JP4123093B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
この種の燃料噴射制御装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する対筒内噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する対吸気系噴射弁とを備えるものがある。ここで、対吸気系噴射弁を介して吸気ポートに燃料を噴射することにより、均質性の高い燃焼状態を実現することができる。また、対筒内噴射弁を介して燃焼室に直接燃料を噴射することにより、例えば圧縮行程噴射を行うことで成層燃焼(希薄燃焼)を実現したり、燃焼室に吸入される空気の熱を燃料の気化潜熱で奪って同空気の吸入量を増加させることで充填効率の高い燃焼を行ったりすることができる。こうした各別のメリットを有する対筒内噴射弁と対吸気系噴射弁とを備えて燃焼室に燃料を供給する上記構成によれば、より適切な燃料噴射制御を行うことができる。
また、一般に内燃機関の燃焼室から排気ガスが排出される排気系には、同排気ガスを浄化する触媒が設けられている。そして、例えば内燃機関の高回転高負荷運転時においては、高温の排気ガスが大量に触媒を通過することで同触媒が過熱され、その浄化能力の劣化等を招くことが懸念される。このため、例えば下記特許文献2に見られるように、内燃機関の運転状態が触媒の過熱を招きやすい運転状態となると、燃料を増量させて混合気を過濃状態にする燃料増量処理を実行することも提案されている。こうした燃料増量処理を行うことで、燃焼時に過剰な燃料が高温により分解する際の吸熱作用により、排気の温度を低下させ、触媒の過熱を抑制することができるようになる。
特開平5−231221号公報 特開2001−130011号公報
ところで、高温の排気ガスによる過熱の懸念される部材としては、触媒に限らず、例えば燃焼室と接続する排気ポートや、排気系のうち触媒の上流側に設けられる空燃比センサ等がある。そして、上記排気系全般の過熱の抑制と、同排気系のうちの触媒の過熱の抑制とを適切に行うことは困難なものであることが発明者らによって確認されている。
このため、上記対筒内噴射弁と対吸気系噴射弁とを備えることで、より適切な燃料噴射制御を行うことを可能とする燃料噴射制御装置といえども、燃料の増量による排気系の過熱を抑制する制御については未だ改良が望まれるものとなっていた。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃焼室と吸気系とにそれぞれ燃料を噴射する対筒内噴射弁と対吸気系噴射弁とを備える装置であって、排気系の過熱の抑制をより適切に行うことのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するに際し、排気通路や触媒コンバータ、空燃比センサを含む排気系部材全般の過熱に対して前記排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる運転状態にあるときには、前記増量する燃料を前記対吸気系噴射弁を用いて供給し、前記排気系部材全般の過熱に対して前記触媒の過熱が顕著とならない運転状態にあるときには、前記増量する燃料を前記対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段を備えることをその要旨とする。
燃焼室から排気ガスの排出される排気系の過熱を抑制するためには、燃焼室へ供給される燃料を増量することが望まれる。ただし、排気系において、特に排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となるときには、対筒内噴射弁を用いて増量する燃料を燃焼室に供給するよりも、対吸気系噴射弁を用いて同燃料を燃焼室に供給することが望ましい。これは、対筒内噴射弁を用いた場合よりも対吸気系噴射弁を用いた場合の方が、排気ガス中のHCやCO等の未燃燃料が少なくなることによる。すなわち、未燃燃料が多いと触媒での未燃燃料の燃焼等に起因して触媒の温度が上昇しやすいため、触媒の過熱が顕著となるときには燃料を増量するに際し、未燃燃料が少なくなるような制御が望ましい。
この点、上記構成によれば、増量する燃料を対吸気系噴射弁を用いて供給する増量手段を備えることで、触媒の過熱を好適に抑制することができ、ひいては、排気系の過熱の抑制をより適切に行うことができるようになる。
一方、排気温度そのものを低減させるためには、対吸気系噴射弁を用いて燃焼室に供給される燃料を増量するよりも、対筒内噴射弁を用いて同燃料を増量することが望ましい。これは、対吸気系噴射弁を用いた場合よりも対筒内噴射弁を用いた場合の方が、吸気温度の低減が可能であることや、燃焼期間を低減することが可能なために排気行程における排気温度の低下が促進されやすいこと等による。ちなみに、対吸気系噴射弁を用いた場合よりも対筒内噴射弁を用いた場合の方が吸気温度が低減されるのは、次の理由による。すなわち、燃焼室に供給された空気は、筒内に噴射される燃料の気化潜熱によって冷却される。これに対し、吸気系に噴射された燃料は吸気系に付着して同吸気系から気化潜熱を奪って気化することが多いため、吸気系に噴射された燃料による吸気温度の低減効果は、燃焼室に噴射された燃料によるものよりも小さなものとなる。
この点、上記構成によれば、増量する燃料を対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段を備えることで、排気温度を好適に低減することができ、ひいては、排気系の過熱の抑制をより適切に行うこともできるようになる。
なお、上記燃料噴射制御装置は、例えば以下の構成としてもよい。
(ア)対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて当該機関の運転状態に応じた基本となる燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段を別途備える構成。
(イ)基本となる燃料量の燃料に上記増量手段による増量分を反映させた合計の燃料量を当該機関の運転状態に応じたマップに定義するとともに、対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて合計の燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段を備える構成。この場合、増量手段は、制御手段及びマップを備える構成となり、また、制御手段は、少なくとも増量する燃料を、上記触媒の過熱が顕著な運転状態では対吸気系噴射弁を用いて、上記触媒の過熱が顕著とならない運転状態では対筒内噴射弁を用いて燃焼室に供給する。
請求項2記載の発明は、燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するに際し、排気通路や触媒コンバータ、空燃比センサを含む排気系部材全般の過熱に対して前記排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる運転状態にあるか、前記排気系全般の過熱に対して前記触媒の過熱が顕著とならない運転状態にあるかを判断する判断手段と、前記判断手段により前記触媒の過熱が顕著な運転状態にあると判断されるときには、前記増量する燃料を前記対吸気系噴射弁を用いて供給し、前記判断手段により前記触媒の過熱が顕著とならない運転状態にあると判断されるときには、前記増量する燃料を前記対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段とを備えることをその要旨とする。
燃焼室から排気ガスの排出される排気系の過熱を抑制するためには、燃焼室へ供給される燃料を増量することが望まれる。ただし、排気系において、特に排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となるときには、対筒内噴射弁を用いて増量する燃料を燃焼室に供給するよりも、対吸気系噴射弁を用いて同燃料を燃焼室に供給することが望ましい。これは、対筒内噴射弁を用いた場合よりも対吸気系噴射弁を用いた場合の方が、排気ガス中のHCやCO等の未燃燃料が少なくなることによる。すなわち、未燃燃料が多いと触媒での未燃燃料の燃焼等に起因して触媒の温度が上昇しやすいため、触媒の過熱が顕著となるときには燃料を増量するに際し、未燃燃料が少なくなるような制御が望ましい。
この点、上記構成によれば、増量する燃料を対吸気系噴射弁を用いて供給する増量手段を備えることで、触媒の過熱を好適に抑制することができ、ひいては、排気系の過熱の抑制をより適切に行うことができるようになる。
一方、排気温度そのものを低減させるためには、対吸気系噴射弁を用いて燃焼室に供給される燃料を増量するよりも、対筒内噴射弁を用いて同燃料を増量することが望ましい。これは、対吸気系噴射弁を用いた場合よりも対筒内噴射弁を用いた場合の方が、吸気温度の低減が可能であることや、燃焼期間を低減することが可能なために排気行程における排気温度の低下が促進されやすいこと等による。ちなみに、対吸気系噴射弁を用いた場合よりも対筒内噴射弁を用いた場合の方が吸気温度が低減されるのは、次の理由による。すなわち、燃焼室に供給された空気は、筒内に噴射される燃料の気化潜熱によって冷却される。これに対し、吸気系に噴射された燃料は吸気系に付着して同吸気系から気化潜熱を奪って気化することが多いため、吸気系に噴射された燃料による吸気温度の低減効果は、燃焼室に噴射された燃料によるものよりも小さなものとなる。
この点、上記構成によれば、増量する燃料を対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段を備えることで、排気温度を好適に低減することができ、ひいては、排気系の過熱の抑制をより適切に行うこともできるようになる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段を備え、前記増量手段により前記増量する燃料の供給が前記対吸気系噴射弁を用いてなされるとき、前記基本となる燃料量の燃料を前記対吸気系噴射弁を用いて供給することをその要旨とする。
上記構成によれば、増量手段により増量する燃料の供給がなされるとき、基本となる燃料量の燃料を対吸気系噴射弁を介して供給するようにしている。このため、触媒の過熱をいっそう好適に抑制することができるようになる。
更に、上記構成によれば、増量手段により増量する燃料の供給がなされるとき、基本となる燃料量の燃料を対筒内噴射弁を用いて供給する場合と比較して対吸気系噴射弁を用いて供給される燃料の量が増大することとなる。したがって、対吸気系噴射弁を多量の燃料噴射に適した構成とした場合であれ、上記増量制御を精度良く行うことができるようになる。
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段を備え、前記増量手段により前記増量する燃料の供給が前記対筒内噴射弁を用いてなされるとき、前記基本となる燃料量の燃料を前記対筒内噴射弁を用いて供給することをその要旨とする。
上記構成によれば、増量手段により燃料量の増量がなされるとき、基本となる燃料量の燃料を対筒内噴射弁を用いて供給するようにしている。このため、排気温度をいっそう好適に低減することができるようになる。
更に、上記構成によれば、増量手段により燃料量の増量がなされるとき、基本となる燃料量の燃料を対筒内噴射弁を用いて供給する場合と比較して対筒内噴射弁を用いて噴射される燃料の噴射量が増大することとなる。したがって、対筒内噴射弁を多量の噴射量に適した構成とした場合であれ、上記増量制御を精度良く行うことができるようになる。
請求項記載の発明は、燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するとき、当該機関の運転状態に応じて前記増量分の燃料を前記対筒内噴射弁及び前記対吸気系噴射弁のいずれを用いて前記燃焼室に供給するかを選択する増量手段を備えることをその要旨とする。
上記構成では、内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、燃焼室に供給する燃料を増量するに際して、当該機関の運転状態に応じて前記増量分の燃料を前記対筒内噴射弁及び前記対吸気系噴射弁のいずれを用いて前記燃焼室に供給するかを選択する。このため、排気系の過熱の抑制に対して、運転状態に応じたより適切な噴射弁を選択することができるようになる。
すなわち、例えば当該機関の運転状態が排気系全般の過熱に対して排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる運転状態であるときには、対筒内噴射弁を選択することで触媒の過熱を好適に抑制することができる。また、例えば当該機関の運転状態が排気系全般の過熱に対して排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著とならない運転状態であるときには、対筒内噴射弁を選択することで、排気温度を好適に低減させることができる。
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段を備え、前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するとき、前記基本となる燃料量の燃料を前記増量手段によって選択された噴射弁を用いて前記燃焼室に供給することをその要旨とする。
上記構成によれば、基本となる燃料量の燃料を増量手段によって選択された噴射弁を用いて噴射するようにしている。このため、排気系の過熱の抑制や、触媒の過熱の抑制等をより適切に行うことができる。
更に、上記構成によれば、例えば対吸気系噴射弁を用いて燃料量の増量がなされるとき、基本となる燃料量の燃料を対筒内噴射弁を用いて供給する場合と比較して対吸気系噴射弁を用いて噴射される燃料の噴射量が増大することとなる。したがって、対吸気系噴射弁を多量の噴射量に適した構成とした場合であれ、上記増量制御を精度良く行うことができるようになる。また、例えば対筒内噴射弁を用いて燃料量の増量がなされるとき、基本となる燃料量の燃料を対吸気系噴射弁を用いて供給する場合と比較して対筒内噴射弁を用いて噴射される燃料の噴射量が増大することとなる。したがって、対筒内噴射弁を多量の噴射量に適した構成とした場合であれ、上記増量制御を精度良く行うことができるようになる。
請求項7記載の発明は、燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室へ供給する燃料を増量するに際し、排気通路や触媒コンバータ、空燃比センサを含む排気系部材全般と前記排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒との相対的な過熱度合いに基づいて、前記対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁のそれぞれを用いて噴射する増量分の燃料量の比率が調整されてなることをその要旨とする。
燃焼室から排気ガスの排出される排気系の過熱を抑制するためには、燃焼室へ供給される燃料を増量することが望まれる。
ただし、排気系において、特に排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となるときには、対筒内噴射弁を用いて燃焼室に供給される燃料を増量するよりも、対吸気系噴射弁を用いて同燃料を増量することが望ましい。これは、対筒内噴射弁を用いた場合よりも対吸気系噴射弁を用いた場合の方が、排気ガス中のHCやCO等の未燃燃料が少なくなることによる。すなわち、未燃燃料が多いと触媒での未燃燃料の燃焼等に起因して触媒の温度が上昇しやすいため、触媒の過熱が顕著となるときには燃料の増量制御に際し、未燃燃料が少なくなるような制御が望ましい。
また、排気温度そのものを低減させるためには、対吸気系噴射弁を用いて燃焼室に供給される燃料の増量制御を行うよりも、対筒内噴射弁を用いて同増量制御をすることが望ましい。これは、対吸気系噴射弁を用いた場合よりも対筒内噴射弁を用いた場合の方が、吸気温度の低減が可能であることや、燃焼期間を低減することが可能なために排気行程における排気温度の低下が促進されやすいこと等による。ちなみに、上記吸気温度の低減に関しては、燃焼室に供給された空気は、筒内に噴射される燃料の気化潜熱によって冷却される。これに対し、吸気系に噴射された燃料は吸気系に付着して同吸気系から気化潜熱を奪って気化することが多いため、吸気系に噴射された燃料による吸気温度の低減効果は、燃焼室に噴射された燃料によるものよりも小さなものとなる。
この点、上記構成では、排気系全般と触媒との相対的な過熱度合いに基づいて、対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁を介して噴射される増量分の燃料量の比率が調整されているため、排気系の過熱をより適切に抑制することができるようになる。
なお、上記燃料噴射制御装置は、例えば以下の構成としてもよい。
(ア)対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて当該機関の運転状態に応じた基本となる燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段と、上記調整された比率に沿って増量分の燃料を各噴射弁から燃焼室に供給する制御をする増量手段とを各別に備える構成。
(イ)基本となる燃料量の燃料に上記増量分を反映させた合計の燃料量を当該機関の運転状態に応じたマップに定義するとともに、対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて合計の燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段を備える構成。ここで、制御手段は、少なくとも増量分の燃料については、上記比率に沿って各噴射弁から燃焼室に供給する。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置をV型6気筒エンジンの燃料噴射制御装置に適用した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1において、V型6気筒エンジンとしての内燃機関10は、第1〜第6の各気筒#1〜#6を備えている。そして、これら各気筒#1〜#6の各燃焼室11には、吸気通路20及び吸気ポート12を介して空気が供給される。また、各気筒#1〜#6の各吸気ポート12には、これら吸気ポート12に燃料を噴射する対吸気系噴射弁13がそれぞれ備えられている。また、各気筒#1〜#6には、これらの燃焼室11に燃料を直接噴射する対筒内噴射弁14が備えられている。このように、上記内燃機関10は、各気筒#1〜#6の各燃焼室11に燃料を供給するための燃料噴射弁として、対吸気系噴射弁13及び対筒内噴射弁14の2つの噴射弁をそれぞれ備えている。
そして、上記対吸気系噴射弁13及び対筒内噴射弁14の少なくとも一方を介して燃焼室11に供給される燃料と同燃焼室11に供給される空気との混合気は、点火プラグによる点火により燃焼する。そして、この燃焼後の混合気(排気ガス)は、排気通路30へと排出される。この排気通路30には、三元触媒を備える触媒コンバータ31が設けられており、これにより排気ガスが浄化される。また、排気通路30のうち触媒コンバータ31の上流側には、空燃比センサ32が備えられており、これにより混合気の空燃比が検出される。
こうした構成を有する内燃機関10は、電子制御装置40によって制御される。この電子制御装置40には、上記空燃比センサ32をはじめ、機関出力軸の回転速度を検出するクランク角センサ、吸気通路20内の吸入空気の流量を検出するエアフローメータ等、内燃機関10の運転状態を検出する各種センサの検出信号が入力される。そして、電子制御装置40では、こうした各種センサの検出信号に基づき、上記対吸気系噴射弁13や上記対筒内噴射弁14等、内燃機関10の各箇所を制御する。
ここで、この電子制御装置40による内燃機関10の燃料噴射制御について説明する。
図2に、本実施形態にかかる燃料噴射制御態様を示す。同図2に示すように、本実施形態では、内燃機関10の回転速度及び負荷によって対吸気系噴射弁13を用いるか、対筒内噴射弁14を用いるか、あるいはこれら双方を用いるかが設定される。なお、ここで内燃機関10の負荷とは、例えば同内燃機関10の1回転あたりの吸入空気量等によって定義される量である。
同図2に示すように、本実施形態では、内燃機関10の各回転速度において、スロットルバルブを全開〜略全開としたときの負荷である最大の負荷(最大の吸入空気量)の領域で、上記対筒内噴射弁14によって燃焼室11に燃料を供給する。また、スロットルバルブの開度が全閉から中間の開度となるときの負荷である低負荷から中負荷の内燃機関10の運転領域においては、上記対吸気系噴射弁13によって燃焼室11に燃料を供給する。そして、これらの間の領域においては、上記対筒内噴射弁14及び上記対吸気系噴射弁13を併用して燃焼室11に燃料を供給する。
上記各運転領域における燃料の燃焼制御は、次のようになっている。すなわち、対吸気系噴射弁13によって燃焼室11に燃料を供給する「ポート噴射領域」や、同対吸気系噴射弁13及び対筒内噴射弁14によって燃焼室11に燃料を供給する「ポート+筒内噴射領域」にあっては、理論空燃比にて燃焼を行う。一方、対筒内噴射弁14によって燃焼室11に燃料を供給する「筒内噴射領域」にあっては、内燃機関10のトルクが最大となるときの空燃比である出力空燃比にて燃焼を行う。
そして、本実施形態では、均質性の確保と高負荷領域での内燃機関10の出力性能との両立を図っている。すなわち、対吸気系噴射弁13を用いると対筒内噴射弁14を用いる場合と比較して混合気の均質性を促進しやすい。このため、低負荷から中負荷の運転領域においては、対吸気系噴射弁13を用いることで、混合気の均質性を確保するようにする。一方、対筒内噴射弁14を用いて燃料噴射を行う場合には対吸気系噴射弁13を用いて燃料噴射を行う場合と比較して、気化潜熱により混合気の温度を低下させすい。このため、高負荷運転領域においては、対筒内噴射弁14を用いることで充填効率を増大させ、更に出力空燃比とすることで出力性能の向上を図る。
図3に、図2に示す燃焼制御を用いた本実施形態における燃料噴射制御の手順を示す。同図3に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
同図3に示す一連の処理においては、まずステップ100において、クランク角センサによって検出される内燃機関10の回転速度と、エアフローメータによって検出される内燃機関10の負荷とに基づき基本となる燃料量を算出する。すなわち、当該運転領域が先の図2に示した「ポート噴射領域」や「ポート+筒内噴射領域」である場合には、理論空燃比となるような燃料量が算出される。また、当該運転状態が図2に示した「筒内噴射領域」である場合には、出力空燃比となるような燃料量が算出される。
一方、ステップ110においては、内燃機関10の回転速度及び負荷と、先の図2に示す運転領域とに基づいて上記燃焼室11に燃料を供給する際の、上記対吸気系噴射弁13と上記対筒内噴射弁14との利用態様を設定する。ちなみに、先の図2に示す情報は、予め上記電子制御装置40内にマップとして記憶保持するようにすることが望ましい。
続く、ステップ120においては、算出された燃料量及び設定される噴射弁に基づき、燃料噴射制御が行われる。こうして、ステップ120の処理が終了すると、この一連の処理を一旦終了する。
次に、本実施形態における燃料の増量制御について説明する。
本実施形態においては、排気通路30や、触媒コンバータ31、空燃比センサ32等の排気系の過熱の抑制が所望される内燃機関10の運転状態にあるとき、先の図3のステップ100において算出される基本となる燃料量に対して実際に燃焼室11に噴射供給される燃料を増量する制御を行う。そしてこの際、(ア)排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる所定の運転状態、(イ)排気系全般の過熱に対して排気ガスを浄化する触媒の過熱が特に顕著とならない所定の運転状態のいずれと判断されるかに応じて増量燃料を噴射する噴射弁を可変設定する。
具体的には、上記(ア)の運転状態にあると判断されるときには、先の図3に示す処理おいて選択される噴射弁の如何にかかわらず、上記対吸気系噴射弁13を用いて増量燃料を燃焼室11に供給する。これは、対筒内噴射弁14を用いた場合よりも対吸気系噴射弁13を用いた場合の方が、排気ガス中のHCやCO等の未燃燃料が少なくなることによる。すなわち、未燃燃料が多いと触媒コンバータ31での未燃燃料の燃焼等に起因して触媒コンバータ31の温度が上昇しやすいため、触媒コンバータ31の過熱が顕著となるときには燃料の増量制御に際し、未燃燃料が少なくなるような制御を行う。
一方、上記(イ)の運転状態にあると判断されるときには、先の図3に示す処理おいて選択される噴射弁の如何にかかわらず、上記対筒内噴射弁14を用いて増量燃料を燃焼室11に供給する。そして、これにより排気系のうち排気通路30の触媒コンバータ31の上流側の部分や同触媒コンバータ31の上流に設けられる空燃比センサ32等の過熱の抑制を図る。これは、対吸気系噴射弁13を用いた場合よりも対筒内噴射弁14を用いた場合の方が、吸気温度の低減が可能であることや、燃焼期間を短縮しやすいために排気行程における排気温度の低下が促進されやすいこと等による。ちなみに、対吸気系噴射弁13を用いた場合よりも対筒内噴射弁14を用いた場合の方が吸気温度が低減されるのは、次の理由による。すなわち、燃焼室11に供給された空気は、筒内に噴射される燃料の気化潜熱によって冷却される。これに対し、吸気系に噴射された燃料は吸気系に付着して同吸気系から気化潜熱を奪って気化することが多いため、吸気系に噴射された燃料による吸気温度の低減効果は、燃焼室11に噴射された燃料によるものよりも小さなものとなる。
ここで、こうした態様にて行われる本実施形態にかかる燃料増量制御に関する処理手順を図4に基づいて説明する。この図4に示す処理は、所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理においては、まずステップ200において、内燃機関10の運転状態が、排気系の過熱の抑制が所望される運転状態にあるか否かを判断する。ここでは、例えば内燃機関10が高回転、高負荷にある等、排気温度が上昇しやすい運転領域にあるか否かを判断する。なお、この判断に際しては、例えば点火時期や、排気温度、触媒温度等を併せ考慮してもよい。
そして、ステップ200において排気系の過熱の抑制が所望される運転状態にあると判断されると、ステップ210においては、排気系の過熱の抑制のための燃料の増量値を算出する。この増量値の算出は、内燃機関10の回転速度や負荷に加えて、点火時期や、排気温度、触媒温度等に基づいて行うことが望ましい。
また、ステップ220においては、内燃機関10の運転状態に基づいて上記ステップ210において算出された増量燃料を噴射する噴射弁を設定する。ここでは、内燃機関10の回転速度や負荷、上記ステップ210において算出された燃料の増量値等をパラメータとして、同パラメータの値に応じて適切な噴射弁を予め実験により求めておく。換言すれば、同パラメータの値から、内燃機関10の運転状態が上記(ア)の運転状態にあると判断できるか、又は上記(イ)の運転状態にあると判断できるかを予め実験で求めておく。そして、こうして実験により求められた上記パラメータと内燃機関10の運転状態との関係から、同関係を定めたマップ等を作成するとともに、これを上記電子制御装置40に予め格納しておく。
ここで、燃料の増量値を噴射弁の設定のためのパラメータとして用いているのは、その他の条件が同一であっても、燃料の増量値によって対筒内噴射弁14を用いる方が適切か対吸気系噴射弁13を用いる方が適切かが異なることがあるためである。なお、この燃料噴射弁の設定に用いるパラメータとしては、この他に、例えば点火時期、排気温度、触媒コンバータ31の温度等を用いてもよい。
こうして増量燃料を噴射する噴射弁を設定すると、ステップ230においては設定された燃料噴射弁による増量燃料の噴射制御を行う。ここで、増量燃料の噴射制御を対筒内噴射弁14を用いて行う場合には、増量燃料の燃焼期間が短くなるように、例えば各燃焼室11の点火プラグ周りが部分的にリッチとなる弱成層の燃料分布とする噴射タイミングとすることが望ましい。このように、増量燃料の燃焼期間が短くなるような噴射タイミングを設定することで、燃焼行程後の膨張行程において燃焼後の混合気の温度を的確に低下させることができ、ひいては、排気ガスの温度を低減させることができる。
なお、上記ステップ200において排気系の過熱の抑制が所望される運転状態にないと判断されたときや、ステップ230の処理が終了されたときには、この一連の処理を一旦終了する。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)排気系の過熱を抑制すべく、燃料を増量するに際し、排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる所定の運転状態にあると判断されるときに、上記対吸気系噴射弁13を用いて増量する燃料を燃焼室11に供給した。これにより、触媒の過熱を好適に抑制することができるようになる。
(2)排気系の過熱を抑制すべく、燃料を増量するに際し、排気系全般の過熱に対して排気ガスを浄化する触媒の過熱が特に顕著とならない所定の運転状態にあると判断されるとき、上記対筒内噴射弁14を用いて増量する燃料を燃焼室11に供給した。これにより、排気系のうち排気通路30の触媒コンバータ31の上流側の部分や同触媒コンバータ31の上流に設けられる空燃比センサ32等の過熱を好適に抑制することができる。
(3)増量燃料の噴射制御を対筒内噴射弁14を用いて行う場合、増量燃料の燃焼期間が短くなるような噴射タイミングとした。これにより、排気ガスの温度を低減させることができ、ひいては、排気系のうち排気通路30の触媒コンバータ31の上流側の部分や同触媒コンバータ31の上流に設けられる空燃比センサ32等の過熱をより好適に抑制することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置をV型6気筒エンジンの燃料噴射制御装置に適用した第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記第1の実施形態では、排気系の過熱を抑制する制御を行う際、同制御のために増量された燃料量の燃料の噴射に用いる噴射弁と、基本となる燃料量の燃料の噴射に用いる噴射弁とを各別に設定した。これに対し、本実施形態では、排気系の過熱を抑制する制御を行う際には、増量された燃料量と基本となる燃料量との各燃料を同一の噴射弁を用いて噴射するようにする。
以下、図5及び図6を用いてこれについて説明する。
図5及び図6に、本実施形態にかかる燃料噴射制御の処理手順を示す。これら各処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図5に示す一連の処理においては、まずステップ300において先の図3のステップ100と同様、基本となる燃料量を算出する。続くステップ310においては、排気系の過熱を抑制する制御を実行しているか否かを判断する。そして、同ステップ310において排気系の過熱を抑制する制御を実行していないと判断すると、ステップ320において先の図3のステップ110と同様にして噴射に用いる噴射弁を設定し、ステップ330では先の図3のステップ120と同様にして燃料噴射制御を行う。
なお、ステップ310において排気系の過熱を抑制する制御を実行中であると判断されたときや、ステップ330の処理を実行した後には、この一連の処理を一旦終了する。
このように、この図5に示す処理においては、上記ステップ310において過熱を抑制する制御を実行していないと判断されたときのみ、ステップ300において算出される基本となる燃料量の燃料を噴射する噴射弁を設定する。
一方、図6に示す一連の処理においては、まずステップ400〜ステップ420において、先の図3のステップ200〜220と同様の処理を行う。ちなみに、ステップ400において排気系の過熱を伴う運転状態にあると判断された場合のステップ410移行の処理が、先の図5のステップ310において実行の有無の判断対象となった制御である排気の過熱を抑制するための制御となる。
そして、ステップ420の処理が終了すると、ステップ430に移行する。このステップ430においては、ステップ410において算出された増量燃料量と先の図5のステップ300において算出された基本となる燃料量との各燃料を、ステップ420にて設定された噴射弁を用いて噴射制御する。なお、この噴射制御に際しても、噴射制御を対筒内噴射弁14を用いて行う場合、燃料の燃焼期間が短くなるような噴射タイミングにて行うようにする。
このように本実施形態では、排気系の過熱を抑制する制御を実行しているときには、増量燃料と基本となる燃料量の燃料とを同一の燃料噴射弁にて噴射するようにした。このため、先の第1の実施形態で記載した(ア)の運転状態にあると判断されるときには、触媒の過熱をいっそう好適に抑制することができるようになる。また、同じく先の第1の実施形態で記載した(イ)の運転状態にあると判断されるときには、排気系の過熱をいっそう好適に抑制することができるようになる。
更に、増量燃料と基本となる燃料量の燃料とを同一の燃料噴射弁にて噴射することで、対筒内噴射弁14についての噴射性能についての条件を簡易に緩和させやすくなる。すなわち、対筒内噴射弁14は、負荷の大きなときに用いられるために多量の燃料を噴射することのできる構造のものが選択されることとなるが、この場合、少量の燃料を噴射する際の噴射精度が低下しやすい。したがって、対吸気系噴射弁13を用いて基本となる燃料量の燃料を噴射しつつ増量燃料のみを対筒内噴射弁14を用いて噴射する場合には、その噴射精度が低下しやすい。これに対し、本実施形態では、増量燃料を対筒内噴射弁14を用いて噴射する際には、基本となる燃料量の燃料についてもこれを対筒内噴射弁14を用いて噴射することで、噴射精度を簡易に確保することができるようになる。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の上記(1)〜(3)に準じた効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(4)排気系の過熱を抑制する制御を実行しているときには、増量燃料と基本となる燃料量の燃料とを同一の燃料噴射弁にて噴射するようにした。このため、触媒の過熱や、排気系の過熱をいっそう好適に抑制することができるようになる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・排気系全般の過熱に対して排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる所定の運転状態にあるか否かを判断する判断手段としては、内燃機関の運転状態を示すパラメータと上記所定の運転状態との相関関係を実験によって求めることで構成するものに限らない。例えば内燃機関の運転状態のシミュレーション等に基づいて、上記パラメータと所定の運転状態との相関関係を推定してもよい。
・排気系全般の過熱に対して排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が特に顕著とならない所定の運転状態にあるか否かを判断する判断手段としては、内燃機関の運転状態を示すパラメータと上記所定の運転状態との相関関係を実験によって求めることで構成するものに限らない。例えば内燃機関の運転状態のシミュレーション等に基づいて、上記パラメータと所定の運転状態との相関関係を推定してもよい。
・当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段としては、先の図3のステップ100や、先の図5のステップ300に例示したものに限らない。
・上記第2の実施形態では、増量する燃料を噴射する噴射弁が対筒内噴射弁である場合であれ、対吸気系噴射弁である場合であれ、基本となる燃料量を噴射する噴射弁を増量する燃料を噴射する噴射弁と同一としたがこれに限らない。例えば噴射弁が先の図2に例示した態様にて利用されるものである場合、対筒内噴射弁を多量の燃料噴射に適した構成とすることが望ましいため、対筒内噴射弁を用いて増量する燃料を噴射する場合のみ、基本となる燃料量の燃料を噴射する噴射弁を増量する燃料を噴射するものと同一としてもよい。
・排気系全般の過熱に対して排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる所定の運転状態にあるとき、増量する燃料を対吸気系噴射弁を用いて供給する増量手段としては、先の図4、図6等の処理を行うものに限らない。例えば、基本となる燃料量の燃料に増量する燃料量を反映させた合計の燃料量を当該機関の運転状態に応じて定義したマップと、対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて合計の燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段とを備える構成としてもよい。この際、制御手段では、少なくとも上記増量する燃料については、対吸気系噴射弁を用いて供給するようにする。
・排気系全般の過熱に対して排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が特に顕著とならない所定の運転状態にあるとき、増量する燃料を対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段としては、先の図4、図6等の処理を行うものに限らない。例えば、基本となる燃料量の燃料に増量する燃料量を反映させた合計の燃料量を当該機関の運転状態に応じて定義したマップと、対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて合計の燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段とを備える構成としてもよい。この際、制御手段では、少なくとも上記増量する燃料については、対筒内噴射弁を用いて供給するようにする。
・内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、燃焼室に供給する燃料を増量するとき、増量分の燃料を燃焼室に供給するに際しての対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の利用態様を当該機関の運転状態に応じて設定する増量手段としては、各実施形態で例示したものに限らない。すなわち、増量する燃料を燃焼室に供給するに際して、対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の双方を用いるとともに、これら2つの噴射弁の利用度合いを当該機関の運転状態に応じて可変設定するようにしてもよい。
この際、この運転状態によって、排気系全般と排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒との相対的な過熱度合いを判断することが望ましい。また、この際、当該機関の運転状態に応じて、基本となる燃料量に増量する燃料量を反映させた合計の燃料量を当該機関の運転状態に応じて定義するマップを構成するようにしてもよい。この場合、同マップに加えて、上記利用度合いを反映して対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁の少なくとも一方を用いて合計の燃料量の燃料を燃焼室に供給する制御手段を備えることで、燃料噴射制御装置を構成するようにすればよい。
なお、上記利用度合いの設定に際しては、高負荷高回転であるほど、燃焼期間が膨張行程にかかる割合が増大しやすく、結果として触媒の過熱が顕著となりやすいことを考慮するようにしてもよい。
・燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置としては、上記対吸気系噴射弁13及び対筒内噴射弁14を備えるものに限らない。例えば、対筒内噴射弁14に加えて、燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁として、吸気ポートの合流するインテークマニフォールド等に燃料を噴射供給するコールドスタートインジェクタを備えるものであってもよい。
・基本となる燃料の噴射に際しての対吸気系噴射弁と対筒内噴射弁との利用態様は、先の図2に例示したものに限らない。例えば対筒内噴射弁を低負荷時において成層燃焼を行うために用いてもよい。
・その他、内燃機関としては、V型6気筒のものに限らない。
本発明にかかる燃料噴射制御装置の第1の実施形態の全体構成を示す図。 同実施形態における内燃機関の運転状態とそのときの燃料の噴射に用いる噴射弁との関係を示す図。 同実施形態における基本となる燃料量の算出及び噴射制御にかかる処理手順を示すフローチャート。 同実施形態における増量する燃料量の算出及び噴射制御にかかる処理手順を示すフローチャート。 本発明にかかる燃料噴射制御装置の第2の実施形態において、基本となる燃料量の算出及び噴射制御にかかる処理手順を示すフローチャート。 同実施形態における増量する燃料量の算出及び噴射制御にかかる処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
10…内燃機関、11…燃焼室、12…吸気ポート、13…対吸気系噴射弁、14…対筒内噴射弁、20…吸気通路、30…排気通路、31…触媒コンバータ、32…空燃比センサ、40…電子制御装置。

Claims (7)

  1. 燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するに際し、排気通路や触媒コンバータ、空燃比センサを含む排気系部材全般の過熱に対して前記排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる運転状態にあるときには、前記増量する燃料を前記対吸気系噴射弁を用いて供給し、前記排気系部材全般の過熱に対して前記触媒の過熱が顕著とならない運転状態にあるときには、前記増量する燃料を前記対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段を備える
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するに際し、排気通路や触媒コンバータ、空燃比センサを含む排気系部材全般の過熱に対して前記排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒の過熱が顕著となる運転状態にあるか、前記排気系部材全般の過熱に対して前記触媒の過熱が顕著とならない運転状態にあるかを判断する判断手段と、
    前記判断手段により前記触媒の過熱が顕著な運転状態にあると判断されるときには、前記増量する燃料を前記対吸気系噴射弁を用いて供給し、前記判断手段により前記触媒の過熱が顕著とならない運転状態にあると判断されるときには、前記増量する燃料を前記対筒内噴射弁を用いて供給する増量手段とを備える
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段を備え、
    前記増量手段により前記増量する燃料の供給が前記対吸気系噴射弁を用いてなされるとき、前記基本となる燃料量の燃料を前記対吸気系噴射弁を用いて供給する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段を備え、
    前記増量手段により前記増量する燃料の供給が前記対筒内噴射弁を用いてなされるとき、前記基本となる燃料量の燃料を前記対筒内噴射弁を用いて供給する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するとき、当該機関の運転状態に応じて前記増量分の燃料を前記対筒内噴射弁及び前記対吸気系噴射弁のいずれを用いて前記燃焼室に供給するかを選択する増量手段を備える
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 請求項5記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    当該機関の運転状態に応じて基本となる燃料量を算出する算出手段を備え、
    前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室に供給する燃料を増量するとき、前記基本となる燃料量の燃料を前記増量手段によって選択された噴射弁を用いて前記燃焼室に供給する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  7. 燃焼室に燃料を噴射供給する対筒内噴射弁と、前記燃焼室に空気を供給する吸気系に燃料を噴射供給する対吸気系噴射弁とを備えて前記燃焼室に燃料を供給する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記内燃機関の排気系の過熱を抑制すべく、前記燃焼室へ供給する燃料を増量するに際し、排気通路や触媒コンバータ、空燃比センサを含む排気系部材全般と前記排気系に排出される排気ガスを浄化する触媒との相対的な過熱度合いに基づいて、前記対筒内噴射弁及び対吸気系噴射弁のそれぞれを用いて噴射する増量分の燃料量の比率が調整されてなる
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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