JP3937062B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂を構成成分の一つとする熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂は、その優れた靱性、力学的強度、耐摩耗性、耐油性等を活かして各種包装材料、自動車部品、ゴルフボール、スキー靴などに利用されている。
【0003】
α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂の利用分野を広げること、また、同樹脂が従来使用されていた分野においてより高品質な製品を得ることなどを目的として同樹脂の改質を行う試みがなされている。例えば、特開昭49−11943号公報には、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水添物を配合してなる樹脂組成物が記載されており、また、米国特許第4,986,545号明細書には、無水マレイン酸等によって変性された熱可塑性エラストマーを配合してなる樹脂組成物が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に各種成形法、中でも射出成形法で成形体を得る場合、ウエルド、すなわち、樹脂同士の金型内での溶融接合部が生じやすく、このウエルド部分の強度が弱いという問題点が知られている。
上記した2種の樹脂組成物は、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂単独の場合に比べ、反発弾性が維持または改良されるとともに、柔軟性が改良された成形体を与える。しかしながら、上記した2種の樹脂組成物では、得られる成形体にウエルドが生じた場合、該ウエルド部分における強度が、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂単独の場合に比べて低下してしまい、十分満足できるものではない。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、柔軟性に優れ、しかもウエルド部分における強度が良好であって、靱性、耐摩耗性、耐油性等にも優れた成形体を与えるα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂組成物を新たに提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば上記の課題は、
(1)α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂、
(2)芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックXと共役ジエン化合物からなる重合体ブロックYを有するブロック共重合体および/またはその水素添加物(以下、これをスチレン系ブロック共重合体(2)と略称することがある)、および
(3)芳香族ビニル化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロック(A)、並びに(メタ)アクリル化合物およびビニルエステル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体
から構成される熱可塑性樹脂組成物であって、
アイオノマー樹脂(1)とブロック共重合体および/またはその水素添加物(2)との重量比が(1)/(2)=98/2〜2/98であり、
ブロック共重合体(3)の配合割合が、アイオノマー樹脂(1)とブロック共重合体および/またはその水素添加物(2)との合計量100重量部当り1〜50重量部である熱可塑性樹脂組成物を提供することによって解決される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の構成成分の一つであるα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)とは、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸とからなる共重合体、またはα−オレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステルからなる共重合体のカルボキシル基の少なくとも1部がナトリウム、カリウム、リチウム、銅、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の金属陽イオンとの塩を形成している樹脂のことを意味する。
【0007】
本発明にあっては、かかるα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂として公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、デュポン社製の「サーリン(SURLYN)」(商品名)、三井・デュポンポリケミカル(株)製の「ハイミラン(HIMILAN)」(商品名)、エクソン社製の「イオテック(IOTEK)」(商品名)など市販のものが好適に使用される。α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)は1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するスチレン系ブロック共重合体(2)は、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックXと共役ジエン化合物からなる重合体ブロックYを有するブロック共重合体および/またはその水素添加物であり、重合体ブロックXをX、重合体ブロックYをYと表すと、例えば(X−Y)n−X(nは1〜10の整数を表す)、(X−Y)m −W(Wはカップリング剤から誘導されるm価の残基を表し、mは2〜15の整数を表す)等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水素添加物などが挙げられる。スチレン系ブロック共重合体(2)は1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。スチレン系ブロック共重合体(2)においては、芳香族ビニル化合物の含有率が5〜75重量%であることが好ましく、10〜65重量%であることがより好ましい。
【0009】
重合体ブロックXを構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン,m−メチルスチレンまたはp−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレンまたはα−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、重合体ブロックYを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、イソプレン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物が好ましい。共役ジエン化合物は、1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0010】
スチレン系ブロック共重合体(2)における重合体ブロックYの構造は特に限定されず、また、1,2−結合や3,4−結合の含有量についても特に制限はない。
スチレン系ブロック共重合体(2)の分子量は特に限定されないが、好ましくは30,000〜1,000,000であり、より好ましくは40,000〜300,000である。
また、スチレン系ブロック共重合体(2)における重合体ブロックXと重合体ブロックYの結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0011】
さらに、スチレン系ブロック共重合体(2)は、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中に、または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。
【0012】
スチレン系ブロック共重合体(2)は、例えば、次のような公知のアニオン重合法によって製造することができる。すなわち、アルキルリチウム化合物等を開始剤としてn−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させることによってブロック共重合体を製造することができる。そして必要に応じてこのブロック共重合体を、公知の方法に従って不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加することによって水素添加物を得ることができる。この際、耐熱性、耐候性の観点から、水添前のブロック共重合体における共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の70%以上を水素添加することが好ましい。スチレン系ブロック共重合体(2)における重合体ブロックY中の炭素−炭素二重結合の含有量は、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴法等により測定することができる。なお、上記重合反応に際し、テトラヒドロフラン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などのルイス塩基をビニル化剤として共存させてもよい。
【0013】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の残りの構成成分であるブロック共重合体(3)は、上記のように、芳香族ビニル化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロック(A)、並びに(メタ)アクリル化合物およびビニルエステル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体である。
ブロック共重合体(3)の分子構造は特に制限されるものではなく、重合体ブロック(A)をA、重合体ブロック(B)をBと表すと、A−B型ジブロック共重合体、A−B−AまたはB−A−B型のトリブロック共重合体などのいずれの形態であってもよい。
【0014】
ブロック共重合体(3)における重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物単独で構成されていてもよいし、オレフィン化合物単独で構成されていてもよいし、芳香族ビニル化合物およびオレフィン化合物の両方から構成されていてもよいし、また、芳香族ビニル化合物およびオレフィン化合物の少なくとも一方と他の少量の共重合性単量体から構成されていてもよい。重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物およびオレフィン化合物のうちの2種類以上の単量体から構成されている場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれらの2種以上の組み合わせ、のいずれであってもよい。
【0015】
重合体ブロック(A)を構成し得る芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、1,3−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物は、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、重合体ブロック(A)を構成し得るオレフィン化合物としては、炭素数2〜10のオレフィン類や、ジエン系炭化水素化合物を挙げることができ、具体的には、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。重合体ブロック(A)がブタジエンやイソプレンなどのジエン系炭化水素からなる構造単位を有する場合は、水素添加などの手段により炭素−炭素二重結合を飽和の炭素−炭素結合に変換しておくことが好ましい。水素添加は、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素と接触させる方法などの公知の方法に従って実施することができる。
【0017】
上記したうちでも、重合体ブロック(A)が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、それらの水素添加物などの重合体の1種または2種以上からなる重合体ブロックであることが、ブロック共重合体(3)とα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)やスチレン系ブロック共重合体(2)との親和性をより良好なものとし、靱性に優れた成形体を与える熱可塑性樹脂組成物が得られる点から好ましい。
【0018】
また、ブロック共重合体(3)における重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル化合物およびビニルエステル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロックである。重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル化合物とビニルエステル化合物の共重合体ブロックであってもよい。
【0019】
重合体ブロック(B)を構成する(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルおよびそれらの誘導体を挙げることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルまたはそれらの4級アンモニウム塩(例えば塩酸塩やp−トルエンスルホン酸塩など)、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができるが、これらの中でもメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル化合物は、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい
【0020】
また、重合体ブロック(B)を構成するビニルエステル化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどが挙げられるが、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル化合物は、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル化合物またはビニルエステル化合物の他に他の重合性単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。
その場合の他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸またはそのナトリウム塩やカリウム塩等の芳香族ビニル化合物;クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;イタコン酸グリシジルエステル、アリルグリジシルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、p−グリシジルスチレン等のエポキシ基含有不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタール酸等の酸無水物基を有する不飽和単量体などを挙げることができる。
重合体ブロック(B)中の上記した他の重合性単量体の含有量は、重合体ブロック(B)の全構造単位中、通常50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0022】
重合体ブロック(B)は、ブロック共重合体(3)とα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)との親和性をより優れたものにするという観点から、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基または酸無水物基といった極性の官能基を有するものであることが好ましい。
重合体ブロック(B)に上記のような極性の官能基をもたせる方法としては、▲1▼重合体ブロック(B)を構成する(メタ)アクリル化合物またはビニルエステル化合物として、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などを有する化合物を使用する方法、▲2▼(メタ)アクリル化合物またはビニルエステル化合物とは異なる化合物であって、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基などを有する重合性単量体を共重合させる方法、あるいは▲3▼ビニルエステル化合物を使用して重合体ブロック(B)を形成し、次いで酸またはアルカリで処理することによって、ビニルエステル化合物に由来するエステル部分を水酸基に変換する方法などが挙げられる。
重合体ブロック(B)において、上記のような極性の官能基を有する構造単位の含有量は、重合体ブロック(B)の全構造単位中、通常、0.1モル%以上であり、好ましくは1〜50モル%、より好ましくは2〜30モル%である。
【0023】
ブロック共重合体(3)においては、重合体ブロック(A)の数平均分子量は300〜100,000の範囲内であることが好ましく、2,500〜50,000の範囲内であることがより好ましい。また、重合体ブロック(B)の数平均分子量は1,000〜100,000であることが好ましく、2,000〜50,000であることが好ましい。また、ブロック共重合体(3)の全体の数平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましい。
なお、本明細書でいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めたポリスチレン換算の分子量である。
上記した範囲内の数平均分子量を有するブロック共重合体(3)を用いると、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)やスチレン系ブロック共重合体(2)との親和性が優れていて、力学的特性、溶融接着性などに優れる熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
ブロック共重合体(3)の製法は特に制限されないが、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、重合体ブロック(A)〔または重合体ブロック(B)〕を構成する単量体成分を、チオ−S−カルボン酸、2−アセチルチオエチルエーテル、10−アセチルチオデカンチオールなどのような分子内にチオエステル基とメルカプト基を有する化合物の存在下にラジカル重合し、それにより得られる重合体を水酸化ナトリウム、アンモニアなどのアルカリ、または塩酸、硫酸などの酸で処理することによって片末端にメルカプト基を有する重合体とし、その重合体の存在下に、重合体ブロック(B)〔または重合体ブロック(A)〕を構成する単量体成分をラジカル重合することによってブロック共重合体(3)を得ることができる。また、末端に二重結合を有するポリオレフィン系樹脂にチオ−S−酢酸、チオ−S−安息香酸、チオ−S−プロピオン酸、チオ−S−酪酸、チオ−S−吉草酸などを付加させた後、酸またはアルカリで処理する方法、アニオン重合によってポリオレフィンを製造する際に、エチレンスルフィドなどを重合停止剤として使用する方法などの方法によって末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)を形成し、該重合体ブロック(A)の存在下に重合体ブロック(B)を形成する単量体成分をラジカル重合することによってもブロック共重合体(3)を得ることができる。これらの方法は、目的とする数平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体(3)を簡単に且つ効率的に製造することができるので好ましい方法である。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)、スチレン系ブロック共重合体(2)とブロック共重合体(3)の配合割合は、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)/スチレン系ブロック共重合体(2)=98/2〜2/98(重量比)の範囲内であり、好ましくはα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)/スチレン系ブロック共重合体(2)=95/5〜5/95(重量比)であり、より好ましくはα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)/スチレン系ブロック共重合体(2)=90/10〜10/90(重量比)である。そしてブロック共重合体(3)の使用量は、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)とスチレン系ブロック共重合体(2)の合計量100重量部当り、1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲内において、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の重合体;低分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、プロセスオイル等の可塑剤などを含有していてもよい。さらに、コストの低減を目的として、無機充填剤を添加することもできる。かかる無機充填剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その改質を目的として、ガラス繊維、カーボン繊維、熱老化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤などを添加することができる。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の調製法は特に限定されず、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(1)、スチレン系ブロック共重合体(2)、ブロック共重合体(3)および必要に応じて用いられる他の成分を均一に混合し得る方法であればいずれでもよいが、通常、溶融混練法が用いられる。溶融混練は、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて行うことができ、通常約170〜270℃の温度で約1〜30分間程度混練することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、単独で用いて各種の成形体を製造することができ、その場合には弾力性、柔軟性、力学的特性に優れた成形体を得ることができる。その際の成形方法としては、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている各種の成形方法を使用することができ、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの任意の成形法によって、本発明の熱可塑性樹脂組成物をフィルム状、板状、管状などの種々の形状に成形することができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形による二色成形、共押出、押出コーティングなどの方法により、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612等のポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアセタール系樹脂;スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの高分子材料;さらにはガラス、アルミニウムなどの無機および金属材料などからなる部材と複合化した、複合成形体とすることもできる。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、食品包装、スキン包装等の包装用フィルム;野球ボールの中芯、ゴルフボールカバー材、スキー靴、スポーツシューズ等のスポーツ用品;工具、各種グリップ、各種ボトルのキャップ等の雑貨・日用品;靴、靴底、靴のヒールカウンター等の履き物;事務機器部品、建築材、スキー板、カバン等の表皮材に用いられるシート;内装材の表皮材、ウインドシールド、ボディサイドモール、バンパーガード、インパクトディストリビューター等の自動車内外装部品;ペースト状物の包装用チューブ、工業用チユーブ等のチューブ;各種フィルムやシート等の積層品の接着剤、接着層としての接着材;緩衝材、化粧品用瓶のパッキン、建材の断熱材、ルーフィング材、スポーツ用各種プロテクタに用いられる発泡体などの各種の分野で使用できる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、得られた樹脂組成物の各種物性の測定は以下に示す方法で行った。
【0032】
(曲げ強度)
射出成形機にて作製した試験片(サイズ110mm×10mm×4mm)を用いて、JIS K7203に準じて、三点曲げ法にて曲げ弾性率を測定した。
(引っ張り強度)
射出成形機にて作製した試験片(JIS−3号に従うダンベル型:厚さ2mm)を用いて、JIS K7113に準じてインストロン型引っ張り試験機を用い、引っ張り強度(破断強度および破断伸度)を測定した。
【0033】
参考例1(スチレン系ブロック共重合体の製造)
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1750gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(濃度:10重量%)175gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレン6500gを加えて60分間、さらにスチレンを1750g加えて60分間重合し、最後にメタノールを加えて重合を停止し、スチレン−イソプレン−スチレン型のブロック共重合体を得た。
さらに、このブロック共重合体をチーグラー系触媒を用い、水素雰囲気下で水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これをSEPSと略記する)を得た。得られたSEPSの数平均分子量は53,000であり(GPC測定による)、また、スチレン含有量は35重量%、水素添加率は98.9%であった(いずれも1H−NMR測定による)。
【0034】
参考例2(スチレン系ブロック共重合体の製造)
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1400gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(濃度:10重量%)210gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレンとブタジエンの混合物〔前者/後者=50/50(重量比)〕7200gを加えて60分間、さらにスチレンを1400g加えて60分間重合し、最後にメタノールを加えて重合を停止し、スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様にして水素添加し、水添ブロック共重合体(以下、これをSEEPSと略記する)を得た。
得られたSEEPSの数平均分子量は51,700であり(GPC測定による)、また、スチレン含有量は28重量%、水素添加率は97.5%であった(いずれも1H−NMR測定による)。
【0035】
参考例3(スチレン系ブロック共重合体の製造)
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1750gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(濃度:10重量%)210gを加え、60℃で60分間重合し、次いでテトラヒドロフランを250g添加し、ブタジエンを6500g加えて60分間、さらにスチレンを1750g加えて60分間重合し、最後にメタノールを加えて重合を停止し、スチレン−ブタジエン−スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様にして水素添加し、水添ブロック共重合体(以下、これをSEBSと略記する)を得た。
得られたSEBSの数平均分子量は76,100であり(GPC測定による)、また、スチレン含有量は35重量%、水素添加率は98.9%であった(いずれも1H−NMR測定による)。
【0036】
参考例4(スチレン系ブロック共重合体の製造)
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1500gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(濃度:10重量%)115gを加え、60℃で60分間重合し、次いでテトラヒドロフランを250g添加し、イソプレンを7000g加えて60分間、さらにスチレンを1500g加えて60分間重合し、最後にメタノールを加えて重合を停止し、スチレン−イソプレン−スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様にして水素添加し、水添ブロック共重合体(以下、これをHV−SISと略記する)を得た。
得られたHV−SISの数平均分子量は78,100であり(GPC測定による)、また、スチレン含有量は30重量%、水素添加率は88.9%であり、水添ポリイソプレンブロックのビニル結合含有量は52.3モル%であった(いずれも1H−NMR測定による)。
【0037】
参考例5(スチレン系ブロック共重合体の製造)
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1400gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(濃度:10重量%)210gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレンとブタジエンの混合物〔前者/後者=50/50(重量比)〕7200gを加えて60分間、さらにスチレンを1400g加えて60分間重合し、次いでエチレンオキサイド14gを加えた後にメタノールを加えて重合を停止し、末端に水酸基を有するスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様にして水素添加し、水添ブロック共重合体(以下、これをSEEPS−OHと略記する)を得た。
得られたSEEPS−OHの数平均分子量は51,700であり(GPC測定による)、また、スチレン含有量は28重量%、水素添加率は97.5%であり、1分子当たりの末端水酸基の数は0.83個であった(いずれも1H−NMR測定による)。
【0038】
参考例6〔無水マレイン酸で変性したスチレン系ブロック共重合体の製造〕
スチレンとイソプレンからなるブロック共重合体の水素添加物〔セプトン2002(商品名)、(株)クラレ製〕100重量部、無水マレイン酸3重量部および0.1重量部のパーヘキサ25B(商品名、日本油脂(株)社製)を均一に混合した後、窒素雰囲気下で二軸押出機に供給し、シリンダー温度250℃で溶融混練して無水マレイン酸変性を行い、次いで未反応の無水マレイン酸を加熱下に減圧除去し、変性ブロック共重合体(以下、これをMAn−SEPSと略記する)を得た。変性ブロック共重合体における無水マレイン酸の付加量は2重量%であった(1H−NMR測定により求めた)。
【0039】
参考例7〔ブロック共重合体1(ポリスチレンブロック−ポリメタクリル酸メチルブロックからなるジブロック共重合体)の製造〕
(イ)90リットルの重合槽にスチレンを75kg仕込み、窒素雰囲気下で内温が90℃になるまで昇温した。30分後に、チオ−S−酢酸32gを重合槽内に添加し、ラジカル重合開始剤〔和光純薬株式会社製、V−65(商品名)〕の7重量%トルエン溶液を430ml/時間の速度で重合槽に添加し、また、チオ−S−酢酸の6重量%トルエン溶液を750ml/時間の速度で重合槽に添加して重合を開始し、重合率(ポリマー転換率)が40%に達した時点で重合を停止し、重合槽内を冷却した。得られた粘性液体から溶媒および未反応のスチレンを除去することによって、末端にチオ−S−酢酸エステル基を有する数平均分子量10,000のポリスチレンを得た。
(ロ)上記(イ)で得られたポリスチレン30kg、トルエン30kgおよびn−ブタノール15kgを90リットルの反応槽に仕込み、窒素雰囲気下に、70℃で水酸化ナトリウムの10重量%メタノール溶液135mlを添加し、ポリスチレン末端のチオ−S−酢酸エステル基のエステル交換反応を行った。2時間後に、酢酸30gを反応槽に添加して反応を終了した。得られた反応溶液から溶媒を除去することにより、末端にメルカプト基を有するポリスチレンを得た。
(ハ)メタクリル酸メチル30kg、トルエン48kgおよび上記(ロ)で得られた末端にメルカプト基を有するポリスチレン30kgを200リットルの重合槽に仕込み、90℃で重合槽の雰囲気を充分に窒素置換した後、上記(イ)で用いたのと同じラジカル重合開始剤の10重量%トルエン溶液を54ml/時間の速度で重合槽に添加して重合を開始し、重合率(ポリマー転換率)が95%に達した時点で重合を停止した。得られた反応溶液から溶媒および未反応のメタクリル酸メチルを除去することによって、ポリスチレンブロックとポリメタクリル酸メチルブロックからなるジブロック共重合体〔以下、ブロック共重合体1という〕を得た。
得られたブロック共重合体1におけるポリスチレンブロックの数平均分子量、ポリメタクリル酸メチルブロックの数平均分子量、全体の数平均分子量はそれぞれ10,000、11,000および21,000であった。
【0040】
参考例8〔ブロック共重合体2(ポリスチレンブロック−アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体)の製造〕
(イ)参考例7の(イ)および(ロ)と全く同じ工程を行って、末端にメルカプト基を有するポリスチレンを製造した。
(ロ)アクリル酸エチル28.5kg、アクリル酸1.5kg、トルエン48kgおよび上記(イ)で得られた末端にメルカプト基を有するポリスチレン30kgを200リットルの重合槽に仕込み、70℃で重合槽内の雰囲気を充分に窒素置換した後、ラジカル重合開始剤〔和光純薬株式会社製、V−70(商品名)〕の2重量%トルエン溶液を270ml/時間の速度で重合槽に添加して重合を開始し、重合率(ポリマー転換率)が95%に達した時点で重合を停止した。得られた反応溶液から溶媒および未反応のモノマー(アクリル酸エチルおよびアクリル酸)を除去することによって、ポリスチレンブロックとアクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体〔以下、ブロック共重合体2という〕を得た。
得られたブロック共重合体2におけるポリスチレンブロックの数平均分子量、アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックの数平均分子量および全体の数平均分子量はそれぞれ10,000、9,500および19,500であり、アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックにおけるアクリル酸エチルとアクリル酸のモル比は、前者/後者=93/7であった。
【0041】
参考例9〔ブロック共重合体3(ポリスチレンブロック−アクリロニトリル/スチレン共重合体ブロックからなるジブロック共重合体)の製造〕
(イ)参考例7の(イ)および(ロ)と全く同じ工程を行って、末端にメルカプト基を有するポリスチレンを製造した。
(ロ)スチレン21kg、アクリロニトリル9kg、トルエン48kgおよび上記(イ)で得られた末端にメルカプト基を有するポリスチレン30kgを200リットルの重合槽に仕込み、90℃で重合槽内の雰囲気を充分に窒素置換した後、重合速度が1時間当り約10%となるように参考例7で使用したのと同じラジカル重合開始剤の10重量%トルエン溶液を重合槽に添加して重合を開始し、重合率(ポリマー転換率)が95%に達した時点で重合を停止した。得られた反応溶液から溶媒および未反応のモノマーを除去することによって、ポリスチレンブロックとアクリロニトリル/スチレン共重合体ブロックからなるジブロック共重合体〔以下、ブロック共重合体3という〕を得た。
得られたブロック共重合体3におけるポリスチレンブロックの数平均分子量、アクリロニトリル/スチレン共重合体ブロックの数平均分子量および全体の数平均分子量は、それぞれ10,000、10,000および20,000であり、アクリロニトリル/スチレン共重合体ブロックにおけるアクリロニトリルとスチレンのモル比は、前者/後者=70/30であった。
【0042】
参考例10〔ブロック共重合体4(ポリプロピレンブロック−アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体)の製造〕
(イ)ポリプロピレン〔三菱化学(株)社製、三菱ノーブレンMH8(商品名)〕を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリプロピレンを製造した。
(ロ)上記(イ)で得られた末端に二重結合を有するポリプロピレン100kg、トルエン500kgおよびチオ−S−酢酸3.8kgを反応槽に入れて、内部の雰囲気を充分窒素置換した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.38kgを添加して、90℃で6時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリプロピレンを製造した。
(ハ)上記(ロ)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリプロピレン60kgを、トルエン100kgとn−ブタノール20kgの混合溶媒中に溶解し、窒素雰囲気下に90℃で水酸化ナトリウムのn−ブタノール溶液(濃度:7重量%)1kgを添加して、同温度で攪拌下に2時間反応させた後、酢酸5kgを添加して反応を終了させた。得られた反応溶液から溶媒を除去して、末端にメルカプト基を有するポリプロピレンを製造した。
(ニ)上記(ハ)で得られた末端にメルカプト基を有するポリプロピレン50kgをトルエン174kgに溶解し、それにアクリル酸エチル48.9kgおよびアクリル酸1.1kgを加えて、窒素雰囲気下、90℃で、重合速度が1時間当たり約10%になるように参考例7で使用したのと同じ重合開始剤の10重量%トルエン溶液を添加して重合を開始し、重合率が95%になった時点で反応を停止した。得られた反応溶液から溶媒および未反応モノマーを除去することによって、ポリプロピレンブロックとアクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体〔以下、ブロック共重合体4という〕を得た。
得られたブロック共重合体4におけるポリプロピレンブロックの数平均分子量、アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックの数平均分子量および全体の数平均分子量はそれぞれ13,000、11,000および24,000であり、アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックにおけるアクリル酸エチルとアクリル酸のモル比は前者/後者=90/10であった。
【0043】
参考例11〔ブロック共重合体5(ポリプロピレンブロック−アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体)の製造〕
(イ)参考例10の(イ)、(ロ)および(ハ)と全く同じ工程を行って、末端にメルカプト基を有するポリプロピレンを製造した。
(ロ)上記(イ)で得られた末端にメルカプト基を有するポリプロピレン50kgをトルエン174kgに溶解し、それにアクリル酸エチル45.3kgおよび無水マレイン酸4.7kgを加えて、窒素雰囲気下、90℃で、重合速度が1時間当たり約10%になるように参考例7で使用したのと同じ重合開始剤の10重量%トルエン溶液を添加して重合を開始し、重合率(ポリマー転換率)が95%に達した時点で重合を停止した。得られた反応溶液から溶媒および未反応のモノマーを除去することによって、ポリプロピレンブロックとアクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体〔以下、ブロック共重合体5という〕を得た。
得られたブロック共重合体5におけるポリプロピレンブロックの数平均分子量、アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体ブロックの数平均分子量および全体の数平均分子量は、それぞれ13,000、10,000および23,000であり、アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体ブロックにおけるアクリル酸エチルと無水マレイン酸のモル比は、前者/後者=96/4であった。
【0044】
参考例12〔ブロック共重合体6(ポリエチレンブロック−アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体)の製造〕
(イ)ポリエチレン〔三井石油ポリエチ(株)社製、ハイゼックスHD700F(商品名)〕を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリエチレンを製造した。
(ロ)上記(イ)で得られた末端に二重結合を有するポリエチレン100kg、トルエン1000kgおよびチオ−S−酢酸30kgを反応槽に入れて、反応槽の雰囲気を充分窒素置換した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10kgを添加して、90℃で6時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリエチレンを製造した。
(ハ)上記(ロ)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリエチレン60kgを、トルエン100kgとn−ブタノール20kgの混合溶媒中に溶解し、窒素雰囲気下に90℃で水酸化カリウムのn−ブタノール溶液(濃度:7重量%)1kgを添加して、窒素雰囲気下、トルエン還流温度で6時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリエチレンを製造した。
(ニ)上記(ハ)で得られた末端にメルカプト基を有するポリエチレン50kgをトルエン184kgに溶解し、それにアクリル酸エチル23kgおよびアクリル酸2kgを加えて、窒素雰囲気下、90℃で、重合速度が1時間当たり約10%になるように1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)〔ラジカル重合開始剤、V−65〕を添加して重合を開始し、重合率が95%になった時点で反応を停止した。得られた反応溶液から溶媒および未反応モノマーを除去することによって、ポリエチレンブロックとアクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックからなるジブロック共重合体〔以下、ブロック共重合体6という〕を得た。
得られたブロック共重合体6におけるポリエチレンブロックの数平均分子量、アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体ブロックの数平均分子量および全体の数平均分子量はそれぞれ13,000、12,000および25,000であった。
【0045】
実施例1〜7および比較例1、2
α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂としてハイミラン1605(商品名、三井・デュポンポリケミカル(株)社製)を使用し、下記表1または表2に示した配合に従い二軸押出機で230℃にて溶融混合してペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を成形温度230℃にて射出成形機(東芝機械(株)社製の55トン射出成形機)を使用して、シリンダー温度200℃および金型温度60℃の条件下で成形することにより所定形状の試験片を作製し、各種の物性を評価した。結果を下記表1および表2に示す。
【0046】
比較例3
ハイミラン1605を単独で射出成形(成形温度230℃)して所定形状の試験片を作製し、各種の物性を評価した。結果を表2に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003937062
【0048】
【表2】
Figure 0003937062
【0049】
表1および表2の結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は十分な柔軟性を有し、かつウエルド部分における強度が十分な成形体を与えることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明により提供される熱可塑性樹脂組成物は、十分な柔軟性を有し、かつウエルドが生じた場合でも該ウエルド部分における強度が十分な成形体を与える。

Claims (2)

  1. (1)α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂、
    (2)芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックXと共役ジエン化合物からなる重合体ブロックYを有するブロック共重合体および/またはその水素添加物、および
    (3)芳香族ビニル化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロック(A)、並びに(メタ)アクリル化合物およびビニルエステル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体
    から構成される熱可塑性樹脂組成物であって、
    アイオノマー樹脂(1)とブロック共重合体および/またはその水素添加物(2)との重量比が(1)/(2)=98/2〜2/98であり、
    ブロック共重合体(3)の配合割合が、アイオノマー樹脂(1)とブロック共重合体および/またはその水素添加物(2)との合計量100重量部当り1〜50重量部である熱可塑性樹脂組成物
  2. 重合体ブロック(B)を構成する(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルおよびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種の化合物である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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