JP3941353B2 - Icタグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非接触式ICカード及びタグについて、特に、タグのアンテナコイルで構成される共振回路の共振周波数の最適化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非接触式ICタグ用のアンテナコイルは従来、銅線を円周上に巻いた巻線コイル式が主流であった。また、その他、回路基板(ガラスエポキシ、紙フェノール等)に銅又はアルミニウムのエッチング加工によりアンテナ形成したもの、又は、プラスチックフィルムの表裏面にアンテナコイルをプリントして、両面のアンテナコイルをスルーホールを介して接続されるものもある。
【0003】
従来の共振周波数の調節は、巻線コイル式においてはアンテナコイルの巻数の増減によって行っていた。回路基板やプラスチックフィルムにおいては、アンテナコイルの巻数や線幅、線間の距離を増減させることによって行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の巻線アンテナコイルの場合、共振周波数を調節するにはコイルの巻数を変えることによってインダクタンスを調整する方法が取られている。しかし、コイル1ターンの増減のみでは共振周波数の変化量が大きくなることがあり、微調整することはできない。また、アンテナコイルは、同一円周上にコイルを巻く方式である為、アンテナ形成後の静電容量の容量調整ができなかった。
【0005】
また、基板に銅又はアルミニウムのエッチング加工によるアンテナを形成したものにおいてもアンテナコイルのパターン仕様によって既に静電容量が決まってしまい、エッチング加工後の調整は技術的に不可能であった。
【0006】
ここで、非接触式ICカード及びタグの最適な共振周波数の帯域が広い場合は共振周波数の微調整は不要であるが、帯域が狭い場合はそれを外れると通信特性に悪影響を及ぼしてしまう。特に通信距離が最適値に比較して20%乃至50%に低下急激に低下してしまう。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みて考案されたもので、その目的とするところは、搭載されるICに整合する共振周波数で共振するアンテナコイルを備える非接触式ICタグを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、絶縁基板と、この絶縁基板の表面に設けられるアンテナコイルと、絶縁基板の表面に設けられアンテナコイルに電気的に接続する集積回路を有する半導体チップと、絶縁基板の裏面上にこの基板を挟んでアンテナコイルと対向するように設けられる導電体とを有するICタグであることである。ここで、「絶縁基板」とは、プラスチックフィルムや材料として樹脂やセラミックスを用いた薄い板のことである。「導電体」としては、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属が好ましいが導電性があれば化合物や有機物でもよい。
【0009】
このことにより、アンテナコイルと導電体を対向電極とするコンデンサが形成できる。このコンデンサはアンテナコイルと共振回路を構成するので、コンデンサの静電容量を変えるべく導電体の大きさを変えることで共振回路の共振周波数を容易に変えることができる。そして、集積回路の所望の周波数にこの共振周波数を一致させることができるので、非接触式ICタグの通信距離を大きくすることができる。
【0010】
本発明の特徴は、第1のプラスチックフィルムの表面に配置されたアンテナコイルと、このアンテナコイルに接続された集積回路と、アンテナコイルと集積回路を覆う第2のプラスチックフィルム又はシートとで構成されるICタグにおいて、導電体がアンテナコイルの内周のラインから外周のラインにかけての第1のプラスチックフィルムの裏面に配置されることによっても同様の効果が得られる。ここで、「フィルム又はシート」とは、薄膜又は厚膜のことである。「内周のラインから外周のラインにかけて」とは、アンテナコイルとして複数巻きされた電線の1巻毎すべてにの意味である。
【0011】
本発明の特徴は、導電体の第1のプラスチックフィルムと接する面積が、アンテナコイルと集積回路に応じて異なることにより一層効果的である。ここで、「アンテナコイルと集積回路に応じて」とは、アンテナコイルと集積回路が決まると、接する面積の大きさも1つに決まることを意味している。すなわち、例えば、異なるアンテナコイルを用いると、そのコイルでタグの通信距離が最大になる面積が別に存在し、その面積にまた設定可能であることを意味している。このことにより、コイルや集積回路の種類が変わった場合はもちろん、それぞれの製造上のばらつきが存在する場合でも、タグにおいて最大の通信距離を提供することはできる。
【0012】
本発明の特徴は、アンテナコイル及び導電体が、導電性ペーストを用いて印刷されたことにより一層効果的である。このことにより、容易にアンテナコイル及び導電体が形成できる。そして、導電体の面積を増やしたいときでも、印刷を複数回実施することにより容易に面積を増やすことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率の異なる部分が含まれるのはもちろんである。
【0014】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグの上面方向からの透視図である。本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグにおいては、プラスチックフィルム1の表面にアンテナコイル2がプリントされており、フィルム1の裏面にはアンテナコイル2の最外周から最内周までをカバー(クロス)して対向するようにパターンコンデンサの電極3が所定の位置にプリントされている。プラスチックフィルム1の表面にはアンテナコイル2の端部に電気的に接続された集積回路(IC)が設けられた半導体チップ4が設けられている。プラスチックフィルム又はシートからなるラミネート部材6は、フィルム1、コイル2とICチップ4を上方から覆っている。同様のラミネート部材9は、フィルム1とパターンコンデンサの電極3を下方から覆っている。
【0015】
図1(b)は、パターンコンデンサの電極3を配置した部位のICタグの拡大図である。パターンコンデンサの電極3は、アンテナコイル2とフィルム1を介して対向する結合部分と、複数の結合部分を電気的に接続する接続部分とで構成される。図1(b)の電極3は、3つの結合部分と2つの接続部分を有している。結合部分は、後述するように、コイル2の電線の長さ方向と平行な方向の長さであるパターンコンデンサ電極の長さd1、d2、d3と、コイル2の電線の幅方向と平行な方向の長さであるパターンコンデンサ電極の幅W1、W2、W3とで規定される。電極の長さd1、d2、d3の和は、パターンコンデンサの容量と相関関係があると考えられ、長さd1、d2、d3をそれぞれ調節することによって所望のパターンコンデンサの容量が得られる。電極の幅W1、W2、W3は、パターンコンデンサ電極3のコイル2との結合効率を高め、また、電極3のコイル2とを対向して配置する際の合わせずれによるパターンコンデンサの容量の変動を小さくするため、コイル2の電線の線幅より太く、好ましくは2倍以上に太くしている。
【0016】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICで、図2のA−B方向の断面図である。パターンコンデンサC1は、フィルム1と、フィルム1の上に配置されたアンテナコイル21と、フィルム1の下にコイル21に対向して配置されたパターンコンデンサ電極31とで構成される。同様に、パターンコンデンサC2は、フィルム1とアンテナコイル22とパターンコンデンサ電極32とで構成され、パターンコンデンサC3は、フィルム1とアンテナコイル23とパターンコンデンサ電極33とで構成される。コンデンサC1、C2及びC3の静電容量Cは、アンテナコイル2とパターンコンデンサ電極3の対向する面積Sと、フィルム1の厚さtと、フィルム1の材質による比誘電率εrで決定される。このことは、静電容量Cが、式1で表されることより明らかである。ここで、εは真空中の誘電率である。
【0017】
C=ε×εr×S/t ・・・・式1
また、コイル21とコイル22を電極として線間容量C4が構成され、コイル22とコイル23を電極として線間容量C5が構成される。パターンコンデンサC1、C2とC3とコイル2の線間容量C4とC5によってICチップ4の接続端子からアンテナコイル2側を見たインピーダンスの等価回路は図2(b)のように表される。アンテナコイル2のインダクタンスLとコイル2の直流抵抗Rdcとが直列に接続され、パターンコンデンサC1、C2、C3は互いに直列接続され全体でコイル2に並列接続される。線間容量C4、C5がコイル2に並列接続され、コンデンサC1、C2及びC3を形成するプラスチックフィルム1の誘電体損失を表す抵抗Rもコイル2に並列接続されている。ここで、コンデンサC1、C2及びC3はプラスチックフィルム1の厚さが薄いほど静電容量が大きくなる。また、アンテナコイル2と対向するパターンコンデンサの電極3の面積が小さいほど小さな値となる。また、誘電体損失を表す抵抗Rは、小さいほど損失が少ないので性能の良いコイルが得られる。
【0018】
コンデンサC1、C2及びC3は直列接続、線間容量C4とC5は並列接続であるから、合成の静電容量C0は、式2のように求められる。ここで、C1乃至5は、対応するコンデンサC1乃至5の静電容量値である。
【0019】
C0=C1×C2×C3/(C1+C2+C3)+C4+C5・・・式2
線間容量C4とC5は対向する面積が小さいため、容量値C4とC5も小さい。従って合成容量C0の値はほとんどが容量値C1、C2、C3すなわちアンテナコイル2と対向するパターンアンテナ電極3の面積S及びプラスチックフィルム1の比誘電率εrで決まる。面積Sは、図1(b)の長さd1と幅W1の積と、長さd2と幅W2の積と、長さd3と幅W3の積との和で基本的には表される。だだ、詳細には、面積Sを算出する際に用いる幅W1乃至3の値は、電極31、32、33と、コイル2の電線21、22、23との位置関係により補正する必要がある。このことは、合成容量C0を変化させるために面積Sを変化させるためには補正を考慮する必要がない長さd1乃至3を変化させることが好ましいことを意味する。このことにより、合成容量C0のばらつきが低減でき、高い再現性が得られると考えられる。
【0020】
アンテナコイル2の共振周波数f0は式3により求められる。
【0021】
f0=1/(2×π×(L×C0)1/2) ・・・式3
これより共振周波数f0はコイル2のインダクタンスLと、合成容量C0の値に依存することが分かる。インダクタンスLは固定値であるので、合成容量C0の値が増加すれば共振周波数f0は低下し、合成容量C0の値が減少すれば共振周波数f0の値が上昇する。
【0022】
以上のことから、共振周波数f0を最適化するために変化させるためには合成容量C0の値を増減させればよく、合成容量C0の値を増減させるためにはパターンコンデンサC1乃至3の容量値を増減させればよく、コンデンサC1乃至3の容量値を増減させる為にはパターンコンデンサ電極の長さd1乃至3を増減させればよい。すなわち、アンテナコイル2と対向するアンテナ裏面に形成したパターンコンデンサの電極3の面積を可変できるようにし、(アンテナ)コイル2形成後に、パターンコンデンサの電極3の面積を変化させ静電容量C0を変化させる。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグの通信距離fの共振周波数f0依存性を示すグラフである。アンテナコイル2にICチップ4を接続し、タグ(カード)化して測定している。通信距離hは共振周波数f0が14MHzから15MHzにおいて最大となる。これより共振周波数f0の狙いを14.5MHz近傍に設定すれば、後は合成容量C0の微調整により最大通信距離が得られる最適な共振周波数f0に調整する事ができる。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICの製造過程を説明するための図である。
【0025】
(1)まず、プラスチックフィルム1の両面にアルミニウム(Al)箔を接着する。表面の箔をアンテナコイル2のパターンに、裏面の箔をパターンコンデンサの電極3の形状に各々エッチングする。なお、両面に箔を接着しエッチングする代わりに、コイル2と電極3のパターンに導電性ペーストを用いて直接印刷してもよい。
【0026】
(2)アンテナコイル2の終端をICチップ4の接続端に接続する。まず、アンテナコイル2の終端とその付近に上に、接続材料として異方導電フィルム8を接着する。コイル2の終端の直上にICチップ4の接続端が配置されるようにフィルム8の上にICチップ4を接着する。
【0027】
(3)一方、パターンコンデンサ電極3においてはパターンの長さd1乃至3が約10mmで、パターンの厚みが9μm(表面のアンテナコイル2のパターンの厚みと同一)で、パターンの幅W1乃至3は表面に形成されたアンテナコイル2のパターンのライン幅以上のパターンをライン毎に各々形成する。各々のパターンコンデンサの電極3の間隔は約1mm幅のラインにて接続する。よって、パターンコンデンサは物理的に閉ループとならない。
【0028】
なお、上記コイル2のライン毎に形成されたパターンコンデンサの電極3は各々細い(約1mm幅)ラインで接続されているため、回路形成後であってもカッター等で容易に切り離すことが可能である。また、電極3は、パターン形成後であってもカッター等で容易に切り離し長さd1乃至3を調節することが可能である。
【0029】
(4)最後に、プラスチックフィルム1を接着剤付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム6、9により張り合わし、ラミネータにより成形後、所定の形状に打ち抜く。
【0030】
このように、平面上に構成されたアンテナ形成後であっても、微妙な静電容量の調整が別途可能なため、共振周波数を最適値に調整でき、この結果、通信特性の良いICタグを提供することができる。そして、この調節の際には、フィルム1の表面に設けられるコイル2やICチップ4の調整が不要で、唯一裏面に設けられる電極3のみの調節なので、調整中にコイル2やICチップ4を破損する心配がない。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、搭載されるICに整合する共振周波数で共振するアンテナコイルを備える非接触式ICタグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグの上面方向からの透視図である。
【図2】 本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグの断面図と等価回路図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグの通信距離の共振周波数依存性を示すグラフである。
【図4】 本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグの製造過程を説明するための図である。
【符号の説明】
1 プラスチックフィルム
2、21、22、23 アンテナコイル
3、31、32、33 パターンコンデンサ電極
4 集積回路(IC)チップ
6、9 接着剤付きPETフィルム
8 異方導電フィルム
C1、C2、C3 パターンコンデンサ
C4、C5 線間容量
L アンテナコイルのインダクタンス
Rdc アンテナコイルの直流抵抗
R パターンコンデンサを形成するプラスチックフィルムの誘電体損失を表す抵抗
d1、d2、d3 パターンコンデンサ電極の長さ
W1、W2、W3 パターンコンデンサ電極の幅
Claims (4)
- 電源を内蔵せず、外部からの電磁エネルギーの供給を受けて動作する非接触式ICタグであって、
絶縁基板と、
前記基板の表面に設けられるアンテナコイルと、
前記基板の表面に設けられ、前記コイルに電気的に接続する集積回路を有する半導体チップと、
前記基板の裏面上に、前記基板を挟んで前記コイルと対向するように設けられる導電体とを有することを特徴とするICタグ。 - 電源を内蔵せず、外部からの電磁エネルギーの供給を受けて動作する非接触式ICタグであって、
第1のプラスチックフィルムの表面に配置されたアンテナコイルと、前記コイルに接続された集積回路と、前記コイルと前記集積回路を覆う第2のプラスチックフィルム又はシートとで構成されるICタグにおいて、
導電体が、前記コイルの内周のラインから外周のラインにかけての前記第1のフィルムの裏面に配置されることを特徴とするICタグ。 - 前記導電体の前記第1のフィルムと接する面積が、前記コイルと前記集積回路に応じて異なることを特徴とする請求項2に記載のICタグ。
- 前記コイル及び前記導電体が、導電性ペーストを用いて印刷されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のICタグ。
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