JP3929217B2 - X線ct撮影方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体にX線を照射して、その被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得るX線CT撮影方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
被写体の周囲からX線を照射して投影データを得た後、この投影データをRadonの原理によって解析処理して、X線を透過させた被写体のX線吸収係数分布情報の画像、あるいは、その被写体の任意の断層面画像を得る方法が従来からX線CTとして診断などに広く使用されている。
【0003】
従来のこのようなX線CT(computed tomography)では、被写体に複数の金属物が含まれている場合には、得られたX線吸収係数分布情報の画像において、いわゆる金属アーチファクトと呼ばれる現象が生じて、その金属物に挟まれた部分に白抜けの偽像が発生し、診断上問題となっていた。これは、その偽像部分については、本来の正確な画像が得られないからである。
【0004】
図10は、X線CT撮影における偽像の発生原因の説明図である。
【0005】
図10(a)、(b)は、被写体の内部に2つの金属物I1,I2が存在している場合に、この被写体にX線を旋回照射したときに得られる透過X線量のグラフと、そのグラフから得られるX線吸収係数のグラフを、2つの照射旋回位置[1],[2]について対応させて示している。なお、ここでは、解りやすくするために、金属物I1,I2以外の部分はX線を完全に透過させるものとする。
【0006】
照射旋回位置[1]のように、X線を照射した場合の影が重ならない場合には、金属物I1,I2の透過X線量は図示するように正しいグラフとなり、これから得られるX線吸収係数のグラフも正しいものになっている。ただし、ここで、注意が必要なのは、金属物I1,I2は、それぞれ単体でX線を吸収してしまい、その透過X線量、つまり、その金属物I1,I2を透過して、X線フィルムや2次元X線イメージセンサを感光させるX線量は既に「0」となっていることである。
【0007】
一方、照射旋回位置[2]のように、X線を照射した場合の影が重なる場合には、金属物I1,I2の透過X線量は、双方の影が重なった部分については、本来、それだけ吸収量が多いので、図に点線で示したようなグラフにならなければならないが、すでに、金属物I1,I2の単体でX線を吸収してしまって、透過X線量は「0」となっているので、得られるグラフは図1(a)[2]の実線のようになってしまう。したがって、このグラフから得られるX線吸収係数のグラフも図1(b)[2]の実線のようになってしまい、本来、得られるべき点線のようなグラフを得ることができない。
【0008】
このような現象によって、X線投影画像をフィルター処理し、逆投影して得られたX線吸収係数分布情報の画像で金属物間に発生する像を偽像(アーチファクト)と呼んでいる。この偽像は、被写体の正しいX線吸収係数分布情報を覆い隠すもので、正しい画像を得ることができない。したがって、この金属アーチファクトによる偽像を除くことが、例えば、歯科診療などにおいて、金属物であるインプラントが施された歯牙を持つ患者の正しいX線吸収係数分布情報を得るために必要であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のX線CT撮影が、このような事情にあるのに着目して開発されたもので、インプラントなどがある場合でも、金属アーチファクトによる偽像を除去し、診断に耐え得るX線吸収係数分布情報の画像が得られるX線CT撮影方法と装置を提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のX線CT撮影方法は、被写体に対して、X線発生器を旋回させてX線を照射して得られた原X線投影画像をフィルタ処理し逆投影して得られたX線吸収係数分布情報の原画像から閾値処理または微分処理により金属部分のみを抽出処理して抜出し、その埋設位置を算出し、その金属部分についての既知のデータから、金属部分同士の重なり部分に補正を加えた計算上の投影画像を作成し、その計算上の投影画像の濃度を、画像全体のコントラストが得られるように調整して、上記原X線投影画像に重ね合わせた補正X線投影画像を作成し、その補正X線投影画像を再度フィルタ処理し逆投影することによって、上記被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得ることを特徴とする。
【0011】
この撮影方法は、いったん、従来のX線CT撮影方法でX線吸収係数分布情報の原画像を得、この金属アーチファクトによる偽像を含んだ原画像から、閾値処理、あるいは、微分処理によって、金属部分を抽出処理して、その位置を算出し、この金属部分について予め得られたデータを用いて、その正しい投影画像を計算で求めて、その投影画像を原X線投影画像に重ね合わせて補正X線投影画像を求め、これの画像を再度フィルタ処理し逆投影することによって、被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得るようにしたものである。
【0012】
ここで、重ね合わせの方法は、基本的には、両画像を比較して、X線吸収係数分布情報の大きい方を選択するという方法で行い、両画像のつなぎ目については、ズムージングを行ってもよい。
【0013】
この方法によれば、出願人の実験では、画像処理の時間は、従来法に比べて約2.5倍かかるが、複数の金属物、例えば歯科ではインプラント、によって生じる偽像を効率良く防ぐことができる。
【0014】
請求項2に記載のX線CT撮影方法は、X線発生器の旋回の回転中心を、被写体の一部である撮影すべき局所部位の中心に固定し、X線発生器を、その局所部位のみを包含するX線コーンビームを局所照射させながら、半回転あるいは1回転させることによって、その局所部位のX線吸収係数分布情報の画像を得る構成のX線CT撮影装置の画像処理装置において、請求項1に記載の方法が実行されることを特徴とする。
【0015】
この撮影方法は、請求項1の偽像除去方法に加え、X線CT撮影方法にいわゆる局所照射のX線CT撮影方法を用いたもので、双方の効果が相乗的に発揮される。
【0016】
ここで、局所照射のX線CT撮影方法とは、その旋回の回転中心を、上記被写体の一部である撮影すべき局所部位の中心に固定し、X線発生器からはその局所部位のみを包含するX線コーンビームを局所照射することによって得られたX線投影画像をフィルター処理、逆投影するという方法であり、X線コーンビームを局所照射する局所部位については、常に投影データが得らるが、その局所部位を取り囲む被写体の他の部分については、局所部位に比べて、X線コーンビームは旋回に伴って一時的に透過するだけで、投影データへの影響も少ないので、逆投影する場合に、局所部位以外の投影データへの影響を略無視することができるという思想に基づいている。
【0017】
この局所照射のX線CT撮影方法は、それに用いるX線コーンビームが従来のX線ビームに比べ、その照射範囲が限定され、また、原則として、1旋回、あるいは半旋回の照射で足りるので、撮影時間が大幅に短縮でき、被写体のX線被爆量を著しく軽減でき、特に、歯科治療のように、診断等のために必要な断層面画像の範囲が限定される場合には、有効である。
【0018】
請求項3に記載のX線CT撮影装置は、X線発生器と2次元X線イメージセンサとを対向配置させた旋回アームを有したX線撮影手段と、旋回アームの回転中心を撮影に先立って移動設定可能として、または被写体を撮影に先立って移動設定可能として、撮影中は、旋回アームの回転中心を撮影すべき局所部位の中心位置に固定した状態で旋回アームを旋回駆動する旋回アーム駆動制御手段と、X線投影画像を逆投影して、X線が透過した物体内部の吸収係数分布情報を画像情報として取り出す画像処理装置とを備え、上記X線発生器を旋回させて上記局所部位を包含するX線を照射し、得られた原X線投影画像を、上記画像処理装置において、フィルタ処理し逆投影し、得られたX線吸収係数分布情報の原画像から閾値処理または微分処理により金属部分のみを抽出処理して、その埋設位置を算出し、その金属部分についての既知のデータから、金属部分同士の重なり部分に補正を加えた計算上の投影画像を作成し、その計算上の投影画像の濃度を、画像全体のコントラストが得られるように調整して、上記原X線投影画像に重ね合わせた補正X線投影画像を作成し、その補正X線投影画像を再度フィルタ処理し逆投影することによって、上記被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得ることを特徴とする。
【0019】
この装置は、請求項1に記載のX線CT撮影方法を実現する装置であり、請求項1と同様の効果を発揮する。
【0020】
請求項4に記載のX線CT撮影装置は、請求項3において、更に、X線発生器が放射するX線の少なくとも走査方向の広がりを制限させるX線ビーム幅制限手段を備え、上記X線発生器を旋回させてX線を照射する際に、その旋回の回転中心を、上記被写体の一部である撮影すべき局所部位の中心に固定し、X線発生器を、上記X線ビーム幅制限手段によってその局所部位のみを包含するX線コーンビームを局所照射させながら半回転あるいは1回転させることによって、その局所部位のX線吸収係数分布情報の画像を得ることを特徴とする。
【0021】
この装置は、請求項2に記載のX線CT撮影方法を実現する装置であり、請求項2と同様の効果を発揮する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図とともに、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明のX線CT撮影方法の基本原理を示している。なお、これより、歯科診療の場合を例に説明するが、本発明の方法の適用分野は、この分野に限るものではない。
【0024】
図1(a)に示すように、患者の下奥歯の第7歯S7、第8歯S8に金属物であるインプラントI1,I2が埋設されている場合に、この部分の撮影に本発明のX線CT撮影方法を適用する例について説明する。
【0025】
まず、図1(b)に示すように、通常のX線CT撮影と同様に、これらの被写体O(S7,S8)に対してX線を旋回照射させて原X線投影画像を得、これをフィルタ処理し逆投影して得られたX線吸収係数分布情報の原画像X1を得る。この原画像X1は、上述した金属アーチファクトの為、金属物であるインプラントI1,I2の周囲に、その周囲部分を覆い隠すような偽像を伴った形で得られる。このような原画像X1では、診療に用いることができない。
【0026】
そこで、図1(c)に示すように、この原画像X1から金属部分だけを抜き出す抽出処理を行う。これには、金属部分は、他の部分より、X線吸収係数分布情報が大きいので、所定の閾値処理をして、金属部分を抜き出す方法、また、微分処理により、金属部分を抜き出す方法がある。いずれにしても、このように金属部分を抜き出して、その埋設位置を算出し、その後に、この金属部分であるインプラントI1,I2についての既知のデータから、この金属部分の計算上の投影画像XMを作成する。
【0027】
ついで、画像全体のコントラストが得られるように、この投影画像XMの濃度レベルを調整して、原X線投影画像に重ね合わせて、図1(d)に示す補正X線投影画像X2を得る。このようにすると、たとえ、金属物であるインプラントI1,I2が重なるような投影画像においても、図10(a)に示した点線部分のような正しい投影画像が得られ、結果、図10(b)に点線で示した部分のような正しいX線吸収係数分布情報の画像を得ることができる。
【0028】
その結果が、図1(e)に示す、最終的に得られたX線吸収係数分布情報の画像X3である。
【0029】
このようにして、画像処理の時間は従来法に比べ、約2.5倍かかるが、金属アーチファクトによる偽像のない、診断に耐える画像を得ることができる。
【0030】
図2は、本発明の局所照射のX線CT撮影方法の原理説明図である。この方法は、図1で説明した金属アーチファクトを除去する補正方法に、さらに、出願人自ら開発した局所照射を組み合わせたものであり、ここでは、その局所照射の方法について説明する。
【0031】
図2において、1はX線発生器、2は2次元X線イメージセンサであり、これらは図4,5,6等で後述する旋回アーム3(ここでは不図示)に対向配置されている。Pは撮影すべき局所部位となる第8歯をそれぞれ示しており、Sは歯列弓を示している。
【0032】
本発明の撮影方法では、図2に示したように、局所部位Pの中心位置Paを旋回アーム3の回転中心3aとして、旋回アーム3を等速で旋回させる。このとき、X線発生器1は、局所部位Pのみを包含する大きさのビーム幅を有したX線コーンビーム1aを放射するので、2次元X線イメージセンサ2には、拡大率の一定した局所部位PのX線投影画像が順次生成される。
【0033】
2次元X線イメージセンサとしては、X線TFT(Thin Film Transistor)センサ、X線MOS(Metal Oxide Semiconductor)センサ、X線II(Image Intensifier)カメラ、X線アモルファスセレンセンサ、X線CCD(Charge Coupled Device)センサ、増幅器付きX線CCDセンサ(XICCD)、CdZnTeセンサなどを使用する。
【0034】
このようにして撮影されたX線投影画像をコンピュータによってフィルタ処理、逆投影の演算処理をすれば、局所部位Pの内部のX線吸収係数分布情報が画像情報となって取り出されるので、その局所部位Pの任意の断層面を指定し、あるいは予め指定しておけば、その断層面画像が得られる。
【0035】
旋回アーム3(不図示、後述。)は、局所部位Pの中心位置Paに回転中心3aを固定保持して旋回する。この際、X線コーンビーム1aは、常に局所部位Pのみを包含するように局所照射する。撮影条件に応じて、局所部位Pに対して半周あるいは全周照射すれば、その部分のX線吸収係数分布情報の画像が生成できる。
【0036】
図3(a)はX線発生器1から放射されるX線コーンビーム1a、図3(b)は、従来のX線ファンビーム1a′を示している。
【0037】
このX線コーンビーム1aは、走査方向の広がり角度θ′が大きく、上下方向の広がりが小さい従来のX線ファンビーム1a′に比べて、走査方向の広がり角度θが小さく、また上下方向に一定の厚みを持っており、一度のビーム照射によって撮影すべき局所部位Pの全体にX線を透過させる程度の大きさのビーム束である。
【0038】
X線コーンビーム1aは任意の断面形状に形成できるが、断面形状を矩形に形成して、被写体の一部にのみX線コーンビーム1aを全周囲から照射した場合には、図3(a)に示したように、X線コーンビーム1aが共通に局所照射される局所部位Pは円柱形状になるので、その内部のX線吸収係数の分布が算出でき、その円柱内部の任意の断面の断層面画像が得られる。また、断面形状を円形に形成して、被写体の一部のみにX線コーンビームを局所照射すれば、X線コーンビームが共通に照射された部分は球になるので、その内部のX線吸収係数の分布が算出でき、球内部の任意の断面の断層面画像が得られる。
【0039】
歯科診療に用いる場合、この局所照射のX線CT撮影方法では、2次元X線イメージセンサとして、例えば、縦10センチメートル、横10センチメートルの寸法のものを使用し、その場合、この円柱、すなわち局所部位の直径は5センチメートル、高さが5センチメートルとなる。
【0040】
この局所照射のX線CT撮影方法は、X線コーンビームは従来のX線ビームに比べ、その照射範囲が限定され、また、原則として、1旋回、あるいは半旋回の照射で足りるので、撮影時間が大幅に短縮でき、被写体のX線被爆量を著しく軽減でき、特に、歯科治療のように、診断等のために必要な断層面画像の範囲が限定される場合には、有効である。具体的には、その被爆量は、従来のCT撮影に比べて1/20〜1/100程度に軽減できる。
これより、本発明のX線CT撮影装置について説明する。
【0041】
図4は、本発明のX線CT撮影装置の一例の基本構成を示すブロック図である。
【0042】
このX線CT撮影装置20は、X線撮影手段A、X線ビーム幅調整手段B、旋回アーム駆動制御手段C、画像処理装置D、表示部E、被写体保持手段4、主フレーム10、操作部11、操作パネル12などを備えている。
【0043】
X線撮影手段Aは旋回アーム3を有しており、この旋回アーム3は、X線発生器1と2次元X線イメージセンサ2とを対向した状態で吊り下げ配置している。
【0044】
X線発生器1は、出射制御スリット8とX線ビームコントローラ8bとを備えたX線ビーム幅制限手段Bを有しており、X線管より発射するX線ビームをX線ビーム幅制限手段Bで調整して、所望のビーム幅のX線ビームあるいはX線コーンビーム1aを放射できるようになっている。
【0045】
一方の2次元X線イメージセンサ2は、フォトダイオードを2次元配列したMOSイメージセンサの上に、光学像を伝送する光ファイバ素子が設置され、更にその上にX線を可視光線に変換するシンチレータ層を形成した公知の構成のものが採用されている。
【0046】
旋回アーム3には、XYテーブル31と昇降制御モータ32と回転制御モータ33とが設けられており、X軸制御モータ31a、Y軸制御モータ31bを制御することによって、その回転中心3aをXY方向に設定可能とし、昇降制御モータ32を駆動することによって上下に昇降するとともに、撮影時には回転制御モータ33を等速度で駆動させて旋回アーム3を被写体Oの周りに旋回できるように、また同時に昇降できるようにしている。この昇降制御モータ32は、旋回アーム3のアーム上下位置調整移動手段を構成している。
【0047】
また、旋回アーム3の回転中心3a、つまり、旋回軸が鉛直に設けられ、旋回アーム3が水平に回転し、X線コーンビーム1aが水平に局所照射されるので、装置を占有床面積の少ない縦型として構成することができる。
【0048】
この回転制御モータ33は、旋回アーム3の旋回駆動手段を構成しており、サーボモータなどのように、その回転速度、回転位置を自由に制御することができるモータを用い、また、旋回アーム3の回転中心3aに軸直結で設置されている。
【0049】
したがって、旋回アーム3を等速度回転をさせることができるとともに、その回転位置も時間軸に沿って知ることができるので、タイミングを合わせて、2次元X線イメージセンサ2でX線投影画像を取り出すのに都合がよく、また、芯振れがなく、本発明のX線CT撮影方法を有効に実施することができる。
【0050】
旋回アーム3の回転中心3aには、中空部3bが設けられている。このような中空部3bを設けるためには、回転中心3a上に有る関連部品に全て、中空孔を設ける必要があるが、例えば、回転制御モータ33としては、そのために、中空軸を使用したサーボモータを使用することができる。
【0051】
この中空部3bは、旋回アーム3に吊り下げ配置されたX線発生器1と2次元X線イメージセンサ2と、主フレーム10側に設けた操作部11との間の接続線を配置するためのものである。回転部分に対して、電気配線を接続する場合、その接続線の配置方法が問題になるが、このように、旋回アーム3の回転中心3aを通して接続線を配置すると、回転による捻じれなどの影響を最小限にすることができるとともに、配線の美観上も好ましい効果を得ることができる。
【0052】
旋回アーム駆動制御手段Cは、この実施例ではXYテーブル31と、昇降制御後モータ32と、回転制御モータ33とを組み合わせて構成されるが、このような構成に限られない。最も簡易な構造では、旋回アーム3の中心位置3aは、手回しハンドルを操作して、任意の位置に設定できるようにしてもよい。
【0053】
また、旋回アーム3の回転中心3aを水平方向に移動設定するためのXYテーブル31は、その回転中心3aを被写体Oの内部のX線CT撮影すべき局所部位Pの中心位置に設定するためのものであるが、次に述べるような保持手段位置調整機構41を備えた被写体保持手段4が設置されている場合には、被写体側で、同様の調整をすることができるので、必ずしも、設けなくともよいものである。
【0054】
被写体O(ここでは、人体頭部を例として説明する。)は、被写体保持手段4のチンレスト4aに下顎を載せ、イヤロッド4bの先端を両外耳穴に嵌めて、位置設定されるようになっている。この被写体保持手段4は、X軸制御モータ41a、Y軸制御モータ41b、Z軸制御モータ41cを備えた保持手段位置調整機構41を備え、この保持手段位置調整機構41によって、上下方向は被写体Oの高さに合わせ、左右方向は、撮影に適した位置に被写体Oの位置を設定できるようになっている。
【0055】
被写体保持手段4は、それぞれ駆動源としてX軸制御モータ41a、Y軸制御モータ41b、Z軸制御モータ41cをそなえたX軸、Y軸、Z軸直線移動テーブルを組み合わせたテーブル(不図示)に載置されている。これらのX軸、Y軸、Z軸直線移動テーブルは、それぞれ周知のクロスローラガイドや、通常のベアリングとガイドを組み合わせたものなどで構成され、正確に直線移動ができるものである。駆動源のモータ41a〜41cによる、これらのX軸、Y軸、Z軸直線移動テーブルの移動は、ラックとピニオン方式や、ボールネジ方式や、通常のネジ軸を用いる方式などを適用できるが、正確に位置決めできるものが望ましい。
【0056】
このような直線移動テーブルと駆動方式を備えたX軸制御モータ41aとY軸制御モータ41bで、被写体水平位置調節手段42を構成し、また、Z軸制御モータ41cで、被写体上下位置調節手段43を構成している。
【0057】
こうして、被写体Oの水平位置を自由に設定できる被写体水平位置調節手段42と、被写体Oの上下位置を自由に設定できる被写体上下位置調節手段43を備えているので、被写体Oの高さに被写体保持手段4の高さを合わせることができると共に、旋回アーム3の回転中心3aに、被写体Oの内部の局所部位Pの中心位置Paを合わせるのに便利がよい。
【0058】
また、上述したように、旋回アーム3側でも、その回転中心3aの位置を移動設定するXYテーブル31と昇降制御モータ32を備えている場合には、被写体水平位置調節手段42は、必ずしも必要なものではない。しかし、まず、被写体Oのあらましの位置設定を被写体水平位置調節手段42と被写体上下位置調節手段43によって行い、その後に、微調整を、旋回アーム3側のXYテーブル31と昇降制御モータ32によって行うという使い方も便利な場合があるので、双方を備えてもよい。
【0059】
また、被写体位置調節手段としては、上述したものの他、被写体O(ここではその人体頭部を有する被検者をさす。)の座っている椅子と共に被写体保持手段4を移動させて位置設定するという手段も可能である。このようにすると、被検者は、椅子に座った自然な姿勢を保ったままで、撮影に適切な位置決めがなされるので、被検者にとって優しい装置となる
画像処理装置Dは、画像処理解析に高速で作動する演算プロセッサを含んでおり、2次元X線イメージセンサ2上に生成されたX線投影画像を前処理した後、所定の演算処理を実行することによって、X線を透過させた物体内部の吸収係数分布情報を算出し、表示装置Eに撮影された局所部位Pの任意の断層面画像や、パノラマ画像を表示させ、また必要な記憶媒体に画像情報として記憶させる。また、画像処理装置Dは、上述した金属部分の抽出処理、この金属部分の計算上の投影画像の作成、原X線投影画像への重ね合わせなどの処理も行う。
【0060】
表示装置Eには、撮影した局所部位Pの立体斜視図をXYZ方向にそれぞれ回転可能に予め表示させておき、その画面において、術者などが診断したい断層面を指定することによって、その断層面画像が表示されるようになっているので、希望する断層面の選択に便利であり、被写体Oの局所部位Pとして撮影された前顎、後顎、歯牙などの内部の状態が正確に判断できる。
【0061】
主フレーム10は、この装置20全体を支持している構造体で、その詳細は後述する。操作部11は、この装置20全体を制御し、かつ、操作パネル12からの入力を受けて、種々の設定制御司令を行うものである。
【0062】
操作パネル12は、装置20の必要な設定のための入力や、操作をするためのものであって、その詳細は後述する。
【0063】
このような構成によって、この装置20は、本発明のX線CT撮影方法や、局所照射のX線CT撮影方法を実現することができる。
【0064】
図5は本発明のX線CT撮影装置の一例の外観正面図、図6はその外観側面図である。これより、すでに説明した部分については、同一の符号を付して、重複説明を省略する。
【0065】
X線CT撮影装置20は、門型の非常に剛性の高い構造体である主フレーム10を全体の支持体として構成されている。
【0066】
この主フレーム10は、X線発生器1と2次元X線イメージセンサ2とを対向した状態で吊り下げ配置した旋回アーム3を回転可能に支持するアーム10a、このアーム10aの旋回アーム3支持部付近の左右サイドを、旋回アーム3の回転による振れ防止の為に固定している1対の横ビーム10b、この横ビーム10bを支えている一対の縦ビーム10c、アーム10aを固定載置しているコラム10d、コラム10dと一対の縦ビーム10cが固定載置され、この装置20全体の基礎となっているベース10eから構成されている。
【0067】
この主フレーム10を構成する部材は、それぞれ、剛性の高い鋼鉄材が用いられ、また、適宜、筋交いや、角補強部材が設けられて変形に強いものとなっている。また、特に、旋回アーム3を回転支持するアーム10aは、それ自身、剛性の高いものとなっているが、さらに、その回転支持部には、回転振れ防止のための1対の横ビーム10b、縦ビーム10cが設けられ、回転時に、旋回アーム3の回転中心3aが変動しないようになっている。
【0068】
このように主フレーム10は、旋回アーム3の旋回振れが生じないような構造体としているので、特に、旋回振れがないことが要求される局所照射のX線CT撮影装置としてふさわしい。
【0069】
なお、主フレームは、剛性の高い構造とできるならば、横ビーム10bや、縦ビーム10cは不要としてもよい。
【0070】
操作パネル12は、主フレーム10の一方の縦ビーム10cの反コラム10d側の表面で、術者が、立位で操作がし易いような位置に設けられている。
【0071】
図7は、本発明のX線CT撮影装置の操作パネルの一例を示す正面図である。
【0072】
この操作パネル12は、まず、X線CT撮影装置の撮影モードを選択するための選択スイッチ9を備え、この選択スイッチ9は、互いに排他的に切り替えられる通常のCT撮影モードスイッチ9aと、局所照射のCT撮影モードスイッチ9bとから構成され、通常のCT撮影モードスイッチ9aを操作したときには、通常のX線CT撮影方法により、被写体全体のX線吸収係数分布情報の画像を生成する撮影モードとなり、局所照射のCT撮影モードスイッチ9bを操作したときには、局所照射のX線CT撮影方法により、被写体の局所部位のX線吸収係数分布情報の画像を生成するモードとなる。
【0073】
なお、このような選択スイッチ9を設けるかわりに、2次元X線イメージセンサ2として使用するセンサをカセット式にしておき、このカセットを、通常のX線CT撮影方法と、局所照射の方法とで、異なるものとしておき、カセットの入れ替えによって、通常CT撮影モードと、局所照射CT撮影モードとを切り替えることもできる。
【0074】
選択スイッチ9の下には、被写体選択スイッチ12a、12b、12cが設けられている。これらの被写体選択スイッチ12a、12b、12cは、その下側に設けられた歯位置選択スイッチ12d〜12gと組み合わせて使用され、撮影モードに対応して、所定の位置に被写体保持手段4(図8参照)を位置付けるために用いる。スイッチ12aは被写体Oが小さい子供のとき、スイッチ12bは被写体Oが普通の子供のとき、スイッチ12cは被写体Oが大人のときに操作する。
【0075】
スイッチ12d、12eは、局所照射の場合に用いられ、撮影する局所部位Pが、上顎歯か、下顎歯かを選択するもので、スイッチ12dを操作すると、上顎歯が選択され、スイッチ12eを操作すると下顎歯が選択される。スイッチ12f、12gは、撮影する局所部位の左右を選択するためのもので、スイッチ12fを操作すると左顎歯が、スイッチ12gを操作すると右顎歯が選択される。
【0076】
その下の位置スイッチ12h〜12kは、撮影する局所部位Pのさらに詳しい位置を選択するためのもので、スイッチ12hを操作すると、歯列弓Sの対称軸線Loを基準にして、第1、2番目の歯が選択され、スイッチ12iを操作すると、第3、4番目の歯が選択され、スイッチ12jを操作すると、第5、6番目の歯が選択され、スイッチ12kを操作すると、第7、8番目の歯が選択される。
【0077】
その下の調整スイッチ12l〜12sは、旋回アーム3の位置調整、あるいは、被写体保持手段4の位置調整をするためのものである。
【0078】
スイッチ12lを操作すると、調整対象として、旋回アーム3が選択され、スイッチ12mを操作すると、調整対象として、被写体保持手段4が選択される。
【0079】
スイッチ12lを操作した場合に、スイッチ12n、12oを操作すると、昇降制御モータ32が駆動され、旋回アーム3が上下に昇降し、スイッチ12p、12qを操作するとX軸制御モータ31aが駆動され、旋回アーム3が左右に移動し、スイッチ12r12sを操作するとY軸制御モータ31bが駆動され、旋回アーム3が前後に移動する。
【0080】
スイッチ12mを操作した場合に、スイッチ12n、12oを操作すると、保持手段位置調整機構41のZ軸制御モータ41cが駆動され、被写体保持手段4が上下に昇降し、スイッチ12p、12qを操作するとX軸制御モータ41aが駆動され、被写体保持手段4が左右に移動し、スイッチ12r12sを操作するとY軸制御モータ41bが駆動され、被写体保持手段4が前後に移動する。
【0081】
その下の、インプラント処理スイッチ12tは、本発明の金属アーチファクト除去処理するか否かを選択するスイッチである。撮影前に、患者の歯牙に金属物のないことが明らかな場合には、この処理をする必要がないので、このスイッチを無しのモードにしておけば、画像処理の時間を節約することができる。
【0082】
最下段の電源スイッチ12uは、装置20全体の電源をオンオフするもので、スタートスイッチ12vは、撮影スタートスイッチである。
【0083】
こうして、この操作パネル12により、X線CT撮影装置20全体の設定、操作をすることができる。
【0084】
図8は、本発明のX線CT撮影の撮影手順を示すフローチャートである。このフローチャートに沿って、X線CT撮影の手順を説明する。
【0085】
まず、操作パネル12の選択スイッチ9によって、通常のCT撮影モードか、局所照射のCT撮影モードかを選択する(S1)。ついで、インプラント処理スイッチ12tによって、金属アーチファクト除去処理の補正をするか否かのモード選択を行う(S2)。
【0086】
つぎに、被写体Oを、被写体保持手段4のチンレスト4aに設定し、旋回アーム3の回転中心3aが、通常のCT撮影モードのときは、被写体Oの中心位置になるように,局所照射のCT撮影モードのときは、被写体Oの局所部位Pの中心位置Paになるように設定し、旋回アーム3の高さを、調整して、X線発生器1から局所照射されるX線コーンビーム1aの上下高さが、被写体Oあるいは局所部位Pになるように設定する(S3)。
【0087】
ついで、撮影を開始し、旋回アーム3を撮影モードに対応させた所定の角度範囲で旋回させながら、X線を撮影モードに対応させた態様で照射する(S4)。
【0088】
ついで、得られた原X線投影画像をフィルタ処理し、逆射影を行い,X線吸収係数分布情報の原画像をえる(S5)。ここで、先に設定した補正モードが、金属アーチファクト処理を行わないモードの場合には、その得られた原画像のままで、目的とする画像を生成し(S7)、その画像を表示装置Eに表示し、必要に応じて、プリント出力、または、記憶手段に記憶させて(S8)、終了する。
【0089】
一方、補正モードが、金属アーチファクト除去処理を行なうモードの場合には、既に、その補正済みか否かの判断をして、既に補正済みなら、その補正後のデータから、X線吸収係数分布情報の画像を得、表示、プリント出力、記憶保存などを行う(S11,S7,S8)。
【0090】
補正済みでない場合には、上述した金属部分の抽出処理を行い、金属部分の計算上の投影画像を作成し、これを原X線投影画像に重ね合わせて、補正X線投影画像を作成し、これを原投影画像として通常の処理を行わせる(S11,S12,S13,S5,S6,S11,S7,S8)。
【0091】
このようにして、この装置20では、本発明の金属アーチファクト除去処理をするX線CT撮影と、しないX線CT撮影、また、通常のX線CT撮影、局所照射のX線CT撮影のいずれをもすることができる。
【0092】
図9は、本発明のX線CT撮影装置の画像信号処理系を示すブロック図である。
【0093】
この処理系は、画像処理装置Dを中心とし、それに接続されたX線発生器1、2次元X線イメージセンサ2、操作パネル12、表示装置E、外部記憶手段Fから構成され、画像処理装置Dは、制御手段Da、フレームメモリDb、 A/D変換手段Dcを備えている。
【0094】
このような画像処理装置Dは、たとえば、画像処理用マイクロプロセッサで構成することができる。
【0095】
2次元X線イメージセンサ2から受けた画像データは、A/D変換手段Dcによってデジタル信号に変換され、デジタル変換された画像データがフレームメモリDbに格納される。フレームメモリDbに格納された複数の画像データは、演算用メモリDdに記憶され、その記憶された画像データに対して、選択された撮影モードに対応した所定のフィルタ処理、逆投影、金属部分の抽出処理、金属部分の投影画像の計算、重ね合わせなどの演算処理が行われ、X線吸収係数分布情報の画像、あるいは、断層面画像が生成され、表示装置Eに表示され、また、必要に応じて、外部記憶手段Fに記憶される。
【0096】
この外部記憶手段Fとしては、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置などを用いることができる。
【0097】
なお、上記では、歯科などの医療用に、X線CT撮影方法及びX線CT撮影装置を用いる例について説明したが、本発明の方法と装置は、医療分野だけでなく、一般に、構造体内部の異質物を発見するための非破壊検査などにおいても、用いられるものである。
[[局所照射のX線CT撮影方法の原理説明]]
図11は本発明の局所照射のX線CT撮影方法における投影データを説明する図、図12(a)、(b)、(c)は本発明の局所照射のX線CT撮影方法に使用される条件関数の説明図、図13は、通常のX線CTにおいて解析される投影データを説明する図、図14は、通常のX線CT撮影方法に用いられる式を表す図、図15は本発明の局所照射のX線CT撮影方法に用いられる式を表す図である。
【0098】
これらによって、通常のX線CT撮影方法、局所照射のX線CT撮影方法について説明する。
[通常のX線CT撮影方法]
今、被写体9をxy座標系に置いて、傾きθの角度から被写体9の全体にX線ビームを照射して、XY座標系に投影データを生成した場合(図13)を考えると、その場合の投影データは図14の(式1)、投影データを逆投影したデータは図14のコンボリューション法による(式2)で示される。このことは従来の解析方法からよく知られている。
【0099】
ここに、被写体9の断層面を含む平面に固定座標系xOyを定義し、この座標(x、y)におけるX線吸収係数の2次元分布情報を原画像として連続2次元関数f(x、y)で表現する。また、0<θ<πのあらゆる角度方向θから平行X線ビームが照射され、被写体9を透過した後のX線強度が投影データとして検出されるものとする。
【0100】
この場合において、X線ビームを透過させた被写体9内部の吸収係数の2次元分布情報f(x、y)は(式3)で求められるので、この積分を計算し、それを、上下方向であるz軸方向に繰り返せば、被写体9のX線の3次元的な吸収係数分布情報が得られる。
【0101】
このCTによる画像再構成といわれる演算処理は、2次元フーリエ変換法、1・2次元フーリエ変換法、1次元フーリエ変換法、コンボリューション法が採用されるが、近時では演算時間を大幅に短縮するため、上述したコンボリューション法が広く採用されており、このコンボリューション法によれば、単純な積和となる重畳積分と逆投影作業を行うだけでよく、演算が単純かつ高速で行える。
【0102】
図14の(式4)は、f(x、y)をコンボリューション法によって求めるものである。なお、図14の座標変換式は、xOy座標のx、y座標と、XOY座標のX、Y座標間の座標変換式である。
[本発明の局所照射のX線CT撮影方法]
本発明の通常の局所照射のX線CT撮影方法では、以上のような従来手法に対して、図11で示すように、被写体9の局所部位PのみにX線コーンビームを局所照射し、その放射ビーム幅を2rとし、図12で図示し、図15の(式5)で示したような条件関数を用いることを特徴とする。
【0103】
この条件関数(式5)を用いると、被写体9の局所部位Pの逆投影データqs(X、θ)、被写体9の局所部位P以外の逆投影データqn(X、θ)、被写体9の全体の逆投影データq(X、θ)の間には、図15の(式6)の関係が成立する。なお、(式6−1)において、第2項は、[−r,r]の区間の大部分では、ほぼ「0」になる。
【0104】
つまり、被写体9の全体の投影データは、その局所部位Pと、その局所部位Pの前後の通路となるその他の部分とを通過する投影データとを積分したものに等しいから、逆投影されたそれぞれの逆投影データの間には、
q(X、θ)=qs(X、θ)+qn(X、θ)…図15(式7)の関係が成立し、結果として、図15(式8)が導かれる。
【0105】
したがって、局所部位PのX線吸収係数の2次元分布情報fs(x、y)は、被写体9全体のX線吸収係数の2次元分布情報f(x、y)から、局所部位以外の部分のX線吸収係数の2次元分布情報fn(x、y)を減算すれば求められる。
【0106】
本発明の特徴は、従来のX線コーンビームを用いたX線CT撮影方法に対して、X線コーンビームの旋回方向のビーム幅を、従来の被写体全体を照射するものから、さらに小さくし、X線コーンビームの被写体の一部である局所部位だけを局所照射した点にある。このような着想は、X線CT撮影の場合には、X線ビームは、被写体全体に照射して撮影するという従来の思想を、大きく変えるものである。
【0107】
この撮影方法は、X線コーンビームを局所照射する局所部位については、常に投影データが得らるが、その局所部位を取り囲む被写体の他の部分については、局所部位に比べて、X線コーンビームは旋回に伴って一時的に透過するだけで、投影データへの影響も少なく、逆投影する場合に、局所部位以外の投影データへの影響を略無視することができるという思想に基づいており、上述の条件関数(式5)は、このような思想を、式として表現したものである。
【0108】
換言すれば、2次元分布情報fn(x、y)は、誤差成分であり、rects関数の外側の、つまり、rectn関数の信号を示しており、本願発明者は、発明研究の過程において、この誤差成分を示す2次元分布情報fn(x、y)は、ほぼ「0」になるという知見を見いだしたものである。つまり、本発明によると、誤差成分は無視することができ、所望の局所部位Pのみ鮮明に画像再構成ができる。
【0109】
また、歯科撮影に応用する場合には、診断対象として、歯牙やインプラントなどの形状などを分析するのが主眼であり、これらの部位は、他の組織部位に比べてX線吸収係数の高い部位といえるので、そのX線吸収係数の2次元分布情報fs(x、y)は、その他の部分のX線吸収係数の2次元分布情報fn(x、y)に比べて大きい値となる。したがって、なおさら、鮮明な断層面画像が生成される。
【発明の効果】
請求項1に記載のX線CT撮影方法によれば、いったん、従来のX線CT撮影方法でX線吸収係数分布情報の原画像を得、この金属アーチファクトによる偽像を含んだ原画像から、閾値処理、あるいは、微分処理によって、金属部分を抽出処理して、その位置を算出し、この金属部分について予め得られたデータを用いて、その正しい投影画像を計算で求めて、その投影画像を原X線投影画像に重ね合わせて補正X線投影画像を求め、これの画像を再度フィルタ処理し逆投影することによって、被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得るようにしたので画像処理の時間は、従来法に比べて約2.5倍かかるが、複数の金属物、例えば歯科ではインプラント、によって生じる偽像を効率良く防ぐことができる。
【0110】
請求項2に記載のX線CT撮影方法によれば、請求項1の効果に加え、X線CT撮影方法にいわゆる局所照射のX線CT撮影方法を用いたもので、双方の効果が相乗的に発揮される。つまり、偽像を効率良く防ぐことができると共に、撮影時間が大幅に短縮でき、被写体のX線被爆量を著しく軽減でき、特に、歯科治療のように、診断等のために必要な断層面画像の範囲が限定される場合には、有効である。
【0111】
請求項3に記載のX線CT撮影装置によれば、請求項1に記載のX線CT撮影方法を実現する装置であるので、請求項1と同様の効果を発揮する。
【0112】
請求項4に記載のX線CT撮影装置によれば、請求項2に記載のX線CT撮影方法を実現する装置であるので、請求項2と同様の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線CT撮影方法の原理説明図
【図2】本発明の局所照射のX線CT撮影方法の原理説明図
【図3】(a)、(b)はX線コーンビームとX線ファンビームとの対比説明図
【図4】本発明のX線CT撮影装置の一例の基本構成を示すブロック図
【図5】本発明のX線CT撮影装置の一例の外観正面図
【図6】本発明のX線CT撮影装置の一例の外観側面図
【図7】本発明のX線CT撮影装置の操作パネルの一例を示す正面図
【図8】本発明のX線CT撮影の撮影手順の一例を示すフローチャート
【図9】本発明のX線CT撮影装置の画像信号処理系を示すブロック図
【図10】X線CT撮影における偽像の発生原因の説明図
【図11】本発明の局所照射のX線CT撮影方法における投影データを説明する図
【図12】本発明の局所照射のX線CT撮影方法に使用される条件関数の説明図
【図13】通常のX線CT撮影において解析される投影データを示す図
【図14】通常のX線CT撮影に用いる式を示す図
【図15】局所照射のX線CT撮影に用いる式を示す図
【符号の説明】
1 X線発生器
1a X線コーンビーム
2 2次元X線イメージセンサ
3 旋回アーム
3a 旋回アームの回転中心
3b 中空部
33 回転制御モータ
4 被写体保持手段
4a チンレスト
4b イヤロッド
41 保持手段調整機構
42 被写体水平位置調節手段
43 被写体上下位置調節手段
5 アーム上下位置調整手段
6 光ビーム照射手段
8 出射制御スリット
8b X線ビームコントローラ
9 選択スイッチ
10 主フレーム
20 X線CT撮影装置
A X線撮影手段
B X線ビーム幅制限手段
C 旋回アーム駆動制御手段
D 画像処理装置
L X線ビーム束
O 被写体
P 局所部位
Pa 局所部位の中心位置
S 歯列弓
Claims (4)
- 被写体に対して、X線発生器を旋回させてX線を照射して得られた原X線投影画像をフィルタ処理し逆投影して得られたX線吸収係数分布情報の原画像から閾値処理または微分処理により金属部分のみを抽出処理して抜出し、その埋設位置を算出し、その金属部分についての既知のデータから、金属部分同士の重なり部分に補正を加えた計算上の投影画像を作成し、その計算上の投影画像の濃度を、画像全体のコントラストが得られるように調整して、上記原X線投影画像に重ね合わせた補正X線投影画像を作成し、その補正X線投影画像を再度フィルタ処理し逆投影することによって、上記被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得ることを特徴とするX線CT撮影方法。
- X線発生器の旋回の回転中心を、被写体の一部である撮影すべき局所部位の中心に固定し、X線発生器を、その局所部位のみを包含するX線コーンビームを局所照射させながら、半回転あるいは1回転させることによって、その局所部位のX線吸収係数分布情報の画像を得る構成のX線CT撮影装置の画像処理装置において、請求項1に記載の方法が実行されることを特徴とするX線CT撮影方法。
- X線発生器と2次元X線イメージセンサとを対向配置させた旋回アームを有したX線撮影手段と、
旋回アームの回転中心を撮影に先立って移動設定可能として、または被写体を撮影に先立って移動設定可能として、撮影中は、旋回アームの回転中心を撮影すべき局所部位の中心位置に固定した状態で旋回アームを旋回駆動する旋回アーム駆動制御手段と、
X線投影画像を逆投影して、X線が透過した物体内部の吸収係数分布情報を画像情報として取り出す画像処理装置とを備え、
上記X線発生器を旋回させて上記局所部位を包含するX線を照射し、得られた原X線投影画像を、上記画像処理装置において、フィルタ処理し逆投影し、得られたX線吸収係数分布情報の原画像から閾値処理または微分処理により金属部分のみを抽出処理して、その埋設位置を算出し、その金属部分についての既知のデータから、金属部分同士の重なり部分に補正を加えた計算上の投影画像を作成し、その計算上の投影画像の濃度を、画像全体のコントラストが得られるように調整して、上記原X線投影画像に重ね合わせた補正X線投影画像を作成し、その補正X線投影画像を再度フィルタ処理し逆投影することによって、上記被写体のX線吸収係数分布情報の画像を得ることを特徴とするX線CT撮影装置。 - 請求項3において、
更に、X線発生器が放射するX線の少なくとも走査方向の広がりを制限させるX線ビーム幅制限手段を備え、
上記X線発生器を旋回させてX線を照射する際に、その旋回の回転中心を、上記被写体の一部である撮影すべき局所部位の中心に固定し、X線発生器を、上記X線ビーム幅制限手段によってその局所部位のみを包含するX線コーンビームを局所照射させながら、半回転あるいは1回転させることによって、その局所部位のX線吸収係数分布情報の画像を得ることを特徴とするX線CT撮影装置。
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