JP3942881B2 - 延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムおよび偏光フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光フィルムの製造原料として有用で、均一な延伸が容易な延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法、およびそれを用いて作製した偏光フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計等の小型機器から、近年ではラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビ等の広範囲に広がり、従来以上に均一な延伸が容易な偏光フィルム用ビニルアルコール系重合体フィルムが求められている。
【0003】
一般に偏光板は、ビニルアルコール系重合体フィルム(以下、これを「PVAフィルム」と略記し、また、これの原料であるビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸し、染色することにより製造した偏光フィルムの両面に、三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護フィルムを貼り合わせた構成をしている。
【0004】
また、農業の合理化や機械化に伴い、PVA製の寒冷紗やビニルハウス内のPVA製の保温カーテンなども注目されており、ここでもやはり均一な延伸が容易な延伸加工用PVAフィルムが求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
偏光板の偏光性能を均一化させるためや安定的に均一な延伸を行うためには、PVAフィルムの表面平滑性や厚さ均一性の確保など多くの注意点があるが、均一に延伸できることが極めて重要である。PVAフィルムを均一に延伸できない場合には、得られる偏光板の偏光性能を均一化させることが困難である。
【0006】
そこで本発明の目的は、均一な延伸が容易なPVAフィルムを得ることができ、特に偏光フィルムの製造原料として有用で、偏光性能が均一な偏光フィルムとなりうる延伸加工用PVAフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明にかかる延伸加工用PVAフィルムは、幅方向における厚み斑が1μm乃至10μmのフィルムの両端部が幅方向に1cm乃至15cmの揺動幅で、かつ10秒乃至3時間の揺動周期でスリットされたビニルアルコール系重合体フィルムが、外表面の材質が金属又はプラスチックからなり、外径が10cm以上で、長さがフィルム幅と同等であるかまたはフィルム幅よりも長い筒状のコアにロール状に巻き取られることとしている。この延伸加工用PVAフィルムを用いて偏光フィルムが得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いることができるPVAは、たとえば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルのエステル基のすべてまたは一部を水酸基に変換することにより製造される。またPVAを不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、オレフィンなどをグラフト共重合した変性PVAや、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、オレフィンなどを共重合した変性ポリビニルエステルのエステル基のすべてまたは一部を水酸基に変換することにより製造される変性PVAや、未変性または変性PVAをアルデヒド類で水酸基の一部を架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
【0009】
前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示され、これらの1種または2種以上を使用することができるが、酢酸ビニルが好ましい。
【0010】
一方、変性PVAに使用されるコモノマーは、主としてPVAの変性を目的に共重合させるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとして、たとえば、オレフィン類、アクリル酸およびその誘導体、、メタクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、N−ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物類、ビニルシリル化合物類、脂肪酸イソプロペニルなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0011】
変性PVAを用いる場合の変性量は15モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。またコモノマーとしては、炭素数2乃至30のα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0012】
PVAのけん化度は、偏光性能と耐久性の点から95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、特に99.5モル%以上が最も好ましい。
【0013】
前記けん化度とは、けん化反応などによりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0014】
PVAの重合度は、偏光性能と耐久性の点から1000以上が好ましく、2500以上がより好ましく、特に3500以上が最も好ましい。PVA重合度の上限は8000以下が好ましく、6000以下がより好ましい。
【0015】
前記PVAの重合度は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
【0016】
以上のPVAを使用してPVAフィルムを製造する方法として、含水PVA(有機溶剤などを含んでいてもよい)を溶融して行う溶融押出製膜法の他に、たとえばPVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらのなかでも流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好な偏光フィルムが得られることから好ましい。
【0017】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVAを溶解する溶剤としては、公知のものが使用可能であるが、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0018】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVA溶液または含水PVAのPVA濃度は、10乃至70重量%が好適であり、10乃至60重量%がより好適であり、13乃至55重量%がさらに好適であり、15乃至50重量%が最も好適である。このPVA溶液または含水PVAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などを含有させてもよい。
【0019】
PVAフィルムを製造する際に可塑剤として、グリセリンなどの多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールの添加量としては、PVA100重量部に対して30重量部以下が好ましく、3乃至25重量部がより好ましく、5乃至20重量部が最も好ましい。30重量部を超えると、PVAフィルムが柔軟になりすぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
【0020】
PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量としては、PVA100重量部に対して0.01乃至1重量部が好ましく、0.02乃至0.5重量部がより好ましく、0.05乃至0.3重量部が最も好ましい。0.01重量部未満では、延伸性向上や染色性向上の効果が現れにくく、1重量部を超えると、PVAフィルム表面に溶出してブロッキングの原因になり取り、扱い性が低下する場合がある。
【0021】
本発明において、PVAフィルムを乾燥する方法としては、先ず金属ベルトや金属ロールで乾燥することが好ましい。インフレ製膜法のように、先ず熱風で乾燥した場合には、均一な延伸を実施しにくい場合がある。
【0022】
二段またはそれ以上の多段式のロールの各乾燥面は、スチーム、熱媒、温水、電気ヒーターなどで加熱されたものが使用可能である。また、温風や冷風などをPVAフィルムに吹き付けたり、PVAフィルム周囲の空気や蒸気などを吸引するなどの手段を、複合させて用いてもよい。さらにまた、三番目以降の乾燥は、ロール乾燥だけでなく、テンター方式やフリー方式などのフローティングドライヤーなどを用いることも可能である。
【0023】
PVAフィルムの厚さは10乃至100μmであり、15乃至90μmが好ましく、20乃至80μmがさらに好ましい。PVAフィルムの厚さが20μm未満では延伸倍率を高くできず、得られる偏光フィルムの偏光性能が低くなる場合がある。一方、PVAフィルムの厚さが100μmを超えても偏光性能の向上は見られず経済的でないばかりでなく、均一な延伸ができない場合がある。
【0024】
PVAフィルムの幅方向の厚み斑は、1μm乃至10μmであることが必要であり、3μm乃至6μmであることが特に好ましい。幅方向の厚み斑が1μm未満の場合には、揺動させなくとも均一な延伸が可能な場合が多い。一方、幅方向の厚み斑が10μmを超える場合には、たとえ延伸を均一に行うことができた場合でも、得られる偏光フィルムの偏光性能が均一とならない。
【0025】
PVAフィルムの幅方向の厚み斑は、フィルム幅方向の両端部をスリットした後でPVAフィルムの任意の位置の全幅方向のサンプルを切り出し、アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタKG601Aを用いて測定し、その最大値と最小値の差より求めることができる。
【0026】
このようにして得られたPVAフィルムは、偏光フィルムの製造工程の要求に合わせたフィルム幅に、フィルムの幅方向の両端部をスリットしてからロール状に巻き取られるか、一旦ロール状に巻き取ったのち、偏光フィルムの製造工程の要求に合わせたフィルム幅に、フィルムの幅方向の両端部を別途スリットされる。
【0027】
この時、PVAフィルムの幅方向の両端をスリットする点を、スリット後のフィルム幅は一定としつつ、フィルムの幅方向に1cm乃至15cmの幅で揺動させることが重要で、2cm乃至10cmの幅で揺動させることがより好ましく、特に3cm乃至6cmの幅で揺動させることがさらに好ましい。揺動幅が1cm未満の場合には、PVAフィルムの厚み斑が、巻き取ったPVAフィルムロールの特定の場所に蓄積されるので、得られるロール径が場所により異なる。長期保存後には、ロール径が太い部分のフィルムがタルミとなり、均一な延伸加工が行えなくなる。一方、揺動幅が15cmを超える場合には、トリムとして廃棄する部分が増加するため経済的でない。なお、揺動幅を常に一定にする必要はなく、PVAフィルムの幅方向の厚薄の状況を見ながら適宜変更しても良い。また、揺動が1周期終了する前に1つのフィルムロールを巻き上げても良い。しかしいずれの場合も、揺動幅は前記の範囲内であることが重要である。
【0028】
揺動周期は、10秒乃至3時間であることを要し、30秒乃至1時間がより好ましく、特に1分乃至30分がさらに好ましい。揺動は連続的に行うことが好ましいが、断続的に行うことも可能である。揺動を断続的に行う場合でも、揺動周期の好適な範囲は前記時間と同じである。揺動周期が10秒未満の場合、スリットが安定せず、PVAフィルムが延伸時にフィルム幅方向の端部より切断しやすい場合がある。一方、揺動周期が3時間を超える場合には、PVAフィルムの厚み斑が、巻き取ったPVAフィルムロールの特定の場所に蓄積されやすく、長期保存後にはフィルムの部分的なタルミとなって、均一な延伸加工が行えなくなる場合がある。
【0029】
前記揺動の方法としては、アウターディッケルやインナーデッケルなどのディッケル付きダイの左右のディッケルを、同方向に同時にフィルム幅方向に移動させる方法、ダイのみをフィルムの幅方向に移動させる方法、ダイと乾燥用の最上流側のロールの相対位置を固定させて、ダイと乾燥用の最上流側のロール(二番目以降のロールを含んでも良い)をフィルムの幅方向に移動させる方法、フィルムを切断する位置と巻取り機の相対位置を固定させて、フィルムを切断する位置と巻取り機をフィルムの幅方向に移動させる方法、乾燥用ロールの軸に対してロールの軸を非平行な位置に設定できるロールを有する製膜機で、乾燥用ロールの軸と当該ロールの軸とが作る角度を変化させる方法、乾燥用ロールの軸に対してロールの軸を非平行な位置に設定できるロールを有する製膜機で、当該ロールと直近のロールとの間隔を変更させる方法が望ましく、特に乾燥用ロールの軸に対してロールの軸を非平行な位置に設定できるロールを有する製膜機で、乾燥用ロールの軸と当該ロールの軸とが作る角度を変化させる方法と、乾燥用ロールの軸に対しロールの軸を非平行な位置に設定できるロールを有する製膜機で、当該ロールと直近のロールとの間隔を変更させる方法がより好ましい。
【0030】
PVAフィルムには、スリップ用粉末を付着させないことが好ましい。スリップ用粉末を付着させた場合には、延伸用ロールに粉が付着して延伸を均一に行うことができなかったり、偏光膜の製造時に洗浄槽や膨潤槽の槽内液の汚れが激しくなる傾向がある。
【0031】
このようにして得られたPVAフィルムはロール状に巻き取られる。PVAフィルムは、一般に、コアの外径(角筒の場合はその外接円の直径)が10cm以上であり、より好ましくは12cm以上であり、コアの長さがPVAフィルムの幅と同等であるかまたはフィルム幅よりも長く、より好ましくは10cm以上長く、外表面が金属またはプラスチックでできた筒状のコアに巻き取られる。ロール状に巻き取られたPVAフィルムは、防湿包装の上、宙吊り状態で保管することが好ましい。
【0032】
コアの外径が10cm未満では、フィルムロールが撓んで皺が入り、延伸を均一に行うことができない場合がある。また、コアの最外層が金属やプラスチックでない場合には、延伸条件が一定せず安定な延伸が行えない場合が多い。さらにまた、コアの長さがPVAフィルムの幅よりも短い場合には、延伸時フィルム幅方向の端部より破断が発生しやすく、均一な延伸が困難な場合がある。
【0033】
ロール状に巻き取られたPVAフィルムを宙吊り状態にする方法としては、ロール両端面より出ているコアを支持体に載せる方法、ロール両端面より出ているコアを支持体により吊るす方法、支持体の一部をコア内部に挿入する方法、コア内部に挿入した棒状治具を支持体に載せる方法、コア内部に挿入した棒状治具を支持体により吊るす方法が好ましく、特にロール両端面より出ているコアを支持体に載せる方法がより好ましい。
【0034】
ロール状に巻き取られたPVAフィルムは長さが、1300m以上であることが好ましく、2600m以上がより好ましく、3000m以上が最も好ましい。PVAフィルムの巻長が1300m未満では、厚み斑による巻き締まりが起きにくいため揺動の効果が出にくく、また、偏光フィルムを作製したときに長さ収率が悪化することが多く経済的でない。
【0035】
また、本発明のPVAフィルムから、偏光フィルムを製造するには、たとえばPVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理の操作順に特に制限はない。また、各操作を二回またはそれ以上行ってもよい。
【0036】
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能である。染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウムや二色性直接染料などが使用できる。通常、染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVAフィルムに塗工したり、PVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0037】
一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法が使用でき、温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でもよい)または吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30℃乃至90℃が、また乾熱延伸する場合は50℃乃至180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、4.5倍以上がより好ましく、特に5倍以上が最も好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚さは、3μm乃至75μmが好ましく、5μm乃至50μmがより好ましい。
【0038】
PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0039】
前記PVAフィルムの乾燥処理(熱処理)は、30℃乃至150℃で行うのが好ましく、50℃乃至150℃で行うのがより好ましい。
【0040】
以上のようにして得られた本発明の偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護フィルムを貼り合わせて偏光板として使用される。保護フィルムとしては、脂肪酸セルロース系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルムなどが挙げられるが、三酢酸セルロースフィルムが好ましい。該保護フィルムには、紫外線吸収剤を配合してもよい。偏光フィルムと保護フィルムの接着力を上げるため、両フィルムまたは片方のフィルムの貼り合わせる面にコロナ処理、火炎処理などの表面処理を行うことが好ましい。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系、ウレタン系、アクリル系の各接着剤などを挙げることができるが、なかでもPVA系の接着剤が好適である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
けん化度99.9モル%、重合度1750のPVA100重量部に対し、グリセリン10重量部を含有する、PVA濃度が15重量%の水溶液を、乾燥用ロールの軸に対しロールの軸を非平行な位置に設定できるロールを有する製膜機で流延した。
【0042】
乾燥用ロールの軸と非平行な位置に設定できるロールの軸とが作る角度を変化させる方法により、当該PVAフィルムを揺動幅5cm、揺動周期10分でフィルムの幅方向の両端部をスリットし、外径12.7cm、コアの長さがフィルム幅より20cm長いステンレス製円筒状コアに2600mを巻きつけ、2.5m幅の厚さ75μmで幅方向の厚み斑が6μmの延伸加工用PVAフィルムロールとした。該延伸加工用PVAフィルムロールに高密度ポリエチレンフィルムを二重巻きして、コア両端部を架台に載せることにより、宙吊り状態で保存した。
【0043】
このPVAフィルムロールを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、前記PVAフィルムを30℃の水中に5分間浸漬させて予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬させた。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.5倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬させて固定処理を行った。この後延伸フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。延伸は安定しており、均一に行うことができた。
【0044】
得られた偏光フィルムの厚さは22μmであり、色斑も無く、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に得られた偏光フィルムの50cm四方を45°の角度で挟み、透過光を観察しても、異常は見られなかった。
【0045】
実施例2
けん化度99.9モル%、重合度4000のPVA100重量部と、グリセリン10重量部と、水110重量部を、押出機で溶融混練させ、乾燥用ロールの軸に対しロールの軸を非平行な位置に設定できるロールを有する製膜機を用い、加熱金属ロールに溶融押出した。
【0046】
非平行な位置に設定できるロールと直近のロールとの間隔を変更させる方法により、当該PVAフィルムを揺動幅3cm、揺動周期20分でフィルムの幅方向の両端部をスリットし、外径15.3cm、長さがフィルム幅より30cm長いアルミニウム製円筒状コアに、厚さ75μmでフィルム幅方向の厚み斑が5μmのPVAフィルムを3000m巻きつけ、3m幅の延伸加工用PVAフィルムロールとした。該延伸加工用PVAフィルムロールに高密度ポリエチレンフィルムを二重巻きして、コア両端部を架台に載せることにより、宙吊り状態で保存した。
【0047】
上記以外の操作は、実施例1と同様に処理を行い、偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの厚さは22μmであり、色斑も無く、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に得られた偏光フィルムの50cm四方を45°の角度で挟み、透過光を観察しても、異常は見られなかった。
【0048】
参考例1
実施例2において、揺動周期を4時間とした以外は、実施例2と同様に操作して、偏光フィルムを得た。
【0049】
延伸時に時たま皺が入り、そのときだけ延伸がやや安定になった。得られた偏光フィルムには色斑は無かったが、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に得られた偏光フィルムの50cm四方を45°の角度で挟み、透過光を観察すると、僅かな斑が見られたが、LCD用としては使用可能な状態であった。
【0050】
参考例2
実施例1において、コアの外径を7.5cmとし、フィルム幅とコアの長さを同一として、ロール片端面に保護パットをつけてその面を下にして、立てた状態で保存した以外は、実施例1と同様に操作して、偏光フィルムを得た。
【0051】
延伸時に時たま皺が入り、そのときだけ延伸がやや安定になった。また、延伸時にフィルム端部より一度破断が発生した。得られた偏光フィルムには色斑は無かったが、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に得られた偏光フィルムの50cm四方を45°の角度で挟み、透過光を観察すると、僅かな斑が見られたが、LCD用としては使用可能な状態であった。
【0052】
比較例1
実施例1において、乾燥用ロールの軸と非平行な位置に設定できるロールの軸とが作る角度を0°(平行)に固定して揺動させなかった以外は、実施例1と同様に処理を行い、偏光フィルムを得た。延伸時には皺が入り、安定した延伸ができなかった。クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に得られた偏光フィルムの50cm四方を45°の角度で挟み、透過光を観察すると、斑が見られ、LCD用としては使用できない状態であった。
【0053】
比較例2
実施例2において、ダイリップ間隔を調整せずに溶融押出製膜を行いフィルム幅方向の厚み斑を15μmとした以外は実施例2と同様に処理を行い、偏光フィルムを得た。PVAフィルムの厚い部分が弛んでおり均一な延伸ができず、選られた偏光フィルムには濃淡斑があり、LCD用としては使用できない状態であった。
【0054】
比較例3
実施例2において、スリット直前でタルクをフィルム両面に塗付した以外は実施例2と同様に処理を行い、延伸加工用PVAフィルムロールを得た。
【0055】
フィルムをニップできる2組の延伸ロールを100℃に加熱し、上流側のロールの周速よりも下流側のロールの周速を4倍とすることで、前記PVAフィルムロールを乾熱延伸した。作業開始後直ぐに延伸ロールに斑にタルクが付着してフィルムのニップが局所的になり、均一な延伸が行えなくなったので延伸作業を中止した。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、偏光フィルムの製造原料として有用で、均一な延伸が容易な延伸加工用PVAフィルムロールが得られる。

Claims (4)

  1. 幅方向における厚み斑が1μm乃至10μmのフィルムの両端部が幅方向に1cm乃至15cmの揺動幅で、かつ10秒乃至3時間の揺動周期でスリットされたビニルアルコール系重合体フィルムが、外表面の材質が金属又はプラスチックからなり、外径が10cm以上で、長さがフィルム幅と同等であるかまたはフィルム幅よりも長い筒状のコアにロール状に巻き取られた延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルム。
  2. スリップ用粉末が塗布されていない請求項1に記載の延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルム。
  3. 光学用である請求項1または2に記載の延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルム。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムを用いて作製した偏光フィルム。
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