JP3945371B2 - 外装材及びそれを備えたアンダープロテクター - Google Patents

外装材及びそれを備えたアンダープロテクター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状成形体を備える外装材、及び同外装材を備え、例えば車両のタイヤハウス等のボディの下部を被覆するアンダープロテクターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のアンダープロテクターとしては、自動車等の車両のボディに対してタイヤハウスの外面を沿うように添着されるとともに、車両の走行時における泥水の飛散や小石の跳ね上げ等によってタイヤ近傍の構成部品が汚損されたり破損されたりすることを抑制するためのフェンダーライナーが知られている。
【0003】
また、近年では、タイヤと地面とによって発生する騒音(パターンノイズ)やタイヤにより跳ね上げられた砂や小石がタイヤハウスの壁面に衝突する際に生じる衝突音等を吸収するための不織布を備えたフェンダーライナーが開発され、実用化されてきている。
【0004】
この不織布としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の短繊維からなるものが使用される。そして、この不織布は、高融点のPET短繊維の隙間に低融点の接着樹脂粒状体(ペレット)が分散されたプレシートを加熱しながらプレス成形することにより、PET短繊維同士が加熱溶融されたペレットを介して接着されて立体的な形状に成形される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような不織布を備えたアンダープロテクターを自動車のタイヤハウスの外面に沿って添着することにより、前記パターンノイズや衝突音等が吸収され、車内への騒音の伝達が低減される。
【0006】
【特許文献1】
特開2000―264255号公報(第2頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来のフェンダーライナーでは、ペレットが大きな体積を占めるため、騒音を減衰させるための空間、いわゆるセルが小さくなるという問題があった。このため、前記フェンダーライナーにおいて、前記パターンノイズや衝突音の低減性能のさらなる向上が求められていた。
【0008】
また、前記従来のフェンダーライナーでは、降雨時に車両を走行させたとき等に、前記不織布がタイヤの回転によって飛散した泥水を吸収することがある。このように前記不織布が水を吸収すると、車両を車庫に入れたとき等に前記不織布に吸収された水が床面に滴ってタイヤの周辺の床面が水浸しになったり、車庫内の床面が汚れたりするという問題が生じる。
【0009】
また、タイヤの回転によって跳ね上げられた泥が前記不織布に付着し易くなり、乾燥した状態ではタイヤハウスの内部が白っぽくなり、車両のタイヤハウス内の見栄えが低下するという問題も生じる。
【0010】
さらに、前記不織布が水を吸収することによってフェンダーライナー自身の重量が増加し、車両のボディに対する取付強度が低下するおそれもある。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的としては、騒音の高い低減性能を有するとともに、水の吸収を抑制することができる外装材及びそれを備えたアンダープロテクターを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1に記載の発明は、互いに交絡された主繊維とバインダー繊維とで構成されるとともに、前記バインダー繊維を互いに接着させた不織布からなるシート状成形体を備える外装材において、前記シート状成形体は、複数の層が積層された積層構造を有するとともに、厚み方向における最外層のうちの少なくとも一方の層に撥水性を付与する撥水性付与剤を含む撥水部をなす撥水層を備え、前記撥水性付与剤を、前記主繊維の表面の少なくとも一部に付着させ、前記バインダー繊維を、前記主繊維よりも融点が低い材料から構成し、前記撥水層と同撥水層に接する内層との接合部近傍における主繊維及びバインダー繊維を相互に交絡させるとともに、両層の接合部近傍のバインダー繊維を互いに接着させることによって接合し、前記撥水層の厚さ及び目付け量が、0.3mm以上、100〜500g/m であり、前記内層の厚さ及び目付け量が、2〜8mm、800〜1300g/m であることを要旨とするものである。
【0012】
この本願請求項1に記載の発明では、外装材に例えば泥水等が跳ね上げられたとしても、その泥水が撥水性付与剤によってはじかれ、シート状成形体が水を吸収することが抑制される。
【0014】
この本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、撥水性付与剤がシート状成形体の全体に含まれるようにしなくてもよくなるため、撥水性付与剤の使用量を低減することが可能となる。
【0016】
不織布を備える外装材を吸音材として使用する場合には、不織布における複数の繊維により取り囲まれた空間、いわゆるセルを極めて微小に、かつその数が多いほど、その不織布による吸音効果が向上されることが発明者により確認されている。なお、不織布による吸音作用は、音のエネルギーとしての振動エネルギーが様々な方向に配向された微細な繊維へと伝わり、それらの繊維を振動させるとともに隣接する繊維同士を摩擦させることによって摩擦エネルギーへと変換されることによるものと考えられている。
【0017】
これに対して、本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、バインダーとして粒状体(ペレット)を用いる場合に比べて、前記セルを極めて微小にかつ数多く形成させることが容易となるとともに、振動される繊維の長さが大きく増大される。このため、不織布による吸音効果が大いに向上される。
【0019】
この本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、例えば泥水等が不織布に跳ね上げられたとしても、その泥水が撥水性付与剤によってはじかれて不織布の内部に吸収されることが抑制される。
【0021】
この本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、不織布を成形する際に、主繊維を構成する材料の融点に達するまで不織布を加熱せずともよくなる。このため、外装材を形成する際の製造コストが低減される。
【0023】
この本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、撥水層が、同撥水層に接する層から剥離しにくくなり、それら撥水層と同撥水層に接する層との接合性が高められる。
【0024】
また、本願請求項に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記撥水部は、前記主繊維および前記バインダー繊維の少なくとも一方に、所定の色に着色された着色繊維を含むことを要旨とするものである。
【0025】
この本願請求項に記載の発明では、前記請求項1に記載の発明の作用に加えて、不織布の撥水層が外部から視認されるように外装材が配置される場合には、その外装材が設けられる部分の外観が向上される。
【0026】
また、本願請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、前記撥水性付与剤は、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグを構成する袋状体の表面に付着されるとともに撥水性を有する気密性向上剤と同じ材料からなるシリコンゴムであることを要旨とするものである。
【0027】
近年、車両に搭載されるエアバッグ装置において、同エアバッグ装置が作動した際のエアバッグの展開速度を向上させるために、袋状体をなす基布に気密性向上剤が塗布または含浸等されたエアバッグを用いる技術が提案されている。この気密性向上剤として、例えばシリコンゴム等が含まれたものが用いられる。
【0028】
これに対して、本願請求項に記載の発明では、前記請求項1または請求項2に記載の発明の作用に加えて、撥水性付与剤として、例えば撥水性を有するシリコンゴム等を用いることが可能である。このため、基布に撥水性を有する気密性向上剤が塗布または含浸等されたエアバッグにあっては、その気密性向上剤は撥水性付与剤としても機能する。そして、気密性向上剤が塗布または含浸等された状態でそのエアバッグの基布をほぐした繊維を撥水部として使用することが可能となる。これにより、気密性向上剤が塗布または含浸されたエアバッグの端材、廃品等をリサイクル利用することが可能となる。また、シート状成形体に対して撥水性付与剤を塗布または含浸する等の処理を省略することが可能となり、外装材がより安価に製造される。
【0029】
また、本願請求項に記載の発明は、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明において、前記繊維は、車両に搭載されるエアバッグ装置におけるエアバッグの廃材から形成された繊維を含むものであることを要旨とするものである。
【0030】
ここで、前記廃材とは、エアバッグの材料となる基布の端材や、廃車時に生じるエアバッグの廃品等を含むものである。
この本願請求項記載の発明では、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、エアバッグの廃材から形成された繊維を、シート状成形体を構成する繊維として用いることが可能となる。このため、エアバッグのリサイクル性が向上されるとともに、外装材が安価に製造される。
【0031】
また、本願請求項に記載の発明は、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明において、前記シート状成形体は、シート状成形体自身の剛性を高めるための剛性付与部をさらに備えることを要旨とするものである。
【0032】
この本願請求項に記載の発明では、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、外装材自身の剛性が高められ、外装材が所望の形状に保持される。また、剛性付与部を備えた外装材を所定の部位に取り付ける際の取付性が向上される。
【0033】
また、本願請求項に記載の発明は、車両ボディの下部の少なくとも一部を被覆するアンダープロテクターにおいて、請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の外装材を備え、同外装材は、車両のタイヤハウスの外面に沿った形状に形成されてそのタイヤハウスの外面に添設されるフェンダーライナーであり、前記外装材の撥水部を、前記車両のタイヤ側に配置したことを要旨とするものである。
【0034】
この本願請求項に記載の発明では、降雨時に車両を走行させたとき等に、泥水がアンダープロテクターに跳ね上げられたとしても、その泥水が撥水部によってはじかれ、シート状成形体が水を吸収することが抑制される。
【0035】
これにより、アンダープロテクターに跳ね上げられた泥水等は、撥水部内を重力方向下方へと流れ、その撥水部の下端部から地面へと速やかに滴下される。このため、車両を車庫に入れたとき等にタイヤの周辺の床面が水浸しになったり、汚れたりすることが抑制される。
【0036】
また、タイヤの回転によって跳ね上げられた泥がシート状成形体に付着しにくくなり、車両のタイヤハウス内の見栄えの低下が抑制される。
また、シート状成形体が水を吸収しにくくなるためにシート状成形体自身の重量増加が抑制され、車両のボディに対する取付強度が低下しにくくなる。
【0038】
この本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、特に、タイヤの回転によって泥水等が跳ね上げられ易いフェンダーライナーにおいて、特に効果的に発揮される。
【0040】
この本願請求項に記載の発明では、前記作用に加えて、タイヤの回転により跳ね上げられた泥水等は、撥水部によりはじかれるため、シート状成形体における撥水部より内部に浸入しにくくなる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、車両としての自動車11には、車両ボディの下部外面を被覆するアンダープロテクターとしてのフェンダーライナー12が、自動車11(車両ボディ)のタイヤハウス13の外面13aに添設されている。このフェンダーライナー12は、自動車11の走行時にタイヤが地面から跳ね上げる小石や泥によってタイヤハウス13の外面13aが傷付けられることを抑制するものである。また、このフェンダーライナー12は、自動車11の走行時においてタイヤと地面とによって発生するパターンノイズ等の騒音を吸収することができるように構成されている。
【0042】
図2に示すように、フェンダーライナー12は、シート状の外装材20を備えて構成されている。この外装材20は、前記タイヤハウス13(図1参照)の外面13aに添設されたときにその外面13aにほぼ沿う形状に形成されている。
【0043】
図3に示すように、外装材20は、複数の繊維が互いに交絡されたシート状成形体としての不織布21を備えている。
本実施形態では、不織布21として、複数(この例では3つ)の層が積層された積層構造を有するものが使用されている。詳しくは、この不織布21は、前記タイヤハウス13の外面13a側から順に、剛性付与部としての剛性付与層22と、主として前記騒音を吸収する内層23と、不織布21の厚み方向において自動車11のタイヤ側の最外層をなす撥水部としての撥水層24とを有している。
【0044】
まず、前記剛性付与層22について、以下に説明する。
この剛性付与層22は、主に不織布21自身の剛性を高めるために設けられており、剛性付与層22を構成する主要な繊維である主繊維25と、この主繊維25よりも融点が低い材料からなるペレット状のバインダー樹脂26とから構成されている。この剛性付与層22は、互いに交絡した主繊維25がバインダー樹脂26を介して接着されることにより形成されている。また、剛性付与層22の内部には、主繊維25とバインダー樹脂26とにより取り囲まれた微小な空間、すなわちセル27が多数形成されている。
【0045】
前記主繊維25は、ナイロン等のポリアミド(PA)繊維により構成されている。本実施形態では、主繊維25には、自動車等の車両に搭載されるエアバッグ装置におけるエアバッグの廃材から形成されたポリアミド繊維が含まれている。なお、本実施形態において、前記廃材とは、エアバッグの材料となる基布の端材や廃車時に生じるエアバッグの廃品等を含むものである。
【0046】
この主繊維25の繊維径としては、フェンダーライナー12の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜50μmであるのが好ましい。この主繊維25の繊維径が10μm未満の場合には、強度が低下するおそれがある。逆に50μmを超える場合には、剛性付与層22全体に占める主繊維25の体積の割合が著しく容易に高められることから、形成されるセル27の数が少なくなってしまう。
【0047】
また、主繊維25の繊維長としては、フェンダーライナー12の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜100mmの範囲の短繊維であるのが好ましい。さらに、微小なセル27をより多く形成させることができることから、機械捲縮等を有するように構成することが好ましい。
【0048】
一方、前記バインダー樹脂26は、前記主繊維25よりも低い融点を有する材料(例えばスチレン系樹脂等)から構成されている。
このバインダー樹脂26の融点としては、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜170℃である。このバインダー樹脂26の融点が80℃未満の場合には、フェンダーライナー12が前記タイヤハウス13の外面13aに添設されている状態にあるときに、そのフェンダーライナー12が前記車両ボディからの熱によって変形等してしまうおそれがある。逆に、バインダー樹脂26の融点が170℃を超える場合には、剛性付与層22(フェンダーライナー12)の成形時において、主繊維25をバインダー樹脂26を介して接着するのに必要な熱量が多くなり、加工容易性が著しく低下する。
【0049】
また、バインダー樹脂26の融点は、前記主繊維25の融点よりも20℃以上低いのが好ましく、50℃以上低いのがより好ましい。これら主繊維25とバインダー樹脂26との融点の差が20℃未満の場合には、剛性付与層22(フェンダーライナー12)の成形時にバインダー樹脂26のみを溶融することが極めて困難であることから、剛性付与層22を、略網目状構造を有するように形成しにくくなる。
【0050】
次に、前記撥水層24に接する層としての内層23について、以下に説明する。
この内層23は、フェンダーライナー12の吸音性能を高めるために設けられており、主繊維30と、加熱溶融する合成繊維からなるバインダー繊維31とから構成されている。この内層23は、主繊維30とバインダー繊維31とが互いに交絡しながら融着された略網目状構造を有するように形成されている。すなわち、この内層23は、主繊維30とバインダー繊維31とにより取り囲まれた極めて微小な空間、すなわちセル32の集合体として存在しており、主としてそれらセル32により吸音効果が発揮されるようになっている。そして、このセル32による吸音効果は、微小なセル32を数多く形成させるほど高められる。
【0051】
また、内層23と前記剛性付与層22とは、それら両層22,23の接合部近傍における両主繊維25,30及び内層23のバインダー繊維31が互いに交絡した状態で、上記接合部近傍の剛性付与層22のバインダー樹脂26と内層23のバインダー繊維31とを互いに接着することにより接合されている。
【0052】
この内層23の主繊維30は、ナイロン等のポリアミド(PA)繊維により構成されている。本実施形態では、主繊維30には、前記エアバッグ装置におけるエアバッグの廃材から形成されたポリアミド繊維が含まれている。
【0053】
この内層23の主繊維30の繊維径としては、フェンダーライナー12の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜50μmであるのが好ましい。この主繊維30の繊維径が10μm未満の場合には、強度が低下するおそれがある。逆に50μmを超える場合には、内層23全体に占める主繊維30の体積の割合が著しく容易に高められることから、多数のセル32を形成させることができなくなる。
【0054】
また、主繊維30の繊維長としては、フェンダーライナー12の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜100mmの範囲の短繊維であるのが好ましい。さらに、微小なセル32をより多く形成させることができることから、機械捲縮等を有するように構成することが好ましい。
【0055】
一方、前記バインダー繊維31は、前記主繊維25,30よりも低い融点を有する熱可塑性ポリマー単体、又はその熱可塑性ポリマー単体からなる繊維成分を表面に付着させた複合繊維(2成分繊維)からなる合成繊維により構成されている。前記熱可塑性ポリマー単体としては、入手容易かつ安価であることから、PET等のポリエステル繊維が最も好適に使用される。一方、前記複合繊維としては、芯鞘型又はサイドバイサイド型の複合繊維が使用される。なお、これら複合繊維の芯部を構成する繊維は、主繊維25,30よりも低い融点を有している必要はなく、むしろ主繊維25,30以上の融点を有するものであるのが好ましい。
【0056】
また、このバインダー繊維31としては、内層23の内部に多数のセル32を容易に形成させることができることから、複合繊維よりも細く形成するのが容易な熱可塑性ポリマー単体からなる合成繊維が好適に使用され、ポリエステル繊維、特に低融点のPET繊維が最も好適に使用される。さらに、このポリエステル繊維は、リサイクル性に優れているという利点もある。
【0057】
このバインダー繊維31の繊維径としては、フェンダーライナー12の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜50μmであるのが好ましい。このバインダー繊維31の繊維径が10μm未満の場合には、強度が低下するおそれがある。また、内層23の成形時にバインダー繊維31が溶融し、繊維としての形状をとどめることができず、セル32の形成に寄与しなくなるおそれもある。逆に、バインダー繊維31の繊維径が50μmを超える場合には、内層23全体に占めるバインダー繊維31の体積の割合が著しく容易に高められることから、形成されるセル32の数が少なくなる。
【0058】
前記熱可塑性ポリマー単体の融点としては、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜170℃である。この熱可塑性ポリマー単体の融点が80℃未満の場合には、フェンダーライナー12が前記タイヤハウス13の外面13aに添設されている状態にあるときに、そのフェンダーライナー12が前記車両ボディからの熱によって変形等してしまうおそれがある。逆に、熱可塑性ポリマー単体の融点が170℃を超える場合には、内層23(フェンダーライナー12)の成形時において、主繊維30をバインダー繊維31を介して接着するのに必要な熱量が多くなり、加工容易性が著しく低下する。
【0059】
また、熱可塑性ポリマー単体の融点は、主繊維25,30の融点よりも20℃以上低いのが好ましく、50℃以上低いのがより好ましい。主繊維25,30とバインダー繊維31との融点の差が20℃未満の場合には、内層23(フェンダーライナー12)の成形時にバインダー繊維31のみを溶融することが極めて困難であることから、内層23に吸音性能の高い略網目状構造を形成させることができなくなる。
【0060】
また、バインダー繊維31の繊維長としては、フェンダーライナー12の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜100mmの範囲の短繊維であるのが好ましい。さらに、微小なセル32をより多く形成させることができることから、機械捲縮等を有するように構成するのが好ましい。
【0061】
この内層23の厚さt2(図3参照)としては、好ましくは2〜8mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは2〜4mmである。この内層23の厚さt2が2mm未満の場合には、多数のセル32を形成させることができないことから、充分な吸音効果を発揮させることができない。逆に、内層23の厚さt2が8mmを超える場合には、経済的でない。また、内層23の目付け量としては、耳障りな音の周波数である1000〜2000Hzのパターンノイズをより効果的に吸収させることができることから、好ましくは800〜1300g/m、より好ましくは1000〜1300g/mである。
【0062】
また、内層23の繊維密度としては、0.01〜0.1g/cm3であるのが好ましい。この繊維密度が0.01g/cm3未満の場合には、多数のセル32を形成させることができないことから、充分な吸音効果を発揮させることができないおそれがある。逆に0.1g/cm3を超える場合には、繊維密度が高すぎて繊維間に隙間が形成されずにセル32が潰されてしまうおそれがあるうえ経済的でない。また、内層23中に含まれるバインダー繊維31の含有量としては、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%である。この内層23中のバインダー繊維31の含有量が20重量%未満の場合には、立体的な形状に成形されたフェンダーライナー12の形態安定性を充分に維持することができない。逆に、内層23中のバインダー繊維31の含有量が60重量%を超える場合には、内層23(フェンダーライナー12)の成形時に溶融しないことから内層23の強度維持に重要な役割をする主繊維30の含有量が相対的に低下し、フェンダーライナー12の強度及び耐久性を充分に高めることができない。
【0063】
次に、前記撥水層24について、以下に説明する。
この撥水層24は、主に前記タイヤの回転等によって跳ね上げられた水をはじくために設けられており、主繊維35と、加熱溶融する合成繊維からなるバインダー繊維36とから構成されている。
【0064】
また、撥水層24は、主繊維35とバインダー繊維36とが互いに交絡しながら融着された略網目状構造を有するように形成されている。また、撥水層24の内部には、主繊維35とバインダー繊維36とにより取り囲まれた極めて微小な空間、すなわちセル37が数多く形成されている。
【0065】
また、撥水層24と前記内層23とは、それら両層23,24の接合部近傍における両主繊維30,35及び両バインダー繊維31,36が互いに交絡した状態で、両層23,24の接合部近傍のバインダー繊維31,36を互いに接着することにより接合されている。
【0066】
この撥水層24の主繊維35は、ナイロン等のポリアミド(PA)繊維により構成されている。本実施形態では、前記内層23の主繊維30と同様に、撥水層24の主繊維35には、前記エアバッグ装置におけるエアバッグの廃材から形成されたポリアミド繊維が含まれている。
【0067】
また、撥水層24の主繊維35としては、その繊維径や繊維長が前記内層23の主繊維30と同様のものを用いることができる。なお、撥水層24の主繊維35としては、その繊維径や繊維長が前記内層23の主繊維30と同様のものには限定されず、撥水層24の主繊維35として、繊維径または繊維長が前記内層23の主繊維30と同様のもの、もしくは、繊維径及び繊維長が前記内層23の主繊維30とは異なるものを用いることもできる。
【0068】
また、本実施形態では、撥水層24の主繊維35として、その表面の少なくとも一部に、撥水性を付与するための撥水性付与剤が付着しているものが用いられている。この撥水性付与剤は、前記エアバッグ装置における袋状体をなすエアバッグ基布に塗布または含浸等される気密性向上剤と同じ材料(例えばシリコンゴム等)を含み、撥水性を有するものである。
【0069】
一方、撥水層24のバインダー繊維36は、前記主繊維30,35よりも低い融点を有する材料(例えば、熱可塑性ポリマー単体、又はその熱可塑性ポリマー単体からなる繊維成分を表面に付着させた複合繊維(2成分繊維))からなる合成繊維により構成されている。
【0070】
この撥水層24のバインダー繊維36としては、前記内層23のバインダー繊維31と同様の材料から形成されたものを用いることができる。また、撥水層24のバインダー繊維36としては、その繊維径や繊維長や融点が前記内層23のバインダー繊維31と同様のものを用いることができる。なお、撥水層24のバインダー繊維36としては、その繊維径や繊維長や融点が前記内層23のバインダー繊維31と同様のものには限定されず、撥水層24のバインダー繊維36として、繊維径及び繊維長及び融点のうちの少なくとも1つが前記内層23のバインダー繊維31と同様のものを用いることができる。また、撥水層24のバインダー繊維36として、繊維径及び繊維長及び融点がいずれも前記内層23のバインダー繊維31とは異なるものを用いることもできる。
【0071】
この撥水層24は、その厚さt1(図3参照)が、少なくとも0.3mm以上、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上となるように形成されている。
【0072】
また、撥水層24は、その目付け量が、好ましくは100〜500g/m2、より好ましくは200〜300g/m2の範囲内に入るように形成されている。この撥水層24の厚さt1が0.3mm未満、もしくは目付け量が100g/m2未満である場合には、フェンダーライナー12に向かって跳ね上げられた泥水等が撥水層24を通過して内層23に到達し易くなる。このように、水が内層23に到達すると、その水は、内層23に保持されることとなる。逆に、撥水層24の目付け量が500g/m2を超える場合には、前記セル37が潰されてしまうおそれがあるうえ、経済的でない。
【0073】
また、本実施形態では、この撥水層24のバインダー繊維36は、所定の色(例えば黒)に着色されており、着色繊維を構成している。
次に、前記不織布21(外装材20)の製造方法について、以下に説明する。
【0074】
まず、剛性付与層22と内層23と撥水層24との各層毎に主繊維25,30,35とバインダー樹脂26またはバインダー繊維31,36とを交絡させたプレシートを形成する。ここで、これら各層22〜24のプレシートは、例えば以下のような手順で形成される。
【0075】
まず、エアバッグの廃材を、剣山状の道具を用いてほぐし、綿状にする。なお、撥水層24のプレシートを形成する場合にあっては、綿状にされるエアバッグの廃材には、撥水性を有する気密性向上剤が塗布または含浸等されて乾燥処理が既に施されている。
【0076】
次に、剛性付与層22のプレシートを形成する場合には、綿状にされたエアバッグの廃材(主繊維25)に対し、前記バインダー樹脂26を散布して、そのバインダー樹脂26を分散させる。一方、内層23または撥水層24のプレシートを形成する場合には、綿状にされたエアバッグの廃材(主繊維30,35)に対し、バインダー繊維31,36を散布してそのバインダー繊維31,36を分散させて、それら主繊維30,35とバインダー繊維31,36とをニードルパンチにより互いに交絡させる。なお、撥水層24のプレシートを形成する場合には、前記バインダー繊維36として、所定の色に予め着色されたものを使用する。
【0077】
次に、上述のように形成された各層22〜24のプレシートを所定の態様(図3に示す態様)にて重ね合わせる。
その後、重ね合わされたプレシートに対し、ニードルパンチを施す。このニードルパンチにより、剛性付与層22と内層23との接合部近傍における両主繊維25,30及び内層23のバインダー繊維31が互いに交絡する一方、内層23と撥水層24との接合部近傍における両主繊維30,35と両バインダー繊維31,36とが互いに交絡する。
【0078】
次に、前記ニードルパンチが施されたシートを予備加熱処理する。この予備加熱処理は、バインダー繊維31,36を構成する材料の融点以上の温度で、かつ主繊維30,35を構成する材料の融点未満の温度で行われる。続いて、前記予備加熱処理が施された直後のシートをプレス成形機の型内でプレスしながら冷却し、不織布21(外装材20)を所定の形状に形成する。この予備加熱処理と冷却処理とを通じて、主繊維25,30,35とバインダー樹脂26またはバインダー繊維31,36とが接着される。また、剛性付与層22と内層23との接合部近傍におけるバインダー樹脂26とバインダー繊維31とが互いに接着し、両層22,23が接合される一方、内層23と撥水層24との接合部近傍におけるバインダー繊維31,36が互いに接着し、両層23,24が接合される。なお、前記予備加熱処理を行う代わりに、前記ニードルパンチが施されたシートをプレス成形機の型内でプレスしながら加熱及び冷却しても構わない。
【0079】
その後、プレス成形された不織布21(外装材20)を所定の形状に切断することにより、フェンダーライナー12が製造される。
さて、このフェンダーライナー12は、不織布21における剛性付与層22側の側面が自動車11(図1参照)の各タイヤハウス13の外面13aに沿って密着するように固定された状態で使用される。すなわち、このフェンダーライナー12は、不織布21の撥水層24が前記タイヤ側に配置された状態でタイヤハウス13の外面13aに添設される。このようなフェンダーライナー12をタイヤハウス13の外面13aに添設することにより、タイヤの回転によって跳ね上げられた小石や泥等がタイヤハウス13の外面13aに当たることに起因してその外面13aが傷付けられることが抑制される。
【0080】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の外装材20では、不織布21は、剛性付与層22と内層23と撥水層24との3つの層が積層された積層構造を有し、その不織布21の厚み方向における最外層のうちのタイヤ側の層に撥水層24を設けている。また、この撥水層24における主繊維35の表面の少なくとも一部には、撥水性を有する撥水性付与剤を付着させている。
【0081】
これにより、外装材20に例えば泥水等が跳ね上げられたとしても、その泥水は、撥水層24の主繊維35の表面に付着している撥水性付与剤によってはじかれる。これにより、撥水層24が水を吸収することを抑制することができる。
【0082】
また、不織布21に跳ね上げられた水は、撥水層24の内部において、重力方向下方へと流れ、その重力方向下方へと流れた水は、撥水層24の下端部から例えば地面等へと滴下する。これにより、不織布21に跳ね上げられた水は、内層23及び剛性付与層22に到達しにくくなり、それら両層22,23が前記水を吸収しにくくなる。このため、不織布21全体として、水を吸収することを抑制することができる。
【0083】
また、撥水性付与剤は不織布21の撥水層24のみに含まれるようにすればよく、撥水性付与剤の使用量を低減することができる。
(2)本実施形態の外装材20では、不織布21は、主繊維30とバインダー繊維31とで構成されるとともにバインダー繊維31が互いに接着された内層23を有している。また、不織布21は、主繊維35とバインダー繊維36とで構成されるとともにバインダー繊維36が互いに接着された撥水層24を有している。
【0084】
このため、外装材20では、内層23において、バインダーとして粒状体(ペレット)を用いる場合に比べて、セル32を極めて微小にかつ数多く形成させることが容易である。このため、不織布21の内層23による吸音効果を大いに向上することができる。
【0085】
さらに、外装材20では、撥水層24においても、セル37を微小にかつ数多く形成させることができるため、吸音効果をさらに向上することができる。
(3)本実施形態の外装材20では、内層23と撥水層24とにおいて、バインダー繊維31,36として、主繊維30,35よりも融点が低い材料から構成されたものを用いている。また、剛性付与層22において、バインダー樹脂26として、主繊維25よりも融点が低い材料から構成されたものを用いている。
【0086】
これにより、不織布21を成形する際に、主繊維25,30,35を構成する材料の融点に達するまでプレシートを加熱せずともよくなる。このため、外装材20を形成する際の製造コストを低減することができる。
【0087】
(4)本実施形態の外装材20では、剛性付与層22と内層23とを、両層22,23の接合部近傍における両主繊維25,30及び内層23のバインダー繊維31が互いに交絡した状態で、接合部近傍における剛性付与層22のバインダー樹脂26と内層23のバインダー繊維31とを互いに接着させて接合している。また、内層23と撥水層24とを、それら両層23,24の接合部近傍における両主繊維30,35及び両バインダー繊維31,36が互いに交絡した状態で、両層23,24の接合部近傍のバインダー繊維31,36を互いに接着することにより接合している。
【0088】
これにより、撥水層24が内層23から剥離しにくくなるとともに、内層23が剛性付与層22から剥離しにくくなる。このため、不織布21における各層22〜24の接合性を高めることができる。
【0089】
(5)本実施形態の外装材20では、撥水層24のバインダー繊維36として、所定の色に着色したものを用いている。このため、自動車11の外観を向上することができる。
【0090】
(6)本実施形態の外装材20では、剛性付与層22と内層23との主繊維25,30には、エアバッグの廃材から形成されたポリアミドからなる繊維が含まれている。また、撥水層24の主繊維35には、撥水性を有する気密性向上剤が塗布または含浸等された基布から構成されるエアバッグの廃材から形成されたポリアミドからなる繊維が含まれている。
【0091】
これにより、剛性付与層22と内層23とのプレシートを形成する際には、エアバッグの廃材から形成された繊維を使用することができる。このため、エアバッグのリサイクル性を向上することができるとともに、外装材20を安価に製造することができる。
【0092】
また、撥水層24のプレシートを形成する際には、撥水性を有する気密性向上剤が塗布または含浸等された状態のエアバッグの繊維をほぐしてプレシートに加工すれば、そのプレシートの主繊維35の表面には、前記気密性向上剤が付着しているため、そのプレシートを撥水層24として使用することができる。
【0093】
これにより、撥水性を有する気密性向上剤が塗布または含浸等されたエアバッグから形成された繊維を用いて撥水層24を形成することができる。また、不織布21に対して撥水性付与剤を塗布または含浸する等の処理を省略することができる。このため、外装材20をより安価に製造することができる。
【0094】
(7)本実施形態の外装材20では、不織布21には、その厚み方向における最外層のうちの前記タイヤハウス13の外面13a側の最外層に剛性付与層22を設けている。
【0095】
これにより、不織布21自身の剛性を高めることができ、外装材20を所望の形状に保持し易くなる。また、外装材20を自動車11のタイヤハウス13の外面13aに取り付ける際の取付性を向上することができる。
【0096】
(8)本実施形態のアンダープロテクターでは、撥水層24を有する不織布21からなる外装材20を、自動車11のタイヤハウス13の外面13aに沿った形状に形成されてそのタイヤハウス13の外面13aに添設されるフェンダーライナー12として用いている。
【0097】
これにより、例えば降雨時に自動車11を走行させたとき等に、泥水がフェンダーライナー12に跳ね上げられたとしても、その泥水が不織布21の撥水層24によってはじかれ、撥水層24が水を吸収することが抑制される。
【0098】
このため、フェンダーライナー12に跳ね上げられた泥水は、撥水層24内を重力方向下方へと流れ、その撥水層24の下端部から地面へと速やかに滴下するようになる。この結果、自動車11を車庫に入れたとき等にタイヤの周辺の床面が水浸しになったり、汚れたりすることを抑制することができ、見栄えが悪化することを抑制することができる。
【0099】
また、自動車11のタイヤの回転によって跳ね上げられた泥が不織布21に付着しにくくなるため、乾燥した状態で自動車11のタイヤハウス13内が白っぽくなることが抑制され、見栄えが悪化することも抑制することができる。
【0100】
また、不織布21が水を吸収しにくくなるため、不織布21の重量増加を抑制することができ、自動車11のボディ等に対する取付強度の低下を抑制することができる。
【0101】
また、これらの効果は、自動車11のタイヤの回転によって泥水等が跳ね上げられ易いフェンダーライナー12において顕著となる。
(9)本実施形態のアンダープロテクターでは、主繊維30,35とバインダー繊維31,36とが互いに交絡されるとともに、それら主繊維30,35とバインダー繊維31,36とにより取り囲まれた多数の微小なセル32,37が形成された内層23と撥水層24とを備える不織布21を用いている。
【0102】
これにより、前記不織布21を備えるフェンダーライナー12は、タイヤと地面とによって発生するパターンノイズ等の騒音が効果的に吸収され、その騒音が自動車11の車内に伝わることを著しく低減させることができる。すなわち、前記パターンノイズ等の騒音は、フェンダーライナー12における撥水層24及び内層23内に入射した後、両層24,23の多数の微小なセル37,32による吸音作用により音のエネルギーの減衰が図られ、車内に伝わるノイズ量が減少する。さらに、前記セル37,32の吸音作用により、車内に伝わるノイズの周波数等も変質されて耳障りでなくなる。
【0103】
このため、フェンダーライナー12は、自動車11の室内の搭乗者に不快感を与え難くすることができるうえ、自動車11の内部、特にタイヤハウス13の近接位置に配設された種々の機械、装置、配線等(例えば給油ホース等)の故障、誤作動、不具合等を極めて効果的に抑制することができる。
【0104】
(10)本実施形態のアンダープロテクターでは、不織布21の内層23と撥水層24とには、主繊維30,35としてポリアミド繊維が用いられている。
ポリアミド繊維は、その繊維径が小さくなるように形成することが容易であるため、内層23及び撥水層24において多数のセル32,37を容易に形成することができる。このため、不織布21による吸音性を好適に向上することができる。
【0105】
(変形例)
なお、本発明の実施形態は、以下のように変形してもよい。
・前記実施形態では、不織布21(外装材20)を成形する際、内層23のプレシートと撥水層24のプレシートとを重合させる前にそれら両プレシートに対し、個別にニードルパンチ処理を施すようにしたが、この手順には限定されない。不織布21(外装材20)を成形するに際して、内層23のプレシートと撥水層24のプレシートとを重合させる前にはそれら両プレシートに対して個別にはニードルパンチ処理を施さず、各層22〜24のプレシートを重合した後に、その重合したプレシートに対してニードルパンチ処理を施すようにしてもよい。
【0106】
この手順では、各層23,24における主繊維30,35とバインダー繊維31,36との交絡と、両層22,23の接合部近傍での主繊維25,30とバインダー繊維31との交絡と、両層23,24の接合部近傍での主繊維30,35とバインダー繊維31,36との交絡とを同時に行うことができる。
【0107】
・また、前記実施形態において、不織布21の各層22〜24に用いられる主繊維25,30,35は、ポリアミド(PA)繊維には限定されない。これら主繊維25,30,35としては、例えばアラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、スルホン系繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維などの無機繊維、綿、レーヨンなどのセルロース繊維、絹、羊毛等のタンパク質系繊維等を単独または混合して得られる長繊維、短繊維または混合繊維等を使用することが可能である。
【0108】
・また、前記実施形態において、不織布21の各層22〜24に用いられる主繊維25,30,35は、エアバッグの廃材から形成された繊維を含む構成には限定されない。これら主繊維25,30,35としては、エアバッグ以外の廃材、例えば、車両用シートの表皮、サイレンサー、フロアマット、フロアカーペット、フードインシュレータ、ダッシュアウターインシュレータ等を構成する織布または不織布の廃材から形成された繊維を用いる構成としてもよい。また、主繊維25,30,35として、例えば内装パネルやPETボトル等の各種樹脂成形品の廃材から形成された繊維を用いる構成としてもよい。
【0109】
・また、前記実施形態において、撥水層24に含まれる撥水性付与剤は、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグにおいて、そのエアバッグを構成する繊維の表面に付着されるとともに撥水性を有する気密性向上剤と同じ材料からなるものでなくてもよい。
【0110】
・また、前記実施形態において、撥水層24に対して、例えばスプレー散布や含浸等の処理を施すことによりに撥水性付与剤を含ませるようにしてもよい。
・また、前記実施形態において、撥水層24を構成する主繊維35とバインダー繊維36との両繊維35,36に、所定の色に着色された着色繊維を含む構成としてもよい。また、撥水層24を構成する主繊維35のみに、所定の色に着色された着色繊維を含む構成としてもよい。逆に、撥水層24を構成する主繊維35とバインダー繊維36との両繊維35,36のどちらにも、所定の色に着色された着色繊維を含まない構成としてもよい。
【0111】
・また、前記実施形態において、内層23と撥水層24とを、バインダー繊維31,36とは異なった材料からなる接着剤により接合する構成としてもよい。このようにした場合には、内層23と撥水層24とを、以下のような手順で接合することができる。まず、内層23を構成するプレシートと、撥水層24を構成するプレシートとを各別に形成して、それらプレシートの接合面の一方に接着剤を塗布等する。次に、両プレシートを重合させて予備加熱処理する。続いて、前記予備加熱処理が施された直後のプレシートをプレス成形機の型内でプレスしながら冷却する。
【0112】
また、内層23と撥水層24とを、内層23を構成するプレシートと撥水層24を構成するプレシートとを重合させた状態で縫合することにより接合する構成としてもよい。
【0113】
・また、前記実施形態において、剛性付与層22を、内層23に対して同内層23における撥水層24が積層される側の側面とは反対側の側面の一部にのみ積層させる構成としてもよい。
【0114】
また、内層23と撥水層24とにより、不織布21において所望の剛性が確保される場合等には、剛性付与層22を省略してもよい。
・また、前記実施形態において、撥水層24を、剛性付与層22における内層23とは反対側にも積層する構成としてもよい。すなわち、不織布21の厚み方向における両最外層がともに撥水層24となるように不織布21を成形する構成としてもよい。
【0115】
・また、前記実施形態において、不織布21は、その全体が積層構造を有する構成には限定されない。この不織布21を、その一部に少なくとも内層23と撥水層24とが積層された積層構造を有するように成形してもよい。
【0116】
また、不織布21を、その全体が撥水部となるように形成してもよい。
・また、前記実施形態では、本発明のアンダープロテクターをフェンダーライナー12に具体化した。これに対して、本発明のアンダープロテクターを、例えば、フロント側のタイヤハウス13の前端縁の近傍に突出するように取着されるCdスパッツや、同じくフロント側のタイヤハウス13の後端縁の近傍に突出するように取着されるマッドガード等に具体化してもよい。また、本発明のアンダープロテクターを、例えば、リヤ側のタイヤハウス13の前側部分に装着されるクォータライナや、同じくリヤ側のタイヤハウス13の後側部分に装着されるプロテクタフューエルカバー等に具体化してもよい。この他、フロントバンパーの下部に取着されるエアダムスカート、車両ボディ側面の下部に取着されるサイドステップ、車両ボディの下面のほぼ全体を覆うように配設されるアンダープロテクター等、本発明のアンダープロテクターは、車両ボディの下部の少なくとも一部を被覆する部品に幅広く適用することができる。
【0117】
・また、前記実施形態において、外装材20は、車両ボディの下部の少なくとも一部を被覆するように設けられるものには限定されない。本発明の外装材は、例えば、高速道路や一般道路や鉄道の防音壁用外装材、トンネルの内壁用外装材、住宅や工場等の建築物用外装材等として用いることができる。
【0118】
・また、前記実施形態において、不織布21は、外装材20に用いられるものには限定されない。この不織布21は、例えば、フロアカーペット、フロアマット、玄関用マット等に用いることができる。
【0119】
その他、前記実施形態、並びに以上の記載から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に記載する。
(イ)請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の外装材において、前記撥水部を、少なくとも0.3mm以上の厚さを有するように形成したことを特徴とする外装材。
【0120】
この(イ)に記載の発明によれば、シート状成形体に例えば泥水等が跳ね上げられたとしても、その泥水が撥水部内を通り抜けにくくなり、シート状成形体において撥水性付与剤が含まれていない部分に到達しにくくなるという効果が得られる。
【0121】
(ロ)請求項1〜請求項のうちいずれか一項または前記(イ)に記載の外装材において、前記撥水部を、その目付け量が100〜500g/mの範囲内に入るように形成したことを特徴とする外装材。
【0122】
この(ロ)に記載の発明によれば、上記(イ)に記載の効果に加えて、撥水部内のセルが潰れた状態となることを抑制することができるとともに、シート状成形体の製造コストが大きく上昇することを抑制することができるという効果が得られる。
【0123】
(ハ)複数の繊維が交絡されたシート状成形体を備える外装材の製造方法において、前記シート状成形体は、厚み方向における最外層のうちの少なくとも一方の層に、そのシート状成形体に撥水性を付与する撥水性付与剤が含まれた撥水層を備える積層構造をなし、前記撥水層と同撥水層に接する層とを、両層の接合部近傍の主繊維及びバインダー繊維を相互に交絡させるとともに、両層の接合部近傍のバインダー繊維を互いに接着することによって接合したことを特徴とする外装材の製造方法。
【0124】
この(ハ)に記載の発明によれば、撥水層を、同撥水層に接する層から剥離しにくくすることができ、それら撥水層と同撥水層に接する層との接合性を高めることができるという効果が得られる。
【0125】
(ニ)複数の繊維が交絡されたシート状成形体において、前記シート状成形体における少なくとも厚み方向の側面のうちの一方の側面またはその近傍に、撥水性を付与する撥水性付与剤を含むことを特徴とするシート状成形体。
【0126】
この(ニ)に記載の発明によれば、シート状成形体に例えば泥水等が跳ね上げられたとしても、その泥水が撥水性付与剤によってはじかれ、シート状成形体自身が水分を吸収することを抑制することができるという効果が得られる。
【0127】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願請求項1に記載の発明によれば、シート状成形体が水を吸収することを抑制することができる。
【0128】
また、撥水性付与剤の使用量を低減することができるとともに、不織布による吸音効果を大いに向上することができる。
【0129】
さらに、不織布の内部に水が吸収されることを抑制することができる。
また、外装材を形成する際の製造コストを低減することができる。
【0130】
また、撥水層と同撥水層に接する層との接合性を高めることができる。
【0131】
また、本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明の効果に加えて、不織布の撥水層が外部から視認されるように外装材が配置される場合において、その外装材が設けられる部分の外観を向上することができる。
【0132】
また、本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、気密性向上剤を含むエアバッグのリサイクル性を向上することができる。
【0133】
また、本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、エアバッグのリサイクル性を向上することができるとともに、外装材を安価に製造することができる。
【0134】
また、本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、外装材を所望の形状に保持し易くなる。また、剛性付与部を備えた外装材を所定の部位に取り付ける際において、その外装材の取付性を向上することができる。
【0135】
また、本願請求項に記載の発明によれば、車両を車庫に入れたとき等にタイヤの周辺の床面が水浸しになったり、汚れたりすることを抑制することができる。また、タイヤの回転によって跳ね上げられた泥がシート状成形体に付着しにくくなり、見栄えが損なわれることを抑制することができる。また、車両のボディに対するアンダープロテクターの取付強度が低下することを抑制することができる。加えて、タイヤの回転により跳ね上げられた水を、シート状成形体における撥水部以外の部分の内部に浸入しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態のアンダープロテクターを装着した車両の部分側面図。
【図2】アンダープロテクターの斜視図。
【図3】外装材の断面構造を模式的に示す拡大断面図。
【符号の説明】
11…車両としての自動車、12…アンダープロテクターとしてのフェンダーライナー、13…タイヤハウス、13a…外面、20…外装材、21…シール状成形体としての不織布、22…剛性付与部としての剛性付与層、23…撥水層に接する層としての内層、24…撥水部としての撥水層、25,30,35…主繊維、26…バインダー樹脂、27,32,37…セル、31…バインダー繊維、36…着色繊維を構成するバインダー繊維。

Claims (6)

  1. 互いに交絡された主繊維とバインダー繊維とで構成されるとともに、前記バインダー繊維を互いに接着させた不織布からなるシート状成形体を備える外装材において、
    前記シート状成形体は、複数の層が積層された積層構造を有するとともに、厚み方向における最外層のうちの少なくとも一方の層に撥水性を付与する撥水性付与剤を含む撥水部をなす撥水層を備え、
    前記撥水性付与剤を、前記主繊維の表面の少なくとも一部に付着させ、
    前記バインダー繊維を、前記主繊維よりも融点が低い材料から構成し、
    前記撥水層と同撥水層に接する内層との接合部近傍における主繊維及びバインダー繊維を相互に交絡させるとともに、両層の接合部近傍のバインダー繊維を互いに接着させることによって接合し、
    前記撥水層の厚さ及び目付け量が、0.3mm以上、100〜500g/m であり、前記内層の厚さ及び目付け量が、2〜8mm、800〜1300g/m であることを特徴とする外装材。
  2. 前記撥水部は、前記主繊維および前記バインダー繊維の少なくとも一方に、所定の色に着色された着色繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の外装材。
  3. 前記撥水性付与剤は、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグを構成する袋状体の表面に付着されるとともに撥水性を有する気密性向上剤と同じ材料からなるシリコンゴムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外装材。
  4. 前記繊維は、車両に搭載されるエアバッグ装置におけるエアバッグの廃材から形成された繊維を含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の外装材。
  5. 前記シート状成形体は、シート状成形体自身の剛性を高めるための剛性付与部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の外装材。
  6. 車両ボディの下部の少なくとも一部を被覆するアンダープロテクターにおいて、
    請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の外装材を備え、同外装材は、車両のタイヤハウスの外面に沿った形状に形成されてそのタイヤハウスの外面に添設されるフェンダーライナーであり、前記外装材の撥水部を、前記車両のタイヤ側に配置したことを特徴とするアンダープロテクター。
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