JP3937794B2 - 画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラープリンタ、カラー複写機等に用いる像担持体、より詳しくはアモルファスシリコン(a−Si)感光体を使用し、黒色現像用の磁性トナー及びカラー現像用の二成分方式非磁性トナーを使用した画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスを応用した装置は、従来の原稿を複写するいわゆる複写機のみならず、近年需要の伸びの著しいコンピュータ、ワードプロセッサの出力手段としてのプリンターを加え、広く利用されている。こうしたプリンターは従来の白黒画像のみならず、カラー画像を形成できることが重視される。こうした環境の中で、異なる色の現像剤を各々収容した複数の現像器を備え、電子写真法を用いて、像担持体である感光ドラム上に一回又は複数回の記録サイクルで複数色のトナー像を形成し、この複数色のトナー像を記録材に一括転写し、このトナー像を最終転写材に定着して、所望の複数色画像を得る多色画像形成装置が提案されている。
【0003】
昨今のOA市場においては、情報の多様化・高度化から、オフィスで出力される画像のカラー化が進み、さらにはシステムの高速化・安定化が求められており、安定性・耐摩耗性等に極めて優れ、超高速のヘビーデューティーマシン用として最も適したa−Si感光体の、カラー複写装置への搭載検討が進められている。
【0004】
トナーについては、黒色現像は使用頻度が高く、特に長寿命のa−Si感光体を使用する系では、キャリア交換等のメンテナンスを抑制すること、また既に実用化され特性が安定していることなどの理由より、黒色現像には磁性一成分現像剤を用いることが好適である。一方で黒色以外のカラー現像では、色彩を鮮明にするためには磁性体をトナー粒子中に含有させない方が好ましく、非磁性二成分現像剤を用いることが好適である
【0005】
感光体としてa−Si感光体を使用する場合、ドラムヒーターにより感光体表面近傍の温度を制御することが、水分の吸着による表面抵抗の低下に伴って発生する画像流れを防止する上で有効であり、この場合は、トナーの軟化によるトナーの付着(融着)の問題、及び感光体表面にトナーの樹脂成分が均一に堆積するフィルミングの問題が顕著になりやすい。そのため、a−Si感光体を使用した場合においても、感光体の定期的なメンテナンスが必要となり、長寿命というa−Si感光体のメリットを十分に引き出すことができない傾向にある。
【0006】
そのため、高精彩な画像を必要とするカラー機にa−Si感光体を搭載する場合では、感光体への融着及びフィルミングの削減と定着での色再現性の実現が切望されており、この解決手段としては所定の特性を有するトナーの使用が挙げられる。トナーの特性については従来より種々の検討がなされている。
【0007】
黒色用現像剤では、定着時の耐高温オフセット性を向上させるためポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスに代表される比較的高結晶性のワックスが離型剤として用いられている。このような現像剤については、例えば特公昭52−3304号公報、特公昭52−3305号公報、特開昭57−52574号公報に提案されている。
【0008】
カラー用現像剤としては、定着時における混色性を確保するために、シャープメルト性を有し軟化点の低いことが好ましいが、このような現像剤を高速系フルカラー複写機で使用する場合、クリーナー部や転写部ローラーとの感光体との接触部において機械的シェアが大きく、また、感光体の発熱に伴い感光体上でトナーが軟化し、付着し易くなる。
【0009】
このような問題を解決するため、カラー用現像剤については、特定の貯蔵弾性率を有するトナーについて様々な提案されているが、例えば高温環境下での保存性や、安定した帯電性と現像性、定着特性、OHP透明性等、カラー用現像剤に求められる様々な特性を満足するには検討の余地が残されている。
【0010】
またカラー用現像剤においても、トナー粒子にワックス等の離型剤を添加することにより、上記の課題を解決しようとする様々な提案がなされているが、この離型剤自身の高結晶性やOHP用シートの材質との屈折率の違いのため、画像を形成したOHPを透映した際に透明性が阻害され、投影像は彩度や明度が低くなる傾向にあり、耐高温オフセット特性や低温定着性、OHP透明性等の様々な特性を満足するには検討の余地が残されている。
【0011】
カラー画像の形成における前述した問題点については、画像形成方法による解決も図られており、例えばカラー用現像剤には離型剤を極力添加せず、加熱定着ローラーへシリコーンオイルやフッ素オイルの如きオイルを塗布せしめ耐高温オフセット性の向上とOHPでの透明性の向上を図ろうとする方法が知られている。
【0012】
しかしながら、このようにして得られた定着画像は、その表面に余分のオイルが付着しており、画像の品質に影響を与えることがある。またオイルが感光体に付着して汚染したり、オイルが定着ローラーを膨潤して定着ローラーの寿命を短くする場合がある。また定着画像上へのオイルスジを発生させないため、オイルを均一にかつ定量的に定着ローラー表面上に供給する必要性があり、定着装置が大型化する傾向にある。
【0013】
以上のことからわかるように、オフセットの発生が抑制され、さらに、定着画像の透明性に優れている高画質カラー画像形成については、未だ検討の余地が残されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決した画像形成方法及び画像形成装置を提供することであり、特に、a−Si感光体を高速フルカラー機に搭載する場合における感光体表面上への融着及びフィルミングが削減でき、環境依存性を含めた耐久安定性に優れ、高精彩性を発現する画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の、a−Si感光体が元来保有している長寿命、メンテナンスフリーという大きなメリットを活かしつつ、カラー画像形成装置への搭載への問題を解決するものであり、以下に示す画像形成方法を提供する。
【0016】
すなわち本発明は、感光体に静電潜像を形成し、複数色の現像剤をそれぞれ収容し前記感光体に対向して配置される複数の現像器によって静電潜像を各色現像剤によって現像し、この現像によって形成されたトナー像を転写材に転写して画像を形成する画像形成方法において、感光体は、導電性基体と、少なくともアモルファスシリコンを含み導電性基体上に形成される光導電層とを有し、現像に使用される現像剤は、黒色画像の現像を行うための磁性トナー粒子を少なくとも含有する黒色磁性現像剤と、カラー画像の現像を行うための非磁性トナー粒子及び磁性キャリアを少なくとも含有するカラー非磁性現像剤であり、非磁性トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びワックスを少なくとも含有し、粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×1010dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103〜1×106dN/m2の範囲にあり、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50〜110℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、分子量6000〜8000の領域にメインピークが存在することを特徴とする画像形成方法である。
【0017】
また本発明は、感光体と、この感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した感光体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、複数色の現像剤をそれぞれ収容し前記感光体に対向して配置され静電潜像を各色現像剤によって現像する複数の現像器と、現像によって形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段とを有する画像形成装置において、感光体は、導電性基体と、少なくともアモルファスシリコンを含み導電性基体上に形成される光導電層とを有し、現像に使用される現像剤は、黒色画像の現像を行うための磁性トナー粒子を少なくとも含有する黒色磁性現像剤と、カラー画像の現像を行うための非磁性トナー粒子及び磁性キャリアを少なくとも含有するカラー非磁性現像剤であり、非磁性トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びワックスを少なくとも含有し、粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×1010dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103〜1×106dN/m2の範囲にあり、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50〜110℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、分子量6000〜8000の領域にメインピークが存在することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0018】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置によれば、高精細であって、かつ、高耐久、高安定なデジタルフルカラー方式の画像形成を実現できることが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下詳しく述べる。
本発明の画像形成方法は、感光体としてアモルファスシリコン感光体を用い、黒色画像用には黒色磁性現像剤を用い、カラー画像用には特定のカラー非磁性現像剤を用いる。この画像形成方法は、本発明の画像形成装置によって実施することができる。
【0020】
本発明で用いられる感光体は、導電性基体と、少なくともアモルファスシリコンを含み導電性基体上に形成される光導電層とを有する、いわゆるアモルファスシリコン系感光体(以下「a−Si感光体」ともいう)であり、従来より知られている種々のa−Si感光体を用いることができる。
【0021】
本発明では、導電性基体には通常用いられるアルミニウム製の円筒体を用いることができるが、特にこの形態に限定されない。また本発明では、光導電層は単層であっても良いし複数層の積層によって形成されていても良い。また光導電層には、酸素、炭素、窒素、水素、ハロゲン、第13族元素、第15族元素等、シリコン以外の原子を適量含有させることができる。
【0022】
また本発明では、光導電層以外の層を必要に応じて形成しても良い。このような層としては、例えば導電性基体と光導電層との間に形成される電荷注入阻止層や、光導電層上に形成される表面層等が挙げられる。これらの層については、前述したシリコン等の原子によって形成され、例えば水素を含有する非晶質炭素構造で構成される表面層等を好ましくは例示することができる。
【0023】
本発明に用いられる感光体は従来より知られている種々の方法で製造することができ、このような製造方法としては、例えば導電性基体を収容、支持する減圧可能な反応容器内に、所望の原子を含む原料ガス(例えばSiH4等)を導入し、グロー放電によって原料ガスを反応容器内で分解し、反応容器内に支持された導電性基体表面に膜を形成するプラズマCVD法が好ましくは挙げられる。
【0024】
本発明では上記感光体を帯電手段によって帯電させ、帯電した感光体に静電潜像を潜像形成手段によって形成し、形成した静電潜像を現像器によって現像し、形成されたトナー像を転写材に転写手段によって転写する。前記帯電手段には従来より知られている種々の帯電手段を用いることができ、このような帯電手段としては、例えば導電性及び弾性を有する帯電ローラ等の接触帯電部材を有する接触帯電手段が好ましくは挙げられる。
【0025】
前記潜像形成手段には従来より知られている種々の潜像形成手段を用いることができ、このような潜像形成手段としては、例えばレーザ光走査型のデジタル露光デバイスや、リニアアレイ光源型のデジタル露光デバイス等が好ましくは挙げられる。
【0026】
前記現像器には、複数色の現像剤をそれぞれ収容し感光体に対して対向して配置される複数の現像器が用いられる。現像器には、収容する現像剤の種類や現像方式に応じて、従来より知られている種々の現像器を用いることができ、例えば磁性現像剤には一成分現像剤用の現像器が好ましくは挙げられ、非磁性現像剤には二成分現像剤用の現像器が好ましくは挙げられる。
【0027】
複数の現像器は、現像時において感光体に対向する現像位置に配置されれば良く、この配置は現像方式によって異なっていても良い。例えば複数の現像器を、感光体に対向して配置される回転支持部材に支持し、回転支持部材の回転によって所定の現像器が現像位置に配置される構成であっても良いし、一成分現像剤用の現像器のみを感光体に対して所定の位置に固定して配置する構成であっても良い。
【0028】
前記転写手段には従来より知られている種々の転写手段を用いることができる。転写手段は、感光体上のトナー像を紙やOHP等の最終転写材に転写する転写手段であっても良いが、感光体上のトナー像を、それぞれの色のトナー像を重ねるようにドラム状又は無端ベルト状の中間転写体に一次転写し、それぞれの色のトナー像を重ねて最終転写材に二次転写する転写手段であることが本発明においては好ましい。
【0029】
本発明では前述した各手段等の他にも、転写後の感光体上に残存する転写残トナーを除去するクリーニング手段や、転写されたトナー像を最終転写材に定着する定着手段や、最終転写材を所定のプロセス位置に搬送する搬送手段や、中間転写体に付着するトナー粒子や紙粉等を除去する中間転写体用クリーニング手段等を必要に応じて適宜設けることが好ましい。
【0030】
以下に本発明の一実施の形態を図1を用いて説明する。
本実施の形態の画像形成装置は、図1に示されるように、a−Si感光体である感光体10と、導電性及び弾性を有し感光体10に接触して配置される帯電ローラを有する帯電手段8と、帯電した感光体10にミラー6を介して画像情報に応じたレーザ光を照射し感光体10に静電潜像を形成する潜像形成手段である画像信号光源5と、感光体10表面の電位を検出する内部電位計7と、感光体10に対向して配置される四つの現像器11a〜11dと、現像によって形成されたトナー像が感光体10から転写される無端ベルト状の中間転写体12と、転写後の感光体10に残存する転写残トナーを除去するクリーニング手段9と、中間転写体12上のトナー像を最終転写体である紙Pに転写する転写手段19と、紙Pに転写されたトナー像を定着させる定着手段22とを有する。
【0031】
感光体10は矢印A方向に回転しており、帯電手段8によって一様に帯電する。帯電した感光体10には画像信号光源5からのレーザ光が照射されて静電潜像が形成される。このレーザ光は、原稿台1上の原稿2に画像読み込み用光源3から光を照射し、画像読み込み用光源3からの反射光をスキャナ4で読み込み、このスキャナ4で読み込んだ画像情報が画像信号光源5に伝達され、この情報に基づき画像信号光源5から照射される。静電潜像が形成された感光体10の表面電位は内部電位計7によって検出されるが、これは感光体の電位制御のためであり、個々の画像形成プロセスには直接関与しない。
【0032】
感光体10に形成された静電潜像は現像器11a〜11dによって現像され、トナー像となる。現像器11a〜11dは回転支持部材によって支持され、この部材が回転することにより、所定の現像器が感光体に対向して配置される。例えば黒画像を現像する場合では黒色磁性現像剤を収容する現像器が図1の現像器11aの位置に配置され、静電潜像を現像する。
【0033】
現像器11としては、黒色磁性現像剤用の現像器であれば、例えば現像剤を収容する現像容器、現像容器の開口部に回転自在に支持され現像剤を担持する円筒状の導電性現像スリーブ、現像スリーブ内部に固定され複数の磁極を有するマグネットロール、現像スリーブに対して非接触に配置される磁性部材からなり現像スリーブ上に担持された現像剤の層厚を規制する規制ブレード、現像容器内の現像剤を攪拌する攪拌手段、現像スリーブに所定の電圧を印加する現像用電源等を有する現像器が用いられる。カラー非磁性現像剤用の現像器であれば、例えば上記現像器の構成に加えて、補給用トナーを収容し現像容器に補給用トナーを供給するトナー補給手段を有する現像器が用いられる。
【0034】
形成されたトナー像は、駆動系15によって駆動する中間転写体12に転写され、感光体10上に転写残トナーはクリーニング手段9によって除去される。
【0035】
単色の画像形成であれば、中間転写体12に転写されたトナー像は、レジストローラー及び給紙系18によって転写位置に搬送された紙Pに、転写手段19によって転写される。トナー像の転写を受けた紙Pは、分離手段20によって中間転写体12から分離し、搬送系21によって搬送され、定着手段22における定着ローラ23のニップ部に導入される。定着手段22では加熱加圧定着方式によってトナー像を紙Pに定着させ、画像形成装置外に排出する。転写後の中間転写体12は、中間転写体用クリーニングブレード13を有する中間転写体用クリーニング手段14によってクリーニングされ、転写残トナーや紙粉等が除去される。
【0036】
カラー画像の形成であれば、中間転写体12への転写までの工程が各色について繰り返され、形成された各色トナー像は、前工程で形成されたトナー像に重なるように中間転写体12に転写され、全ての色のトナー像が中間転写体12から紙Pに一括して転写される。後は単色の場合と同様であり、画像が形成された紙Pは画像形成装置外に排出される。
【0037】
なお定着後の紙Pを転写手段19において表裏反転させた状態に搬送する手段を設け、両面印刷に対応する構成としても良い。
【0038】
以下に本発明で用いられる現像剤について説明する。まずカラー非磁性現像剤について説明する。カラー非磁性現像剤は、非磁性トナー粒子と磁性キャリアとを含有し、非磁性トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びワックスを含有する。
【0039】
前記非磁性トナー粒子は、粘弾性特性において、80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×1010dN/m2、好ましくは1×106〜1×108dN/m2の範囲にある。80℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、非磁性トナー粒子の高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性において良好な特性を示す。
【0040】
80℃における貯蔵弾性率が1×106dN/m2よりも小さい場合には、高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性が悪く、トナー粒子同士が合一し、大きなトナー粒子の凝集体を形成しやすい。特にドラムヒーターにより画像流れを防止する機構を持つa−Si感光体を用いた場合、感光体表面においてトナー融着及びフィルミングが発生しやすい。近年、カラー機の出力スピードの高速化や本体の小型化が進んでいるため、マシン機内の温度が高くなる傾向にあり、高精細・高画質の画像を安定して得るためには、用いられるトナー粒子が高温環境下における十分な保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を有することは重要である。
【0041】
また、80℃における貯蔵弾性率が1×1010dN/m2より大きい場合には、保存性、耐熱性、耐ブロッキング性は十分であるものの、低い温度での十分な定着性が得られないため好ましくない。
【0042】
また、前記非磁性トナー粒子は、120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103〜1×106dN/m2、好ましくは1×104〜5×105dN/m2の範囲にある。120〜180℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、十分な低温定着性と耐高温オフセット性と両立させることができる。
【0043】
120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103dN/m2よりも小さい場合には、非磁性トナー粒子の十分な耐高温オフセット性を得ることができないため好ましくない。また、120〜180℃における貯蔵弾性率が1×106dN/m2より大きい場合には、非磁性トナー粒子の十分な低温定着性を得ることができないため好ましくない。
【0044】
また、前記非磁性トナー粒子は、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50〜110℃、好ましくは55〜100℃、より好ましくは60〜90℃の範囲にある。上記ピーク温度が上記範囲内にあれば、低温定着性と耐ブロッキング性、a−Si感光体表面へのフィルミング防止において良好な特性を示す。
【0045】
上記ピーク温度が110℃を越える場合は、非磁性トナー粒子の低温定着性が悪くなると共に、定着画像における非磁性トナー粒子の溶融が不十分であることに起因する彩度不良が発生しやすい。また、上記ピーク温度が50℃未満である場合は、非磁性トナー粒子の耐ブロッキング性が悪くなると共に、a−Si感光体表面への融着及びフィルミングが発生しやすい。
【0046】
また、前記非磁性トナー粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、分子量6000〜8000の領域にメインピーク(MP)が存在することが重要であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が300以上、さらには500以上であることが好ましい。
【0047】
メインピークが6000未満の場合、低温での定着性は良好であるが、ホットオフセット温度が低下し、結果的に非オフセット温度領域が狭くなると共に、感光体への融着及びフィルミングが発生しやすい。また、メインピークが8000を越える場合、ホットオフセット温度は高くなり、結果的に非オフセット温度領域は広くなるが、画像のグロスが低くなり、OHP透過性にも悪影響を与える傾向にある。
【0048】
また数平均分子量に対する重量平均分子量の比が300未満の場合、有機金属化合物と結着樹脂との混練時架橋によって生じるソフトなゲルに起因するとみられる高分子側成分が少なくなるため、高温オフセットが発生し易くなる。
【0049】
本発明に用いられる非磁性トナー粒子には結着樹脂が含まれる。前記非磁性トナー粒子の結着樹脂には、非磁性トナー粒子としたときに前述した非磁性トナー粒子の物性を示すものであれば特に限定されず、従来より知られている種々の樹脂成分を用いることができる。このような結着樹脂としてはポリエステル樹脂とビニル系共重合体とによって構成される樹脂成分が好ましく、本発明では、十分な耐高温オフセット性、耐熱性、耐ブロッキング性が得られるという点で、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有しているハイブリッド樹脂や、ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物を用いることが好ましい。
【0050】
前記結着樹脂において「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットとが化学的に結合した樹脂成分を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと、(メタ)アクリル酸エステルの如き、ビニル基を有する不飽和カルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系共重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系共重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
【0051】
またポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物とはこれらが混合した状態で存在する樹脂成分を意味し、例えばポリエステル樹脂とビニル系共重合体とを適当な有機溶剤中で膨潤させた後に有機溶剤を留去して得られる樹脂成分等が挙げられる。
【0052】
前記ハイブリッド樹脂や前記混合物には他の樹脂成分が混合されていても良く、このような他の樹脂成分としては、例えばポリエステル樹脂やビニル系共重合体、及び極性や粘弾性、熱的物性等の物性を調整するための種々の樹脂成分が挙げられる。
【0053】
結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂やポリエステルユニットには、多価アルコールと、カルボン酸や、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等のカルボン酸系化合物とが原料モノマーとして使用できる。カルボン酸系化合物におけるカルボン酸の構造は飽和であっても不飽和であっても良い。
【0054】
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0055】
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0056】
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたこはく酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0057】
それらの中でも、特に下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0058】
【化1】
【0059】
結着樹脂に用いられるビニル系重合体やビニル系重合体ユニットには、ビニル基を有する化合物の一種又は二種以上を原料モノマーとして使用することができる。
【0060】
前記原料モノマーとしては、例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸及びメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0061】
さらに前記原料モノマーとしては、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0062】
さらに前記原料モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0063】
本発明において前記ビニル系重合体ユニットは、ビニル基を二個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤としては従来より知られている種々の架橋剤を用いることができる。
【0064】
上記架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等の、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート系化合物類;例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの等の、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート系化合物類;例えばポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等の、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート系化合物類などが挙げられる。
【0065】
また上記架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の、多官能の架橋剤などが挙げられる。
【0066】
また前記ビニル系重合体やビニル系重合体ユニットを製造する場合では、従来より知られている種々の重合開始剤を用いることができ、このような重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
【0067】
本発明では、ハイブリッド樹脂を生成する観点から、ビニル系重合体及びポリエステル樹脂の少なくともいずれか一方又は両方には、ポリエステル樹脂及びビニル系重合体の少なくともいずれか一方と反応し得るモノマー成分が含まれることが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸又はメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0068】
前記ハイブリッド樹脂は、種々の方法で製造することができ、例えば前述した樹脂成分を化学的に結合させて製造しても良いし、一方の樹脂成分に他方のモノマー成分を反応させて製造しても良いし、前述した樹脂成分及び両モノマー成分の存在下で反応させて製造しても良い。また本発明において前述した樹脂成分を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体(ビニル系重合体ユニット)及びポリエステル樹脂(ポリエステルユニット)のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方又は両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
【0069】
以下にハイブリッド樹脂及びこれを含む結着樹脂の製造方法を具体的に例示する。
【0070】
ハイブリッド樹脂は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行ってエステル化合物を合成することにより製造することができる。
【0071】
またハイブリッド樹脂を含む結着樹脂の製造方法としては、ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法が挙げられる。ハイブリッド樹脂はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/又はポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0072】
またハイブリッド樹脂を含む結着樹脂の製造方法としては、ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法が挙げられる。ハイブリッド樹脂はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
【0073】
またハイブリッド樹脂を含む結着樹脂の製造方法としては、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加し、反応させることによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0074】
またハイブリッド樹脂を含む結着樹脂の製造方法としては、ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法が挙げられる。さらに適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0075】
またハイブリッド樹脂を含む結着樹脂の製造方法としては、ビニル系重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂をそれぞれ製造後にブレンドする方法が挙げられる。ブレンドには、有機溶剤(例えば、キシレン)に前記樹脂成分を溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去する方法が好ましくは採用される。またハイブリッド樹脂には前述した製造方法によって生成した樹脂、及び公知の製造方法により製造された樹脂等を使用することができる。
【0076】
またハイブリッド樹脂を含む結着樹脂の製造方法としては、ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットを製造する方法が挙げられる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。ハイブリッド樹脂には前述した製造方法によって生成した樹脂、及び公知の製造方法により製造された樹脂等を使用することができる。
【0077】
前述したようなハイブリッド樹脂の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/又はポリエステルユニットは、それぞれ一種類のもの同士を用いることに限定されず、複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
【0078】
本発明に用いられる非磁性トナー粒子は、一種又は二種以上のワックスを含有している。
【0079】
本発明に用いられるワックスの一例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0080】
本発明において特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒で重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。
【0081】
母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの[例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物];ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。
【0082】
ワックスの分子量分布では、メインピークが分子量400〜2400の領域にあることが好ましく、430〜2000の領域にあることがより好ましい。このような分子量分布をもたせることによりトナーに好ましい熱特性を付与することができる。
【0083】
また、トナーの定着時により有効に機能させるために、上記ワックスの融点は、60〜100℃にあることが好ましく、65〜90℃にあることがより好ましい。またワックスは結着樹脂100質量部あたり0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部使用するのが良い。ワックスは通常、樹脂を溶剤に溶解し樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、混練時に混合する方法で結着樹脂に含有される。
【0084】
本発明に使用する有機金属化合物としては、芳香族オキシカルボン酸及び芳香族アルコキシカルボン酸から選択される芳香族カルボン酸誘導体、該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物であることが好ましく、その金属としては二価以上の金属原子が好ましい。
【0085】
上記二価の金属としては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+等が挙げられる。二価の金属としては、Zn2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+が好ましい。また三価以上の金属としては、Al3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+等が挙げられる。これらの金属の中で好ましいのはAl3+、Cr3+であり、特に好ましいのはAl3+である。
【0086】
芳香族オキシカルボン酸及び芳香族アルコキシカルボン酸から選択される芳香族カルボン酸誘導体、該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、例えば、オキシカルボン酸及びアルコキシカルボン酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、二価以上の金属原子を溶融している水溶液を水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、加熱撹拌し、次に水溶液のpHを調整し、室温まで冷却した後、ろ過水洗することにより芳香族オキシカルボン酸及び芳香族アルコキシカルボン酸の金属化合物を合成し得る。ただし、上記の合成方法だけに限定されるものではない。本発明においては、有機金属化合物として、ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物が特に好ましい。
【0087】
有機金属化合物は、非磁性トナー粒子の質量基準で0.1〜10質量%使用すると、非磁性トナー粒子の帯電量の初期変動が少なく、現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、結果的に「カブリ」や画像濃度ダウンの如き画像品質の低下がなく好ましい。有機金属化合物の含有率が、トナーの質量基準として0.1%未満である(全く加えない)と、耐久時における帯電量が不安定となり、結果的に画像濃度の維持性に劣ることとなりやすい。有機金属化合物の含有率が、非磁性トナー粒子の質量基準として10%を越えると、逆に耐久時にチャージアップが発生するために、画像濃度の低下を招くこととなる。
【0088】
本発明に用いられる非磁性トナー粒子には着色剤が含まれる。このような着色剤としては、公知の顔料及び染料の一種又は二種以上を用いることができる。
【0089】
例えば染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等が挙げられる。
【0090】
顔料としては、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
【0091】
また、フルカラー画像形成用トナーとして使用する場合には、マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
【0092】
係る顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1の如き油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料が挙げられる。
【0093】
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等である。
【0094】
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、93、97、180、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
【0095】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1乃至15質量部、好ましくは3乃至12質量部、より好ましくは4乃至10質量部含有していることが良い。着色剤の含有量が15質量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表されるような中間色の再現性も低下し易くなり、さらには非磁性トナー粒子の帯電性の安定性が低下し、目的とする帯電量が得られにくくなる。着色剤の含有量が1質量部より少ない場合には、目的とする着色力が得られ難く、高い画像濃度の高品位画像が得られ難い。
【0096】
本発明に用いられるカラー非磁性現像剤には、前述した非磁性トナー粒子と磁性キャリアとが含まれる。磁性キャリアには、磁性体そのもの、磁性体を樹脂等でコーティングしたもの、磁性体を分散した樹脂粒子等、従来より知られている種々の磁性キャリアを用いることができるが、磁性キャリアは樹脂で被覆されていることが好ましく、樹脂としてはシリコーン樹脂が好ましい。特に、含窒素シリコーン樹脂、又は含窒素シランカップリング剤とシリコーン樹脂とが反応することにより生成した変性シリコーン樹脂が、非磁性トナー粒子へのマイナスの摩擦電荷の付与性、環境安定性、キャリアの表面の汚染に対する抑制の点で好ましい。
【0097】
磁性キャリアに用いられる磁性体としては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物及びフェライトなどが使用できる。特に、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分として形成されるMn−Mg−Feの三元素の磁性フェライト粒子がキャリア粒子として好ましく、さらに、Mn−Mg−Feの三元素の磁性フェライト粒子は、ケイ素元素を0.001乃至1質量%(より好ましくは、0.005〜0.5質量%)有していることが磁性フェライト粒子の被覆樹脂としてシリコーン樹脂を使用する場合に特に好ましい。
【0098】
また磁性キャリアは、平均粒径が15乃至70μm(より好ましくは、25乃至60μm)であることが、非磁性トナー粒子の重量平均粒径との関係で好ましい。
【0099】
また本発明に用いられるカラー非磁性現像剤には、前述した非磁性トナー粒子と磁性キャリアとの他に、流動性向上剤が外添されていることが画質向上のために好ましい。
【0100】
流動性向上剤としては、非磁性トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものであれば特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法によるシリカ微粉末、乾式製法によるシリカ微粉末の如きシリカ微粉末、それらシリカ微粉末をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルの如き処理剤により表面処理を施した処理シリカ微粉末;酸化チタン微粉末;アルミナ微粉末、処理酸化チタン微粉末、処理酸化アルミナ微粉末が挙げられる。
【0101】
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着により比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対して流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。
【0102】
本発明に用いられる黒用磁性現像剤について説明する。黒用磁性現像剤には磁性トナー粒子が少なくとも含まれる。
【0103】
磁性トナー粒子は黒色画像を現像するための黒色トナーであれば特に限定されず、このような磁性トナー粒子としては、結着樹脂や磁性体を含み、必要に応じてワックス類、荷電制御剤等の種々の添加剤が添加される公知の磁性トナー粒子を用いることができる。
【0104】
磁性トナー粒子に含まれる磁性体は着色剤としての機能も有する。磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0105】
例えば、上記磁性体としては、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。好適な磁性材料は四三酸化鉄、磁性フェライト又はγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0106】
上記磁性体は平均粒径が0.1〜2μm(より好ましくは、0.1〜0.5μm)で、10Kエルステッド印加で磁気特性が抗磁力20〜150エルステッド飽和磁化50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg )、残留磁化2〜20Am2/kgのものが好ましい。
【0107】
該磁性体は、黒色用磁性現像剤の用いられる形態に応じて適当量が磁性トナー粒子に含まれれば良く、例えばマグネットを内包する現像剤担持体上に磁気的拘束力を伴って担持される磁性一成分系現像剤として用いられる場合、磁性トナー粒子の重量基準で5〜120質量%含有するのが、良好な現像性の実現とトナー飛散防止とを両立させる観点から好ましい。
【0108】
また前記磁性体は、マグネットを有していない現像剤担持体上に磁気的拘束力を伴わずに担持される系で用いられる場合、磁性トナー粒子の重量基準で0.1〜5質量%含有していることが好ましい。この範囲内で含有させることにより、耐久時におけるトナー飛散現象(機内汚れ)を抑えることができる。磁性体の含有率が、トナーの重量基準で5質量%を越えると、規制ブレードや、又はトナーを担持するローラー表面を著しく破損(削る)こととなり、帯電不良の原因となることがある。
【0109】
また、磁性キャリア粒子と混合されて二成分系現像剤として用いられる場合、磁性体をトナーの重量基準で0.1〜5質量%含有していることが好ましい。この範囲内で含有させることにより、現像剤を担持するローラーとの磁気的拘束力が増すために、耐久時におけるトナー飛散現象(機内汚れ)を抑えることができる。磁性体の含有率が、トナーの重量基準で5質量%を越えると、現像剤を担持するローラーとの磁気的拘束力が増し過ぎるために、画像濃度の低下を招くことがある。
【0110】
また黒色トナー粒子には、黒色磁性現像剤の使用形態に応じて種々の粒子と混合しても良く、例えば前述した流動性向上剤を黒色トナー粒子に混合して一成分磁性現像剤を構成しても良いし、前述した磁性キャリアを混合して二成分現像剤を構成しても良いし、前述した磁性キャリアと流動性向上剤とを混合して二成分現像剤を構成しても良い。
【0111】
本発明で用いられる非磁性トナー粒子及び磁性トナー粒子は、常法にしたがって作製することができ、例えばトナー粒子は結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びその他の任意成分の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により十分混合し、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉し、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級することにより所定の平均粒径のトナー粒子を生成することができる。
【0112】
さらに、流動性向上剤をトナー粒子に外添する場合では、流動性向上剤とトナー粒子をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合することにより、トナー粒子表面に流動性向上剤を有する現像剤を得ることができる。磁性キャリアを外添する場合も同様である。
【0113】
なお本発明に用いられる現像剤について、種々の物性について言及したが、その好ましい測定方法を具体的に以下に示す。
【0114】
(1)貯蔵弾性率の測定方法
トナー粒子を直径25mm、厚さ約2〜3mmの円板状の試料に加圧成形する。次にパラレルプレートにセットし、50〜200℃の温度範囲内で徐々に昇温させ、温度分散測定を行う。昇温速度は2℃/minとし、角周波数(ω)は6.28rad/secに固定し、歪率は自動とする。横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率(G’)を取り、各温度における値を読み取る。測定にあたっては、RDA‐II(レオメトリックス社製)を用いる。
【0115】
(2)示差熱分析測定
示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程、降温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの吸熱、発熱ピークが得られる。
【0116】
(3)GPC測定による分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定は次の条件で行われる。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。
【0117】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0118】
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
【0119】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
<ハイブリッド樹脂製造例1>
ビニル系共重合体の原料として、スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れる。
【0121】
また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、コハク酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、フマル酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーターに設置した。
【0122】
次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂の単量体、架橋剤及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応せしめてハイブリッド樹脂(1)を得た。
【0123】
<ハイブリッド樹脂製造例2>
スチレン3.8mol、α−メチルスチレンの2量体0.07mol、ジクミルパーオキサイド0.1molを使用すること以外は、ハイブリッド樹脂製造例1と同様に反応させ、ハイブリッド樹脂(2)を得た。
【0124】
<ハイブリッド樹脂製造例3>
四つ口フラスコに仕込むフマル酸5.0molに替えてマレイン酸4.0molとイタコン酸3.5molを使用すること、ジクミルパーオキサイド0.05molに代えてイソブチルパーオキサイド0.1molを使用すること以外は、ハイブリッド樹脂製造例1と同様に反応させ、ハイブリッド樹脂(3)を得た。
【0125】
<ハイブリッド樹脂製造例4>
コハク酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0molの替わりに無水トリメリット酸5.2molを使用すること以外は、ハイブリッド樹脂製造例1と同様に反応させ、ハイブリッド樹脂(4)を得た。
【0126】
<ポリエステル樹脂製造例1>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.6mol、テレフタル酸1.7mol、無水トリメリット酸1.1mol、フマル酸2.4mol及び酸化ジブチル錫0.1gをガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーターに設置した。窒素雰囲気下で、215℃で5時間反応させ、ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0127】
<ポリエステル樹脂製造例2>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.3mol、テレフタル酸1.6mol、無水トリメリット酸0.3mol、フマル酸3.2molのモノマー構成で上記と同様に反応させ、ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0128】
<ビニル系樹脂の製造例1>
トルエン溶媒1000mlと、ビニル系共重合体の原料として、スチレン2.4mol、n−ブチルアクリレート0.26mol、モノブチルマレート0.09mol、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.11molを温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した3リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて120℃の温度で攪拌しつつトルエンを還流させながら反応させ、ビニル系樹脂(1)を得た。
【0129】
前述した樹脂を用いてトナーを製造した。トナーの製造例を以下に記載するが、下記トナー製造例では下記表1に示すワックスを使用した。
【0130】
【表1】
【0131】
<トナー製造例1>
以下の方法でシアントナー1を調製した。
ハイブリッド樹脂(1) 100質量部
ワックス(A) 5質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体 6質量部
をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行った後、二軸式押し出し機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粒径約1〜2mm程度に粗粉砕した。次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を多分割分級装置で分級して、重量平均粒径7.6μmのシアン系トナー粒子を得た。このトナー粒子100質量部に対して、i−C4H9Si(OCH3)3:25質量部で処理した疎水性酸化アルミニウム(BET:170m2/g)を1.1質量部を合わせてシアントナー1とした。シアントナー1の物性を表2に示す。
【0132】
<トナー製造例2>
ハイブリッド樹脂(1)に替えてハイブリッド樹脂(2)を使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー2を得た。シアントナー2の物性を表2に示す。
【0133】
<トナー製造例3>
ハイブリッド樹脂(1)に替えて、50質量部のポリエステル樹脂(1)と50質量部のハイブリッド樹脂(1)との混合物を使用したこと、及びジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を8質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー3を得た。シアントナー3の物性を表2に示す。
【0134】
<トナー製造例4>
ハイブリッド樹脂(1)に替えてハイブリッド樹脂(3)を使用したこと、及びジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を9.5質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー4を得た。シアントナー4の物性を表2に示す。
【0135】
<トナー製造例5>
ワックス(A)に替えてワックス(B)を使用した以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー5を得た。シアントナー5の物性を表2に示す。
【0136】
<トナー製造例6>
ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を2質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー6を得た。シアントナー6の物性を表2に示す。
【0137】
<トナー製造例7>
ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を3質量部使用したこと、及びワックス(A)に替えてワックス(D)を使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー7を得た。シアントナー7の物性を表2に示す。
【0138】
<トナー製造例8>
ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を3質量部使用したこと、及びワックス(A)に替えてワックス(E)を使用した以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー8を得た。シアントナー8の物性を表2に示す。
【0139】
<トナー製造例9>
C.I.ピグメントブルー15:3に替えてC.I.ピグメントレッド202を6質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてマゼンタトナー1を得た。マゼンタトナー1の物性を表2に示す。
【0140】
<トナー製造例10>
C.I.ピグメントブルー15:3に替えてC.I.ピグメントイエロー17を4質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてイエロートナー1を得た。イエロートナー1の物性を表2に示す。
【0141】
<トナー製造例11>
ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛錯体を6質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー9を得た。シアントナー9の物性を表2に示す。
【0142】
<比較トナー製造例1>
ハイブリッド樹脂(1)に替えてハイブリッド樹脂(4)を使用したこと、及びジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を7.5質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー10を得た。シアントナー10の物性を表2に示す。
【0143】
<比較トナー製造例2>
ハイブリッド樹脂(1)に替えてポリエステル樹脂(2)を使用したこと、及びジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を4質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー11を得た。シアントナー11の物性を表2に示す。
【0144】
<比較トナー製造例3>
ハイブリッド樹脂(1)に替えてビニル系樹脂(1)を使用したこと、及びジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を7.5質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー12を得た。シアントナー12の物性を表2に示す。
【0145】
<比較トナー製造例4>
ハイブリッド樹脂(1)に替えてポリエステル樹脂(1)を使用したこと、及びジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を12質量部使用したこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー13を得た。シアントナー13の物性を表2に示す。
【0146】
<比較トナー製造例5>
ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を使用しないこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー14を得た。シアントナー14の物性を表2に示す。
【0147】
<比較トナー製造例6>
ワックス(A)に替えてワックス(C)を用いたこと以外はトナー製造例1と同様にしてシアントナー15を得た。シアントナー15の物性を表2に示す。
【0148】
【表2】
【0149】
<実施例1>
トナー製造例1で得られたシアントナー1と、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(平均粒径50μm)とを、トナー濃度が6質量%になるように混合し、二成分系シアン現像剤1とした。
【0150】
このシアン現像剤1を、カラー複写機CP−660(キヤノン製)のカラー用現像器を非磁性一成分トナー用から非磁性二成分現像剤用に改造した画像形成装置(評価機)に挿入し、単色モードで、常温低湿環境下(23℃、5%)、高温高湿環境下(30℃、80%)で画像面積比率20%のオリジナル原稿を用いて、単位面積当たりのトナー載り量を0.7mg/cm2に設定し、1万枚の未定着画像出力による耐久試験を行い、以下の項目について測定、評価した。なお上記画像形成装置の定着装置については、カラー複写機CP−660(キヤノン製)の定着ユニット(オイルレス)を手動で定着温度が設定できるように改造して用いた。
【0151】
<ドラム融着及びフィルミングの評価>
ドラム融着及びフィルミングについては、各環境下における耐久後に感光体表面の様子を目視にて観察し、評価した。
【0152】
<画像濃度>
画像濃度については、各環境下における初期及び耐久後に、転写材上に形成された画像部をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
【0153】
<転写率>
転写率は、常温低湿環境下(23℃、5%)で10,000枚の耐久試験を行い、耐久前後のベタ画像を現像、転写し、単位面積当たりにおいて、転写前における感光体上のトナー量と、転写材上のトナー量とをそれぞれ測定し、下式により求めた。
【数1】
転写率(%)=(転写材上のトナー量)/(感光体上の転写前のトナー量)×100
【0154】
<耐ブロッキング性>
耐ブロッキング性は、50℃のオーブン内にて2週間放置することにより評価した。該評価としては目視による凝集性のレベルを判定した。トナー凝集性評価基準を以下に示す。
A:凝集体が全く見られず流動性が非常に良い
B:凝集体が全く見られない
C:若干の凝集体は見られるがすぐにほぐれる
D:現像剤撹拌装置で凝集体がほぐれる(普通)
E:現像剤撹拌装置では凝集体が十分にほぐれない(やや悪い)
【0155】
<定着温度幅>
定着温度幅については、前記定着ユニットの定着温度を手動で設定し、常温低湿環境下(23℃、5%)における耐久の初期に、出力画像及び定着ユニットを観察して定着開始温度とオフセット発生温度とを測定した。
【0156】
<OHP透明性>
OHP透明性は、島津自記分光光度計UV2200(島津製作所社製)を使用し、OHPフィルム単独の透過率を100%とし、マゼンタトナーの場合では650nm、シアントナーの場合では500nm、イエロートナーの場合では600nmでの最大吸収波長における透過率を、常温低湿環境下(23℃、5%)における耐久の初期に測定し、下記の基準にしたがって評価した。
A:85%以上
B:75〜85%
C:65〜75%
D:65%未満
【0157】
シアン現像剤1は、転写性に優れると共に、光沢性、OHP透明性ともに良く、優れた定着性と耐ブロッキング性を示した。また、環境安定性も良好であった。結果を表3に示す。
【0158】
<実施例2>
シアントナー2を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤2を調製し、各項目を評価した。その結果、シアン現像剤2は転写性に優れると共に、光沢性、OHP透過性ともに良く、優れた定着性、耐ブロッキング性、環境安定性を示した。結果を表3に示す。
【0159】
<実施例3>
シアントナー3を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤3を調製し、各項目を評価した。その結果、得られた画像は転写性に優れると共に、光沢性、OHP透過性ともに良く、優れた定着性、耐ブロッキング性、環境安定性を示した。結果を表3に示す。
【0160】
<実施例4>
シアントナー4を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤4を調製し、各項目を評価した。その結果、得られた画像は低湿環境下での転写性が若干低く、やや光沢性に欠け、OHP透過性やや低めではあるものの、優れた定着性と耐ブロッキング性を示した。結果を表3に示す。
【0161】
<実施例5>
シアントナー5を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤5を調製し、各項目を評価した。その結果、得られた画像は転写性に優れると共に、光沢性、OHP透過性ともに良く、優れた定着性、耐ブロッキング性、環境安定性を示した。結果を表3に示す。
【0162】
<実施例6>
シアントナー6を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤6を調製し、各項目を評価した。その結果、得られた画像は転写性に優れると共に、光沢性、OHP透過性ともに良く、優れた定着性と環境安定性を示した。耐ブロッキング性はやや悪いものの実用上問題となるレベルではなかった。結果を表3に示す。
【0163】
<実施例7>
シアントナー7を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤7を調製し、各項目を評価した。その結果、得られた画像はワックスの高結晶性が影響してややOHPの透過性が悪く、また高融点であるためにワックスが定着時にトナー表面に出にくくなり、低温定着性をやや悪化させたものの、比較的良好な結果を得た。また、得られた画像の転写性は良好であり、耐ブロッキング性と環境安定性も良好であった。結果を表3に示す。
【0164】
<実施例8>
シアントナー8を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤8を調製し、各項目を評価した。その結果、シアントナー8はワックスの高結晶性が影響して若干OHPの透過性が悪化した。また、高融点であるためにワックスが定着時にトナー表面に出にくくなり、低温定着性を悪化させたが、全般的には比較的良好な結果を得た。また、得られた画像の転写性は良好であり、耐ブロッキング性、環境安定性も良好であった。結果を表3に示す。
【0165】
<実施例9>
マゼンタトナー1を用い、実施例1と同様にしてマゼンタ現像剤1を調製し、各項目を評価した。その結果、光沢性、OHP透過性ともに良く、高精細なフルカラー画像を得ることができた。
【0166】
<実施例10>
イエロートナー1を用い、実施例1と同様にしてイエロー現像剤1を調製し、各項目を評価した。その結果、光沢性、OHP透過性ともに良く、高精細なフルカラー画像を得ることができた。ポリエステル樹脂を単独で用いたため、シアントナー1と比較して、若干、定着可能な温度領域が変化したものの、定着温度幅は実用上問題のないレベルであった。
【0167】
<実施例11>
シアントナー9を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤9を調製し、各項目を評価した。その結果、得られた画像は、耐久後にやや画像濃度や転写率が低下し、耐ブロッキング性がやや悪化するものの、比較的良好な結果を示した。結果を表3に示す。
【0168】
<比較例1>
シアントナー10を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤10を調製し、各項目を評価した。その結果、シアントナー10は樹脂のMPが大きいため、非常に硬いトナーとなり、光沢性とOHPの透過性が悪く、またワックスが定着時にトナー表面に出にくくなり、低温定着性を悪化させた。また、有機金属化合物の含有量が多いため、トナー表面から有機金属化合物が脱離することにより、高温高湿環境下ではドラムへの融着が若干発生し、低湿環境下で帯電量が著しく上がり、十分な画像濃度を得ることができなかった。結果を表3に示す。
【0169】
<比較例2>
シアントナー11を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤11を調製し、各項目を評価した。その結果、シアントナー11は樹脂のMPが小さいため、非常に軟らかいトナーとなり、耐ブロッキング性が悪くなり、耐高温オフセット性を悪化させた。また、高温高湿環境においては、顕著なドラム融着とフィルミングが発生した。さらに、有機金属化合物の含有量が多いため、低湿環境下で帯電量が著しく上がり、十分な画像濃度を得ることができなかった。結果を表3に示す。
【0170】
<比較例3>
シアントナー12を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤12を調製し、各項目を評価した。その結果、シアントナー12は光沢性とOHPの透過性が悪く、定着温度領域も狭くなった。また、高温高湿環境下ではドラムへの融着が若干発生した。結果を表3に示す。
【0171】
<比較例4>
シアントナー13を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤13を調製し、各項目を評価した。その結果、シアントナー13は光沢性とOHPの透過性が悪かった。また、高温高湿環境下ではドラムへの融着が若干発生した。結果を表3に示す。
【0172】
<比較例5>
シアントナー14を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤14を調製し、各項目を評価した。その結果、シアントナー14は、ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体を含有していないため、トナーの帯電付与が不十分となり、高温高湿、常温低湿の両環境下において画像濃度の推移が不安定となり、特に高温高湿環境においては、顕著なドラム融着とフィルミングが発生した。また、定着温度領域が著しく狭くなった。結果を表3に示す。
【0173】
<比較例6>
シアントナー15を用い、実施例1と同様にしてシアン現像剤15を調製し、各項目を評価した。その結果、耐久1000枚を過ぎたあたりから、かぶり、飛散が悪化し耐久を中断した。またトナーの流動性が悪く、転写性が初期から悪かった。シアントナー15は、低融点のワックスを含有しているため、定着性が不十分である上に、特に高温環境下でワックスがトナー表面に出てきて、帯電性、耐熱性、耐ブロッキング性を悪化させたものと考えられる。また、高温高湿環境においては、顕著なドラム融着とフィルミングが発生した。結果を表3に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
【発明の効果】
本発明によれば、感光体に対して複数の現像器を用いてフルカラー画像を形成し得る画像形成において、感光体には、導電性基体と、少なくともアモルファスシリコンを含み前記導電性基体上に形成される光導電層とを有する感光体を用い、現像剤には、黒色画像の現像を行うための磁性トナー粒子を少なくとも含有する黒色磁性現像剤と、カラー画像の現像を行うための非磁性トナー粒子及び磁性キャリアを少なくとも含有するカラー非磁性現像剤とを用い、この非磁性トナー粒子には、結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びワックスを少なくとも含有し、粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×1010dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103〜1×106dN/m2の範囲にあり、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50〜110℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、分子量6000〜8000の領域にメインピークが存在する非磁性トナー粒子を用いることから、a−Si感光体を高速フルカラー機に搭載する場合における感光体表面上への融着及びフィルミングが削減でき、環境依存性を含めた耐久安定性に優れ、高精彩性を発現する画像を形成することができる。
【0176】
本発明では、非磁性トナー粒子は、粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×108dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が1×104〜5×105dN/m2の範囲にあると、高温環境下におけるカラー非磁性現像剤の保存性や耐熱性及び耐ブロッキング性を向上させる上でより一層効果的であり、かつより良好な低温定着性と耐オフセット性とを両立させる上でより一層効果的である。
【0177】
また本発明では、非磁性トナー粒子は、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が55〜100℃、より好ましくは60〜90℃の範囲にあると、低温定着性や耐ブロッキング性の向上、及び感光体表面へのフィルミング防止の観点からより一層効果的である。
【0178】
また本発明では、結着樹脂は、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、及びポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、のいずれかから選択される樹脂であると、カラー非磁性現像剤の耐オフセット性や耐熱性、及び耐ブロッキング性を向上させる上でより一層効果的である。
【0179】
また本発明では、非磁性トナー粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が300以上、より好ましくは500以上であると、耐オフセット性を向上させる上でより一層効果的である。
【0180】
また本発明では、有機金属化合物は、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物であると、カラー画像においてカブリや画像濃度ダウンの如き画像品質の低下を防止する上で効果的であり、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物が芳香族カルボン酸誘導体のアルミニウム化合物であるとより効果的であり、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物が非磁性トナー粒子の質量を基準として0.1〜10質量%含有されているとより一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における一実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 原稿台
2 原稿
3 画像読み込み用光源
4 スキャナ
5 画像信号光源
6 ミラー
7 内部電位計
8 帯電手段
9 クリーニング手段
10 感光体
11a〜11d 現像器
12 中間転写体
13 中間転写体用クリーニングブレード
14 中間転写体用クリーニング手段
15 駆動系
18 給紙系
19 転写手段
20 分離手段
21 搬送系
22 定着手段
23 定着ローラ
P 紙
Claims (20)
- 感光体に静電潜像を形成し、複数色の現像剤をそれぞれ収容し前記感光体に対向して配置される複数の現像器によって前記静電潜像を各色現像剤によって現像し、この現像によって形成されたトナー像を転写材に転写して画像を形成する画像形成方法において、
前記感光体は、導電性基体と、少なくともアモルファスシリコンを含み前記導電性基体上に形成される光導電層とを有し、
前記現像に使用される現像剤は、黒色画像の現像を行うための磁性トナー粒子を少なくとも含有する黒色磁性現像剤と、カラー画像の現像を行うための非磁性トナー粒子及び磁性キャリアを少なくとも含有するカラー非磁性現像剤であり、
前記非磁性トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びワックスを少なくとも含有し、
粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×1010dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103〜1×106dN/m2の範囲にあり、
示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50〜110℃の範囲にあり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、分子量6000〜8000の領域にメインピークが存在することを特徴とする画像形成方法。 - 前記非磁性トナー粒子は、粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×108dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が1×104〜5×105dN/m2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
- 前記非磁性トナー粒子は、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が55〜100℃の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
- 前記非磁性トナー粒子は、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜90℃の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記結着樹脂は、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、及びポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、のいずれかから選択される樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記非磁性トナー粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が300以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記非磁性トナー粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が500以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記有機金属化合物は、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、芳香族カルボン酸誘導体のアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
- 前記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、前記非磁性トナー粒子の質量を基準として0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成方法。
- 感光体と、この感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した感光体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、複数色の現像剤をそれぞれ収容し前記感光体に対向して配置され前記静電潜像を各色現像剤によって現像する複数の現像器と、現像によって形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段とを有する画像形成装置において、
前記感光体は、導電性基体と、少なくともアモルファスシリコンを含み前記導電性基体上に形成される光導電層とを有し、
前記現像に使用される現像剤は、黒色画像の現像を行うための磁性トナー粒子を少なくとも含有する黒色磁性現像剤と、カラー画像の現像を行うための非磁性トナー粒子及び磁性キャリアを少なくとも含有するカラー非磁性現像剤であり、
前記非磁性トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びワックスを少なくとも含有し、
粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×1010dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が5×103〜1×106dN/m2の範囲にあり、
示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50〜110℃の範囲にあり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、分子量6000〜8000の領域にメインピークが存在することを特徴とする画像形成装置。 - 前記非磁性トナー粒子は、粘弾性特性において80℃における貯蔵弾性率が1×106〜1×108dN/m2の範囲にあり、かつ120〜180℃における貯蔵弾性率が1×104〜5×105dN/m2の範囲にあることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
- 前記非磁性トナー粒子は、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が55〜100℃の範囲にあることを特徴とする請求項11又は12に記載の画像形成装置。
- 前記非磁性トナー粒子は、示差熱分析測定における吸熱曲線において、30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜90℃の範囲にあることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記結着樹脂は、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、及びポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、のいずれかから選択される樹脂であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記非磁性トナー粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が300以上であることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記非磁性トナー粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が500以上であることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記有機金属化合物は、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物であることを特徴とする請求項11乃至17のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、芳香族カルボン酸誘導体のアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項18に記載の画像形成装置。
- 前記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、前記非磁性トナー粒子の質量を基準として0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする請求項18又は19に記載の画像形成装置。
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