JP3930086B2 - 輪転印刷機のインキ壷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、輪転印刷機のインキ壷装置に関し、特にインキ壷装置の洗浄を容易にするための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の輪転印刷機のインキ壷装置においては、印刷作業の終了時あるいはインキの色替え作業時にインキ壷装置の洗浄作業が行われる。このインキ壷の洗浄は、次に新しく行う印刷物に対して印刷を終了した前作業のインキが残っていると、新しく行う印刷物の品質が低下するため、丁寧に行う必要がある。このため、洗浄を行う作業者は、ウェスや洗浄液等を使用して繰り返し行う必要があり、ウェスや洗浄液等を多く消耗するとともに、作業者の労働負荷も大きく、改善が望まれていた。
【0003】
これを改善したものとして、特公平1−54197号公報に提案されたものがある。ここに提案されたものは、ブレード台上に並設された複数個の分割ブレードと、この分割ブレード上に重ね合わされた磁性体からなる薄鋼板とを備え、分割ブレードにマグネットを埋設して薄鋼板を分割ブレードの上面に吸着させるように構成し、薄鋼板によってインキ壷からのインキが分割ブレード内に漏れるのを防止するとともに、薄鋼板の着脱を容易にして洗浄ならびに色替え作業を軽減したものである。
また、実公平2−42448号公報に提案されたものは、ブレード台上に分割ブレードを摺動自在に載置し、この分割ブレード上に薄鋼板からなる押え板が被せられ、分割ブレードをブレード台と押え板との間を摺動させることにより、ブレード台ならびに分割ブレード上の残留インキの除去を容易にしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1の例では、洗浄ならびに色替え作業に際し、薄鋼板を容易に取り外すことができ、このため洗浄作業は軽減されるが、薄鋼板を取り外したときに、薄鋼板に付着したインキが分割ブレード上に垂れ落ちる虞がある。この場合にはインキが分割ブレード内に侵入して固形化するため、分割ブレードの円滑な移動が阻害され、壷ローラとの間の間隔調整が精度よく行えないといった問題がある。
また、第2の例では、押え板の洗浄を分割ブレードに取り付けたままの状態で行うため、ウェスや洗浄液等を使用しての作業となり、作業性が悪く、依然として作業者の負担が大きい。そして、複数の分割ブレードを個々に摺動させるため作業時間がかかるとともに、洗浄時に摺動させた分割ブレードを次の印刷時に絵柄に合わせて再度個々に摺動させて壷ローラの周面との隙間調整を行うため作業が煩雑となるといった問題がある。
【0005】
したがって、本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、分割ブレード内へのインキの進入を防止するとともに、作業者の負担の軽減を図ることにある。また、第2の目的は、洗浄作業の迅速化と洗浄作業に起因する印刷機械の停止時間の削減を行い、生産性の向上を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明に係る輪転印刷機のインキ壺装置は、壺ローラと、インキせきと、複数個に分割されたブレードと、これらブレードの上面に設けられたカバー部材とを備え、前記カバー部材を上下2枚のカバー部材で構成し、上側のカバー部材を下側のカバー部材に対して着脱自在に支承させ、下側のカバー部材を壺ローラに対して遠近方向に摺動自在となるように取付けた。
したがって、洗浄の際には上側のカバー部材を取り外し、替わりの洗浄済みのカバー部材を取り付けることができる。取り外した上側のカバー部材は、洗浄液槽内で洗浄することができる。また、ブレードに付着した残留インキは、下側のカバー部材を摺動させることによって取り除きやすい位置に移動させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明に係る輪転印刷機のインキ壷装置の側面図、図2は同じく要部を示す断面図、図3は同じくインキ壷を一部破断して示す平面図、図4は取り外した上側の第2のカバー部材の洗浄動作を説明するための断面図、図5はブレード上の残留インキを取り除く動作を説明するための一部を破断して示す側面図、図6は洗浄済みである予備の上側の第2のカバー部材を取り付ける動作を説明するために一部を破断して示す側面図である。
【0009】
図3に示すように、左右のフレーム2,2間には支持部材3,3を介して平面視長方形状のブレード台4が支持されているとともに壷ローラ1(図1参照)が回転自在に支持されている。このブレード台4の両端部には、壷ローラ1の周面に対接する円弧状の対接面5aを有するインキせき5、5が一対対向するように立設され固定されている。また、ブレード台4上には、ブレード台4の長手方向、すなわち壷ローラ1の胴軸方向に複数に分割されたブレード6,7がインキせき5,5間に設けられている。
【0010】
これらブレード6,7のうち、両端に位置する2枚のブレード6,6はブレード台4に固定され固定ブレードを形成し、ブレード7はねじ孔7aに螺合する後述する調整ねじ14によってBーC方向、すなわち壷ローラ1の周面に対して遠近方向に摺動自在となるようにブレード台4上に支持されて可動ブレードを形成する。これらブレード6,7と、前記壷インキせき5,5と、壷ローラ1とによってインキ壷10が形成され、このインキ壷10内にはインキが蓄えられる。
【0011】
12はブレード台4の左右の長さと同じ長さを有しブレード台4の上面後端部に固定された角ステーであって、長手方向に貫通孔12aが各ブレード7に対応して複数個(図3中においては1個のみ図示している)形成され、長手方向の両端部の前記固定ブレード6に対応した位置にねじ孔12bが2個(一方は図示せず)形成されている。この角ステー12と前記可動ブレード7との間には、絵柄に合わせてインキ壷10から壷ローラ周面に流出するインキの量を調整するために、可動ブレード7の先端と壷ローラ1の周面との隙間を調整するための調整ねじ14が、各ブレード7に対応して複数個(図3中においては1個のみ図示している)設けられている。
【0012】
この調整ねじ14は、先端側にねじ孔7aに螺合するねじ部14aが形成され、基端側が貫通孔12aに遊挿されている。この貫通孔12aを挟むようにして止め輪15,15が嵌装され、基端に形成したねじ部にナット16を締め付けることにより、軸線方向の移動が規制され、かつ角ステー12に回転自在に支持される。この調整ねじ14の角ステー12と可動ブレード7との間に位置する部位には、ギア17が固着され、このギア17には図示を省略したモータのギアが噛合している。このモータを正逆回転制御することにより、可動ブレード7が個々にB−C方向に進退自在となって壷ローラ1の周面との隙間を調整できるように構成されている。
【0013】
19は断面が正方形状に形成され、前記ブレード6,7の全幅と略同じ長さを有する第1のバーであって、両端部の前記角ステー12のねじ孔12bに対応した位置の下部には、図2に示すように、下端が開口したU字溝19aが2個形成され、このU字溝19aには段部19bが形成されている。この第1のバー19の上面には、前記複数のブレード6,7の全幅と略同じ幅に形成された平板状の第1のカバー部材20が、その基端部をねじ21によって固定されている。
【0014】
23は断面が正方形状に形成され前記第1のバー19と略同じ長さを有する第2のバーであって、両端部の前記第1のバー19のU字溝19aに対応した位置の下部には、図2に示すように、下端が開口したU字溝23aが形成されている。24は前記第1のカバー部材20と左右方向が同じ長さで、かつ第1のカバー部材20よりも前後方向がやや長く形成された平板状の第2のカバー部材である。図2に示すように、この第2のカバー部材24は、その基端部が前記第2のバー23と、第2のバー23側から挿通させたねじ26を螺合させた取付バー25とで挟持されて、第2のバー23に固定されている。28は略中央から先端に前記角ステー12のねじ孔12bに螺合するねじ部28aが形成された固定用ねじであって、基端部に大径の摘み部28bと小径の段部28cとが形成され、ねじ部28aの先端にストッパとしてのナット29が螺合し、略中央部にリング状の係合部材30が嵌合固定されている。
【0015】
次に、図2に基づいて、第1のバー19と第2のバー23とを角ステー12に固定して第1のカバー部材20と第2のカバー部材24とをブレード6,7上に組み付けて重ね合わせる方法を説明する。あらかじめ固定用ねじ28に係合部材30を嵌合固定し、この固定用ねじ28のねじ部28aを先端が角ステー12から突出するまで角ステー12のねじ部12bに螺合させ、突出端部にナット29を螺合する。まず第1のカバー部材20が固定された第1のバー19の段部19bを、係合部材30に嵌入させるようにしてU字溝19aを固定用ねじ28に嵌入させる。
【0016】
しかる後、第1のバー19の端面と固定用ねじ28の段部28cとの間に、第2のカバー部材24が固定された第2のバー23のU字溝23aを固定用ねじ28に嵌入させる。そして、摘み部28bを回転操作して固定用ねじ28を同図中矢印B方向に進出させ、段部28cを第2のバー23に当接させることにより、第1および第2のバー19,23を段部28cと角ステー12の端面との間で挟持して固定する。このように固定された第1のバー19の第1のカバー部材20の先端は、図1に示すように、共にブレード6,7の先端から距離a離間しており、第2のカバー部材24の先端は第1のカバー部材20の先端にまで延在している。また、固定用ねじ28のねじ部28aの角ステー12からの突出量、すなわちナット29の端面と角ステー12の端面との間には間隔bが形成される。また、係合部材30の端面と第1のバー19の段部19bとの間には隙間αが形成される。
【0017】
図1において、33は壷ローラ1と練りローラ34との間を往復動する移しローラであって、インキ壷10から壷ローラ1の周面に流出したインキを練りローラ34に転移させるものである。練りローラ34の下流側には、図示を省略しているが、インキを各方向に均しながら版胴に装着された刷版の版面に導く多数のローラからなるインキ移送ローラ群が設けられている。これらは広く知られているインキ装置と何ら変わるところではない。
図4において、37は第2のカバー部材24に付着したインキ35を洗浄するための洗浄液槽であって、この洗浄液槽37内には、パイプ39に取付られ洗浄液40を噴射するノズル38が設けられている。
【0018】
次に、このような構成の輪転印刷機のインキ壷装置におけるインキ壷の洗浄動作を説明する。
インキ壷10内のインキをすべて排出した後、図1に示すように、ブレード台4を矢印A方向に回動させてインキせき5の対接面5aと、ブレード6,7の先端とを壷ローラ1の周面から離間させる。このとき、インキ壷10内には、上側の第2のカバー部材24の上面にインキ35が付着しているとともに、ブレード6,7の先端の上面であって、第1,2のカバー部材20,24の先端との隙間aによって形成された部位にインキ42が付着している。
【0019】
先ず、上側の第2のカバー部材24の上面に付着したインキ35を取り除く。すなわち、固定用ねじ28の摘み部28bを回転操作して、固定用ねじ28を図2中矢印C方向にわずかに移動させて、段部28cによる第2のバー23への当接を解除することによって、段部28cと第1のバー19とによる第2のバー23の挟持を解除し、第2のバー23を第1のバー19から取り外す。取り外された第2のバー23には第2のカバー部材24が固定されており、図4に示すように、図示を省略した固定部材によって洗浄液槽37内に固定し、ノズル38から第2のカバー部材24に洗浄液40を散布することにより、インキ35を洗浄する。
【0020】
このインキ35の洗浄中に、ブレード6,7上に付着したインキ42を洗浄する。すなわち、図2において固定ねじ28の摘み部28bをさらに回転操作して固定用ねじ28を矢印C方向にα移動させると、係合部材30が第1のバー19の段部19bに当接する。さらに摘み部28bを回転操作し、固定用ねじ18を、ナット29と角ステー12との間に形成された間隔bだけC方向に移動させる。この固定用ねじ28の移動により、係合部材30が当接している第1のバー19がC方向に距離bだけ移動するので、図5に示すように、第1のカバー部材20の先端とブレード6,7の先端との間に(a+b)なる間隔が形成される。このように、第1のカバー部材20の先端とブレード6,7の先端との間隔が拡がることにより、ブレード6,7の先端部上面に付着したインキ42をウェスおよび洗浄液で取り除く作業が容易となる。
【0021】
ブレード6,7上のインキ42を取り除く作業が終了したら、図6に示すように、上述した洗浄液槽37内で洗浄した第2のブレード24とは別のあらかじめ洗浄してある予備の第2のブレード24をインキ壷10に取付ける。すなわち、第2のブレード24の第2のバー23のU字溝23aを、固定用ねじ28の段部28cと第1のバー19との間に嵌入させる。摘み部28bを上述した方向と逆方向に回転操作し、固定用ねじ28を矢印B方向に移動させ、段部28cが当接する第2のバー23と、この第2のバー23と当接する第1のバー19とを共にB方向に移動させる。この移動により、図2に示すように、第1のバー19と第2のバー23とを固定ねじ28の段部28cと角ステー12とで挟持し、第1のカバー部材20の上に第2のカバー部材24を重ね合わせてブレード6,7を覆うようにして固定する。
【0022】
このように、インキ35が付着した第2のカバー部材24を第1のカバー部材20から取外し、別の場所で洗浄することができるので、洗浄の作業性が向上する。また、洗浄液槽37内で第2のカバー部材24を洗浄することができるので、手作業によらず自動洗浄が行える。また、第2のカバー部材24の下側に第1のカバー部材20がブレード6,7を覆っているので、ブレード6,7内にインキが侵入することがない。さらに、第2のカバー部材24を洗浄中に、あらかじめ洗浄してある予備の第2のカバー部材24をインキ壷10に取付けることにより、洗浄作業に要する時間を最小限とすることができるので、色替え等による輪転印刷機の停止時間を短縮でき、生産性の向上が図られる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、分割された複数のブレードの上面に設けられたカバー部材を上下2枚のカバー部材で構成し、上側のカバー部材を下側のカバー部材に対して着脱自在に支承させたことにより、洗浄の際には上側のカバー部材を取り外し、替わりの洗浄済みのカバー部材を取り付けることできるので、洗浄作業に要する時間を最小限とすることができ、このため色替え等による輪転印刷機の停止時間を短縮でき、生産性の向上が図られる。取り外した上側のカバー部材を別の場所で洗浄することができるので、洗浄の作業性が向上し、このため作業者の労働負荷が軽減される。また、上側のカバー部材の下側に下側のカバー部材がブレードを覆っているので、ブレード内にインキが侵入することがない。また、下側のカバー部材を壺ローラに対して遠近方向に摺動自在となるように取付けたことにより、下側のカバー部材の先端とブレードの先端との間隔を拡げることができ、このためブレード上の残留インキの除去が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る輪転印刷機のインキ壷装置の側面図である。
【図2】 本発明に係る輪転印刷機のインキ壷装置の要部を示す断面図である。
【図3】 本発明に係る輪転印刷機のインキ壷の一部を破断して示す平面図である。
【図4】 本発明に係る輪転印刷機のインキ壷装置における取り外した上側の第2のカバー部材の洗浄動作を説明するための断面図である。
【図5】 本発明に係る輪転印刷機のインキ壷装置におけるブレード上の残留インキを取り除く動作を説明するために一部を破断して示す側面図である。
【図6】 本発明に係る輪転印刷機のインキ壷装置における洗浄済みである予備の上側の第2のカバー部材を取り付ける動作を説明するために一部を破断して示す側面図である。
【符号の説明】
1…壷ローラ、5…インキせき、6,7…ブレード、10…インキ壷、20…第1のカバー部材、24…第2のカバー部材、28…固定用ねじ、35,42…インキ、37…洗浄液槽、38…ノズル、40…洗浄液。

Claims (1)

  1. 壺ローラと、インキせきと、複数個に分割されたブレードと、これらブレードの上面を覆うカバー部材とを備えた輪転印刷機のインキ壺装置において、前記カバー部材を上下2枚のカバー部材で構成し、上側のカバー部材を下側のカバー部材に対して着脱自在に支承させ、下側のカバー部材を壺ローラに対して遠近方向に摺動自在となるように取付けたことを特徴とする輪転印刷機のインキ壺装置。
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