JP3942681B2 - 排水集合管継手の制振構造および該構造を備えた排水集合管継手 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、排水管集合管継手の、排水の流下時における振動を防止若しくは低減するための制振構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、オフィスビルあるいはマンション等の高層建造物における排水設備において、排水集合管継手1は、例えば図7に示すようにコンクリートスラブ2を経て下階から上階に貫いて配管された排水立て主管3に、各階の排水横枝管4〜4を接続するために用いられるもので、通常各階において複数の排水横枝管4〜4が1箇所の排水集合管継手1を経て排水立て主管3に接続される。
この排水集合管継手1は、横枝管4の接続口1cが側方へ張出し状に設けられた拡径部1aと、この拡径部1aの下端から下流側へ小径となるテーパ管部1bを備えている。拡径部1aは、横枝管4を経て流れ込む排水によって水栓(プラグ)が発生しないよう排水立て主管3よりも大径に形成され、この拡径部1aに流入した排水はテーパ管部1bにより徐々に小径に絞られつつ下流側の排水立て主管3に流下される。
また、近年、従来の二管式に代えていわゆる単管式の排水システムが主流となっており、この単管式排水システムの場合に用いられる排水集合管継手1の上流側接続口1dと上記テーパ管部1bの内壁面には、図示は省略したが流れ込んだ排水を内壁面に沿って螺旋状に旋回させつつ流下させるための整流羽根(フィン)が設けられている。テーパ管部の内壁面に設けた整流羽根の方が、より大量の排水を処理するため接続口側の整流羽根よりも大型になっている(以下、メインフィンという)。単管式排水システムの特徴は、この整流羽根により旋回流を発生させることにより、その中心部に発生する空間部を常時大気に連通させて、従来の二管式排水システムにおける通気管の機能を受け持たせる構成にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、単管式排水システムに用いられる排水集合管継手の内壁面には、旋回流を発生させるための整流羽根が設けられているため、横枝管4〜4を経て流れ込んだ排水、あるいは上流から流下する排水が上記整流羽根に衝突し、その際の衝突エネルギーにより当該管継手1自体が振動し、これが騒音の原因になる問題があった。しかしながら、従来この問題に対して適切な対策が施されていなかった。
本発明は、この問題に対する対策としてなされたもので、排水の流下に伴う排水集合管継手の振動を防止若しくは低減できる排水集合管継手の制振構造およびこの制振構造を備えた排水集合管継手を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本願発明は、前記各請求項に記載した構成の制振構造または排水集合管継手とした、
請求項1記載の制振構造または請求項3記載の排水集合管継手によれば、振動防止用のリブにより当該排水集合管継手の面剛性が高められることにより、この排水集合管継手を排水が流下する際の振動(ひいては排水の流下に伴う騒音、以下同じ)が抑制される。
振動防止用のリブは、当該排水集合管継手の製作段階すなわち鋳造段階で一体に設ける他、当該排水集合管継手の製作後、別途用意したリブを溶接等の手段により取付けることとしてもよい。また、排水集合管継手の表面に溶接により溶接肉盛を形成し、この溶接肉盛を振動防止用のリブとしてもよい。
また、振動防止用のリブは、排水集合管継手の軸線を中心とする円周に沿って、全周に亘って若しくは周方向断続的に設けてもよい。逆に、給排水管の軸線に沿って、周方向に適宜間隔をおいて縦縞状に複数設けてもよい。
【0005】
請求項1記載の制振構造または請求項3記載の排水集合管継手によれば、最も大きな振動発生源である、排水集合管継手のテーパ管部の面剛性が高められるので、より効果的に振動を抑制できる。
ここで、排水集合管継手の拡径部の下端部に連続して形成されるテーパ管部の内壁面には、拡径部側のフィンよりも大型のメインフィンが設けられており、このメインフィンに大量の排水が衝突するため、当該テーパ管部の振動が最も大きくなると考えられ、従ってテーパ管部の面剛性を高めることが管継手全体の振動を抑制する上で効果的である。
さらに、出願人が行った振動実験によれば、排水集合管継手の拡径部の1箇所に振動を加えた場合に、横枝管接続口の基部下側(テーパ管部の上流側端部付近)の振動が最も大きいことから、この部分に対して重点的にリブを設けることが、当該排水集合管継手全体の振動を低減する上で最も効果的である。要は、テーパ管部の面剛性を高めるべく積極的にリブを設けることにより前記従来の課題を解決することができる。
また、テーパ管部は通常コンクリートスラブに埋め戻される部分であるので、コンクリートスラブに伝わる振動を防止する観点からも、このテーパ管部の振動を優先的に抑制することが望ましい。
【0006】
請求項2記載の制振構造によれば、上記作用効果に加えて、各リブの間隔を予め定められた間隔としておくことにより、当該排水集合管継手をコンクリートスラブに固定する際に、各リブをコンクリートスラブに対する位置決め用のラインとして用いることができる。
また、排水集合管継手をコンクリートスラブに固定する場合には、通常そのテーパ管部がコンクリートスラブに埋め戻されるのであるが、各リブが埋め戻し部に対して重力方向に引っ掛かるので、当該排水集合管継手をコンクリートスラブに対してより強固に固定することができる。
テーパ管部の表面に溶接肉盛りを形成して振動防止用のリブとする構成とすることにより、必要な部位についてのみリブを簡単に後付けできるので、予め十分なリブを一律に設定しておく場合に比して、当該制振構造を低コストで提供できる。特に、施工現場において、当該排水集合管継手の取付け後に、必要に応じて必要な部位に対してのみリブを設けることができるので、各現場に合わせてきめ細かい振動防止対策を施すことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3には、排水集合管継手20,30,40のテーパ管部21,31,41に対して設けた種々形態の振動防止用のリブ22,32,42,43が示されている。先ず、これらの説明に先立って、従来の管継手について行った振動実験の結果について説明する。
図6に示すように実験対象の排水集合管継手10は相互に直交して配置された2箇所の横枝管接続口10a,10bを備えている。図中白抜き矢印で示した位置(加振点)に対して、所定の加振器を用いて振動を加えた。その結果、概ねA点、B点、C点の3位置の振動が最も大きく、それぞれ14.35デシベル、13.96デシベル、13.25デシベルの振動特性値を示した。
A点、B点、C点は、両接続管部10a,10bの基部付近であって、拡径部10cとテーパ管部10dの境界線に沿った同テーパ管部10dの上部に集中している。そこで、図中二点鎖線で示すようにテーパ管部10dの上部全周に沿って溶接肉盛11を形成し、その上で同様の実験を行った。
その結果、A点、B点、C点における振動特性値は、それぞれ7.66デシベル、7.56デシベル、5.78デシベルに半減した。このように特に振動の大きなテーパ管部10dに溶接肉盛11を形成しておくことにより、当該排水集合管継手10′の全体として振動を大幅に低減させることができる。以下、この実験結果に基づいて排水集合管継手の振動を大幅に低減させ得る種々形態の溶接肉盛(振動防止用のリブ)について説明する。なお、振動防止用リブの形態以外については特に変更を要しないので説明を省略する。
【0008】
図1は、テーパ管部21の上部全周に沿って溶接肉盛22を形成した排水集合管継手20を示している。この実施形態の場合、溶接肉盛22が振動防止用のリブとして機能する。本実施形態が種々形態のうち最もシンプルな形態である。なお、図示は省略したが上記溶接肉盛22に加えてテーパ管部21の下部全周に沿って同様の溶接肉盛を設けてもよい。
図2は、テーパ管部31の上部から下部にわたって、管軸方向適宜間隔をおいて複数の溶接肉盛32〜32をそれぞれ全周にわたって横縞状に形成した排水集合管継手30を示している。この場合には、溶接肉盛32〜32が振動防止用のリブとして機能する。
図3は、テーパ管部41の上部に沿って複数の板片42〜42が周方向適宜間隔をおいて側方へ張出し状に取付けられた排水集合管継手40が示されている。また、この排水集合管継手40のテーパ管部41の下部には溶接肉盛43が全周にわたって形成されている。この場合、各板片42〜42と溶接肉盛43がそれぞれ振動防止用のリブとして機能する。なお、上記板片42〜42は、施工時コンクリートスラブの上面に当接され、当該管継手40のコンクリートスラブに対する位置決めプレートとしての機能をも有している。
【0009】
以上例示したような、種々形態のリブ(溶接肉盛22、32〜32、43、板片42〜42)によっても、テーパ管部の面剛性を高めることができ、これにより排水流下時における当該排水集合管継手の振動を低減して排水音を大幅に抑制することができる。
以上説明した種々形態のリブの他、さらに別形態のリブにより実施することができる。例えば、溶接肉盛を突条に設けた場合を例示したが、半球状(点状)の溶接肉盛を多数形成する構成としてもよい。また、テーパ管部の軸線に沿って縦縞状に溶接肉盛を形成する他、板片を取り付けてもよい。
さらに、テーパ管部の面剛性を高めるためのリブは、例示した溶接肉盛22(または32〜32)、板片42〜42に限らず、鋼線あるいは棒鋼等を溶接または接着することにより、あるいはボルト止めすることにより前記種々形態に設けてもよい。従って、当該排水集合管継手は鋳鉄製(鋳鉄管)であっても、塩化ビニル製(塩ビ管)あるいはその他の材質(例えば鋼管)であっても同様に適用することができる。
また、当該排水集合管継手20(または30,40)を鋳鉄製(鋳鉄管)とする場合であれば、鋳造の段階でリブ22(または32〜32,42〜42)を一体に形成してもよい。
さらに、テーパ管部にのみリブを設けた例を説明したが、テーパ管部に加えて拡径部に例示した種々形態のリブを設けてもよく、これによればより確実な振動低減効果を得ることができる。
【0010】
次に、上記振動防止用のリブに加えて、当該排水集合管継手の表面または内面またはその双方にいわゆる制振塗装を施してもよい。この制振構造によれば、振動防止用のリブによる面剛性のアップに加えて制振塗装による振動減衰機能が発揮されるので、より一層排水の流下による振動ひいては騒音を低減させることができる。
制振塗装は、本出願人が例えば特開平8−13566号公報に開示したもので、排水集合管継手の表面または内面またはその双方に、振動減衰性樹脂層と熱硬化性樹脂層を積層する処理をいう。振動減衰性樹脂層は、例えば振動減衰性ゴムにオレフィン・アクリル酸エステル共重合体および低結晶性ポリオレフィン共重合体を配合したものであり、振動減衰性ゴムはブチルゴム、ポリイソブチレンまたは3,4−ポリイソブレンのうちの1種以上の成分を選択し、その組成を変えて配合したもので、所定の温度あるいは振動数領域において良好な振動減衰能を発揮し得るものを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂あるいは前者に後者を少量配合したものを用いることができる。この熱硬化性樹脂はそのまま塗装してもよく、またタール等の添加物を混合して塗布してもよい。
なお、振動減衰性樹脂層は、吹き付け等の通常の塗装手段による場合の他、振動減衰性ゴムにオレフィン・アクリル酸エステル共重合体および低結晶性ポリオレフィン共重合体を配合してフィルム状あるいはシート状に成形したものを接着剤で接着してもよい。また、この制振塗装は、当該排水集合管継手の全体に塗布しても、特に振動の大きな部位にのみ集中的に塗布してもよい。
【0011】
次に、特許請求の範囲に記載した発明には含まれないが、これに関連する技術が図4及び図5に示されている。これら関連技術によっても上記と同様の作用効果を得ることができる。図4は、テーパ管部51のほぼ全面にわたって、溶接肉盛52を格子状に形成した排水集合管継手50を示している。この場合、溶接肉盛52が振動防止用のリブとして機能する。このように、振動防止用のリブはテーパ管部の周方向に沿って形成する場合のみならず、テーパ管部の軸線に対して傾斜させて形成してもよく、また管軸線に沿って縦縞状に形成してもよい。
また、図5にはテーパ管部61の内面に振動防止用のリブ62を設けた形態が示されている。この場合のリブ62は、当該管継手60を製作する際に鋳造により一体に形成されたもので、テーパ管部61の上部から下部に至って、旋回流発生用の整流用羽根63を回避しつつ螺旋状に設けられている。このリブ62と上記各溶接肉盛22、32〜32、52〜52、43または板片42〜42等と組み合わせる構成としてもよい。
さらに、同じく特許請求の範囲には含まれない関連技術であって、いわゆる脚部継手に振動防止用のリブを設けることによっても同等の作用効果を得ることができる。
図8は、排水管の一例としてL字型に屈曲する排水用の脚部継手70について振動防止用のリブ71〜71を設けた制振構造の例を示している。この脚部継手70の上部受け口70aには排水立て主管3が接続され、下部受け口70bには排水横主管72が接続されている。この脚部継手70の立て管部70cは、直接コンクリートスラブ2に固定されている。
この脚部継手70の上部受け口70aから下部受け口70bに至って、複数の振動防止用リブ71〜71が管軸方向適宜間隔をおいて横縞状に設けられている。この場合のリブ71〜71も、管表面に溶接肉盛を形成することにより設けられているが、前記したようにその他の方法により設けてもよい。このリブ71〜71により当該脚部継手70の面剛性が高められ、これにより排水流下に伴う振動の発生が抑制され、ひいては排水音が低減される。
なお、この脚部継手70のシュート面(屈曲外周部)の肉厚t(例えばt=8mm)は、他の部分の肉厚(例えば6mm)よりも厚くなっており、これにより排水立て主管3から流下した排水がこのシュート面に衝突することによる浸食に対して耐久性(耐潰食性)が高められている。このシュート面の肉厚tが厚くなっているため、上記耐潰食性に加えてこの部分の剛性が高められ、この点でも振動の発生が抑制される。
【0012】
また、排水横枝主管72は吊り金具73によりコンクリートスラブ2の下面に支持されており、吊り金具73と排水横主管72の表面との間には振動吸収用のゴムシートが挟み込まれている。これにより排水横主管72の振動が吸収されて、コンクリートスラブ2に伝わらないようになっており、これによっても脚部継手70の振動が間接的に低減されるようになっている。
脚部継手70に適用できる振動防止用のリブについても例示したリブ71〜71に限らず、前記例示したように種々形態のものを適用でき、また、制振塗装を追加施工すればより一層効果的に振動を抑制できることは言うまでもない。
また、以上と同じく特許請求の範囲には含まれない関連技術として、振動防止用のリブを脚部継手70に限らず、例えば排水立て主管3、横枝管4あるいは横主管72等の単なる直管(ストレートパイプ)にも同様に適用でき、さらには排水管に限らず、給水管に適用しても同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を示す図であり、テーパ管部の上部に振動防止用のリブとしての溶接肉盛を設けた排水集合管継手の側面図である。
【図2】 第2実施形態を示す図であり、テーパ管部の上部から下部に至って複数の振動防止用のリブとしての溶接肉盛を設けた排水集合管継手の側面図である。
【図3】 第3実施形態を示す図であり、テーパ管部の上部に振動防止用のリブとしての板片を設け、下部に溶接肉盛を設けた排水集合管継手の側面図である。
【図4】 関連技術を示す図であり、テーパ管部に振動防止用にリブとして溶接肉盛を格子状に設けた排水集合管継手の側面図である。
【図5】 別形態の関連技術を示す図であり、テーパ管部の内面に振動防止用のリブを設けた排水集合管継手の縦断面図である。
【図6】 排水集合管継手に対する加振点および最も振動の大きな位置を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図7】 単管式排水システムを示す図であり、排水集合管継手周辺の側面図である。
【図8】 さらに別形態の関連技術を示す図であり、脚部継手に振動防止用のリブを設けた形態を示す側面図である。
【符号の説明】
10…従来の排水立て管(実験対象)
A,B,C…振動の最も大きな位置
20…第1実施形態の排水集合管継手
22…テーパ管部上部の溶接肉盛
30…第2実施形態の排水集合管継手
32…溶接肉盛
40…第3実施形態の排水集合管継手
42…板片(振動防止用のリブ)
50…排水集合管継手(関連技術)
52…溶接肉盛
60…排水集合管継手(関連技術)
62…振動防止用のリブ
70…脚部継手
72…吊り金具
Claims (3)
- 建造物の上階と下階を区画するコンクリートスラブに固定される排水集合管継手の、排水の流下に伴う振動を抑制するための構造であって、
前記排水集合管継手は、上流側の排水立て管を接続する上流側接続口と、各階の横枝管が接続される接続口が設けられた拡径部と、該拡径部の下端から下流側へ小径となるテーパ管部を備え、該テーパ管部が前記コンクリートスラブに埋め戻されて当該排水集合管継手が前記コンクリートスラブを貫通した状態に固定され、
前記テーパ管部の表面に振動防止用のリブとして管軸方向に沿った縦リブを設けたことを特徴とする排水集合管継手の制振構造。 - 請求項1記載の制振構造であって、前記縦リブに加えて、前記テーパ管部の上部全周及び下部全周に沿った管軸方向2箇所に振動防止用の横リブを設けたことを特徴とする排水集合管継手の制振構造。
- 請求項1又は2に記載した制振構造を備えた排水集合管継手。
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