以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明においては、図中の直交座標系を方向の基準とし、便宜上、x軸プラス方向を右方、y軸プラス方向を前方、z軸プラス方向を上方として言及することがある。
図1及び図2を参照して、一実施形態に係るレーザ加工機10について説明する。レーザ加工機10は、制御装置12、レーザ発振器14、加工ヘッド16、アシストガス供給装置18、移動機構20、及び移動装置22を備える。制御装置12は、プロセッサ13(CPU、GPU等)、及び記憶部15(ROM、RAM等)等を有し、レーザ加工機10の各構成要素を直接的又は間接的に制御する。プロセッサ13と記憶部15とは、バス17を介して、互いに通信可能に接続されている。
レーザ発振器14は、制御装置12からの指令に応じて、内部でレーザ発振し、レーザ光を外部へ出射する。レーザ発振器14は、CO2レーザ発振器、固体レーザ(YAGレーザ)発振器、又はファイバレーザ発振器等、如何なるタイプのものであってもよい。
加工ヘッド16は、ヘッド本体24、光学要素26、レンズ駆動部28、及びノズル30を有する。ヘッド本体24は、中空であって、その基端部に光ファイバ32が接続されている。レーザ発振器14から出射されたレーザ光は、光ファイバ32内を伝搬して、ヘッド本体24の内部に入射する。
光学要素26は、コリメートレンズ又はフォーカスレンズ等を有し、加工ヘッド16の光学系を構成する。光学要素26は、ヘッド本体24の内部に入射したレーザ光をコリメート又は集光し、ワークWへ導光する。光学要素26は、レーザ光の光軸A1の方向へ移動可能となるように、ヘッド本体24の内部に収容されている。レンズ駆動部28は少なくとも1つの光学要素26を、光軸A1の方向へ移動させる。レンズ駆動部28が光学要素26の光軸A1の方向の位置を調整することによって、ノズル30から出射されたレーザ光の光軸方向の焦点位置を制御できる。
ノズル30は、中空であって、ヘッド本体24の先端部に設けられている。ノズル30は、その基端部から先端部へ向かうにつれて、光軸A1と直交する断面積が小さくなるような円錐台状の外形を有し、その先端部に円形の出射口34を有する。ノズル30及びヘッド本体24の内部には、空洞のチャンバ36が形成されている。光学要素26から伝搬したレーザ光は、チャンバ36を通過して、出射口34から外部へ出射される。
アシストガス供給装置18は、ガス供給管35を介して、ヘッド本体24及びノズル30の内部に形成されたチャンバ36にアシストガスを供給する。アシストガスは、例えば、窒素又は空気である。チャンバ36に供給されたアシストガスは、レーザ光とともに出射口34から噴流Bとして噴射される。
ノズル30は、後述するように、アシストガスとレーザ光とを同軸及び非同軸に出射可能である。図1においては、アシストガスの噴流Bを点線で模式的に示している。ノズル30がアシストガスとレーザ光とを同軸に出射したとき、レーザ光の光軸A1と、アシストガスの中心軸A2とは、z軸に平行となる。なお、z軸方向は、例えば、鉛直方向と平行である。
移動機構20は、加工ヘッド16とワークWとを相対的に移動させる。具体的には、移動機構20は、ワークテーブル38、x軸移動機構40、y軸移動機構42、及びz軸移動機構44を有する。ワークテーブル38の上には、ワークWが設置される。x軸移動機構40は、例えば、サーボモータ、及び、x軸方向に延びるボールねじを含むボールねじ機構(ともに図示せず)を有し、制御装置12からの指令に応じてワークテーブル38をx軸方向へ移動させる。
y軸移動機構42は、例えば、サーボモータ、及び、y軸方向に延びるボールねじを含むボールねじ機構(ともに図示せず)を有し、制御装置12からの指令に応じてワークテーブル38をy軸方向へ移動させる。z軸移動機構44は、例えば、サーボモータ、及び、z軸方向に延びるボールねじを含むボールねじ機構(ともに図示せず)を有し、加工ヘッド16をz軸方向へ移動させる。
移動装置22は、制御装置12から指令に応じて、加工ヘッド16の光学系の光軸配置と、ノズル30の位置と、アシストガスの噴射形態との少なくとも1つを変動させることにより、レーザ光の光軸A1と、アシストガスBの中心軸A2とを相対的に移動させる。移動装置22としては、種々の形態が考えられる。以下、図3〜図12を参照して、種々の形態に係る移動装置22について説明する。
図3に示す移動装置22は、ノズル移動機構45を有する。図3に示す形態においては、ノズル30は、ヘッド本体24に対してx−y平面(すなわち、光軸A1と直交する平面)に沿って移動可能となるように、該ヘッド本体24に設けられている。例えば、ノズル30とヘッド本体24との間に、弾性材(例えば、環状のゴム)43が介挿され、該弾性材43によって、ノズル30は、ヘッド本体24に対してx−y平面に可動に支持され得る。
ノズル移動機構45は、複数の駆動部46を有する。例えば、計4個の駆動部46が、光軸A1の周りに略等間隔(すなわち、90°の間隔)で配置される。各々の駆動部46は、サーボモータ又は圧電素子等であって、先端がノズル30に連結された駆動軸46aを有する。駆動部46は、制御装置12からの指令に応じて、互いに協働しつつ駆動軸46aを進退させることで、ノズル30をヘッド本体24に対してx−y平面に沿って駆動する。
例えば、図4に示すように、x軸方向に整列する2つの駆動部46のうち、左側に位置する駆動部46が、その駆動軸46aを左方へ後退させるのと同期して、右側に位置する駆動部46が、その駆動軸46aを左方へ前進させる。これにより、ノズル30をヘッド本体24に対して左方へ移動させることができる。その結果、ノズル30の出射口34から出射されるアシストガスの中心軸A2が、レーザ光の光軸A1から左方へずれることになる。
同様にして、y軸方向に整列する2つの駆動部46のうち、後側に位置する駆動部46が、その駆動軸46aを前方へ前進するのと同期して、前側に位置する駆動部46が、その駆動軸46aを前方へ後退させる。これにより、ノズル30をヘッド本体24に対して、前方へ移動させることができる。制御装置12のプロセッサ13は、各々の駆動部46の駆動軸46aの進退方向及び移動量を個別に制御することによって、ノズル30をヘッド本体24に対して、x軸方向及びy軸方向へ(すなわち、x−y平面に沿って)移動させることができる。
図5に示す移動装置22は、流量調整機構47を有する。流量調整機構47は、チャンバ36に供給されるアシストガスの流量を、光軸A1周りの周方向に沿って異ならせることで、出射口34から出射されるアシストガスBの中心軸A2を、レーザ光の光軸A1からずらすように構成されている。
具体的には、加工ヘッド16は、光軸A1周りの周方向に整列するように配置され、各々がチャンバ36へ向かって開口する複数の放出口48を有する。アシストガス供給装置18から供給されたアシストガスは、各々の放出口48を通して、チャンバ36内に放出される。
流量調整機構47は、各々の放出口48の開口面積を変化させるように該放出口48を遮蔽する複数の可動シャッタ50と、各々の可動シャッタ50を駆動する駆動部52とを有する。駆動部52は、サーボモータ等を有し、制御装置12からの指令に応じて可動シャッタ50を移動させることで放出口48の開口面積を変化させ、これにより、各々の放出口48からチャンバ36内に導入されるアシストガスの流量を調整する。
例えば、流量調整機構47は、図5に示すように、x軸方向に対向して配置された2つの放出口48のうち、左側に位置する放出口48の一部を可動シャッタ50によって遮蔽し、該放出口48から吐出されるアシストガスの流量を、流量Q1に調整する。
その一方で、流量調整機構47は、x軸方向に対向して配置された2つの放出口48のうち、右側に位置する放出口48の可動シャッタ50を全開し、該放出口48から吐出されるアシストガスの流量を流量Q2(>Q1)に調整する。このようにアシストガスの流量Q1及びQ2を調整することで、出射口34から出射されるアシストガスの中心軸A2を、レーザ光の光軸A1から左方へずらすことができる。
同様に、流量調整機構47は、y軸方向に対向する2つの放出口48のうち、後側に位置する放出口48の一部を可動シャッタ50によって遮蔽し、該放出口48から吐出されるアシストガスの流量を流量Q3に調整する。その一方で、流量調整機構47は、前側に位置する放出口48の可動シャッタ50を全開し、該放出口48から吐出されるアシストガスの流量を流量Q4(>Q3)に調整する。
このようにアシストガスの流量Q3及びQ4を調整することで、出射口34から出射されるアシストガスの中心軸A2を、レーザ光の光軸A1から後方へずらすことができる。こうして、流量調整機構47は、チャンバ36内に供給されるアシストガスの流量Qを、光軸A1周りの周方向へ異ならせることによりアシストガスの噴射形態を変動させ、以って、アシストガスの中心軸A2をレーザ光の光軸A1からずらす。
図6に示す移動装置22は、光ファイバ移動機構56を有する。図6に示す形態においては、光ファイバ32は、ヘッド本体24の基端部24aに、x−y平面に沿って移動可能となるように、接続されている。光ファイバ移動機構56は、サーボモータ又は圧電素子等を有し、光ファイバ32を基端部24aに対して移動させる。その結果、光ファイバ32からヘッド本体24内に入射するレーザ光の位置(又は角度)が変化し、以って、レーザ光の光軸配置を変動させることができる。
例えば、光ファイバ移動機構56は、図7に示すように、光ファイバ32を基端部24aに対して、図6に示す位置から左方へ移動させる。その結果、光ファイバ32からヘッド本体24内に入射するレーザ光が、左方へ変位し、これにより、出射口34から出射されるレーザ光の光軸A1が、図6の位置から左方へずれることになる。こうして、アシストガスの中心軸A2をレーザ光の光軸A1からずらすことができる。
図8に示す移動装置22は、光学要素移動機構58を有する。具体的には、光学要素移動機構58は、サーボモータ又は圧電素子等を有し、ヘッド本体24の内部に配置され、光学要素26(例えば、フォーカスレンズ)をx−y平面に沿って移動させる。この光学要素26の移動とともに、該光学要素26によって導光されるレーザ光の光軸もx−y平面に沿って移動され、これにより、レーザ光の光軸配置を変動させることができる。
例えば、光学要素移動機構58は、図9に示すように、光学要素26のうち、最も下側に位置する光学要素26(フォーカスレンズ)を、図8に示す位置から左方へ移動させる。その結果、レーザ光の光軸配置が変動し、出射口34から出射されるレーザ光の光軸A1が、図7の示す位置から左方へずれることになる。こうして、アシストガスの中心軸A2をレーザ光の光軸A1からずらすことができる。
なお、光学要素移動機構58は、複数の光学要素26のうちのいずれを移動させてもよいし、又は、2つ以上の光学要素26を移動させることで、レーザ光の光軸配置を変動させてもよい。また、レンズ駆動部28が、光学要素移動機構58として機能し、それぞれの光学要素26を光軸A1の方向へ移動させるとともに、レーザ光の光軸配置を変動させるべく少なくとも1つの光学要素26をx−y平面に沿って移動させてもよい。
図10に示す移動装置22は、光学要素移動機構60A及び60Bを有する。図10に示す形態においては、ヘッド本体24の内部に、光学要素62A及び62Bがさらに設けられている。光学要素62A及び62Bは、光学要素26とともに、加工ヘッド16の光学系を構成する。
光学要素62Aは、レーザ光を導光可能な透明の平板部材であって、入射するレーザ光の光軸(すなわち、z軸方向)に対して傾斜して配置され、該光軸周りに回転可能となるようにヘッド本体24の内部に支持されている。光学要素62Bは、光学要素62Aと同様に、レーザ光を導光可能な透明の平板部材であって、光学要素62Aに入射するレーザ光の光軸に対して傾斜して配置され、該光軸周りに回動可能となるようにヘッド本体24の内部に支持されている。光学要素62A及び62Bは、z軸方向へ離隔して配置され、互いから独立して回転可能である。
光学要素移動機構60Aは、サーボモータ等を有し、ヘッド本体24の内部に配置され、光学要素62Aを回転させる。また、光学要素移動機構60Bは、サーボモータ等を有し、ヘッド本体24の内部に配置され、光学要素62Bを回転させる。光学要素移動機構60A及び60Bが、それぞれ、光学要素62A及び62Bを回転させることで、出射口34から出射されるレーザ光の光軸配置を変動させることができる。
例えば、光学要素移動機構60Bが、光学要素62Bを、図10に示す配置から図11に示す配置へ回転させたとすると、光学要素62Bに入射したレーザ光の伝搬方向が変動する。
その結果、レーザ光の光軸配置が変動し、出射口34から出射されるレーザ光の光軸A1が、図10に示す位置から左方へずれることになる。このように、光学要素移動機構60A及び60Bは、光学要素62A及び62Bの回転角度を変動させることにより、レーザ光の光軸配置を変動させ、以って、中心軸A2を光軸A1からずらずことができる。
図12に示す移動装置22は、光混合調整機構64を有する。図12に示す形態においては、ヘッド本体24に複数のレーザ光Leが入射される。例えば、複数のレーザ光Leは、出射口34の中心軸(すなわち、アシストガスの中心軸A2)の周りの周方向に略等間隔で整列するような配置で、ヘッド本体24に入射する。
一例として、レーザ発振器14が、複数のレーザ光Leを出射し、複数の光ファイバ32を介してヘッド本体24へ入射する。この場合において、レーザ発振器14は、各々が1つのレーザ光を出射する複数のレーザ発振器を有してもよい。代替的には、レーザ発振器14が、1つのレーザ光を出射し、該1つのレーザ光を、光分配器(図示せず)によって複数のレーザ光Leに分け、ヘッド本体24に入射してもよい。
ヘッド本体24の内部には、光混合部66がさらに設けられている。光混合部66は、光学要素26とともに、加工ヘッド16の光学系を構成する。光混合部66は、ヘッド本体24に入射した複数のレーザ光Leを混合し、1つのレーザ光として光学要素26へ導光する。
光混合調整機構64は、光混合部66に入射するレーザ光Leの配分を調整する。例えば、光混合調整機構64は、複数のレーザ光Leのうちの少なくとも1つをミラー(全反射鏡又は部分反射鏡)によって遮蔽することで、光混合部66に入射する複数のレーザ光Leの配分を調整できる。
このようにレーザ光Leの配分が調整されると、光混合部66における複数のレーザ光Leの混合形態が不均一となって、出射口34から出射されるレーザ光の光軸A1が、x−y平面に沿って変位されることになる。このようにして、光混合調整機構64は、光混合部66に入射するレーザ光Leの配分を調整して該光混合部66における混合形態を不均一にすることにより、レーザ光の光軸配置を変動させる。
なお、移動装置22は、上述したノズル移動機構45、流量調整機構47、光ファイバ移動機構56、光学要素移動機構58、光学要素移動機構60、及び光混合調整機構64のうちの少なくとも2つを有してもよい。例えば、移動装置22は、ノズル移動機構45、及び光学要素移動機構58を有し、ノズル30の位置を変動させるとともに、レーザ光の光軸配置を変動させてもよい。
次に、レーザ加工機10の機能について説明する。レーザ加工機10は、加工プログラム72に従って、例えば図13に示すようなワークWを切断線lに沿って切断する。この加工プログラム72は、オペレータによって予め用意され、記憶部15に格納される。加工プログラム72には、ワークWの切断線lと、該切断線lによって区切られた、該切断線lの両側の製品領域E1及び廃材領域E2とが、指定されている。
ここで、製品領域E1は、ワークWのうち、製品として使用される部分である一方、廃材領域E2は、製品として使用されない部分である。図13に示す例においては、切断線lは、連続する複数の切断線l1、l2、l3、l4、l5、l6、及びl7を含む。切断線l1は、加工開始点であるポイントP1からポイントP2まで前方へ直線状に延びる。切断線l2は、切断線l1と一直線に連続し、ポイントP2からポイントP3まで前方へ直線状に延びる。
切断線l3は、ポイントP3からポイントP4まで、右前方へ湾曲状に延びる。切断線l4は、ポイントP4からポイントP5まで右方へ直線状に延びる。切断線l5は、ポイントP5からポイントP6まで右後方へ直線状に延びる。切断線l6は、ポイントP6からポイントP7まで、左後方へ湾曲状に延びる。切断線l7は、ポイントP7からポイントP2まで左方へ直線状に延びる。
このように、本実施形態においては、切断線l1、l2、l4、l5、及びl7は直線である一方、切断線l3及びl6は、湾曲状(例えば、円弧状)の曲線である。レーザ加工機10は、ノズル30から出射するレーザ光によって、切断線l1、l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って、製品領域E1と廃材領域E2との間を図13中の矢印の方向へ切断する。
ここで、製品領域E1に対する切断品質要求と、廃材領域E2に対する切断品質要求とが、互いに異なる場合がある。切断品質要求は、例えば、ワークWの切断箇所に生じるドロスの寸法、ワークWの切断面の粗さ、切断線lに沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断したときの製品領域E1と廃材領域E2との間のカーフのテーパ角度に対する要求を含む。
一例として、切断品質要求がドロスの寸法に対するものである場合、切断品質要求として、製品として用いられる製品領域E1に形成されるドロスの寸法は、可能な限り小さい値であることが求められる一方、製品として用いられない廃材領域E2に形成されるドロスの寸法は、比較的大きくてもよい場合がある。
他の例として、切断品質要求が切断面の粗さに対するものである場合、切断品質要求として、製品領域E1の切断面の粗さは、可能な限り小さい値であることが求められる一方、廃材領域E2の切断面の粗さは、比較的大きくてもよい場合がある。さらに他の例として、切断品質要求がカーフのテーパ角度に対するものである場合、切断品質要求として製品領域E1のテーパ角度は、略0°であることが求められる一方、廃材部分である廃材領域E2のテーパ角度は、比較的に大きくてもよい場合がある。
本発明者は、切断線に沿って2つの領域の間を切断する間、アシストガスの中心軸A2をレーザ光の光軸A1から、一方の領域へ向かってずらすと、これら2つの領域の切断品質に差が生じる点に着目し、切断線lに沿って製品領域E1及び廃材領域E2の間を切断する間、中心軸A2を光軸A1から、製品領域E1又廃材領域E2へ向かってずらした状態に維持することで、製品領域E1の切断品質を効果的に満足させることができることを見出した。
以下、図14〜図16を参照して、アシストガスBの中心軸A2をレーザ光Lの光軸A1からずらす態様について説明する。図14は、アシストガスBとレーザ光Lとを同軸に出射して切断線l1を切断している態様を示している。図13に示すように、切断線l1の両側の領域は、ともに廃材領域E2である。
よって、切断線l1の両側では切断品質要求が同じとなる。したがって、切断線l1を切断する間、レーザ加工機10は、ノズル30からレーザ光Lとアシストガスとを同軸に出射し、レーザ光LによってワークWを切断する。その結果、ワークWにカーフKが形成されて、ワークWが切断線l1に沿って切断される。
一方、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿ってワークWを切断する場合、これら切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7の両側は、切断品質要求の異なる製品領域E1及び廃材領域E2である。本実施形態においては、レーザ加工機10は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びL7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、これら領域E1及びE2の切断品質要求の相違に応じて、中心軸A2を光軸A1から製品領域E1又は廃材領域E2へ向かってずらした状態に維持する。
例えば、図15に示す例では、レーザ加工機10は、レーザ光Lによって、切断線l2に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断している。この例においては、レーザ加工機10は、切断線l2を切断する間、アシストガスBの中心軸A2を、レーザ光Lの光軸A1から製品領域E1へ向かってずらし量δだけずらした状態に維持している。
このように中心軸A2をずらした場合、ワークWの切断箇所において製品領域E1に吹き付けられるアシストガスBの割合を、廃材領域E2よりも大きくすることができる。したがって、加工条件として定められる、ノズル30へのアシストガスの供給圧力SPを、アシストガスBとレーザ光Lとを同軸に出射するとき(以下、「通常運転」と言及する)の加工条件と比べて低く設定したとしても、切断箇所にて製品領域E1に吹き付けるアシストガスBの流速を十分に確保することができ得る。
その結果、加工条件(例えば、供給圧力SP)を、通常運転時よりも低く設定したとしても、十分な流速で製品領域E1に吹き付けられるアシストガスBによって、レーザ光LによるワークWの溶融材料を吹き飛ばすことができ、以って、製品領域E1の裏面(すなわち、下側の面)に形成されるドロスの寸法を、切断品質要求を満たす値に収めることができ得る。
一方、図16に示す例では、レーザ加工機10は、切断線l2に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、アシストガスBの中心軸A2を、レーザ光Lの光軸A1から廃材領域E2へ向かってずらし量δだけずらした状態に維持している。ここで、本発明者は、レーザ光によってワークを切断したときの切断面の粗さは、切断時に切断箇所に吹き付けられるアシストガスBの流速が大きい程、大きく(つまり、粗く)なる場合があるとの知見を得た。このことは、切断面の粗さは、切断箇所に吹き付けられるアシストガスBの流速が小さい程、小さく(滑らかに)なる可能性があることを示唆している。
図16に示すようにアシストガスBの中心軸A2を廃材領域E2へ向かってずらした場合、切断箇所において製品領域E1に吹き付けられるアシストガスBの割合が小さくなり、これにより、製品領域E1に吹き付けられるアシストガスBの流速が切断箇所で小さくなり得る。したがって、切断品質要求として、切断後の製品領域E1の切断面の粗さが低いことが求められる場合、図16に示すように中心軸A2を廃材領域E2へずらすことにより、製品領域E1の切断面の粗さを、切断品質要求を満たす値に収めることができ得る。
以上のように中心軸A2を光軸A1から製品領域E1又は廃材領域E2へ向かってずらす制御は、切断線l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する場合についても同様である。このように、レーザ加工機10は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、切断品質要求の相違に応じて中心軸A2を光軸A1から製品領域E1又は廃材領域E2へ向かってずらした状態に維持する。
再度、図1及び図2を参照して、本実施形態においては、記憶部15は、データテーブル70を記憶する。このデータテーブル70には、加工ヘッド16を用いてワークWを切断するときの加工条件のデータと、アシストガスBの中心軸A2をレーザ光Lの光軸A1からずらすずらし量δとが、互いに関連付けて格納されている。
データテーブル70の一例を、以下の表1に示す。
表1に示すように、データテーブル70においては、加工条件のデータは、加工するワークWの材質、ワークWの厚さt、ワークWを切断する加工速度v、加工ヘッド16のノズル口径φ、アシストガスの供給圧力SP、レーザ光の焦点位置z、及び、レーザ光の出力特性値OPを含む。
ワークの材質は、例えば、ステンレス(SUS301、SUS304等)、ニッケル、銅等である。ワークWの厚さtは、ワークWをワークテーブル38に設置したときのz軸方向(又は、照射されるレーザ光Lの光軸A1の方向)の厚さである。加工速度vは、ワークWを切断するときのワークWに対するレーザ光Lの速度であって、平均速度、最高速度、又は最低速度であり得る。ノズル口径φは、ノズル30の出射口34の直径(又は半径)である。
供給圧力SPは、アシストガス供給装置18から加工ヘッド16のチャンバ36内に供給されるアシストガスの圧力である。レーザ光Lの焦点位置zは、光学要素(フォーカスレンズ)26によって集光されるレーザ光Lの焦点位置であって、z軸の座標として示される。レーザ光Lの出力特性値OPは、例えば、レーザ光Lのレーザパワー又はレーザ発振器14へ送信されるレーザパワー指令値、レーザ発振器14がPW(パルス発振)レーザ光を出射する場合の周波数若しくはデューティ比等を含む。
データテーブル70では、これら種々の加工条件に関連付けて、ずらし量δが格納されている。なお、中心軸A2を光軸A1から製品領域E1へ向かってずらす場合(例えば、切断品質要求がドロスの寸法である場合)と、中心軸A2を光軸A1から廃材領域E2へ向かってずらす場合(例えば、切断品質要求が切断面の粗さである場合)とのそれぞれについて、互いに異なる2つのデータテーブル70A及び70Bが準備されてもよい。
データテーブル70に格納されているずらし量δは、対応する加工条件の下でレーザ加工を実行したときに、製品領域E1の切断品質要求(ドロス寸法、切断面粗さ等)を満足できる最適な値として、求められている。データテーブル70の加工条件とずらし量δとは、実験的手法(経験則)又はシミュレーション的手法から求めてもよいし、又は、後述する機械学習によって求めてもよい。
このデータテーブル70を参照すれば、加工条件を決定したときに、該加工条件の下で切断品質要求を満足できる最適なずらし量δを一義的に決定できる。例えば、オペレータが、加工条件として、ワークWの材質を「材質2」、厚さtを「t2」として入力すると、プロセッサ13は、他の加工条件を、加工速度v=「v2」、ノズル口径φ=「φ2」、供給圧力SP=「SP2」、焦点位置z=「z2」、出力特性値=「OP2」として決定するとともに、ずらし量δを「δ2」として自動で決定できる。
次に、本実施形態に係るレーザ加工の詳細について説明する。レーザ加工の準備プロセスとして、例えば、プロセッサ13は、切断品質要求に関する情報の入力を受け付ける。切断品質要求に関する情報として、オペレータは、例えば、ドロスの寸法、切断面の粗さといった情報を入力し、プロセッサ13は、入力された切断品質要求に関する情報から、中心軸A2をずらす方向(すなわち、製品領域E1へ向かう方向、又は廃材領域E2へ向かう方向)を決定する。代替的には、オペレータは、中心軸A2をずらす方向を、直接、制御装置12に入力してもよい。
また、プロセッサ13は、オペレータから加工条件(例えば、ワークの材質及び厚さt)の入力を受け付ける。そして、プロセッサ13は、入力された加工条件を、入力された切断品質要求(すなわち、中心軸A2をずらす方向)に対応するデータテーブル70に当て嵌めて、ずらし量δを決定する。以下、受け付けた切断品質要求がドロス寸法に対するものであり、製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、アシストガスBの中心軸A2を、光軸A1から製品領域E1へ向かってずらす場合について、説明する。
制御装置12のプロセッサ13は、決定した加工条件及びずらし量δが規定された加工プログラム72に従って、ワークWを切断するレーザ加工を行う。具体的には、プロセッサ13は、移動機構20を動作させて、レーザ光Lの光軸A1がポイントP1(図13)と交差するように、加工ヘッド16をワークWに対して配置する。
次いで、プロセッサ13は、アシストガス供給装置18に指令を送り、ノズル30へアシストガスの供給を開始するとともに、レーザ発振器14に指令を送り、レーザ発振器14からレーザ光を出射させる。これにより、ノズル30の出射口34からレーザ光LとアシストガスBとが出射され、レーザ光LによってポイントP1にピアッシングが行われて、該ポイントP1に貫通孔が形成される。なお、該ピアッシングを行うとき、移動装置22は、レーザ光LとアシストガスBとを同軸に配置させている。
次いで、プロセッサ13は、移動機構20を動作させて、ワークWに対してレーザ光Lを前方へ相対的に移動させ、ポイントP1からポイントP2までの切断線l1に沿ってワークWを切断する。ここで、加工プログラム72において、ポイントP1からポイントP2までの切断線l1の両側の領域(第3領域及び第4領域)は、ともに廃材領域E2に指定されている。したがって、切断線l1の両側の領域では切断品質要求が異ならないので、切断線l1に沿ってワークWを切断する間、プロセッサ13は、レーザ光LとアシストガスBとを同軸の状態に維持する。
そして、レーザ光LがポイントP2へ達したとき(又は、達する直前)に、プロセッサ13は、移動装置22を動作させて、ずらし量δに従って中心軸A2を光軸A1から製品領域E1へ向かってずらす。その結果、図15に示すように、アシストガスBの中心軸A2が光軸A1から、製品領域E1へ向かってずらし量δだけずれることになる。
そして、プロセッサ13は、中心軸A2を光軸A1からずらした状態を維持しながら、移動機構20を動作させてワークWに対してレーザ光Lを前方へ直線状に相対移動させ、レーザ光Lによって、ポイントP2からポイントP3まで切断線l2に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する。
次いで、プロセッサ13は、ワークWに対してレーザ光Lを右前方へ湾曲状に相対移動させて、ポイントP3からポイントP4まで、切断線l3に沿ってワークWを切断する。次いで、プロセッサ13は、ポイントP4からポイントP5まで、ワークWに対してレーザ光Lを右方へ直線状に相対移動させて、切断線l4に沿ってワークWを切断した後、ポイントP5からポイントP6まで、ワークWに対してレーザ光Lを右後方へ直線状に相対移動させて、切断線l5に沿ってワークWを切断する。
次いで、プロセッサ13は、ワークWに対してレーザ光Lを左後方へ湾曲状に相対移動させて、ポイントP6からポイントP7まで、切断線l6に沿ってワークWを切断した後、ポイントP7からポイントP2まで、ワークWに対してレーザ光を左方へ直線状に相対移動させて、切断線l7に沿ってワークWを切断する。その結果、ワークWの製品領域E1が廃材領域E2から切り離される。
プロセッサ13は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断している間、アシストガスBの中心軸A2を光軸A1から製品領域E1へ向かってずらした状態に維持する。例えば、プロセッサ13は、中心軸A2を、加工方向(すなわち、レーザ光LがワークWに対して移動する方向)と直交し、且つx−y平面と平行な方向へ、製品領域E1へ向かってずれるように、移動装置22を制御する。
なお、本実施形態において、受け付けた切断品質要求が、例えば切断面の粗さに対するものである場合、プロセッサ13は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断している間、アシストガスBの中心軸A2を、光軸A1から廃材領域E2へ向かってずらすように、移動装置22を制御してもよい。
以上のように、本実施形態においては、制御装置12は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、切断品質要求(ドロス寸法、切断面粗さ)の相違に応じて、中心軸A2を光軸A1から製品領域E1又は廃材領域E2へ向かってずらした状態に維持している。この構成によれば、ワークWの切断箇所(カーフK)の両側に切断品質要求が異なる製品領域E1と廃材領域E2とが指定されている場合に、該製品領域E1の切断品質要求を効果的に満たすことができる。
また、例えば切断品質要求がドロスの寸法である場合、上述したように、加工条件としてのアシストガスの供給圧力SPをより低く設定したとしても、切断箇所にて製品領域E1に吹き付けるアシストガスBの流速を十分に確保し、以って、製品領域E1の切断箇所に形成されるドロス寸法を、切断品質要求を満たす程度に抑えることができ得る。したがって、加工条件を低くしつつ、製品領域E1の切断品質要求を満たすことができる。
なお、上述の実施形態においては、制御装置12が、切断線l1を切断する間はノズル30からレーザ光Lとアシストガスとを同軸に出射する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、制御装置12は、ピアッシング時又はその直後に、中心軸A2を光軸A1から製品領域E1又は廃材領域E2へ向かってずらし、切断線l1を切断する間、該中心軸A2を光軸A1からずらした状態に維持してもよい。
次に、図17及び図18を参照して、他の実施形態に係るレーザ加工機80について説明する。レーザ加工機80は、上述のレーザ加工機10と、プログラム作成装置82をさらに備える点で相違する。プログラム作成装置82は、例えばCAD及びCAM等のコンピュータであって、プロセッサ、記憶部、入力装置(キーボード、マウス、タッチパネル等)、及びディスプレイ(LCD、有機EL等。ともに図示せず)等を有する。
オペレータは、プログラム作成装置82のディスプレイを視認しつつ、入力装置を操作して、加工対象のワークの図面データを作成する。以下、オペレータが、プログラム作成装置82で、図13に示すワークWの図面データを作成した場合について説明する。
オペレータは、作成したワークWの図面データの画像を視認しつつ、プログラム作成装置82の入力装置を操作して、ワークWの画像情報により、切断線l、製品領域E1、及び廃材領域E2を指定する。オペレータが指定した切断線l、製品領域E1、及び廃材領域E2の画像情報に基づいて、プログラム作成装置82のプロセッサは、切断線lに沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断するときの加工速度vを自動で決定する。
一例として、プログラム作成装置82のプロセッサは、切断線lの軌跡の形状に応じて加工速度vを変化させるように、該加工速度vを決定する。例えば、切断線l1、l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断するときの切断速度vを、それぞれ、vl1、vl2、vl3、vl4、vl5、vl6、及びvl7とした場合、直線状の切断線l1、l2、l4、l5、及びl7に沿って切断するときの切断速度vl1、vl2、vl4、vl5、及びvl7を、所定の速度vHに設定する。
その一方で、プログラム作成装置82のプロセッサは、湾曲状の切断線l3及びL6に沿って切断するときの切断速度vl3及びvl6を、速度vHよりも小さいvL(<vH)に設定する。このように、プログラム作成装置82のプロセッサは、切断線lの軌跡に応じて加工速度vを変化させるように、該加工速度vを設定する。
なお、切断速度vl1、vl2、vl4、vl5、及びvl7は、切断速度vl3及びvl6よりも大きく、且つ、互いに異なる値に設定されてもよい。また、切断速度v l3及びv l6も、互いに異なる値に設定されてもよい。また、オペレータが切断線l、製品領域E1、及び廃材領域E2を手動で指定するのに限らず、プログラム作成装置82のプロセッサが、オペレータが作成したワークWの図面データに基づいて、切断線l、製品領域E1、及び廃材領域E2を自動で指定してもよい。
次いで、オペレータは、プログラム作成装置82の入力装置を操作して、各々の加工条件のデータを入力する。具体的には、オペレータは、上述した加工条件のデータのうち、ワークWの材質、ワークWの厚さt、加工ヘッド16のノズル口径φ、アシストガスの供給圧力SP、レーザ光の焦点位置z、及びレーザ光の出力特性値OPを入力する。
一方、切断速度vに関しては、切断線lに応じて決定されている。そして、オペレータは、決定された加工速度vに応じて変化するようにずらし量δを手動で設定する。このとき、オペレータは、記憶部15に記憶されたデータテーブル70を参照して、加工速度vに適したずらし量δを選択することができる。
具体的には、ずらし量δは、加工速度vが大きい程、小さな値となるように、決定され得る。すなわち、この場合、切断線l1、l2、l4、l5、及びl7に沿って切断速度vHで製品領域E1と廃材領域E2との間を切断するときのずらし量δは、δHに設定される一方、切断線l3及びl6に沿って切断速度vLで製品領域E1と廃材領域E2との間を切断するときのずらし量δは、δHよりも大きなδL(>δH)に設定され得る。
なお、オペレータが手動でずらし量δを設定する代わりに、プログラム作成装置82のプロセッサが、切断速度vH及びvLに応じて、ずらし量δH及びδLを自動で設定してもよい。この場合において、該プロセッサは、データテーブル70を参照し、決定した切断速度vH及びvLと、加工速度v以外の加工条件のデータとから、最適なずらし量δH及びδLをデータテーブル70から読み出してきてもよい。
こうして、プログラム作成装置82により、加工プログラム84(図18)が作成される。この加工プログラム84においては、ワークWに切断線l、製品領域E1、及び廃材領域E2が指定され、加工条件として、ワークWの材質及び厚さt、ノズル口径φ、供給圧力SP、焦点位置z、及びレーザ光Lの出力特性値OPとともに、切断線lに応じて決定された加工速度vH及びvLが規定されている。そして、加工プログラム84には、加工速度vH及びvLに応じて設定されたずらし量δが規定されている。プログラム作成装置82により作成された加工プログラム84は、制御装置12の記憶部15に格納される。
このような加工プログラム84に従ってワークWを切断線lに沿って切断する場合、プロセッサ13は、切断線lに沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、加工速度vに応じて、アシストガスBの中心軸A2とレーザ光Lの光軸A1との位置関係を変化させる。
具体的には、プロセッサ13は、移動装置22を動作させて、切断線l1、l2、l4、l5、及びl7に沿って切断する間は、中心軸A2を光軸A1から製品領域E1(又は廃材領域E2)へ向かってずらし量δHだけずらした状態に維持する一方、切断線l3及びl6に沿って切断する間は、ずらし量δを変化させて、中心軸A2を光軸A1から製品領域E1(又は廃材領域E2)へ向かってずらし量δL(>δH)だけずらした状態に維持する。
なお、プロセッサ13は、加工プログラムを実行してワークWを切断しているときに、加工速度v(すなわち、ワークWに対するレーザ光Lの移動速度)を取得し、取得した該加工速度vに応じて、中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させてずらし量δを制御してもよい。
加工速度vは、例えば、移動機構20のサーボモータから送信されるフィードバック(サーボモータの回転数を検出するエンコーダから送信される回転数等)から求めることができる。したがって、この場合、移動機構20のサーボモータに設けられたエンコーダは、加工速度vを取得する加工速度取得部を構成する。
一例として、プロセッサ13は、ワークの切断中に取得した加工速度vが、第1の閾値vth1よりも小さい場合(v<vth1)は、ずらし量δ=δLに制御する一方、加工速度vが、第1の閾値vth1よりも大きい場合(v≧vth1)は、ずらし量δ=δH(<δL)に設定してもよい。
なお、プロセッサ13は、加工速度vに対して第1の閾値vth1から第nの閾値vth(n)まで、計n個の閾値(nは、2以上の整数)を設定し、加工速度vが大きい程ずらし量δが小さくなるように、加工速度vの大きさに応じてずらし量δを多段階に制御してもよい。また、プロセッサ13は、加工速度vの代わりに、加速度を取得してもよい。
以上のように、本実施形態においては、オペレータ又はプログラム作成装置82は、ワークWの画像情報に基づき加工速度vH及びvLを決定し、制御装置12は、切断線lに沿って切断する間、決定した加工速度vH及びvLに応じて中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させている。
ここで、より高速の加工速度vでワークWを切断した場合、製品領域E1と廃材領域E2との間に形成されるカーフKの、加工方向と直交する方向の幅wは、より低速の加工速度vで切断した場合と比べて、小さくなる場合がある。このようにカーフ幅wが小さい場合、中心軸A2のずらし量δを小さく設定したとしても、製品領域E1の切断品質要求を満たすことができ得る。本実施形態によれば、レーザ加工時に中心軸A2と光軸A1との位置関係を、加工速度vH及びvLに応じて精細に制御しているので、製品領域E1の切断品質要求を、より効果的に満足することができる。
また、本実施形態において、プログラム作成装置82のプロセッサが、ワークWの画像情報に基づいて加工速度vH及びvLを自動で決定している。この構成によれば、加工プログラム84を用意する作業を簡単化することができる。また、本実施形態において、プログラム作成装置82のプロセッサが、切断速度vH及びvLに応じてずらし量δH及びδLを自動で設定する場合、加工プログラム84を用意する作業を、さらに簡単化することができる。
次に、図19及び図20を参照して、さらに他の実施形態に係るレーザ加工機90について説明する。レーザ加工機90は、上述のレーザ加工機10と、温度センサ92をさらに備える点で相違する。温度センサ92は、レーザ光LでワークWを切断する間に、ワークWの温度Tを検出する。一例として、温度センサ92は、ワークWを切断する間、形成されたカーフKの一方側の製品領域E1の表面(すなわち、上側の面)の温度T1を検出する。
他の例として、温度センサ92は、ワークWを切断する間、形成されたカーフKの一方側にある製品領域E1の表面の温度T1と、他方側にある廃材領域E2の表面の温度T2とを検出する。この場合において、1つの温度センサ92が、カーフKの両側の温度T1及びT2を検出してもよいし、又は、温度センサ92は、製品領域E1の温度T1を検出する第1の温度センサ92Aと、廃材領域E2の温度T2を検出する第2の温度センサ92Bとを有してもよい。
温度センサ92は、ワークWに対するレーザ光Lの移動方向の後方側で光軸A1に近接する位置で、ワークWの温度Tを検出する。換言すれば、温度センサ92は、レーザ光Lによって形成された直後のカーフKの一方側(又は両側)で、ワークWの温度Tを検出する。
制御装置12は、切断線lに沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、移動装置22を制御して、温度センサ92が検出した温度Tに応じて、アシストガスの中心軸A2とレーザ光Lの光軸A1との位置関係を変化させる。このような制御について、以下に説明する。
レーザ加工により生じるドロスは高温であるので、仮に、製品領域E1又は廃材領域E2の裏面に大きな寸法のドロスが生じた場合、該ドロスの温度が裏面から表面に伝導し、該表面の温度が、ドロスが生じていない場合と比べて上昇する。つまり、レーザ加工時の製品領域E1及び廃材領域E2の温度Tは、切断品質(ドロス寸法)と相関すると見做すことができる。
そこで、本実施形態においては、制御装置12は、切断線lに沿ってワークWを切断する間、温度センサ92が検出した温度に応じて、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δを変化させる。以下、図21を参照して、レーザ加工機90の動作フローについて説明する。
制御装置12のプロセッサ13は、記憶部15に格納された加工プログラム94に従って、図21に示すフローを実行する。よって、加工プログラム94には、図21に示すフローを実行するための各種指令が規定されている。図21に示すフローは、プロセッサ13が、使用者、上位コントローラ、又は加工プログラム94から、レーザ加工開始指令を受け付けたときに、開始する。
ステップS1において、プロセッサ13は、レーザ加工を開始する。具体的には、プロセッサ13は、上述の実施形態と同様に、ポイントP1でレーザ光Lによりピアッシングを行い、次いで、移動機構20を制御して、ワークWに対してレーザ光Lを相対的に移動させて、切断線l1、l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する。なお、ピアッシング実行時、及び切断線l1に沿って廃材領域E2を切断する間、プロセッサ13は、アシストガスBとレーザ光とを同軸に出射する。
切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、プロセッサ13は、移動装置22を動作させて、アシストガスBの中心軸A2をレーザ光Lの光軸A1から製品領域E1へ向かってずらした状態に維持する。ここで、プロセッサ13は、レーザ光Lが切断線l2の始点であるポイントP2に達したときに、中心軸A2を光軸A1から初期ずらし量δ0だけずらす。
この初期ずらし量δ0は、データテーブル70から決定してもよい。例えば、オペレータが、レーザ加工前に加工条件(例えば、ワークWの材質、厚さt)を決定したときに、プロセッサ13は、決定された加工条件に対応するずらし量δをデータテーブル70から読み出し、初期ずらし量δ0として決定してもよい。
ステップS2において、プロセッサ13は、温度センサ92による温度Tの検出を開始する。一例として、温度センサ92が、温度Tとして、製品領域E1の表面の温度T1を検出する場合、プロセッサ13は、ワークWを切断する間に温度センサ92が検出した温度T1を、該温度センサ92から連続的(例えば、周期的)に取得する。
他の例として、温度センサ92が、温度Tとして、製品領域E1の表面の温度T1と廃材領域E2の表面の温度T2とを検出する場合、プロセッサ13は、レーザ光LでワークWを切断する間に温度センサ92が検出した温度T1及びT2を、該温度センサ92から連続的(例えば、周期的)に取得する。
ステップS3において、プロセッサ13は、直近に温度センサ92から取得した温度Tが第1の閾値Tth1以上であるか否かを判定する。一例として、温度センサ92から温度T1を取得した場合、プロセッサ13は、直近に取得した温度T1が、第1の閾値Tth1_1以上(T1≧Tth1_1)であるか否かを判定する。この第1の閾値Tth1_1は、温度T1に対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
他の例として、温度センサ92から温度T1及びT2を取得した場合、プロセッサ13は、直近に取得した温度T1と温度T2との温度差TΔ(=T1−T2)を算出し、該温度差TΔが、第1の閾値Tth1_2以上(TΔ≧Tth1_2)であるか否かを判定する。この第1の閾値Tth1_2は、温度差TΔに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
又は、プロセッサ13は、直近に取得した温度T1と温度T2との温度比RT(=T1/T2)を算出し、該温度比RTが、第1の閾値Tth1_3以上(RT≧Tth1_3)であるか否かを判定する。この第1の閾値Tth1_3は、温度比RTに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
ここで、温度T1は、製品領域E1の表面の温度を直接的に示すものであり、温度差TΔ及び温度比RTは、製品領域E1の表面の温度を、廃材領域E2の表面の温度に対する相対値として示すものである。したがって、温度T1、TΔ、RTは、いずれも、製品領域E1の切断品質(ドロス寸法)と相関すると見做すことができる。
プロセッサ13は、温度T(T1、TΔ、又はRT)が第1の閾値Tth1(Tth1_1、Tth1_2、又はTth1_3)以上である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS5へ進む。一方、プロセッサ13は、温度Tが第1の閾値Tth1よりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS4へ進む。
ステップS4において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが初期ずらし量δ0となるように、移動装置22を制御する。これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1へ向かって初期ずらし量δ0だけずれた状態に維持される。
ステップS5において、プロセッサ13は、第1のアラームを出力する。例えば、プロセッサ13は、「製品領域の切断品質要求(ドロス寸法)を満足していない可能性があります」という音声又は画像の信号を生成し、制御装置12に設けられたスピーカ又はディスプレイ(図示せず)を通して出力する。
ステップS6において、プロセッサ13は、直近に温度センサ92から取得した温度Tが第2の閾値Tth2(>Tth1)以上であるか否かを判定する。一例として、温度センサ92から温度T1を取得した場合、プロセッサ13は、直近に取得した温度T1が、第2の閾値Tth2_1以上(T1≧Tth2_1)であるか否かを判定する。この第2の閾値Tth2_1は、上記第1の閾値Tth1_1よりも大きな値(すなわち、Tth2_1>Tth1_1)として、温度T1に対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
他の例として、温度センサ92から温度T1及びT2を取得した場合、プロセッサ13は、直近に算出した温度差TΔ(=T1−T2)が、第2の閾値Tth2_2以上(TΔ≧Tth2_2)であるか否かを判定する。この第2の閾値Tth2_2は、上記第1の閾値Tth1_2よりも大きな値(すなわち、Tth2_2>Tth1_2)として、温度差TΔに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
又は、プロセッサ13は、直近に算出した温度比RTが、第2の閾値Tth2_3以上(RT≧Tth2_3)であるか否かを判定する。この第2の閾値Tth2_3は、上記第1の閾値Tth1_3よりも大きな値(すなわち、Tth2_3>Tth1_3)として、温度比RTに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
プロセッサ13は、温度T(T1、TΔ、又はRT)が第2の閾値Tth2(Tth2_1、Tth2_2、又はTth2_3)以上である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS8へ進む。一方、プロセッサ13は、温度Tが第2の閾値Tth2よりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS7へ進む。
ステップS7において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが第1のずらし量δ1となるように、移動装置22を制御する。この第1のずらし量δ1は、初期ずらし量δ0よりも大きな値(すなわち、δ1>δ0)として予め定められる。これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1へ向かって第1のずらし量δ1だけずれた状態に維持される。
ステップS8において、プロセッサ13は、直近に温度センサ92から取得した温度Tが第3の閾値Tth3(>Tth2)以上であるか否かを判定する。一例として、温度センサ92から温度T1を取得した場合、プロセッサ13は、直近に取得した温度T1が、第3の閾値Tth3_1以上(T1≧Tth3_1)であるか否かを判定する。この第3の閾値Tth3_1は、上記第2の閾値Tth2_1よりも大きな値(すなわち、Tth3_1>Tth2_1)として温度T1に対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
他の例として、温度センサ92から温度T1及びT2を取得した場合、プロセッサ13は、直近に算出した温度差TΔ(=T1−T2)が、第3の閾値Tth3_2以上(TΔ≧Tth3_2)であるか否かを判定する。この第3の閾値Tth3_2は、上記第2の閾値Tth2_2よりも大きな値(すなわち、Tth3_2>Tth2_2)として温度差TΔに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
又は、プロセッサ13は、直近に算出した温度比RTが、第3の閾値Tth3_3以上(RT≧Tth3_3)であるか否かを判定する。この第3の閾値Tth3_3は、上記第2の閾値Tth2_3よりも大きな値(すなわち、Tth3_3>Tth2_3)として、温度比RTに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。
プロセッサ13は、温度T(T1、TΔ、又はRT)が第3の閾値Tth3(Tth3_1、Tth3_2、又はTth3_3)以上である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS10へ進む。一方、プロセッサ13は、温度Tが第3の閾値Tth3よりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS9へ進む。
ステップS9において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが第2のずらし量δ2となるように、移動装置22を制御する。この第2のずらし量δ2は、第1のずらし量δ1よりも大きな値(すなわち、δ2>δ1)として予め定められる。これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1へ向かって第2のずらし量δ2だけずれた状態に維持される。
一方、ステップS8でYESと判定された場合、ステップS10において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが第3のずらし量δ3となるように、移動装置22を制御する。この第3のずらし量δ3は、第2のずらし量δ2よりも大きな値(すなわち、δ3>δ2)として予め定められる。
これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1へ向かって第3のずらし量δ3だけずれた状態に維持される。なお、上述の第1のずらし量δ1、第2のずらし量δ2、及び第3のずらし量δ3は、実験的手法又はシミュレーション的手法等を用いて、温度T及び切断品質(ドロス寸法)と相関するパラメータとして求められ得る。
また、第1のずらし量δ 1 、第2のずらし量δ2、及び第3のずらし量δ3と、温度T(T1、TΔ、RT)とを関連付けて格納したさらなるデータデーブルを、上記のデータテーブル70とは別に(又は、データテーブル70の中に)作成し、プロセッサ13は、該さらなるデータデーブルを参照して、検出した温度Tに応じてずらし量δを決定してもよい。
ステップS11において、プロセッサ13は、レーザ加工が完了したか否かを判定する。例えば、プロセッサ13は、加工プログラム94に含まれる指令、又は移動機構20のサーボモータのフィードバックから、レーザ光Lが、切断線l7の終点であるポイントP2へ達したか否かを判定する。プロセッサ13は、レーザ光Lが切断線l7のポイントP2へ達した場合にYESと判定し、図21に示すフローを終了する。一方、プロセッサ13は、レーザ光Lが切断線l7のポイントP2へ達していない場合にNOと判定し、ステップS3へ戻る。
以上のように、本実施形態においては、プロセッサ13は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、製品領域E1の切断品質(ドロス寸法)と相関する温度T(T1、TΔ、RT)に応じて、中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させている。
より具体的には、プロセッサ13は、T<Tth1の場合は初期ずらし量δ0とし、Tth1≦T<Tth2の場合は第1のずらし量δ1とし、Tth2≦T<Tth3の場合は第2のずらし量δ2とし、Tth3≦Tの場合は第3のずらし量δ3とするように、温度Tの大きさに応じてずらし量δを変化させている。
この構成によれば、製品領域E1に生じたドロス寸法が大きい蓋然性が高くなる程(つまり、温度Tが高くなる程)、製品領域E1の側への中心軸A2のずらし量δを大きくし、製品領域E1に吹き付けるアシストガスBの割合を大きくできる。その結果、製品領域E1の生じるドロス寸法を、ずらし量δを制御することにより、低減できる。
また、上述の温度差TΔ及び温度比RTは、製品領域E1の表面の温度を、廃材領域E2の表面の温度との比較として相対的に示すものであるので、レーザ光Lによって製品領域E1が高温となったとしても、レーザ光Lによる温度上昇の影響を排除し、製品領域E1に形成されたドロスの寸法を、温度差TΔ及び温度比RTによって高精度且つ定量的に評価することが可能となる。
なお、本実施形態においては、プロセッサ13がレーザ加工中に中心軸A2を光軸A1から製品領域E1へ向かってずらした状態に維持する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、プロセッサ13は、レーザ加工中に中心軸A2を光軸A1から廃材領域E2へ向かってずらした状態に維持してもよい。加工条件(供給圧力SP等)によっては、中心軸A2を廃材領域E2へ向かってずらした場合に、カーフKにおけるアシストガスの流速が増大してドロス寸法を低減できる可能性がある。
次に、図22及び図23を参照して、さらに他の実施形態に係るレーザ加工機100について説明する。レーザ加工機100は、上述のレーザ加工機10と、寸法測定器102をさらに備える点で相違する。寸法測定器102は、例えば、光学式変位計、カメラ、又は視覚センサ等を有し、レーザ光LでワークWを切断する間に、製品領域E1と廃材領域E2との間に形成されるカーフKの幅wを測定する。
制御装置12は、切断線lに沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、寸法測定器102が測定したカーフ幅wに応じて、アシストガスの中心軸A2とレーザ光Lの光軸A1との位置関係を変化させる。ここで、カーフ幅wが小さい場合、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δを小さくしたとしても、製品領域E1の切断品質要求(ドロス寸法、切断面粗さ等)を満たすことができ得る。
そこで、本実施形態においては、制御装置12は、切断線lに沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、寸法測定器102が測定したカーフ幅wに応じて、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δを変化させる。以下、図24を参照して、レーザ加工機100の動作フローについて説明する。なお、図24において、上述した図21に示すフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
制御装置12のプロセッサ13は、記憶部15に格納された加工プログラム104に従って、図24に示すフローを実行する。よって、加工プログラム104には、図24に示すフローを実行するための各種指令が規定されている。図24に示すフローは、プロセッサ13が、使用者、上位コントローラ、又は加工プログラム104から、レーザ加工開始指令を受け付けたときに、開始する。
ステップS1において、プロセッサ13は、レーザ加工を開始し、レーザ光Lが切断線l2の始点であるポイントP2に達したときに、アシストガスBの中心軸A2をレーザ光Lの光軸A1から製品領域E1(又は廃材領域E2)へ向かって、初期ずらし量δ0だけずらす。
ステップS21において、プロセッサ13は、寸法測定器102によるカーフ幅wの測定を開始する。具体的には、プロセッサ13は、ワークWを切断する間に寸法測定器102が測定したカーフ幅wを、該寸法測定器102から連続的(例えば、周期的)に取得する。
ステップS22において、プロセッサ13は、直近に寸法測定器102から取得したカーフ幅wが第1の閾値wth1以上であるか否かを判定する。この第1の閾値wth1は、カーフ幅wに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。プロセッサ13は、カーフ幅wが第1の閾値wth1以上である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS23へ進む。一方、プロセッサ13は、カーフ幅wが第1の閾値wth1よりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS4へ進む。
ステップS23において、プロセッサ13は、直近に寸法測定器102から取得したカーフ幅wが第2の閾値wth2以上であるか否かを判定する。この第2の閾値wth2は、上記第1の閾値wth1よりも大きな値(すなわち、wth2>wth1)として、カーフ幅wに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。プロセッサ13は、カーフ幅wが第2の閾値wth2以上である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS25へ進む一方、カーフ幅wが第2の閾値wth2よりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS24へ進む。
ステップS24において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが第1のずらし量δ4となるように、移動装置22を制御する。この第1のずらし量δ4は、初期ずらし量δ0よりも大きな値(すなわち、δ4>δ0)として予め定められる。これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1(又は廃材領域E 2 )へ向かって第1のずらし量δ4だけずれた状態に維持される。
ステップS25において、プロセッサ13は、直近に寸法測定器102から取得したカーフ幅wが第3の閾値wth3以上であるか否かを判定する。この第3の閾値wth3は、上記第2の閾値wth2よりも大きな値(すなわち、wth3>wth2)として、カーフ幅wに対して予め定められ、記憶部15に記憶される。プロセッサ13は、カーフ幅wが第3の閾値wth3以上である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS27へ進む一方、カーフ幅wが第3の閾値wth3よりも小さい(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS26へ進む。
ステップS26において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが第2のずらし量δ5となるように、移動装置22を制御する。この第2のずらし量δ5は、第1のずらし量δ4よりも大きな値(すなわち、δ5>δ4)として予め定められる。これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1(又は廃材領域E 2 )へ向かって第2のずらし量δ5だけずれた状態に維持される。
一方、ステップS25でYESと判定された場合、ステップS27において、プロセッサ13は、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δが第3のずらし量δ6となるように、移動装置22を制御する。この第3のずらし量δ6は、第2のずらし量δ5よりも大きな値(すなわち、δ6>δ5)として予め定められる。
これにより、中心軸A2は光軸A1から、製品領域E1(又は廃材領域E 2 )へ向かって第3のずらし量δ6だけずれた状態に維持される。なお、上述の第1のずらし量δ4、第2のずらし量δ5、及び第3のずらし量δ6は、実験的手法又はシミュレーション的手法等を用いて、カーフ幅w及び切断品質(ドロス寸法、切断面粗さ等)に相関するパラメータとして求められ得る。
また、第1のずらし量δ4、第2のずらし量δ5、及び第3のずらし量δ6と、カーフ幅wとを関連付けて格納したさらなるデータデーブルを、上記のデータテーブル70とは別に(又は、データテーブル70の中に)作成し、プロセッサ13は、該さらなるデータデーブルを参照して、測定したカーフ幅wに応じてずらし量δを決定してもよい。
以上のように、本実施形態においては、プロセッサ13は、切断線l2、l3、l4、l5、l6、及びl7に沿って製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、カーフ幅wに応じて、中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させている。より具体的には、プロセッサ13は、w<wth1の場合は初期ずらし量δ0とし、wth1≦w<wth2の場合は第1のずらし量δ4とし、wth2 ≦w<wth3の場合は第2のずらし量δ5とし、wth3 ≦wの場合は第3のずらし量δ6とするように、カーフ幅wの大きさに応じてずらし量δを変化させている。
ここで、カーフ幅wが大きい程、製品領域E1の切断箇所に吹き付けるアシストガスBの割合を増やすために中心軸A2のずらし量δを大きくすることが必要となり得る。本実施形態によれば、カーフ幅wに応じて、中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させ、これにより、製品領域E1に吹き付けるアシストガスBの割合を精細に調整することができる。その結果、製品領域E1の切断品質要求(ドロス寸法)を、より効果的に満足することが可能となる。
なお、レーザ加工機80、90、及び100においては、プロセッサ13が、中心軸A2を光軸A1からずらすずらし量δを、加工速度v、温度T、及びカーフ幅wに応じて決定する場合について述べた。しかしながら、プロセッサ13は、ずらし量δを、ワークWの切断工程において達成することが求められる要件に応じて決定してもよい。
一例として、オペレータは、達成すべき要件として、高速切断、高精度切断、又は省ガス切断を選択する。高速切断の要件を選択した場合、プロセッサ13は、加工速度vを、データテーブル70で規定されている通常の加工条件よりも高速とする高速モードでレーザ加工を行う。例えば、プロセッサ13は、この高速モードでレーザ加工を行うときに、ずらし量δを、データテーブル70で規定されている通常のずらし量よりも小さく設定する。
また、高精度切断の要件を選択した場合、プロセッサ13は、加工速度vを、データテーブル70で規定されている通常の加工条件よりも低速とし、レーザ光Lが切断線lを正確に通過するように移動機構20を精細に制御する高精度モードでレーザ加工を行う。例えば、プロセッサ13は、この高精度モードでレーザ加工を行うときに、ずらし量δを、データテーブル70で規定されている通常のずらし量よりも大きく設定する。
また、省ガス切断の要件を選択した場合、プロセッサ13は、供給圧力SPを、データテーブル70で規定されている通常の加工条件よりも低くする省ガスモードでレーザ加工を行う。例えば、プロセッサ13は、この省ガスモードでレーザ加工を行うときに、ずらし量δを、データテーブル70で規定されている通常のずらし量よりも大きく設定する。このように、ずらし量δを、ワークWの切断工程において達成することが求められる要件に応じて決定することで、該要件に対応しつつ、製品領域E1の切断品質要求を効果的に満たすことができる。
次に、図25及び図26を参照して、さらに他の実施形態に係るレーザ加工機110について説明する。レーザ加工機110は、上述のレーザ加工機10と、位置検出部112をさらに備える点で相違する。位置検出部112は、レーザ加工前又はレーザ加工中に、ノズル30から出射されるレーザ光Lの光軸A1とアシストガスBの中心軸A2の位置関係を確認する。
一例として、位置検出部112は、カメラ、視覚センサ、又はビームプロファイラ(例えば、ナイフエッジ型)等を有し、レーザ光Lの光軸A1上に配置される。この場合、位置検出部112は、ノズル30から出射されるレーザ光Lを直接検出するとともに、ノズル30の出射口34の中心点を検出し、これらレーザ光Lと出射口中心点の検出データに基づいて、光軸A1と中心軸A2との位置関係(例えば、x−y平面の座標)を検出できる。
例えば、位置検出部112は、レーザ加工前に、制御装置12からの所定の指令値に応じて移動装置22が光軸A1と中心軸A2とを同軸から非同軸へずらしたときの、光軸A1と中心軸A2との位置関係を検出する。このように検出された位置関係のデータを用いて、オペレータは、制御装置12の指令値とずらし量δとの相関関係を校正できる。その結果、プロセッサ13は、レーザ加工中に、移動装置22を動作させて、光軸A1から中心軸A2を、目的とする方向へ、目的とするずらし量δだけ、正確にずらすことが可能となる。
他の例として、移動装置22がサーボモータを有する場合において、位置検出部112は、移動装置22のサーボモータの回転角度を検出するエンコーダを有する。このサーボモータの回転角度は、光軸A1と中心軸A2との位置関係(x−y平面の座標)を示す情報となる。制御装置12のプロセッサ13は、位置検出部112から回転角度を取得し、取得した回転角度から、光軸A1と中心軸A2との位置関係を確認できる。この例の場合、位置検出部112は、レーザ加工中に光軸A1と中心軸A2との位置関係を検出できる。
例えば、エンコーダを有する位置検出部112を、上述のレーザ加工機80、90、又は110に適用した場合、プロセッサ13は、加工速度v、温度T、又はカーフ幅wに応じて中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させるときに、位置検出部112から取得した回転角度に基づいて光軸A1に対する中心軸A2の位置を随時確認できる。したがって、プロセッサ13は、レーザ加工中に、光軸A1に対する中心軸A2の位置を確認しつつ、加工速度v、温度T、又はカーフ幅wに応じて中心軸A2のずらし量δを正確に制御できる。
次に、図27を参照して、一実施形態に係る機械学習装置120について説明する。機械学習装置120は、ノズル30から出射されるレーザ光LとアシストガスBとを同軸から非同軸へずらすときのずらし量δを学習するための装置である。機械学習装置120は、プロセッサ及び記憶部を有するコンピュータ、又は、学習アルゴリズム等のソフトウェアから構成され得る。機械学習装置120は、例えば、上述のデータテーブル70を作成するために用いられ得る。
ずらし量δを学習するために、本実施形態においては、レーザ加工機10は、試行用加工プログラム121に従って試行用ワークWTを切断する試行レーザ加工を繰り返し実行する。図28に、試行用ワークWTの一例を示す。このワークWTは、四角形の平板部材である。試行用加工プログラム121においては、複数の切断線lT1、lT2、lT3、及びlT4がワークWTに指定されている。
試行レーザ加工において、レーザ加工機10は、任意に設定した加工条件(ワークWの材質、厚さt、加工速度v、ノズル口径φ、供給圧力SP、焦点位置z、レーザ光Lの出力特性値OP)の下、試行用加工プログラム121に従って、切断線lT1、lT2、lT3、及びlT4に沿ってワークWTを後端から前端まで前方へ順に切断する。
切断線lT1、lT2、lT3、及びlT4を切断する間、レーザ加工機10は、ノズル30からレーザ光LとアシストガスBとを出射するとともに、該アシストガスBの中心軸A2を、該レーザ光Lの光軸A1から、任意の方向へ任意のずらし量δだけずらした状態に維持する。レーザ加工機10は、それぞれの切断線lT1、lT2、lT3、及びlT4を切断する毎に、中心軸A2のずらし量δ及びずらす方向をランダムに変更する。このような試行レーザ加工を、複数のワークWTに対して繰り返し実行する。
1つの切断線lT1、lT2、lT3、又はlT4に沿ってワークWTの切断後、測定部125が、ワークWTの切断箇所に生じるドロスの寸法を測定する。図29に、試行レーザ加工の結果、ワークWTの裏面に生じたドロスの一例を示す。図29に示す例では、試行レーザ加工の結果、ワークWTの切断箇所にカーフKが形成され、該カーフKの左側にドロスD1が生じている一方、カーフKの右側にドロスD2が生じている。
ドロスD1の寸法F1としては、例えば、ドロスD1のz軸方向の高さH1、又は、ドロスD1のx−y平面における面積(最大占有面積)G1がある。同様に、ドロスD2の寸法F2としては、例えば、ドロスD2のz軸方向の高さH2、又は、ドロスD2のx−y平面における面積(最大占有面積)G2がある。測定部125は、寸法測定ゲージ、カメラ、又は視覚センサ等を有し、ドロスD1及びD2の寸法F1及びF2を測定する。
図27に示すように、機械学習装置120は、状態観測部122、及び学習部124を備える。状態観測部122は、試行レーザ加工の実行のためにレーザ加工機10に与えられる加工プログラム121に含まれる加工条件データ、及び、該加工プログラム121を実行したときに生じるドロスD1、D2の寸法F1、F2の測定データを、ワークWTを切断する環境の現在状態を表す状態変数SVとして観測する。
測定データは、ワークWTの切断箇所(又は、カーフK)の両側におけるドロスD1及びD2の個々の寸法F1及びF2、又は、ドロスD1及びD2の相互の寸法差ΔF(=|F2−F1|)を含む。加工条件データは、例えば、ワークWTの材質及び厚さt、加工速度v、ノズル口径φ、供給圧力SP、焦点位置z、並びに、レーザ光Lの出力特性値OPのうちの少なくとも1つを含む。学習部124は、状態変数SV(すなわち、加工条件データ、測定データF1、F2、ΔF)を用いて、ずらし量δを、ワークWTの切断品質と関連付けて学習する。本実施形態において、切断品質とは、ドロス寸法である。
学習部124は、機械学習と総称される任意の学習アルゴリズムに従い、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δを学習する。学習部124は、試行レーザ加工を繰り返し実行することで得られる状態変数SVを含むデータ集合に基づいて学習を反復実行することができる。
このような学習サイクルを繰り返すことにより、学習部124は、切断品質(ドロス寸法=測定データF1、F2、ΔF)とずらし量δとの相関性を暗示する特徴を自動的に識別することができる。学習アルゴリズムの開始時には、測定データF1、F2、ΔFとずらし量δとの相関性は実質的に未知であるが、学習部124は、学習を進めるに従い徐々に特徴を識別して相関性を解釈する。
測定データF1、F2、ΔFとずらし量δとの相関性が、ある程度信頼できる水準まで解釈されると、学習部124が反復出力する学習結果は、現在状態のワークWTを切断するときに、切断品質要求を満たすために中心軸A2をどの程度ずらすべきかという行動の選択(つまり意思決定)を行うために使用できるものとなる。
つまり、学習部124は、学習アルゴリズムの進行に伴い、ワークWTの現在状態と、該現在状態のワークWTを切断するときに切断品質要求を満たすために中心軸A2をどの程度ずらすべきかという行動との相関性を表すずらし量δを、最適解に徐々に近づけることができる。なお、この場合の切断品質要求は、例えば、寸法F1及びF2のいずれか一方が、ゼロ(又は、ゼロに近い値)になることである。
以上のように、機械学習装置120は、状態観測部122が観測した状態変数SV(加工条件データ、寸法F1及びF2)を用いて、学習部124が機械学習アルゴリズムに従い、光軸A1からの中心軸A2のずらし量δを学習するものである。機械学習装置120によれば、学習部124の学習結果を用いることで、ずらし量δを、自動的且つ正確に求めることができるようになる。
ずらし量δを自動的に求めることができれば、加工条件データから、切断品質要求を満たすのに必要なずらし量δを迅速に決定することができる。したがって、様々な加工条件の下でずらし量δを求める作業を大幅に簡単化することができる。また、膨大なデータ集合に基づいてずらし量δを学習することから、切断品質要求(ドロス寸法)を満足するのに最適なずらし量δを高精度に取得できる。
機械学習装置120では、学習部124が実行する学習アルゴリズムは特に限定されず、例えば、教師あり学習、教師なし学習、強化学習、又はニューラルネットワーク等、機械学習として公知の学習アルゴリズムを採用できる。
図30は、図27に示す機械学習装置120の一形態であって、学習アルゴリズムの一例として強化学習を実行する学習部124を備えた構成を示す。強化学習は、学習対象が存在する環境の現在状態(つまり入力)を観測するとともに現在状態で所定の行動(つまり出力)を実行し、その行動に対し何らかの報酬を与えるというサイクルを試行錯誤的に反復して、報酬の総計が最大化されるような方策(本実施形態では、ずらし量δ)を最適解として学習する手法である。
図30に示す機械学習装置120において、学習部124は、ドロスD1、D2の寸法F1、F2、ΔFに関連する報酬Rを求める報酬計算部126と、報酬Rを用いて、ずらし量δの価値を表す関数EQを更新する関数更新部128とを備える。学習部124は、関数更新部128が関数EQの更新を繰り返すことによって、ずらし量δを学習する。
学習部124が実行する強化学習のアルゴリズムの一例を説明する。この例によるアルゴリズムは、Q学習(Q-learning)として知られるものであって、行動主体の状態sと、その状態sで行動主体が選択し得る行動aとを独立変数として、状態sで行動aを選択した場合の行動の価値を表す関数EQ(s,a)を学習する手法である。
状態sで価値関数EQが最も高くなる行動aを選択することが最適解となる。状態sと行動aとの相関性が未知の状態でQ学習を開始し、任意の状態sで種々の行動aを選択する試行錯誤を繰り返すことで、価値関数EQを反復して更新し、最適解に近付ける。ここで、状態sで行動aを選択した結果として環境(つまり状態s)が変化したときに、その変化に応じた報酬(つまり行動aの重み付け)rが得られるように構成し、より高い報酬rが得られる行動aを選択するように学習を誘導することで、価値関数EQを比較的短時間で最適解に近付けることができる。
価値関数EQの更新式は、一般に下記の式(1)のように表すことができる。
式(1)において、s
t及びa
tはそれぞれ時刻tにおける状態及び行動であり、行動a
tにより状態はs
t+1に変化する。r
t+1は、状態がs
tからs
t+1に変化したことで得られる報酬である。maxQの項は、時刻t+1で最大の価値Qになる(と時刻tで考えられている)行動aを行ったときのQを意味する。α及びγはそれぞれ学習係数及び割引率であり、0<α≦1、0<γ≦1で任意設定される。
学習部124がQ学習を実行する場合、状態観測部122が観測した状態変数SVは、更新式の状態sに該当し、現在状態のワークWTを切断するときに中心軸A2を光軸A1からどの程度ずらすべきかという行動(つまり、ずらし量δ)は、更新式の行動aに該当する。また、報酬計算部126が求める報酬Rは、更新式の報酬rに該当する。よって関数更新部128は、現在状態のワークWTを切断するときのずらし量δの価値を表す関数EQを、報酬Rを用いたQ学習により繰り返し更新する。
一例として、報酬計算部126は、ワークWTの切断箇所(又はカーフK)の両側におけるドロスD1及びD2の相互の寸法差ΔF(=|F2−F1|)に応じて異なる報酬Rを求める。例えば、報酬計算部126が求める報酬Rは、ドロスD1の寸法F1と、ドロスD2の寸法F2との寸法差ΔFが生じた場合に正(プラス)の報酬Rとする一方、寸法差ΔFが生じなかった場合に負(マイナス)の報酬Rとする。正負の報酬Rの絶対値は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
また、報酬計算部126は、寸法差ΔFが大きい程、絶対値が大きくなる報酬Rを与えてもよい。例えば、0<ΔF≦ΔFth1の場合、報酬R=+1を与え、ΔFth1<ΔF≦ΔFth2の場合、報酬R=+2を与え、ΔFth2<ΔFの場合、報酬R=+5を与えてもよい。このように条件によって重み付けされた報酬Rを求めることで、Q学習を比較的短時間で最適解に収束させることができる。
他の例として、報酬計算部126は、ワークWTの切断箇所(又はカーフK)の両側におけるドロスD1及びD2の個々の寸法F1及びF2に応じて異なる報酬Rを求める。例えば、報酬計算部126が求める報酬Rは、寸法F1及びF2の一方が、閾値Fth1よりも小さく、且つ、寸法F1及びF2の他方が、閾値Fth2よりも大きい場合に合に正の報酬Rとする。この閾値Fth1及びFth2は、互いに同じ値(Fth1=Fth2)、又は、互いに異なる値(例えば、Fth1<Fth2)として、定められ得る。
一方、報酬計算部126が求める報酬Rは、寸法F1と寸法F2とが同じである場合、負の報酬Rとする。又は、閾値Fth1<閾値Fth2である場合において、報酬計算部126が求める報酬Rは、寸法F1及びF2が、Fth1<F1<Fth2、且つ、Fth1<F2<Fth2である場合に、負の報酬Rを求める。
さらに、報酬計算部126は、寸法F1及びF2、又は寸法差ΔFに加えて、加工条件データの違いに応じて異なる報酬Rを求めてもよい。例えば、報酬計算部126は、寸法差ΔFが生じ、且つ、加工条件データのうちの供給圧力SPが基準値SPRよりも小さい場合に、正の報酬Rを与える。この基準値SPRは、例えば、過去の経験則等から、オペレータによって予め定められ得る。
関数更新部128は、状態変数SVと報酬Rとを、関数EQで表される行動価値(例えば数値)と関連付けて整理した行動価値テーブルを持つことができる。この場合、関数更新部128が関数EQを更新するという行為は、関数更新部128が行動価値テーブルを更新するという行為と同義である。
Q学習の開始時には環境の現在状態とずらし量δとの相関性は未知であるから、行動価値テーブルにおいては、種々の状態変数SVと報酬Rとが、無作為に定めた行動価値の値(関数EQ)と関連付けた形態で用意されている。なお、報酬計算部126は、寸法F1及びF2、又は寸法差ΔFを取得すれば、対応の報酬Rを直ちに算出でき、算出した報酬Rの値が行動価値テーブルに書き込まれる。
ドロス寸法(F1、F2、ΔF)に応じた報酬Rを用いてQ学習を進めると、より高い報酬Rが得られる行動(つまり、ずらし量δ)を選択する方向へ学習が誘導される。そして、選択した行動を現在状態で実行した結果として変化する環境の状態(つまり、状態変数SV)に応じて、現在状態で行う行動についての行動価値の値(関数EQ)が書き替えられ、行動価値テーブルが更新される。
この更新を繰り返すことにより、行動価値テーブルに表示される行動価値の値(関数EQ)は、適正な行動(ずらし量δ)ほど大きな値となるように書き換えられる。このようにして、未知であった環境の現在状態(ドロス寸法F1、F2、ΔF)と、それに対する行動(ずらし量δ)との相関性が、徐々に明らかになる。
次に、図31を参照して、学習部124が実行するQ学習のフローの一例について、さらに説明する。このフローにおいては、学習部124は、寸法差ΔF及び加工条件データに応じた報酬Rを用いて、Q学習を行う。ステップS31において、関数更新部128は、その時点での行動価値テーブルを参照しながら、状態観測部122が観測した状態変数SVが示す現在状態で行う行動としてずらし量δを無作為に選択する。
ステップS32において、関数更新部128は、状態観測部122が観測している現在状態の状態変数SVとして寸法差ΔFを取り込む。具体的には、レーザ加工機10は、任意の加工条件の下、ステップS1で選択したずらし量δに従って試行レーザ加工を実行する。状態観測部122は、該試行レーザ加工を行うときの加工条件データと、試行レーザ加工の結果として得られた寸法差ΔFを、状態変数SVとして観測する。関数更新部128は、状態観測部122が観測した状態変数SVを取り込む。
ステップS33において、関数更新部128は、ステップS32で取り込んだ寸法差ΔFがゼロよりも大きいか否かを判定する。関数更新部128は、寸法差ΔFがゼロよりも大きい場合にYESと判定し、ステップS34へ進む一方、寸法差ΔFがゼロである場合にNOと判定し、ステップS35へ進む。なお、関数更新部128は、寸法差ΔFが、ゼロに近い値として予め定められた閾値ΔFth0(>0)よりも大きい場合にYESと判定してもよい。
ステップS34において、報酬計算部126は、正の報酬Rを求める。このとき、報酬計算部126は、上述したように、寸法差ΔFが大きい程、報酬Rの絶対値が大きくなるように、報酬Rを求めてもよい。報酬計算部126は、求めた正の報酬Rを、関数EQの更新式に適用する。このように、寸法差ΔFに応じた報酬Rを与えることによって、学習部124による学習が、寸法差ΔFが大きくなる(換言すれば、寸法F1及びF2のいずれか一方が小さくなる)行動を選択する方向へ誘導される。
一方、ステップS33でNOと判定した場合、ステップS35において、報酬計算部126は、負の報酬Rを求め、関数EQの更新式に適用する。なお、報酬計算部126は、このステップS35において、負の報酬Rを与える代わりに、報酬R=0として、関数EQの更新式に適用してもよい。
ステップS36において、関数更新部128は、ステップS32で取り込んだ加工条件データに、正の報酬Rを与えるべき違いがあるか否かを判定する。例えば、関数更新部128は、加工条件データのうちの供給圧力SPが、基準値SPRよりも小さいか否かを判定し、供給圧力SPが基準値SPRよりも小さい場合にYESと判定する。
代替的には、関数更新部128は、加工条件データのうちの加工速度vが、基準値vRよりも大きいか否かを判定し、加工速度vが基準値vRよりも大きい場合にYESと判定してもよい。関数更新部128は、YESと判定した場合、ステップS37へ進む一方、NOと判定した場合、ステップS38へ進む。
ステップS37において、報酬計算部126は、正の報酬Rを求める。このときに求められる報酬Rは、上述のステップS36で違いを判定した加工条件データに応じた値として、オペレータによって予め定められてもよい。例えば、ステップS36において、加工条件データとして供給圧力SPの違いを判定した場合、報酬計算部126は、供給圧力SPに応じた正の報酬Rを与える。このように供給圧力SPに応じた報酬Rを与えることによって、学習部124による学習が、供給圧力SPが小さくなる(換言すれば、消費アシストガスが小さくなる)行動を選択する方向へ誘導されることになる。
一方、ステップS36において、加工条件データとして加工速度vの違いを判定した場合、報酬計算部126は、加工速度vに応じた正の報酬Rを与える。このように加工速度vに応じた報酬Rを与えることによって、学習部124による学習が、加工速度vが大きくなる(換言すれば、サイクルタイムが小さくなる)行動を選択する方向へ誘導されることになる。報酬計算部126は、求めた正の報酬Rを、関数EQの更新式に適用する。
ステップS38において、関数更新部128は、現在状態における状態変数SVと報酬Rと行動価値の値(更新後の関数EQ)とを用いて、行動価値テーブルを更新する。このように、学習部124は、ステップS31〜S38を繰り返すことで行動価値テーブルを反復して更新し、ずらし量δの学習を進行させる。
上述した強化学習を進めるときに、例えばQ学習の代わりに、ニューラルネットワークを用いることができる。図32は、ニューロンのモデルを模式的に示す。図33は、図32に示すニューロンを組み合わせて構成した三層のニューラルネットワークのモデルを模式的に示す。ニューラルネットワークは、例えば、ニューロンのモデルを模したプロセッサや記憶装置等によって構成できる。
図32に示すニューロンは、複数の入力i(図では例として入力i1〜i3)に対し結果oを出力する。個々の入力i(i1、i2、i3)には、それぞれに重みw(w1、w2、w3)が乗算される。入力iと結果oとの関係は、下記の式(2)で表すことができる。なお、入力i、結果o、及び重みwは、いずれもベクトルである。また式(2)において、θはバイアスであり、fkは活性化関数である。
図33に示す三層のニューラルネットワークは、左側から複数の入力i(図では例として入力i1〜入力i3)が入力され、右側から結果o(図では例として結果o1〜結果o3)が出力される。図示の例では、入力i1、i2、i3のそれぞれに、対応の重み(総称してW1で表す)が乗算されて、個々の入力i1、i2、i3がいずれも、3つのニューロンN11、N12、N13に入力されている。
図33では、ニューロンN11〜N13の各々の出力を、総称してH1で表す。H1は、入力ベクトルの特徴量を抽出した特徴ベクトルと見なすことができる。図示の例では、特徴ベクトルH1のそれぞれに、対応の重み(総称してW2で表す)が乗算されて、個々の特徴ベクトルH1がいずれも、2つのニューロンN21、N22に入力されている。特徴ベクトルH1は、重みW1と重みW2との間の特徴を表す。
図33では、ニューロンN21〜N22の各々の出力を、総称してH2で表す。H2は、特徴ベクトルH1の特徴量を抽出した特徴ベクトルと見なすことができる。図示の例では、特徴ベクトルH2のそれぞれに、対応の重み(総称してW3で表す)が乗算されて、個々の特徴ベクトルH2がいずれも、3つのニューロンN31、N32、N33に入力されている。特徴ベクトルH2は、重みW2と重みW3との間の特徴を表す。最後にニューロンN31〜N33は、それぞれ結果o1〜o3を出力する。
機械学習装置120においては、状態変数SVを入力iとして、学習部124が上記したニューラルネットワークに従う多層構造の演算を行うことで、ずらし量δ(結果o)を出力することができる。なおニューラルネットワークの動作モードには、学習モードと価値予測モードとがあり、例えば学習モードで学習データセットを用いて重みWを学習し、学習した重みWを用いて価値予測モードで行動の価値判断を行うことができる。なお価値予測モードでは、検出、分類、推論等を行うこともできる。
上記した機械学習装置120の構成は、コンピュータのプロセッサが実行する機械学習方法(又は、ソフトウェア)として記述できる。この機械学習方法は、プロセッサが、レーザ加工機10に与えられる加工プログラム121に含まれる加工条件データ、及び該加工プログラム121を実行したワークWTの切断箇所(又はカーフK)に生じるドロスD1、D2の寸法F1、F2、ΔFの測定データを、ワークWTを切断する環境の現在状態を表す状態変数SVとして観測し、該状態変数SVを用いて、ずらし量δをワークWTの切断品質(ドロス寸法)と関連付けて学習する。
図34は、他の実施形態に係る機械学習装置130を示す。機械学習装置130は、上述の機械学習装置120と、意思決定部132をさらに備える点で相違する。意思決定部132は、学習部124による学習結果に基づいて、レーザ加工機10に指令されるずらし量δの指令値Cδを出力する。
意思決定部132が指令値Cδを出力すると、それに応じて、環境134の状態(ドロス寸法F1、F2、ΔF)が変化する。状態観測部122は、意思決定部132が出力した指令値Cδに従って加工プログラム121を実行したときのドロス寸法F1、F2、ΔFを、次の学習サイクルにおける測定データとして、状態変数SVを観測する。
学習部124は、変化した状態変数SVを用いて、例えば価値関数EQ(すなわち行動価値テーブル)を更新することで、ずらし量δを学習する。意思決定部132は、学習したずらし量δの下、状態変数SVに応じて指令値Cδを出力する。このサイクルを繰り返すことにより、機械学習装置130は、ずらし量δの学習を進め、該ずらし量δの信頼性を徐々に向上させる。
機械学習装置130は、上述した機械学習装置120と同等の効果を奏する。特に機械学習装置130は、意思決定部132の出力によって環境134の状態を変化させることができる。他方、機械学習装置130では、学習部124の学習結果を環境に反映させるための意思決定部に相当する機能を、外部装置(例えば、制御装置12)に求めることができる。
なお、上述の機械学習装置120又は130の変形例として、状態観測部122は、状態変数SVとして、ワークWTの裏面におけるカーフ幅wの測定データをさらに観測することができる。裏面のカーフ幅wは、例えば、上述の寸法測定器102によって測定することができる。学習部124は、状態変数としてカーフ幅wをさらに用いて、ずらし量δを学習することができる。
例えば、図30に示す機械学習装置120において、報酬計算部126は、カーフ幅wがゼロ(又は、ゼロに近い閾値以下)である場合に、負の報酬Rを求めてもよい。試行レーザ加工を実行したときに、ワークWTの裏面のカーフ幅wがゼロである場合、レーザ光LがワークWTを貫通していないことになる。この場合、そもそもドロスD1、D2が形成されないので、報酬Rを負とすることによって、学習部124による学習を、裏面のカーフ幅wがゼロとなるのを避ける行動を選択する方向へ誘導させることができる。
上述の機械学習装置120又は130を、レーザ加工機10に実装させることができる。以下、図35及び図36を参照して、機械学習装置130が実装されたレーザ加工機10’について説明する。レーザ加工機10’は、上述の測定部125をさらに備え、ワークテーブル38に設置された試行用ワークWTに対して試行レーザ加工を実行できる。
図36に示すように、プロセッサ13は、上述の機械学習装置130(すなわち、状態観測部122、学習部124、及び意思決定部132)としての機能を担う。測定部125は、ドロスD1及びD2の寸法F1及びF2を測定し、制御装置12は、測定部125から送信されたデータから、測定データF1、F2、ΔFを取得する。
また、プロセッサ13は、試行レーザ加工を実行するための加工プログラム121に含まれる加工条件データ(ワークWTの材質、厚さt、加工速度v、ノズル口径φ、供給圧力SP、焦点位置z、レーザ光Lの出力特性値)を取得する。この加工条件データは、例えば、制御装置12に設けられた入力装置(キーボード、マウス、タッチパネル等。図示せず)を通してオペレータによって入力されてもよい。このように、プロセッサ13は、加工条件データ及び測定データを取得する状態データ取得部136として機能する。
本実施形態に係るレーザ加工機10’は、制御装置12に機械学習装置130を備えたことにより、試行レーザ加工を繰り返し実行したときの学習部124の学習結果を用いて、切断品質(ドロス寸法)に最適なずらし量δを、自動的且つ正確に求めることができる。
なお、加工プログラム72、84、94、又は104において、製品領域E1を横断するさらなる切断線がワークWに指定されてもよい。このようなワークWの変形例を図37に示す。図37に示すワークW’には、切断線l1〜l7に加えて、ポイントP8からポイントP9まで直線状に延びる切断線l8がさらに指定されている。この場合、加工プログラム72、84、94、又は104において、切断線l8の両側の領域は、ともに製品領域E1に指定される。
例えば、レーザ加工機10、80、90、100、又は110の制御装置12は、切断線l1〜l7に沿ってワークW’を切断した後、切断線l8に沿って製品領域E1の左側領域(第3領域)と右側領域(第4領域)との間をレーザ光Lで切断する。切断線l8の両側の領域では切断品質要求が異ならないので、切断線l8に沿って製品領域E1を切断する間、プロセッサ13は、レーザ光LとアシストガスBとを同軸の状態に維持する。
また、上述のレーザ加工機90の動作の一例として、図21に示すフローを説明した。しかしながら、これに限らず、レーザ加工機90の動作フローの他の例も考えられる。以下、図38を参照して、レーザ加工機90の動作フローの他の例について説明する。なお、図38に示すフローにおいて、図21に示すフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
図38に示すフローにおいては、レーザ加工機90のプロセッサ13は、温度T(T1、TΔ、又はRT)が第1の閾値Tth1(Tth1_1、Tth1_2、又はTth1_3)以下の範囲に収まるように、ずらし量δを段階的に増大させている。具体的には、プロセッサ13は、ステップS7の後、ステップS3又はS11でYESと判定するまで、ステップS3及びS11をループし、ずらし量δを第1のずらし量δ1に維持する。一方、プロセッサ13は、ステップS7の直後に実行したステップS3でYESと判定した場合は、ステップS9において、ずらし量δを、第1のずらし量δ1から第2のずらし量δ2へ増大させる。
ステップS9の後、プロセッサ13は、ステップS3又はS11でYESと判定するまで、ステップS3及びS11をループし、ずらし量δを第2のずらし量δ2に維持する。一方、プロセッサ13は、ステップS9の直後に実行したステップS3でYESと判定した場合は、ステップS10において、ずらし量δを、第2のずらし量δ2から第3のずらし量δ3へ増大させる。
ステップS10の後、プロセッサ13は、ステップS3又はS11でYESと判定するまで、ステップS3及びS11をループし、ずらし量δを第3のずらし量δ3に維持する。一方、プロセッサ13は、ステップS10の直後に実行したステップS3でYESと判定した場合、ステップS41に進む。
ステップS41において、プロセッサ13は、第2のアラームを出力する。例えば、プロセッサ13は、「アシストガスの中心軸のずらし量が最大となっていますが、製品領域の切断品質要求(ドロス寸法)を満足していない可能性があります」という音声又は画像の信号を生成し、制御装置12に設けられたスピーカ又はディスプレイ(図示せず)を通して出力する。その後、プロセッサ13は、ステップS11でYESと判定するまで、ずらし量δを第3のずらし量δ2に維持したまま、レーザ加工を継続する。
このように、図38に示すフローによれば、プロセッサ13は、温度T(T1、TΔ、又はRT)が第1の閾値Tth1(Tth1_1、Tth1_2、又はTth1_3)以下の範囲に収まるように、製品領域E1の側への中心軸A2のずらし量δを温度Tに応じて段階的に増大させている。この構成によれば、製品領域E1に生じたドロス寸法を、切断品質要求に合致するように制御することができる。
なお、上述したカーフKの幅wは、レーザ光の出力特性値OPに相関する。具体的には、ワークWに照射されるレーザ光Lのレーザパワーが大きい程、形成されるカーフKの幅wが大きくなり得る。したがって、プロセッサ13は、レーザ光の出力特性値OPに応じてずらし量δを制御してもよい。
例えば、図24に示すフローにおいて、カーフKの幅wの代わりに、レーザ光の出力特性値OPを取得し、取得した出力特性値OPに応じて中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させて、ずらし量δを制御させてもよい。この場合、プロセッサ13は、ステップS21において、出力特性値OPの取得を開始する。例えば、出力特性値OPがレーザ光Lのレーザパワーの場合、レーザ加工機100は、寸法測定器102の代わりに(又は加えて)、レーザパワー測定器を備え、プロセッサ13は、該レーザパワー測定器から出力特性値OPとしてレーザパワーを取得できる。
代替的には、出力特性値OPが、レーザパワー指令値、又はPWレーザ光の周波数若しくはデューティ比である場合、これらパラメータは、加工プログラムに規定されているか、又は記憶部15に設定値として記憶されている。したがって、プロセッサ13は、レーザパワー指令値、又はPWレーザ光の周波数若しくはデューティ比のデータを、加工プログラム又は記憶部15から取得できる。
ステップS22において、プロセッサ13は、直近に取得した出力特性値OPが第1の閾値OPth1以上であるか否かを判定する。プロセッサ13は、出力特性値OPが第1の閾値OPth1以上である場合にYESと判定し、ステップS23へ進む一方、出力特性値OPが第1の閾値OPth1よりも小さい場合にNOと判定し、ステップS4へ進む。
ステップS23において、プロセッサ13は、直近に取得した出力特性値OPが第2の閾値OPth2(>OPth1)以上であるか否かを判定する。プロセッサ13は、出力特性値OPが第2の閾値OPth2以上である場合にYESと判定し、ステップS25へ進む一方、出力特性値OPが第2の閾値OPth2よりも小さい場合にNOと判定し、ステップS24へ進む。
ステップS25において、プロセッサ13は、直近に取得した出力特性値OPが第3の閾値OPth3(>OPth2)以上であるか否かを判定する。プロセッサ13は、出力特性値OPが第3の閾値OPth3以上である場合にYESと判定し、ステップS27へ進む一方、出力特性値OPが第3の閾値OPth3よりも小さい場合にNOと判定し、ステップS26へ進む。
こうして、プロセッサ13は、製品領域E1と廃材領域E2との間を切断する間、出力特性値OPに応じて、中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させる。具体的には、プロセッサ13は、OP<OPth1の場合は初期ずらし量δ0とし、OPth1≦OP<OPth2の場合は第1のずらし量δ4とし、OPth2≦OP<OPth3の場合は第2のずらし量δ5とし、OPth3≦OPの場合は第3のずらし量δ6とするように、出力特性値OPの大きさに応じてずらし量δを変化させている。
この構成によれば、出力特性値OPに依存してカーフ幅wが変化するのに応じて、中心軸A2と光軸A1との位置関係を変化させ、これにより、製品領域E1に吹き付けるアシストガスBの割合を精細に調整することができる。その結果、製品領域E1の切断品質要求(ドロス寸法)を、より効果的に満足することが可能となる。
なお、記憶部15は、制御装置12に内蔵されるものに限らず、制御装置12に外付けされるメモリ装置(ハードディスク、EEPROM等)であってもよいし、又は、制御装置12にネットワークを介して接続される外部機器(サーバ等)に内蔵されてもよい。
また、上述の光ファイバ32を省略し、レーザ発振器14から出射されたレーザ光を、例えばミラーで反射させることで、加工ヘッド16へ導光させてもよい。また、移動機構20は、上記の構成に限定されない。例えば、移動機構20は、加工ヘッド16(又はワークテーブル)を、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向へ移動させるように構成されてもよい。
また、ワークWは、図13に示す例に限定されない。例えば、ワークWにおいて、切断線l3又はl6が、鋭角、直角又は鈍角を形成するように屈曲する屈曲線であってもよい。この場合において、屈曲する切断線l3及びL6に沿って切断するときの切断速度vl3及びvl6は、上述の実施形態と同様に、速度vHよりも小さい速度vLに設定される。
以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。