JP3942604B2 - 硝酸クロム水溶液及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硝酸クロム水溶液及びその製造方法に関する。
従来、硝酸クロムの製造方法としては、鉱石をアルカリ酸化焙焼して得た重クロム酸ソーダ溶液に硫酸を加え、有機物で還元して硫酸クロム溶液とし、これに苛性ソーダまたはソーダ灰を加えて水酸化クロムまたは炭酸クロムの沈澱を造り、濾過、水洗した後、硝酸を加えて溶解する方法が知られている。あるいは、炭素還元剤を用いてクロム鉱石を電気炉で還元して得た高炭素フェロクロムを硫酸で抽出処理し、この溶液を電気分解して金属クロムとし、金属クロムに硝酸を加えて硝酸クロムを製造する方法も知られている。
また、三酸化クロムに硝酸を硝酸クロムの生成当量以上に配合して三酸化クロム−硝酸混合溶液を準備する段階、前記段階によって得られた三酸化クロム−硝酸混合溶液に単糖類、二糖類あるいはでんぷん類から選ばれる炭水化物から誘導されるアルコール、アルデヒド、カルボン酸又はこれらの混合物からなる有機還元剤を過剰に混じて三酸化クロムを還元して硝酸クロムを生成させる段階を順次行う方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−339082号公報
従来法のうち、水酸化クロムを硝酸で溶解する方法は、硫酸クロムに苛性ソーダまたはソーダ灰を加えて得た水酸化クロム沈殿の水洗が大変難しく、水酸化クロム中のナトリウムまたは硫酸塩等の不純物を除くことができない問題を有している。
特許文献1記載の方法では、例えば三酸化クロムに硝酸を硝酸クロム当量以上に混合することは、六価のクロムを減らすのに有効である。しかし条件によっては、添加した還元剤が三酸化クロムではなく硝酸と反応してしまい、その結果NOxが発生することがある。そのため、脱NOxの装置が必要なばかりでなく、急激な反応によって危険な状態になることもある。
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る硝酸クロム及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、シュウ酸の含有量が0.5重量%以下で、且つ水溶液中の不純物金属イオンがCr(NO 3 3 として40重量%換算あたりNa≦30ppm、Fe≦20ppmであることを特徴とする硝酸クロム水溶液を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、クロム酸水溶液に、硝酸と有機還元剤とを別々に且つ同時に添加することを特徴とする硝酸クロム水溶液の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、クロム酸水溶液に、硝酸と有機還元剤とを別々に且つ同時に添加して硝酸クロム水溶液を生成させ、次いで該硝酸クロム水溶液を加熱濃縮し、更に冷却させることにより硝酸クロム結晶を析出させることを特徴とする硝酸クロム結晶の製造方法を提供するものである。
本発明の硝酸クロム水溶液及び硝酸クロム結晶は、シュウ酸の含有量が微量であり、これを用いて金属の表面処理を行うと、優れた光沢の製品が得られる。また本発明の製造方法によれば、シュウ酸の含有量が極めて少ない硝酸クロムが工業的に有利に製造できる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の硝酸クロム水溶液は、有機物の一種であるシュウ酸の含有量が低レベルであることによって特徴付けられる。詳細には、本発明の硝酸クロム水溶液は、シュウ酸の含有量が0.5重量%以下、好ましくは実質的に含まないという低レベルのものである。またシュウ酸の含有量はクロムに対して好ましくは6重量%以下、更に好ましくは2重量%以下、一層好ましくは実質的に含まないという低レベルのものである。本発明者らの検討の結果、シュウ酸の含有量が低レベルである本発明の硝酸クロム水溶液は、該水溶液を金属の表面処理に用いた場合に、優れた光沢の製品が得られることが判明した。先に説明した特許文献1に記載の技術では六価のクロムを還元させるために、でんぷんやブドウ糖など炭素数の多い有機還元剤を用いていることに起因して、水溶液中に存在しているシュウ酸の量が本発明よりも高いレベルになっている。本発明の硝酸クロム水溶液におけるシュウ酸の含有量の下限値に特に制限はないが、後述する製造方法を用いるとシュウ酸の含有量を実質的に含まないという極めて低いレベルにすることができる。
本発明の硝酸クロム水溶液中におけるシュウ酸の量は、例えばイオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
本発明の硝酸クロム水溶液は、全有機炭素(以下TOCともいう)が低レベルであることによっても特徴付けられる。本発明者らの検討の結果、シュウ酸の含有量が低レベルであることに加え、TOCが低レベルであると、本発明の硝酸クロム水溶液を金属の表面処理に用いた場合に、一層優れた光沢の製品が得られることが判明した。詳細には、本発明の硝酸クロム水溶液は、TOCがクロムに対して好ましくは2.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%未満という低レベルのものである。
TOCとは、有機物として溶液中に残留しているCの総量である。先に述べた特許文献1では、六価のクロムを確実に三価のクロムに還元させるために、硝酸クロム水溶液中に0.3重量%以上のTOCが必要であることが記載されている。しかし本発明者らがTOCに関して詳細に検討を行ったところ、TOCが少なければ少ないほど、硝酸クロム水溶液を金属の表面処理剤として用いた場合に光沢が極めて優れたものになることが判明した。しかも後述する製造方法によれば、TOCが少なくても、六価のクロムを確実に消滅させることができる。TOCの下限値に特に制限はないが、後述する製造方法を用いると0.01重量%という極めて低レベルとすることができる。
本発明の硝酸クロム水溶液中のTOCは、例えば島津製作所製のTOC500型全有機炭素計によって測定することができる。
本発明の硝酸クロム水溶液は、シュウ酸含有量が少なく、また好ましくはTOCが低レベルであるにもかかわらず、水溶液中に六価のクロムが実質的に存在していない。従って本発明の硝酸クロム水溶液には、環境負荷が小さいという利点がある。かかる水溶液は、後述する製造方法によって好適に製造される。
本発明の硝酸クロム水溶液は、組成式Cr(OH)x(NO3)y(式中、0≦x≦2、1≦y≦3、x+y=3で表される)化合物を含むものである。本発明の硝酸クロム水溶液は、多くの場合Cr(NO33換算で25重量%以上の水溶液であり、好ましくは35重量%以上の水溶液である。41重量%を超えると、条件によっては結晶が析出してしまう。前記組成式で表される化合物には、Cr(NO33で表される硝酸クロムの他に、この硝酸根の一部を水酸基で置換した化合物である塩基性硝酸クロム、例えばCr(OH)0.5(NO32.5、Cr(OH)(NO32、Cr(OH)2(NO3)等が含まれる。
前記組成式で表される化合物は、本発明の硝酸クロム水溶液中にそれぞれ単独で存在していてもよく、或いは2種以上の任意の組み合わせで存在していてもよい。2種以上を組み合わせることで、具体的な用途にふさわしい溶液を調製することができる。
六価のクロム化合物は侵食性や酸化性を有するので、これを原料として得られる硝酸クロム水溶液には不純物金属イオン、特にNa及びFeが不可避的に多量に混入する。これに対して、本発明の硝酸クロム水溶液はこれらのイオンの含有量が極めて少ないことによっても特徴付けられる。具体的には、硝酸クロム水溶液中の不純物金属イオンがCr(NO33として40重量%換算あたり、Naが30ppm以下、好ましくは20ppm以下という低いレベルになっている。Feに関しては、20ppm以下、好ましくは10ppm以下となっている。このような高純度の硝酸クロム水溶液は、特にこれをクロム触媒の原料として使用される水酸化クロムの製造に用いると、高純度の水酸化クロムが得られるという有利な効果が奏されるので好ましい。不純物金属イオンの濃度測定には、例えばICP−AESが用いられる。
本発明の硝酸クロム水溶液は、Crと結合していないフリーの硝酸イオンを実質的に含まないことによっても特徴付けられる。シュウ酸含有量が前述の値以下であり且つフリーの硝酸イオンを実質的に含まないことは、本発明の硝酸クロム水溶液を例えば Cr(NO33 40%の高濃度で長期保管する場合に結晶の析出を抑えることができるという有利な効果が奏されるので好ましい。
本発明の硝酸クロム水溶液は、例えば金属の表面処理用、クロメート用、触媒用として好ましく使用することができる。特に金属の表面処理に用いた場合には、光沢に優れた製品が得られるという利点がある。
次に本発明の硝酸クロム水溶液の好適な製造方法について説明する。該製造方法は、クロム酸水溶液に、硝酸と有機還元剤とを別々に且つ同時に添加する点に特徴を有する。
まず、原料であるクロム酸水溶液は、例えばクロム鉱石をアルカリ酸化焙焼して得たクロム酸ソーダを出発原料とし、種々の精製処理を施して得た三酸化クロム酸を水に溶解して得られる。このようにして得られたクロム酸水溶液は、硫酸クロムに苛性ソーダ又はソーダ灰を加えて得られた水酸化クロムや炭酸クロムを原料として調製されたクロム酸水溶液や、高炭素フェロクロムを硫酸又は塩酸で溶解して得られたクロム酸水溶液に比べてFe、Na、Mg、Al、Ca、Ni、Mo、W等の不純物が極めて少ないものである。
なお、クロム酸水溶液は反応系において溶液であればよく、当初の反応時に三酸化クロムを使用することも可能である。しかし、多くの場合はこれに水を加え、溶解して調製された水溶液を使用する。クロム酸水溶液の濃度に特に制限はないが、一般的な範囲として20〜60重量%であることが好ましい。
クロム酸水溶液に添加される有機還元剤としては、後述の還元反応において炭酸ガスと水とに殆ど分解し、実質的に有機分解物が残らないものであれば特に限定されない。例えばメチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコールが好適に使用される。他の有機還元剤としては、グルコースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、でんぷんなどの多糖類を用いることができる。炭素数の多い糖類を用いると有機分解物が残りやすく、シュウ酸の含有量を低レベルにすることが容易でない。またシュウ酸を含むTOCを低レベルにすることが容易でない。従って本製造方法においては、シュウ酸が生成しにくく且つTOCを低レベルにすることが容易な還元剤である一価又は二価アルコールを用いることが好ましい。また、一価又は二価アルコールを用いると、化学量論量に近い還元反応を得やすいという利点もある。これらの観点から特にメチルアルコール又はエチレングリコールを用いることが好ましく、とりわけメチルアルコールを用いることが好ましい。
有機還元剤は、そのまま希釈せずにクロム酸水溶液に添加してもよく、或いは水に希釈した状態で添加してもよい。水に希釈する場合は、有機還元剤の濃度を10〜30重量%程度にすることが、操作性および反応の管理の点から好ましい。
有機還元剤と共にクロム酸水溶液に添加される硝酸としては、工業用のものを用いることができ、合成硝酸又は副生硝酸のいずれでも良い。通常は濃度が67.5重量%、比重1.4のものが用いられる。しかしこれに限定されない。これらの諸原料は本発明の目的上可及的に高濃度のものを用いることが望ましい。
硝酸及び有機還元剤は、同時にかつ別々にクロム酸水溶液に添加される。硝酸及び有機還元剤の添加速度に特に制限はない。「別々に」とは、硝酸と有機還元剤とを混合した状態で添加しないことを意味する。有機還元剤と硝酸とを混合すると、両者が反応してNOxが発生するので危険である。また、特許文献1記載の方法のように、硝酸とクロム酸の混合液に還元剤を添加する方法を用いると、条件によっては添加した還元剤がクロム酸ではなく硝酸と反応してしまい、NOxが発生することがある。そのため、 脱NOxの装置が必要なばかりでなく、急激な反応によって危険な状態になることもある。
有機還元剤として例えばメチルアルコールを用いた場合における本製造方法の反応式は以下の通りである(式中xは0以上3以下の数を表す)。
2H2CrO4+(6-2x)HNO3+CH3OH → 2Cr(OH)x(NO3)3-x+CO2+7H2O
前記の反応式に示すように、クロム酸を硝酸クロムに転換するのに要する硝酸の理論量(化学量論量)をa、クロム酸を還元するのに要する有機還元剤の理論量(化学量論量)をbとしたとき、硝酸及び有機還元剤を同時にかつ別々に添加している間は、常にa<bの関係となるように両者を添加することが好ましい。これによって、三価のクロムと結合していない硝酸と還元剤が反応し、NOxを発生するのを抑制するという有利な効果が奏される。aとbとの関係は、a/bが1未満、特に0.9以下であると一層好ましい。
硝酸及び有機還元剤をクロム酸水溶液に添加することで酸化還元反応が開始する。反応はかなりの発熱を伴って速やかに進行する。反応温度は、通常90〜110℃である。発生した水蒸気は、コンデンサーによって冷却して反応系内に還流させる。
本製造方法においては、硝酸及び有機還元剤を同時に且つ別々に添加するに先立ち、有機還元剤のみをクロム酸水溶液に添加することが好ましい。この理由は、有機還元剤を先行させ、有機還元剤の添加終了後に硝酸を添加し終わることで、反応系内のa/bが常に上記の値以下とすることができるためである。
先に有機還元剤をクロム酸水溶液に添加している状態下に、併せて硝酸を添加する。これによって両者が同時に且つ別々に添加される。
反応終了後、暫時熟成させ、そのまま製品とすることができる。熟成は、30分以上、90〜110℃で行うことが好ましい。かかる熟成は、溶液中に存在するCr6+を実質的に0にすることと、シュウ酸の含有量を0.5重量%以下(クロムに対して6重量%以下)にすることが主な目的である。必要に応じて更に有機還元剤を加えて残存しているCr6+を完全に還元する。また、必要に応じ硝酸を加え、クロムイオンと硝酸イオンとのモル比を微調整してもよい。
本製造方法で得られた硝酸クロム水溶液は、シュウ酸の含有量が低レベルであり、しかも六価のクロムが実質的に存在していない。得られた硝酸クロム水溶液は、必要であればこれを加熱濃縮し、冷却させることにより硝酸クロムの結晶を得ることができる。得られた硝酸クロム結晶はシュウ酸の含有量がクロムに対して2重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは、実質的に含まないという低レベルのものとなる。また六価のクロムを実質的に含有していない。
前記の加熱濃縮では、硝酸クロム水溶液中の水分を除去すれば良い。加熱濃縮は反応が完結した後でも、反応中に行っても良い。反応中に加熱濃縮する場合には、発生した水蒸気をコンデンサーによって凝縮させ、その水を反応系外へ抜き取ることで濃縮を行うと効率が良く、工業的に有利である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。以下の実施例1ないし4中、実施例1、2及び4が本発明の実施例であり、実施例3は参考例である。
〔実施例1〕
コンデンサー付ガラス製反応容器に、水を251.6g入れ、更に三酸化クロム酸168.6gを投入し、充分撹拌して溶解し、40%のクロム酸水溶液とした。還元剤としては99.5%メチルアルコール27.0gに水を119.2g加えた18%のメチルアルコール水溶液を用いた。このメチルアルコール水溶液を1.22g/minの速度で定量ポンプを用いてクロム酸水溶液に添加した。この添加速度は、18%メチルアルコール水溶液146.2gを2時間で添加する速度である。
メチルアルコール水溶液の添加開始から12分後に、67.5%の硝酸水溶液470.6gを3.92g/minの速度でメチルアルコール水溶液とは別に添加した。この添加速度は、メチルアルコール水溶液の添加時間と同様に、2時間で硝酸水溶液を添加する速度である。メチルアルコール水溶液添加終了時の、硝酸の理論量a及びメチルアルコールの理論量bの比、a/bは0.9であった。メチルアルコール水溶液の添加終了後、12分後に硝酸水溶液の添加も終了した。その後熟成を30分継続した。このときの温度は105℃であった。熟成後、残存のCr6+をチェックし、メチルアルコール水溶液を追加してさらに熟成を継続した。ジフェニルカルバジット法にてCr6+の発色がなくなったことを確認して反応終了とした。反応中に亜硝酸ガスの発生はみられなかった。得られた硝酸クロム水溶液の組成は以下の通りであった。
Figure 0003942604
〔実施例2〕
コンデンサー付ガラス製反応容器に、60%クロム酸水溶液280.2g及び水140.0gを入れ、充分撹拌して、40%のクロム酸水溶液とした。還元剤としては98.5%エチレングリコール31.7gに水を121.9g加えた20%のエチレングリコール水溶液を用いた。このエチレングリコール水溶液を1.28g/minの速度で定量ポンプを用いてクロム酸水溶液に添加した。この添加速度は、20%エチレングリコール水溶液153.6gを2時間で添加する速度である。
エチレングリコール水溶液の添加開始から12分後に67.5%硝酸水溶液470.6gを3.92g/minの速度でエチレングリコール水溶液とは別に添加した。この添加速度は、エチレングリコール水溶液の添加時間と同様に、2時間で硝酸水溶液を添加する速度である。エチレングリコール水溶液添加終了時の、硝酸の理論量a及びエチレングリコールの理論量bの比、a/bは0.9であった。エチレングリコール水溶液の添加終了後、12分後に硝酸水溶液の添加も終了した。その後熟成を30分継続した。このときの温度は105℃であった。熟成後、残存のCr6+をチェックし、エチレングリコール水溶液を追加してさらに熟成を継続した。ジフェニルカルバジット法にてCr6+の発色がなくなったことを確認して反応終了とした。反応中に亜硝酸ガスの発生はみられなかった。得られた硝酸クロム水溶液の組成は以下の通りであった。
Figure 0003942604
〔実施例3〕
コンデンサー付ガラス製反応槽に、60%クロム酸水溶液70.0kg及び水35.0kgを入れ、充分撹拌して、40%のクロム酸水溶液とした。還元剤としては99.5%メチルアルコール6.8kgに水を29.9kg加えた18%のメチルアルコール水溶液を用いた。このメチルアルコール水溶液を306g/minの速度で定量ポンプを用いてクロム酸水溶液に添加した。この添加速度は、18%メチルアルコール水溶液36.7kgを2時間で添加する速度である。
メチルアルコール水溶液の添加開始から12分後に、67.5%硝酸水溶液117.6kgを980g/minの速度でメチルアルコール水溶液とは別に添加した。この添加速度は、メチルアルコール水溶液の添加時間と同様に、2時間で硝酸水溶液を添加する速度である。メチルアルコール水溶液添加終了時の、硝酸の理論量a及びメチルアルコールの理論量bの比、a/bは0.9であった。メチルアルコール水溶液の添加終了後、12分後に硝酸水溶液の添加も終了した。その後熟成を30分継続した。このときの温度は105℃であった。熟成後、残存のCr6+をチェックし、メチルアルコール水溶液を追加してさらに熟成を継続した。ジフェニルカルバジット法にてCr6+の発色がなくなったを確認して反応終了とした。反応中、コンデンサー下部から凝縮水を50kg抜きとり濃縮を行った。反応終了後、常温まで冷却し、種結晶を投入して一昼夜撹拌を継続した。析出した結晶を遠心分離機で分離し、硝酸クロムの結晶25kgを回収した。得られた結晶はX線回折にてCr(NO33・9H2Oであることが確認された。得られた硝酸クロム結晶の組成は以下の通りであった。
Figure 0003942604
〔実施例4〕
コンデンサー付ガラス製反応容器に、60%液体クロム酸280.2g,水280.2gをいれ、充分撹拌して、30%のクロム酸水溶液とした。還元剤としては98.5%エチレングリコール31.7gに水を60.2g加えた34%のエチレングリコール水溶液を用いた。このエチレングリコールを0.77g/minの速度で定量ポンプを用いてクロム酸水溶液に添加した。この添加速度は、34%エチレングリコール91.9gを2時間で添加する速度である。
エチレングリコール水溶液の添加開始から12分後に67.5%硝酸392.2gを3.27g/minの速度でエチレングリコール水溶液とは別に添加した。この添加速度は、エチレングリコール水溶液の添加時間と同様に、2時間で硝酸を添加する速度である。エチレングリコール水溶液添加終了時の硝酸の理論量a及びエチレングリコールの理論量bの比、a/bは0.9であった。エチレングリコール水溶液の添加終了後、12分後に硝酸の添加も終了した。その後熟成を30分継続した。このときの温度は105℃であった。熟成後、残存のCr6+をチェックし、エチレングリコール水溶液を追加してさらに熟成を継続した。ジフェニルカルバジット法にてCr6+の発色がなくなったことを確認して反応終了とした。反応中に亜硝酸ガスの発生はみられなかった。得られた硝酸クロム水溶液の組成は、以下の通りであった。
Figure 0003942604
〔比較例1〕
コンデンサー付ガラス製反応容器に、水を251.6g入れ、更に三酸化クロム酸168.6gを投入し、充分撹拌して溶解し、40%のクロム酸水溶液とした。還元剤としては97%グルコース39.0gに水を107.2g加えた26%のグルコース水溶液を用いた。このグルコース水溶液を1.22g/minの速度で定量ポンプを用いてクロム酸水溶液に添加した。この添加速度は、26%グルコース水溶液146.2gを2時間で添加する速度である。
グルコース水溶液の添加開始から12分後に、67.5%の硝酸水溶液470.6gを3.92g/minの速度でグルコース水溶液とは別に添加した。この添加速度は、グルコース水溶液の添加時間と同様に、2時間で硝酸水溶液を添加する速度である。グルコース水溶液添加終了時の、硝酸の理論量a及びグルコースの理論量bの比、a/bは0.9であった。グルコース水溶液の終了後、12分後に硝酸水溶液の添加も終了した。その後熟成を30分継続した。このときの温度は105℃であった。熟成後、残存のCr6+をチェックし、グルコース水溶液を追加してさらに熟成を継続した。ジフェニルカルバジット法にてCr6+の発色がなくなったを確認して反応終了とした。反応中に亜硝酸ガスの発生はみられなかった。得られた硝酸クロム水溶液の組成は以下の通りであった。
Figure 0003942604
〔性能評価〕
実施例1、2及び4並びに比較例1で得られた硝酸クロム水溶液を用いてクロメート処理液を建浴し、亜鉛めっき鋼板のテストピースを浸漬、乾燥してクロメート処理を行った。処理後の光沢の程度を評価した。その結果を以下に示す。
Figure 0003942604
前記の結果から明らかなように、実施例の硝酸クロム水溶液(本発明品)を用いると、クロメート処理による光沢が優れたものになることが判る。

Claims (7)

  1. シュウ酸の含有量が0.5重量%以下で、且つ水溶液中の不純物金属イオンがCr(NO 3 3 として40重量%換算あたりNa≦30ppm、Fe≦20ppmであることを特徴とする硝酸クロム水溶液。
  2. 全有機炭素がクロムに対して2.5重量%以下である請求項1記載の硝酸クロム水溶液。
  3. Crと結合していないフリーの硝酸イオンを実質的に含まない請求項1又は2記載の硝酸クロム水溶液。
  4. クロム酸水溶液に、硝酸と有機還元剤とを別々に且つ同時に添加することを特徴とする硝酸クロム水溶液の製造方法。
  5. クロム酸を硝酸クロムに転換するのに要する硝酸の理論量をa、クロム酸を還元するのに要する有機還元剤の理論量をbとしたとき、a<bの関係となるように硝酸と有機還元剤と添加する請求項記載の硝酸クロム水溶液の製造方法。
  6. 有機還元剤が、一価アルコール又は二価アルコールである請求項4又は5記載の硝酸クロム水溶液の製造方法。
  7. クロム酸水溶液に、硝酸と有機還元剤とを別々に且つ同時に添加して硝酸クロム水溶液を生成させ、次いで該硝酸クロム水溶液を加熱濃縮し、更に冷却させることにより硝酸クロム結晶を析出させることを特徴とする硝酸クロム結晶の製造方法。
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