JP3937637B2 - ハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物および異性化方法 - Google Patents

ハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物および異性化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物および異性化方法に関する。特にジクロルベンゼン(以下、DCB)、クロルトルエン(以下、CT)などのハロゲン化芳香族を異性化してm−DCB、m−CTを増加させる異性化触媒および異性化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化芳香族化合物の1つであるDCBはベンゼンのクロル化によって得られるが、この反応はo、p−配向性の強い反応であり、m−異性体が必要な場合は異性化によらなければならない。また、DCBの各異性体の需要量の比は、クロル化時の各異性体の生成比率と異なる場合が多い。したがってDCBを有効に利用するためにも、その異性化法は重要な技術的意義を有する。
【0003】
DCB各異性体、さらには異性化によって生成せしめられるm−DCBは、その単体として利用するには分離する必要がある。
【0004】
これら異性体を分離する方法としては、沸点が互いに接近しているため蒸留法では多段の精留塔が必要である。最近では、特公平1−12732号公報、特公平7−86092号公報などに示されるように、吸着分離法あるいは吸着分離法と蒸留法の組合せによる方法が開示されている。
【0005】
目的とするDCB異性体を分離除去せしめた残りのDCB異性体は、異性化反応により再び目的とする異性体濃度を増大せしめることが経済的に極めて重要である。その後、再び目的とするDCB異性体を分離除去し、このサイクルを繰り返す。
【0006】
このような異性化反応を行わせしめる方法として、特公昭64−9972号公報などに酸型のモルデナイトや主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトによる方法が開示されているが、異性化活性をさらに向上させることが工業的には重要である。
【0007】
また、CTはトルエンのクロル化によって得られるが、この反応はo、p−配向性の強い反応であり、m−異性体が必要な場合は異性化によらなければならない。また、CTの各異性体の需要量の比は、クロル化時の各異性体の生成比率と異なる場合が多い。したがってCTを有効に利用するためにも、その異性化法は重要な技術的意義を有する。
【0008】
CT各異性体、さらには異性化によって生成せしめられるm−CTは、その単体として利用するには分離する必要がある。
【0009】
これら異性体を分離する方法としては、沸点が互いに接近しているため蒸留法では超精密蒸留塔を必要として工業的方法とはいえない。最近、特公昭63−24495号公報、特公昭63−64412号公報などに示されるように、吸着分離法あるいは吸着分離法と蒸留法の組合せによる方法が開示されている。
【0010】
目的とするCT異性体を分離除去せしめた残りのCT異性体は、異性化反応により再び目的とする異性体濃度を増大せしめることが経済的に極めて重要である。その後、再び目的とするCT異性体を分離除去し、このサイクルを繰り返す。
【0011】
このような異性化反応を行わせしめる方法として、特公昭62−15050号公報などに主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトによる方法が開示されているが、異性化活性をさらに向上させることが工業的には重要である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来知られていた異性化触媒の活性をさらに向上させることができれば、反応温度を下げることができる。触媒は反応に使用すると、触媒活性が低下し、その活性低下を補うため反応温度を高くしていく操作が一般に行われる。したがって、反応温度が下げられれば、使用できる温度領域が拡大し、その結果、触媒寿命を向上させることができる。本発明は、異性化触媒の活性を向上させることを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するべく、触媒活性を向上させる方法について鋭意検討した結果、触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径を小さくするとハロゲン化芳香族異性化反応の触媒活性が向上することを見出し、本発明に到達した。
【0014】
本発明は触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径が最大5ミクロン以下である触媒組成物およびその触媒を用いるハロゲン化芳香族化合物の異性化方法を提供するものである。主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトを含有する触媒組成物は異性化反応に使用するに先立って、酸型にすることが好ましい。
【0015】
また、前記(I)式で示されるハロゲン化芳香族化合物の具体例としては、DCB、ジブロムベンゼン、クロロブロムベンゼン、CT、ブロムトルエンなどが挙げられ、特にDCB、CTの異性化の際に効果がある。以下に詳細に説明する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるゼオライトは主空洞の入口が10員酸素環からなるものであるが、かかるゼオライトはいわゆるペンタシル型ゼオライトとして知られ、米国特許3894106号明細書にその組成および製造法が、また、Nature271、30March 、437(1978)にその結晶構造が記載されているZSM−5ゼオライトおよびそれと同じ系列に属すると考えられているゼオライトが包含され、具体的には例えば前記ZSM−5の他に、英国特許1334243号明細書に記載されているZSM−8、特公昭53−23280号公報に記載されているZSM−11、米国特許4001346号明細書に記載されているZSM−21、特開昭53−144500号公報に記載されているZSM−35、特開昭51−67299号公報に記載されているゼオライトゼータ1および特開昭51−67298号公報に記載されているゼオライトゼータ3などが例示される。主空洞の入口が10員酸素環からなる構造特性を有するゼオライトであればもちろん前記例示に限定されず使用可能である。
【0017】
また、ペンタシル型ゼオライトを製造する方法にはこれまで種々の方法が開示されている。例えば、特開昭52−115800号公報、特開昭53−134798号公報および特開昭57−123815号公報などを挙げることができる。かかるゼオライトを構成するシリカ/アルミナモル比としては10から100が好ましく用いられる。さらに好ましくは18から50である。シリカ/アルミナモル比が10から100の範囲の場合、触媒活性の点で好ましい。
【0018】
前記ゼオライトが粉末状態である場合には、触媒として工業的に使用するには成型することが必要である。成型法には圧縮成型法、混練法、オイル・ドロップ法など種々の方法があるが、混練法が好ましく用いられる。混練法としては、バインダーが一般に必要であり、無機酸化物および/または粘土類が用いられる。
【0019】
本発明により好ましく用いられるバインダーとしてアルミナゾル、アルミナゲルを挙げることができる。バインダー量はゼオライト100重量部に対して絶乾基準で5から30重量部、好ましくは10から20重量部である。成型性が悪いときには、混練時に塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加したり、ポリビニールアルコール、スパン、レオドールなどの界面活性剤を添加すると効果がある。成型体はその後50から200℃で乾燥され、次いで350から600℃で焼成し、成型体強度を増加させる。
【0020】
本発明に用いられる主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径とは、かかるゼオライトの一次結晶子が凝集したものであるが、触媒成型体中の二次粒子径は走査電子顕微鏡(SEM)で容易に調べることができる。本発明の目的には、触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径が最大5ミクロン以下が有効である。かかる原料ゼオライトが無機酸化物および/または粘土類と均一に混合し成型される際、その二次粒子は一部崩れ分散されるが、触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子が十分小さく、高度に分散されているほど触媒有効度が向上し、ハロゲン化芳香族化合物異性化反応の触媒活性の向上が達成される。触媒成型中の二次粒子径は成型条件およびかかる原料ゼオライト粉末の二次粒子径などにより制御される。成型条件としてはかかる原料ゼオライトと無機酸化物および/または粘土類の混合時の時間および水分率などが重要であり、例えば混練時間が長いほど触媒成型体中の二次粒子径は小さくなり好ましい。また、かかる原料ゼオライト粉末の二次粒子径は合成時の反応混合物組成比、結晶化時間、撹拌条件および乾燥方法などにより制御でき、使用する原料により異なり一概にはいえないので、適宜合成条件を選択する必要がある。これまでの知見によれば、合成時の反応混合物中のアルカリ度を低くしたり、結晶化時間を短くすると二次粒子径が小さくなる傾向がある。
【0021】
本発明の成型体中に含まれる主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトを酸型体にすることが好ましい。成型前に酸型体あるいは水素イオン前駆体であるアンモニウムイオンあるいは有機カチオンの形態の場合には必ずしも酸型体にする処理を新たに行う必要はないが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンなどを含んでいる場合には酸型体にするためのイオン交換処理が行われる。イオン交換処理は無機酸、有機酸などの水溶液で直接に酸型にする場合と、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの水溶液でイオン交換しアンモニウムイオンを導入し、次いで焼成することにより水素イオンに変換し、酸型体にする方法がある。酸水溶液でイオン交換するとかかるゼオライトの脱アルミニウムがおきやすいので、アンモニウム塩水溶液でイオン交換するのが好ましい。このようにして調製された触媒組成物は50から200℃で乾燥され、次いで350から600℃で焼成されハロゲン化芳香族化合物の異性化反応に供される。
【0022】
本発明のDCB、CTなどのハロゲン化芳香族化合物の異性化反応は、従来知られている種々の異性化操作に準じて行うことが可能であって、気相反応、液相反応いずれでも好結果が得られる。また、異性化反応方式は、固定床、移動床、流動床いずれの方法も用いられるが、操作の容易さから固定床流通反応方式が特に好ましい。反応温度は200から550℃、好ましくは250から500℃である。反応圧力は特に限定されるものではないが、液相反応の場合、反応系を液相状態に保つべく反応圧力を設定しなければならないのは言うまでもない。また、異性化反応時に水素、芳香族化合物、あるいは供給原料とは異なるポリハロゲン化芳香族化合物を共存させると、副反応の減少や触媒寿命の延長にしばしば効果がある。重量空間速度(WHSV)は0.05から30Hr-1、好ましくは0.1から20Hr-1である。
【0023】
かくして異性化により得られたDCB、CTなどの各異性体は吸着分離及び/又は蒸留法により分離される。
【0024】
これら異性体は医薬、農薬の中間体などとして利用される。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を持って説明する。
【0026】
実施例1(ペンタシル型ゼオライトの合成)
固形カセイソーダ(NaOH含量96.0wt%、H2 O含量4.0wt%、片山化学)7.3グラム、酒石酸粉末(酒石酸含量99.7wt%、H2 0含量0.3wt%,片山化学)10.2グラム、を水583.8グラムに溶解した。この溶液にアルミン酸ソーダ溶液(Al2 O3 含量18.5wt%、NaOH含量26.1wt%、H2 0含量55.4wt%、住友化学)35.4グラムを加えて均一な溶液とした。この混合液にケイ酸粉末(SiO2 含量91.6wt%、Al2 O3 含量0.33wt%、NaOH含量0.27wt%、ニップシールVN−3、日本シリカ)111.5グラムを撹拌しながら徐々に加え、均一なスラリー状水性反応混合物を調製した。この反応混合物の組成比(モル比)は次のとおりであった。
【0027】
SiO2 /Al2 3 25
2 O/SiO2 20
OH- /SiO2 0.164
A/Al2 3 1.0 A:酒石酸塩
反応混合物は、1000ml容のオートクレーブに入れ密閉し、その後250rpmで撹拌しながら160℃で72時間反応させた。
【0028】
反応終了後、蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返し、約120℃で一晩乾燥した。得られた生成物は表1に示すX線回折パターンを有するペンタシル型ゼオライトであった。このゼオライトのシリカ/アルミナモル比は組成分析の結果、21.9であった。ゼオライトの二次粒子径は最大で40ミクロンであった。
【0029】
【表1】
Figure 0003937637
実施例2(触媒の調製:触媒組成物A)
実施例1で得られたゼオライト粉末30グラム(絶乾基準)にアルミナゾル(Al23含量10wt%、コロイダルアルミナ200、日産化学)24グラム、アルミナゲル(Al23含量70wt%、CataloidAP(Cー10)、触媒化成)3グラムを加え、約2時間混練りした。混練りする時、混練り状態を見て適量の蒸留水を加え、ペースト状の混合物とした。これを0.8mmФの孔があるスクリーンを通してヌードル状の成形体とした。120℃で一晩乾燥した後、500℃で1時間焼成した。
【0030】
焼成した成形体30グラムをとり、10wt%の塩化アンモニウム水溶液を用いて80から85℃で1時間イオン交換処理をした。このイオン交換処理を5回繰り返した後、蒸留水で5回水洗した。120℃で一晩乾燥し、アンモニウムイオン交換型の成形体を得た。その後、550℃で2時間焼成し、アンモニウムイオンを水素イオンに変換し、酸型の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトを含有する触媒組成物Aを得た。また、SEM観察により、触媒成型体中のゼオライトの最大二次粒子径は3ミクロンであった。観察したSEM像の例を図1に示す。
【0031】
比較例1(触媒の調製:触媒組成物B)
触媒成型時における混練時間が約30分である以外、触媒組成物Aと同様にして調製し触媒組成物Bを得た。SEM観察により、触媒成型体中のゼオライトの最大二次粒子径は10ミクロンであった。観察したSEM像の例を図2に示す。
【0032】
実施例3(DCB異性化反応)
上記の方法で触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径を変化させた触媒組成物AおよびBについて、液相でo-DCBの異性化反応試験を行った結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
Figure 0003937637
表2から、触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径の最大値が5ミクロンより小さいと触媒活性が高くなり、反応温度を低くすることができることがわかる。
【0034】
実施例4(CT異性化反応)
上記の方法で触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径を変化させた触媒組成物AおよびBについて、液相でCT異性化反応試験を行った結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
Figure 0003937637
表3から、触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径の最大値が5ミクロンより小さいと触媒活性が高くなり、反応温度を低くすることができることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、DCB、CTなどのハロゲン化芳香族化合物の異性化反応の触媒活性が向上し反応温度を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製した触媒組成物AのSEM像を表す図である。
【図2】比較例1で調製した触媒組成物BのSEM像を表す図である。

Claims (7)

  1. 触媒成型体中の主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトの二次粒子径が最大5ミクロン以下であることを特徴とするハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物。
  2. ハロゲン化芳香族化合物が次の一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物。
    Figure 0003937637
    (式中、X1はハロゲン原子、X2はハロゲン原子またはメチル基)。
  3. ハロゲン化芳香族化合物がジクロロベンゼンまたはクロロトルエンである請求項2記載のハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物。
  4. 主空洞の入口が10員酸素環からなるゼオライトが酸型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のハロゲン化芳香族化合物の異性化触媒組成物をハロゲン化芳香族化合物と接触させるハロゲン化芳香族化合物の異性化方法。
  6. ハロゲン化芳香族化合物が次の一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項5記載のハロゲン化芳香族化合物の異性化方法。
    Figure 0003937637
  7. ハロゲン化芳香族化合物がジクロロベンゼンまたはクロロトルエンである請求項6記載のハロゲン化芳香族化合物の異性化方法
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