JP3941023B2 - プレキャストコンクリート部材の接合構造 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、擁壁、管路等のコンクリート構造物を形成するプレキャスト擁壁、プレキャストボックスカルバート等の複数のプレキャストコンクリート部材を、その接合端面を相互に突き合わせて接合するプレキャストコンクリート部材の接合構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
プレキャスト擁壁、プレキャストボックスカルバート等のプレキャストコンクリート部材（以下、ＰＣａコンクリート部材という。）は、その接合端面を相互に突き合わせて接合される形で複数個が連続して設置されることによって、擁壁、管路等のコンクリート構造物を形成する。この際、ＰＣａコンクリート部材の相互の接合構造は、ボルト・ナット等を介して相互に強固に固定した構造や、あるいは、単に接合部分にシーリング材を貼着しただけの構造になっている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ＰＣａコンクリート部材の接合部分にシーリング材を貼着しただけの接合構造の場合には、地震等による強大な外力が作用すると、ＰＣａコンクリート部材が相互に離反する可能性があり、一方、ＰＣａコンクリート部材をボルト・ナットを介して強固に相互に固定した接合構造の場合には、接合部分が破損する可能性がある等の問題があった。
【０００４】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、ＰＣａコンクリート部材を相互に柔軟に拘束し合うように接合することができるＰＣａコンクリート部材の接合構造の提供を目的としたものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための本発明の特徴は、コンクリート構造物を形成する複数のプレキャストコンクリート部材が接合端面を相互に突き合わせて接合されるプレキャストコンクリート部材の接合構造において、前記各プレキャストコンクリート部材の接合端面に、比較的狭い開口部分および比較的広い奥部分を有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝を、前記プレキャストコンクリート部材の底面の近傍から上端面まで、相互に対向するように設け、接合される前記プレキャストコンクリート部材に跨って、相互に対向した前記連結部材挿通溝内に、比較的細い中央部分および比較的太い両端部分を有する横断面形状で比較的剛性の大きい縦長の連結部材を、前記連結部材の両端部分を前記連結部材挿通溝の奥部分に配置し、前記連結部材の中央部分を前記連結部材挿通溝の開口部分に配置させて挿通するとともに、前記連結部材挿通溝内にポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製の柔軟性があり、かつシーリング材として機能する緩衝材を充填し、前記連結部材挿通溝内面と連結部材外面との間に前記緩衝材を介在させて、前記各プレキャストコンクリート部材を前記連結部材及び緩衝材を介して相互に柔軟に拘束させたことにある。
【０００６】
なお、連結部材挿通溝を内側に形成する樋形の溝形成部と該溝形成部から突出したアンカー部とからなる溝形成部材を、プレキャストコンクリート部材の接合端面に埋設することが好ましい。
【０００７】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面について説明する。
【０００８】
図１、２は本発明の第１実施形態であって、ＰＣａコンクリート部材がプレキャスト擁壁の場合を示している。
【０００９】
図１に示すように、プレキャスト擁壁１０は、略垂直な壁構成部１１と略水平な底版構成部１２とからなる略Ｌ字形（又は略逆Ｔ字形）の縦断面形状に形成されており、複数のプレキャスト擁壁１０、１０…が、その接合端面１０Ｅ、１０Ｅ…を相互に突き合わせて接合される形で横方向に連続して設置され、底版構成部１２、１２…側が地中に埋設されることによって、コンクリート構造物である擁壁を形成するようになっている。
【００１０】
そして、各プレキャスト擁壁１０の壁構成部１１の縦向の接合端面１０Ｅには、比較的（後述の連結部材の両端部分に比して）狭い開口部分および比較的（後述の連結部材の両端部分に比して）広い奥部分を有する略Ｔ字形の一様な横断面形状で縦長な連結部材挿通溝２４が、底面１０Ｂの近傍から上端面１０Ｔまで形成されており、２個のプレキャスト擁壁１０、１０の接合端面１０Ｅ、１０Ｅを相互に突き合わせると、両者の連結部材挿通溝２４、２４が、相互に対向して狭い開口部分を介して連通し、略Ｉ字形の横断面形状の縦長な連結部材挿通孔を形成するようになっている。
【００１１】
接合端面１０Ｅの連結部材挿通溝２４は、図２に示すように、鋼製、ＦＲＰ製等で比較的剛性が大きい溝形成部材２２を接合端面１０Ｅに埋設することによって形成されており、図３に示すように、溝形成部材２２は、比較的狭い開口部分２４ａおよび比較的広い奥部分２４ｂを有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝２４を内側に形成するように縦長の樋形に成形された溝形成部２３と、溝形成部２３から横向に突出するように溶接等により固着された複数の棒状のアンカー部２６、２６…とをもって構成されている。なお、溝形成部材２２のアンカー部２６、２６…を、プレキャスト擁壁１０の内部の補強用鉄筋１６、１６…と連結するようにしてもよい。
【００１２】
そして、図１、２に示すように、接合される２個のプレキャスト擁壁１０、１０に跨って、接合端面１０Ｅ、１０Ｅの連結部材挿通孔（対向した連結部材挿通溝２４、２４）内には、鋼製、ＦＲＰ製等で比較的剛性が大きく、比較的（前述の連結部材挿通溝の開口部分に比して）細い中央部分２９ａ（ウェブ）および比較的（前述の連結部材挿通溝の開口部分に比して）太い両端部分２９ｂ、２９ｂ（フランジ）を有する略Ｉ字形の一様な横断面形状で縦長な連結部材２９（Ｉ型鋼）が、太い両端部分２９ｂ、２９ｂを連結部材挿通孔の広い両端部分（連結部材挿通溝２４、２４の奥部分２４ｂ、２４ｂ）に配置し、細い中央部分２９ａを連結部材挿通孔の狭い中央部分（連結部材挿通溝２４、２４の開口部分２４ａ、２４ａ）に配置するように、プレキャスト擁壁１０、１０の上端面１０Ｔ側から挿通されている。
【００１３】
そして、プレキャスト擁壁１０、１０の連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４内面）と連結部材２９の外面との間には、ポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製等で比較的弾性が大きい緩衝材２８が、プレキャスト擁壁１０、１０の上端面１０Ｔ側から注入、充填されている。このように、連結部材挿通孔（連結部材挿通溝２４、２４）に連結部材２９を挿入した状態で、連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４内面）と連結部材２９外面との間に緩衝材２８を充填して介在させることにより、プレキャスト擁壁１０、１０同士が互いに対して柔軟に拘束し合う接合構造となっている。
【００１４】
このような接合構造のプレキャスト擁壁１０、１０…は、地震等による強大な外力が作用しても、接合されたプレキャスト擁壁１０、１０が連結部材２９、緩衝材２８を介して相互に柔軟に拘束し合うので、プレキャスト擁壁１０、１０の相互の離反を防止することができ、また、プレキャスト擁壁１０、１０の接合部分の破損を防止することができる。また、緩衝材２８はプレキャスト擁壁１０、１０間のシーリング材としても機能する。また、連結部材２９は、プレキャスト擁壁１０、１０の内部に配置されるので、鋼材等を使用しても、腐蝕等に対して高い耐久性を発揮する。
【００１５】
図３は本発明の第２実施形態であって、ＰＣａコンクリート部材がプレキャストボックスカルバート（以下、ＰＣａボックスカルバートという。）の場合を示している。なお、第１実施形態と同様の部分については、説明を省略し、同一符号を使用する。
【００１６】
ＰＣａボックスカルバート１１０は、略垂直な側壁構成部１１１、１１１、略水平な底版構成部１１２、頂版構成部１１３とからなる略四角筒形の縦断面形状に形成されており、複数のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０…が、その接合端面１１０Ｅ、１１０Ｅ…を相互に突き合わせて接合される形で横方向に連続して設置されることによって、コンクリート構造物である管路を形成するようになっている。
【００１７】
そして、各ＰＣａボックスカルバート１１０の両側の側壁構成部１１１、１１１の縦向の接合端面１１０Ｅには、略Ｔ字形の横断面形状で縦長な連結部材挿通溝２４、２４が、底面１１０Ｂの近傍から上外面１１０Ｔまで形成されており、２個のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の接合端面１１０Ｅ、１１０Ｅを相互に突き合わせると、両者の連結部材挿通溝２４、２４…が、相互に対向して狭い開口部分を介して連通し、略Ｉ字形の横断面形状の縦長な連結部材挿通孔を形成するようになっている。
【００１８】
そして、接合される２個のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０に跨って、接合端面１１０Ｅ、１１０Ｅの連結部材挿通孔（対向した連結部材挿通溝２４、２４…）内には、比較的剛性が大きく略Ｉ字形の横断面形状で縦長な連結部材２９、２９が挿通されており、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４…内面）と連結部材２９、２９の外面との間には、比較的弾性の大きい緩衝材２８が、ＰＣａボックスカルバートの上外面１１０Ｔ側から注入、充填されている。このように、連結部材挿通孔（連結部材挿通溝２４、２４…）に連結部材２９、２９を挿入した状態で、連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４…内面）と連結部材２９、２９の外面との間に、緩衝材２８を充填して介在させることにより、ボックスカルバート１１０、１１０同士が、互いに対して柔軟に拘束しあう接合構造なっている。
【００１９】
このような接合構造のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０…は、地震等による強大な外力が作用しても、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０が連結部材２９、２９、緩衝材２８を介して相互に柔軟に拘束し合うので、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の相互の離反を防止することができ、また、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の接合部分の破損を防止することができる。
【００２０】
なお、上述の実施の形態では、連結部材の断面形状が略Ｉ字形の場合について述べたが、連結部材は、中央部分が比較的細く、両端部分が比較的太い断面形状であればよい。また、上述の実施の形態では、連結部材挿通孔、連結部材の断面形状が一様な場合について述べたが、連結部材挿通孔、連結部材をテーパー状にしてもよい。
【００２１】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係るＰＣａコンクリート部材の接合構造は、各プレキャストコンクリート部材の接合端面に、比較的狭い開口部分および比較的広い奥部分を有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝を、前記プレキャストコンクリート部材の底面の近傍から上端面まで、相互に対向するように設け、接合される前記プレキャストコンクリート部材に跨って、相互に対向した前記連結部材挿通溝内に、比較的細い中央部分および比較的太い両端部分を有する横断面形状で比較的剛性の大きい縦長の連結部材を、前記連結部材の両端部分を前記連結部材挿通溝の奥部分に配置し、前記連結部材の中央部分を前記連結部材挿通溝の開口部分に配置させて挿通するとともに、前記連結部材挿通溝内にポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製の柔軟性があり、かつシーリング材として機能する緩衝材を充填し、前記連結部材挿通溝内面と連結部材外面との間に前記緩衝材を介在させて、前記各プレキャストコンクリート部材を前記連結部材及び緩衝材を介して相互に柔軟に拘束させたことによって、地震等による強大な外力が作用した際に、ＰＣａコンクリート部材が相互に離反したり、ＰＣａコンクリート部材の接合部分が破損することを防止することができる。
【００２２】
なお、連結部材挿通溝を内側に形成する樋形の溝形成部と溝形成部から突出したアンカー部とからなる溝形成部材を、ＰＣａコンクリート部材の接合端面に埋設することによって、所定形状の連結部材挿通溝を接合端面に好適に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係るＰＣａコンクリート部材の接合構造の第１実施形態を示す斜視図である。
【図２】 図１中の接合端面部分の拡大横断面図である。
【図３】 図１中の連結部材挿通溝、連結部材の拡大分解斜視図である。
【図４】 本発明に係るＰＣａコンクリート部材の接合構造の第２実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
１０ プレキャスト擁壁（ＰＣａコンクリート部材）
１０Ｂ 底面
１０Ｅ 接合端面
１０Ｔ 上端面
１１ 壁構成部
１２ 底版構成部
１６ 補強用鉄筋
２２ 溝形成部材
２３ 溝形成部
２４ 連結部材挿通溝
２４ａ 開口部分
２４ｂ 奥部分
２６ アンカー部
２８ 緩衝材
２９ 連結部材
２９ａ 中央部分
２９ｂ 両端部分
１１０ ＰＣａボックスカルバート（ＰＣａコンクリート部材）
１１０Ｂ 底面
１１０Ｅ 接合端面
１１０Ｔ 上外面
１１１ 壁構成部
１１２ 底版構成部
１１３ 頂版構成部
【発明の属する技術分野】
本発明は、擁壁、管路等のコンクリート構造物を形成するプレキャスト擁壁、プレキャストボックスカルバート等の複数のプレキャストコンクリート部材を、その接合端面を相互に突き合わせて接合するプレキャストコンクリート部材の接合構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
プレキャスト擁壁、プレキャストボックスカルバート等のプレキャストコンクリート部材（以下、ＰＣａコンクリート部材という。）は、その接合端面を相互に突き合わせて接合される形で複数個が連続して設置されることによって、擁壁、管路等のコンクリート構造物を形成する。この際、ＰＣａコンクリート部材の相互の接合構造は、ボルト・ナット等を介して相互に強固に固定した構造や、あるいは、単に接合部分にシーリング材を貼着しただけの構造になっている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ＰＣａコンクリート部材の接合部分にシーリング材を貼着しただけの接合構造の場合には、地震等による強大な外力が作用すると、ＰＣａコンクリート部材が相互に離反する可能性があり、一方、ＰＣａコンクリート部材をボルト・ナットを介して強固に相互に固定した接合構造の場合には、接合部分が破損する可能性がある等の問題があった。
【０００４】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、ＰＣａコンクリート部材を相互に柔軟に拘束し合うように接合することができるＰＣａコンクリート部材の接合構造の提供を目的としたものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための本発明の特徴は、コンクリート構造物を形成する複数のプレキャストコンクリート部材が接合端面を相互に突き合わせて接合されるプレキャストコンクリート部材の接合構造において、前記各プレキャストコンクリート部材の接合端面に、比較的狭い開口部分および比較的広い奥部分を有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝を、前記プレキャストコンクリート部材の底面の近傍から上端面まで、相互に対向するように設け、接合される前記プレキャストコンクリート部材に跨って、相互に対向した前記連結部材挿通溝内に、比較的細い中央部分および比較的太い両端部分を有する横断面形状で比較的剛性の大きい縦長の連結部材を、前記連結部材の両端部分を前記連結部材挿通溝の奥部分に配置し、前記連結部材の中央部分を前記連結部材挿通溝の開口部分に配置させて挿通するとともに、前記連結部材挿通溝内にポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製の柔軟性があり、かつシーリング材として機能する緩衝材を充填し、前記連結部材挿通溝内面と連結部材外面との間に前記緩衝材を介在させて、前記各プレキャストコンクリート部材を前記連結部材及び緩衝材を介して相互に柔軟に拘束させたことにある。
【０００６】
なお、連結部材挿通溝を内側に形成する樋形の溝形成部と該溝形成部から突出したアンカー部とからなる溝形成部材を、プレキャストコンクリート部材の接合端面に埋設することが好ましい。
【０００７】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面について説明する。
【０００８】
図１、２は本発明の第１実施形態であって、ＰＣａコンクリート部材がプレキャスト擁壁の場合を示している。
【０００９】
図１に示すように、プレキャスト擁壁１０は、略垂直な壁構成部１１と略水平な底版構成部１２とからなる略Ｌ字形（又は略逆Ｔ字形）の縦断面形状に形成されており、複数のプレキャスト擁壁１０、１０…が、その接合端面１０Ｅ、１０Ｅ…を相互に突き合わせて接合される形で横方向に連続して設置され、底版構成部１２、１２…側が地中に埋設されることによって、コンクリート構造物である擁壁を形成するようになっている。
【００１０】
そして、各プレキャスト擁壁１０の壁構成部１１の縦向の接合端面１０Ｅには、比較的（後述の連結部材の両端部分に比して）狭い開口部分および比較的（後述の連結部材の両端部分に比して）広い奥部分を有する略Ｔ字形の一様な横断面形状で縦長な連結部材挿通溝２４が、底面１０Ｂの近傍から上端面１０Ｔまで形成されており、２個のプレキャスト擁壁１０、１０の接合端面１０Ｅ、１０Ｅを相互に突き合わせると、両者の連結部材挿通溝２４、２４が、相互に対向して狭い開口部分を介して連通し、略Ｉ字形の横断面形状の縦長な連結部材挿通孔を形成するようになっている。
【００１１】
接合端面１０Ｅの連結部材挿通溝２４は、図２に示すように、鋼製、ＦＲＰ製等で比較的剛性が大きい溝形成部材２２を接合端面１０Ｅに埋設することによって形成されており、図３に示すように、溝形成部材２２は、比較的狭い開口部分２４ａおよび比較的広い奥部分２４ｂを有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝２４を内側に形成するように縦長の樋形に成形された溝形成部２３と、溝形成部２３から横向に突出するように溶接等により固着された複数の棒状のアンカー部２６、２６…とをもって構成されている。なお、溝形成部材２２のアンカー部２６、２６…を、プレキャスト擁壁１０の内部の補強用鉄筋１６、１６…と連結するようにしてもよい。
【００１２】
そして、図１、２に示すように、接合される２個のプレキャスト擁壁１０、１０に跨って、接合端面１０Ｅ、１０Ｅの連結部材挿通孔（対向した連結部材挿通溝２４、２４）内には、鋼製、ＦＲＰ製等で比較的剛性が大きく、比較的（前述の連結部材挿通溝の開口部分に比して）細い中央部分２９ａ（ウェブ）および比較的（前述の連結部材挿通溝の開口部分に比して）太い両端部分２９ｂ、２９ｂ（フランジ）を有する略Ｉ字形の一様な横断面形状で縦長な連結部材２９（Ｉ型鋼）が、太い両端部分２９ｂ、２９ｂを連結部材挿通孔の広い両端部分（連結部材挿通溝２４、２４の奥部分２４ｂ、２４ｂ）に配置し、細い中央部分２９ａを連結部材挿通孔の狭い中央部分（連結部材挿通溝２４、２４の開口部分２４ａ、２４ａ）に配置するように、プレキャスト擁壁１０、１０の上端面１０Ｔ側から挿通されている。
【００１３】
そして、プレキャスト擁壁１０、１０の連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４内面）と連結部材２９の外面との間には、ポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製等で比較的弾性が大きい緩衝材２８が、プレキャスト擁壁１０、１０の上端面１０Ｔ側から注入、充填されている。このように、連結部材挿通孔（連結部材挿通溝２４、２４）に連結部材２９を挿入した状態で、連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４内面）と連結部材２９外面との間に緩衝材２８を充填して介在させることにより、プレキャスト擁壁１０、１０同士が互いに対して柔軟に拘束し合う接合構造となっている。
【００１４】
このような接合構造のプレキャスト擁壁１０、１０…は、地震等による強大な外力が作用しても、接合されたプレキャスト擁壁１０、１０が連結部材２９、緩衝材２８を介して相互に柔軟に拘束し合うので、プレキャスト擁壁１０、１０の相互の離反を防止することができ、また、プレキャスト擁壁１０、１０の接合部分の破損を防止することができる。また、緩衝材２８はプレキャスト擁壁１０、１０間のシーリング材としても機能する。また、連結部材２９は、プレキャスト擁壁１０、１０の内部に配置されるので、鋼材等を使用しても、腐蝕等に対して高い耐久性を発揮する。
【００１５】
図３は本発明の第２実施形態であって、ＰＣａコンクリート部材がプレキャストボックスカルバート（以下、ＰＣａボックスカルバートという。）の場合を示している。なお、第１実施形態と同様の部分については、説明を省略し、同一符号を使用する。
【００１６】
ＰＣａボックスカルバート１１０は、略垂直な側壁構成部１１１、１１１、略水平な底版構成部１１２、頂版構成部１１３とからなる略四角筒形の縦断面形状に形成されており、複数のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０…が、その接合端面１１０Ｅ、１１０Ｅ…を相互に突き合わせて接合される形で横方向に連続して設置されることによって、コンクリート構造物である管路を形成するようになっている。
【００１７】
そして、各ＰＣａボックスカルバート１１０の両側の側壁構成部１１１、１１１の縦向の接合端面１１０Ｅには、略Ｔ字形の横断面形状で縦長な連結部材挿通溝２４、２４が、底面１１０Ｂの近傍から上外面１１０Ｔまで形成されており、２個のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の接合端面１１０Ｅ、１１０Ｅを相互に突き合わせると、両者の連結部材挿通溝２４、２４…が、相互に対向して狭い開口部分を介して連通し、略Ｉ字形の横断面形状の縦長な連結部材挿通孔を形成するようになっている。
【００１８】
そして、接合される２個のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０に跨って、接合端面１１０Ｅ、１１０Ｅの連結部材挿通孔（対向した連結部材挿通溝２４、２４…）内には、比較的剛性が大きく略Ｉ字形の横断面形状で縦長な連結部材２９、２９が挿通されており、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４…内面）と連結部材２９、２９の外面との間には、比較的弾性の大きい緩衝材２８が、ＰＣａボックスカルバートの上外面１１０Ｔ側から注入、充填されている。このように、連結部材挿通孔（連結部材挿通溝２４、２４…）に連結部材２９、２９を挿入した状態で、連結部材挿通孔内面（連結部材挿通溝２４、２４…内面）と連結部材２９、２９の外面との間に、緩衝材２８を充填して介在させることにより、ボックスカルバート１１０、１１０同士が、互いに対して柔軟に拘束しあう接合構造なっている。
【００１９】
このような接合構造のＰＣａボックスカルバート１１０、１１０…は、地震等による強大な外力が作用しても、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０が連結部材２９、２９、緩衝材２８を介して相互に柔軟に拘束し合うので、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の相互の離反を防止することができ、また、ＰＣａボックスカルバート１１０、１１０の接合部分の破損を防止することができる。
【００２０】
なお、上述の実施の形態では、連結部材の断面形状が略Ｉ字形の場合について述べたが、連結部材は、中央部分が比較的細く、両端部分が比較的太い断面形状であればよい。また、上述の実施の形態では、連結部材挿通孔、連結部材の断面形状が一様な場合について述べたが、連結部材挿通孔、連結部材をテーパー状にしてもよい。
【００２１】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係るＰＣａコンクリート部材の接合構造は、各プレキャストコンクリート部材の接合端面に、比較的狭い開口部分および比較的広い奥部分を有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝を、前記プレキャストコンクリート部材の底面の近傍から上端面まで、相互に対向するように設け、接合される前記プレキャストコンクリート部材に跨って、相互に対向した前記連結部材挿通溝内に、比較的細い中央部分および比較的太い両端部分を有する横断面形状で比較的剛性の大きい縦長の連結部材を、前記連結部材の両端部分を前記連結部材挿通溝の奥部分に配置し、前記連結部材の中央部分を前記連結部材挿通溝の開口部分に配置させて挿通するとともに、前記連結部材挿通溝内にポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製の柔軟性があり、かつシーリング材として機能する緩衝材を充填し、前記連結部材挿通溝内面と連結部材外面との間に前記緩衝材を介在させて、前記各プレキャストコンクリート部材を前記連結部材及び緩衝材を介して相互に柔軟に拘束させたことによって、地震等による強大な外力が作用した際に、ＰＣａコンクリート部材が相互に離反したり、ＰＣａコンクリート部材の接合部分が破損することを防止することができる。
【００２２】
なお、連結部材挿通溝を内側に形成する樋形の溝形成部と溝形成部から突出したアンカー部とからなる溝形成部材を、ＰＣａコンクリート部材の接合端面に埋設することによって、所定形状の連結部材挿通溝を接合端面に好適に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係るＰＣａコンクリート部材の接合構造の第１実施形態を示す斜視図である。
【図２】 図１中の接合端面部分の拡大横断面図である。
【図３】 図１中の連結部材挿通溝、連結部材の拡大分解斜視図である。
【図４】 本発明に係るＰＣａコンクリート部材の接合構造の第２実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
１０ プレキャスト擁壁（ＰＣａコンクリート部材）
１０Ｂ 底面
１０Ｅ 接合端面
１０Ｔ 上端面
１１ 壁構成部
１２ 底版構成部
１６ 補強用鉄筋
２２ 溝形成部材
２３ 溝形成部
２４ 連結部材挿通溝
２４ａ 開口部分
２４ｂ 奥部分
２６ アンカー部
２８ 緩衝材
２９ 連結部材
２９ａ 中央部分
２９ｂ 両端部分
１１０ ＰＣａボックスカルバート（ＰＣａコンクリート部材）
１１０Ｂ 底面
１１０Ｅ 接合端面
１１０Ｔ 上外面
１１１ 壁構成部
１１２ 底版構成部
１１３ 頂版構成部
Claims (2)
- コンクリート構造物を形成する複数のプレキャストコンクリート部材が接合端面を相互に突き合わせて接合されるプレキャストコンクリート部材の接合構造において、
前記各プレキャストコンクリート部材の接合端面に、比較的狭い開口部分および比較的広い奥部分を有する略Ｔ字形の横断面形状の連結部材挿通溝を、前記プレキャストコンクリート部材の底面の近傍から上端面まで、相互に対向するように設け、接合される前記プレキャストコンクリート部材に跨って、相互に対向した前記連結部材挿通溝内に、比較的細い中央部分および比較的太い両端部分を有する横断面形状で比較的剛性の大きい縦長の連結部材を、前記連結部材の両端部分を前記連結部材挿通溝の奥部分に配置し、前記連結部材の中央部分を前記連結部材挿通溝の開口部分に配置させて挿通するとともに、前記連結部材挿通溝内にポリウレタン系、シリコン系又は弾性エポキシ系樹脂製の柔軟性があり、かつシーリング材として機能する緩衝材を充填し、前記連結部材挿通溝内面と連結部材外面との間に前記緩衝材を介在させて、前記各プレキャストコンクリート部材を前記連結部材及び緩衝材を介して相互に柔軟に拘束させたことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合構造。 - 連結部材挿通溝を内側に形成する樋形の溝形成部と該溝形成部から突出したアンカー部とからなる溝形成部材を、プレキャストコンクリート部材の接合端面に埋設した請求項１に記載のプレキャストコンクリート部材の接合構造。
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