以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して液封入式防振装置10の構造について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における液封入式防振装置10の軸方向断面図である。なお、図1ではエンジンを支持する前の状態(即ち、エンジンの重量が負荷される前の無負荷状態)を図示している。
液封入式防振装置10は、自動車のエンジン(振動体、図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジンの振動を車体フレーム(図示せず)へ伝達させないようにするための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付具11と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付具13と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体17と、第2取付具13に取付けられて防振基体17との間に液室(第1液室23及び第2液室24)を形成すると共にゴム状弾性体から構成されるダイヤフラム20とを備えている。
第1取付具11は、アルミニウム合金などの金属材料から略円柱状に形成される部材であり、その上端面にボルトが螺着されるねじ穴12が形成されている。ねじ穴12に螺着されるボルトを介して第1取付具11はエンジン側に取り付けられる。第2取付具13は、防振基体17が加硫成形される軸心Oを有する筒状金具14と、その筒状金具14の下方にかしめ加工により固着される底金具15とを備えている。筒状金具14は上広がりの開口を有する筒状に、底金具15は底部を有するカップ状に、それぞれ鉄鋼材料などから形成されている。底金具15の底部にボルト16が下向きに突設されている。このボルト16を介して第2取付具13は車体側に取り付けられる。
防振基体17は、ゴム状弾性体から円錐台形状に形成される部材であり、第1取付具11の下面側と筒状金具14の上端開口部との間に加硫接着されている。防振基体17の下端部には、筒状金具14の内周面を覆うゴム膜18,19が連なっている。ゴム膜19は、内径が、ゴム膜18の内径より大きい段差状に形成されている。
ダイヤフラム20は、ゴム状弾性体から蛇腹状に屈曲したゴム膜として形成されており、上面視円環状の取付板21に外周が加硫接着されている。ダイヤフラム20は、取付板21が、筒状金具14により底金具15と共にかしめ加工により狭持固定されることで、第2取付具13に取着される。その結果、ダイヤフラム20の上面側と防振基体17の下面側との間に液室が形成される。液室には、エチレングリコール等の不凍性の液体(図示せず)が封入される。
仕切体30は、液室を防振基体17側の第1液室23とダイヤフラム20側の第2液室24とに区画するための部材であり、防振基体17とダイヤフラム20との間に配設される。仕切体30は、第2取付具13の内側に配置される環状のオリフィス形成部材31と、オリフィス形成部材31の内周面40で囲まれた部分を塞ぐ弾性壁50と、弾性壁50を軸方向の両側から挟む第1仕切板60及び第2仕切板70とを備えている。
図2から図5を参照して仕切体30について説明する。図2は仕切体30の平面図であり、図3は第1仕切板60側から見た仕切体30の分解立体図であり、図4は第2仕切板70側から見た仕切体30の分解立体図であり、図5は図2のV−V線における仕切体30の断面図である。
仕切体30の外郭を構成するオリフィス形成部材31は、第2取付具13の内周面(ゴム膜19)との間に周方向へ延びるオリフィス25(図1参照)を形成するための剛体からなる部材であり、図2から図4に示すように、軸心Oと直交して配置される円環状の壁部32と、壁部32の内周に連設されると共に軸心O方向(軸方向)へ延びる筒状の胴部34と、胴部34の下端部から径方向外方へフランジ状に張り出す壁部35とを備えている。
オリフィス形成部材31は、壁部32,35に切欠部33、開口部36がそれぞれ凹欠形成される。壁部32,35及び胴部34を接続し切欠部33と開口部36とを隔てる縦壁37がオリフィス形成部材31に設けられるので、オリフィス25(図1参照)は、縦壁37により周方向に分断され、切欠部33を介して第1液室23に連通されると共に、開口部36を介して第2液室24に連通される。即ち、オリフィス形成部材31により切欠部33から開口部36まで約1周の流路長をもつオリフィス25が形成される。オリフィス形成部材31は、軸方向において壁部32を挟んで胴部34の反対側に延出する円環状の延出部38(図5参照)と、延出部38を挟んで壁部32と反対側の延出部38の径方向内側に突出する円環状の凸部39とが設けられている。
図5に示すように、弾性壁50はゴム状弾性体から構成される部材であり、オリフィス形成部材31の延出部38及び凸部39の内周面40に外周面が加硫接着されている。弾性壁50はオリフィス形成部材31に加硫接着される膜状の部材であり、壁面51,52がそれぞれ第1液室23、第2液室24に面する。弾性壁50は、径方向中央を厚さ方向(軸心O方向)に貫通する円形の中央孔53が形成されており、軸方向両側へ突出する円環状の突条54が、中央孔53の周囲に設けられている。弾性壁50は、突条54近くの軸方向厚さ(壁面51,52間の距離)よりオリフィス形成部材31近くの軸方向厚さが大きく設定されており、延出部38から軸心O方向へ隆起する円環状の隆起部55が設けられている。
図4に示すように弾性壁50は、湾曲面状に形成された壁面51,52の内、第2液室24に面する壁面52に、軸方向に陥没する凹部56が形成されている。凹部56は、弾性壁50の周方向に断続的に複数個(本実施の形態では4個)が等間隔に設けられている。凹部56は、軸方向視が略扇状に形成されており、弾性壁50の中心(中央孔53の中心)を通る軸心Oとオリフィス形成部材31の内周面40とを結ぶ線分の中点より外周側に設けられている。
弾性壁50は、周方向に断続的に並ぶ凹部56間に連通路57が形成されている。連通路57は、弾性壁50を厚さ方向(軸心O方向)に貫通し壁面51,52にそれぞれ開口する孔である。本実施の形態では、連通路57は断面が矩形状であり、弾性壁50の4箇所に形成されている。複数の連通孔57は、各中心が、弾性壁50の中心を中心とする円周上に形成されている。
図3に戻って説明する。第1仕切板60及び第2仕切板70は、軸方向視において外形が弾性壁50の外形(オリフィス形成部材31の内周面40の大きさ)より小さく設定された略円形状の部材である。第1仕切板60は中央部61及び外周部64が熱可塑性樹脂により一体に成形されており、第2仕切板70は中央部71が熱可塑性樹脂により成形されている。中央部61,71は、弾性壁50の突条54の軸方向の両側が嵌合する環状溝62,72がそれぞれ形成されている。
第2仕切板70は、軸方向へ向けて突出する連結部73が、中央部71の中央に設けられており、第1仕切板60は、中央部61の中央に連結部73が嵌合する嵌合凹部63が形成されている。連結部73が嵌合凹部63に嵌合した状態で超音波溶着により固定されることで第1仕切板60と第2仕切板70とは連結され、弾性壁50は第1仕切板60及び第2仕切板70によって軸方向の両側から挟まれる。
図5に示すように第1仕切板60は、外周部64が、弾性壁50の壁面51に径方向内側の面が密着し、径方向外側の面が壁面51から離れるように湾曲している。第1仕切板60は、中央部61の全体および外周部64の径方向内側の一部が、無負荷状態(エンジンの重量が負荷される前の状態)で弾性壁50の壁面51に接触する第1接触部65を構成する。弾性壁50に形成された連通路57は第1接触部65内(第1接触部65の外縁付近)に位置するので、無負荷状態では、連通路57は第1仕切板60(第1接触部65)により閉鎖される。
第2仕切板70は、中央部71の全体が、無負荷状態で弾性壁50の壁面52に接触する第2接触部74を構成する。第2接触部74は、軸方向に投影した投影面の大きさが、軸方向に投影した第1接触部65の投影面より小さく設定されている。弾性壁50に形成された連通路57は、第2接触部74を軸方向に投影した投影面の中に含まれないので、連通路57は第2仕切板70(第2接触部74)によって閉鎖されない。なお、第1仕切板60は、第1接触部65の外縁が、弾性壁50に形成された凹部56(凹部56の外側の縁)より径方向内側に位置する。
次に液封入式防振装置10(図1参照)の製造方法について説明する。まず、第1取付具11と筒状金具14とが防振基体17により連結された第1成形体と、ダイヤフラム20が加硫成形されると共に取付板21が加硫接着された第2成形体とを、ゴム加硫金型によりそれぞれ加硫成形する。これとは別に、ゴム加硫金型により弾性壁50を加硫成形して、オリフィス形成部材31に弾性壁50を接着する。弾性壁50の表裏両側から第1仕切板60及び第2仕切板70を挟み込み、超音波溶着により連結部73を固着することで仕切体30を製造する。
液体中で、第1成形体の下方開口から仕切体30を第1仕切板60側から筒状金具14内へ挿入した後、筒状金具14内へ第2成形体を挿入する。筒状金具14を縮径加工して、筒状金具14に仕切体30及びダイヤフラム20を取り付ける。その後、第1取付具11が下方となる姿勢で、この部材を液体外へ取り出し、この姿勢を維持しつつ底金具15を被せ、筒状金具14の下方開口に底金具15をかしめ加工により固着する。これにより液封入式防振装置10の製造が完了する。
次に液封入式防振装置10の動作について説明する。液封入式防振装置10に高周波数域の微振幅振動が入力される場合は、第1仕切板60及び第2仕切板70が一体となって往復動することで、第1液室23の液圧を吸収して振動を低減できる。弾性壁50の連通路57は第1仕切板60によって閉鎖されているので、連通路57は液封入式防振装置10による振動低減に影響を与えない。
一方、液封入式防振装置10に低周波数域の大振幅振動が入力される場合に、第1液室23の加圧変位(防振基体17の圧縮入力)時は、第1仕切板60(特に第1接触部65)により弾性壁50の変位が規制されるので、オリフィス25を流動する液体の共振現象を利用して高い減衰係数を得ることができる。第1液室23の加圧変位時は、弾性壁50の変形によって第1仕切板60が弾性壁50に押し付けられるので、弾性壁50の連通路57は第1仕切板60によって閉鎖される。従って、連通路57は液封入式防振装置10による振動低減に影響を与えない。
液封入式防振装置10に低周波数域の大振幅振動が入力される場合に、第1液室23の負圧変位(防振基体17の引張入力)時は、第2仕切板70による弾性壁50の変位を規制する効果が乏しいので、弾性壁50を第1液室23側へ撓み変形し易くできる。弾性壁50の変形により第1液室23の急激な減圧を防ぐので、第1液室23にキャビテーションを生じ難くすることができ、衝撃音(異音)の発生を抑制できる。
第1液室23の負圧変位時は、弾性壁50の変形によって第1仕切板60が弾性壁50から離されるので、弾性壁50の変形量が大きくなると、第1仕切板60が弾性壁50の連通路57を開放する。連通路57が開放されると、液体が連通路57を通って第2液室24から第1液室23へ流入するので、第1液室23の負圧が解消される。その結果、キャビテーションを防ぎ、異音の発生を抑制できる。
オリフィス形成部材31は、径方向内方へ向けて突出する凸部39が設けられているので、弾性壁50の付け根の部分(外周部分)の剛性を上げて、低周波大振幅時の弾性壁50の変位を規制する効果を向上できる。さらに、隆起部55も弾性壁50の付け根の部分の剛性を高める効果がある。
弾性壁50は、壁面52に凹部56が形成されることで厚さを部分的に薄くできるので、撓み変形させ易くでき、弾性壁50のばねを軟らかくできる。弾性壁50に取り付けられた第1仕切板60は、第1接触部65の外縁が凹部56より径方向内側に位置するので、第1接触部65が弾性壁50の変形を制限する機能を抑制できる。よって、凹部56により弾性壁50のばねを軟らかくできる。
弾性壁50は中央に突条54が形成されているので、弾性壁50の中央の剛性を確保できる。剛性の高い突条54に中央部71が取り付けられた第2仕切板70が第1仕切板60に連結されるので、第1仕切板60が壁面51の上で不安定に揺れ動くことを防止できる。その結果、液封入式防振装置10による安定した振動低減効果を確保できる。
次に図6及び図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第2仕切板70が外周部を有していない場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第2仕切板90が外周部91を有し、外周部91に溝部93が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第2実施の形態における液封入式防振装置の仕切体80の分解立体図であり、図7は仕切体80の軸方向断面図である。仕切体80は、第1実施の形態で説明した液封入式防振装置10の仕切体30に代えて装着される。仕切体80は、オリフィス形成部材31と、オリフィス形成部材31に加硫接着された弾性壁50と、弾性壁50を軸方向の両側から挟む第1仕切板60及び第2仕切板90とを備えている。
第2仕切板90は、軸方向視において外形が弾性壁50の外形(オリフィス形成部材31の内周面40の大きさ)より小さく設定された略円形状の部材である。第2仕切板90は中央部71及び外周部91が熱可塑性樹脂により一体に成形されている。第2仕切板90は、外周部91が、弾性壁50の壁面52に径方向内側の面が密着し、径方向外側の面が壁面52から離れるように湾曲している。第2仕切板90は、中央部71の全体および外周部91の径方向内側が、無負荷状態(エンジンの重量が負荷される前の状態)で弾性壁50の壁面52に接触する第2接触部92を構成する。第2接触部92は、軸方向に投影した投影面の大きさが、軸方向に投影した第1接触部65の投影面の大きさと同一に設定されている。なお、第2仕切板90は、第2接触部92の外縁が、弾性壁50に形成された凹部56の径方向外側の縁より中心側(連結部73側)に位置する。
第2仕切板90は、弾性壁50を臨む面に4本の溝部93が形成されている。溝部93は、第2液室24内の液体を連通路57へ導くための凹みであり、4つの連通路57が軸方向に位置するように連通路57の位置に対応して放射状に4本が第2仕切板90に形成されている。溝部93は、中央部71から外周部91(第2接触部92の外側)まで連続しているので、弾性壁50が大きく変形したときも、溝部93は第2液室24に連通する。第2仕切板90は、連結部73により第1仕切板60と連結されることで第1仕切板60との間で弾性壁50を挟み付け、弾性壁50を厚さ方向に圧縮(予圧縮)する。
第2実施の形態によれば、高周波数域の微振幅振動が入力される場合は、第1仕切板60及び第2仕切板90が一体となって往復動することで、第1液室23の液圧を吸収して振動を低減できる。弾性壁50の連通路57は第1仕切板60によって閉鎖されるので、連通路57は液封入式防振装置10による振動低減に影響を与えない。特に第1仕切板60及び第2仕切板90は弾性壁50を予圧縮するので、連通路57を閉鎖する第1仕切板60が、弾性壁50の微振幅振動によって連通路57を開放してしまうことを抑制できる。その結果、微振幅振動の低減効果が悪化することを抑制できる。
一方、低周波数域の大振幅振動が入力される場合に、第1液室23の加圧変位(防振基体17の圧縮入力)時は、第1仕切板60(特に第1接触部65)により弾性壁50の変位が規制されるので、オリフィス25により高い減衰係数を得ることができる。第1液室23の負圧変位(防振基体17の引張入力)時は、弾性壁50の中央が第1液室23側へ大きく引っ張られると、第1仕切板60は連通路57を開放する。第2液室24内の液体が溝部93から連通路57を通って第1液室23へ流入するので、第1液室23の急激な減圧を防ぎ、第1液室23にキャビテーションを生じ難くできる。
なお、第2接触部92は突条54の周囲の壁面52(凹部56間)に接触しているので、弾性壁50の第1液室23側への撓み変形量を制限できる。よって、キャビテーションの抑制と弾性壁50の耐久性の確保とを両立できる。特に第1仕切板60及び第2仕切板90は弾性壁50を予圧縮するので、第2仕切板90が連結部73回りに回転して連通路57に対して溝部93の位置がずれてしまうことを抑制できる。その結果、連通路57と溝部93との位置関係の変化を防ぐことができ、溝部93から連通路57に液体が流入できなくなることを防止できる。
凹部56は弾性壁50の壁面52の周方向に断続的に設けられているので、隣り合う凹部56間の部分(陥没していない部分)は、第2仕切板90が軸方向に振動する間も第2仕切板90(第2接触部92)に接触した状態を維持できる。よって、弾性壁50と第2仕切板90との干渉(打撃)に起因する異音を抑制できる。
弾性壁50に形成された凹部56は、弾性壁50に荷重がかけられていない中立位置(無負荷状態)で、径方向外側の縁部(壁面52)が第2仕切板90に密着することなく、第2仕切板90との間で隙間が確保されている。その隙間に、オリフィス25よりも高周波数域で作用する高周波オリフィスとしての機能をもたせることができる。この部分で特定の周波数帯における液共振を生じさせ、当該周波数帯の動ばね定数を低減できる。凹部56の数や大きさ、隙間の大きさや長さ等を変えることで、特性のチューニングが可能である。なお、大振幅振動時には、第2仕切板90が軸方向に相対変位することで、その隙間が第2仕切板90によって塞がれる。そのため、オリフィス25による高減衰性能を確保できる。
次に図8及び図9を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、第2仕切板90に溝部93が形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、溝部93に代えて第2仕切板100に貫通孔101が形成される場合について説明する。なお、第1及び第2実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8は第3実施の形態における液封入式防振装置の仕切体81の分解立体図であり、図9は仕切体81の軸方向断面図である。仕切体81は、第1実施の形態で説明した液封入式防振装置10の仕切体30に代えて装着される。仕切体81は、オリフィス形成部材31と、オリフィス形成部材31に加硫接着された弾性壁50と、弾性壁50を軸方向の両側から挟む第1仕切板60及び第2仕切板100とを備えている。
第2仕切板100は、軸方向視において外形が弾性壁50の外形(オリフィス形成部材31の内周面40の大きさ)より小さく設定された略円形状の部材である。第2仕切板90は中央部71及び外周部91が熱可塑性樹脂により一体に成形されている。第2仕切板100は、厚さ方向(軸方向)に貫通する貫通孔101が4箇所に形成されている。貫通孔101は、第2液室24内の液体を連通路57へ導くための孔であり、連通路57がそれぞれ軸方向に位置するように連通路57の位置に対応して第2仕切板100に形成される。貫通孔101は、第2仕切板100のダイヤフラム20に対向する面に開口しているので、変形した弾性壁50が第2仕切板100に密着したときも、連通路57及び貫通孔101は第2液室24に連通する。第2仕切板100は、連結部73により第1仕切板60と連結されることで第1仕切板60との間で弾性壁50を挟み付け、弾性壁50を厚さ方向に圧縮(予圧縮)する。
第3実施の形態によれば、高周波数域の微振幅振動が入力される場合は、第1仕切板60及び第2仕切板100が一体となって往復動することで、第1液室23の液圧を吸収して振動を低減できる。弾性壁50の連通路57は第1仕切板60によって閉鎖されるので、連通路57は液封入式防振装置10による振動低減に影響を与えない。特に第1仕切板60及び第2仕切板100は弾性壁50を予圧縮するので、連通路57を閉鎖する第1仕切板60が、弾性壁50の微振幅振動によって連通路57を開放してしまうことを抑制できる。その結果、微振幅振動の低減効果が悪化することを抑制できる。
一方、低周波数域の大振幅振動が入力される場合に、第1液室23の加圧変位(防振基体17の圧縮入力)時は、第1仕切板60(特に第1接触部65)により弾性壁50の変位が規制されるので、オリフィス25により高い減衰係数を得ることができる。第1液室23の負圧変位(防振基体17の引張入力)時は、弾性壁50の中央が第1液室23側へ大きく引っ張られると、第1仕切板60は連通路57を開放する。第2液室24内の液体が貫通孔101から連通路57を通って第1液室23へ流入するので、第1液室23の急激な減圧を防ぎ、第1液室23にキャビテーションを生じ難くできる。
なお、第2接触部92は突条54の周囲の壁面52(凹部56間)に接触しているので、弾性壁50の第1液室23側への撓み変形量を制限できる。よって、キャビテーションの抑制と弾性壁50の耐久性の確保とを両立できる。特に第1仕切板60及び第2仕切板100は弾性壁50を予圧縮するので、第2仕切板100が連結部73回りに回転して連通路57に対して貫通孔101の位置がずれてしまうことを抑制できる。その結果、連通路57と貫通孔101との位置関係の変化を防ぐことができ、貫通孔101から連通路57に液体が流入できなくなることを防止できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば連通路57を弾性壁50に形成する位置、数、形状、大きさ等は適宜設定できる。
上記各実施の形態では、第2仕切板70,90,100に連結部73を設け、第1仕切板60に形成された嵌合凹部63に連結部73を挿入して第1仕切板60と第2仕切板70,90,100とを連結する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2仕切板70,90,100に嵌合凹部を形成し、第1仕切板60に連結部を設け、第2仕切板70,90,100の嵌合凹部に第1仕切板60の連結部を挿入して、第1仕切板60と第2仕切板70,90,100とを連結することは当然可能である。また、連結部73に代えて第2仕切板70,90,100に凹部を形成し、第1仕切板60や第2仕切板70,90,100とは別の部材(連結部)を用い、別の部材(連結部)を凹部に挿入して第1仕切板60と第2仕切板70,90,100とを連結することは当然可能である。
上記各実施の形態では、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントとして液封入式防振装置10を用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ボディマウント、デフマウント等、任意の振動体の振動を抑制する防振装置に液封入式防振装置10を適用することは当然可能である。
上記各実施の形態では説明を省略したが、弾性膜50を軸方向へ往復動するアクチュエータを配置した能動型防振装置に仕切体30,80,81を適用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、仕切体30,80,81によって第1液室23及び第2液室24が形成され、第1液室23と第2液室24との間がオリフィス25によって接続される液封入式防振装置について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、要求される防振性能に応じて、第1液室23と第2液室24との間を接続するオリフィスを追加することは当然可能である。また、第1液室23及び第2液室24に加え、さらに1乃至複数の副液室を有する構成とすることは当然可能である。この場合には、第1液室23、第2液室24及び副液室の内の2つの液室間を、オリフィス25以外の他の1乃至複数のオリフィスによって連通させることができる。
上記第2実施の形態および第3実施の形態では、軸方向に投影した第1接触部65の投影面と軸方向に投影した第2接触部92の投影面とが同一の大きさに設定された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。軸方向に投影した第2接触部92の投影面を、軸方向に投影した第1接触部65の投影面より小さく設定することは当然可能である。第2接触面92を第1接触面65より小さくすることで、第1液室23の負圧変位時に弾性壁50をより変形させ易くすることができる。弾性壁50の変形により第1液室23の負圧を解消できるので好ましい。