JP3945625B2 - 角膜上皮障害モデル動物及びそのモデル動物を用いた薬剤の評価方法並びにその評価方法を用いて選択された薬剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、角膜上皮障害モデル動物及びその動物を用いた薬剤の評価方法並びにその評価方法を用いて選択された薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
角膜は厚さ0.52〜1.0mmのきわめて薄い組織であるが、強膜とともに眼球の堅牢な外壁を構成する。角膜は単純な構造ではあるが、上皮層,ボウマン膜,角膜実質層,デスメ膜および内皮細胞層からなる非常に規則正しい微細な5層構造を有している。
角膜上皮障害とは、文字通り角膜の最表層の角膜上皮層を構成する角膜上皮細胞が障害を受けることをいう。角膜上皮障害が引き起こされる原因は多彩であり、その臨床的な所見も多彩である。角膜上皮障害は基底膜あるいは角膜実質の潰瘍の有無に基づき、点状表層角膜症(SPK),単純性角膜びらん,再発性(反復性)角膜びらん,遷延性角膜上皮欠損に分類される。角膜上皮障害の原因には、涙液の異常,眼瞼・結膜疾患,代謝障害,感染症,外傷・薬物などがある。その中でも、近年、潜在的な患者を含めて患者数が増加する傾向にある涙液の異常に起因する角膜上皮障害、いわゆる、ドライアイが特に注目を集めている。
ドライアイは、簡単にいえば、涙液の量的・質的な異常によって眼球表面に障害をきたす疾患の総称、あるいは、このような障害をきたす症状を指称するものである。
涙液は眼球が正常に機能するために重要な役割を果たしている。涙液には、▲1▼角結膜の湿潤性を保ち、乾燥から防ぐ;▲2▼角膜表面に涙液層を形成することで表面を平滑にするとともに涙液層自体が透明な光学的透光体として機能する;▲3▼涙液中に含まれる抗菌成分によってウィルス、細菌などの侵入を防ぐ;▲4▼角結膜表面に付着した異物や老廃物を洗い流す;▲5▼血管の存在しない数少ない組織である角膜に酸素、水分、栄養分を供給する;▲6▼まばたき(瞬目)や眼球運動のときに眼瞼と眼球の間の潤滑剤として働く;▲7▼眼外傷の際に白血球の遊走路となる、という役割があることが知られている。
健常な状態では眼球表面は涙液に覆われている。瞬目のたびに新しい涙液の層(涙液層)が形成されることで眼球表面は乾燥しないように保護されている。この涙液層は10秒程度で乾燥し始めるが、眼球表面に分布している知覚神経がそれを感知して瞬目を誘発し、眼球表面が涙液で覆われている状態を維持する。これは涙液の基礎分泌と呼ばれており、悲しいときや眼にゴミが入ったときに涙液がでる反射性分泌と区別される。涙液量が減少すると角結膜表面が乾いて障害が発生する。
【0003】
ドライアイは、眼乾燥症、涙液分泌減少症などと呼ばれ、そのほとんどがシェーグレン症候群の一症状として考えられてきた。しかし、近年シェーグレン症候群を伴わない基礎分泌のみが障害されるタイプやVDT(visual display terminal;いわゆる、「ディスプレイ」)作業に伴うタイプのドライアイが増加している。
現代は視覚情報化社会であるともいわれており、コンピュータを含めたOA機器の普及に伴い、VDT作業従事者の数が増加している。現在、日本におけるドライアイ患者の総数は100万〜200万人であるとされているが、前記のOA機器の普及などに伴い、潜在的な患者を含め、その数は増加する傾向にある。OA機器のディスプレイ(VDT)を長時間見続けると、瞬目の回数が減少する。瞬目をして眼を閉じている間に眼球表面へ涙液が供給されるので、瞬目回数の減少は涙液量の減少につながり、角膜に障害がおきる。これがOA機器の普及がドライアイ患者の増加に結びつく理由である。今後ともますます眼を酷使する機会が増えていくことが予想され、それに伴ってドライアイの患者も増加していくと考えられている。
【0004】
上記のVDT作業に伴う瞬目の減少以外にも、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群などの内因性疾患、さらに白内障術後や薬剤、外傷、コンタクトレンズ装着などの外因性疾患が原因となって涙液が質的・量的に悪化することでドライアイが引き起こされる。
現在、ドライアイを対象疾患とした様々な薬剤が上市されているが、既存の薬剤で医療上の要望を充分に満たしているとは言えず、新しい薬剤の開発が現在も盛んに進められている。薬剤の研究開発においてその効果を評価する系は不可欠であり、種々のドライアイモデルを用いた試験によって評価がなされている。
【0005】
従来のドライアイモデルのひとつとして、ラット・ビタミンA欠乏モデルをあげることができる(特開平9-136832号)。このモデルでは、ラットをビタミンA欠乏状態で飼育することによってドライアイ様の症状を作製する。当然のことながら、このモデル動物の症状はビタミンAの投与(経口投与や点眼投与)により治癒する。いわゆる栄養障害モデルであるこのモデル動物を用いて、種々の作用機序を持つ薬剤の評価を行うことには問題があるといわざるをえない。
【0006】
これまでに角膜上皮障害モデルとしてヨードガス処理、n−ヘプタノールのような有機溶媒処理、ナイフなどの物理的処理、水酸化ナトリウムなどのアルカリ腐食処理などを用いて角膜上皮を障害させた動物モデルが提案されている。
しかし、これらのモデルは角膜上皮に障害があるという点では間違いなく角膜上皮障害モデルであるとはいえるが、その形成機序が生理的なものと大きく異なるため、モデルとして問題があるといわざるをえない。さらに、上記の方法で作製した角膜上皮障害は速やかに治癒してしまうため、薬剤の評価試験が行いにくいという欠点がある。これらのモデルは臨床的に眼科医を悩ませる種々の治療に抵抗する遷延性角膜上皮障害の動物モデルとなりえず、その提供が望まれている(西田輝夫,「医薬品の開発;第9巻;医薬品の探索I」,p287-291,廣川書店刊,東京(1990))。
【0007】
また、涙液の異常に起因する角膜上皮障害モデル(例えば、ドライアイモデル)としてウサギを用いた強制開瞼によるモデル(ウサギ強制開瞼モデル)が報告されている(長野敬ら,新しい眼科,13(2),267-270(1996))。これは、全身麻酔したウサギの両眼の上下瞼を外反させて縫合し、強制的に3時間開瞼させることによってモデル動物を作製する。長時間の開瞼によって眼球表面の涙液中の水分が風乾によって除去され続けられる結果として涙液層の完全性が破壊され、その結果として角膜上皮障害が起こる。このモデル動物はその作製機序が、眼球表面の涙液層が長時間に渡って破壊されるというものであり、これは本来のドライアイの生理的発症機序と共通するため、ビタミンA欠乏モデル動物や上記の角膜上皮障害モデル動物よりも望ましいモデル動物であるといえる。したがって、薬剤の評価系としても適用可能である。
しかし、このモデル動物には、▲1▼作製に3時間もの長時間を要する;▲2▼一定の強さの症状(重症度)をもつ個体(眼球)を安定的に作製することが困難である;▲3▼症状が角膜表面上に均一に生じない;▲4▼涙液が眼球表面を潤すことで症状が容易に治癒してしまい、薬効判定の実施に充分な程度の時間、症状が持続しない(ウサギの治癒力がヒトよりもとても強いため)といういくつもの欠点がある。このモデル動物はそれまでに報告されていたモデル動物よりも優れている点も多いが、適切かつ実用的であるといえるものではなく、より優れたモデル動物の提供が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の記述から明らかなように、優れた角膜上皮障害モデル動物及びそのモデル動物を用いた薬剤の優れた評価方法並びにその評価方法を用いて選択された優れた薬剤の提供は医療上の重要な課題であり、その提供が望まれている。
そこで、本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明のモデル動物が角膜上皮障害モデル、その中でも特に涙液の異常に起因する角膜上皮障害モデル、いわゆるドライアイモデルとして有用であること、本発明のモデル動物の作製方法が有用であること、本発明のモデル動物を用いた評価方法が角膜上皮障害治療薬の評価方法として有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、接面により眼球角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせ得る吸水性素材を眼球角膜に接面させ、角膜上皮細胞内外に0.5以上の浸透圧差を生じさせる処理を受けることによって角膜上皮障害の症状を呈していることを特徴とする角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項2に係る発明は、当該角膜上皮障害がドライアイであることを特徴とする請求項1に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項3に係る発明は、前記角膜上皮障害モデル動物が非ヒト哺乳動物または家禽であることを特徴とする請求項1又は2に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
【0010】
請求項4に係る発明は、吸水性素材がポリオール類、塩類、アミノ酸類、ペプチド類および水溶性合成高分子から選ばれる少なくとも一種の素材を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項5に係る発明は、吸水性素材が糖類であることを特徴とする請求項4に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項6に係る発明は、吸水性素材がグルコース、マルトース、ショ糖、フルクトース、デキストラン、デンプンから成る群から選ばれる少なくとも一種の糖類を含むことを特徴とする請求項5に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項7に係る発明は、吸水性素材がアルカリ金属の塩およびアルカリ土類金属の塩から選ばれる少なくとも一種の塩類を含むことを特徴とする請求項4に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項8に係る発明は、吸水性素材が粉末状、溶液状、ゲル状、ゼリー状、錠剤状のいずれかの形態であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
【0011】
請求項9に係る発明は、吸水性素材を水透過性あるいは水半透過性の形成物を介して接面させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項10に係る発明は、角膜上皮障害モデル動物がウサギであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項11に係る発明は、吸水性素材を眼球角膜の一部に接面させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項12に係る発明は、吸水性素材を眼球角膜の瞳孔部分に接面させてなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項13に係る発明は、吸水性素材を眼球角膜の瞳孔部分に円形に接面させてなることを特徴とする請求項12に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
請求項14に係る発明は、中心部を円形にくり抜いた水非透過性の薄膜で眼球角膜を覆い、くり抜いた円形部を瞳孔部分に位置させ、その露出部に吸水性素材を接面させてなることを特徴とする請求項13に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物に関する。
【0012】
請求項15に係る発明は、接面により眼球角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせ得る吸水性素材を非ヒト動物の眼球角膜に接面させ、角膜上皮細胞内外に0.5以上の浸透圧差を生じさせる処理を行うことによって角膜上皮障害症状を惹起させる工程、被験薬剤を当該眼球角膜に投与する工程、および当該眼球角膜上皮損傷部位の症状改善度を評価する工程、を含んで成ることを特徴とする角膜上皮障害治療薬の評価方法に関する。
請求項16に係る発明は、当該角膜上皮障害がドライアイであることを特徴とする請求項15に記載の角膜上皮障害治療薬の評価方法に関する。
請求項17に係る発明は、当該角膜上皮損傷部位の症状改善度を評価する工程が、染色面積の変化を数値化して評価する工程であることを特徴とする請求項15又は16に記載の角膜上皮障害治療薬の評価方法に関する。
請求項18に係る発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物を用いることを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載の評価方法に関する。
請求項19に係る発明は、被験薬剤が点眼剤である請求項15乃至18のいずれかに記載の評価方法に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における「角膜上皮障害」とは、角膜の最表層を構成する角膜上皮層の完全性がなんらかの障害を受けることによって失われることをいう。
本発明において「ドライアイ」とは、眼球乾燥症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などの内因性疾患および手術、薬剤、外傷、コンタクトレンズ装着などによる外因性疾患に伴う角膜上皮障害、または当該上皮障害を伴う症状を指称する。
本発明における角膜上皮障害モデル動物の作製に用いる吸水性素材は、眼球の水分を減少させ、かつ、薬理学的に許容されるものであればよい。
【0014】
本発明における「眼球の水分を減少させる」とは、眼球表面にある水分を吸収するのと併せて、眼球角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせ、これによって角膜上皮細胞から水分の漏出を誘発し、細胞内水分量を減少させることを意味するものである。
本発明において「薬理学的に許容される」とは評価する薬剤の有効な薬理学的な性質を損なわない(薬理学的性質を阻害または促進しない)ことを意味する。
【0015】
本発明においては、このような性状を具備した吸水性素材であれば、いずれも、角膜上皮障害モデル動物の作製に用いることができ、その具体例としては、好ましくはポリオール類、塩類、アミノ酸、ペプチド類、水溶性合成高分子などを挙げることができる。
【0016】
ポリオール類としては、グリセリン,エチレングリコールなどの多価アルコール類、グルコース,ガラクトース,マンノース,フルクトースなどの単糖類、ショ糖,ラクトース,マルトース,シクロデキストリンなどのオリゴ糖類、デンプン,グリコーゲン,デキストラン,プルラン,キトサンなどの多糖類、グルシトール,ガラクチトール,マンニトール,キシリトールなどの糖アルコール類を例示することができる。
【0017】
塩類としては、酢酸ナトリウム,クエン酸ナトリウム,酢酸カリウム,クエン酸カリウムなどの有機アルカリ金属塩、塩化ナトリウム,硫酸ナトリウムなどの無機アルカリ金属塩、酢酸カルシウム,酢酸マグネシウム,クエン酸カルシウム,クエン酸マグネシウムなどの有機アルカリ土類金属塩、塩化カルシウム,塩化マグネシウム,硫酸カリウム,硫酸マグネシウムなどの無機アルカリ土類金属塩などを例示することができる。
【0018】
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、ハイドロキシプロリンなど、およびそれらの誘導体を例示することができる。
【0019】
ペプチド類としては、グルタチオンなどのような低分子ペプチドのほか、アルブミン、グロブリン、コラーゲン、ゼラチンなどのたんぱく質、さらにこれらたんぱく質の部分加水分解物やそれらの誘導体を例示することができる。
水溶性合成高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを例示することができる。
【0020】
これらの吸水性素材は、単独で用いてもよく、あるいは任意の2以上の素材からなる組成物として用いることもできる。さらには、後述するごとく、必要に応じて、賦形剤、増量剤、増粘剤などと配合して用いてもよい。
【0021】
本発明におけるモデル動物としては、その眼球を薬剤評価に供しうる動物であればよく、特に限定ない。例えば、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどの非ヒト哺乳動物、およびニワトリ、アヒル、ウズラ、ダチョウなどの家禽のいずれも用いることができる。サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどの哺乳動物は一定の性質をもつ個体が安定的に供給され、実験を行う際に飼育や処理が容易であるなどの理由から、モデル動物として好ましい。さらには、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギは眼球の大きさが実験に適当であるなどの理由からさらに好ましい。
モデル動物を作製する前の飼育条件は、常法に従って選択すればよく、特に限定されないが、均質なモデル動物を得るためには、できる限り各個体を同一の条件下で飼育することが好ましい。
【0022】
本発明に係るモデル動物は、被験薬剤の薬効評価に適するものであれば、特に制限はなく、いかなる形態のものであっても用いることができる。例えば、その作製方法の一態様を示せば、次の通りである。
モデル動物の作製対象となる動物に麻酔を施し、眼瞼を開瞼したままの状態で固定する。開瞼したまま固定する方法は、接着剤または開瞼器を用いて固定する方法など、常法に準じて実施することができる。開瞼された眼球に吸水性素材を接面させて適当な時間そのまま保持する。しかる後、吸水性素材を洗浄するなどして除去すれば、角膜上皮障害モデル動物を得ることができる。
【0023】
吸水性素材を接面させる方法としては直接または間接的に角膜上に接面させる方法をとればよく、その方法については特に限定されない。吸水性素材を接面させる際には眼球全面を覆っても、その一部分に接面させてもよい。吸水性素材を接面させる眼球角膜上の位置や大きさは、選択する動物の種類などによって異なるが、被験薬剤の薬効を数値化して評価するためには、接触面を瞳孔大にすることが好ましい。
眼球の一部に接面させる際には、接触面の形状はいかなる形状でも、いかなる位置でもよく、その目的に応じて適宜適する条件を設定すればよい。例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、星形等の多角形などのいかなる幾何学的形状とすることもできる。その中でも被験薬剤の治療効果を数値化して評価するためには、接触面の形状は円形であることが好ましく、接触面の位置は瞳孔部分に位置することが好ましい。
【0024】
接面させる吸水性素材の形態はいかなるものであってもよい。例えば、使用する吸水性素材または同素材を含む組成物の性状に応じて、粉末状、溶液状、ゲル状、ゼリー状、錠剤状などの形態で用いることができる。
【0025】
薬剤の評価を容易かつ的確に行うためには、結果を数値として得、比較評価できることが好ましい。数値化した結果を得るためには、各眼球に吸水性素材を一定形状かつ一定面積で接触させることが好ましい。一定形状かつ一定面積の接触面を得るためには、▲1▼適当な形状の穴を開けた水非透過性の薄膜で角膜を被覆し、水非透過性の薄膜上に吸水性素材をのせることによって接面させる方法、▲2▼筒状容器を角膜上に載せ、その中に吸水性素材を入れる方法をとることが好ましい。これらの場合、使用する薄膜や筒状容器の材質は水非透過性であり、かつ、薬理学的に許容されるものであれば適宜適切なものを選択すればよく、特に限定されない。例えば、ナイロン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリカーボネイト,塩化ビニル,ポリフッ化エチレン系繊維などの合成樹脂、アルミニウム,チタン,ステンレスなどの金属、木、竹などを例示することができる。眼球の体液成分を浸透させてしまう素材は、可能な限り誤差の少ない実験データを取得するという目的からは、通常、使用を避けることが好ましい。
吸水性素材を眼球表面に接面させる際には、通常、直接眼球上に乗せる方法をとることが多いが、その目的に応じて水透過性の素材でつくられた形成物を介して間接的に接面させる方法をとることもできる。形成物の素材は、水透過性あるいは水半透過性であるという点を満たせばよく、特に限定されないが、セルロースやその誘導体などの糖質系素材,ポリビニルアルコールなどの合成樹脂系素材などを例示することができる。形成物の形状に関しても所望の目的を達するものであればよく、特に限定されないが、吸水性素材がもつ本来の性質を生かしやすい、扱いやすいなどの理由から薄膜状であることが好ましい。水透過性素材あるいは水半透過性素材からなる形成物を介して吸水性素材を接面させる方法には、処理後に吸水性素材を簡便に除去できるという利点がある。
【0026】
また本発明によれば、眼球全面に角膜上皮障害を生じさせることもできるが、吸水性素材を眼球の一部に接面させることによって、特定の位置に特定の面積と均一の症状をもつ角膜上皮障害を生じさせることもできる。この後者の方法を用いれば、症状の変化を面積の変化として数量的に把握することが容易になるため、薬効の評価をより一層容易かつ的確に行うことができる。例えば、本発明の好ましい態様のひとつを説明すれば、中心部を円形等の適当な形状に打ち抜いた水非透過性の薄膜を用意し、水非透過性の薄膜の打ち抜き部分が開瞼した眼球の瞳孔の部分に位置するように眼球を被覆し、その露出部に吸水性素材を接面させることによって角膜上皮障害モデル動物を好適に作製することができる。
【0027】
本発明における吸水性素材は、前述の通り、眼球表面の水分を奪うのに併せて、眼球角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせることによって眼球角膜上皮細胞内からの水分の漏出を誘導し、モデル動物に角膜上皮障害の症状を作出するという機能を果たすものである。また、適切に角膜上皮障害モデル動物を作製するためには、眼球角膜上皮細胞内外に生ずる浸透圧差は、0.5以上であることが好ましく、1以上であることがさらに好ましく、2以上であることが特に好ましく、3以上であることがより特に好ましい。粉末などの形状で眼球表面に吸水性素材を接面させると、眼球表面の水分を吸収してその一部が溶解して溶液となる。眼球表面で形成された溶液は、飽和溶液に近い濃厚な溶液であり、角膜上皮細胞膜を介して細胞内外に浸透圧差が生じる。細胞膜は半透膜に近い性質をもっているので、浸透圧差が生じると、細胞膜を透過して水が細胞外に移動することによって高張液を希釈して浸透圧差を解消しようとする力が働く。液を希釈しようとして移動した水によってさらに吸水性素材の一部が溶解していくので、細胞外の液の濃度は高い状態に保たれて浸透圧差は解消されず、細胞内からの水の移動が継続するため、細胞内の水分の漏出が継続して起こることになる。
【0028】
細胞内外に生じる浸透圧差は、主に用いる吸水性素材の種類によって規定される。例えば、ラクトースの飽和溶液の浸透圧比は約2、塩化ナトリウムの飽和溶液の浸透圧比は約20である。細胞内液の浸透圧比は約1であるので、ラクトースの飽和溶液が細胞と接面した際に生じる浸透圧差は約1、塩化ナトリウムの飽和溶液が細胞と接面した際に生じる浸透圧差は約19であると算出できる。吸水性素材が細胞と接面した際に生じる浸透圧差は、その吸水性素材の飽和溶液と細胞内液の浸透圧差と厳密には一致しないが、その目安になると考えられる。
なお、ここでいう浸透圧比とは、生理食塩液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比を指し示す値である。
【0029】
本発明における吸水性素材は、浸透圧を適当な範囲に調整するために、賦形剤、増量剤、増粘剤などと適宜配合した組成物として用いることができる。このような賦形剤、増量剤、増粘剤は、吸水性素材を眼球角膜に接面させる際の形状または物性を調整する目的でも用いることができる。このような目的に使用できる賦形剤、増量剤、増粘剤の種類に特に制限はなく、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コムギ粉、コムギデンプン、コムギ胚芽粉、コメ粉、コメデンプン、バレイショデンプン、コーンスターチ、コーンスターチ造粒物、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストラン、デキストリン、寒天、ペクチン、マクロゴール、ゼラチンなどをその目的に応じて適宜使用することができる。
【0030】
眼球に接面させる吸水性素材の量は、所望のモデル動物が成立する適切な量を適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0031】
薬剤の評価に用いるモデル動物の症状の軽重(重症度)は、後述する被験薬剤の薬効評価目的に応じて適宜調節されるべきものである。従来の強制開瞼モデル動物ではその調節が容易ではないが、本発明のモデル動物を用いれば、吸水性素材の種類や組成、量、接触面積、接面時間などをかえることにより調節することができる。
【0032】
吸水性素材を接面させる時間は所望のモデル動物が成立する時間を設定すればよく、特に限定されない。通常、接面時間は、好ましくは5〜60分、さらに好ましくは10〜40分、特に好ましくは15〜25分である。5分より短い時間では、評価系として用いることができる強度の病態が成立しないことが多く、60分より長い時間処理してもそれ以上強い病態が得られないことが多い。多くの場合、均一で適当な強度の病態を得るためには接面時間を15〜25分とすることが最も望ましい。
【0033】
吸水性素材で所定の時間処理後、吸水性素材を眼球表面から除去する。水非透過性の薄膜や円筒などの器具、水透過性あるいは水半透過性素材でできた形成物などを使っている場合にはそれらも眼球表面から取り去る。眼球表面を適量の薬理学的に許容される液体で洗浄するなどの方法によってできる限り吸水性素材を除去する。薬理学的に許容される液体として生理食塩液、等張化リン酸緩衝液を例示することができる。
【0034】
本発明のモデル動物では、角膜上皮が水分を喪失したことによって乾燥し、上皮が剥離した状態を示す。したがって、治療等を行わなければ、その症状は涙液で眼球表面が潤っても容易に治癒せず、比較的長い時間、例えば、10時間以上、場合によっては数10時間にわたって病態が持続するため、治療薬の効果を安定して評価することができる。
【0035】
従来の強制開瞼モデル動物(3時間開瞼)では、角膜表面の乾燥が認められるのみで、上皮細胞の剥離がほとんど認められず、そのため、その症状は涙液の分泌によって1時間後には完治してしまい、薬効評価に利用することが困難であったことを考慮すると、本発明に係るモデル動物の上記特性は特筆すべきものである。
また、従来の強制開瞼モデル動物では、モデル動物の作製に3時間以上の時間を要していたが、本発明のモデル動物は開瞼後20分程度(通常60分以内)で作製可能であるという優れた特性を具備するものである。
従来の強制開瞼モデル動物では、▲1▼眼球全体を風乾するため、角膜障害部の大きさや症状の程度が不均一となり、定量的に把握することが困難であること、▲2▼涙液による自然治癒が速やかに進行してしまうために評価を行える期間が短く、薬剤の効果判定が難しいこと等の技術的課題が残されていたが、本発明のモデル動物では、一定の大きさ、かつ、均一な強度をもつ角膜障害部を眼球上に作製することができるため、疾患部の面積を測定することで症状の軽重や経時的変化を容易に数値化し、定量的に把握できるという、優れた特性をさらに有するものである。
【0036】
本発明のモデル動物を用いた評価方法の対象となる被験薬剤には特別に制限はなく、角膜上皮障害に対する治療効果を評価する目的をもつものであればいかなるものでもよい。角膜上皮障害を治癒することを目的として調製された少なくとも一種の有効成分を含む組成物はその対象に含まれる。その中でも、本発明のモデル動物の作成機序から考えると、その中でも涙液の異常に起因する角膜障害、いわゆるドライアイを治療することを目的として調整された組成物が被験薬剤として好ましい。
通常、医薬品や医薬部外品を指すが、特定保健用食品(機能性食品)、特定栄養補助食品、健康食品などの補助食品なども含まれる。例えば、角膜上皮の傷の庇護作用、損傷部位の回復促進作用、粘膜刺激緩和作用、粘膜保護作用を少なくともひとつ以上もつ薬剤をあげることができる。具体的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、副腎皮質ホルモンなどが例示できる。当然のことながら、既存の作用機序をもつ薬剤だけでなく、新規な作用機序をもつ薬剤を評価することも可能である。
【0037】
評価対象となる薬剤は、通常、点眼剤として眼球に局所的に投与される。しかし、いかなる投与経路の薬剤も評価可能であり、特に制限がない。非経口的および経口的に投与される薬剤の評価を行うことができる。非経口的に投与される薬剤の例としては、先にあげた点眼剤の他に眼軟膏剤、注射剤、外用剤、坐剤をあげることができる。薬剤の投与量は、薬剤の性質、投与対象の種類、年齢や体重などの条件をもとに総合的に判断し、最適な量を適宜決定するべきであり、特に限定されない。
【0038】
投与時期や投与回数などの投与条件は、薬剤の性質、試験および評価の目的などに応じて適宜最適となるように設定すればよく、特に制限はない。例えば、点眼剤の評価を行う場合には投与時期に関してはモデル動物作製直後より30分毎に数回投与後、その後1時間毎に数回投与し、その都度、症状の変化を観察、評価する方法が多く用いられる。投与回数については薬剤の性質により異なり、1回以上であればよいが、好ましくは2回以上、より好ましくは4〜6回以上である。
【0039】
本発明のモデル動物を用いた被験薬剤の評価方法は、所望の目的を達する方法であれば、いかなる方法を用いてもよい。例えば、常法に従い、眼球表面の反射状況を光により測定する方法、顕微鏡を用いて眼球表面の組織を観察する方法によって評価することができる。
【0040】
また、薬剤の効果を数値化して定量的に把握するためには、通常、被験薬剤投与終了後に眼球角膜に染色を施して眼球角膜上皮損傷部位の面積を測定し、これを被験薬剤非投与群または被験薬剤投与前の眼球角膜上皮損傷部位の面積と比較する方法(以下、被染色面積比較法)を用いることが好ましい。通常、損傷部が染色剤によって染まるため、この方法を用いれば、薬剤投与の影響を染色部位の面積値の変化として把握でき、薬剤の効果を定量的に表現することができるという利点がある。薬効の強度は染色面積の減少率として把握できる。
被染色面積比較法に用いる染色剤は薬理学的に許容されるものであればいかなるものを用いてもよい。その中でも、通常、オキュラーサーフェイスの生体染色検査に用いられているフルオレセイン塩,ローズベンガル,スルファローダミンB,リサミングリーンを用いることが好ましく、フルオレセイン塩を用いることがさらに好ましい。
【0041】
面積を測定する方法は、染色剤の種類などによって最適な方法を選択すればよく、特に限定されない。フルオレセインナトリウムなどの蛍光色素を用いる場合には、蛍光強度を測定する方法やデジタルカメラなどによって撮影した眼球表面の画像データを処理・解析することによって数値化し、把握する方法などを例示することができる。
【0042】
本発明のモデル動物を用いた被験薬剤の薬効評価方法の具体例を示すと、次の通りである。
モデル動物の眼球表面を生理食塩液で充分に洗浄後、適当な濃度(例えば、2%)のフルオレセインナトリウム水溶液を滴下し角膜損傷部を染色する。再度生理食塩液で眼球表面を充分に洗浄して遊離の染色剤を除去する。デジタルカメラを用いて眼球表面を撮影し、画像データを得る。画像解析ソフトを用いて被染色部位(角膜損傷部位)の面積(ピクセル数)を計測する。薬剤投与終了後、同様の操作を行うことによって薬剤投与後の角膜損傷部位の面積を計測する。薬剤投与前後の損傷部位面積の比を求めることにより改善度を求めることができる。
【0043】
さらに、本発明によれば上記のごとく面積を計測する以外にも、▲1▼薬剤投与回数を一定にし、治癒までの時間を測定する▲2▼治癒するまで被験薬剤を一定間隔で投与した回数を求める、などの方法によっても被験薬剤の薬効の強度を評価することができる。
【0044】
【実施例】
以下の実施例において、モデル動物作製例および薬剤評価例をあげて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に記載されたモデル動物および方法などに限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれるすべてのモデル動物および方法などを含むものである。
【0045】
実施例1:モデル動物例1の作製
供試動物としてウサギ(ニュージーランドホワイト種;雄性;13週齢;体重約3kg)を選択し、検疫・馴化した。
飼育は、室温21±3℃、相対湿度50±20%、照明時間12時間(午前7時点灯、午後7時消灯)、換気回数10〜15回/時間の恒温恒湿下の室内に設置した動物飼育用ラック内にて行い、飼料(オリエンタル酵母工業製;RC4)および飲料水(市水を孔径0.2μmのメンブランフィルターにてろ過滅菌後給水)は自由に摂取させた。
前記供試動物に対して塩酸ケタミン20mg/kg(三共製;商品名:ケタラール50筋注用)および塩酸キシラジン10mg/kg(バイエル製;商品名:セラクタール2%注犬・猫用)を筋肉注射して全身麻酔を行い、眼瞼を開いた状態で外科用接着剤(三共製;商品名:アロンアルファA「三共」)を用いて接着・固定した。
中央部に8mmφの穴を開けたポリフッ化エチレン系繊維製シートフィルム(20×30mm;厚さ0.15mm;図1)で眼球を被覆した。
【0046】
吸水性素材として粉糖(三共食品製;ショ糖・コーンスターチ混合物[97:3;w/w])(91部)と蒸留水(9部)を練り合わせて粘土状とした組成物を選択し、その組成物0.5gを、眼球を被覆したフィルムの開口部にあわせて置き、眼球表面に均一に接面させて20分間放置した。
20分後、フィルムと組成物を眼球表面から取り除き、充分量の生理食塩液で眼球表面を洗浄し、モデル動物例1を得た。
【0047】
実施例2:モデル動物例2の作製
吸水性素材を粉糖(三共食品製;ショ糖・コーンスターチ混合物[97:3;w/w])に代えてモデル動物を作製した。
実施例1と同様に、検疫・馴化した供試動物(ウサギ)に全身麻酔し、さらに0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(千寿製薬製;商品名:アネロカール)を点眼して局所麻酔した後にバンガード開瞼器を装着して開瞼させた。
中央部に8mmφの穴を開けたポリフッ化エチレン系繊維製シートフィルム(21mmφ;厚さ0.2mm;図2)で眼球を被覆した。
【0048】
吸水性素材として粉糖(三共食品製;ショ糖・コーンスターチ混合物[97:3;w/w])1gを用い、眼球を被覆したフィルムの開口部を吸水性素材で覆って眼球表面に均一に接面させ、20分間放置した。放置時間中に涙液が滲出してきた場合には、適宜、粉糖を適量追加した。
20分後、フィルムと吸水性素材を眼球表面から取り除き、充分量の生理食塩液で眼球表面を洗浄し、モデル動物例2を得た。
【0049】
実施例3:モデル動物例3の作製
吸水性素材を磨砕した塩化ナトリウムに代えて実施例2と同様の操作を行い、モデル動物を作製した。
吸水性素材には磨砕後に直径150μm以下となるように粒度をそろえた(日本工業規格の標準ふるい[ふるい番号100]を用いて分級した)塩化ナトリウム1gを用いた。眼球を被覆したフィルムの開口部を吸水性素材で覆って眼球表面に均一に接面させ、20分間放置した。
20分後、フィルムと吸水性素材を眼球表面から取り除き、充分量の生理食塩液で眼球表面を洗浄し、モデル動物例3を得た。
【0050】
比較例1:比較モデル動物例1の作製
実施例1と同様に、検疫・馴化した供試動物(ウサギ)に麻酔を行った。バンガード開瞼器を装着して開瞼し、開瞼した状態を3時間維持して比較モデル動物例を得た。
【0051】
比較例2:比較モデル動物例2の作製
粉糖のかわりに高分子吸水材1gを用いて実施例2と同様の操作を行い、モデル動物を作製した。
高分子吸水材として生理用ナプキン「ソフィアクティブサポート」(ユニチャーム製)から取り出した粉末状のものを用いた(アクリル酸系重合体)。眼球を被覆したフィルムの開口部を高分子吸水材で覆って眼球表面に均一に接面させ、20分間放置した。
20分後、フィルムと高分子吸水材を眼球表面から取り除き、充分量の生理食塩液で眼球表面を洗浄し、比較モデル動物例2を得た。
【0052】
実施例4:モデル動物例1を用いた薬剤の評価
実施例1に示した本発明のモデル動物(モデル動物例1)と本発明の評価方法が角膜上皮障害治療薬の評価系として妥当であることの確認を目的としてモデル動物例1を用いて試験を行った。
【0053】
[被験薬の投与]
被験薬剤として0.1%ヒアルロン酸ナトリウム製剤(製造・販売:参天製薬;商品名「ヒアレイン0.1」;以下、「ヒアレイン」)を用いた。
下記の各条件で群分けを行い、4眼(2匹の左右眼)/群で試験を行った。群▲1▼〜▲3▼に対しては「ヒアレイン」を約50μL/回(市販容器で点眼する際の一滴が約50μLに相当する)点眼投与した。群▲4▼に対しては「ヒアレイン」の代わりに生理食塩液を点眼投与した。
群▲1▼:0〜6時間までは30分毎に、6〜12時間までは1時間毎に、その後24時間までは2時間毎に、さらにその後は4時間毎に点眼投与を行った。
群▲2▼:0〜6時間までは30分毎に、6〜24時間までは2時間毎に、さらにその後は4時間毎に点眼投与を行った。
群▲3▼:モデル動物作製6時間後から4時間毎に点眼投与を行った。
群▲4▼:0〜6時間までは30分毎に、6〜12時間までは1時間毎に、その後24時間までは2時間毎に、さらにその後は4時間毎に点眼投与した。
なお、データ取得時に角膜障害の症状の治癒が確認された場合は、それ以降の薬剤投与は行わなかった。後述の方法で試験を行い、角膜の染色部位(角膜損傷部位)の面積が0になったとき、角膜障害の症状の治癒が認められたと判断した。
【0054】
[面積データの取得]
薬剤投与前および規定時間の各時点において、各群の眼球表面に2%フルオレセインナトリウム水溶液50μLを滴下して角膜の損傷部位を染色した。充分量の生理食塩液で洗浄した後、デジタルカメラを用いて眼球表面を撮影した。撮影データを画像解析ソフト(三谷商事製;商品名「Win ROOF」)を用いて解析し、角膜の染色部位(角膜損傷部位)の面積をピクセル数として計数した。なお、規定時間毎のデータの取得は、各点眼投与前に行った。
【0055】
角膜障害面積の経時変化の結果を表1および図3に示した。
【表1】
【0056】
治癒率の経時変化の結果を表2および図4に示した。
【表2】
【0057】
[データの解析]
表1、2および図3、4からわかるように、本発明のモデル動物においてはモデル作製後も徐々に角膜障害が進行していき、障害がピークに達した後に治癒してゆくという特徴をもつ。したがって、角膜障害面積がピークに達した時点を基準にして評価を行うことにした。
表1、2および図3に示された結果から、この試験においては、モデル作製後3時間の角膜障害面積を基準値(評価基準となる面積)として評価を行った。
フルオレセインナトリウム染色部位面積(ピクセル数)を角膜障害面積と規定し、下記式1を用いて治癒率(%)を算出した。
(式1)
治癒率(%)=(SB-SP)/SB×100
SB:評価基準となる面積(ピクセル数)
SP:各データ取得時の被染色部位の面積(ピクセル数)
【0058】
上記の結果は、本発明のモデル動物、本発明のモデル動物の作製方法および本発明の評価方法が角膜上皮障害治療薬の薬効評価系として妥当であることを示すものである。
【0059】
実施例5:モデル動物例2を用いた薬剤の評価
実施例2に示した本発明のモデル動物(モデル動物例2)と本発明の評価方法が角膜上皮障害治療薬の評価系として妥当であることの確認を目的としてモデル動物例2を用いて試験を行った。
【0060】
[被験薬の投与]
被験薬剤として「ヒアレイン」を用いた。
実施例4と同様に群分けを行い、4眼(2匹の左右眼)/群で試験を行った。群▲1▼〜▲3▼に対しては「ヒアレイン」を約50μL/回、点眼投与した。郡▲4▼に対しては「ヒアレイン」の代わりに生理食塩液を点眼投与した。
被験薬剤の投与は実施例1の場合と同様に行った。
実施例4と同様に、データ取得時点で角膜障害の症状の治癒が確認された場合は、それ以降の投与は行わなかった。角膜損傷部位の面積が0になったとき、角膜障害の症状の治癒が認められたと判断した。
【0061】
[面積データの取得]
実施例4と同様の方法で面積データを取得した。
【0062】
角膜障害面積の経時変化の結果を表3および図5に示した。
【表3】
【0063】
治癒率の経時変化の結果を表4および図6に示した。
【表4】
【0064】
[データの解析]
実施例4と同様の方法でデータを解析した。
表3および図5に示された結果から、この試験においては、モデル作製後6時間の角膜障害面積を基準値として治癒率の算出を行った。算出には式1を用いた。
【0065】
上記の結果は、本発明のモデル動物、本発明のモデル動物の作製方法および本発明の評価方法が角膜上皮障害治療薬の薬効評価系として妥当であることを示すものである。
【0066】
モデル動物例作製直後(0時間)の代表的な眼球の撮影画像(デジタルカメラを用いて撮影)を図7に示した。
モデル動物例2の眼表面では均一かつ円形に角膜上皮障害が形成されていること(均一かつ円形にフルオレセインナトリウム被染色部位が形成されていること)がわかる。
【0067】
モデル動物例2作製直後(0時間)の角膜切片のヘマトキシリン-エオシン(H−E)染色像を図8(撮影倍率100倍)および図9(撮影倍率400倍)に示した。比較のために、無処置眼の角膜切片のH−E染色像を図10(撮影倍率100倍)および図11(撮影倍率400倍)に示した。
無処置眼の角膜では上皮細胞層が表面に均一に形成されているのに対して、モデル動物例2作製直後の角膜では上皮細胞層の損傷および欠落が広範に認められ、組織レベルで角膜上皮障害が惹起されていることが確認できた。
【0068】
実施例6:モデル動物例3を用いた薬剤の評価
実施例3に示した本発明のモデル動物(モデル動物例3)と本発明の評価方法が角膜上皮障害治療薬の評価系として妥当であることの確認を目的としてモデル動物例3を用いて試験を行った。
【0069】
[被験薬の投与]
被験薬剤として「ヒアレイン」を用いた。
実施例4および5と同様に群分けを行い、4眼(2匹の左右眼)/群で試験を行った。郡▲1▼〜▲3▼に対しては「ヒアレイン」を約50μL/回、点眼投与した。群▲4▼に対しては「ヒアレイン」の代わりに生理食塩液を点眼投与した。
被験薬剤の投与は実施例4および5の場合と同様に行った。
実施例4および5と同様に、データ取得時点で角膜障害の症状の治癒が確認された場合は、それ以降の投与は行わなかった。角膜損傷部位の面積が0になったとき、角膜障害の症状の治癒が認められたと判断した。
【0070】
[面積データの取得]
実施例1と同様の方法で面積データを取得した。
【0071】
角膜障害面積の経時変化の結果を表5および図12に示した。
【表5】
【0072】
治癒率の経時変化の結果を表6および図13に示した。
【表6】
【0073】
[データの解析]
実施例4および5と同様の方法でデータを解析した。
表5および図12に示された結果から、この試験においては、モデル作製後6時間の角膜障害面積を基準値として治癒率の算出を行った。算出には式1を用いた。
【0074】
上記の結果は、本発明のモデル動物、本発明のモデル動物の作製方法および本発明の評価方法が角膜上皮障害治療薬の薬効評価系として妥当であることを示すものである。
【0075】
比較例3:比較モデル動物例1を用いた薬剤の評価
比較例1に示した比較モデル動物例1を用いて実施例4〜6と同様の試験を行った。
【0076】
[被験薬の投与]
被験薬剤として「ヒアレイン」を用いた。
実施例4〜6と同様に群分けを行い、4眼(2匹の左右眼)/群で試験を行った。郡▲1▼〜▲3▼に対しては「ヒアレイン」を約50μL/回、点眼投与した。群▲4▼に対しては「ヒアレイン」の代わりに生理食塩液を点眼投与した。
被験薬剤の投与は実施例4〜6の場合と同様に行った。
実施例4〜6と同様に、データ取得時点で角膜障害の症状の治癒が確認された場合は、それ以降の投与は行わなかった。角膜損傷部位の面積が0になったとき、角膜障害の症状の治癒が認められたと判断した。
【0077】
[面積データの取得]
実施例4〜6と同様の方法で面積データを取得した。
【0078】
角膜障害面積の経時変化の結果を表7および図14に示した。
【表7】
【0079】
[データの解析]
本発明のモデル動物(モデル動物例1〜3)とは異なり、表7および図14からわかるように、比較モデル動物例1においては、モデル作製直後から治癒が始まるという特徴をもつ。
【0080】
上記の結果は、▲1▼比較モデル動物例1は角膜障害の治癒速度が速すぎること、▲2▼そのために、比較モデル動物例1を用いて評価を行うと被験薬剤に治療効果があってもそれを検出しにくいことを示すものである。
【0081】
比較モデル動物例1作製直後(0時間)の代表的な眼球の撮影画像(デジタルカメラを用いて撮影)を図15に示した。
比較モデル動物例1の眼球表面では、不均一にしか角膜上皮障害が形成されていないこと(不均一にしかフルオレセインナトリウム被染色されていないこと)がわかる。実施例5の図7と比較すると、その違いは明らかである。
【0082】
比較モデル動物例1作製直後(0時間)の角膜切片のH−E染色像を図16(撮影倍率100倍)および図17(撮影倍率400倍)に示した。
比較モデル動物例1作製直後の角膜においても上皮細胞層の損傷および欠落が認められ、組織レベルで角膜上皮障害が惹起されていることが確認できた。しかし、実施例5の図8および9と比べると、その違いは明らかであり、モデル動物例2と比べて、惹起されている角膜障害の強度が低く、不均一であることがわかる。
【0083】
比較モデル動物例1は、長時間強制的に開瞼して角膜表面を風乾し、水分を奪うことによって角膜障害を惹起するモデルである。このモデル動物の作製方法では、角膜の外側の水分を除去することはできるが、角膜上皮細胞内の水分を効果的に奪うことができないために角膜上皮に強い障害を起こすことができないと考えられる。そのため、速やかに障害が治癒してしまうと考えられる。
【0084】
比較例4:比較モデル動物例2を用いた薬剤の評価
比較例に示した比較モデル動物例2を用いて実施例4〜7と同様の試験を行った。
【0085】
[被験薬の投与]
被験薬剤として「ヒアレイン」を用いた。
実施例4〜7と同様に群分けを行い、4眼(2匹の左右眼)/群で試験を行った。郡▲1▼〜▲3▼に対しては「ヒアレイン」を約50μL/回、点眼投与した。群▲4▼に対しては「ヒアレイン」の代わりに生理食塩液を点眼投与した。
被験薬剤の投与とデータ取得は実施例4〜7の場合と同様に行った。
実施例4〜7と同様に、データ取得時点で角膜障害の症状の治癒が確認された場合は、それ以降の投与は行わなかった。角膜損傷部位の面積が0になったとき、角膜障害の症状の治癒が認められたと判断した。
【0086】
[面積データの取得]
実施例4〜7と同様の方法で面積データを取得した。
【0087】
角膜障害面積の経時変化の結果を表8および図18に示した。
【表8】
【0088】
[データの解析]
表8および図18からわかるように、比較モデル動物例1と同様に比較モデル動物例2においては、モデル作製直後から治癒が始まるという特徴をもつ。
【0089】
上記の結果は、▲1▼比較モデル動物例2は角膜障害の治癒速度が速すぎること、▲2▼そのために、比較モデル動物例2を用いて評価を行うと被験薬剤に治療効果があってもそれを検出しにくいことを示すものである。
比較モデル動物例2は、高分子吸水材を角膜表面に接面させて水分を奪うことによって角膜障害を惹起するモデルである。比較モデル動物例1の場合と同様に、このモデル動物の作製方法では、角膜の外側の水分を速やかに奪うことはできるが、角膜上皮細胞内の水分を効果的に奪うことができないため、角膜上皮に強い障害を起こすことができないと考えられる。そのため、比較モデル動物例1の場合と同様にこの例においても速やかに障害が治癒してしまうと考えられる。
【0090】
以上の実施例1〜6および比較例1〜4から以下のことがわかる。
1) 比較モデル動物例1および2では、角膜障害が短時間(約1時間)で治癒してしまうために被験薬剤の効果を評価し難いのに対して本発明のモデル動物(モデル動物例1〜3)では障害が長時間(10時間以上)継続するので被験薬剤の評価が行い易い。
2) 本発明のモデル動物では、角膜表面に形状および強度が均一な角膜障害を形成されるのに対して(実施例5の図7)、従来のモデル動物(比較モデル動物例1)では、形状および強度が不均一な角膜障害しか形成されない(比較例3の図15)。
3) 組織レベルにおいても、本発明のモデルでは強い角膜障害(角膜上皮細胞層の欠落および障害)が認められるのに対して、従来のモデルでは弱い傷害しか認められない(実施例5の図8〜11および比較例3の図16、17参照)。
4) 従来のモデル動物(比較モデル動物例1)は、その作製に3時間以上の時間を要するのに対して、本発明のモデル動物(モデル動物例1〜3)は、20分間程度で作製可能である。
5) モデル動物を作製する際に角膜表面に接面させて水分を除去するために用いる素材として、吸水はするが、角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせない素材(例:高分子吸水材)を用いると薬剤の薬効評価に利用可能な程度の強度の角膜障害をもつモデル(本発明のモデル)を得ることができない(比較例2および4参照)。
【0091】
【発明の効果】
本発明のモデル動物は角膜上皮障害モデルとして有用である。その中でも特に涙液の異常に起因する角膜上皮障害モデル、いわゆるドライアイモデルとして有用である。さらに、本発明のモデル動物の作製方法および本発明のモデル動物を用いた薬剤の評価方法として有用である。
本発明のモデル動物は、▲1▼吸水性素材の種類、接面面積、接面時間などの条件を調節することにより種々の重症度をもつモデル動物を得ることができる。また、▲2▼被験物質の作用強度を定量的に把握することが可能である、などの従来のモデル動物にない優れた特徴をもつ。
本発明のモデル動物の作製方法は、短時間で安定した強度の症状をもつモデル動物を安定して供給できるという優れた特徴をもつ。
さらに、本発明の評価方法は、▲1▼薬剤の効果を再現性よく評価することができる、▲2▼薬剤の効果を定量的に把握することができる、▲3▼標準薬剤と被験薬剤の治療効果を定量的に比較することも容易であるため(ED50などで比較)、新規の薬剤のスクリーニング系としても有用である、などの従来のモデル動物にない優れた特徴をもつ。
【図面の簡単な説明】
【図1】モデル動物例1を作製するときに使用する四角形状の薄膜の概略図である。
【図2】モデル動物例2を作製するときに使用する円形状の薄膜の概略図である。
【図3】実施例4における角膜障害面積の経時変化を示したグラフである。
【図4】実施例4における治癒率の経時変化を示したグラフである。
【図5】実施例5における角膜障害面積の経時変化を示したグラフである。
【図6】実施例5における治癒率の経時変化を示したグラフである。
【図7】モデル動物例2作製直後の代表的な眼球の撮影画像である。
【図8】モデル動物例2作製直後の角膜切片のH−E染色像(撮影倍率100倍)である。
【図9】モデル動物例2作製直後の角膜切片のH−E染色像(撮影倍率400倍)である。
【図10】無処置眼の角膜切片のH−E染色像(撮影倍率100倍)である。
【図11】無処置眼の角膜切片のH−E染色像(撮影倍率400倍)である。
【図12】実施例6における角膜障害面積の経時変化を示したグラフである。
【図13】実施例6における治癒率の経時変化を示したグラフである。
【図14】比較例3における角膜障害面積の経時変化を示したグラフである。
【図15】比較モデル動物例1作製直後の代表的な眼球の撮影画像である。
【図16】比較モデル動物例1作製直後の角膜切片のH−E染色像(撮影倍率100倍)である。
【図17】比較モデル動物例1作製直後の角膜切片のH−E染色像(撮影倍率400倍)である。
【図18】比較例4における角膜障害面積の経時変化を示したグラフである。
Claims (19)
- 接面により眼球角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせ得る吸水性素材を眼球角膜に接面させ、角膜上皮細胞内外に0.5以上の浸透圧差を生じさせる処理を受けることによって角膜上皮障害の症状を呈していることを特徴とする角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 当該角膜上皮障害がドライアイであることを特徴とする請求項1に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 前記角膜上皮障害モデル動物が非ヒト哺乳動物または家禽であることを特徴とする請求項1又は2に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材がポリオール類、塩類、アミノ酸類、ペプチド類および水溶性合成高分子から選ばれる少なくとも一種の素材を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材が糖類であることを特徴とする請求項4に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材がグルコース、マルトース、ショ糖、フルクトース、デキストラン、デンプンから成る群から選ばれる少なくとも一種の糖類を含むことを特徴とする請求項5に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材がアルカリ金属の塩およびアルカリ土類金属の塩から選ばれる少なくとも一種の塩類を含むことを特徴とする請求項4に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材が粉末状、溶液状、ゲル状、ゼリー状、錠剤状のいずれかの形態であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材を水透過性あるいは水半透過性の形成物を介して接面させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 角膜上皮障害モデル動物がウサギであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材を眼球角膜の一部に接面させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材を眼球角膜の瞳孔部分に接面させてなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 吸水性素材を眼球角膜の瞳孔部分に円形に接面させてなることを特徴とする請求項12に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 中心部を円形にくり抜いた水非透過性の薄膜で眼球角膜を覆い、くり抜いた円形部を瞳孔部分に位置させ、その露出部に吸水性素材を接面させてなることを特徴とする請求項13に記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物。
- 接面により眼球角膜上皮細胞内外に浸透圧差を生じさせ得る吸水性素材を非ヒト動物の眼球角膜に接面させ、角膜上皮細胞内外に0.5以上の浸透圧差を生じさせる処理を行うことによって角膜上皮障害症状を惹起させる工程、被験薬剤を当該眼球角膜に投与する工程、および当該眼球角膜上皮損傷部位の症状改善度を評価する工程、を含んで成ることを特徴とする角膜上皮障害治療薬の評価方法。
- 当該角膜上皮障害がドライアイであることを特徴とする請求項15に記載の角膜上皮障害治療薬の評価方法。
- 当該角膜上皮損傷部位の症状改善度を評価する工程が、染色面積の変化を数値化して評価する工程であることを特徴とする請求項15又は16に記載の角膜上皮障害治療薬の評価方法。
- 請求項1乃至14のいずれかに記載の角膜上皮障害モデル非ヒト動物を用いることを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載の評価方法。
- 被験薬剤が点眼剤である請求項15乃至18のいずれかに記載の評価方法。
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