JP3929272B2 - 電子写真用トナーバインダーおよび電子写真用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真、静電記録、静電印刷などに於ける、静電荷像を現像するための電子写真用トナーバインダーに関する。さらに詳しくは高速複写機に対応でき、しかも高解像度、高画質でかつ粉砕性に優れた電子写真用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、感光体上に形成したトナー画像を記録紙に転写するPPC(Plain Paper Copy)複写機やプリンターに於ける電子写真法は、光感光体上に静電気的潜像を形成し、ついで該潜像をトナーを用いて現像し、紙等の被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールで加熱定着する方法が行われている。この方法は、加熱加圧下で定着を行うので迅速でしかも熱効率が極めて良好であり、従って定着効率が非常に良い。しかしながら、この熱ロール方式に於いては熱効率が良い反面、熱ロール表面とトナーが溶融状態で接触するため、トナーが熱ロール表面に付着転移し、次の被定着シートにこれが再転移して汚す(オフセット現象)という問題がある。
たとえば、熱ロールの表面に布や紙でシリコーンオイルを塗布してオフセットを防止している。この場合、トナーのオフセットを防止する点では非常に有効であるが、オフセット防止用液体を供給するための装置が必要となり、機械の設備が複雑になるため、機械の補修、管理が煩雑になり、コストアップに繋がり、好ましくない。またシリコーンオイルなどが熱により蒸発し機内を汚染する場合がある。
したがって、上記のシリコーンオイルなどの塗布を必要としない方式(オイルレス定着方式)での高速機用トナーの開発が望まれている。
【0003】
一方、複写機は、高速化の方向を指向しており、必然的に定着ロールのスピードも速くなり、短時間の加熱で定着できるトナーが要求されている。出来るだけ短時間で定着させるためには溶融時高流動性であることが必要である。一般的に定着性を向上させるためには、トナーに用いられる樹脂のガラス転移温度(以下、Tgと表す)を低下させることが有効であるが、そのことにより保存中のトナーがブロッキングするという好ましくない現象がおきる。
【0004】
一方、オイルレス定着方式用トナーの開発に於けるオフセット防止方法としては架橋ポリマーを用いたトナーも数多く提案されている。例えば特公昭60−36582号公報等には、乳化重合法で製造された架橋ポリマーを用いる方法が開示されている。この場合、用いられる架橋ポリマーはゲル分が50〜99質量%含有されており、このゲル分を多くすると、耐オフセット性は良くなるが粉砕性は悪化し、他方ゲル分が少なくなると粉砕性は良くなるが耐オフセット性は悪化し、耐オフセット性と粉砕性の両者を満足することは極めて困難であった。
【0005】
また、この方法では架橋ポリマー製造時に乳化粒子を安定化させるために分散剤や分散助剤を併用させる必要がある。これらの分散剤は吸湿し易いために電気特性、特にチャージ安定性に悪影響を及ぼすので、架橋ポリマー製造後、できるだけこれらを取り除く必要がある。しかし、これらを取り除くには多大な労力が必要であり、また、洗浄水の排水量も多くなりその処理も大変である。また、USP 4,966,829号公報には、ゲル分を0.1〜60質量%含みかつテトラヒドロフラン可溶分に於いてメインピークの分子量1,000〜25,000、かつ、分子量3,000〜150,000に少なくとも1つのサブピークまたはショルダーを有するビニル系重合体を含有するトナーが良いと開示されている。しかし、これを製造する方法はサスペンション法であり、この場合も乳化重合法と同様、製造時に分散剤や分散助剤を併用させるので、上記乳化重合と全く同じ問題があった。このため、本発明者等は定着性の良いトナー用樹脂として、溶液重合法による樹脂(USP 4,963,456号)を開発してきた。
【0006】
溶液重合法による樹脂は重合終了後溶剤を除去するが、この時、未反応の残存モノマーや開始剤の分解物等低揮発成分は全て留去できるので、非常に不純物の少ない、電気的には安定な均質な樹脂が得られ、トナー用には最適なものが得られるものと考えられる。しかしながら、溶液重合法による架橋ポリマー製造は、ワイゼンベルク効果(撹拌棒に樹脂が巻きつく)が発生し製造できなくなるという問題があった。従って、本発明者等は、さらにバルク等でできるだけ高分子化する方法(USP 5,084,368号)を開発した。しかし製造できる高分子量のものは限界があり、オフセット性を完全に克服するところまでいたっていなかった。
また、特公昭60−38700号公報には、グリシジル基含有単量体を3〜40%有する共重合体(A)と架橋性化合物(B)とを加熱混合して製造したトナーバインダーが良いと開示されているが、このトナーにおいてはエポキシ基が多量残っているため長期のテストで逆チャージのトナーが発生し耐久性に問題を生じていた。
【0007】
また、本発明者らは、溶液重合法にて製造したカルボキシル基を有する樹脂とグリシジル基を有する化合物を用いて特定の比率で架橋させることにより、高速機に対応でき、且つ定着性・耐オフセット性・ブロッキング性のバランスが良く、粉砕性、生産効率、電気特性、チャージ安定性にも優れたトナーを得る技術を開発(特開平06−011890号公報、特開平06−222612号公報)した。しかし、トナー製造工程における混練時に架橋成分に過剰なシェアーがかかりゲルが切断をうけるため、高温における弾性が不十分となり、定着後の画像の悪化や十分な耐オフセット効果が得られないという問題が生じた。
本発明者らは、これらの要求を満足すべく鋭意検討した結果、グリシジル基を含有する架橋剤の分子量およびエポキシ価を改良することにより、トナー製造工程の混練時におけるゲルの切断が低減され、耐久現像性、耐オフセット性に効果が表れ、定着性・耐オフセット性・ブロッキング性のバランスが大幅に改善され、且つ、粉砕性、生産効率、電気特性、チャージ安定性にも優れたトナー用結着剤を得る技術を開発(特開平09−319140号公報)した。
しかし、最近、市場では、さらなる高速化と新たに省エネルギー化を指向している。その結果、高速化による加熱時間の短縮化に対応するための定着温度のさらなる低温化と、省エネルギー化に対応するための定着温度の一層の低温化が求められている。すなわち、より一層の低温定着性の要求が強まり、該技術では、このより一層の低温定着性と、それと同時に要求される耐オフセット性の双方の要求に対して、十分な満足が得られなくなった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示した複写機の一層の高速化と新たに求められた省エネルギー化にともなう、より一層の低温定着性の改良および定着性と耐オフセット性のバランスの改善を主たる課題として、本発明は、定着性、耐オフセット性、ブロッキング性、粉砕性、耐久現像性など電子写真用トナーとしてのすべての諸性能に於いてその改良をはかることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの要求を満足すべく鋭意検討した結果、架橋性化合物と共重合体を架橋反応せしめて得られる電子写真用トナーバインダーの生成において、その架橋反応を中途で止めることにより架橋反応性を残した電子写真用トナーバインダーとすることにより、より低粘度化による定着性の改善を図ると同時に、この残された架橋反応性により定着時に架橋反応を生じせしめることにより、オフセット性のさらなる改善を図るとともに、粉砕性、ブロッキング性、耐久現像性の改善を図ることができることを見出した。すなわち、粘弾性カーブにおいて140℃から180℃の範囲においてその曲線が下に凸でありその底に極小値G’0を存在せしめ、かつ、当該極小値G’0と200℃における貯蔵弾性率G’200の差、及びゲル分の含有量を特定することにより、高速機に対応ができ、しかも定着性、耐オフセット性、ブロッキング性、粉砕性、耐久現像性に優れた電子写真用トナーバインダーを得る技術を完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、次に記載する事項により特定することができる。
(1)電子写真用トナーバインダーにおいて、当該トナーバインダーが、重量平均分子量が10 , 000〜100 , 000であり、エポキシ価が0 . 005〜0 . 1 Eq/100g であるグリシジル基含有ビニル樹脂(A)を架橋剤とし、該グリシジル基含有ビニル樹脂(A)と、酸価が1〜30 mgKOH/g 、Tgが40〜70℃であるカルボキシル基含有ビニル樹脂(B)とを加熱溶融することにより架橋反応せしめて得られたものであり、当該トナーバインダーの粘弾性を温度範囲が50〜200℃、昇温速度が2℃/minで測定したとき、縦軸が貯蔵弾性率G’の対数(Pa)、横軸が温度(℃)である貯蔵弾性率と温度の関係を表した100〜200℃の温度範囲の粘弾性カーブにおいて、140〜180℃の温度範囲においてその粘弾性カーブが下に凸でありその底に貯蔵弾性率G’の極小値G’0を有し、このG’0と200℃における貯蔵弾性率G’200がG’0<G’200で、その差ΔG’(G’200−G’0=ΔG’)が300Pa以上であり、0.1〜20質量%のゲル分を含むことを特徴とする電子写真用トナーバインダー。
(2)前記200℃における貯蔵弾性率G’200が1,000Pa以上であることを特徴とする(1)記載の電子写真用トナーバインダー。
(3)電子写真用トナーバインダーにおいて、当該トナーバインダーのガラス転移温度が45〜75℃であり、かつ、当該トナーバインダーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、分子量4,000〜50,000の領域にピークを有することを特徴とする(1)または(2)記載の電子写真用トナーバインダー。
(4)架橋反応度が、1〜50%であることを特徴とする(1)ないし(3)の何れかに記載の電子写真用トナーバインダー。
(5)スチレンアクリル系樹脂を主成分とすることを特徴とする(1)ないし(4)の何れかに記載の電子写真用トナーバインダー。
(6)(1)ないし(5)の何れかに記載の電子写真用トナーバインダーを使用することを特徴とする電子写真用トナー。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に於けるグリシジル基含有ビニル樹脂(A)とは、グリシジル基を含有するビニル単量体と他のビニル単量体を共重合して得られる樹脂である。グリシジル基含有ビニル樹脂(A)としては、重量平均分子量が10,000〜100,000、好ましくは15,000〜85,000、さらに好ましくは25,000〜75,000で、且つ、JIS K 7236に準じて測定されたエポキシ価が0.005〜0.1Eq/100gであるものが好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、電子写真用トナー製造工程の混練においてゲルの切断が起こりやすくなる傾向がみられ、定着後の耐久現像性、耐オフセット性が低下する傾向が見られる。重量平均分子量が100,000を超えると定着性が低くなる傾向が見られる。また、エポキシ価は0.01〜0.1Eq/100gの範囲のものがより好ましい。エポキシ価が0.005Eq/100g未満であるとゲルの生成量が少なくなり耐オフセット性が低下する傾向が見られる。0.1Eq/100gを超えると、電子写真用トナー製造工程の混練においてゲルの切断が起こりやすくなる傾向がみられ、耐久現像性、耐オフセット性が低くなる傾向が見られる。
【0012】
本発明に於けるカルボキシル基含有ビニル樹脂(B)とは、カルボキシル基を含有するビニル単量体と他のビニル単量体を共重合して得られる樹脂であり、カルボキシル基含有ビニル樹脂(B)は、JIS K 5407に準じて測定された酸価が1〜30mgKOH/gであり、かつ、JIS K 7121により測定されたTgが40〜70℃である樹脂が好ましい。さらに好ましくは酸価5〜25mgKOH/g、Tgが50〜60℃である。Tgが40℃未満ではブロッキングが起こりやすくなる傾向が見られ、Tgが70℃を超えると軟化点が上昇し、定着性が低下する傾向が見られる。酸価が1未満では一分子当たりの反応量が少なくなり分子量が高分子量になりにくくなる傾向が見られ耐久現像性、耐オフセット性も高くなりにくくなる傾向が見られる。また酸価が30mgKOH/gを超えると、電子写真用トナー製造工程の混練におけるゲルの切断が起こりやすくなる傾向が見られ耐久現像性、耐オフセット性が低くなる傾向が見られる。
【0013】
本発明に係る電子写真用トナーバインダーはグリシジル基含有ビニル樹脂(A)とカルボキシル基含有ビニル樹脂(B)を加熱溶融して架橋反応せしめることにより製造され0.1〜20%のゲル分を含有している、好ましくはゲル分は1〜20%、さらに好ましくは1〜16%含有される。含有されるゲル分が0.1%未満では耐オフセット性の効果が発現しにくくなる傾向が見られ、また、20%を超えると流動性が低下する傾向が見られ複写機の高速化に対応した低温定着性が得にくくなる傾向が見られる。
また、カルボキシル基含有ビニル樹脂(B)中のカルボキシル基1当量当りグリシジル基として0.01〜1.0当量を有するグリシジル基含有ビニル樹脂(A)を用いて架橋反応を行うのが好ましく、0.02〜0.8当量とするのがより好ましい。
【0014】
本発明に於いて使用されるグリシジル基含有ビニル樹脂(A)の製造に用いられるグリシジル基含有ビニル単量体は、アクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジルなどが良く、好ましくはメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジルである。これらのグリシジル基含有ビニル単量体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
また本発明に於いて使用されるカルボキシル基含有ビニル樹脂(B)の製造に用いられるカルボキシル基含有ビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、桂皮酸等の不飽和一塩基酸もしくは不飽和多塩基酸;無水マレイン酸等の不飽和多塩基酸無水物;フマール酸メチル、フマール酸エチル、フマール酸プロピル、フマール酸ブチル、フマール酸オクチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル類等が良く、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、フマール酸メチル、フマール酸エチル、フマール酸プロピル、フマール酸ブチル、フマール酸オクチルである。これらのカルボキシル基含有ビニル単量体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
グリシジル基含有ビニル単量体およびカルボキシル基含有ビニル単量体と共重合するビニル単量体としては、例えば、スチレン、P-メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン(m−ビニルトルエン60%とp−ビニルトルエン40%との混合物)等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;フマール酸ジメチル、フマール酸ジブチル、フマール酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル等の不飽和二塩基酸のジエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N置換アクリルアミド、N置換メタクリルアミド等の不飽和アミド類等があり、これらのビニル単量体の少なくとも1種が用いられる。これらの中で特に好ましいビニル単量体としてはスチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、フマール酸ジアルキルエステル類、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらのビニル単量体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明における数平均分子量や重量平均分子量はGPC法により求めたもので、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。測定条件は下記の通りである。
GPC装置; JASCO TWINCLE HPLC
DETECTOR ; SHODEX RI SE-31
COLUMN ; SHODEX GPCA-80M*2+KF-802
溶 媒 ; テトラヒドロフラン
流 速 ; 1.2ml /min.
本発明におけるゲル分は以下のように測定された値をもって定義する。すなわち、樹脂2.5gと酢酸エチル47.5gを100mlサンプル管に投入、このサンプル管を回転数50rpm、22℃、12時間攪拌後、22℃で12時間静置、静置後、サンプル管の上澄み液5gを150℃、1時間乾燥させた後の質量を秤量し(Xg)、次の式に従って計算する。
ゲル分(%)= {(2.5/50−X/5)/(2.5/50)}×100
【0018】
本発明の重合体(A)および(B)、すなわち、カルボキシル基含有ビニル樹脂(A)およびグリシジル基含有ビニル樹脂(B)を用いて、電子写真用トナーバインダーを製造する態様については次に示す方法等をとることができる。すなわち、カルボキシル基含有ビニル樹脂(A)にグリシジル基含有ビニル樹脂(B)をヘンシェルミキサー等で混合し、2軸混練機を用いて、溶融混練させ、カルボキシル基とグリシジル基との架橋反応を行わせる。
この時、樹脂(A)と樹脂(B)の架橋反応において、その架橋反応を中途で止めて、架橋反応性を残した電子写真用トナーバインダーとすることにより、より低粘度化による定着性の改善を図り、さらに、この残された架橋反応性により定着時に架橋反応を生じせしめるようにするために、ゲル分を、架橋反応を完結せしめた場合のゲル分(これを完全反応ゲル分と表す)の1〜50%、好ましくは1〜45%、さらに好ましくは5〜45%となるようにする。(これを架橋反応度と表す。すなわち、架橋反応度(%)=(ゲル分(%)/完全反応ゲル分(%))×100、で定義される。)このためには、2軸混練機吐出部の樹脂温度が165〜190℃未満とする場合は滞留時間を90〜180秒で、また、2軸混練機吐出部の樹脂温度が190〜200℃とする場合は滞留時間を90秒未満で溶融混練させることが好ましい。
なお、2軸混練機吐出部の樹脂温度が220℃で混練時間180秒で反応させた場合のゲル分をもって、この架橋反応を完結せしめた場合のゲル分、すなわち、完全反応ゲル分とする。
このようにして得られた樹脂を冷却・粉砕して電子写真用トナーバインダーとする。冷却・粉砕する方法は従来公知のいかなる方法も採用できるが、冷却方法としては、スチールベルトクーラー等を使用して急冷することが好ましい。
本発明において、樹脂(A)と樹脂(B)を架橋反応せしめるために溶融混練させる方法は、加熱溶融できる従来公知のいかなる方法も採用できるが、好ましくは2軸混練機を用いる方法である。
【0019】
本発明により得られた電子写真用トナーバインダーは、その粘弾性を温度範囲が50〜200℃、昇温速度が2℃/minで測定したとき、縦軸が貯蔵弾性率G’の対数(Pa)、横軸が温度(℃)である貯蔵弾性率と温度の関係を表した100〜200℃の温度範囲の粘弾性カーブにおいて、140〜180℃の温度範囲においてその粘弾性カーブが下に凹でありその底に貯蔵弾性率G’の極小値G’0を有し、200℃における貯蔵弾性率G’200が好ましくは1,000〜50,000Pa、より好ましくは2,000〜40,000Pa、さらに好ましくは3,000〜30,000Paであって、このG’0と200℃における貯蔵弾性率G’200がG'0<G'200で、その差ΔG'(G'200−G’0=ΔG')が好ましくは300〜50,000Pa、より好ましくは400〜40,000Pa、さらに好ましくは500〜30,000Paである。
貯蔵弾性率G’200が1,000Pa未満では高温での粘度が低くなり耐オフセット性を十分なものとし難くなる傾向がみられる。また、ΔG'が300Pa未満では、定着性と耐オフセット性のバランスを取り難くなる傾向が見られ、より低温定着性に優れ、かつ、耐オフセット性の双方をバランス良く達成するのが困難となる傾向が見られる。
また、本発明の電子写真用トナーバインダーのTgは好ましくは45〜75℃で、より好ましくは45〜70℃、更に好ましくは50〜65℃であり、かつ当該電子写真用トナーバインダーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、好ましくは分子量4,000〜50,000の領域に、より好ましくは分子量6,000〜40,000の領域に、さらに好ましくは8,000〜30,000の領域にピークを有する。
Tgが45℃未満ではブロッキングが起こりやすくなる傾向が見られ、Tgが75℃を超えると、または分子量ピークが50,000を超えると樹脂が硬くなる傾向が見られ定着性が低下する傾向が見られる。また、分子量ピークが4,000未満ではオフセットが発生し易くなる傾向が見られる。
【0020】
本発明における電子写真トナーバインダーは、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、顔料分散剤と共に、公知の方法で電子写真用トナーとすることが出来る。
着色剤としては、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、マグネタイト等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエローG、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、モリブデンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレン、ブリリアントオレンジGK、ベンガラ、ブリリアントカーミン6B、フリザリンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ファストバイオレットB、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、酸化チタン、亜鉛華等の公知の有機および無機顔料が挙げられる。その量は通常本発明の電子写真用トナーバインダー100質量部に対して5〜250質量部である。
また、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲に於いて、例えばポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアミド、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、脂肪酸アミドワックス、塩ビ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、クロマン−インデン樹脂、メラミン樹脂等を一部添加使用してもよい。
また、ニグロシン、4級アンモニウム塩や含金属アゾ染料をはじめとする公知の荷電調整剤を適宜選択して使用でき、使用量は本発明の電子写真用トナーバインダー100質量部に対し、通常0.1〜10質量部である。
【0021】
本発明の電子写真用トナーを作る方法としては、従来公知のいかなる方法も採用できる。例えば、本発明の電子写真用トナーバインダー、着色剤、荷電調整剤、ワックス等を予めプレミックスした後、2軸混練機で加熱溶融状態で混練し、冷却後微粉砕機を用いて微粉砕し、さらに空気式分級器により分級し、通常8〜20μmの範囲の粒子を集めて電子写真用トナーとする。ただし、2軸混練機での加熱溶融条件は2軸混練機吐出部の樹脂温度は165℃未満で、滞留時間180秒未満であることが好ましい。また、冷却方法はスチールベルトクーラー等を使用して急冷することが好ましい。
上記により得られた電子写真用トナー中には本発明の電子写真用トナーバインダーが50質量%以上、好ましくは60質量%含まれ、その上限には特に制限はなく、目的に応じて調整され、通常、90〜100質量%まで可能である。
【0022】
本発明における粘弾性測定は以下の測定法で行なった。
粘弾性装置 :STRESS TECH レオメータ(レオロジカ社製)
測定モード :Oscillation strain control
測定温度範囲:50〜200℃
昇温速度 :2℃/min
周波数 :1Hz
ギャップ :1mm
プレート :パラレルプレート
応力歪み :1%
【0023】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。なお、以降「部」は、特にことわらない限り質量部を表わす。
[グリシジル基含有ビニル樹脂(A)の製造例]
(製造例A−1)
キシレン75部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め混合溶解しておいたスチレン65部、アクリル酸n-ブチル30部、メタクリル酸グリシジル5部、ジ-t- ブチルパーオキサイド1部を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温130℃に保ち、2時間の残モノマー重合を2回行うことにより反応を完結して、重合液を得た。これを160℃、1.33kPaのベッセル中にフラッシュして溶剤等を留去した。得られたビニル樹脂の物性値を表1に示した。
【0024】
(製造例A−2)
製造例A−1においてジ-t- ブチルパーオキサイド1部を0.4部、メタクリル酸グリシジル5部を13部、スチレン65部を57部とした以外は製造例A−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1に示した。
【0025】
(製造例A−3)
窒素置換したフラスコにキシレン40部を仕込み、オイルバスにより加熱し還流下(内温138℃)においてスチレン68部とアクリル酸n−ブチル27部とメタクリル酸グリシジル5部とジ−t−ブチルパーオキサイド4部からなる溶液を5時間かけて連続滴下し、その後、1時間反応を継続して重合後、内温を130℃に保ち、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.5部を添加し2時間反応させて重合を終了した。得られたものの物性値を表1に示した。
【0026】
[カルボキシル基含有ビニル樹脂(B)の製造例]
(製造例B−1)
スチレン57.4部、アクリル酸n-ブチル11.9部、メタクリル酸0.7 部とキシレン溶媒30部からなる溶液に、スチレン100部当たり0.6部のジ-t-ブチルパーオキサイドを均一に溶解したものを、内温190℃、内圧0.59MPaに保持した5l の反応器に750cc/hで連続的に供給して重合し低分子量重合液を得た。
【0027】
別に、ビニル単量体として、スチレン75部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタクリル酸1.5部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を10時間行った。この時の重合率は51%であった。ついで、キシレン50部を加え、予め混合溶解しておいたジブチルパーオキサイドの0.1部、キシレン50部を130℃に保ちながら8時間かけて連続添加し、さらに2時間残モノマー重合して、重合を完結し、高分子量重合液を得た。
ついで、上記低分子量重合液100部と高分子量重合液60部とを混合した後、これを160℃、1.33kPaのベッセル中にフラッシュして溶剤等を留去した。得られたビニル樹脂の物性値を表1に示した。
【0028】
(製造例B−2)
製造例B−1において低分子量重合液を製造する際に、スチレン57.4部を54.6部、メタクリル酸0.7部を3.5部とした以外は製造例B−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1に示した。
【0029】
(製造例B−3)
製造例B−1において低分子量重合液を製造する際に、スチレン57.4部を50.4部、アクリル酸n-ブチル11.9部を18.9部とした以外は製造例B−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1に示した。
【0030】
(製造例B−4)
窒素置換したフラスコにキシレン100部を仕込み、オイルバスにより加熱し還流下(内温138℃)においてスチレン82部とアクリル酸n−ブチル17部とメタクリル酸1部とt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート3部からなる溶液を5時間かけて連続滴下し、その後、1時間反応を継続して重合後、内温を98℃に保ち、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.3部を添加し1時間反応後、さらにt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.5部を添加し2時間反応させて重合し低分子量重合液を得た。
【0031】
別に、窒素置換したフラスコに単量体としてスチレン74部とアクリル酸n−ブチル23.5部を仕込み、オイルバスにより加熱し、内温を120℃に保ち、塊状重合により6時間重合させた。塊状重合の重合率は40%であった。塊状重合についで、キシレン50部とメタクリル酸2.5部を加え、1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.34部とキシレン60部溶液を内温110℃に保ちながら9時間かけて連続滴下し、その後、2時間反応を継続して重合後、内温130℃に保ちながらジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加し2時間反応後、さらにジ−t−ブチルパーオキサイド0.5部を添加し2時間反応させ後にキシレン123.33部で希釈して重合を終了し、高分子重合液を得た。
ついで、上記低分子重合液100部と高分子重合液70.3部を混合し、これを190℃、1.33kPaのベッセル中にフラッシュして溶剤を除去した。得られたものの物性値を表1に示した。
【0032】
実施例1
製造例A−1で得られたビニル樹脂3部、製造例B−1で得られたビニル樹脂97部をヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(KEXN S-40型、栗本鉄工所製)にて2軸混練機吐出部樹脂温度170℃、滞留時間90秒で混練反応させた。その後、冷却・粉砕し、電子写真用トナーバインダーとした。冷却方法としては、スチールベルトクーラーを使用し、冷却水温10℃、冷却水量は樹脂1kgあたり20L、熱伝導率0.335kJ/mhの装置を用いて急冷した。諸条件および得られた樹脂の物性値を表1に示した。この後、カーボンブラックREGAL 330R(CABOT CORPORATION製)6部、ポリプロピレンワックス NP-105(三井化学製)2.5部、荷電調整剤としてボントロンS34(オリエント化学工業製)1部添加し、再度ヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(PCM-30型、池貝機械製)にて2軸混練機吐出部樹脂温度150℃、滞留時間30秒で混練させた。ついで冷却・粉砕・分級して約7ミクロンの電子写真用トナーを得た。この冷却も上記スチールベルトクーラーを使用した冷却方法と同様の方法で急冷させた。この電子写真用トナー3部とキャリヤ97部とを混合して現像剤とし、市販の高速複写機を改造して、画像を書かせて評価した結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
実施例1において、2軸混練機吐出部樹脂温度185℃にした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
実施例2において、製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部とした以外は実施例2と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0035】
実施例4
実施例1において、2軸混練機吐出部樹脂温度200℃、滞留時間30秒にした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0036】
実施例5
実施例2において、製造例A−1で得られたビニル樹脂を製造例A−2で得られたビニル樹脂にした以外は実施例2と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0037】
実施例6、7
実施例2において、製造例B−1で得られたビニル樹脂を製造例B−2、3にした以外は実施例2と全く同様にし、各々実施例6、7とした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0038】
実施例8
実施例1において、製造例A−2で得られたビニル樹脂と製造例B−1で得られたビニル樹脂の混合比率を97/3とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0039】
実施例9
実施例2において、製造例A−1で得られたビニル樹脂と製造例B−1で得られたビニル樹脂の混合比率を97/3から94/6にした以外は実施例2と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0040】
実施例10
製造例B−4で得られたビニル樹脂93部、製造例A−3で得られたビニル樹脂7部をヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(KEXN S−40、栗本鉄工所製) にて2軸混練機吐出部樹脂温度185℃、滞留時間90秒で混練反応させた。得られた樹脂を冷却、粉砕機(パワーミル型式P-3 三英製作所製、3mmスクリーン使用)で粉砕し、電子写真用トナーバインダーを得た。冷却方法は実施例1同様に急冷とした。この電子写真用トナーバインダーにカーボンブラックREGAL 330R(CABOT CORPORATION製)6部、ポリプロピレンワックス NP-105(三井化学製)2.5部、荷電調整剤としてボントロンS34(オリエント化学工業製)1部を添加し、再度ヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(PCM−30型、池貝機械製) にて2軸混練機吐出部樹脂温度155℃、滞留時間60秒で混練させた。ついで冷却、粉砕、分級して約7ミクロンの電子写真用トナーを得た。この冷却も実施例1同様に急冷とした。この電子写真用トナー3部とキャリヤ97部とを混合して現像剤とし、市販の高速複写を改造して、画像を書かせて評価した。得られた電子写真用トナーバインダーの粘弾性測定結果を図4に示した。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
2軸混練機吐出部樹脂温度200℃、滞留時間90秒で混練反応させた以外は全く実施例1と同様にしてトナーバインダーを得た。また得られたトナーバインダーを使用した以外全て実施例1と同様にしてトナーを得、実施例1同様にして評価した。諸条件、得られた樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示した。
【0042】
比較例2
比較例1において、2軸混練機吐出部樹脂温度220℃にした以外は比較例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0043】
比較例3
比較例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部とした以外は比較例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0044】
比較例4
比較例1において、滞留時間180秒にした以外は比較例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0045】
比較例5
比較例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂を製造例A−2で得られたビニル樹脂にした以外は比較例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0046】
比較例6、7
比較例1において、製造例B−1で得られたビニル樹脂を製造例B−2、3にした以外は比較例1と全く同様にし、各々比較例6、7とした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0047】
比較例8
比較例1において、製造例A−2で得られたビニル樹脂と製造例B−1で得られたビニル樹脂の混合比率を97/3とした以外は比較例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0048】
比較例9
比較例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂と製造例B−1で得られたビニル樹脂の混合比率を97/3から94/6にした以外は比較例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0049】
比較例10
2軸混練機吐出部220℃、滞留時間180秒で混練反応させた以外は全く実施例10と同様にしてトナーバインダーを得た。また得られたトナーバインダーを使用した以外全く実施例10と同様にしてトナーを得た。得られたトナーバインダーの粘弾性測定を図4に示した。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
【0050】
<トナーの評価方法>
1)定着性
5℃刻みで定着ロールの温度を替えて72枚/分のコピースピードでコピーし、このコピーしたベタ黒部分と白地の間を砂消しゴム(トンボ鉛筆社製プラスチック砂消しゴム”MONO”)により、一定の力で10回往復させ、ベタ黒部分の黒度をインキ濃度計で測定し、トナーの残存比率を濃度比で表し、60%以上残っている最低温度(定着温度と表す)を示した。
【0051】
2)耐オフセット性
コピーした場合のオフセット発生する温度(オフセット温度と表す)をそのまま表示した。
【0052】
3)ブロッキング性
トナーを温度50℃相対湿度50%の環境下に1週間放置した後の粉体の凝集の程度を目視にて以下のように測定した。
◎;全く凝集していない
○;わずかに凝集しているが、容器を軽く振るとほぐれる
△;容器をよく振ってもほぐれない凝集物がある
×;完全に団塊化している
【0053】
4)粉砕性
トナー製造時、2軸混練冷却したものを一部採取して粉砕し、10メッシュアンダー16メッシュオンの粒度に揃えてジェットミルにて粉砕した。コールターカウンターにて粒度分布を測定、5〜20μの粒度の割合を求める。
◎;85%以上
○;70%〜85%未満
△;50%〜70%未満
×;50%未満
【0054】
5)耐久現像性
市販の高速複写機(72枚/分のコピースピード)で10000枚連続コピー後パターンをコピーして再現性をチェックした。線幅100μmの線が在る原紙について、紙上にて、マイクロスコープにて観察し線幅を5点測定した。さらにこの紙をコピーし、定着させた後のコピー紙上での線幅5点を測定した。原紙とコピー紙の線幅の平均をそれぞれ求め、原紙の線幅とコピー紙の線幅の差により以下のように評価した。 線幅増加分δ=コピー紙線幅−原紙線幅
○;δ<5μm
△;5≦δ<10μm
×;δ≧10μm
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
表1に実施例の結果を、表2に比較例の結果を示す。図1に実施例と比較例のゲル分と定着温度の関係を示す。図2に実施例と比較例の完全反応ゲル分とオフセット温度の関係を示す。図3には、実施例と比較例の定着温度とオフセット温度の関係を示す。
本発明者らは、鋭意検討の結果、図1に示すようにゲル分と定着温度に強い相関が、また、図2に示すように完全反応ゲル分とオフセット温度に強い相関があることを見出した。さらに、本発明者らは、発明の実施の形態の中で詳述したように、架橋反応を2軸混練工程で制御することにより、ゲル分を制御し得ることを見出し、結果、所望の定着性を得る方法を得た。一方、完全ゲル分は本発明者が開発した公知技術(特開平09−319140)により制御することが可能であり、結果、図2の関係を用いて、所望の耐オフセット性を得ることができた。以上のように、本発明者らはゲル分と完全ゲル分の双方を制御せしめることにより、より低温定着性に優れ、かつ、耐オフセット性に優れたトナーバインダーを得る方法を得た。図3に示すように、実施例は比較例に対して、同定着温度ならばより高いオフセット温度を得るトナーバインダーが、また、同オフセット温度ならば、より低い定着温度を得るトナーバインダーを得られることが判る。
このように、本発明のトナーバインダーは、省エネルギー化された高速機によく対応した、低温定着性に優れ、かつ、耐オフセット性にも優れた性能を有している。また、本発明のトナーバインダーは、表1に示すように、ブロッキング性、粉砕性、耐久現像性にも優れ、実用上優れた性能を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例と比較例における、ゲル分と定着温度の関係を表す図である。
【図2】実施例と比較例における、完全反応ゲル分とオフセット温度の関係を表す図である。
【図3】実施例と比較例における、定着温度とオフセット温度の関係を表す図である。
【図4】実施例10と比較例10における、トナーバインダーの貯蔵弾性率G’と温度との関係を表す図である。
Claims (6)
- 電子写真用トナーバインダーにおいて、当該トナーバインダーが、重量平均分子量が10 , 000〜100 , 000であり、エポキシ価が0 . 005〜0 . 1 Eq/100g であるグリシジル基含有ビニル樹脂(A)を架橋剤とし、該グリシジル基含有ビニル樹脂(A)と、酸価が1〜30 mgKOH/g 、ガラス転移温度が40〜70℃であるカルボキシル基含有ビニル樹脂(B)とを加熱溶融することにより架橋反応せしめて得られたものであり、当該トナーバインダーの粘弾性を温度範囲が50〜200℃、昇温速度が2℃/minで測定したとき、縦軸が貯蔵弾性率G’の対数(Pa)、横軸が温度(℃)である貯蔵弾性率と温度の関係を表した100〜200℃の温度範囲の粘弾性カーブにおいて、140〜180℃の温度範囲における当該粘弾性カーブが下に凸であり、その底に貯蔵弾性率G’の極小値G’0を有し、このG’0と200℃における貯蔵弾性率G’200がG'0<G'200で、その差ΔG'(G'200−G’0=ΔG')が300Pa以上であり、0.1〜20質量%のゲル分を含むことを特徴とする電子写真用トナーバインダー。
- 前記200℃における貯蔵弾性率G’200が1,000Pa以上であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用トナーバインダー。
- 電子写真用トナーバインダーにおいて、当該トナーバインダーのガラス転移温度が45〜75℃であり、かつ、当該トナーバインダーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、分子量4,000〜50,000の領域にピークを有することを特徴とする請求項1または2記載の電子写真用トナーバインダー。
- 架橋反応度が、1〜50%であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電子写真用トナーバインダー。
- スチレンアクリル系樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の電子写真用トナーバインダー。
- 請求項1ないし5の何れかに記載の電子写真用トナーバインダーを使用することを特徴とする電子写真用トナー。
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