JP3927434B2 - 電動アクチュエータ駆動制御装置 - Google Patents

電動アクチュエータ駆動制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動アクチュエータを動かす場合に所定の電源電圧(バッテリ電圧)の制限を受け、かつ、電動アクチュエータ等を動かす制御器に積分器を含む電動アクチュエータ駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のような電動アクチュエータ駆動制御装置としては、例えば、自動車に搭載される装置として、内燃機関の可変動弁装置において制御軸の回転角制御に用いられる電動アクチュエータ駆動制御装置がある。
この可変動弁装置は、内燃機関のバルブ動作特性、例えばバルブ位相、バルブリフト量を連続的に変化させる可変動弁機構を吸気側バルブ、もしくは、吸気側および排気側バルブ両方を持ち、該可変動弁機構は、制御軸を回転させることでバルブ動作特性を変更できるもので、制御軸の回転角をポテンショメータ等の回転角度センサによって検出し、この検出された実制御軸回転角信号に基づき、可変動弁コントロールユニットでは、実制御軸回転角信号と目標制御軸回転角とを比較し、偏差が零になるように、DCサーボモータ等の電動アクチュエータに駆動電流を出力することにより、制御軸の回転角を目標のバルブ動作特性に対応する目標制御軸回転角に一致させるようなフィードバック制御が行われるようになっている。
そして、前記電動アクチュエータ駆動制御装置では、例えば、積分器を含むPID制御器が用いられると共に、電動アクチュエータを動かす場合に所定の電源電圧(バッテリ電圧)の制限を受ける。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、自動車に搭載される装置においては、上述のように、電動アクチュエータを動かす場合に所定の電源電圧(バッテリ電圧)の制限を受け、かつ、電動アクチュエータ等を動かす制御器に積分器を含むことから、以下に述べるような問題点があった。
【0004】
即ち、実制御軸回転角信号と目標制御軸回転角との制御偏差が大きく、制御器で演算された電動アクチュエータへの操作量指令値(電圧値)が所定の電源電圧制限値上限(バッテリ電圧)を越えた場合、図10(電源電圧制限有無時操作量比較結果)に示すように、電動アクチュエータへの実操作量(印加電圧)Vは電源電圧制限値上限▲3▼(バッテリ電圧)値の制限を受けて電源電圧制限値上限▲3▼と同等となり、これにより、操作量指令値よりも小さな値となってしまうため、応答遅れが発生する。即ち、制御偏差が大きく、実操作量V(図10の▲2▼)が電源電圧制限値上限▲3▼の制限を受けている場合の実制御量応答(図9(電源電圧制限有無時実制御量応答比較結果)の▲2▼)は、電源電圧制限値上限▲3▼の制限が無い理想的な実操作量(図10▲1▼)が入った場合の実制御量応答(図9の▲1▼)より遅くなると共に、その遅れによりさらに実制御量と目標制御量▲3▼との間に大きな制御偏差が発生するため、その制御偏差を制御器内の積分器が積分することで過度に積分値が演算される結果、制御器で演算される操作量指令値が過度の積分の影響を受け過大となり、図9の▲2▼に示すようにオーバーシュート等を発生させる原因となっていた。
【0005】
そこで、このオーバーシュート等の応答性の悪化を防止するために、実制御軸回転角信号と目標制御軸回転角との制御偏差が小さく、制御器で演算された電動アクチュエータへの操作量指令値(電圧値)が所定の電源電圧制限値上限▲3▼(バッテリ電圧)を越えない場合の実制御量応答(図12(電源電圧の制限が無い場合のトレードオフ有無時実制御量応答比較結果)の▲1▼)とのトレードオフ、即ち、制御偏差の積分結果にかける積分ゲインの調整を行うことで、操作量指令値が所定電源電圧値を越えた場合の実制御量応答(図11(電源電圧の制限が有る場合のトレードオフ有無時実制御量応答比較結果)の▲1▼に示すトレードオフしない場合の実制御量応答)を、オーバーシュートが生じない実制御量応答(図11の▲2▼に示すトレードオフした場合の実制御量応答)に修正しなければならなかった。
しかしながら、制御偏差の積分結果にかける積分ゲインの調整を行うと、電源電圧の制限が無い場合の実制御量応答が、図12の▲2▼に示すように実制御量の制御応答性が悪化すると共に、目標制御量▲3▼に収束せずに定常的な偏差がでてしまうという別の問題が生じる。
【0006】
本発明は、上述の従来の問題点に着目してなされたもので、電動アクチュエータのフィードバック制御に積分器を含む電動アクチュエータ駆動制御装置において、電源電圧の制限が無い場合の実制御量応答を犠牲にすることなしに、操作量指令値が所定電源電圧値を越えた場合の実制御量応答におけるオーバーシュートを防止し、あらゆる動作要求に対し最適な応答性が得られるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明請求項1記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、所定の電源電圧による制限のもとで駆動制御される電動アクチュエータと、該電動アクチュエータにより所定の目標制御量に駆動制御される被制御体と、該被制御体の実制御量を検出する実制御量検出手段と、該実制御量検出手段で検出された実制御量と前記目標制御量との制御偏差を演算する制御偏差演算手段と、少なくとも該制御偏差演算手段で演算された制御偏差に基づく積分操作量による操作量指令電圧値で前記電動アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備えた電動アクチュエータ駆動制御装置において、前回の前記操作量指令電圧値の絶対値と前記電源電圧値とを比較する比較手段と、該比較手段により前回の前記操作量指令電圧値の絶対値が前記電源電圧値より大きいと判断された場合は、前記積分操作量の演算で用いられる基本積分ゲインを操作量指令電圧値の絶対値で除算し、該除算結果に対し任意の補正係数を乗算することで可変積分ゲインを求め、該可変積分ゲインを用いることにより、前記積分操作量を減少させる方向に補正する積分操作量補正手段と、備えている手段とした。
【0011】
請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置において、前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として前回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにした。
【0012】
請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置において、前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として今回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにした。
【0013】
【作用】
本発明請求項1記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、上述のように、第1に、比較手段により操作量指令電圧値の絶対値が電源電圧値より小さいと判断された場合は、制御手段において少なくとも制御偏差演算手段で演算された制御偏差に基づく積分操作量による操作量指令電圧値で前記電動アクチュエータの駆動制御が行われるもので、これにより、最適な実制御量応答が得られる。第2に、比較手段により操作量指令電圧値の絶対値が電源電圧値より大きいと判断された場合は、積分操作量補正手段において、前記制御偏差に基づく積分操作量を減少させる方向に補正する処理がなされるもので、これにより、操作量指令値が所定電源電圧値を越えた場合の実制御量応答におけるオーバーシュートを防止することができる。従って、電源電圧の制限が無い場合の実制御量応答を犠牲にすることなしに、操作量指令値が所定電源電圧値を越えた場合の実制御量応答におけるオーバーシュートを防止することができ、これにより、あらゆる動作要求に対し最適な応答性を得ることができる。第3に、前記比較手段で電源電圧値と比較する操作量指令電圧値の絶対値として前回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにすることで、今回の操作量指令電圧値を演算した後に電源電圧と比較し、その結果電源電圧値より大きい場合にもう一度積分操作量を演算し、改めて今回の操作量指令電圧値を演算する場合に比べ、演算容量が小さくなる。なお、前記制御手段の演算間隔に比べ電動アクチュエータの応答速度が遅いため、前回の操作量指令電圧値と今回の操作量指令電圧値には大差はなく、また、操作量指令電圧値の極性が切り替わる瞬間においても、1演算間隔のみ大きな差がでるが、電動アクチュエータの応答が遅いため実質的には問題はない。第4に、前記比較手段により前回の操作量指令電圧値の絶対値が電源電圧値より大きいと判断された場合は、積分操作量補正手段において、積分操作量の演算で用いられる基本積分ゲインを操作量指令電圧値の絶対値で除算し、該除算結果に対し任意の補正係数を乗算することで前記可変積分ゲインを求めることにより、操作量指令電圧値の絶対値が大きくなるにつれて過度に積分される積分操作量を適正に補正することができる。第5に、前記比較手段により前回の操作量指令電圧値の絶対値が電源電圧値より大きいと判断された場合は、前記積分操作量補正手段において、基本積分ゲインを減少させる方向に補正された可変積分ゲインを用いることにより積分操作量を減少させる方向に補正する処理がなされるもので、このように積分操作量の演算処理内で補正をかけることで、演算処理後の応答に対して補正をかける場合に比べ、制御システムを簡略化することができる。
【0017】
請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、請求項において、前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として前回の操作量指令電圧値の絶対値を用いることにより、演算容量が小さくなる。
【0018】
請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、請求項において、前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として今回の操作量指令電圧値の絶対値を用いることにより、精度が高くなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(発明の実施の形態1)
この発明の実施の形態1は、請求項1および2の発明に対応している。図1は、本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置が適用された可変動弁装置の全体を示す構成図であり、この図において、1は吸気・排気弁のバルブリフト量を変化させる可変動弁機構、2は制御軸(被制御体)、3は回転角度センサ(実制御量検出手段)、4はコントロールユニット(制御手段)、5はDCサーボモータで構成される電動アクチュエータ、6は減速機構を示す。
【0020】
さらに詳述すると、この可変動弁装置は、前記コントロールユニット4において、図示を省略したクランク角センサ、エアフローメータ、水温センサ、エンジン回転数センサ等の各種のセンサからの検出信号(機関運転情報)および各種装置からの要求に応じ、最終目標制御量演算器E1において目標制御量(目標制御軸回転角)REFの演算が行われると共に、PID制御器E2では、前記目標制御量REFと、回転角度センサ3で検出された実制御量(制御軸回転角信号)Yとの制御偏差ERRORに基づいて操作量指令値Vが演算され、駆動手段E3では電源(バッテリ)電圧VB(DC12V)による制限のもとに、操作量指令値Vに応じた実操作量(アクチュエータ印加電圧)を電動アクチュエータ5に出力することにより、減速機構6を介して制御軸2の回転角を目標のバルブ特性に対応する目標回転角位置に一致させるようなフィードバック制御が行われるようになっている。
【0021】
次に、前記PID制御器E2の制御内容を、図2のブロック図、および、図3のフローチャートに基づいて詳述する。
まず、PID制御器E2の制御内容を示す図2のシステム図において、C1は制御偏差演算手段、C2は比例操作量演算手段、C3は比較手段、C4は積分操作量補正手段、C5は積分操作量演算手段、C6は微分操作量演算手段、C7は操作量指令値演算手段を示す。また、Z-1は前回演算値を保持する0次ホールドである。
【0022】
次に、PID制御器E2の制御内容を、図2のシステム図を参照にしつつ、図3のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS101では前記最終目標制御量演算器E1で演算された目標制御量REFを読み込み、ステップS102では回転角度センサ3で検出された実制御量Yを読み込み、ステップS103では電源電圧VBを読み込む。
【0023】
続くステップS104では、前記制御偏差演算手段C1において、前記目標制御量REFから実制御量Yを減算することにより、制御偏差ERRORを演算する。
続くステップS105では、比例操作量演算手段C2において、次式(1)により比例操作量PUの演算が行われる。なお、PGは比例ゲインである。
PU=PG×ERROR・・・・(1)
【0024】
続くステップS106では、比較手段C3において、前回の操作量指令値の絶対値 |V-1| が電源電圧VBを越えているか否かを判定し、NO(VB≧ |V-1| )である時はステップS107に進み、積分ゲインGとして基本積分ゲインIGを読み込んだ後、ステップS109に進み、また、YES(VB< |V-1| )である時はステップS108に進み、積分操作量補正手段C4において、次式(2)により可変積分ゲインKGを演算し、これを積分ゲインGとして読み込んだ後、ステップS109に進む。なお、Hは補正係数である。
KG=(IG/ |V-1| )×H・・・・(2)
【0025】
続くステップS109では、積分操作量演算手段C5において、次式(3)により積分操作量IUの演算が行われる。なお、STは演算間隔(時間)である。
IU=(G×ST×ERROR)+前回IU・・・・(3)
続くステップS110では、微分操作量演算手段C6において、次式(4)により微分操作量DUの演算が行われる。なお、DGは微分ゲイン
DU=DG×(ERROR−前回ERROR)/ST・・・・(4)
【0026】
続くステップS111では、操作量指令値演算手段C7において、次式(5)により操作量指令値Vの演算が行われる。
V=PU+IU+DU・・・・(5)
続くステップS112では、操作量指令値Vを駆動手段E3に出力し、駆動手段E3では、前述のように電源(バッテリ)電圧VB(DC12V)による制限のもとに、操作量指令値Vに応じた実操作量(アクチュエータ印加電圧)を電動アクチュエータ5に出力することにより、減速機構6を介して制御軸2の回転角を目標のバルブ特性に対応する目標回転角位置に一致させるようなフィードバック制御が行われるようになっている。
【0027】
次に、この発明の実施の形態1の作用・効果を説明する。
(イ)制御偏差小時
制御偏差演算手段C1で演算された制御偏差ERRORが小さくて、図5(積分操作量および実操作量比較結果)に示すように、比較手段C3により操作量指令値の絶対値 |V-1| が電源電圧値VB(▲5▼)以下(VB≧ |V-1| )と判断された場合は、積分操作量演算手段C5では基本積分ゲインIGにより、図5の▲4▼に示すように、積分操作量補正手段C4を備えない場合▲3▼と同様に、最適な積分操作量IUの演算が行われる。
【0028】
即ち、操作量指令値の絶対値 |V-1| が電源電圧値VB以下である場合は、図5(積分操作量および実制御量比較結果)の▲2▼に示すように、積分操作量補正手段C4を備えない場合▲1▼と同様に、操作量指令値Vに応じた実操作量がそのまま出力されるため、図4(電源電圧の制限が無い場合の実制御量応答比較結果)の▲2▼に示すように、積分操作量補正手段C4を備えない場合▲1▼と同様に、最適な実制御量応答が得られ、目標制御量▲3▼に迅速に収束する。
【0029】
(ロ)制御偏差大時
制御偏差演算手段C1で演算された制御偏差ERRORが大きくて、図7(積分操作量および実操作量比較結果)に示すように、比較手段C3により操作量指令値の絶対値 |V-1| が電源電圧値VB(▲5▼)を越えている(VB< |V-1| )と判断された場合は、積分操作量補正手段C4において、積分操作量IUを減少させるような可変積分ゲインKGの演算(前記式(2))が行われ、積分操作量演算手段C5ではこの可変積分ゲインKGに基づいて低減された積分操作量IU(図7の▲4▼)の演算が行われる。なお、図7の▲3▼は積分ゲインの補正が行われない場合の積分操作量IUを示す。
【0030】
以上のように、図7の▲2▼に示すように、積分ゲインの補正が行われた場合の実操作量(図7の▲2▼)が、積分ゲインの補正が行われない場合の実操作量(図7の▲1▼)に比べ、電源電圧VBより早めに低下し、これにより、図6(電源電圧の制限が有る場合の制御量応答比較結果)の▲2▼に示すように、オーバーシュートすることなしに、目標制御量▲3▼に収束する。
【0031】
従って、電源電圧値VBの制限が無い場合の実制御量応答(図4の▲2▼)を犠牲にすることなしに、操作量指令値Vが所定電源電圧値VBを越えた場合の実制御量応答(図6の▲2▼)におけるオーバーシュートを防止することができ、これにより、あらゆる動作要求に対し最適な応答性を得ることができるようになるという効果が得られる。
【0032】
また、前記比較手段C3で電源電圧値VBと比較する操作量指令値の絶対値として前回の操作量指令値の絶対値 |V-1| を用いるようにすることで、今回の操作量指令値Vを演算した後に電源電圧値VBと比較し、その結果電源電圧値VBを越えている場合にもう一度積分量操作量IUを演算し、改めて今回の操作量指令値Vを演算する場合に比べ、演算容量を小さくできるようになる。
【0033】
なお、前記コントロールユニット4の演算間隔STに比べ電動アクチュエータ5の応答速度が遅いため、前回の操作量指令値V-1と今回の操作量指令値Vには大差はなく、また、操作量指令値Vの極性が切り替わる瞬間においても、1演算間隔のみ大きな差がでるが、電動アクチュエータ5の応答が遅いため実質的には問題はない。
【0034】
また、前記比較手段C3により前回の操作量指令値の絶対値 |V-1| が電源電圧値VBを越えている判断された場合は、積分操作量補正手段C4において、積分操作量の演算で用いられる基本積分ゲインIGを減少させる方向に補正された可変積分ゲインKGを用いることにより積分操作量IUを減少させる方向に補正する処理がなされるもので、このように積分操作量IUの演算処理内で補正をかけることで、演算処理後の応答に対して補正をかける場合に比べ、制御システムを簡略化することができるようになる。
【0035】
また、前記比較手段C3により前回の操作量指令値の絶対値 |V-1| が電源電圧値VBを越えていると判断された場合は、積分操作量補正手段C4において、基本積分ゲインIGを前回の操作量指令値の絶対値 |V-1| で除算して前記可変積分ゲインKGを求めることにより、操作量指令値の絶対値Vが大きくなるにつれて過度に積分される積分操作量IUを適正に補正することができるようになる。また、前記除算(IG/ |V-1| )は基本積分ゲインと前回操作量指令値の絶対値との比率を表しているだけであるため、この除算結果に対し所定の補正係数Hを乗算することにより、適正な積分ゲインを設定できるようになる。
【0036】
また、前記積分操作量補正手段C4で可変積分ゲインKGを求める際の操作量指令値の絶対値として前回の操作量指令値の絶対値 |V-1| を用いることにより、演算容量が小さくなる。
【0037】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。なお、この他の発明の実施の形態の説明にあたっては、前記発明の実施の形態1と同様の構成部分は図示および説明を省略し、または、同一の符号を付けてその説明を省略する。
(発明の実施の形態2)
この発明の実施の形態2の電動アクチュエータ駆動制御装置は、請求項の発明に対応している。即ち、この発明の実施の形態2の電動アクチュエータ駆動制御装置は、前記積分操作量補正手段C4で可変積分ゲインKGを求める際の操作量指令値の絶対値として、次式(6)に示すように、今回の操作量指令値の絶対値 |V| を用いるようにした点が前記発明の実施の形態1とは相違したものである。
KG=(IG/ |V| )×H・・・・(6)
【0038】
次に、PID制御器E2の制御内容を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
まず、図8のステップS201〜205は、前記発明の実施の形態1における図3のステップS101〜105と同様であるためその説明を省略する。
続くステップS206、S207、S208では、図3のステップS109〜111と同様に積分操作量IUの演算、微分操作量DUの演算、および、操作量指令値Vの演算が行われる。
【0039】
続くステップS209では、比較手段C3において、前記ステップS208で演算された操作量指令値の絶対値 |V| が電源電圧VBを越えているか否かを判定し、NO(VB≧ |V| )である時はステップS213に進み、また、YES(VB< |V| )である時はステップS210に進み、積分操作量補正手段C4において、前記式(6)により可変積分ゲインKGを演算し、これを積分ゲインGとして読み込んだ後、ステップS211に進む。
【0040】
続くステップS211では、積分操作量演算手段C4において、前記式(3)により積分操作量IUの再演算が行われる。
このステップS212では、操作量指令値演算手段C7において、前記式(5)により操作量指令値Vの再演算が行われた後、ステップS213に進む。
このステップS213では、操作量指令値Vを駆動手段E3に出力し、駆動手段E3では、前述のように電源(バッテリ)電圧VB(DC12V)による制限のもとに、操作量指令値Vに応じた実操作量(アクチュエータ印加電圧)を電動アクチュエータ5に出力することにより、減速機構6を介して制御軸2の回転角を目標のバルブ特性に対応する目標回転角位置に一致させるようなフィードバック制御が行われるようになっている。
【0041】
以上のように、この発明の実施の形態2では、積分操作量の演算および操作量指令値の演算が2度行われるため、演算容量は大きくなるが、比較手段C3で比較される積分操作量として、今回の積分操作量Vを用いるようにすることで、前回の積分操作量V-1を用いる場合に比べて、演算間隔の遅れなく積分操作量の演算が行われることで、制御の精度を高めることができるようになるという追加の効果が得られる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、具体的な構成はこれら発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、発明の実施の形態では、電動アクチュエータにより所定の目標制御量に駆動制御される被制御体として、可変動弁機構における制御軸を例にとり、該制御軸を目標回転角に制御する場合について説明したが、要は、電動アクチュエータを動かす場合に所定の電源電圧の制限を受け、かつ、電動アクチュエータを動かす制御器に積分器を含む電動アクチュエータ駆動制御装置に全て適用することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明してきたように、本発明請求項1記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、上述のように、第1に、操作量指令電圧値の絶対値と電源電圧値とを比較する比較手段と、該比較手段により操作量指令電圧値の絶対値が電源電圧値より大きいと判断された場合は前記積分操作量を減少させる方向に補正する積分操作量補正手段と、備えている手段としたことで、電源電圧の制限が無い場合の実制御量応答を犠牲にすることなしに、操作量指令値が所定電源電圧値を越えた場合の実制御量応答におけるオーバーシュートを防止することができ、これにより、あらゆる動作要求に対し最適な応答性を得ることができようになる。第2に、前記比較手段が、前回の操作量指令電圧値の絶対値と前記電源電圧値とを比較するように構成されている手段としたことで、今回の操作量指令電圧値を演算した後に電源電圧と比較し、その結果電源電圧値より大きい場合にもう一度積分操作量を演算し、改めて今回の操作量指令電圧値を演算する場合に比べ、演算容量を小さくすることができる。なお、前記制御手段の演算間隔に比べ電動アクチュエータの応答速度が遅いため、前回の操作量指令電圧値と今回の操作量指令電圧値には大差はなく、また、操作量指令電圧値の極性が切り替わる瞬間においても、1演算間隔のみ大きな差がでるが、電動アクチュエータの応答が遅いため実質的には問題はない。第3に、前記積分操作量補正手段が、前記積分操作量の演算で用いられる基本積分ゲインを操作量指令電圧値の絶対値で除算し、該除算結果に対し任意の補正係数を乗算することで前記可変積分ゲインを求めるように構成されている手段としたことで、操作量指令電圧値の絶対値が大きくなるにつれて過度に積分される積分操作量を適正に補正することができるようになる。第4に、前記積分操作量補正手段が、前記基本積分ゲインを減少させる方向に補正された可変積分ゲインを用いることにより積分操作量を減少させるように構成されている手段とし、即ち、積分操作量の演算処理内で補正をかけるようにしたことで、演算処理後の応答に対して補正をかける場合に比べ、制御システムを簡略化することができるようになる。
【0047】
請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置において、前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として前回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにしたことで、演算容量を小さくできるようになる。
【0048】
請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置では、請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置において、前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として今回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにしたことで、演算間隔の遅れなく積分操作量の演算が行われるため、制御の精度を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置が適用された可変動弁装置の全体を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置における制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧の制限が無い場合の実制御量応答比較結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧の制限が無い場合の積分操作量および実制御量比較結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧の制限が有る場合の実制御量応答比較結果を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧の制限が有る場合の積分操作量および実制御量比較結果を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2の電動アクチュエータ駆動制御装置における制御内容を示すフローチャートである。
【図9】従来例の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧制限有無時実制御量応答比較結果を示す図である。
【図10】従来例の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧制限有無時操作量比較結果を示す図である。
【図11】従来例の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧の制限が有る場合のトレードオフ有無時実制御量応答比較結果を示す図である。
【図12】従来例の電動アクチュエータ駆動制御装置における電源電圧の制限が無い場合のトレードオフ有無時実制御量応答比較結果を示す図である。
【符号の説明】
1 可変動弁機構
2 制御軸(被制御体)
3 回転角度センサ(実制御量検出手段)
4 コントロールユニット(制御手段)
5 電動アクチュエータ
6 減速機構
E1 最終目標制御量演算器
E2 PID制御器
E3 駆動手段
C1 制御偏差演算手段
C2 比例操作量演算手段
C3 比較手段
C4 積分操作量補正手段
C5 積分操作量演算手段
C6 微分操作量演算手段
C7 操作量指令値演算手段

Claims (3)

  1. 所定の電源電圧による制限のもとで駆動制御される電動アクチュエータと、
    該電動アクチュエータにより所定の目標制御量に駆動制御される被制御体と、
    該被制御体の実制御量を検出する実制御量検出手段と、
    該実制御量検出手段で検出された実制御量と前記目標制御量との制御偏差を演算する制御偏差演算手段と、
    少なくとも該制御偏差演算手段で演算された制御偏差に基づく積分操作量による操作量指令電圧値で前記電動アクチュエータを駆動制御する制御手段と、
    を備えた電動アクチュエータ駆動制御装置において、
    前回の前記操作量指令電圧値の絶対値と前記電源電圧値とを比較する比較手段と、
    該比較手段により前回の前記操作量指令電圧値の絶対値が前記電源電圧値より大きいと判断された場合は、前記積分操作量の演算で用いられる基本積分ゲインを操作量指令電圧値の絶対値で除算し、該除算結果に対し任意の補正係数を乗算することで可変積分ゲインを求め、該可変積分ゲインを用いることにより、前記積分操作量を減少させる方向に補正する積分操作量補正手段と、
    を備えていることを特徴とする電動アクチュエータ駆動制御装置。
  2. 前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として前回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにしたことを特徴とする請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置。
  3. 前記積分操作量補正手段で可変積分ゲインを求める際の操作量指令電圧値の絶対値として今回の操作量指令電圧値の絶対値を用いるようにしたことを特徴とする請求項記載の電動アクチュエータ駆動制御装置。
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