JP3930585B2 - ゴム状重合体合成用の触媒系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤトレッドゴムコンパウンドに用いるのに優れたゴム状重合体を合成するための方法、該方法に使用する触媒系、及び該重合体を含むトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス転移温度が約−95℃のポリブタジエンゴムは、アルキルリチウム開始剤での非イオン重合によって製造することができる。このようなポリブタジエンゴムは一般に、分子量分布が狭く、シス異性体含有率が高い。そのようなゴムの加工性は、それらの分子量分布が狭いために最適なものではない。さらに、タイヤの耐トレッド摩耗特性は、ゴムのトランス異性体含有レベルを高めることによって改善することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとの共重合体はエマルジョン重合によって通常製造される。そのようなエマルジョン重合は一般にα−メチルスチレン/ブタジエンゴムの枝分かれ度が高くなり、高レベルのヒステリシスをもたらす。高ヒステリシスは不十分な回転抵抗性を招くので、これはタイヤトレッドゴムコンパウンドには望ましくない。
【0004】
アルファ−メチルスチレンは通常、約60℃(α−メチルスチレン重合の上限温度)より上の温度では、共役ジエン単量体と単独重合または共重合しない。共役ジオレフィン単量体が通常、α−メチルスチレンよりもずっと速く重合するという事実によって、商業ベースに基づく溶液重合によるそのような共重合体の合成は不可能であった。
【0005】
一般に温度が高いほど、重合速度は速くなる。従って、処理量を最大にするためには、適度に高い温度を商業的な重合に用いることが望まれる。しかしながら、α−メチルスチレンと共役ジオレフィン単量体とを約60℃より上の温度で共重合することは昔から実質的に不可能であった。60℃より下の温度では、重合速度および転換レベルが低いため、重合は商業的に不可能であることが証明されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このたび意外にも、トランス異性体含有率が30〜45%で、分子量分布が広いポリブタジエンゴムを、本発明の触媒系および技術を用いて陰イオン重合により合成しうることを見いだした。これらのポリブタジエンゴムは、ムーニー粘度が100を越えても標準的な市販の装置で加工することができる。そのようなポリブタジエンゴムはタイヤトレッドコンパウンドに用いると、加工性および耐摩耗性の両方が改善される。この種の重合体は自動車のモーター油のような潤滑油用の粘度調節剤として用いることもできる。
【0007】
本発明の触媒系および技術を用いて、広範囲な追加ゴム重合体を合成することができる。トランス含有率が高く、分子量分布の広いスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレンーイソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)およびイソプレン−ブタジエンゴム(IBR)を製造することができる。分子量分布が広い、従って良好な加工性を有するスチレン−イソプレンゴム(SIR)も合成することができる。
【0008】
本発明の触媒系は、α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとを60℃より高い温度にて溶液中で高転化率に共重合する特異な能力を有する。例えば、α−メチルスチレンは20℃〜約100℃の温度で共役ジオレフィンと共重合することができる。カリウムアルコキシド含有触媒系を用いる場合、約85%までのα−メチルスチレン単量体転化率を得ることができる。実質的に100%のアルファ−メチルスチレン単量体転化率は、セシウムアルコキシドまたはルビジウムアルコキシド含有触媒系を使用する場合に得ることができる。
【0009】
本発明はさらに詳しくは、タイヤトレッドゴムコンパウンドまたは粘度調節剤に特に有用な、広い分子量分布を有するゴム状重合体の合成方法であって、この方法は、少なくとも1種の共役ジオレフィン単量体を、有機溶媒中で、(a)ジアルキルマグネシウム化合物および(b)アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、アルカリ金属スルホキシド、アルカリ金属スルフォネート、アルカリ金属カルボキシレート、アルキル置換アルカリ金属フェノキシド、アルカリ金属アルキルアミン、およびアルカリ金属ジアルキルアミンよりなる群から選択されるアルカリ金属含有化合物を含み、アルカリ金属含有化合物対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約6:1〜約1:5である触媒系の存在下で重合することを含んでなる。
【0010】
本発明はまた、タイヤトレッドゴムコンパウンドに特に有用な、広い分子量分布を有する、α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとのゴム状共重合体の合成方法であって、この方法は、α−メチルスチレン単量体と1,3−ブタジエン単量体とを、有機溶媒中、約60〜約100℃で、(a)ジアルキルマグネシウム化合物;(b)炭素原子数が約2〜約12のカリウムアルコキシド、および(c)極性調節剤を含み;カリウムアルコキシド対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約6:1〜約1:5であり、極性調節剤対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約10:1〜約1:2である触媒系の存在下で共重合することを含んでなる。
【0011】
本発明はまた、タイヤトレッドゴムコンパウンドに特に有用な、広い分子量分布を有する、α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとのゴム状共重合体の合成方法であって、この方法は、α−メチルスチレン単量体と1,3−ブタジエン単量体とを、有機溶媒中、約60〜約100℃で、(a)ジアルキルマグネシウム化合物;(b)炭素原子数が約2〜約12のアルカリ金属アルコキシド、ここで、アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属はルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択される、および(c)極性調節剤を含み;アルカリ金属アルコキシド対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約6:1〜約1:5であり、極性調節剤対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約10:1〜約1:2である触媒系の存在下で共重合することを含んでなる。
【0012】
本発明はまた、共役ジオレフィンのゴム状重合体への重合に特に有用な触媒系であって、この触媒系は、(a)ジアルキルマグネシウム化合物;(b)炭素原子数が約2〜約12のアルカリ金属アルコキシド、ここで、アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属はナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択される;および(c)極性調節剤を含み;アルカリ金属アルコキシド対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約6:1〜約1:5であり、極性調節剤対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が約10:1〜約1:2である。
【0013】
本発明はさらに、タイヤトレッドゴムコンパウンドに特に有用な、広い分子量分布を有するゴム状共重合体の合成方法であって、この方法は、少なくとも1種の共役ジオレフィン単量体を、有機溶媒中で、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属のラジカル陰イオンを含み、このラジカル陰イオンが少なくとも1種の芳香族化合物を含有する極性媒質に溶解される触媒系の存在下で重合することを含んでなる。アルカリ金属のラジカル陰イオンは、アルカリ金属をテトラヒドロフランまたはトリエチルアミンのような極性溶媒に約−70℃で溶解することによってつくることができる。アルカリ金属のそのようなラジカル陰イオンは、アルカリ金属を芳香族化合物の存在下、約−60℃〜約−90℃の温度で溶解することによって一般につくられる。ラジカル陰イオンの製造には約−65℃〜約−75℃の温度が好ましい。
【0014】
各種芳香族化合物を用いてラジカル陰イオンを溶解することができる。用いうる芳香族化合物のいくつかの代表的な例はベンゼン、トルエン、ナフタレン、ペンタレン、インデン、as−インダセン、s−インダセン、アズレン、アセナフチレン、クメン、シメン、メシチレン、キシレン、ペンタセン、ヘキサセン、フェナレン、フェナントレン、ヘキサフェン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、ルビセン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペリレン、ペンタフェン、およびテトラフェニレンである。多核芳香族化合物(2つ以上の芳香環を有する芳香族化合物)である芳香族化合物、例えばナフタレン、アントラセンナフタセンまたはヘプタセンが好ましい。ラジカル陰イオン対芳香族化合物のモル比は通常、約1:5〜約1:25である。一般に好ましいラジカル陰イオン対芳香族化合物のモル比は約1:8〜約1:15である。通常最も好ましいラジカル陰イオン対芳香族化合物のモル比は約1:10である。アルカリ金属はナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から通常選択される。好ましいのはカリウム、ルビジウムおよびセシウムであり、最も好ましいのはセシウムである。
【0015】
本発明の重合は1種以上の芳香族、パラフィン系またはシクロパラフィン系化合物である炭化水素溶媒中で行われる。これらの溶媒は分子当たり4〜10個の炭素原子を通常含み、重合条件下で液体である。適した有機溶媒のいくつかの代表的な例はペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の単独またはこれらの混合物である。
【0016】
本発明の触媒系を用いる溶液重合では、重合媒質中の単量体は通常、5〜35重量%である。そのような重合媒質はもちろん、有機溶媒、単量体および触媒系を含む。たいていの場合、重合媒質は10〜30重量%の単量体を含有しているのが好ましい。重合媒質が20〜25重量%の単量体を含有していると一般により好ましい。
【0017】
本発明の触媒系は、共役ジオレフィン単量体の単独重合、または共役ジオレフィン単量体とビニル芳香族単量体との共重合に使用することができる。また、もちろん、共役ジオレフィン単量体と1種以上のビニル芳香族単量体との混合物を重合することも可能である。本発明の触媒系で合成することができるゴム状重合体のいくつかの代表的な例はポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、α−メチルスチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、イソプレン−ブタジエンゴム(IBR)、α−メチルスチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、およびα−メチルスチレン−スチレン−イソプレン−ブタジエンゴムである。
【0018】
本発明のゴム状重合体の合成に用いられる共役ジオレフィン単量体は4〜12個の炭素原子を一般に含む。商業的な目的には、4〜8個の炭素原子を含むものが一般に好ましい。同様な理由で、最も一般的に用いられる共役ジオレフィン単量体は1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。用いうる追加共役ジオレフィン単量体のいくつかの例は2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン等の単独またはこれらの混合物である。用いうるビニル芳香族単量体のいくつかの代表的な例は1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、4−フェニルスチレン、3−メチルスチレン等である。
【0019】
本発明の実施の際に用いられる触媒系は、ジアルキルマグネシウム化合物、アルカリ金属含有化合物、および任意に極性調節剤を含む。ジアルキルマグネシウム化合物は一般に式:MgR2で表され、Rは1〜約12個の炭素原子を含むアルキル基を表す。ジアルキルマグネシウム化合物のアルキル基は2〜約6個の炭素原子を通常含む。ジブチルマグネシウムは非常に好ましいジアルキルマグネシウム化合物である。
【0020】
本発明の触媒系で用いられるアルカリ金属含有化合物は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、アルカリ金属スルホキシド、アルカリ金属スルフォネート、アルカリ金属カルボキシレート、アルキル置換アルカリ金属フェノキシド、アルカリ金属アルキルアミン、およびアルカリ金属ジアルキルアミンよりなる群から選択される。アルカリ金属アルコキシドは本発明の触媒系に用いるのに好ましい種類のアルカリ金属含有化合物である。
【0021】
触媒系のアルカリ金属含有化合物のアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択される。α−メチルスチレン含有共重合体を合成する場合、アルカリ金属はカリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択される。α−メチルスチレン含有共重合体を合成する場合、より高い転化率が得られ、かつより高レベルのα−メチルスチレンを共重合体に組み込むことができるので、アルカリ金属含有化合物のアルカリ金属はルビジウムまたはセシウムであるのが好ましい。
【0022】
α−メチルスチレン含有共重合体を製造する場合、触媒系のアルカリ金属はセシウムであるのが一般に最も好ましい。例えば、セシウム含有触媒系を用いる場合、実質的に100%のα−メチルスチレン単量体転化率を得ることができる。カリウム含有触媒系を用いる場合、α−メチルスチレン単量体転化率は最高約85%に一般に限定される。セシウム含有触媒系を用いると、約50%までのα−メチルスチレン単量体を含有する共重合体を製造することもできる。これは、共重合体に組み込むことができるα−メチルスチレンの量が約25%に限られるカリウム含有触媒系とは対照的である。
【0023】
触媒系に用いうるアルカリ金属アルコキシドは通常、式MORで表され、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属であり、Rは約2〜約12個の炭素原子を含むアルキル基である。アルカリ金属アルコキシドは一般に、約2〜約12個の炭素原子を含む。一般に好ましいアルカリ金属アルコキシドは約3〜約8個の炭素原子を含む。一般に最も好ましいアルカリ金属アルコキシドは約4〜約6個の炭素原子を含む。アルカリ金属t−ペントキシド、例えばナトリウムt−アミロキシド(ナトリウムt−ペントキシド)、カリウムt−アミロキシド(カリウムt−ペントキシド)、ルビジウムt−アミロキシド(ルビジウムt−ペントキシド)、およびセシウムt−アミロキシド(セシウムt−ペントキシド)が好ましいアルカリ金属アルコキシドの代表的な例であり、これらは本発明の触媒系に用いることができる。セシウムt−アミロキシドおよびルビジウムt−アミロキシドは、α−メチルスチレン含有共重合体の合成に用いるのに非常に好ましいアルカリ金属アルコキシドであり、セシウムt−アミロキシドが最も好ましい。
【0024】
触媒系に用いうるアルカリ金属フェノキシドは通常、式MO−φで表されるものであり、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属であり、φはフェニル基を表す。ルビジウムフェノキドおよびセシウムフェノキドは好ましいアルカリ金属フェノキシドであり、セシウムフェノキドが最も好ましい。
【0025】
置換アルカリ金属フェノキシドも本発明の触媒系に用いることができる。そのような置換アルカリ金属フェノキシドでは、フェニル基上の1〜5個の水素原子が1〜約10個の炭素原子を含むアルキル基で置換される。
【0026】
使用しうるアルカリ金属スルホキシドは構造式M2SOで表されるものであり、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属である。使用しうるアルカリ金属スルホネートは構造式M−SO3Hで表されるものであり、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属である。使用しうるアルカリ金属カルボキシレートは構造式M−COOHで表されるものであり、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属である。
【0027】
本発明の触媒系に用いうるアルカリ金属アルキルアミンは式M2NRのt−アミンまたは式MNHRのsec−アミンであり、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属であり、Rは約2〜約12個の炭素原子を含むアルキル基である。アルカリ金属アルキルアミンは一般に、約2〜約12個の炭素原子を含むアルキル基を有する。一般に好ましいアルカリ金属アルキルアミンのアルキル基は、約3〜約8個の炭素原子を含む。
【0028】
本発明の触媒系に用いうるアルカリ金属ジアルキルアミンは式MNR2のt−アミンであり、式中、Mはナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムよりなる群から選択されるアルカリ金属であり、Rは約2〜約12個の炭素原子を含むアルキル基であり、これらは同じものでも異なるものでもよい。アルカリ金属ジアルキルアミンは一般に、約2〜約12個の炭素原子を含むアルキル基を有する。一般に好ましいアルカリ金属ジアルキルアミンのアルキル基は、約3〜約8個の炭素原子を含む。
【0029】
ルイス塩基として作用するエーテルおよびt−アミンは用いうる極性調節剤の代表的な例である。一般的な極性調節剤のいくつかの具体例はジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジーn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−フェニルモルホリン等である。ジピペリジノエタン、ジピロリジノエタン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、TMEDAおよびテトラヒドロフランが非常に好ましい調節剤の代表例である。第3キレート化アルキル1,2−エチレンジアミン、例えばTMEDAは最も好ましい極性調節剤である。
【0030】
アルカリ金属含有化合物対ジアルキルマグネシウム含有化合物のモル比は約6:1〜約1:5である。アルカリ金属含有化合物対ジアルキルマグネシウム含有化合物の好ましいモル比は約4:1〜約1:2である。アルカリ金属含有化合物対ジアルキルマグネシウム含有化合物のより好ましいモル比は約3:1〜約1:1である。アルカリ金属含有化合物対ジアルキルマグネシウム含有化合物の最も好ましいモル比は約5:2〜約3:2である。
【0031】
α−メチルスチレン含有共重合体の合成におけるように、極性調節剤を用いる場合、極性調節剤対ジアルキルマグネシウム含有化合物のモル比は約10:1〜約1:2である。極性調節剤対ジアルキルマグネシウム含有化合物の好ましいモル比は約6:1〜約1:1である。極性調節剤対ジアルキルマグネシウム含有化合物のより好ましいモル比は約3:1〜約3:2である。極性調節剤対ジアルキルマグネシウム含有化合物の最も好ましいモル比は約5:2〜約2:1である。
【0032】
使用重合温度は約60〜約100℃の広い範囲で変えることができる。たいていの場合、約62〜約80℃の範囲の温度を用いる。約65〜約75℃の温度が一般に最も好ましい重合温度である。使用圧力は一般に、重合反応条件下で実質的に液相を維持するのに十分な圧力である。
【0033】
重合は、単量体の転化率が最大となるのに十分な時間行う。換言すると、重合は通常、高転化率が得られるまで行う。カリウムアルコキシド含有触媒系の場合、α−メチルスチレン単量体転化率は通常約80〜約85%となる。セシウムアルコキシド含有触媒系の場合、α−メチルスチレン単量体転化率は少なくとも約90%、好ましくは少なくとも95%となる。重合はその後、標準的な方法を用いて停止することができる。重合は一般的な非カップリングタイプの停止剤、例えば水、酸、低級アルコール等、またはカップリング剤で停止することができる。
【0034】
本発明の方法によって製造される溶液α−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、ブタジエン反復単位に基づいて、35〜45%のビニルおよび55〜65%の1,4−異性体構造の固定ミクロ構造を含む。α−メチルスチレン反復単位は本質的にはランダムにゴム状共重合体中に分散されており、すべての1,3−ブタジエン単量体が使い尽くされたら、α−メチルスチレン反復単位はほんのわずかとなる。事実、α−メチルスチレンから誘導される50〜80%の反復単位は、反復単位が1つだけのブロック中に存在する。タイヤトレッドコンパウンド用のα−メチルスチレン−ブタジエンゴムは、約30〜約50%のα−メチルスチレンおよび約50〜70%のブタジエンを含有するのが好ましい。そのような重合体は約35〜約45%のα−メチルスチレンおよび約55〜65%のブタジエンを含有するとさらに好ましい。
【0035】
溶液重合で本発明の技術を利用することによって製造されるゴムは、一般的な技術で回収することができる。製造されるポリジエンゴムが酸素との接触で有害作用を受けないように、重合体溶液に酸化防止剤を加えるのが望ましい。製造されるゴムは、イソプロルアルコールのような低級アルコールを重合体溶液に加えることによって、重合体溶液から沈殿させることができる。ゴム状重合体は、デカンテーション、濾過、濃縮等の手段により溶媒および残留物から回収することができる。揮発性有機化合物をゴムから除去するためには、水蒸気ストリッピングを用いることもできる。
【0036】
本発明のゴム状重合体をタイヤトレッドコンパウンドに用いると、有用な利点が伴う。そのようなタイヤトレッドコンパウンドは本発明のゴム状重合体と1種以上の追加加硫性エラストマーとの配合物である。例えば、タイヤトレッドコンパウンドの製造では、本発明のα−メチルスチレン−ブタジエンゴムは天然ゴム、および任意に高シス−1,4−ポリブタジエンおよび/またはスチレン−ブタジエンゴムと配合することができる。そのような配合物は約20〜約80重量%のα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴムおよび約20〜約80重量%の他の加硫性ゴムを通常含有する。
【0037】
特に好ましいタイヤトレッドコンパウンドの1種は、ゴム100重量部に基づいて、(a)約30〜約50部のα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、および(b)約50〜約70部の天然ゴムを含む。最も好ましいこのタイヤトレッドコンパウンドは、ゴム100重量部に基づいて、(a)約35〜約45部のα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、および(b)約55〜約65部の天然ゴムを含む。
【0038】
本発明のα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴムで製造しうるタイヤトレッドコンパウンドの別の代表的な例は、ゴム100重量部に基づいて、(a)約30〜約40部のα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、(b)約20〜約50部の天然ゴム、(c)約10〜約40部のスチレン−ブタジエンゴム、および(d)約0部〜約50部の高シス−1,4−ポリブタジエンゴムを含む。
【0039】
そのようなタイヤトレッドコンパウンドはシリカ充填材をさらに含有しうる。カーボンブラックとシリカとの組み合わせを用いることができる。例えば、約30〜約80部のカーボンブラックと約10〜約40部との組み合わせをそのような配合物に通常用いることができる。シリカ対カーボンブラックの重量比は通常は少なくとも1:1である。一般に好ましいシリカ対カーボンブラックの重量比は少なくとも4:1である。
【0040】
場合によっては、約60〜100部のシリカを含み、カーボンブラックを実質的に含まない配合物を用いるのが好ましい。そのような場合、60〜80部のシリカを含む配合物がより好ましい。これらの配合物は充填材として実質的にカーボンブラックを含まないが、少量のカーボンブラックを黒色付与剤として配合物に混合したり、またはカップリング剤のような化学添加剤のための担体として用いることが考えられる。一般に、色彩を付与する目的に要するカーボンブラックの量は、配合物中のゴム100部当たり10部未満であり、一般に配合物中のゴム100部当たり5部未満である。
【0041】
これらのα−メチルスチレン化ゴム含有配合物は一般的な成分および標準的な技術を用いて配合することができる。例えば、スチレン−イソプレンゴム含有配合物は一般には、カーボンブラックおよび/またはシリカ充填材、硫黄、促進剤、油、ワックス、スコーチ防止剤並びに加工助剤と共に配合する。たいていの場合、スチレン−イソプレン含有ゴム配合物は硫黄および/または硫黄含有化合物、少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の促進剤、少なくとも1種の劣化防止剤、少なくとも1種の加工助剤、酸化亜鉛、任意に粘着付与剤、任意に強化樹脂、任意に1種以上の脂肪酸、任意にしゃく解剤、および任意に1種以上のスコーチ防止剤と共に配合する。そのような配合物は約0.5〜5phr、好ましくは1〜2.5phr(重量に基づくゴム100部当たりの部)の硫黄および/または硫黄含有化合物を通常含有する。ブルームが問題となる場合、不溶性硫黄を用いるのが望ましい。
【0042】
通常は10〜150phr、好ましくは30〜95phrの少なくとも1種の充填材を配合物に用いる。たいていの場合、少なくともいくらかのカーボンブラックを充填材中に用いる。充填材はもちろん、全部がカーボンブラックよりなっていてもよい。シリカを充填材に含めると、引き裂き抵抗および発熱性を改善することができる。クレーおよび/またはタルクを充填材に含めるとコストを減じることができる。
【0043】
熱分解法シリカおよび沈降珪酸質顔料(シリカ)を含めた、ゴムの配合分野で一般に用いられる珪酸質顔料を、本発明ではシリカとして用いることができるが、沈降シリカが好ましい。本発明で用いられる好ましい珪酸質顔料は沈降シリカ、例えば、珪酸ナトリウムのような可溶性珪酸塩の酸性化によって得られるものである。
【0044】
そのようなシリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定したBET表面積が好ましくは約40〜約600、より通例は50〜300m2/gであるという特徴を有する。表面積を測定するBET法についてはJournal of the American Chemical Society、第60巻、p.304(1930)に記載されている。シリカはまた、ジブチルフタレート(DBP)吸収値が約100〜約400、より通例は約150〜約300であるという特徴を一般に有する。
【0045】
シリカの平均最適粒子サイズは、例えば電子顕微鏡で測定して0.01〜0.05ミクロンであると予想されるが、シリカ粒子の大きさはこれより小さくても大きくてもよい。
【0046】
本発明で用いられる各種市販のシリカは、例えば、PPGインダストリーズ社からHi−Silの登録商標名で市販されている210、243等のシリカ、Rhone−Poulenc社から販売されているZ1165MPおよびZ165GRのようなシリカ、並びにDegussa社から販売されているVN2およびVN3等のようなシリカが考えられるが、これらは例示したものにすぎず、これらに限定されない。PPG Hi−Silシリカが一般には好ましい。
【0047】
配合物は通常、0.1〜2.5phr、好ましくは0.2〜1.5phrの少なくとも1種の促進剤を含有する。劣化防止剤、例えば酸化防止剤およびオゾン亀裂防止剤は一般に、配合物に0.25〜10phr、好ましくは1〜5phrの量で含有される。加工油は一般に、配合物に2〜100phr、好ましくは5〜50phrの量で含有される。本発明のSIR含有配合物はまた通常、0.5〜10phr、好ましくは1〜5phrの酸化亜鉛を含有する。これらの配合物は任意に、0〜10phrの粘着付与剤、0〜10phrの強化樹脂、1〜10phrの脂肪酸、0〜2.5phrのしゃく解剤、および0〜1phrのスコーチ防止剤を含有しうる。
【0048】
本発明のゴム配合物は、通常のタイヤ製造技術でタイヤトレッドに用いることができる。タイヤは標準的な方法を用いて製造され、本発明のゴム状重合体コンパウンドは、トレッドゴムとして一般に用いられるゴムコンバウンドの代わりに用いるだけである。タイヤを本発明の配合物で製造した後、通常のタイヤ硬化サイクルを用いて加硫することができる。本発明によって製造されるタイヤは広い温度範囲で硬化することができる。しかしながら、本発明のタイヤは約132℃(270°F)〜約166℃(330°F)で硬化するのが一般的に好ましい。本発明のタイヤは約143℃(290°F)〜約154℃(310°F)で硬化するのがより一般的である。本発明のタイヤの加硫に用いる硬化サイクルは、約10〜約14分であるのが一般に好ましく、最も好ましい硬化サイクルは約12分である。
【0049】
本発明を次の実施例で説明する。これらの実施例は単に説明のためのものであり、本発明の範囲および本発明の実施方法を限定するものではない。特に断りがなければ、部および%は重量によるものである。
【0050】
【実施例】
実施例1
この実験では、1,3−ブタジエン単量体の単独重合を、空気駆動撹拌機、窒素ライン、水冷コイル、破裂(rupture)ディスクおよびダンプタンク、並びに温度サージに対して保護するソレノイドコントローラーを備えた1ガロン(4.55リットル)バッチ反応器内で行った。反応器は陰イオン重合のために予め状態調節しておいた(乾燥窒素でパージした)。この反応器へ、ヘキサン溶液中の14.6%1,3−ブタジエン2000gを加えた。初期濃度をガスクロマトグラフィー(GC)分析により測定したところ、固形分は14%であった。反応器内容物を65℃の反応温度に調整し、平衡にした。
【0051】
触媒含有率はジブチルマグネシウムに基づいて決定した。350,000g/モル重合体を製造するのに必要なジブチルマグネシウムはヘキサン中の0.73Mジブチルマグネシウム溶液1.15mlであった。ナトリウムアミレート/ジブチルマグネシウムのモル比は4/1であるのが望ましいので、ヘキサン中の1.0Mナトリウムアミレートは3.35mlにした。その後、装填反応器を次のように触媒処理した:まず、ヘキサン中の0.73Mジブチルマグネシウム溶液0.3ml、次いでヘキサンリンスおよび微量のヘキサン中の1.0Mナトリウムアミレートを導入した。これらは系の空気または不純物を除去するのに十分なものであった。必要ならば、さらにジブチルマグネシウムを、UV FORSを使用していくらかの反応が検出されるまで加えた。触媒量のナトリウムアミレート、次いでジブチルマグネシウムを加えた。全ての試薬は活性成分に対して予め滴定した。
【0052】
完全な転化が達成されたことを未転化単量体のGC分析が示すまで、反応器を4.5時間等温撹拌した。転化が完了したら、内容物(重合体および溶媒)を窒素下で1ガロンポリプロピレンジャグに移した。重合体セメントは必要ならば酸化防止剤で安定化した。重合体を乾燥した後、DSC、GPC、ムーニー粘度およびNMR分析した。この分析をまとめると、ガラス転移温度(Tg)は−73.18℃、ムーニーML−4粘度は120、トランス含有率は38%、シス含有率は24%、1,2−異性体含有率は38%、重量平均分子量は613,000、そして重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.9であった。
【0053】
実施例2
様々なナトリウムアミレート/ジブチルマグネシウム比および様々な重合温度で、実施例1の手順を繰り返した。いくつかの反応では、プロピレンを反応器へ加えた;反応速度は遅いが、この添加は加工性を改善するように思われた。ポリブタジエンについての結果は表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
NaOAmはナトリウムアミレートを表し、MgR2はジブチルマグネシウムを表す。従って、表1において、NaOAm/MgR2はナトリウムアミレート対ジブチルマグネシウムの比を表す。表1の第2欄に示す温度は用いた重合温度である。表1の第3欄には、重合中に存在したプロピレンの量を示す。Tgは合成された重合体のガラス転移温度を表す。製造された重合体のムーニーML−4粘度、トランス異性体含有率、シス異性体含有率、ビニル(1,2−)異性体含有率、重量平均分子量(Mw)、および重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)も表1に示す。
【0056】
実施例3
ナトリウムアミレートの代わりにカリウムアミレートおよびTMEDAを用いて、類似のポリブタジエンを製造する。実施例1に記載の手順を用いたところ、表2に示す重合体が製造された。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例4
スチレンとブタジエンとの共重合体を、ナトリウムアミレートおよびジブチルマグネシウムを用いて製造した。反応器へ、ヘキサン中の14.1%ブタジエン溶液1702gおよびヘキサン中の22.5%スチレン溶液245gを加えて、スチレン/ブタジエン組成が19/81の重合体を得た。実施例1に記載の手順を用い、ヘキサン中の0.73Mジブチルマグネシウム1.15mlおよびヘキサン中の1.0Mナトリウムアミレートを触媒として用いた。不純物を除去するために、反応が検出される前に、0.73Mジブチルマグネシウムを0.4ml、次いで追加の0.2mlを加えた。反応はGC分析を用いて追跡し、スチレンおよびブタジエンがこの触媒でランダムに組み込まれていることが明らかになった。重合体特性は表3に示す。
【0059】
ナトリウムアミレートは、ジブチルマグネシウムと共に用いるとき、特異なスチレン−ブタジエンゴムを製造する。ナトリウムアミレートは、スチレンを反応の始めでブロックするカリウムアミレートおよびスチレンを反応の終わりでブロックするリチウムアルキルと対照的に、転化単量体のGC分析で示されるように、スチレンをランダムに組み込む。TMEDAガ存在しても、ナトリウムアミレートとジブチルマグネシウムはやはりスチレンをランダムに組み込む。しかしながら、TMEDAを系に加えると、表3に示されるように、ビニル含有率を高め、ガラス転移温度はより高くなる。
【0060】
実施例5
実施例4の手順に従って、異なる比率のスチレン/ブタジエン共重合体をさらに製造したり、あるいはカリウムアミレート/TMEDA/ジブチルマグネシウム触媒を用いた。結果は表3に示す。実質的に100%の転化率がこの一連の実験で得られた。実施例4に記載のSBRとは異なり、この重合体はいくらかスチレンブロック性を示す。
【0061】
【表3】
1 − Stはスチレン、Bdは1,3−ブタジエンを表す。従って、St/Bdは共重合体中のスチレン対ブタジエンの比である。
2 − %Stは共重合体中の結合スチレンの百分率を表す。
3 − %1,4は共重合体中の1,4−異性体ミクロ構造の百分率を表す。
【0062】
実施例6
実施例5で製造されたスチレン/ブタジエン共重合体と同様に、他の共重合体を製造することができる。イソプレン/ブタジエンおよびスチレン/イソプレン共重合体は、実施例1に記載のおよび実施例4の共重合体のために変更した一般的な重合手順を用いて製造した。これらの2種の共重合体についての結果を、それらの比率および使用触媒と共に、表4および5に示す。カリウムアミレート/TMEDA/ジブチルマグネシウムからのイソプレン/ブタジエンはブロック状になる傾向である。
【0063】
【表4】
1 − %1,2PIは1,2−異性体構造であるポリイソプレン反復単位の百分率を表す。
2 − %1,4PIは1,4−異性体構造であるポリイソプレン反復単位の百分率を表す。
3 − %3,4PIは3,4−異性体構造であるポリイソプレン反復単位の百分率を表す。
【0064】
【表5】
1 − 比は、ナトリウムアミレート対ジブチルマグネシウムの比またはナトリウムアミレート対TMEDA対ジブチルマグネシウムの比を表す。
2 − %Stブロックは、ポリスチレンブロック中のスチレン反復単位よりなる重合体中の反復単位のおおよその百分率である。
3 − %Stランダムは、重合体中にランダムに分布されているスチレン反復単位よりなる重合体中の反復単位のおおよその百分率である。
【0065】
実施例7
スチレン、イソプレンおよびブタジエンを含む三元共重合体はまた、上記の手順により製造することができる。結果は表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
実施例8
α−メチルスチレンとブタジエンとの共重合を、空気駆動撹拌機、窒素ライン、水冷コイル、破裂板およびダンプタンク、並びに温度サージに対して保護するソレノイドコントローラーを備えた1ガロンバッチ反応器内で行った。反応器は陰イオン重合のために予め状態調節しておいた(乾燥窒素でパージした)。この反応器へ、ヘキサン中の0.909g/mlのα−メチルスチレン溶液38.5mlおよびヘキサン中の17.5%Bd溶液1800gを加えたところ、α−メチルスチレン/ブタジエンの比は10/90となった。初期濃度をGC分析で測定したところ、固形分は18.3%であった。反応器内容物を65℃の反応温度に調整し、平衡にした。
【0068】
触媒含有率はジブチルマグネシウムに基づいて測定した。350,000g/モル重合体を製造するのに必要なジブチルマグネシウムはヘキサン中の0.73Mジブチルマグネシウム溶液1.35mlであると判断した。カリウムアミレート/TMEDA/ジブチルマグネシウムのモル比は2/2/1であるのが望ましいので、ヘキサン中の1M TMEDAは2.0mlおよびヘキサン中の0.86M カリウムアミレートは2.3mlにした。その後、装填反応器を次のように触媒した:まず、ヘキサン中の0.73Mジブチルマグネシウム溶液0.3ml、次いでヘキサンリンスおよび微量のヘキサン中の0.86Mカリウムアミレートを導入した。これらは系の空気または不純物を除去するのに十分なものであった。必要ならば、さらにジブチルマグネシウムを、UV FORSを使用していくらかの反応が検出されるまで加えた。触媒量のカリウムアミレートおよびTMEDAを加えた。最後に、ジブチルマグネシウムを加えた。全ての試薬は活性成分に対して予め滴定した。
【0069】
完全な転化が達成されたことを未転化単量体のGC分析が示すまで、反応器を3.5時間等温撹拌した。このGC分析から、単量体転化率対全体転化率および重合体組成対転化率も測定した。転化が完了したら、内容物(重合体および溶媒)を窒素下でポリプロピレンの1ガロンジャグに移した。重合体セメントは必要ならば酸化防止剤で安定化させた。重合体を乾燥した後、DSC、GPC、ムーニー粘度およびNMR分析した。結果は表7に示す。
【0070】
実施例9
様々なα−メチルスチレン/ブタジエン比について、実施例8の手順を繰り返した。結果を表7に示す。
【0071】
【表7】
【0072】
実施例10
この一連の実験では、実施例8に記載の手順を用い、実施例8で用いたカリウムアミレートの代わりにセシウム2−エチルヘキソキシドを用いて各種重合体を合成した。これらの実施例で合成されたα−メチルスチレンとブタジエンとの共重合体の特徴を表8にまとめた。
【0073】
【表8】
1 − CsORはセシウム2−エチルヘキソキシドを表す。
2 − %α−Stは共重合体中の結合α−メチルスチレンの百分率を表す。
【0074】
実施例11
α−メチルスチレンおよびブタジエンと共に、追加の単量体を含めることにより、三元共重合体を実施例8における一般的な手順を用いて製造した。実験ではα−メチルスチレン/イソプレン/ブタジエンは25/50/25であり、反応器へ446gの23.9%α−メチルスチレン、1330gの16%イソプレンおよび584gの18.2%ブタジエンを入れた。実施例8の手順に従って、1.95mlの0.73Mジブチルマグネシウムを用いて、目標分子量300,000g/モルを得た。2/2/1比のセシウム2−エチルヘキソキシド/TMEDA/ジブチルマグネシウムにするために、0.8Mセシウム2−エチルヘキソキシドを3.55mlおよび1M TMEDAを2.85mlにした。まず、0.5mlの0.73Mジブチルマグネシウム、次いで、ヘキサンリンスおよび微量のセシウム2−エチルヘキソキシドを加えて不純物を除去した。これは十分ではないので、追加の0.3mlの0.73Mジブチルマグネシウムを加えたところ、反応がいくらか生じたことをUV FORSが示した。次に、実施例8に記載の手順に従い、そして転化率対時間、単量体転化率対全体転化率、および重合体組成対全体転化率を調べた。分析から、製造された三元共重合体のTgは−39℃、ムーニーML−4粘度は18.5であることが分かった。ブタジエンから誘導されたが、三元共重合体の反復単位のミクロ構造は13%の1,2−異性体および11%の1,4−異性体であった。イソプレンから誘導された三元共重合体の反復単位のミクロ構造は34%の1,4−異性体、17%の3,4−異性体および0%の1,2−異性体であった。
【0075】
実施例12
実施例11に記載の同じ手順を用いて、α−メチルスチレン、スチレンおよびブタジエンの20/10/70三元共重合体を製造した。40分以内で95%を越える転化率となった。製造された三元共重合体のTgは−53℃、ムーニーML−4粘度は68あった。
【0076】
実施例13
この実験では、22%のα−メチルスチレン、23%のスチレン、15%のイソプレンおよび40%のブタジエンよりなる重合体を、実施例11に記載のセシウム2−エチルヘキソキシド/TMEDA/ジブチルマグネシウム触媒系を用い、65℃の重合温度で合成した。製造された重合体のガラス転移温度は−37℃であった。
【0077】
実施例14
セシウム2−エチルヘキソキシド/TMEDA/ジブチルマグネシウム触媒系を用いて製造された様々な比率のα−メチルスチレン/ブタジエン共重合体を内部ミキサー中で配合した。表9において製造された様々なタイヤトレッドコンパウンドを用いた。表9の50phr(ゴム100部当たりの部)のスチレン−ブタジエンゴムの変わりに、α−メチルスチレン/ブタジエンの20/80、30/70および40/60の共重合体を評価した。評価した別のタイヤトレッドゴム配合物では、スチレン−ブタジエンゴムの変わりに、α−メチルスチレン/スチレン/ブタジエンの20/10/70三元共重合体も評価した。配合材料の動的温度特性をDSCおよびレオビブロンによって分析した。貯蔵弾性率、損失弾性率、およびレオバイロン分析から得られた異なる温度でのtan δに基づいて、タイヤ特性を数学モデルを用いて予測した。予測されたタイヤ特性は表11に示す。評価した重合体のガラス転移温度は表10に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
注: 純粋な実験重合体のTgは表3および5に示す。
【0080】
【表11】
1 − ”mph”はマイル/時を表す。
【0081】
転がり抵抗性、耐不規則摩耗性(irregular wear)、けん引特性を表11に無次元単位で予測した。転がり抵抗性については、数が小さいほど転がり抵抗性は優れている。この場合、α−メチルスチレン含有重合体で製造されたタイヤトレッドコンパウンドは、対照と本質的に等しい転がり抵抗性であることが予測された。
【0082】
耐不規則摩耗性については、数が小さいほど優れている。表11から分かるように、α−メチルスチレン含有重合体は対照以上に改善された耐不規則摩耗性を一般に示した。事実、30%および40%のα−メチルスチレンを含有するα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴムで製造されたトレッドコンパウンドは、対照よりも大きく改善された耐不規則摩耗性を示た。データはまた、α−メチルスチレン−スチレン−ブタジエンゴムが耐不規則摩耗性を大きく改善しうることも予測した。
【0083】
けん引については、数が大きいほど優れている。けん引特性は20mph(マイル/時)および40mphの速度であることが予測された。表11から分かるように、α−メチルスチレン含有重合体は20mphおよび40mphの両方で、対照よりも改善されたけん引特性を一般に示した。事実、30%および40%のα−メチルスチレンを含有するα−メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴムで製造されたトレッドコンパウンドは、対照よりも著しく改善されたけん引特性を示た。データはまた、α−メチルスチレン−スチレン−ブタジエンゴムが20mphおよび40mphの両方で、けん引特性を大きく改善しうることも予測した。
【0084】
実施例15
各種α−メチルスチレン−ブタジエン共重合体をまた、タイヤトレッドゴムコンパウンドの溶液スチレン−ブタジエンゴムを部分的に置き換えることで評価した。この実験では、20%、30%および40%のα−メチルスチレンを含有するα−メチルスチレン/ブタジエン共重合体を、カーボンブラック、加硫系および劣化防止剤含有コンパウンド(標準コンパウンド試験配合)中で評価した。標準物理的特性は、α−メチルスチレン含有共重合体が粘着性および溝引き裂き特性を改善することを示した。
【0085】
本発明の説明のために特定の代表的態様および詳細を示してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく変更しうることは当業者にとって明らかなことである。
Claims (3)
- タイヤトレッドゴムコンパウンドに特に有用な、広い分子量分布を有する、α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとのゴム状共重合体の合成方法であって、α−メチルスチレン単量体と1,3−ブタジエン単量体とを、有機溶媒中、60℃〜100℃で、(a)ジアルキルマグネシウム化合物;(b)炭素原子数が2〜12のセシウムアルコキシド;および(c)極性調節剤を含み;かつセシウムアルコキシド対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が6:1〜1:5であり、極性調節剤対ジアルキルマグネシウム化合物のモル比が10:1〜1:2である触媒系の存在下で共重合することを特徴とし、
該極性調節剤がジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、およびN−フェニルモルホリンより成る群から選択される
前記の方法。 - タイヤトレッドゴムコンパウンド用の、請求項1記載の方法によって製造される、α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとのゴム状共重合体、ここで該共重合体は30〜50重量%の結合α−メチルスチレンを含む。
- トレッドが、(a)請求項1記載の方法によって製造される、α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとのゴム状共重合体、ここで該共重合体は30〜50重量%の結合α−メチルスチレンを含む;および(b)該α−メチルスチレンと1,3−ブタジエンとのゴム状共重合体と同時硬化可能な少なくとも1種の追加のゴム状重合体を含むことを特徴とする加硫ゴム組成物である、外周トレッドを有する空気入りタイヤ。
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