JP7129068B2 - 潤滑システムおよび潤滑システム用液剤セット - Google Patents

潤滑システムおよび潤滑システム用液剤セット Download PDF

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Description

本発明は、潤滑システムおよび潤滑システム用液剤セットに関する。本願は、2017年11月9日付の日本出願である特願2017-216443号に基づく優先権を主張し、これら出願に記載されている全ての内容を援用するものである。
硬質炭素(ダイヤモンドライクカーボン;DLC)膜は、高硬度および化学安定性を有することから、摺動部材の表面(摺動面)への応用が期待されている。このようにDLC膜を摺動面に用いることについては、例えば下記の特許文献1に記載されている。
DLC膜は、化学的に安定、かつ高硬度であるが、低摩擦および低摩耗である面を形成するには不利な材料であった。DLC膜を用いた摺動面において、低摩擦および低摩耗である面を形成し、摩擦および摩耗を長時間低減するための技術が求められている。
特開2012-246545号公報
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであり、DLC摺動面において低摩擦および低摩耗を実現するのに適した潤滑システム、および潤滑システム用液剤セットを、提供する。
本発明の第1の側面によると潤滑システムが提供される。この潤滑システムは、相対的に高濃度のナノダイヤモンド粒子(以下、「ND粒子」と称する場合がある)を含有する初期なじみ剤を使用して低摩擦化されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)摺動面の潤滑に、相対的に低濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤を使用するものである。
本発明者らの知見によると、DLC摺動面の潤滑用液剤として水(純粋)を用いる場合、DLC摺動面の摩擦係数に有意な低下の見られる、いわゆる初期なじみ期間およびその後の期間を通して当該摺動面の摩耗は抑制される傾向にあるものの、前記のような初期なじみ期間を経た後の摺動面摩擦係数は次第に上昇する傾向にある。一方、DLC摺動面の潤滑用液剤として比較的に高濃度のND粒子水分散液を用いる場合、DLC摺動面の摩擦係数に有意な低下の見られる初期なじみ期間の後において、摺動面摩擦係数の上昇は抑制される傾向にあるものの、当該摺動面の摩耗は進行する傾向にある。バルクダイヤモンドがそうであるように高硬度であるND粒子のDLC摺動面への接触頻度が高いほど、摩耗は進行しやすい。
これらとは異なり、本発明の第1の側面に係る上述潤滑システムでは、DLC摺動面の潤滑用液剤として、ND粒子濃度が相対的に高い初期なじみ剤を先ずは使用して、DLC摺動面の低摩擦化が図られる(初期なじみ期間)。そのうえで、DLC摺動面の潤滑用液剤として、ND粒子濃度が相対的に低い潤滑剤を使用し、これによってDLC摺動面の潤滑系が成立・維持される。上記初期なじみ剤の使用期間中には、炭素原子が表面に配列しているDLC摺動面に対し、同じく炭素原子が表面に配列し且つ相対的に高濃度で存在しているND粒子と水とが重畳的に作用する系でのトライボ化学反応により、DLC摺動面の濡れ性向上や平滑化が早期に進行するものと考えられ、DLC摺動面が早期に低摩擦化する傾向にあるという知見を本発明者らは得ている。初期なじみ期間を経た後の上記潤滑剤の使用期間中には、潤滑剤中のND粒子が相対的に低濃度であるために当該ND粒子によるDLC摺動面への物理的アタックが減じられつつ、水と相対的に低濃度のND粒子とがDLC摺動面に対して重畳的に作用する系でのトライボ化学反応によってDLC摺動面の濡れ性や平滑性が維持されるものと考えられ、DLC摺動面の摩耗が抑制されつつ低摩擦性が維持される傾向にあるという知見を本発明者らは得ている。以上の知見については、例えば後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。
以上のように、本発明の第1の側面に係る潤滑システムは、DLC摺動面において低摩擦および低摩耗を実現するのに適するのである。
本発明は、初期なじみ剤のND粒子濃度が、0.01~2質量%であることが好ましい。当該構成は、DLC摺動面におけるND粒子が存在する系でのトライボ化学反応によって、平滑性と濡れ性とを兼ね備えた面を早期に形成するのに適する。
本発明は、潤滑剤のND粒子濃度が、0.001質量%以下であることが好ましい。当該構成は、初期なじみ剤により形成したDLC摺動面における平滑性と濡れ性を維持し、摺動面における摩擦および摩耗を低減するのに適する。
本発明は、下記摩擦試験で測定される摺動面の摩擦係数は0.05以下であり、且つ前記摩擦試験後の下記摩耗量算出方法により求めるボール摩耗体積は1.0×10-4mm3以下であることが好ましい。
摩擦試験:まず、厚さ3μmのDLC膜がなすDLC摺動面を表面に有する直径30mmおよび厚さ4mmのディスクと、厚さ3μmのDLC膜がなすDLC摺動面を表面に有する直径8mmのボールとが取り付けられた、ボールオンディスク型の滑り摩擦試験機を使用して、ディスクのDLC摺動面に対し、1mLの前記初期なじみ剤を滴下したうえでボールを10Nの荷重で当接させつつディスク周方向に相対的に10mm/sの速度で10m滑動させ、滑り距離0~10mの当該滑動中、ディスクおよびボールのDLC摺動面間の摩擦係数を測定する。次に、ディスクおよびボールを、滑り摩擦試験機から取り外し、超音波洗浄する。洗浄後、ボールに付着したナノダイヤモンドを除去するためにアセトンを用いてボールを拭いてもよい。次に、ディスクおよびボールが取り付けられた滑り摩擦試験機を使用して、ディスクのDLC摺動面に対し、1mLの潤滑剤を滴下したうえで前記ボールを10Nの荷重で当接させつつディスク周方向に相対的に10mm/sの速度で更に90m滑動させ、滑り距離10~100mの当該滑動中、ディスクおよびボールのDLC摺動面間の摩擦係数を測定する。
摩耗量算出方法:前記摩擦試験を経た前記ボールに形成されている円形状摩耗痕を共焦点顕微鏡を使用して観察し、当該観察像から、前記円形状摩耗痕について一様に滑らかな平面であると仮定したうえで直径r(mm)を求める。そして、下記の式(1)および式(2)によりボール摩耗体積V(mm3)を算出する。式(1)におけるhは、前記円形状摩耗痕の球冠の高さ(mm)であり、下記式(2)より求められる。式(2)におけるRは、前記ボールの半径であって4(mm)である。
Figure 0007129068000001
本発明は、ND粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子の酸素酸化処理物であってもよい。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のNDを適切に生じさせることが可能である。
本発明は、NDのゼータ電位がネガティブであってもよい。
本発明は、ND粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1以上であってもよい。
本発明は、ND粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子の水素還元処理物であってもよい。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のNDを適切に生じさせることが可能である。
本発明は、NDのゼータ電位がポジティブであってもよい。
本発明は、ND粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1未満であってもよい。
本発明は、初期なじみ剤および潤滑剤における潤滑基剤が水であることが好ましい。
本発明の第2の側面によると潤滑システム用液剤セットが提供される。この潤滑システム用液剤セットは、濃度0.01~2質量%のナノダイヤモンド粒子を含有する初期なじみ剤と、濃度0.001質量%以下のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤とを備える。第2の側面による潤滑システム用液剤セットは、第1の側面による潤滑システムに使用することができる。当該潤滑システム用液剤セットを用いることは、DLC摺動面において、低摩擦面を早期に形成し、当該低摩擦面を維持でき、摺動面における摩耗を低減するのに適する。つまり、潤滑システム用液剤セットは、DLC摺動面において、低摩擦および低摩耗を実現するのに適する。
本発明の一の実施形態に係るND分散液の製造方法の一例の工程図である。 比較例1の摩擦試験による、滑り距離と摩擦係数の関係を示すグラフである。 実施例1の摩擦試験による、滑り距離と摩擦係数の関係を示すグラフである。 実施例1および比較例1の摩擦試験による、滑り距離と摩耗量の関係を示すグラフである。 実施例で製造したND粒子のFT-IRスペクトルである。
本発明の潤滑システムは、相対的に高濃度のND粒子を含有する初期なじみ剤を使用して低摩擦化されたDLC摺動面の潤滑に、相対的に低濃度のND粒子を含有する潤滑剤を使用する。本発明の潤滑システム用液剤セットは、当該潤滑システムに用いるものであり、上記の初期なじみ剤と潤滑剤とを備える。摺動面は、例えば、機械における軸と軸受け部の接触面のように、相対的な動きによりこすれながら滑り合う面を意味する。
初期なじみ剤は、ND粒子が潤滑基剤に分散した溶液(分散液)である。初期なじみ剤のND粒子濃度は、例えば0.01~2質量%、好ましくは0.03~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.07~0.6質量%、より好ましくは0.08~0.4質量%である。初期なじみ剤のND粒子濃度が上記範囲であると、DLC摺動面におけるND粒子が存在する系でのトライボ化学反応によって、平滑性と濡れ性とを兼ね備えた面を早期に形成するのに適する。
潤滑剤は、ND粒子が潤滑基剤に分散した溶液(分散液)である。潤滑剤のND粒子濃度は、例えば0.001質量%以下(1.0×10-5~1.0×10-3質量%)、好ましくは3.0×10-5~5.0×10-4質量%、より好ましくは5.0×10-5~3.0×10-4質量%、より好ましくは8.0×10-5~2.0×10-4質量%である。潤滑剤のND粒子濃度が上記範囲であると、初期なじみ剤により形成したDLC摺動面における平滑性と濡れ性を維持し、摺動面における摩擦および摩耗を低減するのに適する。
初期なじみ剤および潤滑剤に含有されるND粒子は、一次粒子として、初期なじみ剤および潤滑剤中にて互いに離隔して分散している。ND一次粒子の粒径は、例えば10nm以下である。NDの一次粒子の粒径の下限は、例えば1nmである。ND一次粒子の粒径D50(メディアン径)は、例えば10nm以下、好ましくは9nm以下、より好ましくは8nm以下、より好ましくは7nm以下、より好ましくは6nm以下である。ND一次粒子の粒径D50は、例えば動的光散乱法によって測定することが可能である。
ND粒子は、好ましくは、爆轟法ND粒子(爆轟法によって生成したND粒子)である。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のNDを適切に生じさせることが可能である。
ND粒子は、爆轟法ND粒子の酸素酸化処理物であってもよい。当該酸素酸化処理物の場合、ND粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1以上となる傾向があり、このときのND粒子のゼータ電位はネガティブとなる傾向がある。爆轟法ND粒子の酸素酸化処理については、後記の製造過程における酸素酸化工程に記載のとおりである。
また、ND粒子は、爆轟法ND粒子の水素還元処理物であってもよい。当該水素還元処理物である場合、ND粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1未満となる傾向があり、このときのND粒子のゼータ電位はポジティブとなる傾向がある。爆轟法ND粒子の水素還元処理については、後記の製造過程における水素還元処理工程に記載のとおりである。
ND粒子のいわゆるゼータ電位がネガティブの場合の値は、例えば-60~-30mVである。例えば、製造過程において、後記のように酸素酸化処理の温度条件を比較的に高温(例えば400~450℃)とすることで、ND粒子についてネガティブのゼータ電位とすることができる。また、ゼータ電位がポジティブの場合の値は、例えば30~60mVである。例えば、製造過程において、後記のように酸素酸化工程の後に水素還元処理工程を行うことで、ND粒子についてポジティブのゼータ電位とすることができる。
初期なじみ剤および潤滑剤は、後記の方法で得られたND分散液と、潤滑基剤などの所望の成分とを混合することで製造することができる。上記ND分散液は、例えば、下記の生成工程S1と、精製工程S2と、酸素酸化工程S3と、解砕工程S4とを含む過程を経て作製することができる。
生成工程S1では、例えば爆轟法によって、ナノダイヤモンドを生じさせる。具体的には、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において所定の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は、例えば0.5~40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、例えば40/60~60/40の範囲とされる。爆薬の使用量は、例えば0.05~2.0kgである。使用爆薬とともに容器内に密閉される上記の気体は、大気組成を有してもよいし、不活性ガスであってもよい。一次粒子表面の官能基量の少ないナノダイヤモンドを生じさせるという観点からは、使用爆薬とともに容器内に密閉される上記気体は、不活性ガスであるのが好ましい。すなわち、一次粒子表面の官能基量の少ないナノダイヤモンドを生じさせるという観点からは、ナノダイヤモンドを生じさせるための爆轟法は不活性ガス雰囲気下で行われるのが好ましい。当該不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムから選択される少なくとも一つを用いることができる。
生成工程S1では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンドが生成する。爆轟法によると、上述のように、一次粒子の粒径が10nm以下のナノダイヤモンドを適切に生じさせることが可能である。ナノダイヤモンドは、爆轟法により得られる生成物にて先ずは、隣接する一次粒子ないし結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体をなす。
生成工程S1では、次に、室温での例えば24時間の放置により、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、ナノダイヤモンド粗生成物を回収する。例えば、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上述のようにして生成したナノダイヤモンドの凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業によって、ナノダイヤモンド粗生成物を回収することができる。以上のような爆轟法によって、ナノダイヤモンド粒子の粗生成物を得ることができる。また、以上のような生成工程S1を必要回数行うことによって、所望量のナノダイヤモンド粗生成物を取得することが可能である。
精製工程S2は、本実施形態では、原料たるナノダイヤモンド粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させる酸処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には金属酸化物が含まれやすいところ、この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe,Co,Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸処理では、一種類の強酸を用いてもよいし、二種類以上の強酸を用いてもよい。酸処理で使用される強酸の濃度は例えば1~50質量%である。酸処理温度は例えば70~150℃である。酸処理時間は例えば0.1~24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。沈殿液のpHが例えば2~3に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物における金属酸化物の含有量が少ない場合には、以上のような酸処理を省略してもよい。
精製工程S2は、本実施形態では、酸化剤を用いてナノダイヤモンド粗生成物(精製終了前のナノダイヤモンド凝着体)からグラファイトやアモルファス炭素等の非ダイヤモンド炭素を除去するための溶液酸化処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物にはグラファイト(黒鉛)やアモルファス炭素等の非ダイヤモンド炭素が含まれているところ、この非ダイヤモンド炭素は、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、水溶媒中で所定の酸化剤などを作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から非ダイヤモンド炭素を除去することができる(溶液酸化処理)。この溶液酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩、硝酸、並びに混酸(硫酸と硝酸の混合物)が挙げられる。溶液酸化処理では、一種類の酸化剤を用いてもよいし、二種類以上の酸化剤を用いてもよい。溶液酸化処理で使用される酸化剤の濃度は、例えば3~50質量%である。溶液酸化処理における酸化剤の使用量は、溶液酸化処理に付されるナノダイヤモンド粗生成物100質量部に対して例えば300~2000質量部である。溶液酸化処理温度は例えば50~250℃である。溶液酸化処理時間は、例えば1~72時間である。溶液酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような溶液酸化処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。
本処理を経たナノダイヤモンド含有溶液から、例えばデカンテーションによって上澄みが除かれた後、残留画分について乾燥処理に付して乾燥粉体を得る。乾燥処理の手法としては、例えば、噴霧乾燥装置を使用して行う噴霧乾燥や、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固が挙げられる。
次の酸素酸化工程S3では、精製工程S2を経たナノダイヤモンドの粉体について、ガス雰囲気炉を使用して、酸素を含有する所定組成のガス雰囲気下にて加熱する。具体的には、ガス雰囲気炉内にナノダイヤモンド粉体が配され、当該炉に対して酸素含有ガスが供給ないし通流され、加熱温度として設定された温度条件まで当該炉内が昇温されて、酸素酸化処理が実施される。この酸素酸化処理の温度条件は、例えば250~500℃である。作製されるND分散液に含まれるND粒子について、ネガティブのゼータ電位を実現するためには、この酸素酸化処理の温度条件は、比較的に高温であるのが好ましく、例えば400~450℃である。また、本実施形態で用いられる酸素含有ガスは、酸素に加えて不活性ガスを含有する混合ガスである。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムが挙げられる。当該混合ガスの酸素濃度は、例えば1~35体積%である。
作製されるND分散液に含まれるND粒子についてポジティブのゼータ電位を実現するためには、好ましくは、上述の酸素酸化工程S3の後に水素還元処理工程S3’を行う。水素還元処理工程S3’では、酸素酸化工程S3を経たナノダイヤモンドの粉体について、ガス雰囲気炉を使用して、水素を含有する所定組成のガス雰囲気下にて加熱する。具体的には、ナノダイヤモンド粉体が内部に配されているガス雰囲気炉に対して水素含有ガスが供給ないし通流され、加熱温度として設定された温度条件まで当該炉内が昇温されて、水素還元処理が実施される。この水素還元処理の温度条件は、例えば400~800℃である。また、本実施形態で用いられる水素含有ガスは、水素に加えて不活性ガスを含有する混合ガスである。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムが挙げられる。当該混合ガスの水素濃度は、例えば1~50体積%である。作製されるND分散液に含まれるND粒子について、ネガティブのゼータ電位を実現するためには、このような水素還元処理工程を行わずに下記の解砕工程S4を行ってもよい。
以上のような一連の過程を経て精製等された後であっても、爆轟法ナノダイヤモンドは、凝着体(二次粒子)の形態をとる場合があり、更に凝着体から一次粒子を分離させるために、次に解砕工程S4が行われる。具体的には、まず、酸素酸化工程S3またはその後の水素還元処理工程S3’を経たナノダイヤモンドを純水に懸濁し、ナノダイヤモンドを含有するスラリーが調製される。スラリーの調製にあたっては、比較的に大きな集成体をナノダイヤモンド懸濁液から除去するために遠心分離処理を行ってもよいし、ナノダイヤモンド懸濁液に超音波処理を施してもよい。そして、当該スラリーが湿式の解砕処理に付される。解砕処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、またはコロイドミルを使用して行うことができる。これらを組み合わせて解砕処理を実施してもよい。効率性の観点からはビーズミルを使用するのが好ましい。
粉砕装置ないし分散機たるビーズミルは、例えば、円筒形状のミル容器と、ローターピンと、遠心分離機構と、原料タンクと、ポンプとを具備する。ローターピンは、ミル容器と共通の軸心を有してミル容器内部で高速回転可能に構成されている。遠心分離機構は、ミル容器内の上部に配されている。解砕工程におけるビーズミルによるビーズミリングでは、ミル容器内に所定量のビーズが充填され且つローターピンが当該ビーズを撹拌している状態で、ポンプの作用によって原料タンクからミル容器の下部に原料としての上記スラリー(ナノダイヤモンド凝着体を含む)が投入される。スラリーは、ミル容器内でビーズが高速撹拌されている中を通ってミル容器内の上部に到達する。この過程で、スラリーに含まれているナノダイヤモンド凝着体は、激しく運動しているビーズとの接触によって粉砕ないし分散化の作用を受ける。これにより、ナノダイヤモンドの凝着体(二次粒子)から一次粒子への解砕が進む。ミル容器内の上部の遠心分離機構に到達したスラリーとビーズは、稼働する遠心分離機構によって比重差を利用した遠心分離がなされ、ビーズはミル容器内に留まり、スラリーは、遠心分離機構に対して摺動可能に連結された中空ラインを経由してミル容器外に排出される。排出されたスラリーは、原料タンクに戻され、その後、ポンプの作用によって再びミル容器に投入される(循環運転)。このようなビーズミリングにおいて、使用される解砕メディアは例えばジルコニアビーズであり、ビーズの直径は、例えば15~500μmである。ミル容器内に充填されるビーズの量(見掛け体積)は、ミル容器の容積に対して、例えば50~80%である。ローターピンの周速は、例えば8~12m/分である。循環させるスラリーの量は例えば200~600mLであり、スラリーの流速は例えば5~15L/時間である。また、処理時間(循環運転時間)は、例えば30~300分間である。本実施形態においては、以上のような連続式のビーズミルに代えてバッチ式のビーズミルを使用してもよい。
このような解砕工程S4を経ることによって、ナノダイヤモンド一次粒子を含有するND分散液を得ることができる。解砕工程S4を経て得られる分散液については、粗大粒子を除去するための分級操作を行ってもよい。例えば分級装置を使用して、遠心分離を利用した分級操作によって分散液から粗大粒子を除去することができる。これにより、ナノダイヤモンドの一次粒子がコロイド粒子として分散する例えば黒色透明のND分散液が得られる。
初期なじみ剤および潤滑剤における潤滑基剤としては、極性溶媒または非極性溶媒が挙げられる。極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、多官能基アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)、およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。また、非極性溶媒としては、合成油(ポリ-α-オレフィン、アルキルナフタレン、ポリブデンなど)、鉱物油、合成炭化水素油、エステル油(ポリオールエステル、ジエステル、コンプレックスエステルなど)、シリコーン油、フッ素油、ひまし油およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。なかでも初期なじみ剤および潤滑剤における潤滑基剤としては、水が好ましい。
初期なじみ剤における潤滑基剤の含有率は、本実施形態では例えば98質量%以上であり、好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上である。
潤滑剤における潤滑基剤の含有率は、本実施形態では例えば99.9質量%以上であり、好ましくは99.95質量%以上、より好ましくは99.99質量%以上、より好ましくは99.999質量%以上である。
初期なじみ剤および潤滑剤は、ND粒子および潤滑基剤に加えて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、潤滑対象部材たる金属部材の錆止めのための防錆剤、潤滑対象部材たる非金属部材の腐食抑制のための腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色料、およびND粒子以外の固体潤滑剤が挙げられる。
本発明の潤滑システムでは、初期なじみ剤をDLC摺動面に適量加え、あらかじめ摩擦(予滑り)をする。その後、潤滑剤の存在下、DLC摺動面を更に摺動(滑動)させる。本発明の潤滑システムは、例えば、機械における滑り軸受(ベアリング)等の摺動面における摩擦係数および摩耗を低減するのに適する。本発明の潤滑システムは、初期なじみ剤を使用したときのND粒子が作用する系でのトライボ化学反応により、DLC摺動面の濡れ性向上や平滑化が早期に進行するものと考えられ、DLC摺動面が早期に低摩擦化する傾向にある。また、潤滑剤を使用することにより、DLC摺動面の摩耗が抑制されつつ低摩擦性が維持される傾向にある。よって、本発明の潤滑システムは、DLC摺動面において低摩擦および低摩耗を実現するのに適するのである。相対的に高濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する初期なじみ剤における粒子濃度は、好ましくは0.01~2質量%であり、相対的に低濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤における粒子濃度は、好ましくは0.001質量%以下である。
下記の摩擦試験は、例えば、機械におけるDLC摺動面を有する滑り軸受(ベアリング)を模した試験である。下記摩擦試験で測定される摺動面の摩擦係数は0.05以下(より好ましくは0.03以下)であり、且つ摩擦試験後の下記摩耗量算出方法により求めるボール摩耗体積は1.0×10-4mm3以下(より好ましくは7.0×10-5mm3以下)であることが好ましい。
摩擦試験:まず、厚さ3μmのDLC膜がなすDLC摺動面を表面に有する直径30mmおよび厚さ4mmのディスクと、厚さ3μmのDLC膜がなすDLC摺動面を表面に有する直径8mmのボールとが取り付けられた、ボールオンディスク型の滑り摩擦試験機を使用して、ディスクのDLC摺動面に対し、1mLの初期なじみ剤を滴下したうえでボールを10Nの荷重で当接させつつディスク周方向に相対的に10mm/sの速度で10m滑動させ、滑り距離0~10mの当該滑動中、ディスクおよびボールのDLC摺動面間の摩擦係数を測定する。次に、ディスクおよびボールを、滑り摩擦試験機から取り外し、超音波洗浄する。洗浄後、ボールに付着したナノダイヤモンドを除去するためにアセトンを用いてボールを拭いてもよい。次に、ディスクおよびボールが取り付けられた滑り摩擦試験機を使用して、ディスクのDLC摺動面に対し、1mLの前記潤滑剤を滴下したうえで前記ボールを10Nの荷重で当接させつつディスク周方向に相対的に10mm/sの速度で更に90m滑動させ、滑り距離10~100mの当該滑動中、前記ディスクおよび前記ボールのDLC摺動面間の摩擦係数を測定する。
摩耗量算出方法:前記摩擦試験を経た前記ボールに形成されている円形状摩耗痕を共焦点顕微鏡を使用して観察し、当該観察像から、円形状摩耗痕について一様に滑らかな平面であると仮定したうえで直径r(mm)を求める。そして、下記の式(1)および式(2)によりボール摩耗体積V(mm3)を算出する。式(1)におけるhは、前記円形状摩耗痕の球冠の高さ(mm)であり、下記式(2)より求められる。式(2)におけるRは、前記ボールの半径であって4(mm)である。
Figure 0007129068000002
DLC摺動面におけるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、主として炭化水素、あるいは、炭素の同素体から成る非晶質(アモルファス)の硬質膜である。DLCは、水素含有量の多少と、含まれる結晶質の電子軌道がダイヤモンド寄りかグラファイト寄りかによって、その性質を区別することができる。DLCとしては、例えば、アモルファス水素化カーボンであるa-C:H、アモルファスカーボンであるa-C、テトラヘドラルアモルファスカーボンであるta-C:H、および水素化テトラヘドラルアモルファスカーボンであるta-Cが挙げられる。
[ナノダイヤモンド水分散液の作製]
以下のような生成工程、精製工程、酸素酸化工程、および解砕工程を経て、ナノダイヤモンド水分散液X1(ND水分散液)を作製した。
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)を回収した。上述の生成工程を複数回行うことによってナノダイヤモンド粗生成物を得た。
次に、上記生成工程で得たナノダイヤモンド粗生成物に対して、精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85~100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、精製工程の溶液酸化処理としての混酸処理を行った。具体的には、酸処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ナノダイヤモンド凝着体を含む)に、6Lの98質量%硫酸水溶液と1Lの69質量%硝酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で48時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は、140~160℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、乾燥工程を行った。具体的には、上述の水洗処理を経て得られたナノダイヤモンド含有液1000mLを、噴霧乾燥装置(商品名「スプレードライヤー B-290」,日本ビュッヒ株式会社製)を使用して噴霧乾燥に付した。これにより、50gのナノダイヤモンド粉体を得た。
次に、ガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」,光洋サーモシステム株式会社製)を使用して酸素酸化工程を行った。具体的には、上述のようにして得られたナノダイヤモンド粉体4.5gをガス雰囲気炉の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から酸素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガス中の酸素濃度は4体積%である。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度たる400℃まで昇温させた。昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い380℃までは10℃/分とし、その後の380℃から400℃までは1℃/分とした。そして、炉内の温度条件を400℃に維持しつつ、炉内のナノダイヤモンド粉体について酸素酸化処理を行った。処理時間は3時間とした。
酸素酸化処理後、後記の方法でFT-IR分析により、ND粒子におけるカルボキシ基等の含酸素官能基の評価を行った。この分析で得られたスペクトルを図5に示す。図5より、C=O伸縮振動に帰属される1780cm-1付近に吸収P1がメインピークとして検出された。このピーク位置が1750cm-1以上になっていることで、ゼータ電位がネガティブのナノダイヤ分散液の原料になりうる。
次に、解砕工程を行った。具体的には、まず、酸素酸化工程を経たナノダイヤモンド粉体1.8gと純水28.2mLとを50mLのサンプル瓶内で混合し、スラリー約30mLを得た。次に、当該スラリーについて、1Mの水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpHを調整した後、超音波処理を施した。超音波処理においては、超音波照射器(商品名「超音波洗浄機 AS-3」,アズワン(AS ONE)社製)を使用して、当該スラリーに対して2時間の超音波照射を行った。この後、ビーズミリング装置(商品名「並列四筒式サンドグラインダー LSG-4U-2L型」,アイメックス株式会社製)を使用してビーズミリングを行った。具体的には、100mLのミル容器たるベッセル(アイメックス株式会社製)に対して超音波照射後のスラリー30mLと直径30μmのジルコニアビーズとを投入して封入し、装置を駆動させてビーズミリングを実行した。このビーズミリングにおいて、ジルコニアビーズの投入量は、ミル容器の容積に対して約33%であり、ミル容器の回転速度は2570rpmであり、ミリング時間は2時間である。次に、このような解砕工程を経たスラリーないし懸濁液について、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たナノダイヤモンド含有溶液の上清10mLを回収した。このようにして、初期なじみ剤組成物および潤滑剤の原液である、ナノダイヤモンドが純水に分散するND水分散液を得た。このND水分散液について、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度は59.1g/L、pHは9.33であった。粒径D50(メディアン径)は3.97nm、粒径D90は7.20nm、ゼータ電位は-42mVであった。
〈ナノダイヤモンド濃度〉
得られたND水分散液のナノダイヤモンド含有量(ND濃度)は、秤量した分散液3~5gの当該秤量値と、当該秤量分散液から加熱によって水分を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)について精密天秤によって秤量した値とに基づき、算出した。
〈粒径〉
得られたND水分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子の粒径(メディアン径、D50ないしD90)は、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。測定に付されたND水分散液は、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度が0.5~2.0質量%となるように超純水で希釈された後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。
〈pH〉
得られたND水分散液のpHは、pH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」、アズワン株式会社製)を使用して測定した。
〈ゼータ電位〉
得られたND水分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子のゼータ電位は、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した。測定に付されたND水分散液X1およびY1は、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度が0.2質量%となるように超純水で希釈された後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものであり、ゼータ電位測定温度は25℃である。
〈FT-IR分析〉
上述の酸素酸化処理後のナノダイヤモンド試料のそれぞれについて、FT-IR装置(商品名「Spectrum400型FT-IR」,株式会社パーキンエルマージャパン製)を使用して、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)を行った。本測定においては、測定対象たる試料を真空雰囲気下で150℃に加熱しつつ赤外吸収スペクトルを測定した。真空雰囲気下の加熱は、エス・ティ・ジャパン社製のModel-HC900型Heat ChamberとTC-100WA型Thermo Controllerとを併用して実現した。
[初期なじみ剤および潤滑剤の作製]
上記で得られたND水分散液と、超純水とを混合して濃度調整することで、ND粒子を0.1質量%含む初期なじみ剤およびND粒子を0.0001質量%含む潤滑剤を作製した。
[実施例1:摩擦試験]
摩擦試験には、ボールオンディスク型滑り摩擦試験機を用いた。直径8mmのSUJ2製のボール、および、直径30mm,厚さ4mmのSUJ2製のディスクを母材として、ボールおよびディスクの表面に東研サーモテック社のDLC膜を約3μm成膜した。試験開始時にディスク表面に上記初期なじみ剤を1mL滴下し、初期なじみ(予滑り)として、ディスク上でボールを10Nの荷重をかけながら、速度10mm/sで10m滑動させた。その後、ボールとディスクを摩擦試験機から取り外し、15分間精製水中で超音波洗浄を行った。洗浄後、アセトンでボールを拭くことにより、ボールに付着したナノダイヤモンドを除去した。その後、ボールとディスクを摩擦試験機に取り付け、上記潤滑剤を使用し、更に速度10mm/sで90m滑動させた。実施例1の摩擦試験について、滑り距離[m]を横軸、摩擦係数を縦軸としたグラフを図3に、滑り距離[m]を横軸、ボール摩耗体積(摩耗量)[mm3]を縦軸としたグラフを図4に示す。図3において、滑り距離10mに見られる摩擦係数0を下端とし、0.10付近を上端とする線は、潤滑剤を使用して滑動を再開したときのノイズであり、本試験で測定される摩擦係数には含まれないものとする。
[比較例1:摩擦試験]
上記初期なじみ剤および潤滑剤の代わりに、ナノダイヤモンド粒子を含まない水を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、摩擦試験を行った。比較例1の摩擦試験について、滑り距離[m]を横軸、摩擦係数を縦軸としたグラフを図2に、滑り距離[m]を横軸、上記の式(1)および式(2)から求められるボール摩耗体積(摩耗量)[mm3]を縦軸としたグラフを図4に示す。
比較例1の摩擦試験(図2)では、滑り距離が増すにつれて徐々に摩擦係数が上昇することが分かる。一方、初期なじみ剤および潤滑剤を使用した実施例1の摩擦試験(図3)では、滑り距離100mにおいて比較例1ほどの摩擦係数の上昇は見られず、低摩擦を維持していることが分かる。つまり、初期なじみ剤を使用することで10mという短い予滑により、早期に低摩擦面を形成することができ、潤滑剤を使用することで、その後の90mの滑動において、低摩擦面を維持することができたことが分かる。また、図4より、水のみを使用した比較例1においては、摩耗量があまり上昇せず、摩耗が抑制できるが、ND粒子を用いている実施例1でも滑り距離10~90mにおいて、比較例1と同程度に摩耗を抑制できることが分かる。
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列記する。
〔付記1〕
相対的に高濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する初期なじみ剤を使用して低摩擦化されたDLC摺動面の潤滑に、相対的に低濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤を使用する、潤滑システム。
〔付記2〕
前記初期なじみ剤のナノダイヤモンド粒子濃度は、0.01~2質量%である、付記1に記載の潤滑システム。
〔付記3〕
前記潤滑剤のナノダイヤモンド粒子濃度は、0.001質量%以下である、付記1または2に記載の潤滑システム。
〔付記4〕
下記摩擦試験で測定されるDLC摺動面の摩擦係数は0.05以下であり、且つ、下記摩擦試験後に摩耗量算出方法により求められるボール摩耗体積は1.0×10-4mm3以下である、付記1から3のいずれか一つに記載の潤滑システム(当該摩耗量算出方法は、本明細書に記載のとおりである)。
〔付記5〕
前記ナノダイヤモンド粒子の一次粒子の粒径は10nm以下である、付記1から4のいずれか一つに記載の潤滑システム
〔付記6〕
前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子の酸素酸化処理物である、付記1から5のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記7〕
前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位はネガティブである、請求項1から6のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記8〕
前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位は-60~-30mVである、付記7に記載の潤滑システム。
〔付記9〕
前記ナノダイヤモンド粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記10〕
前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子の水素還元処理物である、請求項1から5のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記11〕
前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位はポジティブである、付記1から5および10のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記12〕
前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位は30~60mVである、付記11に記載の潤滑システム。
〔付記13〕
前記ナノダイヤモンド粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1未満である、付記1から5および10から12のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記14〕
前記初期なじみ剤および前記潤滑剤における潤滑基剤は水である、付記1から13のいずれか一つに記載の潤滑システム。
〔付記15〕
濃度0.01~2質量%のナノダイヤモンド粒子を含有する初期なじみ剤と、濃度0.001質量%以下のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤とを備える、潤滑システム用液剤セット。
S1 生成工程
S2 精製工程
S3 酸素酸化工程
S3’ 水素還元処理工程
S4 解砕工程

Claims (12)

  1. 相対的に高濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する初期なじみ剤を使用して低摩擦化されたDLC摺動面の潤滑に、相対的に低濃度のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤を使用する、潤滑システム。
  2. 前記初期なじみ剤のナノダイヤモンド粒子濃度は、0.01~2質量%である、請求項1に記載の潤滑システム。
  3. 前記潤滑剤のナノダイヤモンド粒子濃度は、0.001質量%以下である、請求項1または2に記載の潤滑システム。
  4. 下記摩擦試験で測定されるDLC摺動面の摩擦係数は0.05以下であり、且つ、下記摩擦試験後に下記摩耗量算出方法により求められるボール摩耗体積は1.0×10-4mm3以下である、請求項1から3のいずれか一つに記載の潤滑システム。
    摩擦試験:まず、厚さ3μmのDLC膜がなすDLC摺動面を表面に有する直径30mmおよび厚さ4mmのディスクと、厚さ3μmのDLC膜がなすDLC摺動面を表面に有する直径8mmのボールとが取り付けられた、ボールオンディスク型の滑り摩擦試験機を使用して、前記ディスクのDLC摺動面に対し、1mLの前記初期なじみ剤を滴下したうえで前記ボールを10Nの荷重で当接させつつディスク周方向に相対的に10mm/sの速度で10m滑動させ、滑り距離0~10mの当該滑動中、前記ディスクおよび前記ボールのDLC摺動面間の摩擦係数を測定する。次に、前記ディスクおよび前記ボールを、前記滑り摩擦試験機から取り外し、超音波洗浄する。次に、洗浄後のディスクおよびボールが取り付けられた前記滑り摩擦試験機を使用して、前記ディスクのDLC摺動面に対し、1mLの前記潤滑剤を滴下したうえで前記ボールを10Nの荷重で当接させつつディスク周方向に相対的に10mm/sの速度で更に90m滑動させ、滑り距離10~100mの当該滑動中、前記ディスクおよび前記ボールのDLC摺動面間の摩擦係数を測定する。
    摩耗量算出方法:前記摩擦試験を経た前記ボールに形成されている円形状摩耗痕を共焦点顕微鏡を使用して観察し、当該観察像から、前記円形状摩耗痕について一様に滑らかな平面であると仮定したうえで直径r(mm)を求める。そして、下記の式(1)および式(2)によりボール摩耗体積V(mm3)を算出する。式(1)におけるhは、前記円形状摩耗痕の球冠の高さ(mm)であり、下記式(2)より求められる。式(2)におけるRは、前記ボールの半径であって4(mm)である。
    Figure 0007129068000003
  5. 前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子の酸素酸化処理物である、請求項1から4のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  6. 前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位はネガティブである、請求項1から5のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  7. 前記ナノダイヤモンド粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1以上である、請求項1から6のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  8. 前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子の水素還元処理物である、請求項1から4のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  9. 前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位はポジティブである、請求項1から4、および8のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  10. 前記ナノダイヤモンド粒子のFT-IRにおけるC=O伸縮振動に帰属されるピーク位置が1750cm-1未満である、請求項1から4、8および9のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  11. 前記初期なじみ剤および前記潤滑剤における潤滑基剤は水である、請求項1から10のいずれか一つに記載の潤滑システム。
  12. 濃度0.01~2質量%のナノダイヤモンド粒子を含有する初期なじみ剤と、
    濃度0.001質量%以下のナノダイヤモンド粒子を含有する潤滑剤とを備える、潤滑システム用液剤セット。
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