JP3938042B2 - 小型モータ用ブラケット一体マウント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、OA機器等に内蔵されているステッピングモータやDCモータ等の小型モータ用の防振部材として用いられるモータ用マウントと、モータ用ブラケットとを一体化してなる、小型モータ用ブラケット一体マウントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
OA機器の多様化に伴い、フィードバック制御が不用で、低速・高トルク、始動・停止の信頼性が高いステッピングモータが、OA機器における光学系機構や用紙の自動処理機構に使用されるようになり、需要が伸びてきている。それに伴い、モータの構造上発生する振動を制御するためのモータマウントの需要も増加している。このようなモータマウントとしては、従来より、2枚の金属板の間にゴム材を挟み、金属板とゴム材とを接着剤で貼着してなる、金属板/接着剤/ゴム層/接着剤/金属板の積層構造を有するモータマウントが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、このような構成のモータマウントを、ステッピングモータに取り付けて使用する場合、ステッピングモータ用金属製ブラケットと、モータマウントとの界面に接着剤を塗布するか、もしくは両者をネジ等で連結することにより、ステッピングモータ用金属製ブラケットに、モータマウントを取り付けていた。しかし、このような取付方法では、部品点数や取付工数が多くなるという難点があった。そこで、モータマウントの上下2枚の金属板のうち一方の金属板を省略し、単一の金属板に接着剤を介してゴム層を接着してなるモータマウントを用いた取付方法が提案されている。すなわち、モータマウントのゴム層を、ステッピングモータ用金属製ブラケットに、接着剤を介して接着して一体化してなるステッピングモータ用ブラケット一体マウントが提案されている。このように、モータマウントと、ステッピングモータ用ブラケットを一体化した場合には、モーターマウントの上下2枚の金属板のうち、一方の金属板を省略することができるため、部品点数および取付工数が少なくなるという利点がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−14349号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ステッピングモータ用金属製ブラケットは、特殊複雑な形状であるため、接着剤の塗布工程が複雑となり、ステッピングモータ用金属製ブラケットへのモータマウントの取付作業性が悪いという難点がある。また、接着剤やゴム層の導電率を上げようとすると、電食による金属腐食が促進されるため、ステッピングモータ用金属製ブラケットと、モータマウントとの間の接着剥離や、モータマウントにおける金属板とゴム層との界面剥離が生じる等の難点もある。一方、非導電性の接着剤やゴムを用いる場合は、ステッピングモータの帯電防止のための別部品が必要となり、部品点数が多くなる等の難点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、層間接着性および導電性の双方の特性に優れ、軽量かつ安価な小型モータ用ブラケット一体マウントの提供をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の小型モータ用マウントは、単一のポリアミド樹脂製導電基板に、導電ゴム層を接着してなるマウントと、小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットとを備え、上記導電ゴム層が、下記の(A)〜(F)を必須成分とするゴム組成物からなり、上記ポリアミド樹脂製導電基板と加硫によって化学的接着しているとともに、上記小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットと加硫によって化学的接着していて、上記ポリアミド樹脂製導電基板と、導電ゴム層と、小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットとが一体化されているという構成をとる。
(A)エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムおよび水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのゴム。
(B)加硫剤。
(C)レゾルシノール系化合物。
(D)メラミン系樹脂。
(E)液状エポキシ系化合物。
(F)導電性カーボンブラック。
【0008】
本発明者らは、層間接着性および導電性の双方の特性に優れ、軽量かつ安価な小型モータ用ブラケット一体マウントを得るべく、鋭意研究を重ねた。すなわち、まず、モータマウントの構成について検討した結果、単一のポリアミド樹脂製導電基板に、特定のゴム組成物を加硫して導電ゴム層を直接接着してなるモータマウントを用いると、好結果が得られることを突き止めた。また、小型モータ用ブラケットについても検討を重ねた結果、従来の金属製ブラケットに代えて、ポリアミド樹脂製導電ブラケットを用いると、好結果が得らることを突き止めた。すなわち、ポリアミド樹脂製導電基板およびポリアミド樹脂製導電ブラケットの間に、導電ゴム層を介装させ、この状態で加硫すると、導電ゴム層が、ポリアミド樹脂製導電基板およびポリアミド樹脂製導電ブラケットと、加硫によって化学的接着するようになり、ポリアミド樹脂製導電基板と、導電ゴム層との層間接着性、および導電ゴム層と、ポリアミド樹脂製導電ブラケットとの層間接着性に優れた、小型モータ用ブラケット一体マウントが得られることを突き止め、本発明に到達した。このように、導電ゴム層と、ポリアミド樹脂製導電基板およびポリアミド樹脂製導電ブラケットとの層間接着性が優れる理由は、以下のように推察される。すなわち、導電ゴム層の加熱過程において、メラミン系樹脂の分解によってホルムアルデヒドが生じ、このホルムアルデヒドが、レゾルシノール系化合物に供与される。その結果、レゾルシノール系化合物の芳香環と、ポリアミド樹脂のアミド結合とが、架橋(共有結合)によって化学的接着されるようになり、層間接着性が向上するものと思われる。
【0009】
また、ゴム層に導電性カーボンブラックを含有させ導電性をもたすことにより、成形加工時にゴム焼けが懸念されるが、液状エポキシ系化合物の使用により、ゴム組成物の成形加工性の向上効果が得られるようになり、そして、小型モータの帯電による誤動作等も緩和されるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0011】
本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントは、例えば、図1に示すように、単一のポリアミド樹脂製導電基板1に、導電ゴム層2を直接接着してなるマウント3と、ポリアミド樹脂製導電ブラケット4とを備え、上記マウント3の導電ゴム層2を介して、マウント3と、ポリアミド樹脂製導電ブラケット4とを直接接着して一体化してなるものである。図において、5は、回転子内蔵の固定子5a,後端側ブラケット5b,回転子軸5cを備えたステッピングモータ、6はモータ取付用ブラケットである。7はネジであり、マウント3のポリアミド樹脂製導電基板1をモータ取付用ブラケット6にネジ止めする。矢印は組立方向を示している。
【0012】
この実施の形態のマウントは、前記の作用効果を奏し、かつ、ステッピングモータのポリアミド樹脂製導電ブラケット4に、導電ゴム層2を直接接着していて、ポリアミド樹脂製導電基板1が1個となっており、部品点数の低減がなされている。
【0013】
上記導電ゴム層2は、特定のゴム(A成分)と、加硫剤(B成分)と、レゾルシノール系化合物(C成分)と、メラミン系樹脂(D成分)と、液状エポキシ系化合物(E成分)と、導電性カーボンブラック(F成分)とを主成分とするゴム組成物からなり、前記単一のポリアミド樹脂製導電基板1の表面に、加硫することにより接着されている。ここで、主成分とするとは、ゴム組成物全体が主成分のみからなる場合も含める趣旨である。
【0014】
上記特定のゴム(A成分)としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)および水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)からなる群から選ばれた一つまたは複数が用いられる。これらのなかでも、防振特性の観点からは、EPDMが好適に用いられる。
【0015】
上記特定のゴム(A成分)とともに用いられる加硫剤(B成分)としては、好適には過酸化物加硫剤があげられる。その具体例としては、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n−ブチル−4,4′−ジ−t−ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,3ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソ−プロピル)ベンゼン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、ジクミルパーオキサイドが好適に用いられる。
【0016】
この加硫剤(B成分)の配合割合は、特定のゴム(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.5〜10部の範囲内が好ましい。すなわち、B成分が0.5部未満であると、架橋密度が低いため圧縮永久歪みが大きくなり、また接着性も低く、逆にB成分が10部を超えると、架橋密度が高くなりすぎ、耐久性も低下する傾向がみられるからである。
【0017】
A成分およびB成分とともに用いられるレゾルシノール系化合物(C成分)としては、特に限定はなく、例えば、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性が優れる点で、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が好適に用いられる。
【0018】
上記変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、下記の一般式(1)〜(3)で表されるものがあげられる。これらのなかでも、一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
このレゾルシノール系化合物(C成分)の配合割合は、特定のゴム(A成分)100部に対して、0.1〜10部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜5部の範囲内である。すなわち、C成分が0.1部未満であると、ポリアミド樹脂との接着性に劣り、逆にC成分が10部を超えると、ゴムの物性が低下するおそれがあるからである。
【0023】
A〜C成分とともに用いられるメラミン系樹脂(D成分)としては、特に限定はなく、例えば、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性が優れる点で、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物が好適に用いられる。これらは、加硫工程において、主に架橋助剤として作用し、加熱下で分解されてホルムアルデヒドを生じ、これが層間接着性の向上に寄与するようになる。
【0024】
このホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物としては、例えば、下記の一般式(4)で表されるものが好適に用いられる。
【0025】
【化4】
【0026】
このようなメラミン系樹脂(D成分)のなかでも、一般式(4)中におけるnの数が異なる化合物同士の混合物が好ましい。特に、n=1の化合物の割合が43〜44重量%、n=2の化合物の割合が27〜30重量%、n=3の化合物の割合が26〜30重量%の混合物が好適に用いられる。
【0027】
また、レゾルシノール系化合物(C成分)と、メラミン系樹脂(D成分)との配合比は、重量比で、C成分/D成分=1/0.5〜1/2の範囲内が好ましく、特に好ましくはC成分/D成分=1/0.77〜1/1.5の範囲内である。すなわち、D成分の重量比が0.5未満であると、ゴムの引張強さや伸びが若干悪くなる傾向がみられ、逆にD成分の重量比が2を超えると、接着性が飽和し接着力が安定するため、それ以上D成分の重量比を高くしても、コストアップにつながるのみで、それ以上の効果は期待できないからである。
【0028】
A〜D成分とともに用いられる液状エポキシ系化合物(E成分)としては、特に限定はなく、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合体、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、脂肪族ジグリシジルエーテル、多官能グリシジルエーテル、3級脂肪酸モノグリシジルエーテル、エポキシアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ブチルグリシジルエーテルアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルポリアクリレート、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、フタル酸ジグリシジルエステル、スピログリコールジグリシジルエーテル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。具体的には、ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828が好適に用いられる。
【0029】
この液状エポキシ系化合物(E成分)の配合割合は、特定のゴム(A成分)100部に対して、1〜10部の範囲内が好ましく、特に好ましくは3〜6部の範囲内である。すなわち、E成分が1部未満であると、層間接着性や成形性が悪くなる傾向がみられ、逆にE成分が10部を超えると、ゴム硬度が上がり、防振特性が悪化するからである。
【0030】
A〜E成分とともに用いられる導電性カーボンブラック(F成分)としては、具体的には、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)、ケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル社製)があげられる。
【0031】
この導電性カーボンブラック(F成分)の配合割合は、特定のゴム(A成分)100部に対して40部以上が好ましく、特に好ましくは40〜120部の範囲内である。すなわち、F成分が40部未満であると、小型モータの帯電防止効果が低下する傾向がみられるからである。
【0032】
なお、導電ゴム層2の形成には、上記各成分に加えて、汎用カーボンブラック、プロセスオイル、老化防止剤、加工助剤、架橋促進剤、白色充填剤、反応性モノマー、発泡剤等を、必要に応じて用いることも可能である。
【0033】
上記導電ゴム層2用のゴム組成物は、A〜F成分および必要に応じてその他の成分を用いて、常法により調製することができる。すなわち、加硫剤(B成分)およびメラミン系樹脂(D成分)を除く、各成分を配合し、これらをバンバリーミキサーを用いて、所定の条件(通常、80〜140℃で数分間、好ましくは120℃で5分間)で混練する。ついで、加硫剤(B成分)と、メラミン系樹脂(D成分)とを追加混合し、オープンロール等のロール類を用いて、所定の条件(通常、40〜70℃で5〜30分間、好ましくは50℃で10分間)で混練して、導電ゴム層2用のゴム組成物を調製する。つぎに、これを分出し、シート状またはリボン状に成形させたゴム組成物を得ることができる。
【0034】
つぎに、マウント3のポリアミド樹脂製導電基板1、およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4を構成するポリアミドは、アミド結合を繰り返し単位にもつ高分子化合物であれば特に限定はなく、例えば、重合形式により、以下のものがあげられる。
【0035】
(1)ジアミンと二塩基酸との重縮合によるもの、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミンのような脂肪族、脂環族または芳香族のジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸のような脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸とから製造されるポリアミド。
【0036】
(2)アミノカルボン酸の重縮合によるもの、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のようなアミノカルボン酸から製造される結晶性または非結晶性のポリアミド。
【0037】
(3)ラクタムの開環重合によるもの、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタムのようなラクタムから製造されるポリアミド。
【0038】
ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の形成材料としては、上記ポリアミドの他、共重合ポリアミド、ポリアミドの混合物、あるいはこれらポリアミドと他の樹脂とのポリマーブレンド等が使用できる。上記ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体、芳香族ナイロン、非晶質ナイロン等があげられる。これらのなかでも、剛性および耐熱性が特に良好な点で、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロンが好ましい。
【0039】
本発明に用いるポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4は、例えば、ポリアミドに所定量のカーボンファイバー(炭素繊維)を配合し、これを金型等を用いて所定形状に成形することにより得ることができる。このように、カーボンファイバーで補強されたポリアミド樹脂を用いると、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の剛性を上げることができるとともに、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の導電率を良好な範囲に保持することができるようになる。また、ガラス繊維と、カーボンブラック等の導電剤とを組み合わせたものでもよい。
【0040】
本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、先に述べたようにして作製した、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4をそれぞれ準備する。つぎに、A〜F成分および必要に応じて他の成分を配合してなる特殊な導電ゴム層2用のゴム組成物を、上記ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の間に介装させ、この状態で、加熱加硫(例えば、150〜180℃の温度で3〜30分程度)して架橋させる。これにより、前記図1に示したような、導電ゴム層2と、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4とが、加硫によって化学的接着し、ポリアミド樹脂製導電基板1と、導電ゴム層2と、ポリアミド樹脂製導電ブラケット4とが一体化されている、本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントを作製することができる。
【0041】
なお、上記導電ゴム層2用材料は、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の間に介装させる際に、予め予備成形を行ってもよい。また、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の表面は、アルカリ洗浄液により洗浄処理するか、あるいはアルカリ洗浄液と研磨材とを用いてポリアミド樹脂表面をウェットブラスト処理しても差し支えない。
【0042】
本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントにおいては、ポリアミド樹脂製導電基板1と導電ゴム層2との接着、および導電ゴム層2とポリアミド樹脂製導電ブラケット4との接着は、加硫による化学的接着でなされているが、場合によっては、補助的に接着剤を用いても差し支えない。
【0043】
本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントにおいて、ポリアミド樹脂製導電基板1の厚みは、通常、1〜5mmで、好ましくは1.5〜3mmである。また、導電ゴム層2の厚みは、通常、0.5〜10mmで、好ましくは1.5〜4mmである。
【0044】
また、導電ゴム層2の体積固有抵抗は、107 Ω・cm以下が好ましく、特に好ましくは106 Ω・cm以下である。すなわち、導電ゴム層2の体積固有抵抗が107 Ω・cmを超えると、モータからの発熱等の環境の変化により、帯電防止性能が損なわれるおそれがあるからである。なお、導電ゴム層2の体積固有抵抗は、ASTM D257に準じて測定することできる。
【0045】
また、ポリアミド樹脂製導電基板1およびポリアミド樹脂製導電ブラケット4の体積固有抵抗は、108 Ω・cm以下が好ましく、特に好ましくは106 Ω・cm以下である。すなわち、体積固有抵抗が108 Ω・cmを超えると、導電性が安定しないため、湿熱等の環境の変化により、帯電防止効果を失うおそれがあるからである。
【0046】
なお、本発明においては、小型モータ用ブラケットをポリアミド樹脂で構成しているため、高い寸法精度および低い寸法変化率が必要な部位(例えば、ベアリング部位等)には、金属部品をインサートしたり、もしくは熱硬化性樹脂を併用することも可能である。
【0047】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0048】
【実施例1】
〔導電ゴム層用のゴム組成物の調製〕
EPDM(住友化学社製、エスプレン505)100部と、ステアリン酸1部と、導電性カーボンブラックであるアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)40部と、パラフィン系オイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW380)30部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(住友化学社製、スミカノール620)4部と、液状エポキシ系化合物(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)3部とを配合し、これらをバンバリーミキサーを用いて、120℃で5分間混練した。ついで、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(住友化学社製、スミカノール507A)3.08部と、過酸化物加硫剤(日本油脂社製、ペロキシモンF−40)6部とを追加混合し、オープンロールを用いて、50℃で10分間混練して、導電ゴム層用のゴム組成物を調製した。
【0049】
〔ポリアミド樹脂製導電基板の準備〕
カーボンファイバーが30重量%含有された、メタキシリレンジアミン−ヘキサメチレンジカルボン酸共重合体(三菱エンジニアプラスチックス社製、レニーC36)からなり、中心に直径22mmの穴がある導電基板(大きさ:40mm×40mm、厚み:1.5mm、体積固有抵抗:2.2×104 Ω・cm)を1枚準備した。
【0050】
〔ポリアミド樹脂製導電ブラケットの準備〕
カーボンファイバーが30重量%含有された、メタキシリレンジアミン−ヘキサメチレンジカルボン酸共重合体(三菱エンジニアプラスチックス社製、レニーC36)からなり、中心に直径6mmの穴がある導電ブラケット(大きさ:40mm×40mm、厚み:8mm、体積固有抵抗:2.2×104 Ω・cm)を準備した。
【0051】
〔ステッピングモータ用ブラケット一体マウントの作製〕
ポリアミド樹脂製導電基板と、ポリアミド樹脂製導電ブラケットとを金型にセットした後、上記ゴム組成物をインジェクション成形し、190℃で10分間架橋を行った。このようにして、ポリアミド樹脂製導電基板と、ポリアミド樹脂製導電ブラケットとの間に、幅5mm(直径32mmの中心に直径22mmの穴がある)、厚み2.5mmの導電ゴム層を介装してなる、ステッピングモータ用ブラケット一体マウントを作製した。
【0052】
【実施例2】
導電性カーボンブラックであるアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を90部に、パラフィン系オイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW380)を100部に、液状エポキシ系化合物(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)を5部に、それぞれ増量するとともに、、過酸化物加硫剤(日本油脂社製、ペロキシモンF−40)6部に代えて、過酸化物加硫剤(日本油脂社製、パークミルD−40)4部を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、導電ゴム層用のゴム組成物を調製した。そして、このゴム組成物を用いて、実施例1と同様にして、ステッピングモータ用ブラケット一体マウントを作製した。
【0053】
【実施例3】
導電性カーボンブラックであるアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を120部に、パラフィン系オイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW380)を130部に、液状エポキシ系化合物(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)を5部に、それぞれ増量するとともに、、過酸化物加硫剤(日本油脂社製、ペロキシモンF−40)6部に代えて、過酸化物加硫剤(日本油脂社製、パークミルD−40)4部を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、導電ゴム層用のゴム組成物を調製した。そして、このゴム組成物を用いて、実施例1と同様にして、ステッピングモータ用ブラケット一体マウントを作製した。
【0054】
【比較例1】
液状エポキシ系化合物を配合しない以外は、実施例2と同様にして、導電ゴム層用のゴム組成物を調製した。そして、このゴム組成物を用いて、実施例1と同様にして、ステッピングモータ用ブラケット一体マウントを作製した。
【0055】
【比較例2】
導電性カーボンブラックであるアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)40部に代えて、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)120部を用い、パラフィン系オイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW380)を40部に増量するとともに、液状エポキシ系化合物を配合しない以外は、実施例1と同様にして、ゴム層用のゴム組成物を調製した。そして、このゴム組成物を用いて、実施例1と同様にして、ステッピングモータ用ブラケット一体マウントを作製した。
【0056】
このようにして得られた実施例品および比較例品のステッピングモータ用ブラケット一体マウントを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1に併せて示した。
【0057】
〔常態特性〕
ゴム層の破断強度(TB)および破断伸び(EB)を、JIS K 6250に記載の方法に準じて測定した。
【0058】
〔体積固有抵抗〕
ゴム層の体積固有抵抗を、ASTM D257に準じて測定した。
【0059】
〔接着性〕
ポリアミド樹脂製導電ブラケットを固定し、ポリアミド樹脂製導電基板を上方に引っ張り、ゴム層とポリアミド樹脂製導電基板との接着力を、ストログラフを用いて測定した。なお、表中の破壊状態の欄において、「R10」とは、ゴム部分(R)において10%破断したことを意味し、「R0」とは、基板と、ゴム層との界面部分において界面剥離が生じたことを意味する。
【0060】
〔ブラケット一体マウントの電気抵抗値〕
各ポリアミド樹脂製導電ブラケットを固定治具に固定し、ブラケット一体マウントの電気抵抗値を、テスター(日置電気社製、HIOKI 3256デジタルハイテスター)を用いて測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
上記表の結果から、全実施例品は、ゴムの常態特性および体積抵抗値が良好で、層間接着力も非常に高く、マウントの電気抵抗値も良好であることがわかる。なお、本発明者らは、実施例のEPDMに代えて、EPMやH−NBRを用いた場合でも、実施例のEPDMと同様の効果が得られることを実験により確認している。
【0063】
これに対して、比較例1品および比較例2品は、ゴム層中に液状エポキシ系化合物を配合していないため、ゴム焼けぎみで接着反応の低下によって接着力が低下していることがわかる。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントは、ポリアミド樹脂製導電基板およびポリアミド樹脂製導電ブラケットの間に、導電性カーボンブラックを含有する導電ゴム層を介装してなるものである。このように、本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントは、ポリアミド樹脂製基板、ゴム層およびポリアミド樹脂製ブラケットが、いずれも導電性材料で構成されているため、小型モータの帯電を緩和することができる。その結果、OA機器に使用した場合のトナー付着防止や、小型モータの誤作動を抑制することができるようになる。しかも、導電ゴム層と、ポリアミド樹脂製導電基板およびポリアミド樹脂製導電ブラケットとが、いずれも加硫によって化学的接着しているため、例えば、湿熱条件下であっても層間接着力を維持することができ、過酷な条件下での使用に耐えうるようになる。また、液状エポキシ系化合物を用いているため、接着性やゴム組成物の成形加工性の向上効果が得られるようになる。また、特に、接着剤を使用しなくてもよくなるため、接着剤の不要化、接着剤塗布工程の不要化により、製造コストを大幅に下げることが可能となる。さらに、従来の金属部材を用いた金属基板に代えて、ポリアミド樹脂を用いた樹脂基板としているため、錆の問題も生じず、軽量化もなされ、しかも複雑な形状の成形が可能となり、ステッピングモータ等の小型モータへのワンタッチ取り付けも実現できるようになる。
【0065】
また、導電ゴム層の体積固有抵抗を107 Ω・cm以下にすると、小型モータの帯電をより一層緩和することができるようになる。
【0066】
また、上記ポリアミド樹脂製導電基板やポリアミド樹脂製導電ブラケットを、カーボンファイバーで補強されたポリアミド樹脂を用いて形成すると、基板やブラケットの剛性を上げることができるとともに、基板やブラケットの導電率を良好な範囲に保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の小型モータ用ブラケット一体マウントを示す模式図である。
【符号の説明】
1 ポリアミド樹脂製導電基板
2 導電ゴム層
3 マウント
4 ポリアミド樹脂製導電ブラケット
Claims (6)
- 単一のポリアミド樹脂製導電基板に、導電ゴム層を接着してなるマウントと、小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットとを備え、上記導電ゴム層が、下記の(A)〜(F)を必須成分とするゴム組成物からなり、上記ポリアミド樹脂製導電基板と加硫によって化学的接着しているとともに、上記小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットと加硫によって化学的接着していて、上記ポリアミド樹脂製導電基板と、導電ゴム層と、小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットとが一体化されていることを特徴とする小型モータ用ブラケット一体マウント。
(A)エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムおよび水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのゴム。
(B)加硫剤。
(C)レゾルシノール系化合物。
(D)メラミン系樹脂。
(E)液状エポキシ系化合物。
(F)導電性カーボンブラック。 - 上記導電ゴム層の体積固有抵抗が107 Ω・cm以下である請求項1記載の小型モータ用ブラケット一体マウント。
- 上記導電ゴム層と、小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットとの化学的接着が、上記(C)のレゾルシノール系化合物を架橋剤とし、上記(D)のメラミン系樹脂を架橋助剤とする架橋反応によりなされている請求項1または2記載の小型モータ用ブラケット一体マウント。
- 上記導電ゴム層と、ポリアミド樹脂製導電基板との化学的接着が、上記(C)のレゾルシノール系化合物を架橋剤とし、上記(D)のメラミン系樹脂を架橋助剤とする架橋反応によりなされている請求項1〜3のいずれか一項に記載の小型モータ用ブラケット一体マウント。
- 上記小型モータ用ポリアミド樹脂製導電ブラケットが、カーボンファイバーで補強されたポリアミド樹脂を用いて形成されてなるものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の小型モータ用ブラケット一体マウント。
- 上記ポリアミド樹脂製導電基板が、カーボンファイバーで補強されたポリアミド樹脂を用いて形成されてなるものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の小型モータ用ブラケット一体マウント。
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