以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、第1実施例における液封入式防振装置100の断面図である。
この液封入式防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレームへ伝達させないようにするための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付け金具1と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付け金具2と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを備えている。
第1取付け金具1は、アルミニウムなどの金属材料から略円柱状に形成され、図1に示すように、その上端面には、めねじ部1aが凹設されている。また、第1取付け部1の外周部には、略フランジ状の突出部が形成されており、この突出部がスタビライザー金具と当接することで、大変位時のストッパ作用が得られるように構成されている。
第2取付け金具2は、防振基体3が加硫成形される筒状金具4と、その筒状金具4の下方に取着される底金具5とを備えて構成されている。筒状金具4は上広がりの開口を有する筒状に、底金具5は傾斜した底部を有するカップ状に、それぞれ鉄鋼材料などから形成されている。なお、底金具5の底部には、取付けボルト6が突設されている。
防振基体3は、ゴム状弾性体から円錐台形状に形成され、第1取付け金具1の下面側と筒状金具4の上端開口部との間に加硫接着されている。また、防振基体3の下端部には、筒状金具4の内周面を覆うゴム膜7が連なっており、このゴム膜7には、後述するオリフィス部材16のオリフィス形成壁22(図2参照)が密着して、オリフィス25が形成される。
ダイヤフラム9は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成さえるものであり、図1に示すように、第2取付け金具2(筒状金具4と底金具5との間)に取着されている。その結果、このダイヤフラム9と防振基体3の下面との間には、液体封入室8が形成されている。
この液体封入室8には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。また、液体封入室8は、後述する仕切り体12によって、防振基体3側の第1液室11Aと、ダイヤフラム9側の第2液室11Bとの2室に仕切られている。
なお、ダイヤフラム9は、図1に示すように、上面視ドーナツ状の取付け板10が筒状金具4と底金具5との間でかしめ固定されることで、第2取付け金具2に取着されている。また、仕切り体12は、ダイヤフラム9の外周部と防振基体3の段部57とをそれぞれ圧縮変形させた状態に挿入され、それらダイヤフラム9(外周部)及び防振基体3(段部57)の弾性復元力により液体封入室8内に挟持固定されている。
仕切り体12は、ゴム膜から円盤状に構成される弾性仕切り膜15と、この弾性仕切り膜15を内周面側に収容すると共に変位規制リブ17で受け止めるオリフィス部材16と、このオリフィス部材16の下側(図1下側)開口から内嵌される格子円盤状の仕切板部材18とを備えて構成されている。
また、オリフィス部材16の外周面と第2取付け金具2の内周面を覆うゴム膜7との間には、図1に示すように、オリフィス25が形成されている。このオリフィス25は、第1液室11Aと第2液室11Bとを連通させ、これら両液室11A,11B間で液体を流動させるためのオリフィス流路であり、オリフィス部材16の軸芯O周りに略1周して形成されている。
なお、弾性仕切り膜15は、その外周部の全周がオリフィス金具16と仕切板部材18との間で隙間無く挟持されている。よって、液封入室8内の液体が後述する開口部54を介して第1及び第2液室11A,11Bでリーク(漏出)することはなく、液体封入室8内の液体は、オリフィス125を介してのみ第1液室11Aと第2液室11Bとの間で流通する。
次いで、図2及び図3を参照して、仕切り体12を構成するオリフィス部材16について説明する。図2(a)はオリフィス部材16の上面図であり、図2(b)はオリフィス部材16の側面図である。また、図3は、図2(a)のIII−III線におけるオリフィス部材16の断面図である。
オリフィス部材16は、図2及び図3に示すように、アルミニウムなどの金属材料から軸芯Oを有する略円筒状に形成されている。オリフィス部材16の軸方向上下端には、略フランジ状のオリフィス形成壁22がそれぞれ突設されており、それら各オリフィス形成壁22の対向面間にオリフィス流路R1が形成されている。
なお、上述したように、各オリフィス形成壁22は、筒状金具4の内周を覆うゴム膜7に密着することで、断面略矩形状のオリフィス25を形成する(図1参照)。
また、上下のオリフィス形成壁22には、図2及び図3に示すように、それぞれ切欠き55,58が切欠されており、オリフィス流路R1の一端は、切欠き55を介して第1液室11Aに連通する一方(図1参照)、オリフィス流路R2の他端は切欠き58を介して第2液室11Bに連通する。
オリフィス部材16の内周側には、図2及び図3に示すように、複数(本実施例では4個)の開口部54が開口され、それら各開口部54の周縁に沿って複数本(本実施例では4本)の変位規制リブ17が設けられている。
開口部54は、液封入室8内の液圧変動を弾性仕切り膜15へ伝達すると共に、その液圧変動により変位する弾性仕切り膜15との衝突を回避するための逃げ部として設けられた開口であり、円を4等分した形状に開口されている。
変位規制リブ17は、弾性仕切り膜15の後述する変位規制突起51(図5参照)に当接して、弾性仕切り膜15を拘束するためのリブであり、図2に示すように、オリフィス部材16の軸芯Oに対して放射直線状に形成されている。
なお、各変位規制リブ17は、周方向略等間隔(90度間隔)に配置され、図2に示すように、全体として上面視略十字形に配置されている。また、各変位規制リブ17のリブ幅およびリブ厚みはそれぞれ略同一である。
次いで、図4を参照して、仕切り体12を構成する仕切板部材18について説明する。図4(a)は仕切板部材18の上面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における仕切板部材18の断面図である。
仕切板部材18は、上述したオリフィス部材16と共に弾性仕切り膜15を挟持して、その弾性仕切り膜15の変位を規制するための部材であり、図4に示すように、軸芯Pを有する円盤状に形成されている。
仕切板部材18の内周側には、図4に示すように、複数(本実施例では4個)の開口部56が開口され、それら各開口部56の周縁に沿って複数本(本実施例では4本)の変位規制リブ19が設けられている。
開口部56は、上述した開口部54(図2参照)と同様に、液封入室8内の液圧変動を弾性仕切り膜15へ伝達すると共に、その液圧変動により変位する弾性仕切り膜15との衝突を回避するための逃げ部として設けられた開口である。
また、変位規制リブ19は、上述した変位規制リブ17(図2参照)と同様に、弾性仕切り膜15の後述する変位規制突起51(図5参照)に当接して、弾性仕切り膜15を拘束するためのリブである。
これら開口部56及び変位規制リブ19は、上述したオリフィス部材16の開口部54及び変位規制リブ17と同一のパターン(位置、大きさ、範囲など)で構成されるものであるので、その説明は省略する。
仕切板部材18は、オリフィス部材16の下方開口から挿入され、そのオリフィス部材16の内周に内嵌される(図1参照)。この場合、仕切板部材18は、その変位規制リブ19位置をオリフィス部材16の変位規制リブ17位置と一致させるべく、周方向の位置合わせをした上で内嵌される。また、オリフィス部材16に対する仕切板部材18の深さ方向の位置決めは、オリフィス部材16の内周側に形成された段部(図3参照)に仕切板部材18の上端部を係合させることにより行われる。
次いで、図5及び図6を参照して、弾性仕切り膜15について説明する。図5(a),(b)及び(c)は、それぞれ弾性仕切り膜15の上面図、側面図および下面図である。また、図6(a)は、図5(a)のVIa−VIa線における弾性仕切り膜15の断面図であり、図6(b)は、図5(a)のVIb−VIb線における弾性仕切り膜15の断面図である。
弾性仕切り膜15は、ゴム状弾性体から略円盤状に構成されるゴム膜であり、上述したように、仕切り体12内に収容され、第1及び第2液室11A,11B間の液圧差を緩和する作用を奏するものである。この弾性仕切り膜15の上下両面には、図5及び図6に示すように、変位規制突起51及び補助突起52がそれぞれ突設されている。
変位規制突起51は、オリフィス部材16及び仕切板部材18の変位規制リブ17,19に当接されるリブ状突起であり、各変位規制リブ17,19に対応する位置に配置されている。具体的には、各変位規制突起51は、図5に示すように、弾性仕切り膜15の軸芯Qに対して複数本(本実施例では4本)が放射直線状に配置されている。
各変位規制突起51は、図5に示すように、周方向略等間隔(90度間隔)に配置され、全体として上面視略十字形に配置されることにより、変位規制リブ17,19の配置に対応されている。
なお、各変位規制突起51の配置は、弾性仕切り膜15の上下両面において対称であり、かつ、各変位規制突起51の突起幅および突起高さもそれぞれ略同一である。
また、各変位規制突起51の突起高さは、図6に示すように、弾性仕切り膜15の外周部と略同一の高さとされている。よって、仕切り体12の組み立て状態においては(図7参照)、各変位規制突起51の頂部が変位規制リブ17,19に若干圧縮された状態で当接される。
よって、変位規制突起51と変位規制リブ17,19との間には隙間が生じず、大振幅の入力に伴って弾性仕切り膜15が変位しても、変位規制突起51の頂部が変位規制リブ17,19へ衝突することがない。その結果、変位規制突起51と変位規制リブ17,19の衝突に起因する異音の発生を回避でき、その分、異音のより一層の低減を図ることができる。
補助突起52は、弾性仕切り膜15に膜破れ等の破損が生じることを防止するためのリブ状突起であり、図5及び図6に示すように、弾性仕切り膜15の軸芯Qに対して放射状の部位と環状の部位とが組み合わされて形成されている。各補助突起52の突起高さ及び突起幅は、それぞれ同一である。
なお、補助突起52は、図6に示すように、変位規制突起51よりも突起幅が狭く、かつ、突起高さが低くなるように設定されているので、弾性仕切り膜15全体としての剛性が上昇することを抑制して、小振幅入力時の低動ばね特性を維持することができる。
次いで、図7を参照して、仕切り体12の組み立て状態について説明する。図7(a)は、仕切り体12の上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における仕切り体12の断面図である。
仕切り体12の組み立て状態においては、図7(a)に示す軸方向視において、オリフィス部材16の変位規制リブ17位置と、仕切板部材18の変位規制リブ19位置とが周方向で一致し、かつ、弾性仕切り膜15は、その変位規制突起51位置が変位規制リブ17,19位置と周方向で一致するように、即ち、変位規制突起51の頂部が変位規制リブ17,19に当接した状態で、仕切り体12内に収容されている。
その結果、本発明の液封入式防振装置100によれば、小振幅入力時には、従来の弾性膜構造と同様に、第1及び第2液室11A,11B間の液圧差を弾性仕切り膜15が有効に緩和して、動ばね値の低減を図ることができる。一方、大振幅入力時には、図7に示すように、弾性仕切り膜15の変位を変位規制リブ17,19が規制して、弾性仕切り膜15全体としての剛性を上昇させることができ、その分、減衰特性の向上を図ることができる。
そして、この大振幅入力時には、弾性仕切り膜15の非変位規制部(変位規制リブ17,18により拘束されない部位)が大きく変位するところ、オリフィス部材16及び仕切板部材18は、図7に示すように、変位規制リブ17,19の残部が開口部54,56とされていているので、弾性仕切り膜15の非変位規制部がオリフィス部材16又は仕切板部材18に当接することを回避することができる。その結果、低振幅入力時の低動ばね特性と高振幅入力時の高減衰特性との両立を図りつつ、異音の大幅な低減を図ることができる。
更に、本発明の液封入式防振装置100によれば、上述したように、変位規制リブ17,19に対応する位置に弾性仕切り膜15の変位規制突起51を配置したので、大振幅の入力に伴って弾性仕切り膜15が変位する場合には、変位規制リブ17,19によって変位が規制された変位規制突起51を圧縮方向へ撓ませて、その分、弾性仕切り膜15全体としての剛性をより上昇させることができる。その結果、大振幅入力時の減衰特性をより向上することができる。
ここで、小振幅入力時の低動ばね特性を得るためには、弾性仕切り膜15の硬度を低くするか膜厚さを薄くする必要があるが、この場合には、弾性仕切り膜15の歪量が大きくなるため、その耐久性の低下を招くところ、本発明の液封入式防振装置100によれば、変位規制リブ17,19による拘束の効果によって、弾性仕切り膜15の変位量(歪量)を抑制することができるので、従来の弾性膜構造と略同等の低動ばね特性を確保しつつ、弾性仕切り膜15自体の耐久性の向上を図ることができる。
なお、第1実施例の弾性仕切り膜15は、上述の通り、各変位規制リブ17,19に対応するすべての位置に変位規制突起51が設けられている。
即ち、上下合計8本の変位規制リブ17,19に対し(図2及び図4参照)、弾性仕切り膜15の上下両面には、対応する位置に合計8本の変位規制突起51が設けられている(図5参照)。よって、変位規制リブ17,19と弾性仕切り膜15との間に隙間が生じないので、大振幅入力時に弾性仕切り膜15が変位規制リブ17,19へ衝突することを回避して、異音の発生を十分に抑制することができる。
但し、必ずしもこれに限られるわけではなく、弾性仕切り膜15の変位規制突起51の本数を変位規制リブ17,19の本数よりも少なくすることは当然可能である。本実施例においては、例えば、弾性仕切り膜15の変位規制突起51を上下面各2本(合計4本)に減らしても良い。
より具体的には、各変位規制突起51が各変位規制リブ17,19に対応する位置に配置されることを前提とすれば、変位規制リブ17,19の本数nは、変位規制突起51の本数mに対して、少なくとも倍以下の本数(n≦2m)であることが好ましい。なお、「n」「m」は、ともに整数を意味し、以下の記載においても同様である。
また、この条件に加え、変位規制リブ17,19と変位規制突起51との本数の差が2以下(n−m≦2)という条件も更に満たすことがより好ましい。これにより、変位規制リブ17,19全体としての剛性を高めて、その耐久性を確保しつつ、異音も十分に低減することができるからである。
次に、図8から図13を参照して、第2実施例について説明する。第1実施例では、弾性仕切り膜15の変位規制突起51が放射直線状に配置されていたのに対し、第2実施例では、弾性仕切り膜115の変位規制突起151が環状に配置されている。なお、前記した第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
まず、図8を参照して、オリフィス部材116について説明する。図8は、本発明の第2実施例におけるオリフィス部材116を示す図であり、(a)はオリフィス部材116の上面図であり、(b)はオリフィス部材116の側面図である。また、図9は、図8(a)のIX−IX線におけるオリフィス部材の断面図である。
オリフィス部材116の内周側には、図8及び図9に示すように、複数(本実施例では5個)の開口部154a,154bが開口され、それら各開口部154a,154bの周縁に沿って複数本(本実施例では環状に1本と放射状に4本)の変位規制リブ117a,117bが設けられている。
開口部154a,154bは、上述した第1実施例と同様に、液封入室8内の液圧変動を弾性仕切り膜115へ伝達すると共に、その液圧変動により変位する弾性仕切り膜115との衝突を回避するための逃げ部として設けられた開口である。
なお、図8及び図9に示すように、開口部154aの形状は、オリフィス部材116の軸芯Oに対して同心の円であり、開口部154bの形状は、周方向に沿う環状の孔を放射状に4等分して得られる形状である。
変位規制リブ117aは、上述した第1実施例と同様に、弾性仕切り膜115の変位規制突起151(図11参照)に当接して、弾性仕切り膜115を拘束するためのリブであり、変位規制リブ117bは、変位規制リブ117aを保持するためのリブである。
図8及び図9に示すように、変位規制リブ117aは、オリフィス部材116の軸芯Oに対して同心の環状に形成されており、変位規制リブ117bは、オリフィス部材116の軸芯Oに対して放射直線状に形成されている。
なお、各変位規制リブ117bは、周方向略等間隔(90度間隔)に配置されている。また、各変位規制リブ117a,117bのリブ幅およびリブ厚さはそれぞれ略同一である。
次いで、図10を参照して、仕切板部材118について説明する。図10(a)は、仕切板部材118の上面図であり、図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線における仕切板部材118の断面図である。
仕切板部材118は、上述した第1実施例と同様に、オリフィス部材116と共に弾性仕切り膜115を挟持して、その弾性仕切り膜115の変位を規制するための部材であり、図10に示すように、軸芯Pを有する円盤状に形成されている。
仕切板部材118の内周側には、図10に示すように、複数(本実施例では5個)の開口部156a,156bが開口され、それら各開口部156a,156bの周縁に沿って複数本(本実施例では環状に1本と放射状に4本)の変位規制リブ119a,119bが設けられている。
これら開口部156a,156b及び変位規制リブ119a,119bは、上述したオリフィス部材116の開口部154a,154b及び変位規制リブ117a,117bに対応するものであり、これらと同一のパターン(位置、大きさ、範囲など)で構成されているので、その説明は省略する。
なお、仕切板部材118は、オリフィス部材116の内周に内嵌されるが(図13(b)参照)、この場合には、上述した第1実施例の場合とは異なり、オリフィス部材116に対する周方向の位置合わせを行う必要はない。変位規制リブ117bに対する変位規制リブ119bの周方向位置が一致しているか否かは、異音発生に影響を与えないからである。これにより、仕切り体112の組み立て(オリフィス部材116への仕切板部材118の内嵌作業)を簡素化して、その作業コストを低減することができる。
ここで、オリフィス部材116及び仕切板部材118には、その変位規制リブ117a,117b、119a,119bが一体に形成されているので、これら各リブ117a〜119bを別体に形成した場合のように、煩雑な組み立て作業を行う必要がなく、その分、オリフィス部材116及び仕切板部材118の組み立てコストを低減することができる。
また、これらを別体に形成する場合と比較して、弾性仕切り膜115と各リブ117a〜119bとの間の対向面間隔や弾性仕切り膜115(変位規制突起151)に対する各リブ117a〜119bの相対位置を正確に設定することができる。
次いで、図11及び図12を参照して、弾性仕切り膜115について説明する。図11(a),(b)及び(c)は、それぞれ弾性仕切り膜15の上面図、側面図および下面図である。また、図12(a)は、図11(a)のXIIa−XIIa線における弾性仕切り膜115の断面図であり、図12(b)は、図11(a)のXIIb−XIIb線における弾性仕切り膜115の断面図である。
弾性仕切り膜115は、上述した第1実施例と同様に、ゴム状弾性体から略円盤状に構成されるゴム膜で、第1及び第2液室11A,11B間の液圧差を緩和する作用を奏するものである。
この弾性仕切り膜115の上下両面には、図11及び図12に示すように、変位規制突起151及び補助突起152がそれぞれ突設されている。
変位規制突起151は、図11に示すように、弾性仕切り膜115の軸芯Qに対して同心の環状に配置されており、上述したオリフィス部材116及び仕切板部材118における環状の変位規制リブ117a,119aの直径と略同径に構成されている。
なお、各変位規制突起151の配置は、弾性仕切り膜115の上下両面において対称であり、かつ、その突起幅および突起高さも略同一である。
また、各変位規制突起151の突起高さは、図12に示すように、弾性仕切り膜115の外周部と略同一の高さとされている。よって、仕切り体112の組み立て状態においては(図13参照)、各変位規制突起151の頂部が変位規制リブ117a,119aに若干圧縮された状態で当接される。
よって、上述した第1実施例の場合と同様に、変位規制突起151と変位規制リブ117a,119aとの衝突に起因する異音の発生を回避でき、その分、異音のより一層の低減を図ることができる。
補助突起152は、弾性仕切り膜115に膜破れ等の破損が生じることを防止するためのリブ状突起であり、図11及び図12に示すように、弾性仕切り膜115の軸芯Qに対して放射直線状に複数本(本実施例では12本)が配置されている。なお、各補助突起152の突起高さ及び突起幅は、それぞれ略同一である。
なお、補助突起152は、図12に示すように、変位規制突起151よりも突起高さが低くなるように設定されているので、弾性仕切り膜115全体としての剛性が上昇することを抑制して、小振幅入力時の低動ばね特性を維持することができる。
ここで、第2実施例の弾性仕切り膜115では、その変位規制突起151の突起幅が補助突起152と略同一の突起幅に構成されている。即ち、上述した第1実施例における変位規制突起51の突起幅よりも狭くされている。このように、変位規制突起151を環状に構成する場合には、その突起幅を狭くすることで、大振幅入力時の高減衰特性を得つつ、小振幅入力時の低動ばね特性を維持することができる。
次いで、図13を参照して、仕切り体112の組み立て状態について説明する。図13(a)は、仕切り体112の上面図であり、図13(b)は、図13(a)のXIIIb−XIIIb線における仕切り体112の断面図である。
仕切り体112は、図13(a)に示す軸方向視において、オリフィス部材116の変位規制リブ117b位置と、仕切板部材118の変位規制リブ119b位置とが周方向で一致するように組み立てられている。
なお、この場合には、弾性仕切り膜115の外周部の全周がオリフィス金具116と仕切板部材118との間で隙間無く挟持され、第1及び第2液室11A,11B間での液体のリーク(漏出)が防止されている。また、変位規制リブ117a,119aの間には、弾性仕切り膜115の変位規制突起151が若干圧縮された状態で挟持されている。
ここで、第2実施例においては、弾性仕切り膜115の変位規制突起151が同心環状に形成されると共に、その同心環状の変位規制突起151がオリフィス部材116及び仕切板部材118の同心環状の変位規制リブ117a,119aに対応する位置にのみ突設されている。
よって、仕切り体112の組み立て工程においては、上述した第1実施例の場合のように、オリフィス部材116(及び、仕切板部材118)に対する弾性仕切り膜115(変位規制突起151)の周方向の位置合わせを行う必要がなく、作業工程を簡素化することができるので、作業コストを低減して、その分、液封入式防振装置全体としての製品コストを低減することができる。
以上のように、第2実施例によれば、上述した第1実施例と同様に、弾性仕切り膜115の変位を変位規制リブ117a,119aで有効に規制して、低振幅入力時の低動ばね特性と高振幅入力時の高減衰特性との両立を図りつつ、弾性仕切り膜115とオリフィス部材116等との衝突を開口部154a,154bによって回避して、異音の大幅な低減を図ることができる。
また、第1実施例の場合と同様に、弾性仕切り膜115の変位に伴って、変位規制突起151を圧縮方向へ撓ませることで、弾性仕切り膜115全体としての剛性をより上昇させることができるので、大振幅入力時の減衰特性をより向上することもできる。
更に、第1実施例と同様に、小振幅入力時の低動ばね特性を得るべく、弾性仕切り膜115の硬度を低くしたり膜厚さを薄くしても、変位規制リブ117a,119aによる拘束の効果によって、弾性仕切り膜115の変位量(歪量)を抑制することができ、その分、弾性仕切り膜115自体の耐久性の向上を図ることができる。
次いで、図14を参照して、特性評価試験の結果について説明する。
ここで、液封入式防振装置100には、アイドリング時やこもり音領域等の小振幅入力時(一般的には、周波数:20Hz〜40Hz、振幅:±0.05mm〜±0.1mm)における低動ばね特性、クランクキング振動等の大振幅入力時(一般的には、周波数:10Hz〜20Hz、振幅:±1mm〜±2mm)における異音の低減、及び、それらの中間的な振幅入力時(シェイク領域等)における高減衰特性を達成することが要求されている。
そこで、本特性評価試験では、上記の動ばね特性、異音特性、及び、減衰特性の各特性について、第1及び第2実施例における液封入式防振装置100(以下、「実施例1,2」と称す。)を用いて測定した。
なお、実施例1,2における差異は、仕切り体12,112の構成(図7及び図13参照)が異なるのみであり、その他の部材の形状や特性などはすべて同一である。
また、特性評価試験では、比較のため、弾性膜構造および可動膜構造を有する液封入式防振装置(以下、「弾性膜構造」「可動膜構造」と称す。)の各特性についても測定した。
なお、弾性膜構造は、弾性仕切り膜を第1及び第2液室間に配置し、両液室間の液圧変動を弾性仕切り膜の往復動変形で吸収し得るように構成したもので、弾性仕切り膜は、その外周部のみが拘束されている。一方、可動膜構造は、弾性膜構造に対し、弾性仕切り膜の両側に変位規制部材を設け、その変位規制部材で弾性仕切り膜の変位量を両側から規制し得るように構成されている。
図14は、特性評価試験の結果を示した図である。なお、図14(a)において、縦軸は、エンジン側(第1取付け金具1側)から所定の振動(周波数:15Hz、振幅:±1mm)が入力された場合に、車体フレーム側(第2取付け金具2側)から出力される加速度値を異音指標として示し、横軸は、アイドリング時(周波数:30Hz、振幅:±0.05mm)の動ばね値を示している。
また、図14(b)において、縦軸は、中間的な振幅(±0.5mm)を入力しつつ周波数を連続的に変化させた場合に得られる減衰特性の最大(ピーク)値を示し、横軸は、アイドリング時(周波数:30Hz、振幅:±0.05mm)の動ばね値を示している。
まず、図14(a)中の測定結果を比較すると、可動膜構造では、異音特性と動ばね特性とが相反する関係にあることを示している。即ち、異音特性の向上を図る場合には、アイドル時(小振幅入力時)の動ばね特性の悪化(上昇)を招き、逆に、動ばね特性の向上を図る場合には、異音特性の悪化を招く。
可動膜構造では、弾性仕切り膜の剛性を高くすれば、変位規制部材への当接を抑制して、異音を低減することができるが、これに伴って、弾性仕切り膜が両液室間の液圧差を十分に緩和できなくなるため、アイドル時の動ばね値が上昇するからである。
これに対し、実施例1,2では、図14(a)に示すように、異音特性がアイドル時の動ばね特性に異存せず、かつ、その異音特性は、弾性膜構造と同等の極めて良好な結果を得ることができた。
この結果より、上述したように、オリフィス部材16,116等に開口部54,154a等を設け、これを液圧変動により変位する弾性仕切り膜15との衝突を回避するための逃げ部として利用することで、少なくとも可動膜構造と同等の低動ばね特性を得つつ、その可動膜構造よりも大振幅入力時における異音の大幅な低減を図り得ることが確認された。
次いで、図14(b)中の測定結果を比較する。まず、可動膜構造では、弾性仕切り膜の変位量を変位規制部材により規制して、弾性仕切り膜の剛性を高めることができるので、図14(b)に示すように、高減衰特性を得ることができる。但し、上述した通り、弾性仕切り膜が変位規制部材に当接することに起因して、異音特性が極めて悪化する。
一方、弾性膜構造では、図14(b)に示すように、極めて低い減衰特性しか得ることができない。弾性膜構造では、弾性仕切り膜の剛性が振幅によらず一定であるため、小振幅入力時の低動ばね特性を得ようとすると、両液室間の液圧差が弾性仕切り膜で緩和され易くなり、流体流動効果を十分に発揮させることができなくなることに起因する。
これに対して、実施例1,2では、図14(b)に示すように、アイドル時の動ばね特性を弾性膜構造と同等に設定した場合には、減衰特性の大幅な向上を図ることができた。
この結果より、上述したように、オリフィス部材16,116等の変位規制リブ17,171a等により変位規制突起51,151を拘束して、弾性仕切り膜15,115の変位を規制することで、小振幅入力時の低動ばね特性は維持しつつ、減衰特性の大幅な向上を図り得ることが確認された。
以上説明したように、本発明の液封入式防振装置100によれば、弾性仕切り膜15,115を変位規制リブ17,117a等で拘束して、その変位を規制すると共に、開口部54,154a等を開口して、弾性仕切り膜15,115の逃げ部を設けたので、低振幅入力時の低動ばね特性と大振幅(又は、中間的振幅)入力時の高減衰特性との両立を図りつつ、大振幅入力時の異音を大幅に低減することができる。
以上、第1及び第2実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記第1実施例では、変位規制突起51及び変位規制リブ17,19を各軸芯O,P,Qに対して放射状直線状に配置する場合を説明したが、必ずしも直線状である必要はなく、これらを他の形状に配置することは当然可能である。他の形状としては、例えば、渦巻き状の曲線などが例示される。
一方、上記第2実施例では、変位規制突起151及び変位規制リブ117a,119aが環状に配置される場合を説明したが、かかる環状とは、必ずしも真円である必要はなく、楕円形状や多角形状も含む趣旨である。
また、変位規制突起151等の環状は、オリフィス部材116、仕切板部材118及び弾性仕切り膜151の軸芯O,P,Qと必ずしも同心である必要はなく、各環状の中心が各軸芯O,P,Qとずれていても良い。
また、上記第2実施例では、弾性仕切り膜151に環状の変位規制突起151のみを突設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるわけではなく、この環状の変位規制突起151に加えて、放射状の変位規制突起を更に突設して構成しても良い。
このような構成を第3実施例として、図15及び図16を参照して説明する。図15は、第3実施例における弾性仕切り膜215を示す図であり、(a)〜(c)は、それぞれ弾性仕切り膜215の上面図、側面図、及び、下面図である。また、図16(a)及び(b)は、それぞれ図15(a)のXVIa−XVIa線およびXVIb−XVIba線における弾性仕切り膜215の断面図である。
第3実施例における弾性仕切り膜115は、図15及び図16に示すように、軸芯Tに対して同心環状に配置される変位規制突起251aと、軸芯Tに対して放射直線状に配置される複数本(本実施例では4本)の変位規制突起251bとを備えている。なお、弾性仕切り膜215には、補助突起252も突設されている。
同心環状の変位規制突起251aは、上述した第2実施例におけるオリフィス部材116及び仕切板部材118における環状の変位規制リブ117a,119aの直径と略同径に構成されている。一方、放射直線状の各変位規制突起251bは、図15(a)に示すように、周方向等間隔(90度間隔)に配置され、上記オリフィス部材116及び仕切板部材118における放射状の変位規制リブ117b,119bの配置に対応する。
なお、各変位規制突起251a,251bは、それぞれ略同一の突起幅および突起高さで構成される。また、各変位規制突起251a,251bの突起高さは、図16に示すように、弾性仕切り膜215の外周部と略同一の高さとされ、その頂部を変位規制リブ117a,117b,119a,119bに当接可能に設定されている。
この第3実施例における弾性仕切り膜215を、上述した第2実施例におけるオリフィス部材116及び仕切板部材118に収容して使用する場合には、各変位規制リブ117a,117b,119a,119bに対応するすべての位置に変位規制突起251a,251bが設けられ、これら各変位規制リブ117a〜119bと弾性仕切り膜215との間に隙間が生じないので、大振幅入力時に弾性仕切り膜215が変位規制リブ117a〜119bへ衝突することを回避して、異音の発生を十分に抑制することができる。
但し、必ずしもこれに限られるわけではなく、弾性仕切り膜215の変位規制突起251bの本数を変位規制リブ117b,119bの本数よりも少なくすることは当然可能である。第3実施例においては、例えば、弾性仕切り膜215の変位規制突起251bを上下面各1本(合計2本)に減らしても良い。
但し、このように、弾性仕切り膜215の変位規制突起251bの本数を変位規制リブ117b,119bの本数よりも少なくする場合には、弾性仕切り膜215の変位規制突起251bを上下いずれかの面に少なくとも1本以上設けることが好ましい。その変位規制突起251bの分だけ、異音の発生を抑制することができるからである。
より具体的には、各変位規制突起251bが各変位規制リブ117b,119bに対応する位置に配置されることを前提とすれば、変位規制リブ117b,119bの本数nは、変位規制突起251bの本数mに対して、n≦2m+2の条件を満たすことがより好ましい。
また、この条件に加えて、変位規制リブ117b,119bと変位規制突起251bとの本数の差が2以下(n−m≦2)であることがより一層好ましい。これにより、変位規制リブ117b,119b全体としての剛性を高めて、その耐久性を確保しつつ、異音も十分に低減することができるからである。
また、上記各実施例では、変位規制突起51,151,251a,251bを弾性仕切り膜15,151,251から突設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら変位規制突起51,151,251a,251bを変位規制リブ17,19,117a,117b,119a,119bから突設するように構成しても良い。
また、上記各実施例では、弾性仕切り膜15、115,215に補助突起52,152,252を突設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら補助突起52,152,252の突設を省略して構成することは当然可能である。
また、上記各実施例では、仕切り体12,112の組み立て状態において、変位規制突起51,151,251a,251bの頂部が変位規制リブ17,19,117a,117b,119a,119bに当接するように、その突起高さを設定したが、必ずしもこれに限られるわけではなく、その頂部と変位規制リブ17,19,117a,117b,119a,119bとの間に隙間が形成されるように突起高さを設定しても良い。かかる隙間は、仕切り体12,112の組み立て状態において、略0.3mm以下であることが好ましい。
また、上記各実施例では、弾性仕切り膜15,115,215を単体で加硫成形し、その弾性仕切り膜15,115,215をオリフィス部材16,116と仕切板部材18,118との間に挟持して仕切り体12,112を構成する場合を説明したが、かならずしもこれに限られるわけではなく、弾性仕切り膜15,115,215をオリフィス部材16,116又は仕切り部材18,118の一方または両方に加硫接着した構成とすることも当然可能である。
また、上記各実施例では、第1液室11Aと第2液室11Bとを1本のオリフィス125で連通したいわゆるシングルオリフィスタイプの液封入式防振装置100に本発明を適用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるわけではなく、本発明をいわゆるダブルオリフィスタイプの液封入式防振装置に適用することは当然可能である。
なお、ダブルオリフィスタイプの液封入式防振装置とは、主液室と、第1及び第2の2つの副液室と、これら第1及び第2の副液室と主液室とをそれぞれ連通する第1及び第2の2本のオリフィスとを備えて構成されるものをいう。