JP3934322B2 - 圧電振動子及び圧電デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器体のキャビティ内に圧電振動子を収容した圧電デバイスに関し、特にオーバートーンを用いた高周波発振に適した圧電振動子及び圧電デバイスに関する。ここで、圧電振動子とは、水晶板、圧電セラミック基板、単結晶圧電基板を用いた振動子を含む。
【0002】
【従来の技術】
従来の圧電デバイスの一例である水晶発振器は、例えば、図5〜図8に示す構造を有する。
【0003】
この水晶発振器51は、セラミックパッケージ52、圧電振動子である水晶振動子53、導電性接着部材54とから主に構成されている。
【0004】
セラミックパッケージ52は、図5及び図6に示すように、水晶振動子53を搭載する基板521を有し、その表面には水晶振動子53の引き出し電極532,534と対向するように電極パッド523,523が形成されている。この電極パッド523,523の略中央には、接続支持用バンプ55が形成されている。
【0005】
このバンプ55が形成された電極パッド523,523上に導電性接着部材54が硬化する前の導電性樹脂ぺーストを塗布し、水晶振動子53を、固定端側が接続支持用バンプ55に載置するように配置した後、この導電性樹脂ぺーストを硬化させることにより、水晶振動子53を基板521に電気的に接続すると共に機械的に接合している。
【0006】
尚、セラミックパッケージ52は、アルミナ等のセラミック絶縁板を積層したものであり、内部に水晶振動子53を収容するキャビティ部520が形成されている。このキャビティ部520の底面となる基板が、水晶振動子53を実装する基板521となる。
【0007】
このセラミックパッケージ52の下面には、図6に示すように、電極パッド523,523と接続する外部端子電極526が形成されている。さらに、セラミックパッケージ52のキャビティ部520の開口周囲には、金属製蓋体56をシーム溶接にて接続するためのシールリング525が配設されている。そして、水晶振動子53をキャビティ520に収容配置した後、水晶振動子53の発振周波数を測定しながら、AuやAgによって形成された励振電極533にAgなどを蒸着により付着させたり、イオンガンなどによりArなどの不活性ガスを励振電極533に打ち付け励振電極533の表面を削る手法を用い、励振電極533の質量の増減を行うことにより、発振周波数を合わせ込む工程を経た後、水晶振動子53を気密的に封止すべく、セラミックパッケージ52上に金属製蓋体56が被着されている。
【0008】
より詳しくは、水晶振動子53は、図8(a)に示すように、矩形状の水晶基板530の両主面に励振電極531,533が被着されていると共に、水晶基板530の一方の短辺側に、各励振電極531,533から延出する引き出し電極532,534が被着されている。また、水晶振動子53の表裏の各電極が対称になるように形成されており、引き出し電極534は、図8(b)に示すように、水晶基板530の上面の励振電極533から延出する電極534a,534bが側面電極534cを介して下面の電極534dに導通するように形成されている。また、引き出し電極532は、図8(c)に示すように、水晶基板530の下面の励振電極531から延出する電極532a,532bが側面電極532cを介して上面の電極532dに導通するように形成されている。尚、この水晶基板530の一方の短辺側を固定端といい、他方の短辺側を自由端という。
【0009】
上記した従来の水晶振動子53では、硬化して導電性接着部材となる導電性樹脂ぺーストを電極パッド523,523上に塗布し、その上部に水晶振動子53の下面の引き出し電極532b,534dが当接するように水晶振動子53を載置し、導電性樹脂ぺーストをバンプ55の上部にのるように流し込ませて、水晶振動子53の短辺側両端面やその近傍の長辺側両端面にも導電性樹脂ぺーストを付着させ、水晶振動子53と電極パッド523,523との接着を確実なものにしていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような方法では、水晶振動子53の短辺側両端面やその近傍の長辺側両端面に沿って導電性樹脂ぺーストがはい上がり、水晶基板30の上側主面の位置までくるか、その近くまではい上がり、導電性樹脂ぺーストが硬化するまでの間に、導電性樹脂ぺーストに含まれる低分子成分35が、図7に示すように水晶振動子53の上面側の引き出し電極534a,534bから励振電極533へ流れ出してしまい、その後導電性樹脂ぺーストを乾燥する工程において、低分子成分35も励振電極533上に固着してしまう。
【0011】
このように低分子成分35が励振電極533上に固着した状態では、その後の周波数調整工程で、イオンガンなどを用い、Arガスなどの不活性ガスを励振電極533に打ち付けることにより、励振電極533の質量を減少させ、発振周波数の調整を行う際に、励振電極533の表面の低分子成分35が固着した領域S1は、固着した低分子成分35が質量を減少させる励振電極533のAuやAgを削ることを防いでしまう。その結果、固着した低分子成分35も励振電極533上の引き出し電極534a寄りに残り、そのほかの領域S2の励振電極533だけが削られるということになり、励振電極533全体における質量の減少の仕方に偏りが生じていた。
【0012】
このように、偏って励振電極33の面が削られた状態の水晶振動子53を発振器に使用した場合、従来のように基本波を用いて発振させる13MHz〜28MHzの周波数帯で使用する比較的低周波の発振器では、電気特性面であまり影響しないことが確認されていたが、3倍波などのオーバートーン発振を用いて、さらに高周波である100MHz以上の発振器として使用した場合、振動の閉じ込め率が良いため、不要なスプリアスを発生させるばかりでなく、主振動や3倍波等のオーバートーン発振が劣化し、共振抵抗値であるCI(クリスタルインピーダンス)値を増大させてしまい、場合によっては発振停止などの問題を発生させるおそれがあった。
【0013】
本発明は、こうした従来技術の課題を解決するものであり、容器体のキャビティ内に圧電振動子を収容し、圧電振動子の励振電極と容器体の電極パッドとを接続固定する際に、圧電振動子の上側の励振電極表面に硬化前の導電性樹脂ぺーストの低分子成分が流れ出して励振電極に固着することを防ぐことができ、安定して良好な高周波発振を行うことができる圧電振動子及び圧電デバイスを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電振動子は、矩形状の圧電基板の両主面に形成された励振電極と、該励振電極と電気的に接続され、前記圧電基板の一方短辺側の下側主面に、前記圧電基板の幅方向に分離して形成された引き出し電極と、を備えた圧電振動子であって、前記圧電基板の上側主面に前記一方短辺と離間して形成され、且つ前記励振電極に接続される主面導出路と、前記圧電基板の下側主面に形成され、且つ前記引き出し電極に接続される他主面導出路と、前記圧電基板の長辺側側面のみに形成され、且つ前記主面導出路及び前記他主面導出路に接続される側面導出路と、を備え、前記側面導出路と前記主面導出路との接続部と、前記側面導出路と前記他主面導出路との接続部とは、前記圧電基板を平面視したときに前記圧電基板の長手方向にずれた位置にあることを特徴とする構成である。
【0015】
また、本発明の圧電振動子は、矩形状の圧電基板の両主面に形成された励振電極と、該励振電極と電気的に接続され、前記圧電基板の一方短辺側の下側主面に、前記圧電基板の幅方向に分離して形成された引き出し電極と、を備えた圧電振動子であって、前記圧電基板の上側主面に前記一方短辺と離間して形成され、且つ前記励振電極に接続される主面導出路と、前記圧電基板の長辺側側面のみに形成され、且つ前記主面導出路及び前記引き出し電極に接続される側面導出路と、を備え、前記側面導出路と前記主面導出路との接続部と、前記側面導出路と前記引き出し電極との接続部とは、前記圧電基板を平面視したときに前記圧電基板の長手方向にずれた位置にあることを特徴とする構成である。
【0016】
上記構成によれば、圧電基板の上側主面の励振電極から導出される主面導出路は圧電基板の一方短辺と離間して形成されており、さらに、前記側面導出路と前記主面導出路との接続部と、前記側面導出路と前記他主面導出路または前記引き出し電極との接続部とは、前記圧電基板を平面視したときに前記圧電基板の長手方向にずれた位置にあるため、圧電デバイスの容器体に圧電振動子を固定する工程において硬化前の導電性樹脂ペーストが圧電基板の上面に付着しても、その低分子成分が圧電基板の側面を流れるだけで、圧電振動子の上面の励振電極に流れ出すことがなくなる。
【0017】
これにより、周波数調整工程において、圧電基板の上側主面の励振電極に導電性樹脂ペーストの低分子成分で固着されることに起因して発生していた圧電振動子のCI(クリスタルインピーダス)値などの電気特性が低下するのを防ぐことが可能となる。その結果、オーバートーン発振を用いた安定して良好な高周波発振を行うことが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。尚、ここで説明するオーバートーン発振を用いた高周波発振用の圧電デバイスは、例えば水晶振動子を用いた水晶発振器に使用される。
【0019】
図1〜図3は、本発明による水晶振動子3を用いた圧電デバイス1の構成例を示す。ここで、図1は圧電デバイス1を蓋体を省略して示す上視図であり、図2はその断面図である。
【0020】
この圧電デバイス1は、主に、基板21を有する容器体であるセラミックパッケージ2、水晶振動子3、導電性接着部材4及び蓋体6とから構成されている。セラミックパッケージ2は、略矩形状の単板セラミック基板21と、セラミック基板21の周囲にリング状基板22を積層して、その表面に載置されたシールリング25とから構成されている。尚、このシールリング25は、封止用導体膜24を介してろう付け固定されている。そして、このセラミックパッケージ2は、上方が開口した略矩形状のキャビティ部20が形成されていて、そこに水晶振動子3が収容されるようになっている。さらにキャビティ部20の底面、即ち基板21の上面における一方の短辺側には、略矩形状の一対の電極パッド23,23が容器体2の短辺の幅方向に並ぶように夫々形成されている。
【0021】
より詳しくは、シールリング25は、Fe−Ni,Fe−Ni−Coなどの金属からなり、基板21の周囲にリング状基板22を積層して、その表面に形成された封止用導体膜24上にろう付けなどにより形成され、これにより、キャビティ部20の厚さを規定している。
【0022】
また、セラミックパッケージ2の底面には、電極パッド23,23と電気的に接続し、外部プリント配線基板(図示せず)と接合するための外部端子電極26が形成されている。この電極パッド23,23と外部端子電極26とは、セラミックパッケージ2の一部を貫くビアホール導体によって接続されている。尚、電極パッド23,23と外部端子電極26の形成位置とが対応しない場合には、キャビティ部20の底面に所定形状の配線導体を形成すれば、ビアホール導体によって簡単に接続することができる。また、基板21を例えば2層に積層して、その層間に内部配線を形成する構成としてもよく、この場合には、内部配線の一端がビアホール導体を介して電極パッド23,23に接続され、内部配線の他端が外部端子電極26に接続される。
【0023】
また、電極パッド23,23の表面には、キャビティ部20の中央部寄りに帯状のバンプ5が形成されている。このバンプ5は、導電性金属ぺーストの焼き付け、導電性樹脂ぺーストの印刷、硬化により形成される。尚、ここでは、帯状のバンプ5を1つの電極パッド23,23の幅方向の全幅に渡って形成する例を示したが、バンプの形状は適宜変更してもよく、例えばドット状に形成してもよい。
【0024】
電極パッド23、封止用導体膜24及びバンプ5は、モリブデン、タングステンなどの金属から構成される。これらの導体(電極パッド23、導体膜24、バンプ部材5)は、基板21の表面に導電性樹脂ぺーストの焼き付けにより形成した後、その表面にNi,Auメッキ処理を施して形成される。
【0025】
例えば、導電性金属ぺーストの焼き付けによりバンプ5を形成する場合、電極パッド23,23の下地導体となる導体を導電性金属ぺーストにより印刷形成し、乾燥後に、その表面に導電性金属のぺーストを用いてバンプ5の形状に応じて印刷形成し、その後、両者を焼成処理することにより形成される。
【0026】
これらの導体(電極パッド23、導体膜24、バンプ5)の厚さは、約10μm〜30μmであり、これにより、基板21の表面からバンプ5の頂点まで高さは、20μm〜40μmの高さとなる。
【0027】
水晶振動子3は、例えば、図3に示すように、所定結晶方位角に従ってカット(ATカット)された略矩形状の水晶基板30の両主面に励振電極31,33が形成され、一方の短辺側の少なくとも下面に励振電極31,33と接続し、幅方向に分離した一対の引き出し電極32,34が形成されている。
【0028】
この水晶振動子3の上面の励振電極31から導出された引き出し電極34は、図3(b)に示すように、水晶基板30の上面の励振電極33から延出する導出路34aが、その引き出し電極34の少なくとも励振電極31側の端部から励振電極33が形成された水晶基板30の位置までの水晶基板30の側面に引き出され、そこから水晶振基板30の側面の導出路34bを介して、下面の導出路34c、引き出し電極部34dに導通するように形成されている。
【0029】
また、引き出し電極32は、図3(c)に示すように、水晶基板30の下面の励振電極31から延出する導出路32a,引き出し電極部32bが下面のみに形成されている。そして、この引き出し電極32,34の電極34d,32bの形状は、水晶振動子3が所定位置に配置された時、電極パッド23,23に対応する形状となっている。
【0030】
このような励振電極31,33及び引き出し電極32,34は、水晶基板30の上面、側面及び下面に、所定形状のマスクを配置して、蒸着やスパッタ等の手段を用いてAu,Ag,Crなどの蒸着などにより形成されている。
【0031】
セラミックパッケージ2と水晶振動子3との電気的な接続及び機械的な接合は、シリコン系、エポキシ系、ポリイミド系などの樹脂にAg粉末などを添加した導電性樹脂ぺーストを硬化させて接着する導電性接着部材4によって行う。
【0032】
具体的には、基板21表面の電極パッド23,23上に、導電性樹脂ペーストをディスペンサー等により供給し、電極パッド23,23上に半球状に盛り上がった導電性樹脂ペースト上に、水晶振動子3の一方短辺側の下面に延出された引き出し電極32,34が当接するように、水晶振動子3を載置し、導電性樹脂ペーストを硬化させる。これにより、水晶振動子3の一対の励振電極31,33は、電極パッド23,23を介してセラミックパッケージ2の外面の外部端子電極26に導通することになる。
【0033】
金属製蓋体6は、平板状の金属、例えばFe−Ni合金(42アロイ)やF−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような金属製蓋体6は、水晶振動子3の収容するキャビティ20を、窒素ガスや真空などで気密的に封止する。具体的には、所定雰囲気で、金属製蓋体6をセラミックパッケージ2のシールリング25上に載置して、シールリング25の表面の金属と金属製蓋体6の金属の一部とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行う。尚、この溶接を確実に行うために、金属製蓋体6の接合面側に、Agろう層などを予め形成しておくとよい。また、溶接によって溶融したろう材が、金属製蓋体6の表面側に回り込み、接合に寄与するろう材が減少しないように、金属製蓋体6の表面側に、Niメッキ層を形成しておいてもよい。
【0034】
上述した圧電デバイス1は、以下に示す製造工程を経て作製される。
【0035】
まず、略矩形状の水晶基板30を準備する。次に、水晶基板30の両主面に励振電極31,33を形成し、引き出し電極32,34を形成し、水晶振動子3とする。また、セラミックパッケージ2の底面となる基板21の表面に一対の電極パッド23,23が形成されると共に、キャビティ20の開口周囲の表面に封止用導体膜24、シールリング25が形成されたセラミックパッケージ2、及び金属製蓋体6を用意する。
【0036】
次に、電極パッド23,23に導電性樹脂ペーストをディスペンサーなどで供給し塗布する。この時、供給された導電性樹脂ペーストは、略半球状に全体が盛り上がった形状となる。
【0037】
次に、水晶振動子3を略半球状に盛り上がった形状をなす導電性樹脂ペーストに載置する。具体的には、導電性樹脂ペーストを供給した部分に、一対の引き出し電極32,34が当接するように水晶振動子3を載置する。
【0038】
次に、導電性樹脂ペーストを加熱硬化させ、セラミックパッケージ2と水晶振動子3とを接合固定する。
【0039】
次に、外部端子電極26などを用いて水晶振動子3の発振周波数を測定し、必要に応じて、水晶振動子3の上面側励振電極31の表面に、イオンガンなどを用いArなどの不活性ガスを励振電極31に打ち付けて、励振電極31を削り、励振電極31の質量を減らすことによって、周波数を調整する。
【0040】
その後、所定雰囲気中で、水晶振動子3が接合固定されたセラミックパッケージ2のシールリング25に金属製蓋体6を載置し、両者をシーム溶接にて封止する。これによって、圧電デバイス1が完成する。
【0041】
尚、上記水晶振動子3は、図4に示す別の形態とすることもできる。
【0042】
この水晶振動子3’は、上面の励振電極31から導出された引き出し電極34’は、図4(b)に示すように、水晶基板30の上面の励振電極33から延出する導出路34a’が、その引き出し電極34’の少なくとも励振電極31側の端部から励振電極33が形成された水晶基板30の位置までの水晶基板30の側面に引き出され、そこから水晶基板30の側面に長く形成された導出路34b’を介して下面の引き出し電電極部34c’に導通するように形成されている。また、引き出し電極32’は、図4(c)に示すように、水晶基板30の下面の励振電極31から延出する導出路32a’が、その引き出し電極32’の少なくとも励振電極31側の端部から励振電極33が形成された水晶基板30の位置までの水晶基板30の側面に引き出され、そこから水晶基板30の側面に長く形成された導出路32b’を介して下面の引き出し電極部32c’に導通するように形成されている。そして、この引き出し電極32’,34’の導出路34c’,32c’の形状は、水晶振動子3’が所定位置に配置された時、電極パッド23,23に対応する形状となっている。
【0043】
上述した圧電デバイス1は、図1に示すように、導電性樹脂ペーストをバンプ5にかかるように、予め、水晶振動子3(又は3’)の内側寄りに塗布し、その上部に水晶振動子3(又は3’)の下面の引き出し電極32,34が当接するように水晶振動子3(又は3’)を載置する。
【0044】
この水晶振動子3(又は3’)は、上面に引き出し電極32が形成されていないので、導電性樹脂ペーストが硬化するまでに、水晶振動子3(又は3’)上面にて導電性樹脂ペーストに含まれる低分子成分が引き出し電極32から励振電極31に流れ出すことを防ぐことができる。その結果、その後の周波数調整工程で、Arなどの不活性ガスを打ち付けて、励振電極31を削り、質量を減らすことにより、周波数を調整する際に、励振電極31に導電性樹脂ペーストの低分子成分が流れ込んでいないので、励振電極31全体が均一に削られる。
【0045】
これにより、励振電極31が導電性樹脂ペーストの低分子成分で固着されることに起因して周波数調整工程で発生していた水晶振動子3(又は3’)のCI値などの電気特性が低下するのを防ぐことができるので、上記水晶振動子3(又は3’)を用いた圧電デバイス1を使用すればオーバートーンを用いた安定して良好な高周波発振を行うことができる。
【0046】
尚、周波数が106.25MHz(3倍波)で、長さ3.5mm、幅2.0mmである本発明による水晶振動子3(又は3’)にて、CI値などの電気特性や耐落下などの信頼性確認を行ったが、電気特性、強度面とも悪化することなく、従来と同等以上の結果が得られた。
【0047】
また、水晶振動子3’は、その下面及び側面の両方に形成された引き出し電極32’,34’で導電性樹脂ペーストを介して容器体2の電極パッド23,23に接続されるため、水晶振動子3’を容器体2に更に強固に固定することができる。
【0048】
以上、本発明の圧電振動子及び圧電デバイスは、上記した各実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、必要に応じ適宜構成を変形、追加又は削除した構成としてもよいことは言うまでもない。
【0049】
例えば、上記では、3倍波で106.25MHzの水晶振動子を使用する圧電デバイスの例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、オーバートーンを用いる100MHz以上の高周波の圧電振動子を使用する圧電デバイスであれば、同様に本発明を適用することができる。例えば、100MHz以上の106.25MHz以外の周波数で、5倍波や7倍波といった高次のオーバートーンを用いる高周波の圧電振動子を使用する圧電デバイスにも本発明を適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、圧電基板の上側主面の励振電極から導出される主面導出路は圧電基板の一方短辺と離間して形成されており、さらに、前記側面導出路と前記主面導出路との接続部と、前記側面導出路と前記他主面導出路または前記引き出し電極との接続部とは、前記圧電基板を平面視したときに前記圧電基板の長手方向にずれた位置にあるため、圧電デバイスの容器体に圧電振動子を固定する工程において硬化前の導電性樹脂ペーストが圧電基板の上面に付着しても、その低分子成分が圧電基板の側面を流れるだけで、圧電振動子の上面の励振電極に流れ出すことがなくなる。
【0051】
これにより、周波数調整工程において、圧電基板の上側主面の励振電極に導電性樹脂ぺーストの低分子成分で固着されることに起因して発生していた圧電振動子のCI(クリスタルインピーダス)値などの電気特性が低下するのを防ぐことが可能となる。その結果、オーバートーン発振を用いた安定して良好な高周波発振を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による圧電デバイスの構成例を、蓋体を省略して表す上視図である。
【図2】 本発明による圧電デバイスの構成例を示す断面図である。
【図3】 本発明による圧電振動子の構成例を示す図であって、(a)は斜視図を、(b)は上視図を、(c)は下視図をそれぞれ表す。
【図4】 本発明による圧電振動子の他の構成例を示す図であって、(a)は斜視図を、(b)は上視図を、(c)は下視図をそれぞれ表す。
【図5】 従来の圧電デバイスの構成例を、蓋体を省略して表す上視図である。
【図6】 従来の圧電デバイスの構成例を示す断面図である。
【図7】 従来の圧電デバイスにおいて、圧電振動子の励振電極に導電性樹脂ペーストの低分子成分が付着した状態を、蓋体を省略して表す上視図である。
【図8】 従来の圧電振動子の構成例を示す図であって、(a)は斜視図を、(b)は上視図を、(c)は下視図をそれぞれ表す。
【符号の説明】
1 圧電デバイス
2 セラミックパッケージ(容器体)
3、3’ 水晶振動子(圧電振動子)
4 導電性接着部材
20 キャビティ
23 電極パッド
30 圧電基板
31,33 励振電極
32,32’,34,34’ 引き出し電極
32a,32a’,32b’,34a,34a’,34b,34b’ 導出路
32b,34d,32c’,34c’ 引き出し電極部
35 低分子成分
Claims (5)
- 矩形状の圧電基板の両主面に形成された励振電極と、該励振電極と電気的に接続され、前記圧電基板の一方短辺側の下側主面に、前記圧電基板の幅方向に分離して形成された引き出し電極と、を備えた圧電振動子であって、
前記圧電基板の上側主面に前記一方短辺と離間して形成され、且つ前記励振電極に接続される主面導出路と、前記圧電基板の下側主面に形成され、且つ前記引き出し電極に接続される他主面導出路と、前記圧電基板の長辺側側面のみに形成され、且つ前記主面導出路及び前記他主面導出路に接続される側面導出路と、を備え、
前記側面導出路と前記主面導出路との接続部と、前記側面導出路と前記他主面導出路との接続部とは、前記圧電基板を平面視したときに前記圧電基板の長手方向にずれた位置にあることを特徴とする圧電振動子。 - 矩形状の圧電基板の両主面に形成された励振電極と、該励振電極と電気的に接続され、前記圧電基板の一方短辺側の下側主面に、前記圧電基板の幅方向に分離して形成された引き出し電極と、を備えた圧電振動子であって、
前記圧電基板の上側主面に前記一方短辺と離間して形成され、且つ前記励振電極に接続される主面導出路と、前記圧電基板の長辺側側面のみに形成され、且つ前記主面導出路及び前記引き出し電極に接続される側面導出路と、を備え、
前記側面導出路と前記主面導出路との接続部と、前記側面導出路と前記引き出し電極との接続部とは、前記圧電基板を平面視したときに前記圧電基板の長手方向にずれた位置にあることを特徴とする圧電振動子。 - 前記側面導出路は、前記圧電基板の短辺側側面より離間して配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電振動子。
- 前記主面導出路は、前記励振電力の前記一方短辺側の端部から前記圧電基板の幅方向に延出して設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電振動子。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電振動子と、
矩形状のキャビティを有し、該キャビティの底面における一方短辺側に一対の電極パッドを設けた容器体とを備え、
前記圧電振動子は前記容器体のキャビティ内に収容されると共に、該圧電振動子の前記各引き出し電極が導電性接着部材を介して前記容器体の各電極パッドに接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
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