JP3821176B2 - 共役ジエン類の分離精製装置及び分離精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共役ジエン類の分離精製装置及び分離精製方法に関するものであり、詳細には、石油留分から高純度のイソプレン、ブタジエンなどの共役ジエン類を分離精製する際に、精製装置内部における重合体の生成を抑え、蒸留塔の汚れを防止し、配管詰まりや、熱効率の低下や、管などの接続部分の破損などが生じにくい、共役ジエン類の分離精製装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン類は液相、気相の両相において偶発的に多孔質不溶性の重合体、いわゆるポップコーン重合体を生起しやすい。特に、工業的蒸留においては、適当な操作温度、高い単量体純度、気相と液相との共存、水分の混入及び鉄錆の存在などポップコーン重合を起こしやすい諸条件がそろっている。
【0003】
このポップコーン重合体が生起しはじめると、これを核として指数的に増殖し、装置内を急速に閉塞させてしまう。また、この重合体は、すべての既知溶媒に不溶で、加熱しても溶融しない強靱な重合体である。この重合体を除去するには、機械的手段によりクリーニングするほか良い方法がなく、このクリーニングのためには装置を一時停止する必要があって、経済的な不利は免れない。しかも、機械的なクリーニングでは重合体の除去が完全には行えないので操業を再開すると、除去しきれなかった微量の重合体を核として再び増殖が始まることになる。
【0004】
そこで、共役ジエン類を含有する石油留分の蒸留装置内での重合を防止するために、ジ低級アルキルヒドロキシルアミンの存在下に蒸留するC5炭化水素の蒸留方法が提案されている(特開昭50−112304号公報)。この方法によりイソプレンの蒸留時にポップコーン重合体の発生が抑えられることが開示されている。
【0005】
また、イソプレンやブタジエンの精製方法として特公昭47−41323号や特公昭45−19682号等には共役ジエン炭化水素を抽出蒸留する方法が開示されており、その際、抽出溶媒に重合防止剤あるいは重合連鎖移動剤を添加することができると開示されている。
【0006】
さらに、特開昭56−81526号や特公昭43−20281号には、フルフラール及びフルフラール縮合体を溶媒中に存在させて抽出蒸留する方法が開示されている。
【0007】
しかし、共役ジエン類の抽出蒸留において、抽出溶媒に重合防止剤や、フルフラールを存在させるだけの従来の方法では、分離精製装置内、特に、高濃度の共役ジエン類を含有する留分をさらに高濃度に濃縮する工程で使用される凝縮器、蒸留塔及び再沸器などにおいて重合体の生成を長期間にわたって防止しきれず、配管詰まりを生じさせ、凝縮あるいは蒸発の熱効率を低下させていた。
【0008】
さらに、従来の抽出蒸留装置においては、管、塔または熱交換器の相互を接続する部分、例えば、フランジ、バルブなど、には、アスベスト製のパッキング材が用いられてきた。しかし、アスベスト製のパッキング材は、その中に極僅かの空隙があり、その空隙において、共役ジエンの重合体が生起し、この重合体の成長に伴って、接続部分が押し開かれて、極端な場合は接続部分が破損し、内容物が漏れ出す事態にまでなるおそれがある。
また、マンホール部、バルブ部、フランジ部などにおいては、共役ジエン類を含有する留分等が滞留しやすく、その部分には、共役ジエン類の重合体が生起しやすく、管の汚れや、閉塞を生じることがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、抽出蒸留装置内における重合体の生成を抑え;装置内の汚れ、配管詰まり、熱効率の低下、管などの接続部分の破損などが生じにくい共役ジエン類の抽出蒸留装置を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、管などを接続する部分にフッ素系高分子製のパッキング材を用いた抽出蒸留装置を用いることによって、また、抽出蒸留装置内の死空間に重合禁止剤を注入することによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、(1) 共役ジエン類を含有する石油留分を蒸留して共役ジエン類を分離精製する装置において、管、塔又は熱交換器の相互を接続する部分に、フッ素系高分子製のパッキング材を用いることを特徴とする共役ジエン類の分離精製装置が提供される。
【0011】
本発明装置の好適な態様として以下の装置が提供される。
(2) 抽出蒸留塔と蒸留塔とを有し、フッ素系高分子製のパッキング材を、蒸留塔に用いる前記(1)の装置。
(3) 蒸留抽出溶媒がアミド化合物であることを特徴とする前記(2)の装置。
(4) アミド化合物がジメチルホルムアミドであることを特徴とする前記(3)の装置。
(5) 抽出溶媒中に、複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドを存在させる前記(2)〜(4)の装置。
(6) 複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドがフルフラールである前記(5)の装置。
(7) 抽出溶媒中にさらに複素環式アルデヒドの重縮合体又は芳香族アルデヒドの重縮合体を溶媒基準で0.5〜10重量%存在させる前記(5)〜(6)の装置。
【0012】
(8) 抽出溶媒中の、複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドと、その重縮合体との合計量が1〜10重量%である前記(7)の装置。
(9) 複素環式アルデヒドの重縮合体又は芳香族アルデヒドの重縮合体がフルフラール重縮合体である前記(5)〜(8)の装置。
【0013】
(10) 重合禁止剤を抽出溶媒の供給段よりも上段の位置から連続供給する前記(1)〜(9)の装置。
(11) 重合禁止剤が連鎖移動反応により重合禁止または抑制するものである前記(10)の装置。
【0014】
(12) 重合禁止剤がジ低級アルキルヒドロキシルアミンである前記(10)の装置。
(13) 重合禁止剤を塔頂部凝縮器の入口から連続供給する前記(10)〜(12)の装置。
【0015】
(14) 石油留分を抽出蒸留して共役ジエン類を高濃度に濃縮した後、共役ジエン類よりも高沸点の物又は低沸点の物を蒸留により分離する工程において用いる前記(1)〜(13)の装置。
【0016】
また、本発明によれば、(15) 前記(1)〜(14)の装置を用いて共役ジエン類を分離精製する方法が提供される。
【0017】
さらに本発明によれば、(16) 共役ジエン類を含有する石油留分を蒸留して共役ジエン類を分離精製する方法において、管、塔または熱交換器内の死空間に重合禁止剤を注入することを特徴とする共役ジエン類を分離精製する方法が提供される。
【0018】
本発明の分離精製方法の好適な態様として、以下のごときものが提供される。
(17) 共役ジエン類を含有する石油留分をアミド化合物からなる抽出溶媒を用いて抽出蒸留塔によって抽出蒸留して、共役ジエン類を分離する工程において、
抽出溶媒供給段における抽出溶媒中に、抽出溶媒基準で50〜1000ppmの水が存在するよう調整することを特徴とする前記(16)又は(16)の共役ジエン類の分離精製方法。
(18) 死空間がアスベストパッキング材中の空隙である前記(16)の方法。
(19) 共役ジエン類を含有する石油留分を抽出溶媒を用いて抽出蒸留塔によって抽出蒸留して、共役ジエン類を分離する工程において、共役ジエン類を含有する石油留分を抽出蒸留塔の中間段に供給し、抽出蒸留塔頂の凝縮器の出口から出てくる留出物の気相中の酸素濃度を測定し、その酸素濃度が20ppm以下になるように、該気相の一部を抜き出すことを特徴とする前記(16)の方法。
【0019】
(20) 抜き出した気相成分を石油留分と混合し抽出蒸留塔の中間段に再供給する前記(19)の方法。
(21) 抽出溶媒が酸素捕捉剤を含有するものである前記(17)の方法。
(22) 重合禁止剤を共役ジエン類に分散または溶解して注入する前記(16)〜(21)の方法。
(23) 重合禁止剤がt−ブチルカテコールである前記(15)〜(21)の方法。
【0020】
(24) 共役ジエン類を含有する石油留分を抽出蒸留して共役ジエン類を濃縮した後、共役ジエン類よりも高沸点のあるいは低沸点の化合物を蒸留によって分離精製する方法において、管、塔または熱交換器内の死空間に重合禁止剤を注入することを特徴とする共役ジエン類を分離精製する方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の共役ジエン類の分離精製装置は、共役ジエン類を含有する石油留分を蒸留して、共役ジエン類を分離精製する装置において、管、塔又は熱交換器の相互を接続する部分に、フッ素系高分子製のパッキング材を用いることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に用いるパッキング材は、フッ素系高分子製のものである。ここで、フッ素系高分子はフッ素原子を分子の構成元素に含む高分子である。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAということがある。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPということがある。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、EPEということがある。)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEということがある。)、ポリクロロトリフリオロエチレン(以下、PCTFEということがある。)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(以下、ECTFEということがある。)、ポリビニリデンフルオライド(以下、PVDFということがある。)、ポリビニルフルオライド(以下、PVFということがある。)のごときフッ素樹脂;
【0023】
ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合ゴム、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合ゴム、含フッ素シリコーンゴム、フルオロホスファゼンゴム、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合ゴムのごときフッ素ゴム;及びビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合ゴムなどのフッ素ゴムからなるソフトセグメントの重合体ブロックとエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂やビニリデンフルオライド樹脂などのフッ素樹脂からなるハードセグメントの重合体ブロックとからなる含フッ素ブロック共重合体などが挙げられる。
これらフッ素系高分子のうち、フッ素樹脂、特にPTFEまたはPFAが好適に用いられる。
【0024】
本発明の装置においては、前記パッキング材を、管、塔または熱交換器相互を接続する部分、好適には、高濃度の共役ジエン類を含有する気相成分が流れている又は滞留している管、塔または熱交換器相互を接続する部分のシール材として使用する。
管、塔または熱交換器の相互を接続する部分としては、バルブ、ポンプ、計測機器類、マンホール、安全弁などのフランジ部などが挙げられる。本発明の装置は、高濃度の共役ジエン類が流れる工程における接続部分に適用することが好ましく、具体的には、石油留分を抽出蒸留して共役ジエン類を高濃度に濃縮した後、共役ジエン類よりも高沸点の物又は低沸点の物を蒸留により分離する工程において用いることが好ましい。
【0025】
石油留分の蒸留は、共役ジエン類の含有量(濃度)が低い場合は抽出蒸留方法で行い、共役ジエン類の濃度が高い場合は通常の蒸留方法で行う。
抽出蒸留で抽出溶媒は、共役ジエン類を溶解抽出することができるものである。具体的には、水、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、イソプレンサイクリックサルホン、アセトニトリル、アルコール、グリコール、N−メチルロールダミン、N−エチルコハク酸イミド、N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシルエチルピロリドン、N−メチル−5−メチルピロリドン、フルフラール、2−ヘプテノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトン酢酸アミド、モルホリン、N−ホルミルモルホリン、N−メチルモルホリン−3−オン、スルホラン、メチルカルビトール、テトラヒドロフラン、アニリン、N−メチルオキサゾリドン、N−メチルイミダゾール、N,N’−ジメチルイミダゾリン−2−オン、1−オキソ−1−メチルフォスホリン、メチルシアノアセテート、エチルアセトアセテート、エチルアセテート、マロン酸ジメチルエステル、プロピレンカーボネート、メチルカービトール、トリエチルホスフェート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらのうち、アミド化合物、特にジメチルホルムアミドが好適である。
【0026】
抽出溶媒の量は、共役ジエン類を含有する石油留分100重量部に対して、通常、100〜1000重量部、好ましくは200〜800重量部である。
抽出溶媒は、共役ジエン類を含有する石油留分を供給する段(石油留分供給段)よりも、通常、上段の位置に設けられた抽出溶媒供給段から抽出蒸留塔に供給される。
【0027】
抽出溶媒として水を含めることもできるが、本発明の好適な態様としては、抽出溶媒供給段における抽出溶媒中の水量を、抽出溶媒基準で、通常、50〜1000ppm、好ましくは100〜500ppmにするのが好ましい。水量が少なすぎると、重合体が生起しやすくなり、装置配管の詰まりを生じさせやすい。一方水量が多すぎると、装置の腐食が促進されやすい。
【0028】
水は、原料として供給される石油溜分中にも含まれているので、共役ジエン類の抽出蒸留を長時間操業していると、抽出溶媒中の水量が多くなってくる。本発明においては、抽出溶媒の回収、精製工程において、水を前記の水量範囲に調整することが好ましい。
【0029】
本発明においては、重合体の生起をさらに防止するために、抽出溶媒中に複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドを存在させることが好ましい。
本発明に使用する複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドは、複素環を持つアルデヒド、ベンゼン環を持つニトロ又はベンゼン環を持つアルデヒドである。
複素環式アルデヒドとしては、フルフラール、5−メチルフルフラール、5−(ヒドロキシメチル)フルフラール;チオフェンカルバルデヒド;ニコチンアルデヒド、ピリドキサール、などが挙げられる。これらの内フルフラールが好適である。
【0030】
芳香族アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、クミンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ジンナムアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。これらの内ベンズアルデヒドが好適である。
【0031】
芳香族ニトロとしては、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、α−ニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロメシチレン、ジニトロベンゼン、ジニトロトルエン、ジニトロキシレン、トリニトロベンゼン、トリニトロキシレンなどが挙げられる。これらのうちニトロベンゼンが好適である。
【0032】
複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドの量は、抽出溶媒供給段における抽出溶媒に対して、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0033】
また、抽出蒸留装置の汚れを防止するために、抽出溶媒にモノエタノールアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンまたはエチレンジアミンを添加して、あるいは;抽出溶媒と複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドとの併用溶媒に複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒド重縮合体などのタールを添加して用いる。特に抽出溶媒と複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドとの併用溶媒に複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒド重縮合体などのタールを添加して用いることが共役ジエン類の重合を抑える点で好ましい。
【0034】
複素環式アルデヒド重縮合体又は芳香族アルデヒド重縮合体の量は、抽出溶媒供給段における抽出溶媒に対して、通常、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
該重縮合体が多くなりすぎると抽出効率が低下傾向になり、少なすぎると、ジメチルホルムアミド中の複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドが多量に消費され不経済である。
【0035】
本発明の共役ジエン類の分離精製方法においては、管、塔又は熱交換器や、マンホール部、ブルドン管、バルブ、ポンプなどの分離精製装置内に存在する死空間、好適には高濃度の共役ジエン類を含有する気相が滞留する死空間に重合禁止剤を注入する。死空間では、共役ジエン類を含む留分が滞留するようになり、その部分で、重合が起きやすい。そこで、この死空間に重合禁止剤を滞留させることによって、共役ジエン類が死空間に入り込む割合が少なくなり、たとえ、共役ジエン類が死空間に入り込んでも、重合禁止剤の効果により共役ジエン類の重合が抑制されるのである。
重合禁止剤の死空間への注入量は、特に限定されない。通常は、死空間の容量に相当する容量を注入する。
【0036】
本発明に使用する重合禁止剤は共役ジエン類の重合を防止できるものである。
具体的には、安定ラジカルによるラジカルの捕捉により重合禁止または抑制するものとして、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、1,3,5−トリフェニルフェルダジル、2,6−ジt−ブチル−α−(3,5−ジt−ブチル−4−オキソ−2,5−シクロヘキサンジエン−1−イリデン−p−トリルオキシ、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン−1−オキシル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)−アニリンオキシド、2−(2−シアノプロピル)−フェルダジル;
【0037】
連鎖移動反応により重合禁止または抑制するものとしては、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、メチルエチルヒドロキシルアミン、ジプロピルヒドロキシルアミン、ジブチルヒドロキシルアミン、ジペンチルヒドロキシルアミンのごとき活性なNH結合を有するもの;ヒドロキノン、t−ブチルカテコールのごときフェノール性OH結合をもつもの;ジチオベンゾイルジスルフィド、p,p’−ジトリルトリスルフィド、p,p’−ジトリルテトラスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド;
【0038】
付加反応により重合禁止または抑制するものとしては、酸素、硫黄、アントラセン、1,2−ベンズアンタラセン、テトラセン、クロラニル;p−ベンゾキノン、2,6−ジクロルベンゾキノン、2,5−ジクロルベンゾキノンのごとき、ベンゾキノン誘導体、フリフルデンマロノニトリル、トリニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼンのごときニトロ化合物;ニトロソベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパンのごときニトロソ化合物;さらに、塩化第二鉄、臭化第二鉄のごとき金属塩などが挙げられる。
【0039】
これら重合禁止剤のうち、連鎖移動反応により重合禁止または抑制するもの、特にジ低級アルキルヒドロキシルアミンやカテコール類、具体的にはジエチルヒドロキシルアミンやt−ブチルカテコールが好ましい。
【0040】
本発明においては、さらに重合禁止剤を抽出溶媒供給段よりも上段の位置から連続添加することが、共役ジエン類の重合を防止するために好ましい。重合禁止剤としては、前述で挙げたものと同じものが挙げられ、好適には、連鎖移動反応により重合禁止または抑制するもの、特にジ低級アルキルヒドロキシルアミン、具体的にはジエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。
【0041】
抽出溶媒供給段よりも上段の位置から連続添加する重合禁止剤の量は、共役ジエン類を含有する石油留分と抽出溶媒との合計量に対して、通常、0.1〜20ppm、好ましくは0.5〜10ppmとなる量である。
【0042】
抽出溶媒供給段よりも上段の位置としては、たとえば、抽出溶媒フィード段よりも上段の抽出蒸留塔の側部、抽出蒸留塔頂部の凝縮器の入口あるいは出口が挙げられる。これらのうち、塔頂部凝縮器の入口に設けるのが、凝縮器内での重合体の生成を抑えることができるとともに、セパレーター後の次工程においても重合体の生成を抑えることができるので好ましい。
【0043】
本発明で使用する石油留分は、共役ジエン類を含有するものである。該石油留分は、通常、ナフサをクラッキングし、エチレン、プロピレンなどのC2及びC3炭化水素を分離して得られるC4留分またはC5留分、好適にはこれら留分を抽出蒸留等して共役ジエン類の濃度を高めたものである。本発明においては、特に、イソプレンまたはブタジエンを含有するものに好適に用いられる。
本発明の装置及び方法は、石油留分中の共役ジエン類の濃度が、通常、90%以上、好ましくは95%以上のもの(具体的には石油留分を抽出蒸留して共役ジエン類の濃度を高めたもの)を扱う場合に適用することが効果的である。
【0044】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0045】
実施例1
図1及び図2に示すブタジエンを含有するC4留分の精製実験装置を用いて実験を行った。
第二抽出蒸留塔頂部から、凝縮器115、第一蒸留塔、第二蒸留塔、第二蒸留等留出物を凝縮させる凝縮器及びセパレータまでの管、塔、熱交換器相互を接続する部分(フランジ)にはPTFE製のパッキング材をシール材として使用した。
(第一抽出蒸留)
ガス化したC4留分を第一抽出蒸留塔101の中間段に供給し、複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドが1%、水を250ppm含有するジメチルホルムアミド(以下、単に抽出溶媒ということがある。)を管102から供給し、底部において再熱器105で加熱して第一段目の抽出蒸留を行った。塔頂から取り出したガスは凝縮器103により凝縮され、一部の液は還流し塔頂へ戻した。残部はブタン、ブチレンなどを多く含む留分で管104から取り出される。第一抽出蒸留塔内の圧力は、通常、1〜10気圧、塔底温度は、通常、100〜160℃である。塔底からは高級アセチレンおよびアレン系炭化水素を含むブタジエンの抽出液が取り出され、この抽出液を管106を経て放散塔107の頂部へ供給した。放散塔下部において再沸器109で加熱し蒸発させて蒸留を行った。放散塔107の圧力は、通常1〜2気圧であり、塔底温度はその圧力における沸点であった。
放散塔107の頂部からブタジエン、高級アセチレンおよびアレン系炭化水素が取り出され冷却器108にて液化し、その一部を放散塔107の頂部へ還流し、その残部を管120を経て水洗塔132へ送った。
底部からは抽出溶媒が取り出され、ポンプ110で冷却器111を経て管102を通って第一抽出塔101へ循環させた。
【0046】
(第二抽出蒸留)
冷却器108を出たガスを圧縮器112および管113を経て第二抽出蒸留塔114の中間段へ供給した。複素環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドが1%、水が250ppm含有するジメチルホルムアミドを管130から供給し、さらに凝縮器115入口の前に設けた管160からジエチルヒドロキシルアミンを供給した。底部において再熱器117で加熱して第二段目の抽出蒸留を行った。
【0047】
第二抽出蒸留塔底部から取り出した液は回収塔119の中間段に送った。回収塔頂部から取り出された留出物は、管121を経て圧縮機112に送った。
【0048】
回収塔底部から取り出された留出物をポンプ123、管124を経て、放散塔125の頂部へ供給し、放散塔125の底部からは抽出溶媒を回収し、放散塔125の頂部から取り出された留出物は凝縮器126で液化し、その一部は放散塔125に還流し、残部は管131を経て水洗塔132の中間段に供給した。
【0049】
水洗塔132の頂部には管133から水を供給し、抽出溶媒を精製し、管102及び管130の抽出溶媒中の水量が250ppmになるように脱水調整した。脱水調製した抽出溶媒は管138を経て管128及び管110から流れてきた抽出溶媒と合流し、管102及び管130を経て循環使用される。
【0050】
第二抽出蒸留塔頂部から取り出したガスは凝縮器115により凝縮され、一部の液は還流し頂部へ戻した。残液は管116から取り出し、管201を経て第一蒸留塔202へ供給した。第一蒸留塔202頂部から排出された留出物は凝縮器203で凝縮し一部を管207で還流し、残部はボイラーの燃料としてあるいはフレアスタックで焼却した。
【0051】
第一蒸留塔底部から排出された缶出物は、第二蒸留塔211の中間段へ供給した。第二蒸留塔の頂部から排出される留出物は凝縮器212で凝縮され、一部は還流し、残部は管215を経て高純度のブタジエンとしてポリブタジエンなどの原料として供出される。
【0052】
この精製方法で2年間連続運転した。配管、抽出蒸留塔、凝縮器、再熱器(再沸器)などの精製装置各部におけるポップコーン重合体、ゴム状重合体の生成が僅かであり、装置内部の汚れが少なく、腐食も生じていなかった。
【0053】
実施例2
実施例1において、第一蒸留塔202、第二蒸留塔211、及びこれらに付属する凝縮器203、212;再沸缶208、217等に取り付けてあるサンプリング管、ブルドン管、フランジ、マンホール、安全弁などの死空間に、20ppmのt−ブチルカテコールを含むブタジエン溶液を連続的に注入した他は実施例1と同様にしてC4留分の精製を行った。
この精製方法で2年間連続運転した。配管、蒸留塔、凝縮器、再熱器(再沸器)などの精製装置各部におけるポップコーン重合体やゴム状重合体の生成がなく、装置内部の汚れがなく、腐食も生じていなかった。
【0054】
比較例1
実施例1において使用したPTFE製パッキング材を、アスベスト製のパッキング材に変えた他は実施例1と同様にしてC4留分の精製を行った。
この精製方法で2年間連続運転した。精製装置各部、特に接続部分や死空間においてポップコーン重合体やゴム状重合体が多量に発生し、汚れが多かった。
【0055】
比較例2
実施例1において使用したPTFE製パッキング材を、ステンレス製のパッキング材に変えた他は実施例1と同様にしてC4留分の精製を行った。
この精製方法で2年間連続運転した。装置内、特に接続部分や死空間に、重合による汚れが多く見られた。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、共役ジエン類を含有する石油留分の精製において、ポップコーン重合体やゴム状重合体の生起が少なく、装置内が汚れず、配管詰まりがなく、凝縮器、再沸器などにおける熱効率が低下することがなく、クリーニングをしなくてもよい期間が長いので、長期間の連続操業が可能で経済的な共役ジエンの分離精製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1で用いた精製実験装置の概念図(1)。
【図2】 本発明の実施例1で用いた精製実験装置の概念図(2)。
Claims (8)
- 共役ジエン類を含有する石油留分を蒸留して共役ジエン類を分離精製する装置において、管、塔又は熱交換器の相互を接続する部分に、フッ素系高分子製のパッキング材を用いることを特徴とする共役ジエン類の分離精製装置。
- 抽出蒸留塔と蒸留塔とを有し、フッ素系高分子製のパッキング材を、蒸留塔に用いる請求項1に記載の装置。
- 蒸留抽出溶媒がアミド化合物であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
- 抽出溶媒中に、複素環式アルデヒド、芳香族ニトロ又は芳香族アルデヒドを存在させることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
- 重合禁止剤を抽出溶媒の供給段よりも上段の位置から連続供給することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の装置。
- 重合禁止剤を塔頂部凝縮器の入口から連続供給することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の装置。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の装置を用いて共役ジエン類を分離精製する方法。
- 請求項7に記載の共役ジエン類を分離精製する方法において、管、塔または熱交換器内の死空間に重合禁止剤を注入することを特徴とする共役ジエン類を分離精製する方法。
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