JP3943190B2 - レーザー切断方法および同切断方法に使用するレーザー加工ヘッド - Google Patents

レーザー切断方法および同切断方法に使用するレーザー加工ヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザー切断方法および同切断方法に使用するレーザー加工ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
本願出願人は本願発明に関連するレーザー切断方法および同切断方法に使用するレーザー加工ヘッドの発明を出願中(特願平8−305031号)である。
【0003】
前記出願中の発明のレーザー切断方法は、軟鋼板の厚板(19〜25mm程度)を実用的な精度で切断できる方法であって、例えば、図6および図7に示す如き板厚tの軟鋼板のワークWを切断する場合、レーザー加工ヘッド(図示省略)の軸心からδだけ偏心して集光されたレーザービームを、この加工ヘッドの軸心を中心として半径δで高速で回転させると共に、アシストガスをワークWの切断部に噴射し、ワークWをレーザー加工ヘッドに対して切断ライン101に沿って相対的に移動させるものである。
【0004】
前記レーザー切断方法においては、集光されたレーザーの微小なビームスポット103が半径δで回転しながら切断ライン101方向に移動して、切断フロント(切断過程にある領域)105の一部分を少しずつ高速度で切断または除去していく。この切断フロント105部分の深さΔHは微小量であるので、酸素などのアシストガスが切断フロント105の底部まで十分に供給され、酸化反応が活発となり反応熱が発生すると共に、アシストガスによって溶融した金属の排出が直ちに行われワークWは切断幅A(2δ)で切断が進行することになる。
【0005】
前記切断過程において、レーザービームが1回転したときに除去される切断フロント部105の体積は、三日月状部分の面積(S)×深さΔHからなる微小体積となる。さらに、レーザービームの度重なる回転によって、切断フロント部105は結果的に予熱されている状態が形成されて昇温が助長されるので、2kW程度の中出力レーザーによる厚板鋼板(19〜25mm)切断を実用的精度で可能としたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記本願出願人の出願中の発明のレーザー切断方法においては、切断移動中にレーザービームを回転させるので、切断溝の左右におけるレーザービームのワークに対する相対速度が相違する。このことから、例えば、ワークW上面から見てレーザービームが反時計方向に回転している場合には、切断進行方向に向かって切断溝左岸の切断品質が右岸より良好となり、右岸の下面は「面えぐれ」、「ドロス付着」などが発生し切断品質が悪化する。したがって、この切断方法においては切断された片側を生かす切断方法が必要とされる。
【0007】
本発明は前述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は偏心レーザービームを回転させるレーザー切断方法において、切断される製品が常に良好な切断面で切断できる切断方法と同切断方法に使用するレーザー加工ヘッドを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として、請求項1に記載のレーザー切断方法は、偏心レーザービームを回転させるレーザー切断方法において、切断進行方向と切断される製品との位置関係により、前記偏心レーザービームの回転方向を切断される製品が切断進行方向に対して左側に位置するときは反時計方向に、前記切断される製品が切断進行方向に対して右側に位置するときは時計方向に変更することを要旨とするものである。
【0009】
したがって、請求項1に記載のレーザー切断方法によれば、切断溝の左右の切断品質が相違する偏心レーザービームを回転させる切断方法を使用しても、切断面に「面えぐれ」やドロスの付着が少ない良好な製品を得ることができる
【0011】
請求項2に記載のレーザーレーザー加工ヘッドは、レーザービームを集光する集光レンズの下方位置に、該レーザービームを前記集光レンズの光軸から偏心させる回転駆動自在の偏心用光学系を設けると共に、前記偏心用光学系からのレーザービームを通過させると共に、アシストガスを同軸に噴射させるアシストガスノズルとを設けたレーザー加工ヘッドにして、前記偏心用光学系を回転駆動するサーボモーターを設け、該サーボモーターの回転方向を切断進行方向と切断される製品との位置関係により、切断される製品が切断進行方向に対して左側に位置するときは反時計方向に、前記切断される製品が切断進行方向に対して右側に位置するときは時計方向にNC装置により回転制御すると共に、前記サーボモーターの回転数を製品切断速度とレーザービームの回転数との関係式から求めることを要旨とするものである。
【0013】
したがって、請求項2に記載のレーザ加工ヘッドによれば、切断進行方向と切断される製品との位置関係と、製品切断速度とレーザービームの回転数の関係式とから、製品切断面に「面えぐれ」やドロスの付着が少ない偏心レーザービームの回転方向と回転数とを自動的に設定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面によって説明する。図1は本発明に係わるレーザー加工ヘッドの実施の形態を示したものである。図1を参照するに、レーザー加工ヘッド1は、レーザービームLBを集光する集光レンズ3と、この集光レンズからのレーザービームLBをこの集光レンズの光軸から偏心させる偏心用光学系としてのオプチカルフラット7と、このオプチカルフラット7を回転駆動するサーボモーター9と、アシストガスノズル11などから構成してある。
【0015】
前記集光レンズ3は中空円筒状の光学系支持部材13の内径部にレンズホルダー15を介して交換可能に螺着してある。また、光学系支持部材13には集光レンズ3の下方位置にあってレーザービームLBを前記集光レンズ3の光軸から偏心させる偏心用光学系としてオプチカルフラット7が設けてある。
【0016】
前記オプチカルフラット7は中空の回転筒19の上端部に集光レンズ3の光軸と適宜な角度に傾斜させて設けてある。そして、この回転筒19は前記光学系支持部材13の内径部に離隔して設けた上下のベアリング17を介して回転自在に設けてあり、回転筒19のほぼ中間位置の外径部に従動プーリー21が取付けてある。
【0017】
前記光学系支持部材13にはモーターブラケット23が側方に張出して設けてあり、このモーターブラケット23に前記サーボモーター9が取付けてある。そして、このサーボモーター9の出力軸に設けた駆動プーリー25と前記従動プーリー21との間にはベルト27が掛け回してある。なお前記従動プーリー21および駆動プーリー25などには歯付きプーリーを使用するのが望ましい。
【0018】
前記光学系支持部材13の下端には前記オプチカルフラット7からのレーザービームを通過させると共に、アシストガスを同軸に噴射させるアシストガスノズル11が設けてある。また、このアシストガスノズル11の上部には酸素、窒素または空気などのアシストガスおよび空気中の塵埃が前記オプチカルフラット7の方に侵入するのを防止するための光学的に透明なウインド29が取付けてあり、このノズル11においてウインド29の下方で側方位置には切断加工時に供給するアシストガス供給口31が設けてある。
【0019】
上記構成において、集光レンズ3からオプチカルフラット7に入射されたレーザービームLBは、回転筒19の上端部に集光レンズ3の光軸5と適宜な角度に傾斜させて設けたオプチカルフラット7によって、ワークWの表面において光軸5からδだけ偏心した位置に集光照射することができる。したがって、サーボモーター9を回転駆動すれば、オプチカルフラット7を支持した回転筒19が回転させられるので、ワークWの表面に集光されたレーザービームLBは前記光軸5を中心に半径δで円運動することになる。
【0020】
なお、前記アシストガスノズル11のアシストガスガス噴射口の口径はレーザービームの円運動に干渉しないように直径が2*δ以上に設けてある。また、前記偏心用光学系としてのオプチカルフラット7に代えて光学ウエッジを使用することもできる。また、前記アシストガスノズル11のノズル先端は交換自在なノズルチップとすることができる。
【0021】
図1に示すように、前記サーボモーター9はNC装置33の制御の下に、その回転数(回転速度)および回転方向が図示省略のCPUによって制御されるようになっている。さらに詳細には、NC装置33には加工条件記憶部35と切断形状プログラム部37および回転数演算部39とが設けてあり、回転数演算部39では、加工条件記憶部35からの加工速度データを基にして回転数が演算され、この回転数に基づいてモーター駆動部41からサーボモーター9に適宜な制御指令(電圧値)を出力するようになっている。また、切断形状プログラム部37からの回転方向指令に基づいてモーター駆動部41においてサーボモーター9の回転方向が制御される。なお、前記サーボモーター9にはACサーボモーター、DCサーボモーターまたはステッピングモーターなどを使用できる。
【0022】
前記加工条件記憶部35には、後述の各種材質の板厚tと最大切断速度Fmax との関係式および切断速度Fとレーザービーム回転数Nとの関係式が登録してある。また、前記切断形状プログラム部37には、自動プログラミング装置43によって作成された切断形状プログラムが外部記憶装置45を介して入力され、その切断形状プログラムが記憶してある。この切断形状プログラム部37の中には、前述の偏心して回転するレーザービームの回転方向、材質および板厚指定、加工開始位置(ピアシング位置)、切断進行方向などの指令が含まれている。
【0023】
なお、前記NC装置33はレーザー制御部47を介してレーザー発振器49の出力を制御すると共に、レーザー加工機(図示省略)のワーク移動装置またはレーザー加工ヘッドを軸制御部51、サーボアンプ53および駆動モーター55を介して位置決め制御できるようになっている。なお、前記加工条件記憶部35の内容は表示装置を備えた加工条件編集部57で適宜に編集することができる。
【0024】
図2は、前述の自動プログラミング装置43で、ワークWの内側に製品Pを切断する場合の作業プロセスを説明したものである。まず、ワークWの材質、板厚および使用するレーザー加工機を設定する。次に、切断形状(穴および外周)を自動プログラミング装置43のディスプレー上に作成する。
【0025】
この切断形状(穴および外周)の作成プロセスにおいては、切断開始点となるピアシング開始位置を指定すると共に、切断される製品Pが工具軌跡(切断線)が作る閉ループ曲線の内側になるのか外側になるのかを設定する。また、穴および外周の両方において、切断方向を時計回りとするのか、または反時計回りとするのかを設定し、製品Pの外周切断か内周切断かによって「工具径補正右」または「工具径補正左」(切断位置を進行方向に向かって右側または左側にずらすNCコード;G42,G41)かのどちらかのオフセットを指定する。すなわち、図2の製品Pの例においては、切断方向を時計回り、製品Pは閉ループ曲線の内側、製品Pの外周切断経路においては「工具径補正左」を、製品P内の穴部では「工具径補正右」を指定することになる。
【0026】
なお、前記切断形状(穴および外周)の作成プロセスにおいて、偏心レーザービームの回転方向61は、図3に示す4種類のパターンから自動プログラミング装置43が自動的に判断してプログラム指令を設定する。
【0027】
前記4種類のパターンは、切断進行方向59と製品Pとの相対的位置関係から次の4種類のパターンに分類される。(a)切断進行方向59が反時計回りで、製品Pが切断経路が作る閉ループ曲線Cの内側、(b)切断進行方向が反時計回りで、製品Pが切断経路が作る閉ループ曲線Cの外側、(c)切断進行方向が時計回りで、製品Pが切断経路が作る閉ループ曲線Cの内側、(d)切断進行方向が時計回りで、製品Pが切断経路が作る閉ループ曲線Cの外側。
【0028】
前記4種類のパターンにおいて、(a)と(d)の場合は、ビームの回転方向61は反時計回りの設定が選択され、(b)と(c)の場合はビームの回転方向61は時計回りの設定が選択されるようになっている。すなわち、切断進行方向59と切断される製品Pとの位置関係において、切断される製品Pが切断進行方59向に対して左側に位置するときは反時計方向が、切断される製品Pが切断進行方向59に対して右側に位置するときは時計方向の回転が選択されるようになっている。したがって、切断される製品P側の切断品質は常に良好になる。
【0029】
以上の如き切断形状作成プロセスを経て、切断加工プログラムが自動プログラミング装置43によって自動作成されて前記外部記憶装置45に出力され、そして、この外部記憶装置45から前記NC装置33に入力されることになる。
【0030】
図4および図5を参照するに、図4はSUS304における板厚と最大切断速度の関係を実験によって求めた結果をプロットしたものであり、横軸は切断板厚t(mm)、縦軸は最大切断速度Fmax (mm/min)を表す。なお、図4の中に示した関係式は、この実験データを自然対数曲線、Fmax =−247.71Ln(t)+971.06で近似したものである。したがって、このグラフ示される範囲の板厚tにおける最大切断速度Fmax (mm/min)を上限として、プログラム中に切断速度F(mm/min)を設定することができる。
【0031】
図5は図4と同じくSUS304における切断速度とレーザービームの回転数との関係を実験によって求めた結果をプロットしたものであり、横軸は切断速度F(mm/min)、縦軸はビーム回転数N(rpm)を表す。なお、図5の中に示した関係式は、この実験データを自然対数曲線、N=−615.51Ln(F)+2031.4で近似したものである。したがって、プログラムによって切断速度Fが指定されれば、レーザービームの回転数Nを前記関係式から演算によって求めることができる。
【0032】
なお、前記図4および図5のグラフと関係式はSUS304の例であるが、その他の材質においても同様に関係式が求められている。
【0033】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、切断溝の左右の切断面品質が相違する偏心レーザービームを回転させる切断方法を使用しても、切断面に「面えぐれ」やドロスの付着が少ない良好な製品を得ることができる。
【0034】
請求項2に記載の発明によれば、切断進行方向と切断される製品との位置関係と、製品切断速度とレーザービームの回転数の関係式とから、製品切断面に「面えぐれ」やドロスの付着が少ないレーザービームの回転方向と回転数とを自動的に設定することができるので、レーザービームの回転方向を間違えて製品側を不良にするようなことがない。また、材質、板厚および切断速度に係わるレーザービームの回転数が自動的に制御されるのでオペレーターによる調整誤差やミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるレーザー加工ヘッドの構成図。
【図2】自動プログラミング装置における作業プロセスの説明図。
【図3】切断進行方向と製品との相対的位置関係の4パターンにおけるレーザービームの回転方向の説明図。
【図4】SUS304における板厚と最大切断速度の関係のグラフおよび関係式。
【図5】SUS304における切断速度とレーザービームの回転数との関係のグラフおよび関係式。
【図6】レーザー加工ヘッドの軸心からδだけ偏心して集光されたレーザービームを半径δで回転させて厚板を切断する方法の説明図。
【図7】図6の断面図
【符号の説明】
1 レーザー加工ヘッド
3 集光レンズ
5 集光レンズの光軸
7 オプチカルフラット
9 サーボモーター
11 アシストガスノズル
19 回転筒
33 NC装置
35 加工条件記憶部
37 切断形状プログラム部
39 回転数演算部
41 モーター駆動部
43 自動プログラミング装置
45 外部記憶装置
57 加工条件編集部
59 切断進行方向
61 ビームの回転方向
C 閉ループ曲線
P 製品
W ワーク

Claims (2)

  1. 偏心レーザービームを回転させるレーザー切断方法において、切断進行方向と切断される製品との位置関係により、前記偏心レーザービームの回転方向を切断される製品が切断進行方向に対して左側に位置するときは反時計方向に、前記切断される製品が切断進行方向に対して右側に位置するときは時計方向に変更することを特徴とするレーザー切断方法。
  2. レーザービームを集光する集光レンズの下方位置に、該レーザービームを前記集光レンズの光軸から偏心させる回転駆動自在の偏心用光学系を設けると共に、前記偏心用光学系からのレーザービームを通過させると共に、アシストガスを同軸に噴射させるアシストガスノズルとを設けたレーザー加工ヘッドにして、前記偏心用光学系を回転駆動するサーボモーターを設け、該サーボモーターの回転方向を切断進行方向と切断される製品との位置関係により、切断される製品が切断進行方向に対して左側に位置するときは反時計方向に、前記切断される製品が切断進行方向に対して右側に位置するときは時計方向にNC装置により回転制御すると共に、前記サーボモーターの回転数を製品切断速度とレーザービームの回転数との関係式から求めることを特徴とするレーザー加工ヘッド
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