JP3934701B2 - 耐熱性アクリル系接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアクリル系接着剤に関し、更に詳しくは、高温下での接着強度、硬化物の耐水性、更に、耐疲労性に優れたアクリル系接着剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
反応硬化型のアクリル系接着剤の代表的なものとして、金属被着体の隙間に入り、空気が遮断されることによって硬化する嫌気性接着剤と、過酸化物と促進剤の接触によって硬化する二液型アクリル系接着剤があり、該二液型アクリル系接着剤は第二世代アクリル系接着剤(SGA)としてよく知られている。嫌気性接着剤は主としてネジの緩み止めや、ベアリングとシャフトとの固定、或いは、シール剤として使用されている。一方、二液型のアクリル系接着剤は、常温においても硬化が速く、多くの種類の材料に良く接着し、かつ油面接着性を有しており、この性能を活かして電気、機械、車両、建築材料等の分野における接着用途に広く用いられている。
【0003】
上記のアクリル系接着剤(SGA)は▲1▼アクリル系単量体、又は、メタクリル系単量体、▲2▼クロルスルホン化ポリエチレン、又は、塩化スルホニルと塩素化ポリエチレンとの混合物、▲3▼有機過酸化物からなり、アミン−アルデヒド縮合物との接触により硬化するもので米国特許第3890407号、特開昭55−65277号等に開示されている。
【0004】
しかしながらこれらの第二世代アクリル系接着剤は接着剤の耐熱性が悪く、加熱処理工程を有するような用途には使用できなかった。
例えば、パネル、ドアの製造においては、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板の補強のためにL型チャンネル、C型チャンネル、ハット型の鋼材を接着剤により裏打ちした後、一般に160〜180℃で30〜60分間焼き付け塗装する場合が多い。このような用途に従来のアクリル系接着剤を用いると、焼き付け塗装工程で接着強度が低下して接着層が剥がれたり、硬化物が熱劣化を起こすという欠点があった。
【0005】
一方、接着剤の接着性能は一般に引張剪断強度、剥離強度、及び、衝撃剥離強度で評価されている。しかしながら実用においては、接着部には連続的、或いは、断続的な振動が加わるのが常である。このような振動に対して、接着剤の硬化物は上記した諸性能では予測できない挙動を示すことがある。即ち、十分な引張剪断強度、剥離強度、及び、衝撃剥離強度を示す接着剤の硬化物が、小さな荷重の繰り返しによって短期間の内に破壊されてしまうということがある。このような意味から接着剤の硬化物に対する耐疲労性評価が非常に重要である。しかしながら、接着性の硬化物の耐疲労性に関する知見は現在のところほとんど報告されていないのが現状である。
【0006】
また、アクリル系接着剤組成物に、末端に反応性二重結合を有するゴムを利用するという技術も開示されている。例えるならば、
▲1▼末端にエチレン系不飽和基を有し常温付近で粘稠状の粘度平均分子量約1000〜約10000のオリゴマー、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを含む二液型接着剤組成物(特開昭53−41331号)。
▲2▼末端にエチレン系不飽和基を有し常温付近で粘稠状の粘度平均分子量約1000〜約10000のオリゴマー、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを含むプライマー型接着剤組成物(特開昭53−41333号)。
▲3▼官能基を有するアクリロニトリル−ポリブタジエンゴムとチオ尿素、及び/又はチオ尿素誘導体と有機酸の銅塩、及び/又は銅有機キレート化合物を使用したアクリル系接着剤(特開昭55−16018号)。
これらはいずれも、アクリル系単量体に末端に反応性二重結合を有するゴムを配合し、該ゴムの持つ弾性を利用し、接着剤組成物の硬化時の歪みを防止しようとするものであり、本発明の目的とする接着剤組成物の高温下での接着強度、耐水性、耐疲労性改良に関するものではなく、当然のことながら、これらの性能については十分なものとはいえなかった。
【0007】
更に、特公昭55−1957号にはアルキル基の炭素数が1〜3のアクリル酸アルキルモノエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜3のメタクリル酸アルキルモノエステルを主成分とし、ハイドロパーオキサイド、及び、チオアミド化合物からなるレドックス触媒系を含んで成るアクリル系二液型接着剤において、該二液型接着剤のA、B両液にアクリル酸及び/又はメタクリル酸を添加すると硬化速度が増大し、はみ出し部分の硬化もより確実となる旨の記載がある。しかしながら、同文献にはアクリル酸及び/又はメタクリル酸添加による耐熱性向上に関する記述、或いは、末端に反応性二重結合を有する液状ゴムによる耐熱性、耐疲労性向上に関する記述は見られない。
【0008】
一方、特開平1−156387号には1分子中に1個以上のアクリロイル基及び/又はメタクロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、1分子中に水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレート類、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体に可溶な石油系、石炭系及び/又はロジンエステル系の耐水性付与樹脂、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、光重合開始剤を配合してなる耐水性を有する光硬化型接着剤組成物が開示されている。しかしながらこの光硬化型接着剤は、1分子中に1個以上のアクリロイル基及び/又はメタクロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートの存在を前提としたものであり、さらに、同文献にも硬化物の耐熱性、耐疲労性の向上に関する記述は見られない。
【0009】
また本発明者らは先に上記問題を解決する耐熱性アクリル系接着剤組成物について開示を行った(出願平7−286924)。この耐熱性アクリル系接着剤組成物はヒドロキシアルキルメタクリレート、メタクリル酸、末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム、及び、有機過酸化物、更に、該有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤を必須成分として含むことを特徴とするもので180℃での使用が可能であり、更に、耐疲労性に優れるという特徴を有している。しかしながら、該接着剤は、耐水性に劣るという欠点を有しており、多湿環境における使用が難しいという問題があった。また、用途によっては更なる耐熱性が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたもので、二液型アクリル系接着剤の利点を維持しつつ、高温での使用が可能で、しかも、耐水性の改良されたアクリル系接着剤を提供することをその目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。この結果、メタクリル酸、イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含む(メタ)アクリル系モノマー、末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム、及び、有機過酸化物、更に、該有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤を所定量含む組成物により上記課題が解決できることを見い出し本発明に至ったのである。即ち本発明によれば、
(a)メタクリル酸10〜150重量部、(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマー100重量部、(c)末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム5〜60重量部、及び、(d)有機過酸化物、更に、(e)該有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤を必須成分として含むことを特徴とする耐熱性アクリル系接着剤組成物が提供され、また、より好ましくは、
(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマーが、イソボルニル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとからなることを特徴とする上記の耐熱性アクリル系接着剤組成物が提供され、また、より好ましくは、
(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマー100重量部中のイソボルニル(メタ)アクリレートが10〜100重量部であることを特徴とする上記の耐熱性アクリル系接着剤組成物が提供され、また、より好ましくは、
(c)末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムの主鎖が、ブタジエンとアクリロニトリルとのブロック共重合体よりなっていることを特徴とする前記いずれかに記載の耐熱性アクリル系接着剤組成物が提供される。
【0012】
本発明の耐熱性アクリル系接着剤組成物は、イソボルニル(メタ)アクリレートとメタクリル酸により十分な耐熱性が確保され、また、イソボルニル(メタ)アクリレートと末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムが共存することにより耐水性が引き上げられたものである。更に、硬化物の耐疲労性は末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムによって十分なレベルを維持している。これは、接着剤組成物の硬化時、末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムが(メタ)アクリル系モノマーとも共重合、或いは、架橋反応を起こし、その結果、耐熱性と耐疲労性を兼備した硬化物が与えられるのである。これらの成分のうち一成分でも除かれると本発明の目的を達成し得ない。以下、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱性アクリル系接着剤組成物の主成分としてイソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含む(メタ)アクリル系モノマーが用いられる。(メタ)アクリル系モノマー中のイソボルニルアクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられ、これらが単独で、或いは、2種以上組み合わされて用いられるが、耐熱性、及び、接着強度の観点から、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好適に用いられる。
また、接着剤組成物の硬化物の耐熱性をより向上させる目的で、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等、一分子中に複数の重合性(メタ)アクリレート基を有するモノマーを、該硬化物の耐疲労性を低下させない範囲において併用することもこれを妨げるものではない。
【0014】
一方、メタクリル酸は、接着剤組成物の高温における耐熱性を引き上げる目的で使用される。メタクリル酸の硬化物のTgは約185℃と高く、かつ、分子内のカルボキシル基が高温下での接着力確保に寄与する。その配合量は、上記(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対して10〜150重量部、より好ましくは20〜100重量部である。メタクリル酸の配合量が10重量部未満であると硬化物の耐熱性が十分でなく好ましくない。逆にその配合量が150重量部を超えても皮膚刺激性等の意味においての取り扱い上の簡便さが失われるため好ましくない。
【0015】
また、本発明において用いられる末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムは、主として、接着剤組成物が硬化して得られる硬化物に耐疲労性と耐水性とを同時に付与する目的で配合される。このような液状ゴムが配合されることにより、該液状ゴムを構成するゴム成分に起因する可撓性により、接着性組成物が硬化して得られる硬化物は接着層に加わる振動をよく吸収し、繰り返しの振動に対する抵抗性である耐疲労性が付与されるのである。
更に、該液状ゴムはその分子鎖の末端に重合性不飽和二重結合を有しているため、接着剤組成物が硬化する際、該接着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系モノマーとも共重合、或いは、架橋反応を起こし、強靱な硬化物を与えるとともに、他のゴムを等量使用した場合に比べ、硬化物の耐熱性に優れている。
【0016】
末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムのゴム成分としてはブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等が使用可能であるが、可撓性が良好な点、また、メタクリル酸を含む(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が良好な点からブタジエン−ニトリルゴムが特に好ましい。上記ゴム成分の分子鎖の両末端に重合性不飽和二重結合を導入する方法としては、例えば、ゴム成分の両末端にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させるか、又は、該カルボキシル基とヒドロキシ(メタ)アクリレートを脱水反応させる方法等が挙げられる。
末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムの配合量としては(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対して5〜60重量部が好ましく、更には10〜40重量部がより好ましい。配合量が5重量部未満であると接着剤組成物が硬化して得られる硬化物の耐疲労性が不十分で好ましくなく、逆に60重量部を超えると硬化物の耐熱性が低下し好ましくない。
【0017】
また、接着剤組成物が硬化して得られる硬化物の耐熱性と耐疲労性、更に、接着剤調製時の簡便さの観点から、末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムの分子量が1000〜20000の範囲内にあることがより好ましい。
【0018】
一方、本発明に使用される有機過酸化物の種類を特に限定するものではないが、例えるならば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシデカノエート等のパーオキシエステル類、1,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、アセト酢酸エチルパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類が使用可能である。これらの内でも、接着性の観点からハイドロパーオキサイド類が特に好ましい。その配合量は(a)メタクリル酸、(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマーの合計量100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0019】
還元剤としては、上記した有機過酸化物との間でレドックス触媒系を形成するものの中から選ばれる。例えるならば、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、モノアセチルチオ尿素、モノベンゾイルチオ尿素、ジフェニルチオ尿素、ジシクロヘキシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジルステアレート、バナジウムナフテネート、バナジウムベンゾイルアセトネート、五酸化バナジウム等のバナジウム化合物、及び、銅アセチルアセトネート、塩化銅、酢酸銅、ナフテン酸銅等の銅化合物が挙げられ、これらが単独で、或いは、二種以上組み合わされて用いられる。その配合量は(a)メタクリル酸、(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマーの合計量100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0020】
その他、本発明においては、粘度調整及び硬化物の柔軟性を向上させることを目的として、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体(MBAS樹脂)等の熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)等のゴム、揺変性を付与することを目的として微粉末ポリエチレン、ジベンジリデン−D−ソルビトール、セルローストリアセテート、ステアリン酸アミド、ベントナイト、微粉末ケイ酸等の揺変性付与剤、室温での長期保存安定性の向上を目的として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ベンゾキノン、ハイドロキノン、キンヒドロン、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、シュウ酸、N−メチル−N−ニトロソアニリン等のラジカル重合禁止剤、接着性の向上を目的として重合性酸性リン酸エステルのようなリン酸誘導体、及び着色のための染料や顔料を配合することができる。
【0021】
本発明の接着剤組成物は一般的に二液の形態で製造される。具体的な形態は、有機過酸化物と、該有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤が共存しないようにすればよく、二液を混合することにより、上述したような硬化物が得られる。また、本発明は、二液主剤型、プライマー型、及び、三液以上の形態をとることもこれを妨げるものではない。
【0022】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例によって、更に詳細に説明する。なお、これらの例において部は全て重量部を表すものとする。
また、以下の実施例、比較例において耐熱性(剥離強度により評価)、耐水性は以下の条件で測定を行った。
<耐熱性>
23℃、50%RHの条件下で、A液、B液を等量混合し、一方の冷間圧延鋼板(1.6×25×200mm)の表面に薄く塗布し、その後、もう一方の被着体(0.6×25×200mm)を擦り合わせるようにして貼り合わせて固定し、24時間養生の後、各温度の雰囲気下で、ISO 4578に準拠して剥離強度を測定する。
尚、測定中、接着剤が実質的な強度を発現せず、接着剤の粘性のみによる強度しか現れなかった場合はワニが口を開いたような剥離状態(所謂、ワニ口剥離)となる。その場合は、測定値の前に●印を付けて示す。
<耐水性>
23℃、50%RHの条件下で、A液、B液を等量混合し、一方の冷間圧延鋼板(1.6×25×100mm)の表面に薄く塗布し、その後、もう一方の被着体(1.6×25×100mm)を擦り合わせるようにして12mmのラップで貼り合わせて固定し、24時間養生後、50℃の温水に10日間浸漬した後、取り出して、23℃、50%RHの条件下における引張剪断強度を測定する。同時に50℃の熱水中に浸漬していない接着試験片の引張剪断強度を測定し、強度保持率を求めた。
<耐疲労性>
23℃、50%RHの条件下で、A液、B液を等量混合し、一方の冷間圧延鋼板(1.6×25×60mm)の表面に薄く塗布し、その後、もう一方の被着体(1.6×25×60mm)を擦り合わせるようにして10mmのラップで貼り合わせて固定し、24時間養生後、180℃で30分間焼き付け処理を行った。次いで23℃、50%RHの条件下で該試験片に島津製作所(株)製万能疲れ試験機UF−15を用いて、繰り返し荷重±15Kg、サイクル速度1800回/minの振動を与え、接着剤組成物の硬化物層の破壊か、鋼板の疲労破壊かによって破断するまでの積算振動数で評価する。尚、接着剤組成物の硬化物の破壊ではなく、鋼板の疲労破壊によって試験片が破断して試験が終了した場合(即ち、良好な耐疲労性を有していることを意味する)には、測定値の前に○印を付けて示す。
【0023】
また、以下の実施例、比較例において用いた成分は以下のとおりである。
・イソボルニルメタクリレート: ライトエステルIBX(共栄社油脂化学工 業(株)製、)
・末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム: Hycar VTBNX 1300×22(BF Goodrich Company 製、ゴム成分:ブタジエン/アクリロニトリル)
・有機過酸化物 : クメンハイドロパーオキサイド
・バナジウム化合物: バナジルアセチルアセトネート
・チオ尿素化合物: エチレンチオ尿素
・保存安定剤: p−ベンゾキノン、ハイドロキノン
・粘度調整剤: MBS樹脂(呉羽化学(株)製、BTA−751)
・粘度調整剤: 微粉末ケイ酸(富士シリシア(株)製、サイリシア550)
【0024】
[実施例1、比較例1〜3]
下記した共通組成の二液に、表1に示す成分を所定重量部加えて、A液、B液を得た。次いで、耐熱性、耐水性、耐疲労性を評価した。この結果を表1に示す。
<A液の共通組成>
・MBS樹脂 20重量部
・クメンハイドロパーオキサイド 4重量部
・p−ベンゾキノン 0.1重量部
・微粉末ケイ酸 5重量部
<B液の共通組成>
・MBS樹脂 20重量部
・バナジルアセチルアセトネート 0.2重量部
・エチレンチオ尿素 0.5重量部
・ハイドロキノン 0.2重量部
・微粉末ケイ酸 5重量部
【0025】
【表1】
【0026】
[実施例2、比較例4〜6]
下記した共通組成の二液に、表2に示す成分を所定重量部加えて、A液、B液を得た。次いで、耐熱性、耐水性、耐疲労性を評価した。この結果を表2に示す。
<A液の共通組成>
・MBS樹脂 20重量部
・クメンハイドロパーオキサイド 4重量部
・p−ベンゾキノン 0.1重量部
・微粉末ケイ酸 5重量部
<B液の共通組成>
・MBS樹脂 20重量部
・バナジルアセチルアセトネート 0.2重量部
・エチレンチオ尿素 0.5重量部
・ハイドロキノン 0.2重量部
・微粉末ケイ酸 5重量部
【0027】
【表2】
【0028】
表1、2から、本発明において開示された成分を所定量含む接着剤組成物は良好な耐熱性、耐水性、耐疲労性を示すことが明らかである。一方、本発明において開示された成分の中で特に重要な部分を占めるイソボルニル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムの3成分のうち1つでも含まれないと目的とする性能が発現しないことが明らかである。
【0029】
[実施例3〜8、比較例7]
下記した共通組成の二液に、メタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマーとしてイソボルニルメタクリレート(IBX)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEM)を表3に示す量加えて、A液、B液を得た。次いで、耐熱性、耐水性、耐疲労性を評価した。この結果を表3に併せて示す。
<A液の共通組成>
・メタクリル酸 30重量部
・MBS樹脂 20重量部
・クメンハイドロパーオキサイド 4重量部
・p−ベンゾキノン 0.1重量部
・微粉末ケイ酸 5重量部
・末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム 40重量部
<B液の共通組成>
・メタクリル酸 30重量部
・MBS樹脂 20重量部 │
・バナジルアセチルアセトネート 0.2重量部 │
・エチレンチオ尿素 0.5重量部
・ハイドロキノン 0.2重量部
・微粉末ケイ酸 5重量部
・末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム 40重量部
【0030】
【表3】
【0031】
表3より、イソボルニル(メタ)アクリレートが含まれないと硬化物の耐水性が低下することが明らかである。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、高温下での接着強度、耐水性および硬化物の耐疲労性に優れた耐熱性アクリル系接着剤組成物が提供される。本発明の耐熱性アクリル系接着剤組成物は、その特徴を活かして、例えば、パネル、ドアの製造に代表されるような高温での焼き付け塗装を伴うような用途にも使用が可能である。このように本発明の耐熱性アクリル系接着剤は、従来のアクリル系接着剤では、展開が不可能であった分野への展開が可能とされたものである。
Claims (4)
- (a)メタクリル酸10〜150重量部、(b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリレート系モノマー100重量部、(c)末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴム5〜60重量部、及び、(d)有機過酸化物、更に、(e)該有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤を必須成分として含む接着剤組成物が、前記(d)有機過酸化物と前記(e)該有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤が共存しない二液の形態にされた二液型の耐熱性アクリル系接着剤組成物であって、ISO 4578に準拠して、150℃の雰囲気下で測定した剥離強度が、10.7kgf/25mm以上であることを特徴とする耐熱性アクリル系接着剤組成物。
- (b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリレート系モノマーが、イソボルニル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとからなることを特徴とする請求項1記載の耐熱性アクリル系接着剤組成物。
- (b)イソボルニル(メタ)アクリレートを必須成分として含むメタクリル酸以外の(メタ)アクリル系モノマー100重量部中のイソボルニル(メタ)アクリレートが10〜100重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性アクリル系接着剤組成物。
- (c)末端に重合性不飽和二重結合を有する液状ゴムの主鎖が、ブタジエンとアクリロニトリルとのブロック共重合体よりなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の耐熱性アクリル系接着剤組成物。
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