JP3936724B1 - ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中でビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、ビーズミル分散メディアから発生する摩耗粉末を超音波によりダイヤモンド質超微粒子から分離した後、ダイヤモンド質超微粒子が集合化や再凝集を完了する前の分離飽和時間内に、前記摩耗粉末を遠心分離することを特徴とするダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
【選択図】 図7
Description
「粒度分布制御」とは、ビーズミル分散でダイヤモンド質超微粒子分散体を汚染する磨耗汚染物を超音波の作用のもとで解離或いは分離して、解離或いは分離状態が維持されている間に適時その強さを選択した遠心力の作用で磨耗汚染物を除去する際に、磨耗汚染物と同時に、或いは、高純度化された分散体にて実施されるダイヤモンド質超微粒子の“最大粒子径近傍のオーバーサイズカット”処理、特にこの磨耗汚染除去工程を繰り返すことにより汚染物除去が完了した分散体にて遠心力場のStokes則を用いて“最大粒子径近傍のオーバーサイズをカットする処理、或いはこの“オーバーサイズカット処理で分離された大粒径ダイヤモンド質超微粒子分離体の回収、再分散する処理(ビーズミルによる再分散処理も含む)”操作等々、特にことわりのない場合は、これらを全て包含するものとする。
特許文献1には、人造ダイヤモンド含有材料及びその製造方法が記載されている。特許文献2には、分散安定性に優れたダイヤモンド懸濁水性液、このダイヤモンドを含む金属膜及びその製造物についての記載がある。さらに、特許文献3にはテクスチャ加工用研磨スラリー及び方法が開示されている。
上記特許文献では、負の酸素バランスの条件下でRDX(爆薬)と炭素材料との混合物をデトネーション(衝撃波合成或いは爆発合成)し、生成物を酸にて湿式精製処理することにより一次粒子の平均径が1〜20nm、比表面積が200〜450m2/gのナノダイヤモンド質超微粒子が得られることが開示されている(特許文献1、2)。
従って、微粒子として従来にない極めて高い反応性、活性を示し、強い粒子凝集性と微粒子の集合体化(特に分散媒等に分散処理した状態で起こるナノ或いは〜ミクロンサイズ規模の微粒子の集合化、これをクラスター化と呼ぶ)が現われる特異な性質が特徴である。
ナノスケール超微粒子の応用の立場から、精製処理後の水分散系に界面活性剤を添加したり、pH調整でこの超微粒子の分散安定化(超微粒子の凝集防止)を目指す取り組み(特許文献2,3)はあるが、このような化学的手法のみで極めて活性で複雑な凝集構造をとるダイヤモンド質超微粒子表面を完全に修飾し、経時変化しにくい安定分散の達成をはかることはほとんど不可能であると考えられてきた。
従って、ダイヤモンド質超微粒子等分散体の産業への活用においては、
1 経時変化で生じた強い凝集構造を含む超微粒子分散体を高純度で安定に再分散ができる装置の構成或いは製造システムの開発と製造手法の確立
2 低コストで入手可能なより凝集が強い乾燥粉から高純度のナノ分散体を製造する装置或いは製造システムの開発と製造方法の確立
3 粒度分布が急峻な分散体を製造する製造システム並びに製造方法の開発
4 超微粒子原料の歩留り向上によるコスト低減
等々の克服すべき大きな開発課題が存在している。
特許文献4には、磁気記録媒体の製造方法について記載されている。また、特許文献5には、超微粒子石炭と超微粒子石炭―水スラリー及びその製造方法並びにこれを用いた組成物についての記載がある。さらに、特許文献6には超分散状態ナノ炭素およびその製造方法について開示されている。
また、有機物である石炭粉末に水及び分散剤を添加してビーズミルで超微粉砕して高濃度かつ低粘度で長期間保存安定性の良好な超微粒子石炭(最適製造条件では平均粒径0.01−1μm)―水スラリー分散体の製造方法が特許文献5に開示されている。分散剤の効果は、微粉砕石炭粒子の凝集防止並びに防臭作用等機能性発現にあるとしており、分散メディアには0.3〜0.5mmのジルコニアビーズの使用例が報告されている。
爆合法ナノダイヤモンド凝膠体にセラミックビーズや金属ビーズを用いて湿式ビーズミリング処理を施した場合、ダイヤモンドは物質中最高の硬さを有する故に、ビーズの周速を限定してもダイヤモンド微粒子によるビーズ磨耗が発生することは特許文献4からも自明である。
本発明は、前記ビーズミル処理分散体に不可避的に混入する磨耗汚染粉の除去装置の構成やそれらを備えた分散体製造システム、磨耗汚染の除去方法を明らかとすると共に、汚染物の除去と同時に、或いは単独にダイヤモンド質超微粒子分散体の粒度分布が制御できる装置構成やそれらを組み合わせた分散体の製造システムとその手法について明らかとするものである。
しかし、本発明の課題であるダイヤモンド質超微粒子やその関連超微粒子等の凝集力が極めて強く複雑な凝集体構造を有する超微粒子の分散挙動を分散メディア等の磨耗汚染の除去と関連付け、分散を崩さず磨耗汚染粉の超音波による分離装置と遠心分離による除去装置、ビーズミル装置、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を有機的に組み合わせた分散体製造システム、或いは超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の分離機能を生かし、ナノ分散体の粒度分布制御に活用できる同装置やその手法等々について、本発明に至った高純度で粒度分布が制御できる超微粒子分散体製造に係わる装置の課題については全く明らかにしていない。
従って、分散体製造における磨耗汚染の影響を明確に把握し、汚染物を再現良く除去して高純度で安定なナノ分散体、更には粒度分布特性が優れた分散体を如何に製造するかについては未だ明確にされていない。
本発明の目的とするところは、活性凝集粒子を含むダイヤモンド質超微粒子のビーズミル分散処理体をその分散状態を崩すことなく磨耗汚染除去ができる摩耗汚染除去装置、すなわち、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置からなる装置(以下、摩耗汚染除去装置については、具体的に超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置として説明する。)、加えて同装置の粒度分布制御機能を用いて分散体の粒度分布を遠心力で急峻に制御できる遠心分離による除去装置の構成、その方法を明らかとすることにある。
加えて、前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置をビーズミル装置と組み合わせシステム化した分散体製造システムと製造方法を明らかとするものである。
更に装置構成の前段にビーズミル分散部を配置した構成の超微粒子分散体製造システム構成を明らかにし、凝集性の著しく強い乾燥ダイヤモンド質超微粒子でも確実に一次粒子或いはその近傍の所望の粒径に安定分散でき、高純度な分散体を再現性よく製造出来るとの知見を得た。
更に、前記装置、システムで得られた分散体の粒度分布性能は従来の分散体にない急峻な或いは新規な分布特性をもつことを明らかとした。
1.凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中で被分散体の比重に対して1.2倍以上の比重を有し、耐食性に優れた分散メディアであるビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、ビーズミル分散メディアから発生する摩耗粉末を超音波によりダイヤモンド質超微粒子から分離した後、ダイヤモンド質超微粒子が集合化や再凝集を完了する前の分離飽和時間内に、前記摩耗粉末を遠心分離することを特徴とするダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
2.前記摩耗粉末を遠心分離すると同時に又はその後に、ダイヤモンド質超微粒子を遠心分離処理することを特徴とする1記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
3.前記超音波処理から前記遠心分離処理に係る一連の工程を複数回繰返すことを特徴とする1又は2記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
4.ダイヤモンドで被膜された前記分散メディアであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
5.磨耗粉末の除去と同時に又は単独でダイヤモンド質超微粒子分散体に与える遠心力レベルを制御することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の粒度分布を制御することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
6.磨耗汚染粉末と同時に分離除去したダイヤモンド質超微粒子を酸処理により回収し、乾燥後再利用することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造歩留りを向上させることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の該超微粒子分散体の製造方法。
2 超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の粒径分布制御機能を用いて、急峻な、更には新規な粒度分布特性を持つ超微粒子分散体、ビーズミル分散では製造が困難である50〜100nmに平均分散粒子径をもつ分散体等を得ることができ、分散体の応用分野、応用範囲が更に拡大できる。
3 不可避的に被分散超微粒子が分離混入する磨耗汚染体を酸処理或いは酸処理と再分散処理を繰り返すことで、被分散体の分散製造歩留りは向上する。また、乾燥ダイヤモンド質超微粒子状態からナノ分散状態を容易に達成できるため、ナノ分散体の保存スペースが不用である。更に従来、長期保存で変質(強固な再凝集等)し、初期性能が再現できないとの理由から廃却していた経時変化した超微粒子分散体も再分散処理でナノ分散体として再生でき分散体コスト並びに環境負荷の低減を達成できる。
4 高純度且つ粒度分布が急峻な分散体を安価に提供できることから、ダイヤモンド質超微粒子分散体では、超微細で安定したテクスチャリング加工や1原子オーダーの高品位加工が可能となり、磁気ハードディスクの大幅な記憶容量アップやパワーエレクトロニクス半導体用途の良質SiCエピウエハー等が実現できる。潤滑応用分野では、粒度分布制御効果により、信頼性の高い潤滑用分散体が提供できる。
1 固体質被分散体が物質中最高の硬さのダイヤモンド質超微粒子にもかかわらず、不可避的に発生するビーズ磨耗汚染粉を被分散体の分散を崩さず除去できる超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、或いは同時に、もしくは単独で、分散体の粒度分布特性を急峻化或いは新規な分布特性を付与できる超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、これらの装置をビーズミル分散装置と組み合わせた新たな分散体製造システムの構成
2 前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、これらの装置をビーズミル分散装置と組み合わせた新たな分散体製造システムを用いて、従来にない活性さから起こる一次粒子の強い凝集特性を有する前記超微粒子等をナノスケール一次粒子に確実に、且つ高純度に高い再現性で分散させ、更には、分散体の粒度分布特性を急峻化するための製造手法、が大きな特徴である。
ダイヤモンド質超微粒子は爆合法で得られた合成塊や生成物を酸処理によって非ダイヤモンド質を除去、傾斜法、遠心分離法等を利用して水洗浄を繰り返し90wt%純度でpHが3、固体濃度5wt%のダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を得た。
Forth Moment法によるX線解析で評価した本ダイヤモンド質超微粒子の一次粒子径は4〜6nmであり、本精製処理水分散原料体の精製直後の分散状況は粒度分布測定装置(Microtrac(UPA(EX))にて評価したところ、
4nm以下 : 8体積%
4〜20nm :78体積%
20〜50nm:10体積%
50nm以上 : 4体積%
であった。
結果を図1、2に示す。精製処理直後には平均分散粒径が15nm程度であったものが一次粒子の凝集が大幅に進行し、1ケ月後には0.12μm並びに0.3μmに不規則な粒度分布のピークをもつ分散体に変質していることがわかる。
更に、2μm近傍には著しく粗大化した凝集体も観察される。更に3ケ月後には0.3μm並びに1.5μmに粒度分布のピークを持つ分散体に変質していた。
結果を図3に示す。分散剤を添加しても一次粒子の凝集体で出来た粗大凝集径には大きな変化は認められず、経時変化でできた凝集体は再分散が不可能であった。これはダイヤモンド質超微粒子の活性さを明確に示すものである。
比較前処理として精製処理直後に分散剤を添加して同様な経時変化を追跡した。分散剤の添加は精製時の水分散原料体の分散状態をほとんど変えるものではないが、1ケ月静置後に再度分散状態を評価したところ平均粒子径は50〜100nmと分散安定性は分散剤無添加と比べ少々改善はしたものの、0.1〜0.2μm付近に同様のピークをもつ分散体に変質していた。
分散状態の経時変化に若干の変化は認められるものの、本質的には同様の変質が認められ、超音波や分散剤では再分散不可能な強固な凝集の存在が確認できた。
これらの結果から比表面積が著しく大きく、微粒子表面に広範な種類の表面官能基や官能性誘導体と炭素の不対結合が大量に存在する極めて活性なダイヤモンド質超微粒子は、従来の化学的手法としての分散剤添加やpH調整等で表面修飾(電荷中和等)し、安定分散を実現することが極めて困難といえる。
ダイヤモンド質超微粒子の本再分散実証テスト前の分散状態は前記図3の結果と同様であった。
陽イオン界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩型、ジアルキルジメチルアンモニウム塩型、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩型、アミン塩型等のもの、
陰イオン界面活性剤には、カルボン酸塩型として疎水基に高級脂肪酸を使用した石鹸類、スルホン酸塩型として親水基が硫酸化剤で親水基のnが12〜18のCnH2n+1、アルキルベンゼン、アルキルナフタリン、飽和、不飽和の高級脂肪酸、高級アルコール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、α―スルホ脂肪酸エステル類、α―オレフィンスルホン酸塩類、モノアルキル燐酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類等々がある。
これらの分散剤の選定は、分散体がスラリー状、粘度の低いペースト状、チキソトロピー特性等を有する比較的粘度の高い分散体に応じて、また、分散媒の性質やダイヤモンド質超微粒子の粒子表面性状(表面官能基或いは官能性誘導体の種類や炭素の不対結合(非補償結合)の割合、微視的粒子表面特性等々)により適時選択されるものである。
また、被分散処理原料体にダイヤモンド質超微粒子の精製処理中或いは直後に既に分散剤を添加している場合には、変質の度合いに応じて適時分散剤の再添加を行なうことが好ましい。
分散処理法としては循環型バッチ方式を採用した。装置の構成は、ビーズミル装置外に設けた攪拌装置付き循環タンクを定量ポンプと連結し、ポンプ出口はビーズミルの原料供給口に繋がれ、ビーズミル出口から取り出される分散処理液は前記循環タンクに戻されるものである。本発明で使用したビーズミルの装置構成を図4に示す。前記分散原料体の循環供給速度は0.3L/minで固定した。
超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の粒度分布制御機能を用いて、高純度で急峻な粒度分布特性を有する従来にない優れた特性の分散体や、新規な粒度分布特性を有する分散体が得られその工業的有用性を明らかとした。
前記した1ケ月静置により凝集変質した純度90wt%のダイヤモンド質超微子精製処理水分散体(pH 3,固体濃度5wt%)156gを前記したように、精製水78gで希釈(最終固体質濃度:3.3wt%)、アミン塩系カチオン界面活性剤であるNメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩(R−COO−CH2CH2)2NCH3・HCl 3.9gを分散剤として添加して、φ0.1mm径の部分安定化ジルコニアビーズを用いて(ビーズ充填率85%(分散処理部容量に対して))ビーズミル単独の分散処理を施した。得られた分散結果を表1に示す。ビーズの周速は6m/secから10m/secへと分散の進行とともに選択変更した。到達できる平均分散径(一次粒子等の凝集体サイズも含む)は、ミル条件と同様に、添加する分散剤量にも依存する。
すなわち、表1は、ダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均分散粒子径からの最大粒子径と最小粒子径に対する偏差を示すものである(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.1mm、周速6m/sec、10m/sec、分散剤としてのカチオン系界面活性剤1.6wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度3.3wt%)。
本分散条件で1h後の平均分散径は22.3nm、最大径は85.9nmでより急峻な粒度分布が得られた。得られた分散体を充分均一に攪拌し、20gをサンプリングし、水分を蒸発乾燥、硫酸を添加、加熱して部分安定化ジルコニアを溶解しICP分析試料を得た。ICP発光分析手法で得られたジルコニア磨耗汚染濃度は2.85体積%であった。
近傍に1体積%程度の粗大凝集体の存在が確認できる。周速6m/secの分散においてこのサイズの粗大凝集体は運転時間1.0h以降消失していることを確認しており、周速を10m/secに上昇後全運転時間が2.25h(周速10m/secにて0.75h後)から発生していることが確認できた。この凝集体生成の原因として未分散凝集が残っていることも考えられるが、磨耗汚染粉の混入がその一因である可能性が大きいことが解った。
すなわち、表2はダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均分散粒子径からの最大粒子径と最小粒子径に対する偏差(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.1mm、周速10m/sec、分散剤(カチオン系界面活性剤)2.5wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度5wt%)を示すものである。
処理時間2.5hで前記表1と比較すると、固体濃度を50%上昇しても到達可能な分散径はほぼ同一であったが、最大凝集径は前者よりも30%ほど低下した。分散剤を添加した分散開始時の平均凝集径は前者と比較して大きいものの、経時変質が少ない分、分散結果は良好だったといえる。
到達可能な平均分散径を更に微小化するために、分散剤の量を表2と比較して約3倍の7.5wt%とした以外は表2と同様な条件にて分散処理を行った。
結果を表3に示す。この表3は、ダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均分散粒子径からの最大粒子径に対する偏差(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.1mm、周速10m/sec、分散剤(カチオン系界面活性剤)7.5wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度5wt%)を示すものである。
分散剤量の増加により、到達可能な平均分散径は約10nmまで低下した。粒度分布の最大径は31.3nmで、急峻度の目安である(最大径と平均分散径の偏差)/(平均分散径)の比(以後“分布域パラメータ”と定義)は2.1程度であった。
ジルコニア磨耗汚染濃度は3.7体積%まで上昇した。ビーズ径並びにビー
ズ周速は到達可能な平均分散径を支配する最も大きな因子であり、ビーズが小さくなるほど、また周速が上がるほど分散径は小さくなる。
ジルコニア磨耗汚染濃度を調べたところ4.7体積%を超える汚染が確認できた。磨耗汚染粉が分散限界に及ぼす影響を確認するため、精製処理ままの、表2〜表4の原料分散体を乾燥処理し、この超微粒子乾燥粉から同様な水分散体にビーズミルで再分散することを試みた。
なお、表4は、ダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均粒子径からの最大粒子径に対する偏差(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.05mm、周速12m/sec、分散剤(カチオン系界面活性剤)2.5wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度5wt%)を示すものである。
前記したビーズミル分散テストで明らかとなった分散体中の磨耗汚染粉の挙動を明らかとするため、表1に示すビーズミル処理2.5h後の水分散体を超音波により攪拌・再分散後、ダイヤモンド質超微粒子と磨耗粉の比重差に着目し、静置法にてStokes則を用いた汚染粉の分離除去を試みた。
この回収した上澄み分散体に再度超音波を附加して同様な静置処理を繰り返して沈殿物の分離状況を観察した。その結果、沈殿分離物は繰り返しの操作で持続的に生成することが明らかとなった。しかし、本操作を10回以上繰り返しても上澄み分散体中の汚染濃度を0.5体積%以下に低減することは困難であり、分散体量が増えると本操作による磨耗汚染粉の分離除去は工業的有用性がないことが解った。
すなわち、磨耗汚染粉を比重差を利用したStokes則で分離するには、図6中の矢印で示す“分離飽和時間”の把握が重要であることが解る。この分離飽和時間は、乾燥粉や分散変質による強固な凝集とは別様のダイヤモンド超微粒子の“集合化(クラスタリング)”挙動や“軟らかい再凝集”と密接に関係しているものである。クラスタリング(集合化)とは、分散状態にある超微粒子同志が比較的弱い引力で引き合うため、個々の超微粒子が互いに比較的孤立した状態を保って多数の超微粒子が空間的にあるサイズで集まることである。この超微粒子の集団を超微粒子クラスター(集合体)と呼ぶが、この超微粒子の集団は、超音波程度の作用で容易に元の分散状態、すなわち、例えば本実施例では表1に示す2.5hビーズミル分散処理の粒度分布分散体に解離、或いは分離する特徴を持つ。軟らかい再凝集とは、超音波の作用で同様に解離、或いは分離してしまう程度に超微粒子同志が更に物理的に接近、接触した状態である。
したがって、凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中でビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、この分散超微粒子のクラスタリングや再凝集が完了する前、すなわち分離飽和時間に達する前に磨耗汚染粉を分離除去することが重要である。この時間内であれば孤立分散状態にある磨耗汚染粉を遠心分離することが可能であり、高純度ダイヤモンド質超微粒子分散体を製造する場合に有効な汚染粉除去手法であることが分かる。
付与する超音波がナノ超微粒子へ効果的に作用することで混入している磨耗汚染粉をダイヤモンド質超微粒子のクラスター、一次粒子或いは再凝集粒子から容易に脱離できるため、磨耗汚染粉が孤立微粒子として短時間分散体中に留まっている間に強制的に、特に、被分散体と磨耗汚染粉の比重差を利用して分離除去する装置が工夫できれば分散体の分散を崩さず汚染粉をほぼ完全に除去出きることになる。
本発明における試作では周波数19.5kHz、振幅50〜60μmの高振幅モードを採用した。超音波手法で被分散超微粒子から孤立化できた磨耗汚染粉を後述する本発明の装置を用いて、ほぼ100%分離除去するには、磨耗汚染粉発生の原因となるビーズや、超微粒子分散体やビーズが接触するアジテータ、ステータ、ロータ等々分散メディアと分散室を構成する準メディア部材の材質を制限することが不可欠である。
従って、被分散超微粒子と同等サイズの磨耗汚染微粒子やその凝集粒子が効果的に分離できる材質を選定する必要がある。鋭意検討した結果、被分散体の超微粒子比重の少なくとも1.2倍以上の比重を持つ材質が好ましく、同時に、水や有機溶媒を分散媒とする場合、分散媒のpH制御が必要なことから耐食性に優れた材質の選択が不可欠である。
分散媒に溶出し、pHを変動させるような材質では、返ってビーズミル分散処理中に分散が崩れ目的の微細化分散は達成出来ないことになる。従って前記した部分安定化ジルコニアはこれらの要請を満足する代表的素材であることが明確となった。
図7には本発明で新たに試作した超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の構成を示した。ビーズミル処理等で磨耗粉汚染の発生したダイヤモンド質超微粒子分散体(溜め11からポンプP1で供給)に超音波を作用し、分散体に取り込まれた磨耗汚染粉をダイヤモンド質超微粒子やその集合体、再凝集体から解離或いは分離孤立化する(クラスターからの解離や、同超微粒子との凝集からの分離を含む)ために超音波を照射する解離・分離作用部12と遠心力場でのStokes則に従い分散体から磨耗汚染粉を分離除去する遠心分離除去部13(通常バルブV3やポンプP3を介して最短で直結される)とから構成されることが特徴である。
磨耗汚染が発生している分散体は汚染除去処理体溜め11からポンプP1〜P4、バルブV11、V1〜V5、V6によって最短処理経路IIIやそれぞれの循環路II、IV、Vと前記処理経路IIIの組み合わせで構成される装置となっている。
処理循環路Vを併用する場合、オーバーサイズカットによる粒度分布の急峻化と汚染濃度の著しい低減が期待できる。循環径路Vと処理経路IIIを利用した粒度分布制御処理から回収できるオーバーサイズ超微粒子体は、再分散が容易であり、50〜100nmに平均分散粒径をもつ凝集体の急峻な粒度分布の分散体を製造できる原料となる。
従来技術の分散テストで明示したように、一次粒子が30nm以下で強い凝集特性を有するダイヤモンド質超微粒子の精製処理後の精製処理水分散体からビーズミル分散で50〜100nmの範囲に各種平均凝集分散径を持つ粒度分布が急峻な分散体を製造することはほとんど不可能である。
このように凝集径を選別してより粗大な平均分散径の分散体を製造できることも本装置の特徴である。
更に、循環路Vは循環路IIの作用と処理経路IIIの作用を繰り返すことにより汚染濃度は1,000ppmを切るレベルに低減できる。本試作装置の構成は一例であり分散体を汚染している磨耗粉の除去が、超音波にてダイヤモンド質超微粒子から解離している状態で実施できる構成であれば本試作例に限定されるものではない。
本製造システムは、超微粒子のビーズミル分散とその後に続く磨耗汚染除去、更には粒度分布制御処理を一貫して実施できる以外に、超微粒子分散体が超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置とビーズミルを循環する構成となっていることから、後述するように超微粒子の分散限界はビーズミルで発生する磨耗汚染粉或いは磨耗汚染粉濃度により影響を受けないことが特徴である。
加えて、分散処理を磨耗汚染の影響を受けずに繰り返すことができることから、分散超微粒子自体の磨耗による粒子形状制御も可能となる。例えば、ダイヤモンド質超微粒子の場合には凝集粒子形状に切り刃形状になるエッジを構成する凝集構造が数多く観察される。
このような凝集粒子の存在は潤滑応用への障害となってきており、磨耗汚染を制御して分散が繰り返しできることからこの切り刃エッジは摩滅して潤滑応用に好ましい滑らかな形状に改質可能である。 図8には図示していないが、超音波を照射する解離・分離作用部12を新たなバルブを介して循環路VIIと連結することも可能で磨耗粉の発生が少ない超微粒子や、磨耗粉の発生しない本発明の構成の場合にはショートパスの循環で分散も可能である。
同様にビーズミル装置において分散メディアを構成するアジテータ並びにステータなどのベッセルピンにも前記したように同材質の使用が好ましい。
本発明では、被分散粒子の一次粒子径が好ましくは100nm以下と規定しているが、一次粒子径が100nm以上となると、使用する分散媒や分散剤、粒子表面の電位制御等にもよるが、Stokes則で沈降しやすくなる。従って、分散媒中の微粒子がブラウン運動する粒子径領域である100nm以下が被分散粒子の一次粒子径として最も好ましい。
以下に超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を用いて、磨耗汚染が発生しているビーズミル処理ダイヤモンド質超微粒子分散体から磨耗粉を効率良く除去する実施例につき説明する。汚染分散体には表3に示したと同一条件でビーズミル分散処理した平均分散粒径10.9nm、磨耗粉汚染濃度3.8体積%の分散体を用いた。
図7に示す汚染分散体溜め11に分散体を移し、バルブV11、V1、V2を順次開いて、ポンプP1、P2を調整することで循環経路IIにてダイヤモンド質超微粒子やその再凝集体から磨耗汚染粉を解離、分離孤立化を充分確保する。
次にバルブV3を開いて経路IIIに超音波処理された分散体をポンプP3により導入する。遠心分離部では附加する遠心力を適時調整する。
磨耗汚染濃度は本処理を行なうことで、0.2体積%まで低下した。高純度化された分散体の粒度分布は、平均分散粒子径が10.1nmへとわずかにシフトし、最大粒子径も処理前の33.1nmから27.9nmへと変化した。
更に汚染濃度を下げ、高純度化するために、超音波照射による解離・分離作用部12で磨耗粉を解離、孤立化させて、経路IIIと循環経路Vを使用し、バルブV11→超音波による解離・分離作用部12→バルブV3→遠心分離部13→バルブV4→バルブV5→超音波による解離部12の循環処理を大よそ10パス行なった。
(分散体製造システムを用いた超微粒子固体濃度10wt%分散体の製造)
前述したように本発明の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の前段にビーズミル装置を配置して図8に示すような循環経路を確保する構成を作ることで、ビーズミル処理中の磨耗汚染発生濃度を低く制御でき、磨耗汚染粉に影響されないビーズミル分散処理が可能となる。
本実施例では、本発明で試作した図8の分散体製造システムを使用して、固体濃度を10wt%まで高めた凝集性の強い精製処理後のダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散体を再分散することを試みた。
分散剤添加量は分散体の10wt%の割合で添加し、分散処理原料(1,000g)とした。ビーズ径及び周速条件は、それぞれφ0.1mm、10m/secである。ビーズミル処理体の循環は、循環路VIIを使用した。すなわち、ビーズミル処理される被分散体はビーズミル15から連続的にバルブV7、V11を経由して磨耗汚染粉の解離・分離作用部12へ、更にバルブV3から遠心分離部13に入りバルブV4、V8、V9を経由してビーズミルに戻る循環経路を使用した。
(ダイヤモンド質超微粒子乾燥粉の固体濃度5wt%分散体の製造]
従来のビーズミル法を用いて、凝集力の極めて強い乾燥粉から水分散体を製造するには、厳しい磨耗汚染の問題を解決する必要があることを前記した。実施例2で使用した本発明の分散体製造システムを使用することで、汚染問題を解決して分散体が製造できるが、本実施例では、より効率的に乾燥粉から水分散体を製造するために、磨耗汚染の原因部となる分散メディア等にダイヤモンド被覆ビーズやダイヤモンドの微粒子を使用して分散処理を行なった。
ダイヤモンド被覆処理は熱フィラメント法を用い、Ti−6Al−4V耐食合金上にクロム窒化物を0.5μm成膜した基材を用い、その上にダイヤモンド被膜を形成した。この下地処理によりダイヤモンド膜の密着性は向上する。
更に本分散体製造システム中の適切な位置にフィルターも設置できる。被膜剥離時に想定されるトラブルの回避には、基材としては溶出等で分散を崩すことのない耐食性の高い素材の使用が好ましい。
ダイヤモンド質超微粒子の固体濃度は5wt%である。φ0.5mmビーズの分散時間は2.0h、φ0.1mmビーズの処理時間は1.5hとした。ビーズの周速は12m/secを設定した。分散処理後、前実施例と同様に磨耗汚染粉等混入物の調査のため分散体の一部を酸処理して混入物をICP発光分析にて検査したが、ほとんど汚染数値として検出できる程度のものはないことがわかった。
(ダイヤモンド質超微粒子分散体のオーバーサイズカット粒度分布制御試験)
本実施例では、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の遠心分離部のもう1つの機能である遠心力による分散体の粒度分布制御機能を確認するテストを実施した。
本テストでは、分散処理量の違いを除けば、実施例1の表1に示したと同様のビーズミル分散処理条件で作製したダイヤモンド質超微粒子分散体を図7に示す超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の循環経路Vで磨耗汚染粉を0.05体積%まで除去したダイヤモンド質超微粒子分散体を粒度分布制御用の原料分散体とした。原料分散体1,500gを図7に示す分散体溜め11に移し替え、バルブV11→超音波による解離・分離部12→バルブV1→バルブV2→分散体溜め11という循環経路IIで分散原料体の分散確認前処理を行なった後、バルブV3から経路IIIと循環経路Vを利用した遠心分離部循環経路に原料分散体を導入する。
所望の固体濃度の分散体を得るためには、予め粒度分布制御前後の固体濃度を明らかにしておく必要がある。本実施例では、予備調査に基づき、粒度分布制御後の分散体固体濃度が5wt%となるよう分散処理原料体の固体濃度を5.9wt%とした。本粒度分布制御処理を遠心力3,000Gで行なった場合の粒度分布特性は表5に示す。すなわち、表5は、遠心力に対するオーバーサイズカット粒度分布制御処理を施した分散体の粒度分布特性を示すものである。
表5に、本発明のオーバーサイズカット粒度分布制御処理後の分散体粒度分布特性を、すなわち、代表的な平均分散粒子径と最大粒径を実施例1と同様の処理で得られた汚染除去分散体と比較して示す。
すなわちこのような粒度分布特性を持つ分散体は、平均粒子径から大粒径側に長い裾野をひく、例えば図5に示す従来の分布特性の分散体より以下のような好都合な点が多い。
例えば、ハードディスクのテクスチャリング加工では、最大体積率の平均分散粒子径より最大粒径まで広い裾野を持つ粗粒により、加工品質であるテクスチャの深さやその密度が必然的に少量の粗粒の加工性能で律速されて、均一性の低下の原因となるが、本実施処理で得られる分散体では、その粒度分布は、最大粒子径から急峻に立ち上がり、分布域が狭い粗粒の体積率と平均粒子径の体積率がほぼ同等で比較的平坦であることから、加工作用にあずかる正味の微粒子数には遥かに無駄がなく、効率的にテクスチャ生成に作用することからテクスチャ品質が均一で、その品質再現性も高くなる。
これは明らかなことだが、本粒度分布制御処理や磨耗汚染粉除去処理を通じて、図5の分散結果で確認されている1μm程度の未分散凝集体或いは磨耗汚染粉との凝集体等の分散体への混入リスクは、遠心分離部のGを適正に選定することで全て解消できる。分散体に少量残留する凝集体等の未分散体等の検出は、サンプリング法である粒度分布測定法ではほとんど不可能であり、例えば未分散体等の残留リスクを低減するため必要以上の分散時間を従来は必要としてきた。本発明の前記処理により、分散体への未分散体残留や異物混入リスクはほとんどなくなり信頼性の高い分散体をより短時間で製造供給出来ることになる。
(粒度分布制御で得られる分離超微粒子体の再分散と粒度分布特性)
本実施例では100nmから50nmの粒子径領域に平均分散径を持つ超微粒子分散体の製造を試みた。正確には超微粒子凝集分散体の製造である。
10nm以下の一次粒子径を持つ分散体の製造では、表1から表4に示すようにφ0.1mm程度のビーズを使用して分散処理を行なうと、ビーズ周速を小さくしても短時間で50nm以下に平均分散径が到達してしまう。分散剤の量を調整しすぎると、分散過程の粒度分布大きく広がり急峻な粒度分布特性を持つ分散体は得られにくい。
加えて分散の再現性は著しく低下するという不具合が観察された。本目的を達成するには、以下の2つの方法が現実的である。
前者は実施例3で述べたように、本発明の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置や分散体製造システムを使用すれば達成できることは容易に理解できる。後者も同様であるが、100nm以下の平均分散径に分散するには凝集がきつい分だけ分散処理中の磨耗汚染粉の管理に気をつけなければならない。
超微粒子体の高い歩留りの達成、更には粒度分布の急峻化のために本実施例では実施例4の粒度分布制御処理で分離されたオーバーサイズ超微粒子体を使用して安定分散が得られる50〜100nm平均凝集径の分散体製造を実施した。オーバーサイズカットにより分離された分離体は通常極少量である。従って、分散体への再生、すなわち再分散回収操作にはこれらの分離体を湿潤状態にて保管し、ストックを重ねる必要がある。
すなわち、表6はビーズ径φ0.5mmのビーズミルで分散処理後、遠心分離部の遠心力1,000Gでオーバーサイズカット処理した分散体を原料として、更に2,000Gの遠心力で粒度分布制御した結果、分離回収された超微粒子体の粒度分布特性を示すものである。
分離された超微粒子体を回収し分散剤を新たに添加して粒度分布特性を調査した。得られた回収操作再分散体の粒度分布は、平均分散径が56.4nmで、最大径が90nmという極めて急峻な分散体(新たに定義した分布域パラメータは0.6である。表6参照)が得られた。本分散体の再生、製造は、分散体の粒度分布制御と比べ、生産性が低いことは弱点であるが、原料超微粒子の分散歩留りを高める点では有用性がある。
(ダイヤモンド質超微粒子を分散させた油性分散体の製造)
本実施例では、ダイヤモンド質超微粒子の潤滑作用を確認するために油性分散体の製造を試みた。分散体の製造には図8に示した分散体製造システムを使用し、ビーズミルの分散メディアとなるビーズ及び分散室の内面並びに分散室の内部に存在する機器、例えば分散室のロータ、ステータ、アジテータなどのべセルピン等にはダイヤモンド膜の被覆処理を施したものを使用した。
油性分散体の製造には、ダイヤモンド質超微粒子原料粉として乾燥粉や精製処理水分散体双方を使用できる。精製処理水分散体を使用する場合には、分散剤とともに分散媒となる油を加え攪拌、分散しながら水を加熱蒸発或いは低温蒸発させたものを使用することが出来る。
分散剤には、非イオン系のソルビタントリオレート、陽イオン系のアミン系分散剤を使用し、分散体総量の15wt%を添加した。ダイヤモンド質超微粒子の分散量は分散体総量に対して10wt%とした。分散処理後の粒度分布は、直接本オイル分散体で計測することが困難であったため、油性分散体の分散処理条件と同様のダイヤモンド質超微粒子の乾燥粉を水分散した場合の粒度分布特性で代用した。
本分散体を更に分散体溜め11に挿入し、経路IIIと循環経路Vを利用して分散体の粒度分布制御を行なった。附加した遠心力は8,000Gである。粒度分布計測の代替品である水分散体にて粒度分布を調べたところ最大径は15nmまで低下して、その粒度分布は、最大粒子径から急峻に立ち上がり、分布域が狭い粗粒の体積率と平均粒子径の体積率がほぼ同等で比較的平坦な分散体が得られることが解った。
当然パンチとダイス表面には焼付き痕やスクラッチ痕等は認められず潤滑特性に優れたダイヤモンド質超微粒子油分散体であることが明らかとなった。
本分散処理には純度98%以上の高純度ダイヤモンド質超微粒子を用いたが、純度が90%以下で残留炭素質の多い超微粒子や、更に炭素質の微粒子を分散共存させることも可能であり、用途に応じて優れた潤滑特性が確認された。
(ビーズ、アジテータ等に超硬やガラス、ステンレスを用いたダイヤモンド質超微粒子の分散試験)
本比較例では、ビーズ材質並びにビーズミル分散室のロータ部、ステータ、アジテータ等の材質を被分散体の比重の1.2倍以上の材質として、WC−Coからなる超硬ビーズ、ロータやステータ、アジテータにはステンレス鋼を用いて図8に示す分散体製造システムにて実施例2と同様なダイヤモンド質超微粒子の分散処理を実施した。
分散原料となるダイヤモンド質超微粒子の精製処理水分散体(pH 3)ついては、凝集特性が同一な固体濃度5wt%のものを使用し、分散総量500g、分散剤添加は6wt%とした。ちなみにビーズ径及びその周速条件は実施例2と同様である。分散の進行状況を被分散体の粒度分布特性で追跡すると、分散初期から超微粒子の分散は崩れており、粒度分布に不規則なガウシアンピークが多数観察された。
このような分散状態の崩壊現象は分散媒である水のpHをアルカリ側に調整しても同様にその発生が確認できた。従って、本分散体製造システムで使用するビーズ材質や分散室のロータ、アジテータ、ステータ等分散体と接する部分の材質は、耐食性が極めて高いセラミックスやダイヤモンド(含むダイヤモンド膜被覆)で構成されることが不可欠である。被分散体のダイヤモンド質超微粒子と同等か或いは更に小さい比重のガラスビーズ等を用いて分散処理をおこなったが、分散は崩れないものの磨耗汚染粉を除去することは当然のことながら極めて困難であった。
2 分散平均粒子径がナノサイズで、汚染レベルも著しく低く且つ分散安定性、再現性も極めて高いダイヤモンド質超微粒子分散体をタイムリーに市場に提供できることから、超微細な安定したテクスチャリング加工を通じて外部記録媒体としての磁気ハードディスクの大幅な記憶容量アップや次世代パワーエレクトロニクス半導体であるSiC基板の高品質加工等が可能となり、良質SiCエピウエハーの製造を実現できる。
3 乾燥ダイヤモンド質超微粒子状態からナノ分散状態を容易に達成できるため、ナノ分散体の保存スペースが不用となり管理コストも著しく低減される。また、従来、長期保存で変質(強い再凝集等)し、初期性能が再現できないとの理由から廃却していた経時変化したダイヤモンド質超微粒子分散体も再分散製造処理でナノ分散体として再生できコスト並びに環境負荷の低減を達成できる。
1 :攪拌モータ
2 :被分散体
3 :定量ポンプ
4 :被分散体のビーズミルへの導入
5 :ロータ
6 :分離スクリーン
7 :アジテータ
8 :ビーズ
9 :ステータ
10:被分散体の循環排出
11:被分散体溜め
12:超音波照射解離・分離作用部
13:遠心分離部
14:分散体溜め
15:ビーズミル分散部
16:摩耗汚染除去処理等への分散体の導入
17:分離体の回収
18:オーバーサイズカット粒度分布制御分離体の回収
19:分散処理体の回収
V1〜V11:バルブ
P1〜P6:定量移送ポンプ
I:ビーズミル装置からの分散体の導入経路
II:磨耗汚染粉の解離・分離並びに被分散体の分散確保循環経路
III:磨耗汚染粉の分離経路及びオーバーサイズカット粒度分布制御経路
IV:オーバーサイズカット粒度分布制御のための循環経路
V:磨耗汚染粉分離及びオーバーサイズカット粒度分布制御のための循環経路
VI:粒度分布制御分離体の回収経路
VII:ビーズミル分散装置と超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を組み合わせた超微粒子の分散体製造システム循環経路
Claims (6)
- 凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中で被分散体の比重に対して1.2倍以上の比重を有し、耐食性に優れた分散メディアであるビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、ビーズミル分散メディアから発生する摩耗粉末を超音波によりダイヤモンド質超微粒子から分離した後、ダイヤモンド質超微粒子が集合化や再凝集を完了する前の分離飽和時間内に、前記摩耗粉末を遠心分離することを特徴とするダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
- 前記摩耗粉末を遠心分離すると同時に又はその後に、ダイヤモンド質超微粒子を遠心分離処理することを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
- 前記超音波処理から前記遠心分離処理に係る一連の工程を複数回繰返すことを特徴とする請求項1又は2記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
- ダイヤモンドで被膜された前記分散メディアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
- 磨耗粉末の除去と同時に又は単独でダイヤモンド質超微粒子分散体に与える遠心力レベルを制御することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の粒度分布を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
- 磨耗汚染粉末と同時に分離除去したダイヤモンド質超微粒子を酸処理により回収し、乾燥後再利用することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造歩留りを向上させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の該超微粒子分散体の製造方法。
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