JP3937712B2 - エンジンの空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は複数の気筒群を有するたとえばV型、水平対向型等の多気筒エンジンの空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排気通路に設けられる触媒が劣化すると、空燃比フィードバック制御中の触媒下流側のO2センサ出力の反転周期が短くなり、また出力振幅が大きくなるので、この特性を利用し、触媒上流側と触媒下流側のO2センサ出力の反転周期や振幅に基づいて触媒の劣化を診断するものがある(特開昭61−286550号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、V型、水平対向型等のように複数のバンク(気筒群)を有するエンジンにダブルO2センサシステムを適用し、空燃比フィードバック制御の安定性を図った、いわゆる3O2センサシステムが考案されている(特許第2621746号参照)。この装置はバンク毎の排気通路にそれぞれ上流側O2センサを設け、各バンクの排気通路が合流する集合部下流の排気通路に触媒を配置するとともに、この触媒下流の排気通路に単一の下流側O2センサを配置した構成として、各々のバンクの空燃比を各々のバンクの上流側O2センサ出力に基づいて独立にフィードバック制御し、また、下流側O2センサ出力に基づいて複数のバンクの空燃比制御を補正する。
【0004】
こうした3O2センサシステムの装置においては上流側O2センサ出力と下流側O2センサ出力の反転周期や振幅に基づいて触媒の劣化を診断しようとした場合に診断が困難になる。それは、3O2センサシステムの装置における各バンクの空燃比が各々の上流側O2センサ出力に基づいて独立にフィードバック制御されているため、各バンクの空燃比制御の周期や位相が殆どの場合一致しておらず、これらバンクからの排気空燃比の変化も同期していないためである。このため、各バンクからの排気は排気通路集合部で相互に干渉して混じり合うことになり、触媒に流入する排気の空燃比変化の位相や周期、振幅等がいずれのバンクの上流側O2センサ出力とも同期しない。したがって、触媒が劣化しているにも拘わらず下流側O2センサ出力が振れない可能性もでてくる。
【0005】
そこで、このような状況を回避するため、お互いのフィードバック制御の位相を監視し、位相のズレが所定値以内にある場合にのみ診断を行なうように構成することもできるが、この場合には触媒診断の頻度が減少するため診断終了までの時間が長引く。
【0006】
かといって1のバンクに対して残りのバンクの空燃比変化の位相を強制的に同期させる制御を行ったのでは、残りのバンクでこの強制的同期制御への切換時に過渡的に空燃比フィードバック制御周期が長くなり、これに伴って一時的に残りのバンクの排気エミッション特性や制御特性が悪化するような場合が生じる。
【0007】
これについてさらに図2を用いて説明すると、同図はV型エンジンの左右の各バンク1、2で独立に空燃比フィードバック制御を行っている場合の空燃比フィードバック補正係数α1、α2の波形である。前提として両バンク1、2で位相がずれているとして記載している。t1のタイミングで触媒診断条件が成立したとき、バンク2で強制的同期制御を開始するには、t1の後の初めてのバンク1での比例分の付加タイミング(付加は加算と減算の総称である)であるt2においてバンク2に対しても同じ方向に比例分を強制的に付加することである。すなわち、図2においてt2はバンク1に対して比例分PL1を加算するタイミングであるから、バンク2に対しても同じt2のタイミングで比例分PL2を強制的に加算しなければならない。しかしながら、バンク2では触媒診断条件の成立直前のt0のタイミングでも比例分PL2がすでに加算されているので、t0、t2といった短時間のあいだに2回続けて同じ方向に比例分PL2が加算されたのでは、この2回続けての同じ方向への比例分PL2の加算でバンク2の空燃比がリッチ側へとオーバーシュートする。このリッチ側へのオーバーシュートが生じると、バンク2の空燃比が理論空燃比へと収束する時間が長引き、その間で触媒の転化効率が低下して排気エミッションが悪くなる。
【0008】
図示しないが、触媒診断条件が成立したとき、バンク2で強制的同期制御を開始させようとして、2回続けて同じ方向に比例分PR2が減算されることがあり、この場合には2回続けての同じ方向への比例分PR2の減算でバンク2の空燃比が図2とは逆にリーン側へとアンダーシュートする。
【0009】
したがって、バンク2でのこうした空燃比のリーチ側へのオーバーシュートやリーン側へのアンダーシュートなどの理論空燃比からのずれを避けるためには、強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加により、バンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることがないようにすることである。
【0010】
そこで本発明は、強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加によりバンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる場合には強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加を禁止することにより、強制的同期制御への切換時におけるバンク2の空燃比のリッチ側やリーン側へのずれを防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図9に示すように、複数の気筒群(図は2つの気筒群32、33の場合である)と、各気筒群32、33毎に設けられた排気通路34、35と、これら排気通路34、35が合流する集合部下流の排気通路36またはこれより上流側の排気通路に配置される少なくとも1つの触媒(図は集合部下流の排気通路36に配置される触媒37)と、各々の気筒群の排気通路34、35の空燃比に基づいて各々の気筒群32、33の空燃比を独立にフィードバック制御する手段38と、所定の条件の成立時に前記複数の気筒群32、33の空燃比変動の位相を強制的に同期させる制御を行う強制的同期制御手段39とを備えるエンジン空燃比制御装置において、前記フィードバック制御手段38が、前記各々の気筒群の排気通路34、35の空燃比に基づいて各々の気筒群の排気通路34、35の空燃比が反転したとき比例分を付加することにより各々の気筒群の空燃比補正量を算出する手段40、41と、各々の空燃比補正量に基づいて各々の気筒群32、33への燃料供給量を制御する手段42、43とを備えるとともに、前記強制的同期制御手段39が、いずれか1の気筒群を特定気筒群、それ以外を残りの気筒群として(図は気筒群32を特定気筒群、気筒群33を残りの気筒群としている)、特定気筒群32での前記比例分の付加タイミングで残りの気筒群33に対して同じ方向に比例分を強制的に付加する手段44と、前記強制的同期制御の開始後初めての残りの気筒群33での比例分の強制的付加により、残りの気筒群のうちで2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる気筒群について強制的同期制御の開始後初めての比例分の強制的付加を禁止する手段45とを備える。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において前記フィードバック制御手段38が、さらに各々の気筒群の排気通路の空燃比が反転しない状態では積分分を付加することにより各々の気筒群の空燃比補正量を算出する手段を備える。
【0013】
第3の発明では、第1または第2の発明において前記所定の条件の成立時が触媒診断条件の成立時であり、前記強制的同期制御中に各気筒群毎に設けられた排気通路34、35が合流する集合部下流であってかつ前記触媒下流の排気通路36の空燃比を検出する空燃比センサに少なくとも基づいて前記触媒の劣化の有無を判定する。
【0014】
第4の発明では、第1から第3までのいずれか一つの発明において前記強制的同期制御手段39が、さらに前記比例分の強制的付加タイミング以外のとき前記残りの気筒群に対して前記残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段を備える。
【0015】
【発明の効果】
第1、第2の発明では所定の条件の成立に伴い残りの気筒群で強制的同期制御を開始するに際して、強制的同期制御の開始直前に付加した比例分の付加方向と強制的同期制御の開始後始めて強制的に付加する比例分の付加方向とが同一となる気筒群について強制的同期制御開始後始めての比例分の強制的付加を禁止するようにしたので、その強制的付加の禁止された気筒群では空燃比補正量が強制的同期制御開始直後にリッチ側やリーン側に大きくはずれることがなく、これによって強制的同期制御開始直後の残りの気筒群での排気エミッションや運転性の悪化を防止できる。
【0016】
第3の発明によれば、強制的同期制御開始直後の残りの気筒群での排気エミッションや運転性の悪化を防止した状態で触媒診断を行うので、V型、水平対向型等のように複数の気筒群を有するエンジンにおいても、短時間のうちに精度よく触媒診断を行うことができる。
【0017】
第4の発明によれば、強制的同期制御中、残りの気筒群について、比例分で特定気筒群の空燃比変動の位相との同期をとりつつ、積分分で自らの空燃比をフィードバック制御するので、強制的同期制御中の排気エミッションの悪化を防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1において、1、2はV型エンジンの左右のバンク、3は吸気通路で、各気筒毎に燃料噴射弁4を備える。この噴射弁4は燃料供給系5からの加圧燃料を吸気ポートに供給するためものである。
【0019】
左右の各バンク1、2毎に独立に排気通路6、7が形成され、各排気通路6、7にウォームアップ用の三元触媒9、10が設けられる。また、2つの排気通路6、7は合流され、その集合部下流の排気通路8にも三元触媒11が設けられている。
【0020】
三元触媒9、10、11は理論空燃比の運転時に最大の転換効率をもって排気中のNOxの還元とHC、COの酸化を行う。このため、各触媒9、10の上流側に設けたO2センサ13、14の出力が、エアフローメータ16からの吸入空気流量信号、クランク角センサ17からの単位クランク角信号や気筒判別のための基準位置信号、水温センサ18からの水温信号とともに、ECM(エレクトロニックコントロールモジュール)12に入力され、主にマイコンからなるECM12では、触媒9、10に流入する排気の空燃比が理論空燃比となるように、各バンク1、2毎に独立に空燃比のフィードバック制御を行う。
【0021】
この各バンク毎の空燃比制御については両バンク1、2で同様である。バンク1で具体的に述べると、1気筒について1燃焼サイクル(クランク角で720°)に必要となる基本噴射パルス幅Tp(この基本噴射パルス幅に対応する燃料量によりほぼ理論空燃比の混合気が得られる)をエンジンの回転速度Neと吸入空気流量Qaから、また上流側O2センサ13出力に基づいて空燃比フィードバック補正係数α1をそれぞれ演算し、この空燃比フィードバック補正係数α1で基本噴射パルス幅Tpを補正して燃料噴射パルス幅Ti1を演算し、所定の噴射タイミングでこの燃料噴射パルス幅Ti1のあいだ燃料噴射弁4を開くものである。
【0022】
また、三元触媒9、10、11が劣化すると触媒の転換効率が落ちるので、ECM12では、三元触媒11の下流側に設けられたO2センサ15と、上流側O2センサ13または14の出力に基づいて触媒の劣化診断を行う。
【0023】
この場合に、バンク1とバンク2の空燃比変動の位相を同期させる必要が生じる。このため、本実施形態では触媒診断条件(所定の条件)の成立時になると、バンク1(特定の気筒群)での比例分の付加タイミングにおいてバンク2(残りの気筒群)に対しても比例分を強制的に付加することにより強制的同期制御(位相を強制的に同期させる制御)を開始する。
【0024】
その際、強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加によりバンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることがないようにする。すなわち、バンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる場合とは、強制的同期制御の開始直前にバンク2で付加されている比例分の付加方向と、強制的同期制御の開始後初めてバンク2に強制的に付加する比例分の付加方向とが同一の場合であるから、この場合に強制的同期制御開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加を禁止する。
【0025】
ECM11で実行されるこの制御の内容を、以下のフローチャートにしたがって説明する。
【0026】
図4はバンク1の上流側O2センサ13出力に基づいてバンク1の空燃比フィードバック補正係数α1を演算するためのもので、一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
【0027】
ステップ1ではバンク1の上流側O2センサ13出力OSF1をA/D変換して取り込む。
【0028】
ステップ2では空燃比のフィードバック条件(図では「F/B条件」で略記)が成立しているかどうかみる。空燃比のフィードバック条件は下記▲1▼、▲2▼の条件がともに成立しているときである。
【0029】
▲1▼上流側O2センサ13、14の活性がともに完了している。
【0030】
▲2▼各種燃料増量補正係数COEF=1(エンジン始動直後の各種燃料増量制御が終了している)。
【0031】
▲1▼、▲2▼のいずれかが成立していないとき(空燃比フィードバック条件の非成立時)は、ステップ16に進んで、α1を1.0にクランプして今回の処理を終了する。
【0032】
▲1▼、▲2▼の条件がすべて成立しているとき(空燃比フィードバック条件の成立時)にはステップ3以降に進む。
【0033】
ステップ3〜5は、バンク1の上流側O2センサ13出力OSF1とスライスレベルSLFを比較し、その比較結果に基づいてバンク1の三元触媒9に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりリーン側であるかリッチ側であるかを判断し、その結果を状態フラグF11にセットする部分である。ここで、F11=0とセットされたときには理論空燃比よりリーン側の空燃比であることを、F11=1とセットされたときには理論空燃比よりリッチ側の空燃比であることを表す。
【0034】
ステップ6〜8はこの状態フラグF11に基づいて次のいずれの場合であるかをみる部分である。
【0035】
〈1〉フラグF11が“1”から“0”へと反転した直後(つまり空燃比がリッチからリーンへ反転した直後)である場合、
〈2〉フラグF11が“0”から“1”へと反転した直後(つまり空燃比がリーンからリッチへ反転した直後)である場合、
〈3〉フラグF11が前回、今回とも同じ“0”である(つまり空燃比がリーンを継続している)場合、
〈4〉フラグF11が前回、今回とも同じ“1”である(つまり空燃比がリッチを継続している)場合、
これらの判定結果、たとえば空燃比がリッチからリーンへ反転した直後であればα1を比例分PL1だけステップ的に大きくし(ステップ6、7、9)、その後空燃比がリーンを継続しているあいだα1を積分分ILずつ徐々に大きくする(ステップ6、8、11)。やがて、空燃比が今度はリーンからリッチへ反転するので、その直後にα1を比例分PR1だけステップ的に小さくし(ステップ6、7、10)、その後空燃比がリッチを継続しているあいだα1を積分分IRずつ徐々に小さくする(ステップ6、8、12)。後は以上を繰り返す。
【0036】
なお、ステップ9〜12でα1に添えた「z」により前回算出した値であることを意味させている。この添え字は適宜用いる。
【0037】
また、上記〈1〉〜〈4〉の判定結果に合わせてフラグF2を設定する。すなわち、〈1〉の場合にF2=1(ステップ6、7、13)、〈2〉の場合にF2=2(ステップ6、7、14)、〈3〉、〈4〉の場合にF2=0とする(ステップ6、8、15)。このフラグF2は後述する強制的同期制御に必要となるものである(図3の第2段目参照)。
【0038】
図5はバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2を演算するためのもので、一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
【0039】
ステップ21で触媒診断中かどうかみる。触媒診断中でなければステップ21よりステップ22のサブルーチン1で触媒診断時でないとき(つまりバンク毎に独立に空燃比フィードバック制御を行うとき)の空燃比フィードバック補正係数α2を演算する。これを図6により説明すると、図6のステップ31〜42、45を図4のステップ1〜12、16と比較すればわかるように、バンク毎に独立に空燃比フィードバックを制御するときのバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2の演算方法はバンク1と同様である。異なるのは各バンク1、2を区別するため、バンク1では上流側O2センサ13出力がOSF1、フラグがF11、比例分がPL1、PR1であったものが、バンク2では上流側O2センサ14出力がOSF2、フラグがF12、比例分がPL2、PR2となるだけである。したがって、これらについての詳細な説明は省略する。
【0040】
また、新たにフラグF4を導入しており、バンク2の空燃比がリッチからリーンへと反転した直後にフラグF4=1とし(ステップ36、37、43)、この逆に空燃比がリーンからリッチへと反転した直後にフラグF4=0としている(ステップ36、37、44)。この結果、フラグF4はバンク2の空燃比がリーンにある間F4=1となり、空燃比がリッチにある間F4=0となる(図3の第4段目参照)。
【0041】
図5に戻り、触媒診断中であればステップ21よりステップ23へ進み、触媒診断条件が非成立から成立へと切り替わった直後であるかどうかみる。触媒診断条件の成立に切り替わった直後であるときだけステップ24に進んでフラグF3(イグニッションスイッチON直後に0に初期設定)=1とし、ステップ25のサブルーチン2で強制的同期制御時のバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2を演算する。なお、バンク毎に独立に空燃比フィードバック制御を行うときと強制的同期制御時とを区別せずにバンク2の空燃比フィードバック補正係数としてα2を用いている。
【0042】
また、触媒診断条件が非成立から成立へと切り替わった直後でないときにはステップ23よりステップ24を飛ばしてステップ25のサブルーチン2を実行する。このサブルーチン2を図7により説明する。
【0043】
図7においてステップ51〜55では図6のステップ31〜35と同様にしてフラグF12を設定する。
【0044】
続くステップ56ではバンク1の比例分の付加タイミングであるかどうかをみる。ここで、バンク1の比例分の付加タイミングとは図4において比例分PL1を加算するタイミングまたは比例分PR1を減算するタイミングのことである。これらのタイミングでだけフラグF2=1または2としているので、フラグF2によりバンク1の比例分の付加タイミングであるかどうかがわかる。すなわち、F2=1またはF2=2であればバンク1の比例分の付加タイミングであるとしてステップ57に進み、今度はその付加タイミングが加算タイミングであるのか減算タイミングがあるのかをみる。
【0045】
F2=1(加算タイミング)であればステップ58に進み、またF2=2(減算タイミング)であればステップ62に進みフラグF3をみる。フラグF3=1(診断許可条件が非成立から成立に切り替わったタイミング)であるときにはバンク2で強制的同期制御を開始するため、バンク1での比例分PL1またはPR1の付加タイミングに合わせてバンク2に対しても比例分PL2またはPR2を同方向に強制的に付加しなければならならない。
【0046】
ただし、強制的同期制御の開始後初めての比例分PL2またはPR2の強制的付加により、比例分PL2またはPR2が同じ方向に2回続けて付加されることになったのでは、バンク2の空燃比が、それまで理論空燃比維持されていたとしてもリッチ側やリーン側へと大きくずれ、この空燃比のずれでバンク2の空燃比が理論空燃比へと収束するのが長引いてしまうので、ステップ59、63でフラグF4をみる。ステップ59でF4=1のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PL2が既に加算されているので、続けて2回目の比例分PL2が加算されないように、またステップ63でF4=0のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PR2が既に減算されているので、続けて2回目の比例分PR2の減算が行われないようにそのままステップ61に進む。
【0047】
一方、ステップ59でF4=0のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PL2が加算されておらず、したがって今回比例分PL2を加算しても空燃比のリッチ側へのずれが生じることはないので、ステップ59よりステップ60に進み、比例分PL2を前回の算出値であるα2zに加算した値を今回の空燃比フィードバック補正係数α2とする。同様にして、ステップ63でF4=1のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PR2が減算されておらず、したがって今回比例分PR2を減算しても空燃比のリーン側へのずれが生じることはないので、ステップ63よりステップ64に進み、前回の算出値であるα2zから比例分PR2を減算した値を今回の空燃比フィードバック補正係数α2とする。すなわち、バンク1で比例分を加算するときにはバンク2でも比例分を強制的に加算し、バンク1で比例分を減算するときにはバンク2でも比例分を強制的に減算する。
【0048】
このようにして強制的同期制御の開始後初めての比例分の強制的付加時の処理を終了したら、ステップ61でフラグF3=0とする。
【0049】
フラグF3=0により強制的同期制御の開始後2回目以降の比例分の強制的付加時にはステップ58よりステップ60へ、またはステップ62よりステップ64へ進むことになり、バンク1の比例分付加タイミングでバンク1の比例分の付加方向に合わせバンク2に対しても同じ方向に比例分を強制的に付加することになる。
【0050】
一方、F2=0(バンク1の比例分付加タイミングでない)のときはステップ56よりステップ64〜66に進み、フラグF12の値に応じて積分分を付加する。
【0051】
このようにしてサブルーチン2を演算したら図5に戻り、ステップ26で少なくとも下流側O2センサ15出力に基づいて触媒診断を実行する。この触媒診断については公知のものでよいため、詳述しない。
【0052】
図8は各バンク1、2の燃料噴射弁4に与える燃料噴射パルス幅を算出するためのものである。ステップ71ではエアフローメータ16の出力をA/D変換し、リニアライズした値を吸入空気流量Qaとする。ステップ72では吸入空気流量Qaをエンジン回転速度Neと気筒数の積の2倍で割って1気筒1行程当たりの吸入空気量を算出し、これに定数Kを乗じた値を基本噴射パルス幅Tpとして演算する。すなわち、Tpは1気筒1行程当たりに必要となる燃料噴射量を与える燃料噴射パルス幅である。
【0053】
ステップ73、74では
【0054】
【数1】
Ti1=Tp×(1+COEF)×α1+Ts、
Ti2=Tp×(1+COEF)×α2+Ts、
ただし、COEF:各種燃料増量補正係数、
Ts:無効噴射パルス幅、
の式によりシーケンシャル噴射時のバンク1、2の各燃料噴射パルス幅Ti1、Ti2を算出する。ここで、数1式のCOEFは1と水温補正係数KTWや始動後増量補正係数KASなどとの和であり、エンジン暖機完了後になればCOEF=1となる。また、燃料噴射弁4に噴射信号を与えてから噴射弁4が実際に開弁するまでに作動遅れ時間があり、Tsはこの作動遅れ時間を補償するためのものである。
【0055】
このようにして算出されたバンク毎の燃料噴射パルス幅Ti1、Ti2はECM12内のメモリにストアされ、図示しない燃料噴射実行ルーチンで読み出されて使用される。たとえば、V6エンジンで点火順序が1−2−3−4−5−6であれば、クランク角センサ17の信号が、バンク1にある#1気筒の燃料噴射開始時期と一致したとき、Ti1を開弁時間とする燃料噴射制御パルス信号が#1気筒の燃料噴射弁4に、またクランク角センサ17の信号が、バンク2にある#2気筒の燃料噴射開始時期と一致したとき、Ti2を開弁時間とする燃料噴射制御パルス信号が#2気筒の燃料噴射弁3に送られる。
【0056】
ここで、本実施形態の作用を図3を参照しながら説明する。図3はエンジンの暖機完了後の定常状態で触媒診断条件が成立したときのものである。t2は強制的同期制御の開始後初めて比例分PL2を強制的に加算するタイミングであるが、このときには強制的同期制御開始直前のt0のタイミングで比例分PL2を加算しているので、t2のタイミングでも比例分PL2を強制的に加算したとき、バンク2の空燃比がリッチ側にオーバーシュートが生じることを図2で前述した。なお、図2は図3に対する比較例である。
【0057】
これに対して、本実施形態によれば次のようにバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2が変化する。
【0058】
t2:t2は強制的同期制御開始後初めての比例分の強制的付加タイミングである。しかしながら、t0のタイミングで比例分PL2が加算されたときフラグF4=1となることから(図3の最下段参照)、t2のタイミングでは図7においてステップ51→52→53→54→56→57→58→59→61と流れるため、t2のタイミングで比例分PL2が強制的に加算されることがない。
【0059】
t2直後〜t4直前まで:t2の直後からは図7においてステップ51→52→53→54→56→64→65→61と流れるため、積分分ILの加算が続き、上流側O2センサ14出力OSF2がリーンよりリッチへと反転するt3のタイミングからは今度は図7においてステップ51→52→53→55→56→64→66→61と流れるため、積分分IRの減算が続く。
【0060】
t4:t4は強制的同期制御開始後2回目の比例分の強制的付加タイミングであり、このときには図7においてステップ51→52→53→55→56→57→62→64→61と流れる。すなわち、バンク1で比例分PR1が減算されるので、これに合わせてバンク2でも比例分PR2が強制的に減算される。
【0061】
t4直後〜t6の直前まで:t4の直後は図7においてステップ51→52→53→55→56→64→66→61と流れるため、積分分IRの減算が続き、上流側O2センサ14出力OSF2がリッチよりリーンへと反転するt5のタイミングからは図7においてステップ51→52→53→54→56→64→65→61と流れるため、積分分ILの加算が続く。
【0062】
t6:t6は強制的同期制御開始後3回目の比例分の強制的付加タイミングであり、このときには図7においてステップ51→52→53→54→56→57→58→60→61と流れる。すなわち、バンク1で比例分PL1が加算されるので、これに合わせてバンク2でも比例分PL2が強制的に加算される。
【0063】
t6直後〜t8直前まで:t2直後〜t4直前までと同様である。
【0064】
このように、本実施形態では触媒診断条件の成立に伴いバンク2で強制的同期制御を開始するに際して、強制的同期制御の開始直前に付加した比例分の付加方向と、強制的同期制御の開始後始めて強制的に付加する比例分の付加方向とが同一となる場合に、強制的同期制御開始後始めてのこの比例分の強制的付加を禁止するようにしたので(t2のタイミングで比例分が付加されていない)、強制的同期制御開始直後にバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2が大きくリッチ側にずれることがなく(図3の第3段目参照)、これによって強制的同期制御開始直後のバンク2での空燃比の理論空燃比からのずれを回避することが可能となり、排気エミッションや運転性の悪化を防止できる。
【0065】
また、強制的同期制御開始直後のバンク2での排気エミッションや運転性の悪化を防止した状態で触媒診断を行うので、V型エンジンのように複数のバンクを有するエンジンにおいても、短時間のうちに精度よく触媒診断を行うことができる。
【0066】
また、強制的同期制御中バンク2については、比例分はバンク1の比例分付加タイミングにあわせて強制的に付加する一方、積分分はバンク2の上流側O2センサ14出力に基づいて空燃比フィードバック制御を行っている(バンク2の上流側O2センサ14出力より得られるバンク2の空燃比が反転しない状態で積分分を付加する)。すなわち、バンク2では比例分の強制的付加でバンク1の空燃比変動の位相との同期をとりつつ、積分分の付加で自らの空燃比をフィードバック制御するので、強制的同期制御中の排気エミッションの悪化を防止できる。
【0067】
実施形態では各々のバンク1、2の空燃比を独立にフィードバック制御する手段が、各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比に基づいて各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比が反転したとき比例分を付加するとともに、各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比が反転しない状態では積分分を付加することにより各々のバンク1、2の空燃比フィードバック補正係数α1、α2(空燃比補正量)を算出する手段と、各々の空燃比フィードバック補正係数α1、α2に基づいて各々のバンク1、2への燃料供給量を制御する手段とを備える場合で説明したが、簡単には各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比が反転しない状態では積分分を付加しなくてもかまわない。
【0068】
実施形態では強制的同期制御手段が、バンク1を特定気筒群、バンク2を残りの気筒群として、特定気筒群での比例分の付加タイミングで残りの気筒群に対して同じ方向に比例分を強制的に付加する手段と、強制的同期制御の開始後初めての特定気筒群での比例分の強制的付加により、2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる残りの気筒群について強制的同期制御の開始後初めての比例分のその強制的付加を禁止する手段と、特定気筒群での比例分の付加タイミング以外のとき残りの気筒群に対して残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段とを備える場合で説明したが、特定気筒群での比例分の付加タイミング以外のとき残りの気筒群に対して残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段がなくてもかまわない。
【0069】
実施形態では、V型エンジンの場合で述べたが、これに限られるものでなく、水平対向型エンジンだけでなく直列型エンジンに対しても適用できる。
【0070】
実施形態では気筒群が2つの場合で述べたが、2つに限られるものでない。たとえば3つの気筒群に分割してもかまわない。このときには、いずれか1の気筒群を特定気筒群、それ以外の2つの気筒群を残りの気筒群とすればよい。
【0071】
実施形態では、所定の条件の成立時として触媒診断条件の成立時で述べたが、これに限られるものでなく、複数の気筒群の空燃比変動の位相を同期させる要求があるときには本発明の適用がある。
【0072】
実施形態では、上流側O2センサ出力と比較するスライスレベルにヒステリシスを設けない場合で説明したが、スライスレベルにヒステリシスを設けた場合でもかまわない。たとえば、SLLFをリーン側スライスレベル、SLHFをリッチ側スライスレベル(SLHF>SLLF)として、これらと上流側O2センサ13、14出力との比較結果に基づいてバンク1、2の三元触媒9、10に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりリーン側であるかリッチ側であるかを判断し、フラグF11、F12をセットする。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の制御システム図。
【図2】エンジンの暖機完了後の定常状態で触媒診断条件が成立したときの本実施形態に対する比較例の作用を説明するための波形図。
【図3】エンジンの暖機完了後の定常状態で触媒診断条件が成立したときの本実施形態の作用を説明するための波形図。
【図4】バンク1の空燃比フィードバック補正係数の演算を説明するためのフローチャート。
【図5】バンク2の空燃比フィードバック補正係数の演算を説明するためのフローチャート。
【図6】サブルーチン1の内容を説明するためのフローチャート。
【図7】サブルーチン2の内容を説明するためのフローチャート。
【図8】各バンクの燃料噴射パルス幅の算出を説明するためのフローチャート。
【図9】第1の発明のクレーム対応図。
【符号の説明】
6、7、8 排気通路
9、10、11 触媒
12 ECM
13 上流側O2センサ
14 上流側O2センサ
15 下流側O2センサ
【発明の属する技術分野】
この発明は複数の気筒群を有するたとえばV型、水平対向型等の多気筒エンジンの空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排気通路に設けられる触媒が劣化すると、空燃比フィードバック制御中の触媒下流側のO2センサ出力の反転周期が短くなり、また出力振幅が大きくなるので、この特性を利用し、触媒上流側と触媒下流側のO2センサ出力の反転周期や振幅に基づいて触媒の劣化を診断するものがある(特開昭61−286550号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、V型、水平対向型等のように複数のバンク(気筒群)を有するエンジンにダブルO2センサシステムを適用し、空燃比フィードバック制御の安定性を図った、いわゆる3O2センサシステムが考案されている(特許第2621746号参照)。この装置はバンク毎の排気通路にそれぞれ上流側O2センサを設け、各バンクの排気通路が合流する集合部下流の排気通路に触媒を配置するとともに、この触媒下流の排気通路に単一の下流側O2センサを配置した構成として、各々のバンクの空燃比を各々のバンクの上流側O2センサ出力に基づいて独立にフィードバック制御し、また、下流側O2センサ出力に基づいて複数のバンクの空燃比制御を補正する。
【0004】
こうした3O2センサシステムの装置においては上流側O2センサ出力と下流側O2センサ出力の反転周期や振幅に基づいて触媒の劣化を診断しようとした場合に診断が困難になる。それは、3O2センサシステムの装置における各バンクの空燃比が各々の上流側O2センサ出力に基づいて独立にフィードバック制御されているため、各バンクの空燃比制御の周期や位相が殆どの場合一致しておらず、これらバンクからの排気空燃比の変化も同期していないためである。このため、各バンクからの排気は排気通路集合部で相互に干渉して混じり合うことになり、触媒に流入する排気の空燃比変化の位相や周期、振幅等がいずれのバンクの上流側O2センサ出力とも同期しない。したがって、触媒が劣化しているにも拘わらず下流側O2センサ出力が振れない可能性もでてくる。
【0005】
そこで、このような状況を回避するため、お互いのフィードバック制御の位相を監視し、位相のズレが所定値以内にある場合にのみ診断を行なうように構成することもできるが、この場合には触媒診断の頻度が減少するため診断終了までの時間が長引く。
【0006】
かといって1のバンクに対して残りのバンクの空燃比変化の位相を強制的に同期させる制御を行ったのでは、残りのバンクでこの強制的同期制御への切換時に過渡的に空燃比フィードバック制御周期が長くなり、これに伴って一時的に残りのバンクの排気エミッション特性や制御特性が悪化するような場合が生じる。
【0007】
これについてさらに図2を用いて説明すると、同図はV型エンジンの左右の各バンク1、2で独立に空燃比フィードバック制御を行っている場合の空燃比フィードバック補正係数α1、α2の波形である。前提として両バンク1、2で位相がずれているとして記載している。t1のタイミングで触媒診断条件が成立したとき、バンク2で強制的同期制御を開始するには、t1の後の初めてのバンク1での比例分の付加タイミング(付加は加算と減算の総称である)であるt2においてバンク2に対しても同じ方向に比例分を強制的に付加することである。すなわち、図2においてt2はバンク1に対して比例分PL1を加算するタイミングであるから、バンク2に対しても同じt2のタイミングで比例分PL2を強制的に加算しなければならない。しかしながら、バンク2では触媒診断条件の成立直前のt0のタイミングでも比例分PL2がすでに加算されているので、t0、t2といった短時間のあいだに2回続けて同じ方向に比例分PL2が加算されたのでは、この2回続けての同じ方向への比例分PL2の加算でバンク2の空燃比がリッチ側へとオーバーシュートする。このリッチ側へのオーバーシュートが生じると、バンク2の空燃比が理論空燃比へと収束する時間が長引き、その間で触媒の転化効率が低下して排気エミッションが悪くなる。
【0008】
図示しないが、触媒診断条件が成立したとき、バンク2で強制的同期制御を開始させようとして、2回続けて同じ方向に比例分PR2が減算されることがあり、この場合には2回続けての同じ方向への比例分PR2の減算でバンク2の空燃比が図2とは逆にリーン側へとアンダーシュートする。
【0009】
したがって、バンク2でのこうした空燃比のリーチ側へのオーバーシュートやリーン側へのアンダーシュートなどの理論空燃比からのずれを避けるためには、強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加により、バンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることがないようにすることである。
【0010】
そこで本発明は、強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加によりバンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる場合には強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加を禁止することにより、強制的同期制御への切換時におけるバンク2の空燃比のリッチ側やリーン側へのずれを防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図9に示すように、複数の気筒群(図は2つの気筒群32、33の場合である)と、各気筒群32、33毎に設けられた排気通路34、35と、これら排気通路34、35が合流する集合部下流の排気通路36またはこれより上流側の排気通路に配置される少なくとも1つの触媒(図は集合部下流の排気通路36に配置される触媒37)と、各々の気筒群の排気通路34、35の空燃比に基づいて各々の気筒群32、33の空燃比を独立にフィードバック制御する手段38と、所定の条件の成立時に前記複数の気筒群32、33の空燃比変動の位相を強制的に同期させる制御を行う強制的同期制御手段39とを備えるエンジン空燃比制御装置において、前記フィードバック制御手段38が、前記各々の気筒群の排気通路34、35の空燃比に基づいて各々の気筒群の排気通路34、35の空燃比が反転したとき比例分を付加することにより各々の気筒群の空燃比補正量を算出する手段40、41と、各々の空燃比補正量に基づいて各々の気筒群32、33への燃料供給量を制御する手段42、43とを備えるとともに、前記強制的同期制御手段39が、いずれか1の気筒群を特定気筒群、それ以外を残りの気筒群として(図は気筒群32を特定気筒群、気筒群33を残りの気筒群としている)、特定気筒群32での前記比例分の付加タイミングで残りの気筒群33に対して同じ方向に比例分を強制的に付加する手段44と、前記強制的同期制御の開始後初めての残りの気筒群33での比例分の強制的付加により、残りの気筒群のうちで2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる気筒群について強制的同期制御の開始後初めての比例分の強制的付加を禁止する手段45とを備える。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において前記フィードバック制御手段38が、さらに各々の気筒群の排気通路の空燃比が反転しない状態では積分分を付加することにより各々の気筒群の空燃比補正量を算出する手段を備える。
【0013】
第3の発明では、第1または第2の発明において前記所定の条件の成立時が触媒診断条件の成立時であり、前記強制的同期制御中に各気筒群毎に設けられた排気通路34、35が合流する集合部下流であってかつ前記触媒下流の排気通路36の空燃比を検出する空燃比センサに少なくとも基づいて前記触媒の劣化の有無を判定する。
【0014】
第4の発明では、第1から第3までのいずれか一つの発明において前記強制的同期制御手段39が、さらに前記比例分の強制的付加タイミング以外のとき前記残りの気筒群に対して前記残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段を備える。
【0015】
【発明の効果】
第1、第2の発明では所定の条件の成立に伴い残りの気筒群で強制的同期制御を開始するに際して、強制的同期制御の開始直前に付加した比例分の付加方向と強制的同期制御の開始後始めて強制的に付加する比例分の付加方向とが同一となる気筒群について強制的同期制御開始後始めての比例分の強制的付加を禁止するようにしたので、その強制的付加の禁止された気筒群では空燃比補正量が強制的同期制御開始直後にリッチ側やリーン側に大きくはずれることがなく、これによって強制的同期制御開始直後の残りの気筒群での排気エミッションや運転性の悪化を防止できる。
【0016】
第3の発明によれば、強制的同期制御開始直後の残りの気筒群での排気エミッションや運転性の悪化を防止した状態で触媒診断を行うので、V型、水平対向型等のように複数の気筒群を有するエンジンにおいても、短時間のうちに精度よく触媒診断を行うことができる。
【0017】
第4の発明によれば、強制的同期制御中、残りの気筒群について、比例分で特定気筒群の空燃比変動の位相との同期をとりつつ、積分分で自らの空燃比をフィードバック制御するので、強制的同期制御中の排気エミッションの悪化を防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1において、1、2はV型エンジンの左右のバンク、3は吸気通路で、各気筒毎に燃料噴射弁4を備える。この噴射弁4は燃料供給系5からの加圧燃料を吸気ポートに供給するためものである。
【0019】
左右の各バンク1、2毎に独立に排気通路6、7が形成され、各排気通路6、7にウォームアップ用の三元触媒9、10が設けられる。また、2つの排気通路6、7は合流され、その集合部下流の排気通路8にも三元触媒11が設けられている。
【0020】
三元触媒9、10、11は理論空燃比の運転時に最大の転換効率をもって排気中のNOxの還元とHC、COの酸化を行う。このため、各触媒9、10の上流側に設けたO2センサ13、14の出力が、エアフローメータ16からの吸入空気流量信号、クランク角センサ17からの単位クランク角信号や気筒判別のための基準位置信号、水温センサ18からの水温信号とともに、ECM(エレクトロニックコントロールモジュール)12に入力され、主にマイコンからなるECM12では、触媒9、10に流入する排気の空燃比が理論空燃比となるように、各バンク1、2毎に独立に空燃比のフィードバック制御を行う。
【0021】
この各バンク毎の空燃比制御については両バンク1、2で同様である。バンク1で具体的に述べると、1気筒について1燃焼サイクル(クランク角で720°)に必要となる基本噴射パルス幅Tp(この基本噴射パルス幅に対応する燃料量によりほぼ理論空燃比の混合気が得られる)をエンジンの回転速度Neと吸入空気流量Qaから、また上流側O2センサ13出力に基づいて空燃比フィードバック補正係数α1をそれぞれ演算し、この空燃比フィードバック補正係数α1で基本噴射パルス幅Tpを補正して燃料噴射パルス幅Ti1を演算し、所定の噴射タイミングでこの燃料噴射パルス幅Ti1のあいだ燃料噴射弁4を開くものである。
【0022】
また、三元触媒9、10、11が劣化すると触媒の転換効率が落ちるので、ECM12では、三元触媒11の下流側に設けられたO2センサ15と、上流側O2センサ13または14の出力に基づいて触媒の劣化診断を行う。
【0023】
この場合に、バンク1とバンク2の空燃比変動の位相を同期させる必要が生じる。このため、本実施形態では触媒診断条件(所定の条件)の成立時になると、バンク1(特定の気筒群)での比例分の付加タイミングにおいてバンク2(残りの気筒群)に対しても比例分を強制的に付加することにより強制的同期制御(位相を強制的に同期させる制御)を開始する。
【0024】
その際、強制的同期制御の開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加によりバンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることがないようにする。すなわち、バンク2で2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる場合とは、強制的同期制御の開始直前にバンク2で付加されている比例分の付加方向と、強制的同期制御の開始後初めてバンク2に強制的に付加する比例分の付加方向とが同一の場合であるから、この場合に強制的同期制御開始後初めてのバンク2での比例分の強制的付加を禁止する。
【0025】
ECM11で実行されるこの制御の内容を、以下のフローチャートにしたがって説明する。
【0026】
図4はバンク1の上流側O2センサ13出力に基づいてバンク1の空燃比フィードバック補正係数α1を演算するためのもので、一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
【0027】
ステップ1ではバンク1の上流側O2センサ13出力OSF1をA/D変換して取り込む。
【0028】
ステップ2では空燃比のフィードバック条件(図では「F/B条件」で略記)が成立しているかどうかみる。空燃比のフィードバック条件は下記▲1▼、▲2▼の条件がともに成立しているときである。
【0029】
▲1▼上流側O2センサ13、14の活性がともに完了している。
【0030】
▲2▼各種燃料増量補正係数COEF=1(エンジン始動直後の各種燃料増量制御が終了している)。
【0031】
▲1▼、▲2▼のいずれかが成立していないとき(空燃比フィードバック条件の非成立時)は、ステップ16に進んで、α1を1.0にクランプして今回の処理を終了する。
【0032】
▲1▼、▲2▼の条件がすべて成立しているとき(空燃比フィードバック条件の成立時)にはステップ3以降に進む。
【0033】
ステップ3〜5は、バンク1の上流側O2センサ13出力OSF1とスライスレベルSLFを比較し、その比較結果に基づいてバンク1の三元触媒9に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりリーン側であるかリッチ側であるかを判断し、その結果を状態フラグF11にセットする部分である。ここで、F11=0とセットされたときには理論空燃比よりリーン側の空燃比であることを、F11=1とセットされたときには理論空燃比よりリッチ側の空燃比であることを表す。
【0034】
ステップ6〜8はこの状態フラグF11に基づいて次のいずれの場合であるかをみる部分である。
【0035】
〈1〉フラグF11が“1”から“0”へと反転した直後(つまり空燃比がリッチからリーンへ反転した直後)である場合、
〈2〉フラグF11が“0”から“1”へと反転した直後(つまり空燃比がリーンからリッチへ反転した直後)である場合、
〈3〉フラグF11が前回、今回とも同じ“0”である(つまり空燃比がリーンを継続している)場合、
〈4〉フラグF11が前回、今回とも同じ“1”である(つまり空燃比がリッチを継続している)場合、
これらの判定結果、たとえば空燃比がリッチからリーンへ反転した直後であればα1を比例分PL1だけステップ的に大きくし(ステップ6、7、9)、その後空燃比がリーンを継続しているあいだα1を積分分ILずつ徐々に大きくする(ステップ6、8、11)。やがて、空燃比が今度はリーンからリッチへ反転するので、その直後にα1を比例分PR1だけステップ的に小さくし(ステップ6、7、10)、その後空燃比がリッチを継続しているあいだα1を積分分IRずつ徐々に小さくする(ステップ6、8、12)。後は以上を繰り返す。
【0036】
なお、ステップ9〜12でα1に添えた「z」により前回算出した値であることを意味させている。この添え字は適宜用いる。
【0037】
また、上記〈1〉〜〈4〉の判定結果に合わせてフラグF2を設定する。すなわち、〈1〉の場合にF2=1(ステップ6、7、13)、〈2〉の場合にF2=2(ステップ6、7、14)、〈3〉、〈4〉の場合にF2=0とする(ステップ6、8、15)。このフラグF2は後述する強制的同期制御に必要となるものである(図3の第2段目参照)。
【0038】
図5はバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2を演算するためのもので、一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
【0039】
ステップ21で触媒診断中かどうかみる。触媒診断中でなければステップ21よりステップ22のサブルーチン1で触媒診断時でないとき(つまりバンク毎に独立に空燃比フィードバック制御を行うとき)の空燃比フィードバック補正係数α2を演算する。これを図6により説明すると、図6のステップ31〜42、45を図4のステップ1〜12、16と比較すればわかるように、バンク毎に独立に空燃比フィードバックを制御するときのバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2の演算方法はバンク1と同様である。異なるのは各バンク1、2を区別するため、バンク1では上流側O2センサ13出力がOSF1、フラグがF11、比例分がPL1、PR1であったものが、バンク2では上流側O2センサ14出力がOSF2、フラグがF12、比例分がPL2、PR2となるだけである。したがって、これらについての詳細な説明は省略する。
【0040】
また、新たにフラグF4を導入しており、バンク2の空燃比がリッチからリーンへと反転した直後にフラグF4=1とし(ステップ36、37、43)、この逆に空燃比がリーンからリッチへと反転した直後にフラグF4=0としている(ステップ36、37、44)。この結果、フラグF4はバンク2の空燃比がリーンにある間F4=1となり、空燃比がリッチにある間F4=0となる(図3の第4段目参照)。
【0041】
図5に戻り、触媒診断中であればステップ21よりステップ23へ進み、触媒診断条件が非成立から成立へと切り替わった直後であるかどうかみる。触媒診断条件の成立に切り替わった直後であるときだけステップ24に進んでフラグF3(イグニッションスイッチON直後に0に初期設定)=1とし、ステップ25のサブルーチン2で強制的同期制御時のバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2を演算する。なお、バンク毎に独立に空燃比フィードバック制御を行うときと強制的同期制御時とを区別せずにバンク2の空燃比フィードバック補正係数としてα2を用いている。
【0042】
また、触媒診断条件が非成立から成立へと切り替わった直後でないときにはステップ23よりステップ24を飛ばしてステップ25のサブルーチン2を実行する。このサブルーチン2を図7により説明する。
【0043】
図7においてステップ51〜55では図6のステップ31〜35と同様にしてフラグF12を設定する。
【0044】
続くステップ56ではバンク1の比例分の付加タイミングであるかどうかをみる。ここで、バンク1の比例分の付加タイミングとは図4において比例分PL1を加算するタイミングまたは比例分PR1を減算するタイミングのことである。これらのタイミングでだけフラグF2=1または2としているので、フラグF2によりバンク1の比例分の付加タイミングであるかどうかがわかる。すなわち、F2=1またはF2=2であればバンク1の比例分の付加タイミングであるとしてステップ57に進み、今度はその付加タイミングが加算タイミングであるのか減算タイミングがあるのかをみる。
【0045】
F2=1(加算タイミング)であればステップ58に進み、またF2=2(減算タイミング)であればステップ62に進みフラグF3をみる。フラグF3=1(診断許可条件が非成立から成立に切り替わったタイミング)であるときにはバンク2で強制的同期制御を開始するため、バンク1での比例分PL1またはPR1の付加タイミングに合わせてバンク2に対しても比例分PL2またはPR2を同方向に強制的に付加しなければならならない。
【0046】
ただし、強制的同期制御の開始後初めての比例分PL2またはPR2の強制的付加により、比例分PL2またはPR2が同じ方向に2回続けて付加されることになったのでは、バンク2の空燃比が、それまで理論空燃比維持されていたとしてもリッチ側やリーン側へと大きくずれ、この空燃比のずれでバンク2の空燃比が理論空燃比へと収束するのが長引いてしまうので、ステップ59、63でフラグF4をみる。ステップ59でF4=1のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PL2が既に加算されているので、続けて2回目の比例分PL2が加算されないように、またステップ63でF4=0のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PR2が既に減算されているので、続けて2回目の比例分PR2の減算が行われないようにそのままステップ61に進む。
【0047】
一方、ステップ59でF4=0のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PL2が加算されておらず、したがって今回比例分PL2を加算しても空燃比のリッチ側へのずれが生じることはないので、ステップ59よりステップ60に進み、比例分PL2を前回の算出値であるα2zに加算した値を今回の空燃比フィードバック補正係数α2とする。同様にして、ステップ63でF4=1のときには強制的同期制御の開始直前に比例分PR2が減算されておらず、したがって今回比例分PR2を減算しても空燃比のリーン側へのずれが生じることはないので、ステップ63よりステップ64に進み、前回の算出値であるα2zから比例分PR2を減算した値を今回の空燃比フィードバック補正係数α2とする。すなわち、バンク1で比例分を加算するときにはバンク2でも比例分を強制的に加算し、バンク1で比例分を減算するときにはバンク2でも比例分を強制的に減算する。
【0048】
このようにして強制的同期制御の開始後初めての比例分の強制的付加時の処理を終了したら、ステップ61でフラグF3=0とする。
【0049】
フラグF3=0により強制的同期制御の開始後2回目以降の比例分の強制的付加時にはステップ58よりステップ60へ、またはステップ62よりステップ64へ進むことになり、バンク1の比例分付加タイミングでバンク1の比例分の付加方向に合わせバンク2に対しても同じ方向に比例分を強制的に付加することになる。
【0050】
一方、F2=0(バンク1の比例分付加タイミングでない)のときはステップ56よりステップ64〜66に進み、フラグF12の値に応じて積分分を付加する。
【0051】
このようにしてサブルーチン2を演算したら図5に戻り、ステップ26で少なくとも下流側O2センサ15出力に基づいて触媒診断を実行する。この触媒診断については公知のものでよいため、詳述しない。
【0052】
図8は各バンク1、2の燃料噴射弁4に与える燃料噴射パルス幅を算出するためのものである。ステップ71ではエアフローメータ16の出力をA/D変換し、リニアライズした値を吸入空気流量Qaとする。ステップ72では吸入空気流量Qaをエンジン回転速度Neと気筒数の積の2倍で割って1気筒1行程当たりの吸入空気量を算出し、これに定数Kを乗じた値を基本噴射パルス幅Tpとして演算する。すなわち、Tpは1気筒1行程当たりに必要となる燃料噴射量を与える燃料噴射パルス幅である。
【0053】
ステップ73、74では
【0054】
【数1】
Ti1=Tp×(1+COEF)×α1+Ts、
Ti2=Tp×(1+COEF)×α2+Ts、
ただし、COEF:各種燃料増量補正係数、
Ts:無効噴射パルス幅、
の式によりシーケンシャル噴射時のバンク1、2の各燃料噴射パルス幅Ti1、Ti2を算出する。ここで、数1式のCOEFは1と水温補正係数KTWや始動後増量補正係数KASなどとの和であり、エンジン暖機完了後になればCOEF=1となる。また、燃料噴射弁4に噴射信号を与えてから噴射弁4が実際に開弁するまでに作動遅れ時間があり、Tsはこの作動遅れ時間を補償するためのものである。
【0055】
このようにして算出されたバンク毎の燃料噴射パルス幅Ti1、Ti2はECM12内のメモリにストアされ、図示しない燃料噴射実行ルーチンで読み出されて使用される。たとえば、V6エンジンで点火順序が1−2−3−4−5−6であれば、クランク角センサ17の信号が、バンク1にある#1気筒の燃料噴射開始時期と一致したとき、Ti1を開弁時間とする燃料噴射制御パルス信号が#1気筒の燃料噴射弁4に、またクランク角センサ17の信号が、バンク2にある#2気筒の燃料噴射開始時期と一致したとき、Ti2を開弁時間とする燃料噴射制御パルス信号が#2気筒の燃料噴射弁3に送られる。
【0056】
ここで、本実施形態の作用を図3を参照しながら説明する。図3はエンジンの暖機完了後の定常状態で触媒診断条件が成立したときのものである。t2は強制的同期制御の開始後初めて比例分PL2を強制的に加算するタイミングであるが、このときには強制的同期制御開始直前のt0のタイミングで比例分PL2を加算しているので、t2のタイミングでも比例分PL2を強制的に加算したとき、バンク2の空燃比がリッチ側にオーバーシュートが生じることを図2で前述した。なお、図2は図3に対する比較例である。
【0057】
これに対して、本実施形態によれば次のようにバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2が変化する。
【0058】
t2:t2は強制的同期制御開始後初めての比例分の強制的付加タイミングである。しかしながら、t0のタイミングで比例分PL2が加算されたときフラグF4=1となることから(図3の最下段参照)、t2のタイミングでは図7においてステップ51→52→53→54→56→57→58→59→61と流れるため、t2のタイミングで比例分PL2が強制的に加算されることがない。
【0059】
t2直後〜t4直前まで:t2の直後からは図7においてステップ51→52→53→54→56→64→65→61と流れるため、積分分ILの加算が続き、上流側O2センサ14出力OSF2がリーンよりリッチへと反転するt3のタイミングからは今度は図7においてステップ51→52→53→55→56→64→66→61と流れるため、積分分IRの減算が続く。
【0060】
t4:t4は強制的同期制御開始後2回目の比例分の強制的付加タイミングであり、このときには図7においてステップ51→52→53→55→56→57→62→64→61と流れる。すなわち、バンク1で比例分PR1が減算されるので、これに合わせてバンク2でも比例分PR2が強制的に減算される。
【0061】
t4直後〜t6の直前まで:t4の直後は図7においてステップ51→52→53→55→56→64→66→61と流れるため、積分分IRの減算が続き、上流側O2センサ14出力OSF2がリッチよりリーンへと反転するt5のタイミングからは図7においてステップ51→52→53→54→56→64→65→61と流れるため、積分分ILの加算が続く。
【0062】
t6:t6は強制的同期制御開始後3回目の比例分の強制的付加タイミングであり、このときには図7においてステップ51→52→53→54→56→57→58→60→61と流れる。すなわち、バンク1で比例分PL1が加算されるので、これに合わせてバンク2でも比例分PL2が強制的に加算される。
【0063】
t6直後〜t8直前まで:t2直後〜t4直前までと同様である。
【0064】
このように、本実施形態では触媒診断条件の成立に伴いバンク2で強制的同期制御を開始するに際して、強制的同期制御の開始直前に付加した比例分の付加方向と、強制的同期制御の開始後始めて強制的に付加する比例分の付加方向とが同一となる場合に、強制的同期制御開始後始めてのこの比例分の強制的付加を禁止するようにしたので(t2のタイミングで比例分が付加されていない)、強制的同期制御開始直後にバンク2の空燃比フィードバック補正係数α2が大きくリッチ側にずれることがなく(図3の第3段目参照)、これによって強制的同期制御開始直後のバンク2での空燃比の理論空燃比からのずれを回避することが可能となり、排気エミッションや運転性の悪化を防止できる。
【0065】
また、強制的同期制御開始直後のバンク2での排気エミッションや運転性の悪化を防止した状態で触媒診断を行うので、V型エンジンのように複数のバンクを有するエンジンにおいても、短時間のうちに精度よく触媒診断を行うことができる。
【0066】
また、強制的同期制御中バンク2については、比例分はバンク1の比例分付加タイミングにあわせて強制的に付加する一方、積分分はバンク2の上流側O2センサ14出力に基づいて空燃比フィードバック制御を行っている(バンク2の上流側O2センサ14出力より得られるバンク2の空燃比が反転しない状態で積分分を付加する)。すなわち、バンク2では比例分の強制的付加でバンク1の空燃比変動の位相との同期をとりつつ、積分分の付加で自らの空燃比をフィードバック制御するので、強制的同期制御中の排気エミッションの悪化を防止できる。
【0067】
実施形態では各々のバンク1、2の空燃比を独立にフィードバック制御する手段が、各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比に基づいて各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比が反転したとき比例分を付加するとともに、各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比が反転しない状態では積分分を付加することにより各々のバンク1、2の空燃比フィードバック補正係数α1、α2(空燃比補正量)を算出する手段と、各々の空燃比フィードバック補正係数α1、α2に基づいて各々のバンク1、2への燃料供給量を制御する手段とを備える場合で説明したが、簡単には各々のバンク1、2の排気通路6、7の空燃比が反転しない状態では積分分を付加しなくてもかまわない。
【0068】
実施形態では強制的同期制御手段が、バンク1を特定気筒群、バンク2を残りの気筒群として、特定気筒群での比例分の付加タイミングで残りの気筒群に対して同じ方向に比例分を強制的に付加する手段と、強制的同期制御の開始後初めての特定気筒群での比例分の強制的付加により、2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる残りの気筒群について強制的同期制御の開始後初めての比例分のその強制的付加を禁止する手段と、特定気筒群での比例分の付加タイミング以外のとき残りの気筒群に対して残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段とを備える場合で説明したが、特定気筒群での比例分の付加タイミング以外のとき残りの気筒群に対して残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段がなくてもかまわない。
【0069】
実施形態では、V型エンジンの場合で述べたが、これに限られるものでなく、水平対向型エンジンだけでなく直列型エンジンに対しても適用できる。
【0070】
実施形態では気筒群が2つの場合で述べたが、2つに限られるものでない。たとえば3つの気筒群に分割してもかまわない。このときには、いずれか1の気筒群を特定気筒群、それ以外の2つの気筒群を残りの気筒群とすればよい。
【0071】
実施形態では、所定の条件の成立時として触媒診断条件の成立時で述べたが、これに限られるものでなく、複数の気筒群の空燃比変動の位相を同期させる要求があるときには本発明の適用がある。
【0072】
実施形態では、上流側O2センサ出力と比較するスライスレベルにヒステリシスを設けない場合で説明したが、スライスレベルにヒステリシスを設けた場合でもかまわない。たとえば、SLLFをリーン側スライスレベル、SLHFをリッチ側スライスレベル(SLHF>SLLF)として、これらと上流側O2センサ13、14出力との比較結果に基づいてバンク1、2の三元触媒9、10に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりリーン側であるかリッチ側であるかを判断し、フラグF11、F12をセットする。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の制御システム図。
【図2】エンジンの暖機完了後の定常状態で触媒診断条件が成立したときの本実施形態に対する比較例の作用を説明するための波形図。
【図3】エンジンの暖機完了後の定常状態で触媒診断条件が成立したときの本実施形態の作用を説明するための波形図。
【図4】バンク1の空燃比フィードバック補正係数の演算を説明するためのフローチャート。
【図5】バンク2の空燃比フィードバック補正係数の演算を説明するためのフローチャート。
【図6】サブルーチン1の内容を説明するためのフローチャート。
【図7】サブルーチン2の内容を説明するためのフローチャート。
【図8】各バンクの燃料噴射パルス幅の算出を説明するためのフローチャート。
【図9】第1の発明のクレーム対応図。
【符号の説明】
6、7、8 排気通路
9、10、11 触媒
12 ECM
13 上流側O2センサ
14 上流側O2センサ
15 下流側O2センサ
Claims (4)
- 複数の気筒群と、
各気筒群毎に設けられた排気通路と、
これら排気通路が合流する集合部下流の排気通路またはこれより上流側の排気通路に配置される少なくとも1つの触媒と、
各々の気筒群の排気通路の空燃比に基づいて各々の気筒群の空燃比を独立にフィードバック制御する手段と、
所定の条件の成立時に前記複数の気筒群の空燃比変動の位相を強制的に同期させる制御を行う強制的同期制御手段と
を備えるエンジン空燃比制御装置において、
前記フィードバック制御手段は、前記各々の気筒群の排気通路の空燃比に基づいて各々の気筒群の排気通路の空燃比が反転したとき比例分を付加することにより各々の気筒群の空燃比補正量を算出する手段と、各々の空燃比補正量に基づいて各々の気筒群への燃料供給量を制御する手段と
を備えるとともに、
前記強制的同期制御手段は、いずれか1の気筒群を特定気筒群、それ以外を残りの気筒群として、特定気筒群での前記比例分の付加タイミングで残りの気筒群に対して同じ方向に比例分を強制的に付加する手段と、前記強制的同期制御の開始後初めての残りの気筒群での比例分の強制的付加により、残りの気筒群のうちで2回続けて同じ方向に比例分が付加されることになる気筒群について強制的同期制御の開始後初めての比例分の強制的付加を禁止する手段と
を備えることを特徴とするエンジンの空燃比制御装置。 - 前記フィードバック制御手段は、さらに各々の気筒群の排気通路の空燃比が反転しない状態では積分分を付加することにより各々の気筒群の空燃比補正量を算出する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの空燃比制御装置。
- 前記所定の条件の成立時が触媒診断条件の成立時であり、前記強制的同期制御中に各気筒群毎に設けられた排気通路が合流する集合部下流であってかつ前記触媒下流の排気通路の空燃比を検出する空燃比センサに少なくとも基づいて前記触媒の劣化の有無を判定することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの空燃比制御装置。
- 前記強制的同期制御手段は、さらに前記比例分の強制的付加タイミング以外のとき前記残りの気筒群に対して前記残りの気筒群の排気通路の空燃比に基づく積分分を付加する手段を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のエンジンの空燃比制御装置。
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