱した。次に、このシャーレの中にさらに、縦が10cmで横が10cmの前記不織布を入れ、シャーレに蓋をして、手に持ち上下に5回振ってからポリテトラフルオロエチレン粒子が固着した前記不織布を素早く取り出した。次に、固着しなかったポリテトラフルオロエチレン粒子を流水により洗浄除去し、その後60℃で乾燥し、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に均一に固着された、撥水性粒子担持繊維シートを得た。この撥水性粒子担持繊維シートに固着したポリテトラフルオロエチレン粒子の固着量は、撥水性粒子担持繊維シート1m2当たり12.7gであった。また、この撥水性粒子担持繊維シートはポリテトラフルオロエチレン粒子の固着処理前後で繊維シート中の繊維の収縮や糸切れは起こらなかった。また、固着処理前の前記不織布の接触角は126度であったが、この撥水性粒子担持繊維シートの接触角は145度であり、撥水シート洗濯耐性試験後は143度であり、撥水シートドライクリーニング耐性試験後は143度であった。このように、この撥水性粒子担持繊維シートは撥水性粒子が本来有する以上の撥水性能を有しているばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性に極めて優れていた。
【0060】
(実施例3)
ポリテトラフルオロエチレン粒子として、セントラル硝子株式会社製の製品名セフラルルーブV(BET法による比表面積から算出した平均粒子径0.5〜2.5μm:カタログ値)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に均一に固着された、撥水性粒子担持繊維シートを得た。この撥水性粒子担持繊維シートに固着したポリテトラフルオロエチレン粒子の固着量は、撥水性粒子担持繊維シート1m2当たり7.1gであった。また、この撥水性粒子担持繊維シートはポリテトラフルオロエチレン粒子の固着処理前後で繊維シート中の繊維の収縮や糸切れは起こらなかった。また、固着処理前の前記不織布の接触角は126度であったが、この撥水性粒子担持繊維シートの接触角は150度であり、撥水シート洗濯耐性試験後は145度であり、撥水シートドライクリーニング耐性試験後は144度であった。このように、この撥水性粒子担持繊維シートは撥水性粒子が本来有する以上の撥水性能を有しているばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性に極めて優れていた。
【0061】
(実施例4)
実施例2と同様にして、面密度50g/m2の不織布を作製した。次に、140℃に加熱したセントラル硝子株式会社製のポリテトラフルオロエチレン粒子で、製品名がセフラルルーブI(コールターカウンターによる測定での平均粒子径6.8μm)を前記不織布に吹き付けた。次に、固着しなかったポリテトラフルオロエチレン粒子を流水により洗浄除去し、その後60℃で乾燥し、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に均一に固着された、撥水性粒子担持繊維シートを得た。この撥水性粒子担持繊維シートに固着したポリテトラフルオロエチレン粒子の固着量は、撥水性粒子担持繊維シート1m2当たり13.0gであった。また、この撥水性粒子担持繊維シートはポリテトラフルオロエチレン粒子の固着処理前後で繊維シート中の繊維の収縮や糸切れは起こらなかった。また、固着処理前の前記不織布の接触角は126度であったが、この撥水性粒子担持繊維シートの接触角は146度であり、撥水シート洗濯耐性試験後は143度であり、撥水シートドライクリーニング耐性試験後は144度であった。このように、この撥水性粒子担持繊維シートは撥水性粒子が本来有する以上の撥水性能を有しているばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性に極めて優れていた。
【0062】
(実施例5)
繊度2.2デシテックス、繊維長10mmの融点132℃の高密度ポリエチレン樹脂からなる繊維を水に分散させてスラリーとし、常法の湿式抄造法により、繊維ウエブを形成した。続いて水流絡合法により前記繊維ウエブの繊維を絡合させ、その後温度125℃に設定されたドライヤーにより乾燥処理して、面密度50g/m2の不織布を作製した。次に、実施例4と同様な固着処理を行い、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に均一に固着された、撥水性粒子担持繊維シートを得た。この撥水性粒子担持繊維シートに固着したポリテトラフルオロエチレン粒子の固着量は、撥水性粒子担持繊維シート1m2当たり12.5gであった。また、この撥水性粒子担持繊維シートはポリテトラフルオロエチレン粒子の固着処理前後で繊維シート中の繊維の収縮や糸切れは起こらなかった。また、固着処理前の前記不織布の接触角は128度であったが、この撥水性粒子担持繊維シートの接触角は148度であった。このように、この撥水性粒子担持繊維シートは撥水性粒子が本来有する以上の撥水性能を有していた。
【0063】
(実施例6)
繊度50デシテックス/48フィラメントのポリエステル繊維糸を用いて、1インチ当たり縦164本、横110本のタフタ織物を得た。次に、270℃に加熱したセントラル硝子株式会社製のポリテトラフルオロエチレン粒子で、製品名がセフラルルーブI(コールターカウンターによる測定での平均粒子径6.8μm)を前記織布に吹き付けた。次に、固着しなかったポリテトラフルオロエチレン粒子を流水により洗浄除去し、その後60℃で乾燥し、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に均一に固着された、撥水性粒子担持繊維シートを得た。この撥水性粒子担持繊維シートに固着したポリテトラフルオロエチレン粒子の固着量は、撥水性粒子担持繊維シート1m2当たり7.0gであった。また、この撥水性粒子担持繊維シートはポリテトラフルオロエチレン粒子の固着処理前後で繊維シート中の繊維の収縮や糸切れは起こらなかった。なお、固着処理前の前記織布の接触角を測定しようとしたが、水が職布に染み込んでしまい測定できなかった。しかし、この撥水性粒子担持繊維シートの接触角は145度であり、撥水シート洗濯耐性試験後は144度であり、撥水シートドライクリーニング耐性試験後は142度であった。このように、この撥水性粒子担持繊維シートは、優れた撥水性能を有しているばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性にも極めて優れていた。
【0064】
(比較例1)
実施例2と同様にして、面密度50g/m2の不織布を作製した。次に、容器入りの撥水スプレー剤である、住友スリーエム株式会社製の製品名がスコッチガード印繊維保護剤衣類・布製品用を、容器に記してある「使い方」に従って、前記不織布から15cmの距離から前記不織布を全体がしっとりと濡れる程度にスプレーして吹き付け、その後そのまま2時間室温で放置して、完全に乾燥させて繊維シートを得た。前記撥水スプレー剤の塗布量は、前記不織布1m2当たり固形分で6.3gであった。この繊維シートには糸切れ、収縮は認められなかった。また、固着処理前の前記不織布の接触角は126度であり、この繊維シートの接触角は136度であり、撥水シート洗濯耐性試験後は130度であり、撥水シートドライクリーニング耐性試験後は127度であった。このように、この繊維シートは撥水性の度合いが低いばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性にも劣るものであった。
【0065】
(比較例2)
実施例2と同様にして、面密度50g/m2の不織布を作製した。次に、セントラル硝子株式会社製のポリテトラフルオロエチレン粒子で、製品名がセフラルルーブI(コールターカウンターによる測定での平均粒子径6.8μm)を内径20cmのシャーレに約100g入れ25℃に保った。次に、このシャーレの中にさらに、縦が10cmで横が10cmの前記不織布を入れ、シャーレに蓋をして、手に持ち上下に5回振った。次にこのシャーレを137℃のドライヤーに入れ、5分後にドライヤーからシャーレを取り出し、さらに素早くシャーレからポリテトラフルオロエチレン粒子が付着した前記不織布を取り出した。次に、固着しなかったポリテトラフルオロエチレン粒子を流水により洗浄除去し、その後60℃で乾燥し、ポリテトラフルオロエチレン粒子が繊維表面に付着した、繊維シートを得た。この繊維シートに付着したポリテトラフルオロエチレン粒子の付着量は、繊維シート1m2当たり5.5gであった。また、この繊維シートはポリテトラフルオロエチレン粒子の付着処理前後で繊維シート中の繊維の収縮や糸切れは起こらなかったが、繊維同士の接着が一部剥がれているのが確認された。また、固着処理前の前記不織布の接触角は126度であり、この繊維シートの接触角は138度であり、撥水シート洗濯耐性試験後は132度であり、撥水シートドライクリーニング耐性試験後は129度であった。このように、繊維を溶融した後に単に撥水性粒子を付着したこの繊維シートは撥水性粒子が十分に固着しているとはいえず、撥水性の度合いが低いばかりか、洗濯耐性やドライクリーニング耐性にも劣るものであった。
【0066】
(比較例3)
実施例5と同様にして、面密度50g/m2の不織布を作製した。次に、比較例2と同様な固着処理を行った。その結果、前記不織布中の繊維の糸切れと収縮が激しく、処理前の前記不織布の形態を保っていなかった。また、固着しなかったポリテトラフルオロエチレン粒子を流水により洗浄除去した後は益々形状が崩れてしまった。糸切れで不織布から抜け落ちた繊維を含めて、処理前後の重量増を確認したところ、元の不織布1m2当たり2.8gであった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の撥水性粒子担持繊維および撥水性粒子担持繊維シートは、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、撥水性粒子が直接固着しているので、撥水性樹脂以外に他の物質が介在しておらず、撥水性樹脂が本来有する撥水性としての特性が十分に生かされており、高度な撥水性を有している。さらに、洗濯などにより接着剤や添加剤などが劣化して撥水性粒子が脱落する恐れもなく、耐久性に優れている。また、繊維中に撥水性粒子を含有する繊維と異なり繊維表面のみに密に撥水性粒子が固着しているため、撥水性樹脂が本来有する撥水性としての特性や繊維自体がもつ特性が十分に生かされており、高度な撥水性を有している。さらにまた、撥水性粒子の材質がもつ撥水特性と、撥水性粒子の形態や配置に起因する撥水特性や、繊維の形態や配置に起因する撥水特性とが相乗された高度な撥水特性を有している。また、本発明の撥水性粒子担持繊維および撥水性粒子担持繊維シートは、撥水性以外にも、撥油性、低摩擦性、帯電性などに優れ、かつ耐洗濯耐性などの耐久性に優れている。また、本発明の撥水性粒子担持繊維シートを用いた衣服は、通気性を保持しながら、高度な撥水性を得ることができ、また洗濯耐性や、ドライクリーニング耐性にもきわめて優れた衣服となりうる。また、本発明の製造方法によれば、繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、撥水性粒子が直接固着した、撥水性粒子担持繊維および撥水性粒子担持繊維シートを製造することができる。
Claims (9)
- 繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、該繊維表面の熱溶融によって撥水性粒子が直接固着しており、撥水繊維洗濯耐性試験または撥水繊維ドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であることを特徴とする撥水性粒子担持繊維。
- 前記接触角が140度以上であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性粒子担持繊維。
- 前記撥水性粒子がフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性粒子担持繊維。
- 請求項1〜3の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維を、繊維シートの構成繊維として含んでいることを特徴とする撥水性粒子担持繊維シート。
- 繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に、該繊維表面の熱溶融によって撥水性粒子が直接固着している該合成繊維を有し、撥水シート洗濯耐性試験または撥水シートドライクリーニング耐性試験の何れかの試験の後に、水に対する接触角が135度以上であることを特徴とする撥水性粒子担持繊維シート。
- 前記接触角が140度以上であることを特徴とする請求項5に記載の撥水性粒子担持繊維シート。
- 請求項4〜6の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維シートを用いた衣服。
- 繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維において、該合成繊維の繊維表面を構成する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面を溶融して該繊維表面に該撥水性粒子を固着させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維の製造方法。
- 繊維全体が熱可塑性樹脂からなる合成繊維を有する繊維シートにおいて、該合成繊維の繊維表面を構成する樹脂の融点より低い温度の該繊維表面に、該樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子を接触させることにより、該繊維表面に該撥水性粒子を固着させることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の撥水性粒子担持繊維シートの製造方法。
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