JP3936724B1 - ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ダイヤモンド質超微粒子の分散処理における磨耗汚染の影響を的確に把握し、前記磨耗汚染粉を再現良く除去し、高純度で安定なナノ分散体、及び粒度分布特性が優れた分散体の製造方法を得ることを課題とする。
【解決手段】 凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中でビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、ビーズミル分散メディアから発生する摩耗粉末を超音波によりダイヤモンド質超微粒子から分離した後、ダイヤモンド質超微粒子が集合化や再凝集を完了する前の分離飽和時間内に、前記摩耗粉末を遠心分離することを特徴とするダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
【選択図】 図7

Description

本発明は、磁気ハードディスクのテクスチャリング、光学・光通信用部品やパワーエレクトロニクス素子等の超精密研磨、潤滑膜や保護膜等の形成、放熱性に優れた潤滑剤や潤滑部品の製造、放熱特性の高い絶縁性封止剤、耐熱性接着剤、高機能触媒担体、耐候性に優れた塗料等々に使用されるダイヤモンド質超微粒子分散体及び分散体の製造に係わり、分散粒子の粒度分布制御が可能な分散体の製造方法に関する。
なお、本発明において、「ダイヤモンド質超微粒子」とは、爆合法で製造されたダイヤモンド質超微粒子並びに従来の静的超高圧法或いは気相合成法で得られる一次粒子径が100nm以下であり、ダイヤモンド微粒子とその少なくとも一部が結合した非ダイヤモンド質或いは準ダイヤモンド質(アモルファス質)炭素を含んだもの、又は孤立した微粒子状非ダイヤモンド質或いは準ダイヤモンド質炭素を含む混合体である場合もあるが、本明細書においては、特に断りのない場合は、これらを全て包含するものとする。
更に「ダイヤモンド質超微粒子分散体」とは、分散媒が水、水溶性溶媒或いはそれらの混合体、油等の油性或いは疎水性溶媒、ポリマー重合体や有機溶媒更にはエマルジョン型溶媒を構成するものからなるスラリー状或いはペースト状のものであり、分散体製造時にビーズミル装置等や本発明のビーズミル分散部等からの磨耗による汚染物を超音波でダイヤモンド質超微粒子や前記同種の結合を有する超微粒子、それらのクラスター(集合体)や再凝集体から解離或いは分離して、磨耗汚染粉の解離或いは分離状態が維持されている間に遠心力で強制的に除去、或いは更に該超微粒子自体を粒度分布制御できるものを全て包含するものとする。
また、磨耗汚染が発生しない本発明の構成の場合には、前記の前提にとらわれるものではない。
「粒度分布制御」とは、ビーズミル分散でダイヤモンド質超微粒子分散体を汚染する磨耗汚染物を超音波の作用のもとで解離或いは分離して、解離或いは分離状態が維持されている間に適時その強さを選択した遠心力の作用で磨耗汚染物を除去する際に、磨耗汚染物と同時に、或いは、高純度化された分散体にて実施されるダイヤモンド質超微粒子の“最大粒子径近傍のオーバーサイズカット”処理、特にこの磨耗汚染除去工程を繰り返すことにより汚染物除去が完了した分散体にて遠心力場のStokes則を用いて“最大粒子径近傍のオーバーサイズをカットする処理、或いはこの“オーバーサイズカット処理で分離された大粒径ダイヤモンド質超微粒子分離体の回収、再分散する処理(ビーズミルによる再分散処理も含む)”操作等々、特にことわりのない場合は、これらを全て包含するものとする。
特に爆合法で製造されるダイヤモンド質超微粒子や立方晶窒化ホウ素超微粒子においては、原料塊から精製高純度化処理をへて超微粒子の精製処理水分散体として供給されることがある。これは乾燥処理をすることで発生する極めて強い凝集を避け、後の分散処理をしやすくするためであるが、本発明ではこの「精製処理水分散体」を原料とする分散処理と乾燥粉を原料とする分散処理双方を対象とし、その都度明記する。ビーズミル分散メディアは、ダイヤモンド質微粒子と接触し分散させる役割をもつ媒体であり、ビーズ及び分散室の内面並びに分散室の内部に存在する機器を意味する。これらの機器には、例えば分散室のロータ、ステータ、アジテータなどのべセルピン等がある。本願発明のビーズミル分散メディアはこれらを全て含むものである。なお、これらを区別する場合には、個々に説明することとする。
以下に、従来の特許文献等に記載されている技術について説明する。
特許文献1には、人造ダイヤモンド含有材料及びその製造方法が記載されている。特許文献2には、分散安定性に優れたダイヤモンド懸濁水性液、このダイヤモンドを含む金属膜及びその製造物についての記載がある。さらに、特許文献3にはテクスチャ加工用研磨スラリー及び方法が開示されている。
上記特許文献では、負の酸素バランスの条件下でRDX(爆薬)と炭素材料との混合物をデトネーション(衝撃波合成或いは爆発合成)し、生成物を酸にて湿式精製処理することにより一次粒子の平均径が1〜20nm、比表面積が200〜450m/gのナノダイヤモンド質超微粒子が得られることが開示されている(特許文献1、2)。
爆合法で製造されるダイヤモンド質超微粒子の品質は、精製の度合いによっても異なるが、立方晶ダイヤモンド相が75%以上(現状では95%以上までの精製が可能である)、同炭素の無定形相25%(アモルファスダイヤモンド相)以下で、大きな結晶歪を有し(X線回折構造解析結果より同様なデトネーション法で得られている公知のダイヤモンドに比べ微小歪は著しく大きい)、微粒子表面に広範な種類の表面官能基或いは官能性誘導体と炭素の不対結合(非補償結合)を有している。
従って、微粒子として従来にない極めて高い反応性、活性を示し、強い粒子凝集性と微粒子の集合体化(特に分散媒等に分散処理した状態で起こるナノ或いは〜ミクロンサイズ規模の微粒子の集合化、これをクラスター化と呼ぶ)が現われる特異な性質が特徴である。
ちなみに微粒子活性を比表面積で比較した場合、従来のナノ微粒子は、CMP(Chemo−Mechanical Polishing或いはChemical Mechanical Polishing)に用いられるSiOでは50〜100m/g、光触媒のTiOやAu微粒子でも同程度でありその活性さは他に類をみないものである。
ナノスケール超微粒子の応用の立場から、精製処理後の水分散系に界面活性剤を添加したり、pH調整でこの超微粒子の分散安定化(超微粒子の凝集防止)を目指す取り組み(特許文献2,3)はあるが、このような化学的手法のみで極めて活性で複雑な凝集構造をとるダイヤモンド質超微粒子表面を完全に修飾し、経時変化しにくい安定分散の達成をはかることはほとんど不可能であると考えられてきた。
ましてや、物質中最高の硬さを有し、強固に凝集した乾燥処理を施したダイヤモンド質超微粒子のナノ分散処理では、製造装置の構成、製造手法上の克服しなければならない問題点、すなわち“磨耗汚染の制御や分散状態を崩さない汚染物の除去、ナノ超微粒子分散体にて粒度分布を急峻に制御する手法と制御された新規な分散体、超微粒子形状が改変されたダイヤモンド質超微粒子分散体の製造法と得られる分散体”等々があること、それらを解決して経時変化が進行している分散体を再分散する報告については何ら開示されていない。
更に本発明で開示するナノスケール分散体の粒度分布において、分散状態を崩さないで磨耗汚染物の除去と同時に、或いは単独で粒度分布を急峻に制御する装置の構成と製造方法並びに得られる分散体性能については従来全く明らかにされていない。
従って、ダイヤモンド質超微粒子等分散体の産業への活用においては、
1 経時変化で生じた強い凝集構造を含む超微粒子分散体を高純度で安定に再分散ができる装置の構成或いは製造システムの開発と製造手法の確立
2 低コストで入手可能なより凝集が強い乾燥粉から高純度のナノ分散体を製造する装置或いは製造システムの開発と製造方法の確立
3 粒度分布が急峻な分散体を製造する製造システム並びに製造方法の開発
4 超微粒子原料の歩留り向上によるコスト低減
等々の克服すべき大きな開発課題が存在している。
一方、微粒子の分散手法として磁性塗料や水溶性或いは油性塗料、化粧品、半導体ウエハー研磨用スラリー、インクジェット記録材料等やAg−Pd導体用ペースト、光触媒、ポリマーなどに応用されている従来技術については同様に以下の技術が開示されている。
特許文献4には、磁気記録媒体の製造方法について記載されている。また、特許文献5には、超微粒子石炭と超微粒子石炭―水スラリー及びその製造方法並びにこれを用いた組成物についての記載がある。さらに、特許文献6には超分散状態ナノ炭素およびその製造方法について開示されている。
磁気記録媒体である磁気テープ磁性層の耐磨耗性を向上させるためモース硬度6以上の研磨材を添加した磁性塗料のビーズミルによる調整分散において、分散メディアに炭化チタン、炭化ホウ素、或いは窒化ホウ素を用いることによりビーズ磨耗を低減し、磁気記録媒体の電磁変換特性を向上することが特許文献4に記載されている。
また、有機物である石炭粉末に水及び分散剤を添加してビーズミルで超微粉砕して高濃度かつ低粘度で長期間保存安定性の良好な超微粒子石炭(最適製造条件では平均粒径0.01−1μm)―水スラリー分散体の製造方法が特許文献5に開示されている。分散剤の効果は、微粉砕石炭粒子の凝集防止並びに防臭作用等機能性発現にあるとしており、分散メディアには0.3〜0.5mmのジルコニアビーズの使用例が報告されている。
開示されている被分散処理原料体である有機物の微粉砕、分散処理も含めて被処理原料体と粉砕・分散メディアの間には、粉砕・分散効率の向上とメディアの磨耗及び被分散処理原料体汚染を最小にするために例外的に粗粉砕で高い衝撃エネルギーが必要な場合を除けば、粉砕・分散メディアの硬さは被処理原料体の硬さより硬いことが不可欠であることが明らかとなっているが、本発明の目的であるメディアの磨耗による汚染された分散体等からの磨耗汚染除去が出来る装置、ビーズミルとそれらを組み合わせた製造システム等については全く言及していない。
更に、ナノ微粒子凝集体または凝膠体または結合体に対して、ビーズミリングによって代表される湿式微粉砕法又は/および高エネルギー超音波処理法を組み合わせて解砕または解膠または解合する超分散状態ナノ炭素の製造方法並びに得られる超分散状態のナノ炭素一次粒子が特許文献6に開示されている。
爆合法ナノダイヤモンド凝膠体にセラミックビーズや金属ビーズを用いて湿式ビーズミリング処理を施した場合、ダイヤモンドは物質中最高の硬さを有する故に、ビーズの周速を限定してもダイヤモンド微粒子によるビーズ磨耗が発生することは特許文献4からも自明である。
しかし、分散処理中に不可避的に発生する磨耗汚染量を把握し、ダイヤモンド質超微粒子分散体の汚染構造の解明から、分散を崩さず汚染を除去できる装置の構成や、ビーズミル分散装置とこれら装置を組み合わせたダイヤモンド質超微粒子或いは少なくともその結合構造の一部にダイヤモンドと同種の結合を有する超微粒子の分散体製造システム、それらを用いた高純度分散体の製造方法、更にはこれら分散処理した超微粒子分散体の粒度分布を急峻に制御するという技術課題についても前記開示技術はなんら言及しておらず、特許文献5等の従来技術を単に爆合法ダイヤモンド質超微粒子や関連する超微粒子に適用したにすぎないと言える。
本発明は、前記ビーズミル処理分散体に不可避的に混入する磨耗汚染粉の除去装置の構成やそれらを備えた分散体製造システム、磨耗汚染の除去方法を明らかとすると共に、汚染物の除去と同時に、或いは単独にダイヤモンド質超微粒子分散体の粒度分布が制御できる装置構成やそれらを組み合わせた分散体の製造システムとその手法について明らかとするものである。
分散処理装置としてのビーズミル並びに関連分散製造装置については、以下の技術が開示されている。特許文献7には、円筒状のベセル内に円筒状のロータを内装したアニュラー型のビーズミルが開示されている。顔料分散工程のエネルギー消費効率低減を達成するためのロータ内へのスクリューや回転ディスクの配置、稼動構成を明らかとしている。
しかし、本発明の課題であるダイヤモンド質超微粒子やその関連超微粒子等の凝集力が極めて強く複雑な凝集体構造を有する超微粒子の分散挙動を分散メディア等の磨耗汚染の除去と関連付け、分散を崩さず磨耗汚染粉の超音波による分離装置と遠心分離による除去装置、ビーズミル装置、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を有機的に組み合わせた分散体製造システム、或いは超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の分離機能を生かし、ナノ分散体の粒度分布制御に活用できる同装置やその手法等々について、本発明に至った高純度で粒度分布が制御できる超微粒子分散体製造に係わる装置の課題については全く明らかにしていない。
特許2799337号公報 特開2003−146637号公報 特開2004−178777号公報 特開平5−182194号公報 特開平10−77491号公報 特開2005−1983号公報 特開2003−1082号公報
粒子の粉砕微細化、微細粒子の分散確保を目的としたその手法とそれを実現する装置については数多くの報告がなされている。従来技術として特にナノサイズ領域の微粒子の分散については、ビーズミル法が優れており、分散室で用いられるビーズの径が小さいほど、ビーズ周速が高い程、到達できる平均分散粒径が小さくなるが、その一方、分散メデイア等の磨耗汚染が大きくなるため、磨耗汚染を最小化する為に被分散処理原料体よりも硬質の分散メディア(ビーズ等)を通常選択し、目的とする被分散粒子の到達平均分散粒径に応じて、メディアサイズを適時選択してバッチ方式或いは循環方式にて分散処理を実施している。
一方、近年ナノサイズ微粒子の応用が活発となり、結晶多形の多い軟らかい有機顔料においては、結晶型を変えずに(微粉化分散中に過度のせん断歪により初期の結晶構造が別の構造に変化する)微細分散するニーズや、また結晶構造の比較的安定した材料でもナノサイズ化に伴う物性劣化(分散中の歪の導入で目的とする触媒活性等が低下)を最小化する要求が高まっている。従って、ビーズミル法による微粒子の分散達成のポイントは、(1)最適ビーズ径の選択、(2)物性劣化を引き起こさない稼動条件の設定、所謂マイルド分散が重要であることが知られている。
ナノ分散達成には上記の従来技術から推察できるように一段と小径のビーズの使用が不可欠となると考えられるが、このことはビーズの接触点が大幅に増えるため、ビーズ磨耗の発生確率が大きくなることを意味する。結果として、発生した磨耗粉が分散中のナノ微粒子体を著しく汚染することになり、高純度でナノ領域の分散を実現することは極めて困難となる。
しかし、従来技術では、ビーズ等の分散メディア材質を被分散処理微粒子の硬さより硬いものに変更することで磨耗の発生を抑えたり、ビーズミルの稼動条件等を軽微にする対応しかなされていないのが実情である。当然のことながら、到達可能な平均分散粒子径に及ぼす磨耗汚染粉の影響も明らかとされておらず、分散処理したナノ分散体から分散を崩さずこの磨耗汚染粉を分離除去する装置やそれを用いた分散体製造システムとその手法、更には得られる分散体の性質などについては全く言及されていない。
特に、物質中で最高の硬さを有するダイヤモンド質超微粒子については、(1)従来のビーズ材質の如何にかかわらずビーズ磨耗が著しい、(2)爆合法や静的超高圧その他の方法で得られるダイヤモンド質超微粒子は強い凝集構造に加えて複雑なクラスター構造を有し極めて活性が高い、以上のことから、ナノ分散できればテクスチャリング等加工用分散体を始めとする新たな適用分野が広がるとの動機づけはあるものの、実際の分散技術をどのように構築するか解らないままダイヤモンド質超微粒子を分散処理しているに過ぎない。
従って、分散体製造における磨耗汚染の影響を明確に把握し、汚染物を再現良く除去して高純度で安定なナノ分散体、更には粒度分布特性が優れた分散体を如何に製造するかについては未だ明確にされていない。
本発明は、ダイヤモンド質超微粒子の分散処理における磨耗汚染粉の挙動を調べ、磨耗汚染粉が障害となって超微粒子の高純度ナノ分散を妨げるという事実を明らかにした結果なされたものであり、発明に至る過程で上記課題を解決できる従来にない装置や製造システムと製造方法を完成するに至ったものである。
本発明の目的とするところは、活性凝集粒子を含むダイヤモンド質超微粒子のビーズミル分散処理体をその分散状態を崩すことなく磨耗汚染除去ができる摩耗汚染除去装置、すなわち、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置からなる装置(以下、摩耗汚染除去装置については、具体的に超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置として説明する。)、加えて同装置の粒度分布制御機能を用いて分散体の粒度分布を遠心力で急峻に制御できる遠心分離による除去装置の構成、その方法を明らかとすることにある。
加えて、前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置をビーズミル装置と組み合わせシステム化した分散体製造システムと製造方法を明らかとするものである。
また、本発明は、従来不可能と考えられていたダイヤモンド質超微粒子乾燥粉から前記した装置、製造方法にて、該ナノ分散体を製造できることから、高価とされてきたダイヤモンド質超微粒子等ナノ分散体の価格低減に寄与し、更には、経時変化で強く凝集した変質分散体を再生処理することも可能で、エネルギー資源の有効活用と環境負荷の低減に多いに寄与できるものである。
本発明者は、前記したようにビーズミルした分散体中の磨耗汚染粉の挙動を調べ、被分散処理超微粒子の分散を崩さず、汚染物を除去、更には分散体の粒度分布を急峻に制御できるとの知見を得、前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の構成を明らかとした。
更に装置構成の前段にビーズミル分散部を配置した構成の超微粒子分散体製造システム構成を明らかにし、凝集性の著しく強い乾燥ダイヤモンド質超微粒子でも確実に一次粒子或いはその近傍の所望の粒径に安定分散でき、高純度な分散体を再現性よく製造出来るとの知見を得た。
更に、前記装置、システムで得られた分散体の粒度分布性能は従来の分散体にない急峻な或いは新規な分布特性をもつことを明らかとした。
これらの知見に基づき、本発明は、
1.凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中で被分散体の比重に対して1.2倍以上の比重を有し、耐食性に優れた分散メディアであるビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、ビーズミル分散メディアから発生する摩耗粉末を超音波によりダイヤモンド質超微粒子から分離した後、ダイヤモンド質超微粒子が集合化や再凝集を完了する前の分離飽和時間内に、前記摩耗粉末を遠心分離することを特徴とするダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
2.前記摩耗粉末を遠心分離すると同時に又はその後に、ダイヤモンド質超微粒子を遠心分離処理することを特徴とする1記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
3.前記超音波処理から前記遠心分離処理に係る一連の工程を複数回繰返すことを特徴とする1又は2記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
4.ダイヤモンドで被膜された前記分散メディアであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
5.磨耗粉末の除去と同時に又は単独でダイヤモンド質超微粒子分散体に与える遠心力レベルを制御することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の粒度分布を制御することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
6.磨耗汚染粉末と同時に分離除去したダイヤモンド質超微粒子を酸処理により回収し、乾燥後再利用することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造歩留りを向上させることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の該超微粒子分散体の製造方法。
ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造実証テストを行ない、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、それらをビーズミル装置と組み合わせた超微粒子の分散体製造システムを構築した。経時変化による変質で強い凝集が認められるダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体や分散剤を添加した分散処理体等、更には強い凝集構造を持つ前記乾燥超微粒子をビーズミルによるせん断作用を用いた破壊・分散処理により、平均分散粒子径が1〜100nmの高純度で所望の粒度分布特性を有する分散体の製造方法を明らかとした。更に粒度分布制御装置の遠心力を制御することで新規な粒度分布特性や急峻な粒度分布特性を有するダイヤモンド質超微粒子分散体を工夫することにより以下の著しい効果が得られた。
1 超微粒子の微細分散に最適なビーズミル処理により発生する分散メディア等からの磨耗汚染を除去できる超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、更には本装置の前段にビーズミル分散作用部を配置した構成の超微粒子の分散体製造システムを構築したことにより、物質中最高の硬さを有するダイヤモンド質超微粒子も磨耗汚染の障害なしに高純度でナノ分散が可能となった。また、強い凝集が特徴である乾燥超微粒子粉を所望の溶媒へ高純度にナノ分散することが可能となる。
超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の粒径分布制御機能を用いて、急峻な、更には新規な粒度分布特性を持つ超微粒子分散体、ビーズミル分散では製造が困難である50〜100nmに平均分散粒子径をもつ分散体等を得ることができ、分散体の応用分野、応用範囲が更に拡大できる。
3 不可避的に被分散超微粒子が分離混入する磨耗汚染体を酸処理或いは酸処理と再分散処理を繰り返すことで、被分散体の分散製造歩留りは向上する。また、乾燥ダイヤモンド質超微粒子状態からナノ分散状態を容易に達成できるため、ナノ分散体の保存スペースが不用である。更に従来、長期保存で変質(強固な再凝集等)し、初期性能が再現できないとの理由から廃却していた経時変化した超微粒子分散体も再分散処理でナノ分散体として再生でき分散体コスト並びに環境負荷の低減を達成できる。
4 高純度且つ粒度分布が急峻な分散体を安価に提供できることから、ダイヤモンド質超微粒子分散体では、超微細で安定したテクスチャリング加工や1原子オーダーの高品位加工が可能となり、磁気ハードディスクの大幅な記憶容量アップやパワーエレクトロニクス半導体用途の良質SiCエピウエハー等が実現できる。潤滑応用分野では、粒度分布制御効果により、信頼性の高い潤滑用分散体が提供できる。
本発明は、物質中最高の硬さを有し、極めて活性なため強い一次粒子凝集が不可避であるダイヤモンド質超微粒子を高純度にナノサイズに分散するための新たな装置や製造システムに関するものであり、ナノレベルで急峻な粒度分布特性が同時に得られることから、従来にない工業的価値の極めて高い超微粒子のナノ分散体を提供できる全く新しい発明に関するものである。
すなわち、
1 固体質被分散体が物質中最高の硬さのダイヤモンド質超微粒子にもかかわらず、不可避的に発生するビーズ磨耗汚染粉を被分散体の分散を崩さず除去できる超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、或いは同時に、もしくは単独で、分散体の粒度分布特性を急峻化或いは新規な分布特性を付与できる超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、これらの装置をビーズミル分散装置と組み合わせた新たな分散体製造システムの構成
2 前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、これらの装置をビーズミル分散装置と組み合わせた新たな分散体製造システムを用いて、従来にない活性さから起こる一次粒子の強い凝集特性を有する前記超微粒子等をナノスケール一次粒子に確実に、且つ高純度に高い再現性で分散させ、更には、分散体の粒度分布特性を急峻化するための製造手法、が大きな特徴である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
ダイヤモンド質超微粒子は爆合法で得られた合成塊や生成物を酸処理によって非ダイヤモンド質を除去、傾斜法、遠心分離法等を利用して水洗浄を繰り返し90wt%純度でpHが3、固体濃度5wt%のダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を得た。
Forth Moment法によるX線解析で評価した本ダイヤモンド質超微粒子の一次粒子径は4〜6nmであり、本精製処理水分散原料体の精製直後の分散状況は粒度分布測定装置(Microtrac(UPA(EX))にて評価したところ、
4nm以下 : 8体積%
4〜20nm :78体積%
20〜50nm:10体積%
50nm以上 : 4体積%
であった。
一次粒子の凝集挙動を的確に把握し、分散安定化に及ぼす界面活性剤或いは分散剤の効果を明確に評価する目的で本精製処理水分散原料体に分散剤を添加せず1ケ月、3ケ月静置状態で放置したところ、ダイヤモンド質超微粒子は、沈降が始まっていることが確認できた。固体分離が始まった本精製処理水分散原料体を再度超音波で分散処理し、ダイヤモンド質超微粒子の分散状況を評価した。
結果を図1、2に示す。精製処理直後には平均分散粒径が15nm程度であったものが一次粒子の凝集が大幅に進行し、1ケ月後には0.12μm並びに0.3μmに不規則な粒度分布のピークをもつ分散体に変質していることがわかる。
更に、2μm近傍には著しく粗大化した凝集体も観察される。更に3ケ月後には0.3μm並びに1.5μmに粒度分布のピークを持つ分散体に変質していた。
分散剤の効果を確認するために変質した3ケ月静置精製処理水分散原料体にアミン塩系のカチオン分散剤を添加して超音波処理後同様にダイヤモンド質超微粒子の分散状況を評価した。
結果を図3に示す。分散剤を添加しても一次粒子の凝集体で出来た粗大凝集径には大きな変化は認められず、経時変化でできた凝集体は再分散が不可能であった。これはダイヤモンド質超微粒子の活性さを明確に示すものである。
比較前処理として精製処理直後に分散剤を添加して同様な経時変化を追跡した。分散剤の添加は精製時の水分散原料体の分散状態をほとんど変えるものではないが、1ケ月静置後に再度分散状態を評価したところ平均粒子径は50〜100nmと分散安定性は分散剤無添加と比べ少々改善はしたものの、0.1〜0.2μm付近に同様のピークをもつ分散体に変質していた。
この状態で超音波処理や分散剤の再添加を行なっても経時変化で出来た凝集は極めて強固であり再分散は不可能であった。分散媒のpH環境の効果を明らかとするため同様にpH11のアルカリ性精製処理水分散原料液を調整し、分散剤添加の有無を含め同様な比較実験をおこなった。
分散状態の経時変化に若干の変化は認められるものの、本質的には同様の変質が認められ、超音波や分散剤では再分散不可能な強固な凝集の存在が確認できた。
これらの結果から比表面積が著しく大きく、微粒子表面に広範な種類の表面官能基や官能性誘導体と炭素の不対結合が大量に存在する極めて活性なダイヤモンド質超微粒子は、従来の化学的手法としての分散剤添加やpH調整等で表面修飾(電荷中和等)し、安定分散を実現することが極めて困難といえる。
1ケ月静置により変質した90wt%純度でpHが3、固体濃度5wt%のダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体156gを精製水78gで希釈、アミン塩系カチオン界面活性剤であるNメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩(R−COO−CHCH NCH ・HClを3.9g、分散剤として添加したものをビーズミルによるダイヤモンド質超微粒子分散原料体とした。
ダイヤモンド質超微粒子の本再分散実証テスト前の分散状態は前記図3の結果と同様であった。
本発明の分散剤には以下のものから適時選択して使用出来る。
陽イオン界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩型、ジアルキルジメチルアンモニウム塩型、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩型、アミン塩型等のもの、
陰イオン界面活性剤には、カルボン酸塩型として疎水基に高級脂肪酸を使用した石鹸類、スルホン酸塩型として親水基が硫酸化剤で親水基のnが12〜18のC2n+1、アルキルベンゼン、アルキルナフタリン、飽和、不飽和の高級脂肪酸、高級アルコール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、α―スルホ脂肪酸エステル類、α―オレフィンスルホン酸塩類、モノアルキル燐酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類等々がある。
両性界面活性剤には、アルキルアミノ脂肪酸塩型、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等、非イオン系界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド類等々が上げられる他、必要に応じて、アルコール系溶媒その他が添加出来る。
また当然のことではあるが、分散体の種類すなわち、水性や水溶性、或いはアルコール系分散体及びそれらの混合体には少なくとも1種以上の陽イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤、場合によっては陰イオン界面活性剤と非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、両性界面活性剤と非イオン系界面活性剤が、油性、疎水性分散体では少なくとも1種以上の非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤等が使用できる。
これらの分散剤の選定は、分散体がスラリー状、粘度の低いペースト状、チキソトロピー特性等を有する比較的粘度の高い分散体に応じて、また、分散媒の性質やダイヤモンド質超微粒子の粒子表面性状(表面官能基或いは官能性誘導体の種類や炭素の不対結合(非補償結合)の割合、微視的粒子表面特性等々)により適時選択されるものである。
また、被分散処理原料体にダイヤモンド質超微粒子の精製処理中或いは直後に既に分散剤を添加している場合には、変質の度合いに応じて適時分散剤の再添加を行なうことが好ましい。
ビーズミル装置としては、アシザワ・ファインテック社製スターミル Mini Cerを使用した。分散室は約φ80xφ60mmで、その容量は0.16L、遠心分離スクリーンのビーズ分離機構を有し、接液部材質(ステータ、アジテータ、ロータやビーズ)は部分安定化ジルコニアや基材に表面処理としてダイヤモンド膜を被覆したものを、更にビーズ材としてダイヤモンド微粒子を用いたものから成る。
分散処理法としては循環型バッチ方式を採用した。装置の構成は、ビーズミル装置外に設けた攪拌装置付き循環タンクを定量ポンプと連結し、ポンプ出口はビーズミルの原料供給口に繋がれ、ビーズミル出口から取り出される分散処理液は前記循環タンクに戻されるものである。本発明で使用したビーズミルの装置構成を図4に示す。前記分散原料体の循環供給速度は0.3L/minで固定した。
ビーズミルで発生した磨耗汚染粉の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置をビーズミルと組み合わせた超微粒子の分散体製造システムは、それぞれ単独で、或いは相互に循環できる構成となっており、構成の詳細については後述する。ビーズミル処理による分散性能として、分散体の応用を著しく左右するビーズミル装置から混入する磨耗粉の汚染に着目し、分散状態を崩さず汚染物を除去できる装置や製造システムとその方法、更に、ダイヤモンド質超微粒子乾燥体を溶媒へ分散するような特に過酷な分散条件では、磨耗汚染粉が分散できる超微粒子分散径(分散限界)を制限するため、これを克服して所望のナノサイズに分散できる同様な製造システムとその方法を明らかとした。
超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の粒度分布制御機能を用いて、高純度で急峻な粒度分布特性を有する従来にない優れた特性の分散体や、新規な粒度分布特性を有する分散体が得られその工業的有用性を明らかとした。
超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置、並びにこれらを用いた超微粒子の分散体製造システムの必要性)
前記した1ケ月静置により凝集変質した純度90wt%のダイヤモンド質超微子精製処理水分散体(pH 3,固体濃度5wt%)156gを前記したように、精製水78gで希釈(最終固体質濃度:3.3wt%)、アミン塩系カチオン界面活性剤であるNメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩(R−COO−CHCH)NCH・HCl 3.9gを分散剤として添加して、φ0.1mm径の部分安定化ジルコニアビーズを用いて(ビーズ充填率85%(分散処理部容量に対して))ビーズミル単独の分散処理を施した。得られた分散結果を表1に示す。ビーズの周速は6m/secから10m/secへと分散の進行とともに選択変更した。到達できる平均分散径(一次粒子等の凝集体サイズも含む)は、ミル条件と同様に、添加する分散剤量にも依存する。
すなわち、表1は、ダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均分散粒子径からの最大粒子径と最小粒子径に対する偏差を示すものである(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.1mm、周速6m/sec、10m/sec、分散剤としてのカチオン系界面活性剤1.6wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度3.3wt%)。
Figure 0003936724
本分散テストではおおむね20nm付近の凝集体平均分散径が得られる分散剤添加量とした。ビーズ周速6m/secにて1.5h分散後の分散平均粒子径は26.3nm、最大径は102.2nmが達成できた。分散平均径を更に微小化し、最大径を減少させて粒度分布をより急峻とするため、ビーズ周速を10m/secに変更して更に1h分散処理をおこなった。
本分散条件で1h後の平均分散径は22.3nm、最大径は85.9nmでより急峻な粒度分布が得られた。得られた分散体を充分均一に攪拌し、20gをサンプリングし、水分を蒸発乾燥、硫酸を添加、加熱して部分安定化ジルコニアを溶解しICP分析試料を得た。ICP発光分析手法で得られたジルコニア磨耗汚染濃度は2.85体積%であった。
図5には得られた分散体の粒度分布を示すが、詳細に検討すると、1μm
近傍に1体積%程度の粗大凝集体の存在が確認できる。周速6m/secの分散においてこのサイズの粗大凝集体は運転時間1.0h以降消失していることを確認しており、周速を10m/secに上昇後全運転時間が2.25h(周速10m/secにて0.75h後)から発生していることが確認できた。この凝集体生成の原因として未分散凝集が残っていることも考えられるが、磨耗汚染粉の混入がその一因である可能性が大きいことが解った。
表2には、同様な一次粒子径で精製直後の分散原料体固体濃度が5wt%の水分散体270gに前述と同種の分散剤を7.0g(分散体の2.5wt%)添加して、ビーズ径φ0.1mmを用いて周速10m/secにて分散処理を行なった結果を示した。
すなわち、表2はダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均分散粒子径からの最大粒子径と最小粒子径に対する偏差(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.1mm、周速10m/sec、分散剤(カチオン系界面活性剤)2.5wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度5wt%)を示すものである。
処理時間2.5hで前記表1と比較すると、固体濃度を50%上昇しても到達可能な分散径はほぼ同一であったが、最大凝集径は前者よりも30%ほど低下した。分散剤を添加した分散開始時の平均凝集径は前者と比較して大きいものの、経時変質が少ない分、分散結果は良好だったといえる。
Figure 0003936724
同様にジルコニア磨耗汚染濃度を評価したところ、3.5体積%の汚染が確認できた。粒度分布にみられる粗大凝集の存在は確認出来なかった。分散原料の特性が凝集粗粒の発生にもかかわっていることが明らかとなった。
到達可能な平均分散径を更に微小化するために、分散剤の量を表2と比較して約3倍の7.5wt%とした以外は表2と同様な条件にて分散処理を行った。
結果を表3に示す。この表3は、ダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均分散粒子径からの最大粒子径に対する偏差(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.1mm、周速10m/sec、分散剤(カチオン系界面活性剤)7.5wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度5wt%)を示すものである。
分散剤量の増加により、到達可能な平均分散径は約10nmまで低下した。粒度分布の最大径は31.3nmで、急峻度の目安である(最大径と平均分散径の偏差)/(平均分散径)の比(以後“分布域パラメータ”と定義)は2.1程度であった。
ジルコニア磨耗汚染濃度は3.7体積%まで上昇した。ビーズ径並びにビー
ズ周速は到達可能な平均分散径を支配する最も大きな因子であり、ビーズが小さくなるほど、また周速が上がるほど分散径は小さくなる。
Figure 0003936724
ビーズ径をφ0.05mmとし周速12m/secとした以外は表2と同様な条件で分散処理を行なった。結果を表4に示す。分散剤の添加量は表3と同一である。分散初期にはビーズ径の効果により分散が促進されるが、同一の運転時間で表3の結果と比較して到達分散サイズにあまり差が現われなかった。
ジルコニア磨耗汚染濃度を調べたところ4.7体積%を超える汚染が確認できた。磨耗汚染粉が分散限界に及ぼす影響を確認するため、精製処理ままの、表2〜表4の原料分散体を乾燥処理し、この超微粒子乾燥粉から同様な水分散体にビーズミルで再分散することを試みた。
なお、表4は、ダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体を分散処理した場合の運転時間と到達可能な平均分散粒子径、及び平均粒子径からの最大粒子径に対する偏差(部分安定化ジルコニアビーズ径φ0.05mm、周速12m/sec、分散剤(カチオン系界面活性剤)2.5wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度5wt%)を示すものである。
Figure 0003936724
ビーズ径はそれぞれφ0.1mm、φ0.05mmを使用した。固体質濃度、分散時間、分散剤添加量は表2、3と同様である。2.5hの分散結果は、それぞれ到達平均分散径は特定できないような不安定な粒度分布となり、80〜500nmに平均分散径がかろうじて特定できるものであった。最大径はμmレベルでその体積率も大きいようにみえる。ジルコニア磨耗汚染濃度を調べたところ8体積%以上であり、φ0.05mmビーズの場合の方が磨耗汚染濃度が高いことが明らかとなった。
以上の結果を総括すると、ダイヤモンド質超微粒子のナノ分散を達成するには、分散メディア等からの磨耗汚染は不可避であり、且つこの磨耗汚染量が増大する分散条件では、実質的に分散進行が停止する、すなわち分散限界に達するか、或いは分散が不可能になるという克服すべき困難な課題があることが明らかとなった。本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、磨耗汚染量を著しく低減して高純度な分散体を得るための新しい装置、また、それらを用いた高純度分散体の製造システムを確立することにより、磨耗汚染に由来する分散限界や分散が不可能となる要因を除去することで工業的に有用な高純度で粒度分布が急峻なナノ分散体を製造することにある。
超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の設計基準)
前記したビーズミル分散テストで明らかとなった分散体中の磨耗汚染粉の挙動を明らかとするため、表1に示すビーズミル処理2.5h後の水分散体を超音波により攪拌・再分散後、ダイヤモンド質超微粒子と磨耗粉の比重差に着目し、静置法にてStokes則を用いた汚染粉の分離除去を試みた。
まず前記分散体を超音波処理後3日間静置した。3日間の静置により分散体保持容器底部にはグレー沈殿物の分離が確認できた。本分散体の上澄みを分離・採取して同様にこの上澄み分散体の磨耗汚染濃度を評価した。分散体を3日静置することにより磨耗汚染濃度は1.43体積%に低減することがわかった。
この回収した上澄み分散体に再度超音波を附加して同様な静置処理を繰り返して沈殿物の分離状況を観察した。その結果、沈殿分離物は繰り返しの操作で持続的に生成することが明らかとなった。しかし、本操作を10回以上繰り返しても上澄み分散体中の汚染濃度を0.5体積%以下に低減することは困難であり、分散体量が増えると本操作による磨耗汚染粉の分離除去は工業的有用性がないことが解った。
磨耗汚染粉の分離挙動を詳細に観察した結果、超音波処理後の静置中に磨耗汚染粉は図6に模式的に示すように分離が進行していることが明らかとなった。
すなわち、磨耗汚染粉を比重差を利用したStokes則で分離するには、図6中の矢印で示す“分離飽和時間”の把握が重要であることが解る。この分離飽和時間は、乾燥粉や分散変質による強固な凝集とは別様のダイヤモンド超微粒子の“集合化(クラスタリング)”挙動や“軟らかい再凝集”と密接に関係しているものである。クラスタリング(集合化)とは、分散状態にある超微粒子同志が比較的弱い引力で引き合うため、個々の超微粒子が互いに比較的孤立した状態を保って多数の超微粒子が空間的にあるサイズで集まることである。この超微粒子の集団を超微粒子クラスター(集合体)と呼ぶが、この超微粒子の集団は、超音波程度の作用で容易に元の分散状態、すなわち、例えば本実施例では表1に示す2.5hビーズミル分散処理の粒度分布分散体に解離、或いは分離する特徴を持つ。軟らかい再凝集とは、超音波の作用で同様に解離、或いは分離してしまう程度に超微粒子同志が更に物理的に接近、接触した状態である。
本実施例の場合、ダイヤモンド質超微粒子と磨耗汚染粉のゼータ電位は異なり、磨耗汚染粉が、所謂“核”となって超微粒子のクラスタリングを誘発・加速し、ダイヤモンド質超微粒子のクラスター(集合体)中に捕獲されたり(当然ダイヤモンド質超微粒子自身のクラスタリングで捕獲されてしまう磨耗汚染粉もある)、ダイヤモンド質超微粒子と磨耗汚染粉が軟らかい再凝集状態を生成して結果として該超微粒子に捕獲されてしまうことから、磨耗汚染粉の分離挙動には分散体の特性(固体濃度や粒子表面特性等々)に応じて分離飽和時間が現れることになる。
したがって、凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中でビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、この分散超微粒子のクラスタリングや再凝集が完了する前、すなわち分離飽和時間に達する前に磨耗汚染粉を分離除去することが重要である。この時間内であれば孤立分散状態にある磨耗汚染粉を遠心分離することが可能であり、高純度ダイヤモンド質超微粒子分散体を製造する場合に有効な汚染粉除去手法であることが分かる。
分散体の固体濃度が3.3wt%の場合には、約10〜20分程度で沈降分離が飽和して事実上分離は停止する。固体濃度を5wt%に高めると、この分離飽和時間は短時間側にシフトする。固体濃度が10wt%では更に短時間で飽和することが明らかとなった。すなわち固体濃度が3.3wt%より高い場合には静置法で磨耗汚染粉を除去することは事実上不可能であることが明確となった。
付与する超音波がナノ超微粒子へ効果的に作用することで混入している磨耗汚染粉をダイヤモンド質超微粒子のクラスター、一次粒子或いは再凝集粒子から容易に脱離できるため、磨耗汚染粉が孤立微粒子として短時間分散体中に留まっている間に強制的に、特に、被分散体と磨耗汚染粉の比重差を利用して分離除去する装置が工夫できれば分散体の分散を崩さず汚染粉をほぼ完全に除去出きることになる。
後述する本発明の汚染除去装置やそれを用いた製造システムはこのような技術的背景に基づきなされたものである。磨耗汚染粉の被分散超微粒子からの脱離が促進され、単一粒子やその凝集体として孤立化をはかるには高振幅モードの超音波の作用が効果的である。
本発明における試作では周波数19.5kHz、振幅50〜60μmの高振幅モードを採用した。超音波手法で被分散超微粒子から孤立化できた磨耗汚染粉を後述する本発明の装置を用いて、ほぼ100%分離除去するには、磨耗汚染粉発生の原因となるビーズや、超微粒子分散体やビーズが接触するアジテータ、ステータ、ロータ等々分散メディアと分散室を構成する準メディア部材の材質を制限することが不可欠である。
超音波処理を繰り返し、磨耗汚染粉を分離除去した分散体の粒度分布と分離除去された磨耗汚染粉の粒度分布を詳細に調査した結果、磨耗汚染粉の粒度分布は、平均粒子径より小さな領域の分布特性を除けば、被分散体の粒度分布と類似の特徴を有している。
従って、被分散超微粒子と同等サイズの磨耗汚染微粒子やその凝集粒子が効果的に分離できる材質を選定する必要がある。鋭意検討した結果、被分散体の超微粒子比重の少なくとも1.2倍以上の比重を持つ材質が好ましく、同時に、水や有機溶媒を分散媒とする場合、分散媒のpH制御が必要なことから耐食性に優れた材質の選択が不可欠である。
分散媒に溶出し、pHを変動させるような材質では、返ってビーズミル分散処理中に分散が崩れ目的の微細化分散は達成出来ないことになる。従って前記した部分安定化ジルコニアはこれらの要請を満足する代表的素材であることが明確となった。
要素技術の設計基準が明らかとなったことから、次に本発明で試作した装置、システムの構成について説明する。
図7には本発明で新たに試作した超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の構成を示した。ビーズミル処理等で磨耗粉汚染の発生したダイヤモンド質超微粒子分散体(溜め11からポンプP1で供給)に超音波を作用し、分散体に取り込まれた磨耗汚染粉をダイヤモンド質超微粒子やその集合体、再凝集体から解離或いは分離孤立化する(クラスターからの解離や、同超微粒子との凝集からの分離を含む)ために超音波を照射する解離・分離作用部12と遠心力場でのStokes則に従い分散体から磨耗汚染粉を分離除去する遠心分離除去部13(通常バルブV3やポンプP3を介して最短で直結される)とから構成されることが特徴である。
また、遠心分離除去部の別様の機能を活用すれば、遠心場の下でStokes則を用いたダイヤモンド質超微粒子自体の粒度分布制御(最大粒子径のオーバーサイズカット等)部として、更にはカット分離された主に凝集体からなる超微粒子体を回収し、再度溶媒へ必要に応じて分散剤を添加して分散することで、特に平均分散粒子径が50nmから100nmの粒径範囲で急峻な粒度分布特性をもつ分散体を製造する分散原料体製造部として構成されることが特徴である。
磨耗汚染が発生している分散体は汚染除去処理体溜め11からポンプP1〜P4、バルブV11、V1〜V5、V6によって最短処理経路IIIやそれぞれの循環路II、IV、Vと前記処理経路IIIの組み合わせで構成される装置となっている。
前記処理経路で汚染粉が除去された高純度超微粒子分散体を特に分散体の粒度分布の急峻化のため、オーバーサイズカットの粒度分布制御やカット分離された超微粒子体の回収操作を実施する際には、高純度超微粒子分散体を処理経路III或いは処理循環路Vと処理経路IIIを併用して、除去したい最大粒子径近傍(オーバーサイズ)の超微粒子或いはその凝集体を遠心力場のStokes則分離操作で分離する。得られた粒度分布の急峻な分散体は溜め14、バルブV6を通して回収できる。
一方、遠心分離除去部13で分離されたオーバーサイズ超微粒子体は、例えば処理経路VIを用いて17からバルブV10を通って回収する構成となっている。
処理循環路Vを併用する場合、オーバーサイズカットによる粒度分布の急峻化と汚染濃度の著しい低減が期待できる。循環径路Vと処理経路IIIを利用した粒度分布制御処理から回収できるオーバーサイズ超微粒子体は、再分散が容易であり、50〜100nmに平均分散粒径をもつ凝集体の急峻な粒度分布の分散体を製造できる原料となる。
従来技術の分散テストで明示したように、一次粒子が30nm以下で強い凝集特性を有するダイヤモンド質超微粒子の精製処理後の精製処理水分散体からビーズミル分散で50〜100nmの範囲に各種平均凝集分散径を持つ粒度分布が急峻な分散体を製造することはほとんど不可能である。
添加する分散剤を減らすことは分散の不安定化を引き起こし安定な分散体は得られない。しかし、本発明の成果を利用することで工業的有用性の高い50〜100nmの範囲に各種平均凝集分散径を持つ粒度分布が急峻な新たな分散体を製造できることになるのである。一次粒子径が50〜100nmであれば当然のことながら高純度で急峻な粒度分布をもつ分散体が本発明の手法で製造できることは当然である。
このように凝集径を選別してより粗大な平均分散径の分散体を製造できることも本装置の特徴である。
例えば循環路IIは超微粒子クラスターや超微粒子と汚染粉の凝集を充分解離できることから、磨耗汚染粉を超微粒子からほぼ完全に分離して、前記した処理経路IIIで汚染濃度を0.5体積%以下のまで低減できることが解った。
更に、循環路Vは循環路IIの作用と処理経路IIIの作用を繰り返すことにより汚染濃度は1,000ppmを切るレベルに低減できる。本試作装置の構成は一例であり分散体を汚染している磨耗粉の除去が、超音波にてダイヤモンド質超微粒子から解離している状態で実施できる構成であれば本試作例に限定されるものではない。
図8には、前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の前段にビーズミル装置15を配置連結した高純度超微粒子分散体の製造システム構成を示した。ビーズミル装置は供給ポンプ(図示せず)とバルブV7を介して超音波による分離装置及び遠心分離による除去置と連結され、バルブV8、V9、ポンプP5からなる循環路VIIが更に付け加えられたシステム構成となっている。
本製造システムは、超微粒子のビーズミル分散とその後に続く磨耗汚染除去、更には粒度分布制御処理を一貫して実施できる以外に、超微粒子分散体が超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置とビーズミルを循環する構成となっていることから、後述するように超微粒子の分散限界はビーズミルで発生する磨耗汚染粉或いは磨耗汚染粉濃度により影響を受けないことが特徴である。
分散メデイアの磨耗による交換を許容して、この製造システムを使用すると、ビーズ径の最適選択で、分散を磨耗汚染の影響を受けずに極限まで実施でき、結果として、超微粒子の一次粒子径より微細な平均分散粒子径の高純度分散体の製造も可能となる。
加えて、分散処理を磨耗汚染の影響を受けずに繰り返すことができることから、分散超微粒子自体の磨耗による粒子形状制御も可能となる。例えば、ダイヤモンド質超微粒子の場合には凝集粒子形状に切り刃形状になるエッジを構成する凝集構造が数多く観察される。
このような凝集粒子の存在は潤滑応用への障害となってきており、磨耗汚染を制御して分散が繰り返しできることからこの切り刃エッジは摩滅して潤滑応用に好ましい滑らかな形状に改質可能である。 図8には図示していないが、超音波を照射する解離・分離作用部12を新たなバルブを介して循環路VIIと連結することも可能で磨耗粉の発生が少ない超微粒子や、磨耗粉の発生しない本発明の構成の場合にはショートパスの循環で分散も可能である。
図7、8に示した超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の超音波を照射する解離・分離作用部には本試作では循環型の超音波ホモジナイザーを、遠心分離部には連続循環運転が可能なドラバル型遠心分離装置を使用した。同様に装置構成には図示していないが、分散体が通過する前記超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置や超微粒子分散体製造システムの各部に分散体がスムーズに供給される、或いは循環するように圧力計や流量計を設置して、その信号をA/D変換してコンピュータに取り込み、予め設定された圧力、流量になるようコンピュータからD/A変換して制御信号をインバータを介して或いは直接に移送ポンプやバルブの調整に使用することにより、超微粒子分散体の製造は自動化可能であり、処理経路や循環経路の圧力損失等で移送分散体の流量変動が各機能部の処理性能に悪影響を及ぼすことがなく超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置や分散体製造システムを安定して稼動できる。
また、超音波による解離・分散作用部や遠心分離作用部並びに分散体が通過する経路等から汚染物質が磨耗混入したり、分散体へ溶出して分散を崩す危険を防止するため、分散体と接触する部位には耐食性があり、被分散体との比重差が1.2以上で磨耗汚染除去が可能な耐磨耗性に優れた部分安定化ジルコニア等セラミックスや耐酸、耐アルカリ性を持った、例えば、Ti−6Al−4V合金等の耐食材料、耐食・耐磨耗性能をもったポリマーやそのコーティング材料等を使用することができる。
同様にビーズミル装置において分散メディアを構成するアジテータ並びにステータなどのベッセルピンにも前記したように同材質の使用が好ましい。
また、本発明の装置、製造システムの使用は、ダイヤモンド質超微粒子を固体質分散原料とする分散体の製造法や装置のみならず、磨耗汚染の著しい低減とその再現性が不可欠な各種超微粒子を原料とする分散体の製造に同様に利用できる。
本発明では、被分散粒子の一次粒子径が好ましくは100nm以下と規定しているが、一次粒子径が100nm以上となると、使用する分散媒や分散剤、粒子表面の電位制御等にもよるが、Stokes則で沈降しやすくなる。従って、分散媒中の微粒子がブラウン運動する粒子径領域である100nm以下が被分散粒子の一次粒子径として最も好ましい。
超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を用いたダイヤモンド質超微粒子分散体からの磨耗汚染粉除去試験)
以下に超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を用いて、磨耗汚染が発生しているビーズミル処理ダイヤモンド質超微粒子分散体から磨耗粉を効率良く除去する実施例につき説明する。汚染分散体には表3に示したと同一条件でビーズミル分散処理した平均分散粒径10.9nm、磨耗粉汚染濃度3.8体積%の分散体を用いた。
図7に示す汚染分散体溜め11に分散体を移し、バルブV11、V1、V2を順次開いて、ポンプP1、P2を調整することで循環経路IIにてダイヤモンド質超微粒子やその再凝集体から磨耗汚染粉を解離、分離孤立化を充分確保する。
次にバルブV3を開いて経路IIIに超音波処理された分散体をポンプP3により導入する。遠心分離部では附加する遠心力を適時調整する。
本実施例では、1パスで汚染粉の除去を行なうため、遠心力が200Gとなるよう遠心分離機を調整した。汚染粉が分離された分散体はバルブV6を通じて回収した。得られた分散体の磨耗汚染濃度と粒度分布を前記した手法で評価した。
磨耗汚染濃度は本処理を行なうことで、0.2体積%まで低下した。高純度化された分散体の粒度分布は、平均分散粒子径が10.1nmへとわずかにシフトし、最大粒子径も処理前の33.1nmから27.9nmへと変化した。
更に汚染濃度を下げ、高純度化するために、超音波照射による解離・分離作用部12で磨耗粉を解離、孤立化させて、経路IIIと循環経路Vを使用し、バルブV11→超音波による解離・分離作用部12→バルブV3→遠心分離部13→バルブV4→バルブV5→超音波による解離部12の循環処理を大よそ10パス行なった。
本処理後バルブV4を閉じ、バルブV6から分散体を回収した。磨耗汚染濃度を調査したところ、0.08体積%まで低下し、さらに高純度化していることが明らかとなった。遠心力を200Gから400Gに上昇することにより、汚染濃度をさらに低下できることも実証した。ちなみに、500Gでの到達できる汚染濃度は0.02体積%であった。
(実施例2)
(分散体製造システムを用いた超微粒子固体濃度10wt%分散体の製造)
前述したように本発明の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の前段にビーズミル装置を配置して図8に示すような循環経路を確保する構成を作ることで、ビーズミル処理中の磨耗汚染発生濃度を低く制御でき、磨耗汚染粉に影響されないビーズミル分散処理が可能となる。
本実施例では、本発明で試作した図8の分散体製造システムを使用して、固体濃度を10wt%まで高めた凝集性の強い精製処理後のダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散体を再分散することを試みた。
ビーズミルの磨耗汚染粉が発生する部材には実施例1と同様に部分安定化ジルコニアビーズや同一材質で構成されるアジテータ、ステータ、ロータ等を使用した。前出の分散テストで使用したものと同様なカチオン系界面活性剤を分散剤として添加した分散開始時の粒度分布特性は最小分散径は0.5μm、最大凝集径は10μmに近いものであった。
分散剤添加量は分散体の10wt%の割合で添加し、分散処理原料(1,000g)とした。ビーズ径及び周速条件は、それぞれφ0.1mm、10m/secである。ビーズミル処理体の循環は、循環路VIIを使用した。すなわち、ビーズミル処理される被分散体はビーズミル15から連続的にバルブV7、V11を経由して磨耗汚染粉の解離・分離作用部12へ、更にバルブV3から遠心分離部13に入りバルブV4、V8、V9を経由してビーズミルに戻る循環経路を使用した。
3.5h運転後、バルブV4を閉じて、バルブV6から回収した分散処理体の磨耗汚染粉濃度、粒度分布を測定した。磨耗汚染粉濃度は固体質濃度を2倍に上げたにもかかわらず、0.1体積%以下と低い結果が得られた。粒度分布特性については平均分散粒子径7.2nm、最大粒子径26.5nmの良好な高純度分散体がえられた。分散処理運転の後半に、処理体を循環経路Vに変更して高純度化をはかることにより、磨耗汚染粉濃度は0.05体積%まで低減することが可能であった。ちなみに被分散体固体濃度の上昇に伴い磨耗汚染粉の分離・除去性を高めるため、本処理における遠心分離部での遠心力は500Gとした。
(実施例3)
(ダイヤモンド質超微粒子乾燥粉の固体濃度5wt%分散体の製造]
従来のビーズミル法を用いて、凝集力の極めて強い乾燥粉から水分散体を製造するには、厳しい磨耗汚染の問題を解決する必要があることを前記した。実施例2で使用した本発明の分散体製造システムを使用することで、汚染問題を解決して分散体が製造できるが、本実施例では、より効率的に乾燥粉から水分散体を製造するために、磨耗汚染の原因部となる分散メディア等にダイヤモンド被覆ビーズやダイヤモンドの微粒子を使用して分散処理を行なった。
ダイヤモンド被覆処理は熱フィラメント法を用い、Ti−6Al−4V耐食合金上にクロム窒化物を0.5μm成膜した基材を用い、その上にダイヤモンド被膜を形成した。この下地処理によりダイヤモンド膜の密着性は向上する。
表面に圧縮残留応力が残り、基材にも引張り負荷が比較的低くなるよう膜厚み(2μm)は調整した。本分散処理では図8に示した分散体製造システムを使用したが、ダイヤモンド膜が一部剥離して分散体に混入しても遠心分離部で除去可能であり、破片等粗大物の混入は回避できる。
更に本分散体製造システム中の適切な位置にフィルターも設置できる。被膜剥離時に想定されるトラブルの回避には、基材としては溶出等で分散を崩すことのない耐食性の高い素材の使用が好ましい。
実施例2と同様な循環経路を使用し、分散初期にはビーズ径φ0.5mmを使用し、処理後半にはφ0.1mmビーズを使用する表1と類似の処理構成を採用した。分散時間は3.5hとした。分散原料体は水、ダイヤモンド質超微粒子乾燥粉、分散剤からなり全体で2,000gとし、分散剤の添加量は8wt%とした。
ダイヤモンド質超微粒子の固体濃度は5wt%である。φ0.5mmビーズの分散時間は2.0h、φ0.1mmビーズの処理時間は1.5hとした。ビーズの周速は12m/secを設定した。分散処理後、前実施例と同様に磨耗汚染粉等混入物の調査のため分散体の一部を酸処理して混入物をICP発光分析にて検査したが、ほとんど汚染数値として検出できる程度のものはないことがわかった。
平均分散粒子径は10.3nm、凝集体の最大径は32.5nmであり、充分良質な分散体であることが確認できた。このように強い凝集体からなる乾燥粉ダイヤモンド質超微粒子でも精製処理水分散体を原料とする分散処理体と同様な分散性能を確認できたことで、精製処理水分散原料保管スペースは不用となり、原料コストも低下することから、安価な製品を提供できるようになり工業的意義は極めて大きい。
(実施例4)
(ダイヤモンド質超微粒子分散体のオーバーサイズカット粒度分布制御試験)
本実施例では、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の遠心分離部のもう1つの機能である遠心力による分散体の粒度分布制御機能を確認するテストを実施した。
本テストでは、分散処理量の違いを除けば、実施例1の表1に示したと同様のビーズミル分散処理条件で作製したダイヤモンド質超微粒子分散体を図7に示す超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の循環経路Vで磨耗汚染粉を0.05体積%まで除去したダイヤモンド質超微粒子分散体を粒度分布制御用の原料分散体とした。原料分散体1,500gを図7に示す分散体溜め11に移し替え、バルブV11→超音波による解離・分離部12→バルブV1→バルブV2→分散体溜め11という循環経路IIで分散原料体の分散確認前処理を行なった後、バルブV3から経路IIIと循環経路Vを利用した遠心分離部循環経路に原料分散体を導入する。
オーバーサイズカットのための遠心力値は処理する分散体の粒度分布特性に応じて適時選択されるものだが、本実施例では、1,000G〜10,000Gの間でそのオーバーサイズカット効果を確認した。本手法でオーバーサイズカットにより分散体の粒度分布を急峻に整えると、当然被分散体固体質濃度は低下することになる。
所望の固体濃度の分散体を得るためには、予め粒度分布制御前後の固体濃度を明らかにしておく必要がある。本実施例では、予備調査に基づき、粒度分布制御後の分散体固体濃度が5wt%となるよう分散処理原料体の固体濃度を5.9wt%とした。本粒度分布制御処理を遠心力3,000Gで行なった場合の粒度分布特性は表5に示す。すなわち、表5は、遠心力に対するオーバーサイズカット粒度分布制御処理を施した分散体の粒度分布特性を示すものである。
Figure 0003936724
磨耗汚染粉除去処理のみの分散体と比べ、平均分散粒径に対する最大径偏差の平均分散粒径に対する比((最大径−平均分散径)/(平均分散径)、すなわち分布域パラメータ)は0.63が達成できた。ちなみに当然のことながら分離したいオーバーサイズが平均分散径により近い場合には更に固体濃度を上げておく必要がある。
表5に、本発明のオーバーサイズカット粒度分布制御処理後の分散体粒度分布特性を、すなわち、代表的な平均分散粒子径と最大粒径を実施例1と同様の処理で得られた汚染除去分散体と比較して示す。
本粒度分布制御処理により分離されるオーバーサイズはガウシアン分布で分離されるため、オーバーサイズカット端が平均分散径に近づくほど、すなわち作用する遠心力が大きくなるほど、平均分散径近傍の分散粒子は分離除去されてしまい、平均分散径が不明瞭で、最大粒子径近傍が急峻にカットされた粒度分布特性が得られることになる(表5の遠心力5,000Gの結果参照)。
すなわちこのような粒度分布特性を持つ分散体は、平均粒子径から大粒径側に長い裾野をひく、例えば図5に示す従来の分布特性の分散体より以下のような好都合な点が多い。
例えば、ハードディスクのテクスチャリング加工では、最大体積率の平均分散粒子径より最大粒径まで広い裾野を持つ粗粒により、加工品質であるテクスチャの深さやその密度が必然的に少量の粗粒の加工性能で律速されて、均一性の低下の原因となるが、本実施処理で得られる分散体では、その粒度分布は、最大粒子径から急峻に立ち上がり、分布域が狭い粗粒の体積率と平均粒子径の体積率がほぼ同等で比較的平坦であることから、加工作用にあずかる正味の微粒子数には遥かに無駄がなく、効率的にテクスチャ生成に作用することからテクスチャ品質が均一で、その品質再現性も高くなる。
このような利点はその他の応用でも明らかであり、オイル中にナノサイズのダイヤモンド質超微粒子を分散させた潤滑剤でも従来の粒度分布特性の分散体の使用に比べ摺動部材の磨耗発生等のトラブルは極端に減少することがわかった。
これは明らかなことだが、本粒度分布制御処理や磨耗汚染粉除去処理を通じて、図5の分散結果で確認されている1μm程度の未分散凝集体或いは磨耗汚染粉との凝集体等の分散体への混入リスクは、遠心分離部のGを適正に選定することで全て解消できる。分散体に少量残留する凝集体等の未分散体等の検出は、サンプリング法である粒度分布測定法ではほとんど不可能であり、例えば未分散体等の残留リスクを低減するため必要以上の分散時間を従来は必要としてきた。本発明の前記処理により、分散体への未分散体残留や異物混入リスクはほとんどなくなり信頼性の高い分散体をより短時間で製造供給出来ることになる。
(実施例5)
(粒度分布制御で得られる分離超微粒子体の再分散と粒度分布特性)
本実施例では100nmから50nmの粒子径領域に平均分散径を持つ超微粒子分散体の製造を試みた。正確には超微粒子凝集分散体の製造である。
10nm以下の一次粒子径を持つ分散体の製造では、表1から表4に示すようにφ0.1mm程度のビーズを使用して分散処理を行なうと、ビーズ周速を小さくしても短時間で50nm以下に平均分散径が到達してしまう。分散剤の量を調整しすぎると、分散過程の粒度分布大きく広がり急峻な粒度分布特性を持つ分散体は得られにくい。
加えて分散の再現性は著しく低下するという不具合が観察された。本目的を達成するには、以下の2つの方法が現実的である。
一つは実施例3に示すように超微粒子体を一度加熱乾燥し、強固な凝集体として、乾燥粉から分散を行なうことである。他法としては、初期超微粒子原料体自体がサブμm域に強い凝集平均径(一例として約300nm原料が開示されている)をもつガウシアン分布の精製処理水分散体、或いは乾燥原料粉を使用することである。
前者は実施例3で述べたように、本発明の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置や分散体製造システムを使用すれば達成できることは容易に理解できる。後者も同様であるが、100nm以下の平均分散径に分散するには凝集がきつい分だけ分散処理中の磨耗汚染粉の管理に気をつけなければならない。
ともあれ、分散自体の安定化をはかるには分散剤を添加してビーズミル処理することが極めて効果的であり、ビーズ径や運転条件の調整だけでは磨耗汚染粉の問題解決と安定分散、粒度調整をバランス良く実施することは特に従来法では極めて困難である。
超微粒子体の高い歩留りの達成、更には粒度分布の急峻化のために本実施例では実施例4の粒度分布制御処理で分離されたオーバーサイズ超微粒子体を使用して安定分散が得られる50〜100nm平均凝集径の分散体製造を実施した。オーバーサイズカットにより分離された分離体は通常極少量である。従って、分散体への再生、すなわち再分散回収操作にはこれらの分離体を湿潤状態にて保管し、ストックを重ねる必要がある。
表6に示すように、ビーズ径φ0.5mmのビーズミルで分散処理後、図7の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置で高純度化処理した平均分散径51.4nm、最大径343.7nmの分散体を分散原料として使用し、超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置である図7の循環路Vと処理経路IIIを使用してオーバーサイズカット処理を実施した。
すなわち、表6はビーズ径φ0.5mmのビーズミルで分散処理後、遠心分離部の遠心力1,000Gでオーバーサイズカット処理した分散体を原料として、更に2,000Gの遠心力で粒度分布制御した結果、分離回収された超微粒子体の粒度分布特性を示すものである。
Figure 0003936724
遠心分離部13の遠心力を1,000Gとした場合の粒度分布制御分散体の粒度分布特性は、平均分散粒径63.1nm、最大径は90nmである。この分散体をもちいて同様な処理経路で2,000Gの遠心力を分散体に作用した。
分離された超微粒子体を回収し分散剤を新たに添加して粒度分布特性を調査した。得られた回収操作再分散体の粒度分布は、平均分散径が56.4nmで、最大径が90nmという極めて急峻な分散体(新たに定義した分布域パラメータは0.6である。表6参照)が得られた。本分散体の再生、製造は、分散体の粒度分布制御と比べ、生産性が低いことは弱点であるが、原料超微粒子の分散歩留りを高める点では有用性がある。
(実施例6)
(ダイヤモンド質超微粒子を分散させた油性分散体の製造)
本実施例では、ダイヤモンド質超微粒子の潤滑作用を確認するために油性分散体の製造を試みた。分散体の製造には図8に示した分散体製造システムを使用し、ビーズミルの分散メディアとなるビーズ及び分散室の内面並びに分散室の内部に存在する機器、例えば分散室のロータ、ステータ、アジテータなどのべセルピン等にはダイヤモンド膜の被覆処理を施したものを使用した。
油性分散体の製造には、ダイヤモンド質超微粒子原料粉として乾燥粉や精製処理水分散体双方を使用できる。精製処理水分散体を使用する場合には、分散剤とともに分散媒となる油を加え攪拌、分散しながら水を加熱蒸発或いは低温蒸発させたものを使用することが出来る。
ダイヤモンド質超微粒子には精製処理水分散体で一次粒子径が1nmで、10〜30nm凝集体が80体積%以上、その純度が95%以上のものを用い、水分を凍結乾燥法で除去して乾燥粉とした。分散媒である油には、ルブリケータ用のコスモタービン32、油圧作動油としてオルパス32を用いた。
分散剤には、非イオン系のソルビタントリオレート、陽イオン系のアミン系分散剤を使用し、分散体総量の15wt%を添加した。ダイヤモンド質超微粒子の分散量は分散体総量に対して10wt%とした。分散処理後の粒度分布は、直接本オイル分散体で計測することが困難であったため、油性分散体の分散処理条件と同様のダイヤモンド質超微粒子の乾燥粉を水分散した場合の粒度分布特性で代用した。
ビーズミル分散処理条件は、実施例1の表1と類似に、ビーズ径φ0.1mm、周速10m/secにて1.5h分散処理後、ビーズ径φ0.05mm、周速12m/secにて2hとした。3.5h分散後の水分散体の粒度分布は、平均分散粒子径2nm、最大粒径20.5nmであったので、オイル分散体も同様な分散処理が達成されていると判断した。得られた油分散体には当然のことながら磨耗汚染は検出されなかった。
本分散体を更に分散体溜め11に挿入し、経路IIIと循環経路Vを利用して分散体の粒度分布制御を行なった。附加した遠心力は8,000Gである。粒度分布計測の代替品である水分散体にて粒度分布を調べたところ最大径は15nmまで低下して、その粒度分布は、最大粒子径から急峻に立ち上がり、分布域が狭い粗粒の体積率と平均粒子径の体積率がほぼ同等で比較的平坦な分散体が得られることが解った。
従って本実施例の油分散体の潤滑特性を調査するため、繰り返し周波数が300回/分でパンチとガイドのクリアランスが0.05mm以下の高速タレットパンチプレスの潤滑油に使用し、パンチのかみ込みや打ち抜き使用後のパンチとダイス寸法の変化でその潤滑特性を評価した。100,000ショットでかみ込み等のトラブル発生は確認されなかった。パンチ並びにダイスの磨耗による寸法変化もほとんど検出できなかった。
当然パンチとダイス表面には焼付き痕やスクラッチ痕等は認められず潤滑特性に優れたダイヤモンド質超微粒子油分散体であることが明らかとなった。
本分散処理には純度98%以上の高純度ダイヤモンド質超微粒子を用いたが、純度が90%以下で残留炭素質の多い超微粒子や、更に炭素質の微粒子を分散共存させることも可能であり、用途に応じて優れた潤滑特性が確認された。
ダイヤモンド質超微粒子の固体濃度を10wt%以上に増して分散体を製造し、潤滑応用に供する場合には、ダイヤモンド質超微粒子集合体の解離抵抗が上昇するため、又潤滑特性の面からも同様に炭素質超微粒子の添加が好都合な場合がある。ダイヤモンド質超微粒子の分散量を25wt%と増した本実施例類似の分散体を製造したが、炭素質超微粒子も添加することで潤滑特性も改善された。ビーズミル法では磁性塗液程度の粘度の分散体は製造可能であるが、粘度が上昇するにつれ、分散処理した超微粒子のオーバーサイズカット等の粒度分布制御が難しくなるのは当然のことである。
(比較例)
(ビーズ、アジテータ等に超硬やガラス、ステンレスを用いたダイヤモンド質超微粒子の分散試験)
本比較例では、ビーズ材質並びにビーズミル分散室のロータ部、ステータ、アジテータ等の材質を被分散体の比重の1.2倍以上の材質として、WC−Coからなる超硬ビーズ、ロータやステータ、アジテータにはステンレス鋼を用いて図8に示す分散体製造システムにて実施例2と同様なダイヤモンド質超微粒子の分散処理を実施した。
分散原料となるダイヤモンド質超微粒子の精製処理水分散体(pH 3)ついては、凝集特性が同一な固体濃度5wt%のものを使用し、分散総量500g、分散剤添加は6wt%とした。ちなみにビーズ径及びその周速条件は実施例2と同様である。分散の進行状況を被分散体の粒度分布特性で追跡すると、分散初期から超微粒子の分散は崩れており、粒度分布に不規則なガウシアンピークが多数観察された。
分散を継続すると分散体は鉄錆の褐色を呈した。分散体を採取し、固体質を凝集沈殿させたのち、分散媒である水中の金属濃度を分析した。その結果、Fe、Co、WやNi等の溶出が確認され、ダイヤモンド質超微粒子の分散が崩れた原因が明らかとなった。
このような分散状態の崩壊現象は分散媒である水のpHをアルカリ側に調整しても同様にその発生が確認できた。従って、本分散体製造システムで使用するビーズ材質や分散室のロータ、アジテータ、ステータ等分散体と接する部分の材質は、耐食性が極めて高いセラミックスやダイヤモンド(含むダイヤモンド膜被覆)で構成されることが不可欠である。被分散体のダイヤモンド質超微粒子と同等か或いは更に小さい比重のガラスビーズ等を用いて分散処理をおこなったが、分散は崩れないものの磨耗汚染粉を除去することは当然のことながら極めて困難であった。
ダイヤモンド質超微粒子の分散体製造実証テストを行ない、経時変化による変質で強い凝集が認められるダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散体更には強い凝集構造を持つダイヤモンド質超微粒子乾燥粉をビーズミルによるせん断作用を用いて、平均分散粒子径が1〜100nmの所望の高純度分散体として安定して得る工夫をすることにより以下の著しい効果が得られた。
1 ダイヤモンド質超微粒子を平均分散粒子径が1〜100nmの所望の分散体として製造するために、不可避的に混入する磨耗汚染粉を分散体の分散状態を崩すことなく除去できる超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置や、これらの装置の前段にビーズミル装置を組み合わせた超微粒子分散体製造システムを考案したことにより、高純度で粒度分布性能に優れたダイヤモンド質超微粒子分散体を再現性よく安価に得ることができる。
2 分散平均粒子径がナノサイズで、汚染レベルも著しく低く且つ分散安定性、再現性も極めて高いダイヤモンド質超微粒子分散体をタイムリーに市場に提供できることから、超微細な安定したテクスチャリング加工を通じて外部記録媒体としての磁気ハードディスクの大幅な記憶容量アップや次世代パワーエレクトロニクス半導体であるSiC基板の高品質加工等が可能となり、良質SiCエピウエハーの製造を実現できる。
3 乾燥ダイヤモンド質超微粒子状態からナノ分散状態を容易に達成できるため、ナノ分散体の保存スペースが不用となり管理コストも著しく低減される。また、従来、長期保存で変質(強い再凝集等)し、初期性能が再現できないとの理由から廃却していた経時変化したダイヤモンド質超微粒子分散体も再分散製造処理でナノ分散体として再生できコスト並びに環境負荷の低減を達成できる。
精製処理後一ヶ月静置したダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体の粒度分布図 精製処理後三ヶ月静置したダイヤモンド質超微粒子精製処理水分散原料体の粒度分布図 分散処理に際してカチオン系分散剤を添加したダイヤモンド質超微粒子水分散原料体の粒度分布図 従来型のビーズミル分散装置の構成概略図 ビーズミル分散処理した磨耗汚染粉を含有するダイヤモンド質超微粒子水分散体の粒度分布図 磨耗汚染粉を含むダイヤモンド質超微粒子分散体に超音波処理を施し、静置した際の磨耗汚染粉分離挙動の模式図 超微粒子分散体の超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置概略図 超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置の前段にビーズミル分散部を備えた超微粒子分散体製造システムの概略図
符号の説明
0 :ビーズミル冷却路
1 :攪拌モータ
2 :被分散体
3 :定量ポンプ
4 :被分散体のビーズミルへの導入
5 :ロータ
6 :分離スクリーン
7 :アジテータ
8 :ビーズ
9 :ステータ
10:被分散体の循環排出
11:被分散体溜め
12:超音波照射解離・分離作用部
13:遠心分離部
14:分散体溜め
15:ビーズミル分散部
16:摩耗汚染除去処理等への分散体の導入
17:分離体の回収
18:オーバーサイズカット粒度分布制御分離体の回収
19:分散処理体の回収
V1〜V11:バルブ
P1〜P6:定量移送ポンプ
I:ビーズミル装置からの分散体の導入経路
II:磨耗汚染粉の解離・分離並びに被分散体の分散確保循環経路
III:磨耗汚染粉の分離経路及びオーバーサイズカット粒度分布制御経路
IV:オーバーサイズカット粒度分布制御のための循環経路
V:磨耗汚染粉分離及びオーバーサイズカット粒度分布制御のための循環経路
VI:粒度分布制御分離体の回収経路
VII:ビーズミル分散装置と超音波による分離装置及び遠心分離による除去装置を組み合わせた超微粒子の分散体製造システム循環経路

Claims (6)

  1. 凝集ダイヤモンド質微粒子を、媒体中で被分散体の比重に対して1.2倍以上の比重を有し、耐食性に優れた分散メディアであるビーズミルにより分散処理を行うダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法において、ビーズミル分散メディアから発生する摩耗粉末を超音波によりダイヤモンド質超微粒子から分離した後、ダイヤモンド質超微粒子が集合化や再凝集を完了する前の分離飽和時間内に、前記摩耗粉末を遠心分離することを特徴とするダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
  2. 前記摩耗粉末を遠心分離すると同時に又はその後に、ダイヤモンド質超微粒子を遠心分離処理することを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
  3. 前記超音波処理から前記遠心分離処理に係る一連の工程を複数回繰返すことを特徴とする請求項1又は2記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
  4. ダイヤモンドで被膜された前記分散メディアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
  5. 磨耗粉末の除去と同時に又は単独でダイヤモンド質超微粒子分散体に与える遠心力レベルを制御することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の粒度分布を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド質超微粒子分散体の製造方法。
  6. 磨耗汚染粉末と同時に分離除去したダイヤモンド質超微粒子を酸処理により回収し、乾燥後再利用することにより、ダイヤモンド質超微粒子分散体の製造歩留りを向上させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の該超微粒子分散体の製造方法。
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