JP3940864B2 - アルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置に関し、詳しくは、半導体デバイス製造プロセスにおけるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)工程から排出されるアルカリ系シリカ研磨排水から水や場合によっては更に研磨液(研磨剤)を回収する場合に好適に用いられるアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスは、通常、絶縁層や配線層などをウェハ上に積層した多層構造を有している。このような半導体デバイスでは、ウェハやウェハ上に形成された各層の表面を平坦化することが要求されることが多い。例えば、多層配線層を有する半導体集積回路を形成する場合、多層配線間の層間絶縁層の表面を平坦化する必要がある。例えば、第1層の配線層形成後、その上部に絶縁層としてのシリコン酸化膜を形成すると第1層の配線層の存在のためにシリコン酸化膜表面に凹凸が生じ、このままフォトリソグラフィー及びドライエッチングにより第2層の配線層を形成すると、レジストパターニングにおいて凹凸部で露光焦点が合わなかったり、段差部にドライエッチング残りが生じたりするなどの不具合が生じる。
【0003】
そこで、半導体デバイスの製造工程においては、ウェハやウェハ上に形成された多層配線用層間絶縁膜や埋込配線用メタル膜等を平坦化するために、これらを研磨する研磨工程が行われている。
【0004】
近年の半導体デバイスの高集積度化に伴い、このような研磨工程において、更に精密な研磨が必要とされ、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)と称される方式が採用されている。具体的には、ケミカルメカニカルポリッシングとは、SiO2 (コロイダルシリカ)、CeO2 、Al2 O3 、MnO2 等の研磨剤粒子をアンモニウム塩やカリウム塩等の電解質の溶液、過酸化水素等の酸化剤、硝酸、弗酸、バッファード弗酸等の酸、水酸化カリウムや水酸化アンモニウム等の無機アルカリ剤、アルカノールアミン等の有機アミンや有機アルカリ等の有機分散剤等の薬剤を含む水中に分散させて得られる分散体を研磨液(スラリー)として用いて研磨するものであり、通常は、ポリウレタン等からなる研磨パッド上で研磨する。これらの中でも、アルカリ系シリカ研磨液(スラリー)は、主に半導体デバイスの製造工程で層間絶縁膜(SiO2 膜)の平坦化のために使用される。このアルカリ系シリカ研磨液は、コロイダルシリカとアルカリ剤を主成分とするものである。
【0005】
このような研磨工程において、研磨液、並びに、ウェハや半導体デバイスの各層材料及び研磨パッドから削り取られて生じる研磨屑を含む研磨排水が排出される。なお、研磨剤粒子そのものも破砕されて研磨屑となるものが生じる。この研磨屑は研磨剤粒子の研磨力を低下させる。また、研磨中に研磨剤粒子が乾燥してゲル化したり、凝集して粗大化することがある。このような研磨屑の中で、大粒径の研磨屑や凝集物は、半導体デバイスの各層の研磨面を傷つける原因になるし、また、研磨屑の蓄積により研磨力が低下するので、研磨排水は、再利用されずに排水処理されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、半導体デバイス製造工程において、近年の半導体デバイスの高集積度化に伴い精密研磨工程が増加しており、研磨液の使用量が飛躍的に増大し、それに伴い研磨排水の排出量も増大し、研磨排水の排水処理過程で固液分離されて生じる汚泥(スラッジ)量も増大している。この研磨排水の処分方法としては、(1)全量外部業者引取処分(産業廃棄物処理)する方法、(2)凝集沈澱処理し、濾過等の固液分離により得られる汚泥を外部業者引取処分(産業廃棄物処理)し、透過水(処理水)を中和して放流する方法、(3)限外濾過膜処理して、濃縮水を外部業者引取処分(産業廃棄物処理)し、透過水(処理水)を中和して放流する方法等がある。近年のCMP工程から排出される研磨排水量の激増に伴い、研磨排水の処分方法も(1)→(2)→(3)へと変化してきている。今後も益々研磨排水量が増加することが予想され、排水のリサイクルのニーズが生じて来ている。
【0007】
CMP工程で前述したアルカリ系シリカ研磨液から生じる研磨排水、即ち、アルカリ系シリカ研磨排水は、該研磨液が主として層間絶縁膜(SiO2 膜)の平坦化を行うものであるから、必然的に微細なシリカ粒子とアルカリを主成分とするものである。一方、このアルカリ系シリカ研磨排水は、半導体デバイスの製造工程から排出される排水であるという性格上、これらの成分以外の不純物は非常に少ない。アルカリ系シリカ研磨排水は、研磨液の原液と比べて、一般に、リンス水等によって数十から数百倍程度に希釈されて排出されるが、この排水に含有されるシリカ粒子量は依然として多く、何らかの処理が必要である。
【0008】
限外濾過膜(場合によっては精密濾過膜)によってアルカリ系シリカ研磨排水から効果的にシリカ粒子は分離排除できるが、透過水は依然として高アルカリ性で、また、溶存シリカが多量に含まれるため、回収水として利用されるに至っていない。
【0009】
凝集沈澱処理、濾過等の固液分離により得られる処理水も、多量の添加された凝集剤等の不純物を含むため、回収水として利用されるに至っていない。このようなことから、アルカリ系シリカ研磨排水量の増大は、処理コストの増大をもたらすだけでなく、水資源の有効活用という観点からも問題となってきている。
【0010】
上述の状況に鑑み、本発明は、アルカリ系シリカ研磨排水から回収水として再利用できる処理水を効率的に得ることができるアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、半導体デバイス製造プロセスにおけるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)工程から排出されるアルカリ系シリカ研磨排水を精密濾過膜又は限外濾過膜からなる分離膜を用いて膜分離処理してシリカ微粒子濃縮水と溶存シリカを高濃度に含んだ透過水とに分離する膜分離装置、及び、前記膜分離装置から得られる透過水を少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂と接触させて溶存シリカを除去した処理水を得るイオン交換処理装置を含むことを特徴とするアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置を提供するものである。本発明の装置において、上記分離膜としては、場合によっては精密濾過膜を用いることができるが、コロイダルシリカの除去率等の観点から孔径1nm〜100nmの限外濾過膜が好ましく、また、後述するように、特に、上記イオン交換処理装置が、少なくとも単床の強塩基性陰イオン交換樹脂を含むことが好ましい。また、上記分離膜は、有機膜であってもセラミック膜等の無機膜であっても良い。
【0012】
前述のように、アルカリ系シリカ研磨液(スラリー)は、コロイダルシリカ及び化学的エッチング剤と分散剤(図4のコロイダルシリカ−水系におけるpHの効果を示すグラフにおいて、アルカリ側に安定ゾル相があることから分散剤としてアルカリが機能することが分かる)としての両役割を果たすアルカリ剤を主成分とするもので、主に半導体デバイス製造プロセスで層間絶縁膜(SiO2 膜)の平坦化の目的で使用されている。この平坦化の機構は、層間絶縁膜(SiO2 膜)をアルカリで化学的にエッチングしながらシリカ微粒子で研磨するものである。従って、研磨屑として生じるシリカ微粒子は超微細であり、コロイド粒子のレベルとなる。また、アルカリ系シリカ研磨剤で、一部ウェハ等のベアシリコン(Si、bare silicon)を研磨することもあり、そのため研磨排水中にSiが含まれてくることもあるが、やはり化学的エッチングを伴う研磨であるので、コロイド状の超微細なSiであり、水と反応し、水素ガスの発生を伴い少なくともSi微粒子の表面部分はシリカ等に酸化されている。上記のことより明らかなように、アルカリ系シリカ研磨排水は、高濃度のシリカ微粒子が高pHの水溶液中に分散されている分散体である。
【0013】
一般に、アルカリ剤としては水酸化カリウム(KOH)、アンモニア、有機アミン等が使用され、研磨液のpHは9〜12(通常は、pH10前後)に調整されている。また、シリカ微粒子は、その粒度分布が数nm〜数百nm(平均粒径は、数百nm)と超微細であり、そのシリカ微粒子濃度が重量パーセントで数%〜十数%であるようなアルカリ系シリカ研磨液が使用されている。
【0014】
このため、新品研磨液における溶存シリカ濃度はほぼ飽和状態であり、pH10以上の場合は、溶存シリカ濃度は1000ppm以上にもなる(図5のシリカ溶解度とpHの関係を示すグラフ参照)。
【0015】
一方、CMP工程を経て排出される研磨排水は、研磨液に対して、通常、数十〜数百倍程度にリンス水等で希釈されたものである。従って、研磨装置から排出された直後の研磨排水の溶存シリカ濃度は低減されたものであるが、研磨排水は依然として高pH値を有し(例えば、pH10の研磨液を水で百倍希釈したとしてもpH値は8である)、かかる高pHの水中にシリカ微粒子が分散している形であるため、時間の経過と共に飽和溶存シリカ濃度に向かって徐々にシリカがシリカ微粒子表面から溶け出して溶存シリカとなるので、研磨排水の溶存シリカ濃度は上昇していく(図5のグラフ参照)。従って、アルカリ系シリカ研磨排水処理装置へ送る段階の被処理水としてのアルカリ系シリカ研磨排水中には、百ppm以上と高濃度の溶存シリカを含む場合が通常である。但し、溶存シリカ濃度は、希釈倍率、pH、経過時間等によって異なる。
【0016】
シリカはpHによって様々な挙動を示す。(i)pH8以上で劇的にシリカの溶解度が増す(図5のシリカ溶解度とpHの関係を示すグラフ参照)。(ii)溶存シリカは、中性では無電荷であるが、アルカリ性では負電荷を帯びる(図6の水中における溶存シリカの濃度分布参照。但し、図6において、zは電荷を表し、−1価〜−3価)。(iii) コロイダルシリカは、pH2以上で負の表面電荷を帯びる(図4のコロイダルシリカ−水系におけるpHの影響のグラフ参照)。
【0017】
本発明者等は、膜分離装置で処理して得られる透過水をイオン交換樹脂で処理すると、該樹脂内でpHの変化が起こり、シリカの除去効果が異なることを発見した。但し、実質的なシリカの除去効果を有するのは陰イオン交換樹脂である。次に、上記透過水をイオン交換樹脂で処理する例を示すが、ここで、簡略化のためにAER=強塩基性陰イオン交換樹脂の単床、CER=陽イオン交換樹脂の単床、MB=強塩基性陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂からなる混床を表す。
▲1▼ 透過水→AER→CER→処理水
▲2▼ 透過水→AER→MB→処理水
▲3▼ 透過水→CER→AER→処理水
▲4▼ 透過水→MB→AER→処理水
▲5▼ 透過水→MB→処理水
【0018】
上記の各例において透過水を処理した場合のAER層中でのpH変化は次の通りである。
▲1▼と▲2▼のケースでは、AER層中で常にアルカリ性
▲3▼のケースでは、AER層の入口で酸性〜AER層の出口で中性
▲4▼のケースでは、AER層の入口で中性〜AER層の出口でも中性
▲5▼のケースでは、MB層の入口でアルカリ性〜MB層の出口で中性
【0019】
▲3▼のケースでAER層の入口で酸性なのは、CERで処理されてアルカリが透過水から除去されており、且つ、シリカが弱酸であるためである。これに対し、▲4▼のケースでAER層の入口で中性なのは、MBで処理されて、その陽イオン交換樹脂でアルカリが透過水から除去されると共に弱酸であるシリカもその強塩基性陰イオン交換樹脂でほぼ除去されているからである。
【0020】
アルカリ側で高濃度になった溶存シリカは、pHが中性〜酸性に傾くと、シリカの溶解度が激減し、飽和を越えた時点で溶けきれなくなったシリカの重合が始まり、コロイダルシリカへと変化する。
【0021】
陰イオン交換樹脂でコロイダルシリカも除去できるが、その吸着能力は溶存シリカに対する吸着能力よりも小さい。これは、コロイドはサイズが大きく、表面電荷密度が低いためと考えられる。
【0022】
pHが中性〜酸性に傾くと、電気的に中性の溶存シリカの割合が増すが、シリカは弱酸であるため、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いてこれを吸着除去することができる。コロイダルシリカは、pH2付近で表面電荷ゼロとなるが(図4参照)、陰イオン交換樹脂による処理後も処理水のpHが2以下になることは無く(シリカは弱酸で、他の強酸成分は含まれていないから)、従って、コロイダルシリカの表面電荷は常に負電荷を持つ。また、コロイダルシリカの表面はシラノール基で覆われているが、シラノール基は弱酸性の官能基であるため、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて、コロイダルシリカを吸着除去することができる。
【0023】
即ち、本発明では陰イオン交換樹脂として少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる。少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂の単床を用いれば、上記透過水中のシリカを効果的に除去することができる。
【0024】
一方、イオン交換樹脂を陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混床として用いた場合は、吸着帯(混床イオン交換樹脂層の吸着反応が起こっている帯域)の下流側先端は常にほぼ中性であるため、下記の理由により上記透過水中のシリカ除去効果が弱くなると思われる。
(a)シリカの溶解度は中性付近で最も低く、コロイダルシリカの生成量が相対的に増す(図5参照)。
(b)中性付近では、シリカ微粒子(コロイダルシリカ)の会合が急速に起こる条件下であるため(図4参照)、相対的にコロイダルシリカの粒子径が大きくなる(即ち、重くなる)。
(c)混床イオン交換樹脂層内は、固体の酸及び塩基の中和状態であるため、アルカリ度が見掛け上低くなる。
【0025】
CMPは、半導体デバイスの製造に用いられるので、CMP工程から排出される研磨排水を精密濾過膜又は限外濾過膜により膜分離して得られる透過水中には溶存シリカとアルカリ以外の不純物は極めて少なく、CaやMg等の硬度成分は元々含まれていないので、透過水を直接的に陰イオン交換樹脂で処理しても、硬度成分が析出して問題を生じることは無い。
【0026】
シリカは弱酸性なので、前述のように、陰イオン交換樹脂としては少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる。また、必要に応じて陽イオン交換樹脂を用いるとしても、研磨液中のアルカリ剤が水酸化カリウム(KOH)の場合は、これが強塩基なので、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂のいずれを使用しても問題無いが、アルカリ剤がアンモニアや有機アミン等の弱塩基である場合は、強酸性陽イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。
【0027】
アルカリ系シリカ研磨排水を限外濾過膜処理装置等の膜分離装置で処理することで、シリカ微粒子濃縮水と溶存シリカを高濃度に含んだ透過水(コロイダルシリカは殆ど含まない)とに分離される。
【0028】
陰イオン交換樹脂を上流に配設する場合は、イオン状シリカがコロイダルシリカに変化することはないが、限外濾過膜処理装置等の膜分離装置から得られる透過水のアルカリ濃度が高い(高pH)と、アルカリが陰イオン交換樹脂の再生剤として作用してしまうため、シリカのコンスタントリーク(定常的な漏れ)が生じてしまう。このような場合は、下流に強塩基性陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混床を配設すれば、リークした溶存シリカを捕捉しながらアルカリも除去できるので、効果的である。
【0029】
また、陽イオン交換樹脂の後に陰イオン交換樹脂を配設すると、前もって透過水からアルカリを除去する点では有利であるが、陽イオン交換樹脂通過中にコロイダルシリカが生成する点では不利である。
【0030】
また、混床の後に陰イオン交換樹脂を配設すると、混床でシリカの大部分とアルカリを除去できる点では有利であるが、生成するコロイダルシリカの量が陽イオン交換樹脂による処理に比べて多くなり、且つ、コロイダルシリカのサイズが大きくなり易いといった点では不利である。
【0031】
このように陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とを併用する場合において、上述したイオン交換システムのいずれを選択するかは、アルカリ系シリカ研磨排水の性状、処理コスト、処理水の仕様の望ましい水質基準等に応じて決めればよい。しかし、本発明はこれらのシステムに限定されるものでは無く、少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を含む限りにおいて他のシステムを採用しても差し支えない。また、各イオン交換樹脂層は積層構造として1カラム又は塔に充填し、イオン交換処理装置を構成してもよく、複数の別個のカラム又は塔にそれぞれ充填してイオン交換処理装置を構成するようにしてもよい。
【0032】
また、膜分離装置から得られる透過水中のシリカ濃度が低い場合や、処理水の仕様の水質基準が低い場合、例えば、CMP後の水研磨(研磨液を用いず、水だけを用いて、ウレタン等からなる研磨パッドによる研磨)や洗浄水等の用水であって、シリカが若干含まれていてもよい場合や、雑用水等として用いる場合は、混床のみのイオン交換処理装置でも問題無い。また、更に後段に逆浸透膜装置を配置し、逆浸透膜処理すれば、少量の残留コロイダルシリカを除去することができるので、混床のみのイオン交換処理装置でも高水質の処理水を得ることができ、通常は問題無い。しかし、シリカ濃度が高い場合は、逆浸透膜上でシリカが濃縮されて、逆浸透膜を閉塞させるといった問題が生じる(即ち、高濃度シリカ含有水の逆浸透膜処理は困難を伴う)。このような場合は、シリカ濃度を低減させることができるようなイオン交換システムを採用するのが好ましい。
【0033】
少なくとも膜分離装置とイオン交換処理装置を経て回収される処理水は、上述したいずれのシステムによる場合も原水に戻す(即ち、市水や工業用水と混合する)ことができる。また、少なくとも単床の強塩基性陰イオン交換樹脂を含むイオン交換処理装置で処理を行うことによりシリカを充分に除去できるので、この場合は、アルカリ系シリカ研磨用一次純水あるいは他の超純水製造用一次純水として回収することも可能である。
【0034】
また、回収される処理水を研磨装置に返送して水研磨用水や洗浄水とする場合は、シリカ濃度は余り問題にならないので、メインラインの一次純水を補給水として混合し、ローカルリサイクルを行っても良い。
【0035】
なお、陰イオン交換樹脂や陽イオン交換樹脂としては、処理効率の点で繊維状や粒状等のスチレン系やアクリル系等のイオン交換樹脂が好ましい。陰イオン交換樹脂は水酸化物イオン形(OH形)を用い、陽イオン交換樹脂は水素イオン形(H形)を用いるのが好ましいことは言うまでも無い。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
【0037】
先ず、本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置の基本的なフロー図を図1に示す。研磨装置は、ウェハや半導体デバイスの中間製品等の被研磨物の研磨工程を実行する装置であり、単独の研磨工程のための装置でも、複数の研磨工程のための装置であってもよい。この研磨装置は、ポリウレタン等からなる研磨パッドを張り付けた回転基盤とこの上方に被研磨物を保持する基板保持ヘッドを有している。そして、研磨液を研磨パッド上に滴下し、研磨パッドに研磨液を染み込ませた状態で、基板保持ヘッドに固定したウェハや層間絶縁膜層が形成された半導体デバイスの中間製品等の被研磨物を回転させながら研磨パッドに押し当てる。これによって、研磨剤粒子としてのコロイダルシリカによる機械的研磨作用とアルカリの化学的エッチング作用を併せて利用することにより、ウェハや半導体デバイスの中間製品等の被研磨物の精密な研磨が達成される。なお、研磨前後や研磨中においては、適宜(超)純水等を用いた洗浄が行われると共に、研磨液による研磨の後に(超)純水による水研磨も行う。
【0038】
研磨装置から排出される研磨排水は、一旦研磨排水槽に貯留され、次いで研磨排水槽から図示されていないポンプにより限外濾過膜等の分離膜を備えた膜分離装置にアルカリ系シリカ研磨排水を送水し、ここでコロイダルシリカを含む濃縮水と溶存シリカやアルカリ等の不純物を含む透過水とに分離する。この透過水を少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂を充填したイオン交換処理装置に送水する。ここで溶存シリカを始めとする不純物を除去し、得られる処理水を回収する。なお、図示されていないが、膜分離装置の前に、粗大な固形不純物を除去するためのプレフィルター(孔径25μm以下の保安フィルター)を設置するのが好ましい。
【0039】
このイオン交換処理装置において、好ましいシステム(フロー)は下記の通りである。
(1)強塩基性陰イオン交換樹脂→陽イオン交換樹脂
(2)強塩基性陰イオン交換樹脂→混床(強塩基性陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂)
(3)陽イオン交換樹脂→強塩基性陰イオン交換樹脂
(4)混床→強塩基性陰イオン交換樹脂
前述したように、これらの各イオン交換樹脂層は複数の別個のカラムや塔に充填し、イオン交換処理装置として構成してもよいが、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とを積層した形で1個のカラムや塔に充填してイオン交換処理装置として構成してもよい。これら以外にも、例えば、上記(1)〜(4)のシステムの任意の場所に、必要に応じて混床、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を更に加えて配置してもよい。目的によっては、陽イオン交換樹脂のみでも良い場合もあるが、本発明では溶存シリカを除去するために少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を含めたものである。また、強塩基性陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混床のみでもよい場合もあるが、溶存シリカを効果的に除去し、高純度の処理水を得るためには、上記(1)〜(4)のシステムのように、単床の強塩基性陰イオン交換樹脂を含めるのが好ましいことは前述の通りである。
【0040】
一方、膜分離装置から得られる濃縮水は、業者引取処分するか、研磨液として回収する。研磨液として回収する場合は、例えば、特開平8−115892号公報に開示されるシステムのように、膜分離装置を第1段の精密濾過膜処理装置と第2段の限外濾過膜処理装置で構成し、研磨排水を先ず精密濾過膜処理装置で精密濾過し、粗大不純物を濃縮水側に濃縮して除去し(濃縮水は、排水として処理される)、その透過水を限外濾過膜処理装置で限外濾過して、その濃縮水をコロイダルシリカを含む研磨液として回収すると共にその透過水をイオン交換処理装置に送水するように本発明の装置を構成してもよいし、また、本出願人が特願平9−197609号において提案した装置(システム)のように、膜分離装置を限外濾過膜処理装置で構成し、その透過水はイオン交換処理装置に送水し、一方、限外濾過膜処理装置から生じる所定径以上の粒子が濃縮された濃縮水を精密濾過処理する精密濾過膜処理装置を設置し、これで上記濃縮水を処理し、研磨剤として不適当な粗大粒子を精密濾過膜の濃縮水側に除去して(濃縮水は、排水として処理される)、その透過水を研磨液として回収するように構成してもよい。
【0041】
次に、図1の装置に加えて超純水製造用の二次純水製造サブシステムを組み込み、図1の装置から回収される処理水を循環使用できる様に構成された本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置について、図2を参照しつつ説明する。
【0042】
図1の装置の場合と同様に、研磨装置から排出される研磨排水は一旦研磨排水槽に貯留された後、限外濾過膜処理装置等の膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離され、透過水はイオン交換処理装置に通水され、得られる処理水はラインL1を経由して原水槽に送水され、ここで、工業用水や市水と合流するか、または、処理水純度が一次純水のレベルの時にはラインL2を経由して一次純水槽に送水される。原水槽中の水は一次純水製造装置に送水され、得られる一次純水は一次純水槽に一旦貯留される。この一次純水槽から一次純水は二次純水製造サブシステムに送水され、ここで、超純水にまで精製され、ユースポイント(P.O.U.)で各種用途に使用される。少なくとも一部の超純水は、ラインL3を経由して研磨装置に送水され、洗浄水や水研磨用水として用いられる。余分の超純水はラインL4を経由して一次純水槽へと返送、循環される。
【0043】
次に、図1の装置に加えて研磨用(超)純水製造用の研磨用二次純水製造サブシステムを組み込み、図1の装置から回収される処理水をローカルリサイクル使用できる様に構成された本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置について、図3を参照しつつ説明する。
【0044】
図1の装置の場合と同様に、研磨装置から排出される研磨排水は一旦研磨排水槽に貯留された後、限外濾過膜処理装置等の膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離され、透過水はイオン交換処理装置に通水され、得られる処理水は研磨用の一次純水として処理水槽に送水され、ここで、図3の右側のメインの超純水製造装置の一次純水槽からラインL5を経由して送水される補給水と合流する。処理水槽中の水は研磨用二次純水製造サブシステムに送水され、ここで、研磨用(超)純水にまで精製され、研磨装置に送水され、洗浄水や水研磨用水として用いられる。上記のメインの超純水製造装置については、図2について説明したことと大差無いので、その説明を省略する。
【0045】
二次純水製造サブシステムとしては、得られる超純水の用途に応じて各種のシステムを用いることができるが、その一具体例として、「熱交換器→紫外線酸化装置→カートリッジポリッシャー→限外濾過膜処理装置」を挙げることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものでは無い。
【0047】
実施例1
半導体デバイス研磨工程から排出されたアルカリ系シリカ研磨排水をサンプリングし、旭化成工業(株)製の限外濾過膜モジュール「ACP−1050」を備えた限外濾過膜処理装置で処理し、濃縮水と透過水を得た。透過水の水質は、pHが9.7、電気伝導率が120μS/cm、イオン状シリカ濃度が162ppm、全シリカ濃度が162ppmであった。なお、イオン状シリカ濃度はモリブデン黄色吸光光度法(JIS K0101)により測定し、全シリカ濃度は透過水サンプルにアルカリを加え、加熱してコロイダルシリカをイオン状シリカに転化した後、同様にモリブデン黄色吸光光度法により測定した。
【0048】
次に、この透過水をイオン交換処理装置に空間速度SV=10で通水し、処理水を得た。イオン交換処理装置として、下記の5装置を構成し、それぞれについて処理水を得た。
1.陰イオン交換樹脂充填カラム→陽イオン交換樹脂充填カラム
2.陰イオン交換樹脂充填カラム→混床充填カラム
3.陽イオン交換樹脂充填カラム→陰イオン交換樹脂充填カラム
4.混床充填カラム→陰イオン交換樹脂充填カラム
5.混床充填カラム
【0049】
陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA−402BL(OH形、ローム・アンド・ハース社製)を用い、陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR−124(H形、ローム・アンド・ハース社製)を用いた。混床は、上記の陰イオン交換樹脂と上記の陽イオン交換樹脂を陰イオン交換樹脂/陽イオン交換樹脂容量比=2/1で混合し、カラムに充填して用いた。各処理水の水質データを表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から、全ての処理水がイオン状シリカ濃度及び全シリカ濃度ともに低いこと、単床の強塩基性陰イオン交換樹脂充填カラムがイオン交換処理装置に含まれている方が混床のみよりも全シリカ濃度において良好な結果が得られることが分かる。
【0052】
【発明の効果】
本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置は、精密濾過膜又は限外濾過膜からなる膜分離装置の後段に少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を含むイオン交換処理装置を配設しており、膜分離装置から得られる透過水中の溶存シリカ及びそれから生成するコロイダルシリカを強塩基性陰イオン交換樹脂により簡単且つ効果的に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置の基本的なフロー図である。
【図2】図2は、図1の装置に加えて超純水製造用の二次純水製造サブシステムを組み込み、図1の装置から回収される処理水を循環使用できる様に構成された本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置の一例を示すフロー図である。
【図3】図3は、図1の装置に加えて研磨用(超)純水製造用の研磨用二次純水製造サブシステムを組み込み、図1の装置から回収される処理水をローカルリサイクル使用できる様に構成された本発明のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置の他の一例を示すフロー図である。
【図4】図4は、コロイダルシリカ−水系におけるpHの効果を示すグラフ図である。
【図5】図5は、シリカ溶解度とpHの関係を示すグラフ図である。
【図6】図6は、水中における溶存シリカの濃度分布及びその化学種(電荷)分布を示すグラフ図である。
Claims (9)
- 半導体デバイス製造プロセスにおけるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)工程から排出されるアルカリ系シリカ研磨排水を精密濾過膜又は限外濾過膜からなる分離膜を用いて膜分離処理してシリカ微粒子濃縮水と溶存シリカを高濃度に含んだ透過水とに分離する膜分離装置、及び、前記膜分離装置から得られる透過水を少なくとも強塩基性陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂と接触させて溶存シリカを除去した処理水を得るイオン交換処理装置を含むことを特徴とするアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 前記イオン交換処理装置が、少なくとも単床の強塩基性陰イオン交換樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 前記イオン交換処理装置が、陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合した混合イオン交換樹脂(混床)からなることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 前記イオン交換処理装置が、上流側に陽イオン交換樹脂及び/又は陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合した混合イオン交換樹脂(混床)を配設し、下流側に強塩基性陰イオン交換樹脂を配設していることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 前記イオン交換処理装置が、上流側に強塩基性陰イオン交換樹脂を配設し、下流側に陽イオン交換樹脂及び/又は陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合した混合イオン交換樹脂(混床)を配設していることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 前記分離膜の孔径が、1nm〜100nmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 前記イオン交換処理装置の後段に処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜処理装置を更に含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 回収される処理水を一旦貯留する一次純水槽、及び、一次純水を処理して超純水又は研磨用(超)純水を製造するための二次純水製造サブシステムを更に含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
- 回収される処理水をローカルリサイクル使用する為に、回収される処理水を一旦貯留し且つメインの超純水製造装置の一次純水槽から補給水を送水される処理水槽、及び、処理水槽中の水を送水されて研磨用(超)純水にまで精製する研磨用二次純水製造サブシステムを更に含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のアルカリ系シリカ研磨排水の回収処理装置。
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