JP3928701B2 - 共役ジエンの分離精製方法および分離精製装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石油留分からイソプレン、ブタジエンなどの共役ジエンを分離精製する際に、精製装置内部におけるゴム状物質の発生を効率的に抑制できる共役ジエンの分離精製方法及び分離精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,3―ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンは、例えば、ナフサ分解ガスや製油所ガスからメタン、水素、窒素などを取り除いた後のC2以上の炭化水素混合物;エチレンを低温分留法などの方法で分離した後のC3以上の炭化水素混合物;C4炭化水素留分;C5炭化水素留分;などに含まれている。また、かかる炭化水素混合物を原料として、高純度な共役ジエンを分離精製する方法が工業的規模で実施され、その分離精製装置も各種のものが実用に供されている。
【0003】
しかし、これらの炭化水素混合物を分離精製する装置においては、共役ジエンが重合したと考えられるゴム状物質が内壁面など付着して詰まりを生じ易い。とりわけ、炭化水素混合物が高温にさらされる蒸発缶や蒸留塔底部に詰まりが発生しやすいため、定期的にあるいは不定期に該装置を停止し、内部を清掃して詰まりを取り除かなければならなかった。
【0004】
そこで、分離精製装置内における共役ジエンの重合を防止し、詰まりを生じにくくする方法について種々の検討がなされている。例えば、重合禁止剤であるジ低級アルキルヒドロキシルアミンの存在下にC5炭化水素を蒸留する方法(特開昭50―112304号公報);フルフラールおよびフルフラール縮合体を抽出溶媒中に存在させて、C4及びC5炭化水素を抽出蒸留する方法(特開昭56―81526号公報);有機リン酸エステル化合物を添加して共役ジエン炭化水素の重合を防止する方法(特公昭49―6886号公報);などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる公知法の詰まり防止効果は十分に満足のいくものとは言いがたい。また、ゴム状物質の生成を抑制するために多量の重合禁止剤を添加することがあり、装置や設備が腐食したり、分離精製コストが高くなったりするという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題のない共役ジエンの分離精製方法及び分離精製装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、亜硝酸塩を水等の極性溶媒に溶解して液体の状態で炭化水素混合物へ供給しても、極性溶媒に起因する装置腐食の問題は発生せず、亜硝酸塩投入の操作性および定量性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の共役ジエンの分離精製方法は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を、亜硝酸塩を含む重合禁止剤の存在下に抽出蒸留して共役ジエンを分離精製する方法において、該亜硝酸塩を極性溶媒溶液として炭化水素混合物へ供給することを特徴とする。
【0009】
前記の分離精製方法は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第1缶出分を得る工程(A)と、前記第1缶出分を放散塔にて蒸留して第2缶出分を得る工程(B)と、前記第2缶出分を回収して前記抽出蒸留塔に供給する工程(C)とを有し、前記(A)〜(C)のいずれかの工程へ亜硝酸塩を供給することが好ましく、前記工程(A)へ供給することがより好ましい。
【0010】
また、前記の分離精製方法は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を第一抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第1缶出分を得る工程(A1)と、前記第1缶出分を第一放散塔にて蒸留して第2缶出分および留出分を得る工程(B1)と、前記留出分を第二抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第3缶出分を得る工程(A2)と、前記第3缶出分を第二放散塔にて蒸留して第4缶出分を得る工程(B2)と、前記第2缶出分および第4缶出分を回収して前記第一抽出蒸留塔および/または第二抽出蒸留塔に供給する工程(C1および/またはC2)を有し、これら各工程のいずれかへ亜硝酸塩を供給することが好ましい。さらに前記(A1)および/または(A2)工程へ亜硝酸塩を供給することが特に好ましい。
【0011】
本発明の共役ジエンの分離精製装置は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を抽出蒸留して第1缶出分を得る抽出蒸留塔と、前記第1缶出分を蒸留して第2缶出分を得る放散塔と、前記第2缶出分を回収して前記抽出蒸留塔に供給する第1の供給系と、亜硝酸塩を極性溶媒溶液として前記抽出蒸留塔に供給する第2の供給系とを有するものである。
【0012】
また、前記の分離精製装置は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を抽出蒸留して第1缶出分を得る第一抽出蒸留塔と、前記第1缶出分を蒸留して第2缶出分と留出分を得る第一放散塔と、前記留出分を抽出蒸留して第3缶出分を得る第二抽出蒸留塔と、前記第3缶出分を蒸留して第4缶出分を得る第二放散塔と、前記第2缶出分および第4缶出分を回収して前記第一抽出蒸留塔および/または前記第二抽出蒸留塔に供給する第1の供給系と、亜硝酸塩を極性溶媒溶液として前記第一抽出蒸留塔および/または第二抽出蒸留塔に供給する第2の供給系とを有するものも好ましい。
【0013】
本発明に適用される共役ジエンを含有する炭化水素混合物は、特に限定されないが、通常、ナフサをクラッキングし、エチレンやプロピレンなどのC2およびC3炭化水素を分離して得られるC4以上の炭化水素混合物であり、好ましくはC4炭化水素留分またはC5炭化水素留分、より好ましくはブタジエンを含有するC4炭化水素留分またはイソプレンを含有するC5炭化水素留分である。
【0014】
本発明において使用される重合禁止剤は亜硝酸塩であることが必須であり、該亜硝酸塩を極性溶媒溶液として前記炭化水素混合物へ供給することが必須である。亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどが挙げられる。亜硝酸塩の使用量は特に限定されないが、共役ジエン類を含有する炭化水素混合物の重量を基準にして、通常0.1〜2000ppmである。
【0015】
亜硝酸塩を極性溶媒溶液として供給する方法は特に限定されない。例えば、攪拌機付きの溶解タンクに粉状の亜硝酸塩と極性溶媒を添加し攪拌混合することにより均一溶液とし、これを定量ポンプで供給する方法またはポンプで昇圧後に供給量調節バルブで流量をコントロールする方法などが挙げられる。亜硝酸塩の溶液濃度は特に限定されないが、通常2〜30重量%である。
【0016】
亜硝酸塩を溶解させる極性溶媒としては、例えば、水、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、亜硝酸塩の溶解度の観点から水の使用が特に好ましい。また、水以外の有機溶媒を使用する場合は、分離コストのかさむ第3成分の混入防止の観点から、抽出蒸留に用いる抽出溶媒と同じものを選択することが好ましい。
【0017】
亜硝酸塩を水に溶解して供給する際の水の量は、抽出溶媒供給段における抽出溶媒中の水分濃度が重量基準で、通常3000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、特に好ましくは500ppm以下である。水の量が多すぎると、装置の腐食が促進され、好ましくない影響を与える。
【0018】
本発明においては、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第1缶出分を得る工程(A)と、前記第1缶出分を放散塔にて蒸留して第2缶出分を得る工程(B)と、前記第2缶出分を回収して前記抽出蒸留塔に供給する工程(C)において、前記第2缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度を測定し、前記測定された重合禁止剤の濃度に応じて抽出蒸留塔に対する亜硝酸塩の供給量を変化させて、前記第2缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度を制御することが好ましい。
【0019】
さらに、本発明においては共役ジエンを含有する炭化水素混合物を第一抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第1缶出分を得る工程(A1)と、前記第1缶出分を第一放散塔にて蒸留して第2缶出分および留出分を得る工程(B1)と、前記留出分を第二抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第3缶出分を得る工程(A2)と、前記第3缶出分を第二放散塔にて蒸留して第4缶出分を得る工程(B2)と、前記第2缶出分および第4缶出分を回収して前記第一抽出蒸留塔および/または第二抽出蒸留塔に供給する工程(C1および/またはC2)において、前記第2缶出分および/または第4缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度を測定し、前記測定された重合禁止剤の濃度に応じて前記第一抽出蒸留塔および/または第二抽出蒸留塔に対する亜硝酸塩の供給量を変化させて、前記第2缶出分および/または第4缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度を制御することが好ましい。
【0020】
重合禁止剤の濃度はイオンクロマトグラフ分析装置、液体クロマトグラフ分析装置、ガスクロマトグラフ分析装置などの分析装置を用いて測定することが出来るが、液体クロマトグラフを用いることがより好ましい。
【0021】
重合禁止剤としては、亜硝酸塩のほかに、例えば、ジ低級ヒドロキシルアミン、リン含有化合物などを併用してもよい。液状の化合物はそのまま供給できるが、固体状または粉末状の化合物は作業性や定量性の観点から極性溶媒で均一溶液にした後に供給することが好ましい。極性溶媒としては、前記の亜硝酸塩を溶解させる溶媒と同様のものが挙げられる。
【0022】
前記ジ低級アルキルヒドロキシルアミンとしては、例えば、ジエチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、メチルエチルヒドロキシルアミン、ジプロピルヒドロキシルアミン、ジブチルヒドロキシルアミン、ジペンチルヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
【0023】
前記リン含有化合物としては、例えば、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ジホスホン酸、二リン酸、トリポリリン酸、およびメタリン酸から選ばれるリン酸化合物;リン酸二水素アルキルエステル化合物;リン酸水素ジアルキルエステル化合物;リン酸トリアルキルエステル化合物;などが挙げられる。これらの中でも、リン酸化合物およびリン酸化合物のアルカリ金属塩が好ましく、より好ましくはリン酸二水素アルカリ金属塩である。
【0024】
本発明に使用される抽出溶媒は、共役ジエン類を溶解抽出できるものであれば特に限定されず、たとえば、水、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、イソプレンサイクリックサルホン、アセトニトリル、アルコール、グリコール、N−メチルロールダミン、N−エチルコハク酸イミド、N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシルエチルピロリドン、N−メチル−5−メチルピロリドン、フルフラール、2−ヘプテノン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトン酢酸アミド、モルホリン、N−ホルミルモルホリン、N−メチルモルホリン−3−オン、スルホラン、メチルカルビトール、テトラヒドロフラン、アニリン、N−メチルオキサゾリドン、N−メチルイミダゾール、N,N’−ジメチルイミダゾリン−2−オン、1−オキソ−1−メチルフォスホリン、メチルシアノアセテート、エチルアセトアセテート、エチルアセテート、マロン酸ジメチルエステル、プロピレンカーボネート、メチルカービトール、トリエチルホスフェート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられるが、好ましくはアミド化合物であり、より好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)である。これらの抽出溶媒は、それぞれ単独で、または2つ以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
かかる抽出溶媒の量は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物100重量部に対して、通常100〜1000重量部、好ましくは200〜800重量部である。抽出溶媒は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物を供給する段(石油留分供給段)よりも、上段の位置に設けられた抽出溶媒供給段から抽出蒸留塔に供給することが好ましい。
【0026】
本発明においては、抽出蒸留塔の汚れを防止するために(重合体の生起をさらに防止するために)、抽出溶媒中に、複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ化合物または芳香族アルデヒドが添加してあることが好ましい。
【0027】
前記複素環式アルデヒドは、複素環を持つアルデヒドのことであり、例えば、フルフラール、5−メチルフルフラール、5−(ヒドロキシメチル)フルフラール;チオフェンカルバルデヒド;ニコチンアルデヒド、ピリドキサールなどが挙げられる。好ましくは、フルフラールである。
【0028】
前記芳香族ニトロ化合物は、芳香環を持つニトロ化合物のことであり、例えば、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、α−ニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロメシチレン、ジニトロベンゼン、ジニトロトルエン、ジニトロキシレン、トリニトロベンゼン、トリニトロキシレンなどが挙げられる。好ましくはニトロベンゼンである。
【0029】
前記芳香族アルデヒドは、芳香環を持つアルデヒドのことであり、例えば、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、クミンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナムアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。好ましくはベンズアルデヒドである
【0030】
これらの複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ化合物または芳香族アルデヒドの濃度は、抽出溶媒供給段における抽出溶媒に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0031】
このように、抽出溶媒中に、複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ化合物または芳香族アルデヒドが添加してある場合において、重合体の生起をさらに防止するために、抽出溶媒中に、複素環式アルデヒドまたは芳香族アルデヒドの重縮合体などのタールを含有していることがより好ましい。これら重縮合体の濃度は、抽出溶媒供給段における抽出溶媒に対して、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。重縮合体の度が高くなりすぎると抽出効率が低下傾向になり、低くなりすぎるとジメチルホルムアミド中の複素環式アルデヒドまたは芳香族アルデヒドが多量に消費され不経済である。
【0032】
本発明に係る分離精製装置を用いた共役ジエン類の分離精製方法では、亜硝酸塩を含む重合禁止剤を用い、該亜硝酸塩を水等の極性溶媒に溶解して液状で供給する。このため、亜硝酸塩を粉状で供給する場合と比較して投入時の操業性、定量性が向上し、必要な亜硝酸塩を過不足なく供給でき、ゴム状物質の生成を効率よく、安定的に抑制できる。その結果、従来に比べて共役ジエン類の分離精製コストを低減でき、しかも精製共役ジエン中の重合禁止剤濃度を低く抑えることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る共役ジエンの分離精製方法および分離精製装置を図面に示す実施形態に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態では、共役ジエンの分離精製装置の一例として、C4炭化水素留分から、C4の炭化水素化合物を分離し、ブタジエンを精製するために用いる分離精製装置を取り上げて説明する。
【0034】
図1は本発明に係わる亜硝酸塩の供給方法を適用する分離精製システムの一例を示すブロック図である。
【0035】
分離精製システム
図1に示されるように、本実施形態に係る分離精製システムは、第一抽出蒸留塔4と、第一放散塔6と、第二抽出蒸留塔8と、第二放散塔9とを有する。
【0036】
第一抽出蒸留塔4は、C4炭化水素留分の第1段目の抽出蒸留を行い、第1留出分および第1缶出分を取り出すための塔であり、後述する第一放散塔6とライン6aにより接続している。第一抽出蒸留塔4の上段近傍には、ライン4cを通じた亜硝酸塩を含む重合禁止剤溶液を供給すべきライン4bが接続してある。ライン4c上には、重合禁止剤の供給量を調整するための供給量調整バルブ4dが設けてあり、制御装置10から送出される出力信号に基づき、重合禁止剤溶液の供給量を調整可能としてある。亜硝酸塩は水に完全に溶解させ、重合禁止剤タンクに貯蔵され、ライン4c、ライン8f、供給量調整バルブ4d及び供給量調整バルブ8gを通じて定量性良く供給出来るようにしてある。
【0037】
第一抽出蒸留塔4は、一般的には、塔本体と、この塔本体の塔頂から排出される蒸気を冷却して液化する凝縮器と、この凝縮器により液化された留分を貯留する還流ドラムと、還流ドラムに貯留された前記留分の一部を前記塔本体の塔頂近傍に再供給する還流ラインと、前記塔本体の塔底に配置される再沸器(リボイラー)とを有するが、本実施形態ではこれらを図示省略する。蒸留塔の形態としては、たとえば塔本体内を多くの水平段板で区切り、液と蒸気との接触が段階的に行われるようにした棚段塔、または異相間の物質移動を能率良く行うために塔内に充填物を詰めた充填塔などの何れの形態であってもよい。棚段塔を用いる場合の棚段数は、通常100〜300段、好ましくは150〜200段である。蒸留の精度(沸点の近いものを分別する能力)は、棚段数が大きい程優れているが、あまり大きなものはコストが増大するので、能力とコストのバランスを考えて選択される。なお、図1中の符号「6b」は、還流ドラム(図示省略)から、第1留出分が抜き出されるラインである。
【0038】
第一放散塔6は、ライン6aを通じて供給される第1缶出分の蒸留を行い、第2留出分および第2缶出分を取り出すための塔であり、後述する第二抽出蒸留塔8とライン8aにより接続している。なお、本実施形態では、ライン8a上にはコンプレッサー8bが設けてある。第一放散塔6の塔底近傍には、第2缶出分を回収可能なライン8cが接続してあり、このライン8cは、循環可能なライン9a,9bに接続してある。ライン9a上には、ここを流れる第2缶出分および後述する第4缶出分に含まれる亜硝酸塩を含む重合禁止剤の濃度を測定する液体クロマトグラフ分析装置(測定装置)12が設けてあり、測定された亜硝酸塩を含む重合禁止剤の濃度は、所定の出力信号として制御装置(制御手段)10に送出される。
【0039】
第一放散塔6は、一般的には、塔本体と、この塔本体の塔頂から排出される蒸気を冷却して液化する凝縮器と、この凝縮器により液化された留分を貯留する還流ドラムと、還流ドラムに貯留された前記留分の一部を前記塔本体の塔頂近傍に再供給する還流ラインと、前記塔本体の塔底に配置される再沸器(リボイラー)とを有するが、本実施形態では、第一抽出蒸留塔4の場合と同様、これらを図示省略する。第一放散塔6の形態としては、棚段塔であっても、充填塔であってもよい。
【0040】
第二抽出蒸留塔8は、ライン8aを通じて供給される第2留出分の第2段目の抽出蒸留を行い、第3留出分および第3缶出分を取り出すための塔であり、後述する第二放散塔9とライン8dにより接続している。第二抽出蒸留塔8の上段近傍には、ライン8fを通じた亜硝酸塩を含む重合禁止剤を供給すべきライン9bが接続してある。ライン8f上には、重合禁止剤の供給量を調整するための供給量調整バルブ8gが設けてあり、制御装置10から送出される出力信号に基づき、亜硝酸塩を含む重合禁止剤の供給量を調整可能としてある。第二抽出蒸留塔8は、本実施形態では、上述した第一抽出蒸留塔4と同様の構成を採用してあるが、本発明では特に限定されない。なお、図1中の符号「8e」は、還流ドラム(図示省略)から、第3留出分が抜き出されるラインである。
【0041】
第二放散塔9は、ライン8dを通じて供給される第3缶出分の蒸留を行い、第4留出分および第4缶出分を取り出すための塔である。第二放散塔9の塔底近傍には、第4缶出分を回収可能なライン9cが接続してあり、このライン9cは、循環可能なライン9a,9bに接続してある。第二放散塔9は、本実施形態では、上述した第一放散塔6と同様の構成を採用してあるが、本発明では特に限定されない。なお、図1中の符号「9d」は、還流ドラム(図示省略)から、第4留出分が抜き出されるラインである。
【0042】
以下に本発明の運転方法の一態様を示す。
【0043】
第一抽出蒸留塔4には、ライン4aを通じてC4炭化水素留分が供給される。第一抽出蒸留塔4に対するC4炭化水素留分の供給位置は、特に限定されず、通常、略中間段である。C4炭化水素留分の供給とともに、ライン4bから抽出溶媒を供給し、ここにライン4cを通じて重合禁止剤を供給し、ライン4bの途中で、均一溶液状の亜硝酸塩を含有する重合禁止剤を抽出溶媒と混合させた後、第一抽出蒸留塔4に供給させる。これらの供給とともに、第一抽出蒸留塔4の塔底に配置してある再沸器(図示省略)で加熱して第1段目の抽出蒸留を行う。第一抽出蒸留塔4内の圧力は、特に限定されないが、通常1〜10気圧であり、塔底温度は、好ましくは100〜160℃である。蒸留塔4の塔頂近傍からは、ブタンやブテンなどを多く含む留分が取り出され、この留分は凝縮器(図示省略)にて凝縮され、その一部は還流され、塔頂へ戻されるとともに、その残部は第1留出分としてライン6bを通じて取り出される。その一方、蒸留塔4の塔底からは、高級アセチレンおよびアレン系炭化水素を多く含むブタジエン留分が第1缶出分として取り出され、この第1缶出分はライン6aを通じて第一放散塔6へ供給される。
【0044】
第一放散塔6に対する第1缶出分の供給位置は、特に限定されず、通常、略中間段である。第1缶出分の供給ともに、第一放散塔6の塔底に配置してある再沸器(図示省略)で加熱して蒸留を行う。第一放散塔6内の圧力は、通常1〜2気圧であり、塔底温度はその圧力における沸点である。放散塔6の塔底からは、亜硝酸塩を含む重合禁止剤および抽出溶媒を含む混合溶媒(以下、単に、「混合溶媒」という場合がある)が第2缶出分として取り出され、この第2缶出分はライン8c,9a,4bを通じて第一抽出蒸留塔4へ、あるいはライン8c,9a,9bを通じて第二抽出蒸留塔8へそれぞれ循環され、再使用に供される。その一方、放散塔6の塔頂からは、ブタジエン、高級アセチレンおよびアレン系炭化水素を多く含む留分が取り出され、この留分は凝縮器(図示省略)にて凝縮され、その一部は還流され、塔頂へ戻されるとともに、その残部は第2留出分として取り出され、この第2留出分はライン8aを通じて第二抽出蒸留塔8へ供給される。
【0045】
第二抽出蒸留塔8に対する第2留出分の供給位置は、特に限定されず、通常、下段近傍である。第2留出分の供給とともに、ライン8fを通じてライン9bに均一溶液状の亜硝酸塩を含む重合禁止剤を供給し、ライン9bの途中で、亜硝酸塩を含む重合禁止剤を混合溶媒と混合させた後、第二抽出蒸留塔8に供給する。これらの供給とともに、第二抽出蒸留塔8の塔底に配置してある再沸器(図示省略)で加熱して第2段目の抽出蒸留を行う。第二抽出蒸留塔8内の圧力は、特に限定されないが、通常1〜10気圧であり、塔底温度は、好ましくは100〜160℃である。蒸留塔8の塔頂からは、ブタジエンを多く含む留分が取り出され、この留分は凝縮器(図示省略)にて凝縮され、その一部は還流され、塔頂へ戻されるとともに、その残部は第3留出分としてライン8eを通じて取り出される。ライン8eから取り出された第3留出分は、その後、蒸留塔(図示省略)に供給され、ここでさらなる蒸留処理が施され、ブタジエンが高度に濃縮された形で取り出され、最終的には、高純度のブタジエンとしてポリブタジエンなどの原料に供される。その一方、蒸留塔8の塔底からは、混合溶媒を多く含む留分が第3缶出分として取り出され、この第3缶出分はライン8dを通じて第二放散塔9へ供給される。なお、図示省略してあるラインを通じて、第二抽出蒸留塔8の塔頂近傍から亜硝酸ナトリウムなどの重合禁止剤を所定量添加することとしてもよい。これにより、第二抽出蒸留塔8内におけるポップコーンポリマーの発生を効果的に防止できる。
【0046】
第二放散塔9に対する第3缶出分の供給位置は、特に限定されず、通常、略中間段である。第3缶出分の供給ともに、第二放散塔9の塔底に配置してある再沸器(図示省略)で加熱して蒸留を行う。第二放散塔9内の圧力は、通常1〜2気圧であり、塔底温度はその圧力における沸点である。所定時間経過後に、放散塔9の塔頂からは、廃棄物を多く含む留分が第4留出分として取り出される。その一方、放散塔9の塔底からは、前述した第一放散塔6と同様、亜硝酸塩を含む重合禁止剤および抽出溶媒を含む混合溶媒が第4缶出分として取り出され、この第4缶出分は前記第2缶出分と混合され、ライン9c,9a,4bを通じて第一抽出蒸留塔4へ、あるいはライン9c,9a,9bを通じて第二抽出蒸留塔8へそれぞれ循環され、再使用に供される。
【0047】
本実施形態では、ライン9a上には、ライン9aを流れる混合溶媒(第2缶出分および第4缶出分)に含まれる亜硝酸塩を含む重合禁止剤の濃度を測定するための液体クロマトグラフ分析装置(測定装置)12が設けてある。測定された亜硝酸塩を含む重合禁止剤の濃度は、出力信号(濃度値)として制御装置10に送出され、ここで、この濃度値と基準範囲(所定範囲内の濃度)とが比較される。ここで基準範囲の濃度は、好ましくは0.1〜20ppm、より好ましくは0.5〜10ppmである。その結果、実測された濃度値が基準範囲との比較で高すぎると判断される場合には、制御装置10は、第一抽出蒸留塔4および第二抽出蒸留塔8に対する前記重合禁止剤の供給量を減少させるような信号をバルブ4d,8gに対して送出する。逆に、ライン9aを流れている混合溶媒に含まれる重合禁止剤の濃度が基準範囲との比較で低すぎると判断される場合には、制御装置10は、第一抽出蒸留塔4および第二抽出蒸留塔8に対する前記重合禁止剤の供給量を増加させるような信号をバルブ4d,8gに対して送出する。
【0048】
本実施形態では、以上のようにして、ライン9aを流れる混合溶媒に含まれる亜硝酸塩を含む重合禁止剤の濃度を基準範囲内におさめるようにオンオフ制御しているが、他の制御アルゴリズム、たとえば比例制御、比例積分制御、比例積分微分制御、ファジー制御、適応制御などによって制御してもよい。なお、分析装置(測定装置)12はライン上にある必要はなく、ラインから混合溶媒を少量抜きだし、この抜き出しサンプルをオフラインで測定し、その測定結果を制御装置10に入力して制御してもよい。
【0049】
本実施形態に係る分離精製システムによれば、ゴム状物質の生成を抑制するために必要な亜硝酸塩を含む重合禁止剤を定量性良く供給できるため、重合禁止剤の量に過不足が生じずゴム状物質の生成を効率よく安定的に抑制できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、C4炭化水素留分からC4の炭化水素化合物を分離しブタジエンを精製することとしているが、C5炭化水素留分からC5の炭化水素化合物を分離しイソプレンを精製することとしてもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の共役ジエンの分離精製方法および装置は、ゴム状物質の生成を抑制するために必要な亜硝酸塩を含む重合禁止剤を定量性良く供給できるため、重合禁止剤の量に過不足が生じず、ゴム状物質の生成を効率よく安定的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る分離精製装置を用いた分離精製システムの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
2… 分離精製システム
4… 第一抽出蒸留塔
4a〜4c… ライン
4d… 供給量調整バルブ
6… 第1放散等
6a〜6b… ライン
8… 第二抽出蒸留塔
8、8c〜8f… ライン
8b… コンプレッサー
8g… 供給量調整バルブ
9… 第二放散塔
9a〜9d… ライン
10… 制御装置(制御手段)
12… 液体クロマトグラム分析手段(測定装置)
Claims (4)
- 亜硝酸塩を含む重合禁止剤の存在下に共役ジエンを含有する炭化水素混合物を抽出蒸留して共役ジエンを分離精製する方法において、
該共役ジエンを含有する炭化水素混合物を抽出蒸留塔にて抽出蒸留して第1缶出分を得る工程(A)と、前記第1缶出分を放散塔にて蒸留して第2缶出分を得る工程(B)と、前記第2缶出分を回収して前記抽出蒸留塔に供給する工程(C)とを有し、
前記(A)〜(C)の少なくともいずれかの工程において、該亜硝酸塩を極性溶媒溶液として炭化水素混合物へ供給し、
前記第2缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度を測定し、前記測定された重合禁止剤の濃度に応じて抽出蒸留塔に対する亜硝酸塩の供給量を変化させて、前記第2缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度を制御することを特徴とする共役ジエンの分離精製方法。 - 前記第2缶出分に含まれる重合禁止剤の濃度が、0.1〜20ppmである請求項1に記載の共役ジエンの分離精製方法。
- 前記極性溶媒が水である請求項1又は2に記載の共役ジエンの分離精製方法。
- 前記炭化水素混合物が、ブタジエンを含有するC4炭化水素留分又はイソプレンを含有するC5炭化水素留分であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の共役ジエンの分離精製方法。
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