JP3934019B2 - インテグレート架線におけるハンガー装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、インテグレート架線におけるハンガー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2本のき電吊架線に、トロリー線を支持するインテグレート架線におけるハンガー装置は、図9で示すように公知である。
すなわち、上端に逆U字状に形成されると共に、その下部同士をく字状に屈曲した係合部51を左右対称に有した2本の銅棒52、52を密接して、その下端部を接続キャップ53によりかしめ止めして成るハンガー54の下端に、絶縁碍子55を取付け、さらにその下端にトロリー線Tを挟着するイヤー56を備えた構成のものである。
【0003】
このように構成されたハンガー装置は、ハンガー54の上端係合部51、51を、2本の平行するき電吊架線A、Aに嵌合した環状の保護輪57に係合することにより、2本のき電吊架線A、Aに対し、トロリー線Tを吊架するものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、トロリー線部分には、電車のパンタグラフの接触導電による振動や強風などにより、高頻度に外部振動が加わるので、一般に、疲労強度の大きい製品が使用されているが、上記した従来の構成によれば、異質材料から成るかしめ部分aやハンガーと絶縁碍子との接続部分bに激しい振動が加わったとき、振動疲労が生じ易く、特に外部振動がはげしい駅相互間の高速走行区間において、前記かしめ部分aや接続部分bに振動疲労による破損が生じるという欠陥があり、また、ハンガーには、絶縁物として碍子を取付ける関係上、構成が面倒であるという欠陥があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、上記した従来のものの欠陥を改善するために、中間支持部の両端に、き電吊架線を挿通する挿通口を有した保持部を一体に設けた合成樹脂製の保持部材と、上端部が前記中間支持部の中央部に支持されて垂下するハンガーと、前記ハンガーの下端部に取り付けられてトロリー線を挟持するイヤーとから構成され、前記保持部材が、中間支持部の中央位置に、突部とその左右に位置して厚方向で貫通する2個の通孔をそれぞれ有して成り、ハンガーが、帯状の金属板を逆U字状に屈曲して2本の脚片を有して成り、該ハンガーの上端屈曲部を、前記突部に当接すると共に、脚片を通孔を介して垂下し、この2本の脚片の下端に、係合手段を介してイヤーを取り付けたことを特徴とするものである。また、イヤーは、下端にトロリー線を挟持する挟片を有した左右1対の挟持金具を、その内面中央位置で回動可能に連結し、かつ、前記1対の挟持金具の上部間に圧入する楔片を備えて成る。
【0006】
前記係合手段が、ハンガーの各脚片の下端部にそれぞれ設けた外向に屈曲する係合舌片と、イヤーの1対の挟持金具の上部にそれぞれ設けた係合スリットとから成り、前記脚片の下端部を、1対の挟持金具の上部間に介在した状態で、係合舌片を対向する係合スリットに係挿する。
【0007】
さらに上記において、前記保持部材の保持部が、上下で2分割される上部分と下部分から成り、上部分は、中間支持部に一体に設けられ、その両側下面に、内面で開いて前後方向に開通する横向きの係合溝と、前後方向に延びる横向きの係合突条とを上下に並設した脚部を一体に設けて成り、前記下部分は、その両側位置に、前記係合溝と係合する前後方向に延びる横向きの係合突条と、外面で開いて前後方向に開通して、前記上部分の係合突条と係合する横向きの係合溝とを上下に並設して成る。
【0008】
上記において、好ましくは、上部分と、下部分との間に、前後方向で係止する係止爪と係止孔とから成る係止手段を設けて成り、具体的には、上部分の下面外側部と下部分の上面外側部とに、前後方向に延びて内面が互いに接合する補助部片をそれぞれ設け、その補助部片の一方に係止爪を、その他方に、係止孔をそれぞれ設けて成る。さらに係止爪が、1対の並行する溝と前後方向に延びる穴とによって、肉薄に形成された細幅部分に設けられ、この細幅部分の先端にツマミを設けて成る。さらにまた、各補助部片に、厚方向で貫通する割ピン挿通用孔を設けて成るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図面について、本願発明の実施の形態について詳述する。
図1は、一部を切欠して示した総体正面図、図2は側断面図であって、2本のき電吊架線Aに保持される絶縁材から成る保持部材1と、この保持部材1の中心部に嵌合手段により垂下されたハンガー3と、ハンガー3の下端に係合手段により取付けられたトロリー線を挟着するイヤー4とから構成されている。
【0010】
前記保持部材1は、き電吊架線Aを挿通するための前後方向に貫通する挿通口11を中心部に有した保持部12を、中間支持部13の両端に対称に設けると共に、中間支持部13の中央位置に、半円状の突部14およびその左右位置に接して厚方向で貫通する2個の通孔15を有している。
【0011】
具体的には、前記保持部12は、上下で2分割される上部分12aと下部分12bとから成り、上部分12aは、前記中間支持部13の両端に一体に設けてあり、好ましくは強化プラスチックによって成型される。
【0012】
この保持部12の上部分12aは、図4、5で示すように、中央に半円状の挿通口11を有すると共に、その両側位置の下面に、内面で開いて前後方向に開通する横向きの係合溝16と、前後方向に延びる横向きの係合突条17とを上下に並設した脚部18が一体に設けてある。
【0013】
また、外方に位置する一方の脚部18の下面外側部には、前後方向に延びる板状の補助部片19が設けてあり、この補助部片19は、その前縁部で短かく形成してあり、この前縁部に、幅方向に延びる切欠20が形成され、かつ補助部片19の前後位置には、厚方向に貫通する係止孔21と挿孔22とが設けてある。
【0014】
他方、前記保持部12の下部分12bは、図6、7で示すように、中央に挿通口11が半円状に形成されると共に、その両側位置に、前記係合溝16と係合する前後方向に延びる横向きの係合突条23と、外面で開いて前後方向に開通して前記上部分12aの係合突条17と係合する横向きの係合溝24とが上下で平行するように一体に設けてある。
【0015】
この下部片12bの外方に位置する一方の側面部には、上部片12aに下部片12bが結合したとき、前記上部片12aの補助部片19の下面に接合する板状の補助部片25が設けてあり、この補助部片25も前縁部で短かく形成してあり(その前縁部に後述のツマミ33が位置する)、この前縁部には、前記切欠20に係合する凸部26が設けてあると共に、この補助部片25の前後位置に、前記係止孔21に係止する係止爪27と、前記挿孔22と連通する挿孔28が設けてある。
【0016】
前記係止爪27は、係止孔21との解脱操作が実行できるように、並行する2本の溝29で囲まれた細幅部分30に設けられており、さらにこの細幅部分30は、保持部材1全体の軽量化をはかるために、下部分12bの前後面に、対称に設けられた穴、すなわち前後面からそれぞれ前後方向に延びる非開通状態の穴31によって肉薄に形成され、かつ、細幅部分30の前端部に、ツマミ33が突設してある。
このように構成された下部分12bは、好ましくは、弾性を有する合成樹脂から成型される。
【0017】
なお、保持部材1の軽量化のための穴31は、上部分12aの前後面にも同様に形成されている。
【0018】
前記ハンガー3は、帯状の金属板を逆U字状に屈曲して2本の対向する脚片3a、3aを有し、その下部は、対向間隔が若干狭くなるように屈曲してあると共に、それらの先端には、外向きに屈曲した係合舌片3b、3bが設けてあり、このように構成されたハンガー3は、その上端屈曲部3cが、前記保持部材1の中央部の突部14に当接して支持されると共に、両脚片3a、3aは、支持部材1の中央部に設けた通孔15を介して垂下する。
すなわち、ハンガー3は、その上端屈曲部3cと嵌合突部14との嵌合手段により、保持部材1に支持される。
【0019】
トロリー線Tを挟持するイヤー4は、図1乃至3で示すように、下端に挟片40を内方に屈曲して設けた左右1対の板状の挟持金具41を、その各内面に突設した支片42同士を枢軸43により開閉自在に連結すると共に、一方の挟持金具41の内面に一端を固着した支扞44を、他方の挟持金具41に設けた孔45に挿通し、この支扞44に、長尺で、その長手方向における厚を漸次変化して成る楔片46の中心に沿って設けた長孔47を係合することによって、左右1対の挟持金具41の上部間に、楔片46を介在して成り、前記各挟持金具41には、その上半部に、前記ハンガー3の下端に設けた係合舌片3bを係挿する係合スリット48が設けている。
【0020】
このように構成されたイヤー4の左右1対の挟持金具41の上部間に、前記ハンガー3の下端部を介在すると共に、その下端の係合舌片3bを係合スリット48に係挿することにより、すなわち、係合舌片3bと係合スリット48との係合手段を介して、ハンガー3の下端にイヤー4が取付けられる。この取付けに際し、脚片3a、3aの下端部の対向間隔を常態より狭めて、この脚片3a、3a間に反撥弾力を付与した状態で、挟持金具41の上部間に介在して、挟持金具41の上部間に、脚片3a、3aによる反撥弾力を作用させる。
従ってイヤー4は、常態において挟片40、40が閉じた状態におかれる。
【0021】
しかして、使用に際しては、保持部12における下部片12bを、上部分12aから分離した状態(図4で示す状態)で、左右の開口11に2本の平行するき電吊架線Aを嵌合し、この状態で、下部分12bを上部分12aに取付ける。
すなわち、図4で示す状態にある上部分12aに、その前方(手前方向)から下部分12bを図6で示す状態で、係合溝16と係合突条20および係合突条17と係合溝21とが互に係合するように、後方に押し込む。
【0022】
すると、切欠20に凸部26が係合して、上部分12aと下部分12bとの前後面が面一となった状態で、係止爪27が係止穴21に係止し、これによって、上部分12aと下部分12bとは、前後方向および上下方向においてずれの生じない状態で結合する。
【0023】
次いで、支持部材1の中央部に垂下したハンガー3の下端部に、イヤー4を介してトロリー線Tを挟着する。
すなわち、挟片40、40が閉じた状態にある挟持金具43、43の上部を、その上部に作用している反撥弾力に抗して押圧することにより挟片40、40を開き、この状態で、挟片40、40によりトロリー線の頚部を挟持し、かつ、この挟持状態を強固にするために、挟持金具43の上部間に楔片46を圧入する。
【0024】
なお、上記において、上部分12aと下部分12bとの結合状態を確実に保持するために、補助部片19と25とに設けた挿孔22と28に割りピン5を挿通する。
【0025】
また、上記において、上部分12aと下部分12bとが結合した状態から、ツマミ33を下向きに押圧するときは、細幅部分30は、それのもつ弾性により、下方に僅かたわんで、係止爪27と係止穴21との係止が解かれるので、この状態で下部分12bを前後方向に押圧することにより、上部分12aから下部分12bを分離することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上詳記したように、本願発明によれば、き電吊架線を、絶縁材から成る保持部材により保持し、これにハンガーを介してイヤーを取付ける構成であるので、従来構成における碍子の使用が省略できて、構成が簡単に得られ、かつ作業性に富み、また従来の構成によれば、ハンガー装置とは別個に、2本のき電吊架線の間隔を一定に保持するための絶縁材から成る間隔保持部材を使用する必要があったが、本願発明によれば、保持部材自体が、上記間隔保持部材の機能を有するので、間隔保持部の使用が省略できるという利点を有する。
【0027】
また、本願の構成によれば、従来のように、振動疲労の生じ易いかしめ手段や碍子の接続手段が省略できるので、保持部材、ハンガーおよびイヤー相互間に激しい振動が加わっても振動疲労による破損を充分回避することができると共に、保持部材、ハンガーおよびイヤー相互間の取付けおよびそれらの交換作業も容易であるという利点を有する。
【0028】
さらに、請求項4記載の構成によれば、2本のき電吊架線に対する保持部材の取付け作業が容易であり、また請求項5、6記載の構成によれば、上部分と下部分との前後方向における結合が確実となり、また請求項7記載の構成によれば、保持部材の取外しが容易にできて、保守管理にも有効であるという利点を有する。
【0029】
さらにまた、請求項8記載の構成によれば、保持部の上部分と下部分との結合状態がより確実に得られるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の一部切欠した総体正面図
【図2】本願の側断面図
【図3】イヤーの拡大断面図
【図4】保持部上部分の正面図
【図5】保持部上部分の下面図
【図6】保持部下部分の正面図
【図7】保持部下部分の上面図
【図8】保持部の部分断面図
【図9】従来構成の正面図
【符号の説明】
1 保持部材
3 ハンガー
3a 脚片
3b 係合舌片
3c 屈曲部
4 イヤー
5 割りピン
11 挿通口
12 保持部
12a 上部分
12b 下部分
13 中間支持部
14 嵌合突部
15 通孔
16、24 係合溝
22、28 挿孔
17、23 係合突条
19、25 補助部片
21 係止孔
27 係止爪
33 ツマミ
40 挟片
41 挟持金具
43 枢軸
44 支扞
46 楔片
48 係合スリット

Claims (8)

  1. 中間支持部の両端に、き電吊架線を挿通する挿通口を有した保持部を一体に設けた合成樹脂製の保持部材と、上端部が前記中間支持部の中央部に支持されて垂下するハンガーと、前記ハンガーの下端部に取り付けられてトロリー線を挟持するイヤーとから構成され、前記保持部材が、中間支持部の中央位置に、突部とその左右に位置して厚方向で貫通する2個の通孔をそれぞれ有して成り、ハンガーが、帯状の金属板を逆U字状に屈曲して2本の脚片を有して成り、該ハンガーの上端屈曲部を、前記突部に当接すると共に、脚片を通孔を介して垂下し、この2本の脚片の下端に、係合手段を介してイヤーを取り付けたことを特徴とするインテグレート架線におけるハンガー装置
  2. イヤーが、下端にトロリー線を挟持する挟片を有した左右1対の挟持金具を、その内面中央位置で回動可能に連結し、かつ、前記1対の挟持金具の上部間に圧入する楔片を備えて成る請求項1記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
  3. 係合手段が、ハンガーの各脚片の下端部にそれぞれ設けた外向に屈曲する係合舌片と、イヤーの1対の挟持金具の上部にそれぞれ設けた係合スリットとから成り、前記脚片の下端部を1対の挟持金具の上部間に介在した状態で、係合舌片を対向する係合スリットに係挿して成る請求項1または2記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
  4. 保持部材の保持部が、上下で2分割される上部分と下部分から成り、上部分は、中間支持部に一体に設けられ、その両側下面に、内面で開いて前後方向に開通する横向きの係合溝と、前後方向に延びる横向きの係合突条とを上下に並設した脚部を一体に設けて成り、前記下部分は、その両側位置に、前記係合溝と係合する前後方向に延びる横向きの係合突条と、外面で開いて前後方向に開通して、前記上部分の係合突条と係合する横向きの係合溝とを上下に並設して成る請求項1、2または3記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
  5. 上部分と、下部分との間に、前後方向で係止する係止爪と係止孔とから成る係止手段を設けて成る請求項4記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
  6. 上部分の下面外側部と下部分の上面外側部とに、前後方向に延びて内面が互いに接合する補助部片をそれぞれ設け、その補助部片の一方に係止爪を、その他方に、係止孔をそれぞれ設けて成る請求項5記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
  7. 係止爪が、1対の並行する溝と前後方向に延びる穴とによって、肉薄に形成された細幅部分に設けられ、この細幅部分の先端にツマミを設けて成る請求項5または6記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
  8. 各補助部片に、厚方向で貫通する割ピン挿通用の挿孔を設けて成る請求項6または7記載のインテグレート架線におけるハンガー装置
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