JP3932638B2 - 加熱調理器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に加湿と加熱を同時に行う加湿加熱調理を行う調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の調理方法としては、鍋に大量の水を入れてヒータなどの加熱源で水を沸騰させたところに食品を入れ一定時間沸騰した水の中で加熱するいわゆる茹でと呼ばれる方法が一般的であった。
【0003】
また、近年加湿と加熱を同時に行う調理器として特開平6−272866公報に記載されているようなものが提案されている。この加熱調理器は図6に示すように加熱室3内の食品5にマイクロ波加熱を行うためのマイクロ波加熱手段2と加熱室3内に水を霧状にして噴霧するための噴霧手段1を備えており、噴霧手段1によって発生された霧状の水滴4が、食品5の表面に達する間に、マイクロ波加熱手段2によって発生したマイクロ波により加熱されるように構成されている。
【0004】
そして上記の霧状の水滴4は食品5に達するまでに蒸気となり、食品5表面にすみやかに吸収するようになっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鍋で茹でる上記従来の一般的な方法の場合、大量の水を必要とし、しかもこの水を沸騰させるためには時間がかかると共に、水を沸騰しその水温を維持するためには大量のエネルギーを必要とすると言う課題があった。また大量に水を扱うために調理場は濡れやすく、使用した水は調理が終われば廃棄せねばならないから排水設備も必要で環境,設備が大袈裟になると言う課題があった。さらに、近年一般的となった冷凍食品を調理する場合、食品の中心部まで温度を上げるには時間が掛かるばかりでなく、長時間茹でると吸水が進み過ぎてしまうと言う課題もあった。
【0006】
また、上記特開平6−272866公報に記載されているような従来の調理器では、霧状の水を加熱して蒸気とする構成なので、食品に加湿できる水分量は高々蒸し加熱のレベルである。従って、調理済み食品を再加熱する時の乾燥を防止する程度の目的には十分ではあるが、茹で調理を目的とする場合には十分な吸水量が得られないと言う課題があった。図5はある冷凍食品を茹で加熱あるいは蒸し加熱した時の吸水率と中心温度の時間経過をグラフにしたものである。このグラフから茹で加熱と蒸し加熱では加熱速度に大差はないが、蒸し加熱の吸水速度は茹でに比べて非常に遅く、蒸しで実現できる吸水率は茹でに比べて大幅に小さいことがわかる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、マイクロ波加熱を行う加熱室内に、下部が盆状の皿 、上部がマイクロ波を透過する誘電体材料からなる蓋とで構成された第2の加熱室を設け、食品を第2の加熱室内に設けた開口を有する棚板に載置し、噴霧ノズルにより、第2の加熱室の上部から食品に向けて霧状の水滴を噴出して食品全体に水膜を形成し、そして水膜をマイクロ波加熱するようにしたものである。
【0008】
上記発明によれば吸湿,吸水に必要な水膜を形成,加熱するだけなので、必要とする水、及びその加熱熱量は必要最小限度におさえられと共に、大量の水を加熱する時間も必要としない。一方、吸水量と言う観点からすれば食品表面は高温の水膜で覆われて茹でと同じ状態になっているから、水分は十分食品表面から吸収される。さらに、水膜形成と水膜加熱が別々の手段で行われているので、食品の種類,形状,初期温等に応じて個別に制御し、吸水率と食品の中心温度を最適化することができるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる加熱調理器は、マイクロ波加熱手段からのマイクロ波を導く導波管を備えた加熱室内に、下部が盆状の皿、上部がマイクロ波を透過する誘電体材料からなる蓋とで構成された第2の加熱室を設け、第2の加熱室内に、食品を載置しかつ開口を有する棚板を設け、第2の加熱室の上部から食品に向けて霧状の水滴を噴出する噴霧ノズルを備え、噴霧ノズルから噴出した水滴により食品全体に水膜を形成し、水膜をマイクロ波加熱手段からのマイクロ波により加熱するようにしたものである。
【0010】
そして、霧化手段から噴霧される水滴は速度を持っているので、加熱室内で水膜加熱手段でほとんど加熱される事無く食品表面に衝突する。しかも食品に衝突付着する水滴の量は水滴の分布と共に水滴の速度に比例するから、食品表面には水膜を形成するのに十分な水量を供給出来る。
【0011】
また、食品が開口を有する棚板に載置されているため、巻き上がる気流により、直接噴霧された水滴の当たらない陰に相当する部分へもむらなく水滴を付着し水膜を形成することが出来る。
【0012】
さらに、第2の加熱室が噴霧された水滴の拡散を防止し、加熱された食品からの熱や蒸気の散逸を防ぐので、水膜がより均一で効率的に形成されると共に、加熱効率も高めることが出来る。マイクロ波を閉じこめる第1の加熱室は、マイクロ波のインピーダンス特性や分布特性のために、加熱する食品の大きさに合わせた大きさ,形状を取ることが出来ないことが多い。従って、マイクロ波的には透過し、機械的には遮蔽する誘電体材料を使って第2の加熱室を構成することで、マイクロ波上の特性と機械的,熱的特性をそれぞれ満足させたものである。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0014】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の要部概略断面図を示す。図1において、マイクロ波加熱手段2で発生したマイクロ波は食品5を収納する加熱室3内に導波管10を通じて導入される。水膜形成手段は刷毛部6とこれに給水する貯水漕7と、食品を回転する回転機構(図示せず)からなっている。刷毛部6は貯水漕7の底部壁面に貫通して固定され、貯水漕7の水は刷毛部6をこの貫通部7aから下方へ伝わる。この貯水漕7へは給水ポンプ8から水が供給される。ここで、供給する水はアルカリイオン水を用いることもある。その場合は給水ポンプ8にアルカリイオン製水器(図示せず)から供給することになる。食品5は自転する食品回転軸9に固定され、この食品回転軸9は加熱室3の壁面を貫通して加熱室3外に設けられた回転機構(図示せず)により回転される。
【0015】
次に動作,作用を説明する。貯水漕7の水は刷毛部6をつたって接触している食品5の表面に広がって行く。そして刷毛部6に含まれた水は、食品5に塗布されて減った分だけ貯水漕7から供給される。このメカニズムは万年筆や筆ペンと同じで水の表面張力の働きによるものと考えられる。そして食品は回転するので水塗布は促進され、しかも均一な水膜が形成される。又、回転速度を上げれば自動的に塗布量が増大するので、回転速度で塗布量を制御することも出来る。いずれにせよ、この方法によれば、刷毛部6から食品5に無駄なく水が移動し、滴下したりせず、従って滴下した水の処理の問題も発生しない。さらに、アルカリイオン水を使った場合、本発明の構成によれば、順次新しいアルカリイオン水が食品表面に供給されて水膜を形成する。よって、アルカリイオン水はそのアルカリ特性を維持した状態で食品表面に水膜を形成するので、澱粉系食品のα化が促進される。従来から、アルカリ性の水溶液が澱粉のα化を促進すること、またアルカリイオン水は澱粉系食品を浸けておくと、食品のイオン交換機能を持つ官能基と反応し、そのアルカリ特性を失うことが知られている。従来の様に鍋で食品を茹でる方法の場合、アルカリイオン水は長時間食品と接することになるのでそのアルカリ特性を失うが、本発明の構成であれば水膜を形成するまでは食品に接触しないのでこうした問題は発生せず、アルカリ特性を発揮出来る。
【0016】
一方、マイクロ波加熱手段2で発生したマイクロ波は食品5の表面に形成された水膜と食品そのものを加熱する。しかも加熱室3内に導入されたマイクロ波エネルギーはほとんど食品及び表面の水膜に吸収されるので高速で効率的な加熱が出来る。すなわち、マイクロ波は他の一般の伝熱手段とは異なり、食品の内部までそのエネルギーが到達するので、特に冷凍食品のように内部温度の昇温に時間のかかるものでも、短時間で昇温が可能となる。ここで特に注目すべき点は、一般の茹で加熱の場合は、マイクロ波加熱を併用して加熱速度を上げようとしても、食品は大量の水の中に在るためマイクロ波は食品に到達する前に水で吸収されてしまってマイクロ波加熱による高速加熱が実現出来ないことである。これに対し、本発明の方法によれば、食品を覆っているのは水膜のため、マイクロ波は水膜と同時に食品も加熱する。その結果、マイクロ波加熱の高速加熱性を生かしながら、十分な加湿も同時に出来る高速の加湿調理が実現出来ることになる。
【0017】
その結果、多量の水が付着して水膜の形成された食品表面は形成された水膜と共に昇温するので吸水速度は大幅に上昇し、多量の水分が吸収される。そして、噴霧量と加熱量を増やしていけば大量の湯を使わずに茹でと同等の状態が実現されることになる。よって水,エネルギー,時間の大幅な削減と共に、加湿,昇温の最適化も実現することができる。
【0018】
なお、前記実施例においては食品を回転したが、固定したままで刷毛部12から順次水が食品表面下方に流れ落ちるのを利用する構成や、コンベア式に食品を横に移動させて刷毛部と食品表面との接触塗布作用を促進する方法もある。
【0019】
(実施例2)
図2は本発明の実施例2の要部概略断面図を示す。本実施例2において、実施例1と異なる点は、水膜形成手段を食品の下部を浸ける水バット11と食品を回転させる回転機構(図示せず)とした点である。すなわち、水膜形成手段は、食品を浸ける水を入れる水バット11と、この水を供給するためのポンプ8と、食品を一部水に浸けながら回転するための回転機構(図示せず)から構成されている。水バット11はその下面にヒータ16を備えており、水バット11内の水を予め加熱している。
【0020】
なお、実施例1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0021】
次に動作,作用を説明する。食品5の下部は水バット11に供給された水に浸かっており、回転機構(図示せず)で回転すれば当然食品は順次水バット11の中に浸かって行く。水バット11の水はヒータ16により予め加熱されており、水バット11内の水に浸かっても食品5の温度が維持される。回転軸9近傍は直接水バット11内の水に浸かる訳ではないが水は表面をつたって全域に広がることになる。水膜を形成する水の量は回転速度と水バット11に浸かる深さにより制御出来るので高い制御性が得られる。
【0022】
一方、水バットへは調味液をいれることも出来る。この場合水膜は当然調味液で構成されるので、食品を調味液で煮たのと同等のことが実現される。これにより、高価な調味液が少量で済む上、環境汚染につながる使用後の調味液の廃棄も少なく出来る点で、一面茹で加熱以上の効果がある。しかも、本発明の構成の場合、水バット11内の調味液に直接食品が浸かる構成なので、調味液中の粘性成分や固形成分により目詰まりしたりする構成も無く、安定したシステムを実現することが出来る。
【0023】
(実施例3)
図3は本発明の実施例3の要部概略断面図である。本実施例3において、実施例1と異なる点は水膜形成手段を速度を持って食品に衝突する霧状の水滴を発生する霧化手段としたことである。
【0024】
加熱室3の上部天井面の一部には霧化手段である噴霧ノズル12が配置されており、その噴霧方向は食品5に向いている。噴霧ノズル12へ加圧した水を供給するポンプ13は加熱室3の外に設けられている。加熱室3の底部には周囲円周上に障壁14aを有する盆状の皿14が配置され噴霧ノズル12に対向する壁面を構成している。この盆状の皿14の上方には食品を載置する棚板15が設けられている。この板15には網状もしくは多数のパンチング孔を設けた構成になっている。
【0025】
なお、実施例1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0026】
次に動作,作用について説明する。噴霧ノズル12には圧力噴霧式霧化器が用いられており、ポンプ13により7kg/cmに加圧された水が供給されると、噴霧ノズル12からは粒径がほぼ60μm〜100μmの霧状の水滴が初速度を持って、約90度の噴霧角で食品5に向かって勢い良く噴出される。霧状の水滴は食品5に衝突して多量の水滴が表面に付着する一方、食品5下方に配置されている盆状の皿14に勢い良く吹き付けられ、巻きあがる気流を生ずる。盆状の皿14は周囲円周状に障壁14aを有しているので、吹き付けられた霧状の水滴はこの障壁14aによって食品5のある内側へ集まる。その結果、噴霧ノズル12から噴霧された水滴が直接当たり難い噴霧の陰にあたる食品表面にもむらなく水滴が付着する。噴霧は加熱の始めの段階では水膜を形成するまでの水量を確保するため、比較的多くの噴霧を必要とするが、一旦水膜が形成されればその後は水膜を維持する程度の水量でよい。この水量の制御はポンプ13を断続動作することで噴霧を断続して行われる。圧力を変えて噴霧量を変えていないので、噴霧の角度,速度,粒径分布は基本的に変わらず、食品5への水膜形成の分布を一定に保つことが出来る。
【0027】
(実施例4)
図4は本発明の実施例4の要部概略断面図である。本実施例4において、実施例3と異なる点はマイクロ波を閉じこめる加熱室3の内側に食品5を収納する第2の加熱室17を設けた点である。すなわち、第2の加熱室17は盆状の皿14とマイクロ波を透過する誘電体材料から構成された蓋18により構成されている。この蓋18はその上部中央に噴霧水滴が通過するための穴が開いている。
【0028】
なお、実施例3と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0029】
次に動作,作用について説明する。盆状の皿14に吹き付けられて生じた巻きあがる気流に乗った水滴は、盆状の皿14と蓋18により構成された第2の加熱室17内に閉じこめられ、噴霧の陰にある食品表面にもむらなく付着する。蓋18は誘電体材料で構成されているのでマイクロ波はこの蓋18を透過し、食品5と表面の水膜を加熱する。一方、加熱された食品5とその水膜からの熱や蒸気は蓋18で遮蔽されるので、第2の加熱室17外への散逸が防止される。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る加熱調理器は、少量の水で茹でと類似の機能が得られるとともに、水膜形成と加熱が別々の手段で行われているので、水,エネルギー,時間の大幅な削減と共に、食品の種類に応じた加湿,昇温の最適化も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における加熱調理器の要部概略断面図
【図2】 本発明の実施例2における加熱調理器の要部概略断面図
【図3】 本発明の実施例3における加熱調理器の要部概略断面図
【図4】 本発明の実施例4における加熱調理器の要部概略断面図
【図5】 冷凍食品を茹で加熱あるいは蒸し加熱した時の吸水率と中心温度の時間経過を示すグラフ
【図6】 従来の加熱調理器の要部概略断面図
【符号の説明】
1 噴霧手段
2 マイクロ波加熱手段
3 加熱室
5 食品
6 刷毛部
7 貯水漕
10 導波管
11 水バット
12 噴霧ノズル(霧化手段)
14 盆状の皿
15 棚板
14a 障壁
17 第2の加熱室
18 蓋

Claims (1)

  1. マイクロ波加熱手段からのマイクロ波を導く導波管を備えた加熱室内に、下部が盆状の皿、上部がマイクロ波を透過する誘電体材料からなる蓋とで構成された第2の加熱室を設け、前記第2の加熱室内に、食品を載置しかつ開口を有する棚板を設け、前記第2の加熱室の上部から食品に向けて霧状の水滴を噴出する噴霧ノズルを備え、前記噴霧ノズルから噴出した水滴により食品全体に水膜を形成し、前記水膜を前記マイクロ波加熱手段からのマイクロ波により加熱する加熱調理器。
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