JP3924990B2 - 水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性塗料の硬化剤や主剤として用いられる水性ポリイソシアネートの水分散液において、イソシアネート基が長時間安定に存在させることのできる、水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤を多く含有する塗料、コーティング剤等は、人体への悪影響、爆発、火災等の安全衛生上の問題や、また、大気汚染等の公害問題を有する。そこで、これらの問題を改善するため、近年、水性システムの開発が活発に行われている。従来から、水溶性高分子溶液や水性エマルジョンが使用されているが、水性一液システムでは、市場の要求性能を発現できないことが多い。このため、耐久性、密着性の向上等のため、硬化剤・架橋剤が使用されている。硬化・架橋システムには種々の方法が提案されており、親水性基含有ポリイソシアネートを硬化剤・架橋剤として用いる方法もその一つである。
【0003】
従来の水性ポリイソシアネートには、特開昭62−50373号公報、特開昭61−291613号公報等に記載されているものがあり、これらは親水性の界面活性剤的な構造をポリイソシアネートに導入したものである。また、特開平8−85716号公報には、親水性界面活性剤と疎水鎖を導入した水性ポリイソシアネートが記載されている。
【0004】
この水性ポリイソシアネートは比較的粘度が高いため、そのまま使用するには困難であるため、水に分散させてから使用するのが一般的である。しかしながら、従来の水性ポリイソシアネートは、水に分散させた状態では、イソシアネート基と水との反応により、イソシアネート基が長時間存在することができず、ポットライフが短いという欠点を有していた。
【0005】
そこで、水性ポリイソシアネートを水に分散させた状態でのポットライフ改善のため、様々な改良が試みられている。例えば、特開平9−71720号公報、特開平9−302309号公報、特開平9−328654号公報等では、イオン性界面活性剤を混合することにより、ポットライフの改良が試みられている。
【0006】
しかしながら、これらの公報の方法では、イオン性界面活性剤が遊離の状態で存在するため、硬化物の外観、強度、耐久性に不安がある。
また、水との混合時に発生する「泡の消え」(消泡性)が悪く、そのままで使用することは不都合である。これを解消するために消泡剤の添加が行われているが、消泡剤を大量に添加した水性ポリイソシアネートは、塗膜の密着性や接着強度の低下が起こりやすくなる。
【0007】
なお、特開平9−194809号公報には、水分散性水酸基含有樹脂にフリーの有機酸を添加した後、水分散性(水性)ポリイソシアネートを配合した水性接着剤が記載されている。しかしながら、特開平9−194809号公報では、実施例において、水性ポリイソシアネートをそのまま水に分散させているため、使用直前に水性ポリイソシアネートを水に分散させる必要があった。また、エマルジョンにそのまま水性ポリイソシアネートを添加する場合、一般に水性ポリイソシアネートは高粘度であるため、主剤と硬化剤の配合がしにくい。更に、この技術をアニオン性エマルジョンタイプに適用とする場合、樹脂の凝集が起こりやすいという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、水性塗料用ポリイソシアネートの水分散液に配慮を施すことにより、あらゆるタイプの水性樹脂を用いた塗料に適用可能なポリイソシアネート水分散液となる。本発明は、消泡剤を用いることなく作業性が良好であり、イソシアネート基の寿命が長い、水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このような従来の問題点を解決するため、鋭意検討の結果、水性ポリイソシアネートの水分散液に、酸性物質を用いることにより、上記の問題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)酸性物質が添加された水性ポリイソシアネートを水に分散させ、かつ、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量%
【0011】
(2)水性ポリイソシアネートを、酸性物質が添加された水に分散させ、かつ、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量%
【0012】
(3)水性ポリイソシアネートを水に分散させた後、該分散液に酸性物質を添加し、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量%
【0013】
(4)酸性物質が添加された水性ポリイソシアネートを、酸性物質が添加された水に分散させ、かつ、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量%
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
本発明に用いられる水性ポリイソシアネートは、活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるものである。
【0015】
本発明に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、また、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートや、これらの2種類以上の混合物が挙げられる。また、前記ジイソシアネートのウレタン変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体等の単品や混合物も使用できる。また、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートやクルードトリレンジイソシアネート等のポリメリックのイソシアネートも使用できる。本発明に用いる有機ポリイソシアネートは、水との反応性や耐候性等を考慮すると、脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート変性体やウレトジオン変性体が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる活性水素基含有ノニオン性界面活性剤は、活性水素基を1個以上含有するノニオン性界面活性剤であり、好適には、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0017】
このポリオキシアルキレンエーテルの製造における開始剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アニリン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。これらのうちで、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数5以下の化合物が、水性ポリイソシアネートの親水性がより大きなものとなり、水分散性がよいので好ましい。
【0018】
また、ポリオキシアルキレンエーテル脂肪酸エステルの製造に用いられる脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸、カプロン酸、グリコール酸、乳酸、メトキシ酢酸等が挙げられる。これらのうちで、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸等の炭素数5以下の化合物が、水性ポリイソシアネートの親水性がより大きなものとなり、水分散性がよいので好ましい。
【0019】
また、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル脂肪酸エステル等に存在するポリエーテルユニットは、好ましくはその50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上がエチレンオキサイドユニットであり、1分子当たりのポリエーテルユニットの平均(繰り返し)数は、好ましくは3〜90個、特に好ましくは5〜50個である。
【0020】
活性水素基含有ノニオン性界面活性剤の導入量は、ポリイソシアネート全体に対して好ましくは0.1〜40質量%、更に好ましくは0.5〜30質量%、最も好ましくは1〜30質量%である。
【0021】
活性水素基含有ノニオン性界面活性剤の導入量が下限未満の場合は、得られる水性ポリイソシアネートの水分散後のポットライフが短すぎるため、作業性が悪くなる。逆に上限を越える場合は、得られる水性ポリイソシアネートのイソシアネート含量が低下するため、塗膜の耐候性等の向上が得られない。
【0022】
本発明に用いられる水性ポリイソシアネートは、必要に応じて、上記活性水素基含有ノニオン性界面活性剤以外の活性水素基含有化合物を併用して反応させたものであってもよい。この活性水素基含有化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル等の低分子モノオール類、エチルアミン、ブチルアミン、アニリン等の低分子1級モノアミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルアニリン等の低分子2級モノアミン類、活性水素基含有ポリエステル、エチレンオキサイドユニットが50モル%未満の活性水素基含有ポリエーテル、活性水素基含有ポリカーボネート、活性水素基含有ポリオレフィン、リシノール酸等のような炭素数6以上のヒドロキシ高級脂肪酸やそのエステル等が挙げられる。
【0023】
なお、この活性水素基含有化合物の数平均分子量は1,000以下が好ましく、更には800以下が好ましい。また、この活性水素基含有化合物の導入量は、活性水素基含有ノニオン性界面活性剤に対して2倍モル以下が好ましい。この活性水素基含有化合物の数平均分子量が大きすぎる場合や導入量が多すぎる場合は、水に分散しにくくなりやすい。
【0024】
本発明に用いられる水性ポリイソシアネートのイソシアネート含量は、5〜45質量%が好ましく、更に好ましくは7〜43質量%である。イソシアネート含量が小さすぎる場合は、この自己乳化型ポリイソシアネートを塗料や接着剤に用いた場合、架橋点が少なすぎることになるため、硬化物は機械的強度・耐久性等に劣ったものとなりやすい。大きすぎる場合は、硬化物の架橋密度が不必要に大きくなるため、塗膜の柔軟性が不十分となりやすい。
【0025】
本発明に用いられる水性ポリイソシアネートの25℃での粘度は、10,000mPa・s以下が好ましく、更に好ましくは7,000mPa・s以下である。粘度が高すぎる場合は、作業性が悪くなる。
【0026】
本発明に用いられる水性ポリイソシアネートの平均官能基数は、2.0〜5.0が好ましく、更に好ましくは2.0〜4.0である。平均官能基数が小さすぎる場合には、架橋密度が小さくなるため、塗膜強度が不十分となりやすい。また、大きすぎる場合は、硬化物の架橋密度が不必要に大きくなるため、塗膜の柔軟性が不十分となりやすい。
【0027】
【0028】
本発明で用いられる酸性物質は、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル等の有機酸性物質である。
【0029】
更に必要に応じて、水性塗料で慣用される添加剤及び助剤を使用できる。例えば、顔料、染料、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒、揺変剤、界面活性剤、乳化剤等を添加することができる。また、特に必要があれば消泡剤も添加できるが、本発明における水性ポリイソシアネートは、消泡性が良好であるので、無添加又は通常より少なめが好ましい。
【0030】
本発明の水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法は、酸性物質を特定量用いることを特徴とするが、その水性ポリイソシアネートと酸性物質の配合時期は特に制限はなく、
(1)水性ポリイソシアネートに酸性物質を混合した後、水に分散させる方法。
(2)あらかじめ酸性物質を混合した水に、水性ポリイソシアネートを分散させる方法。
(3)水性ポリイソシアネートを水に分散させた後、酸性物質を添加する方法。
(4)水性ポリイソシアネートに酸性物質を混合した後、あらかじめ酸性物質を混合した水に分散させる方法。
が挙げられる。
【0031】
本発明における酸性物質の総使用量は、前記水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量%であり、好ましくは0.02〜8質量%である。酸性物質の使用量が下限未満の場合は、水に分散させた水性ポリイソシアネート分散液において、イソシアネート基が長時間安定に存在できない。また、上限を越える場合は、例えば塗料の硬化剤として使用した場合、主剤との反応が不十分になり、塗膜強度や密着性が不足するおそれがある。
【0032】
また、酸性物質の総使用量を水に溶解させた場合の水溶液、又は、更にこれに水性ポリイソシアネートを分散させた後の水分散液のpHは、2〜6が好ましく、特に2.2〜5.8が好ましい。pHが6を越える場合は、水性ポリイソシアネートの水分散液のポットライフが延びにく、pHが2未満の場合は塗膜強度が低下しやすい。
【0033】
水と水性ポリイソシアネートの配合比率は、水100質量部に対して、水性ポリイソシアネートは1〜100質量部が好ましく、更には10〜100質量部がより好ましい。水性ポリイソシアネートが少なすぎる場合は、塗料や接着剤等の硬化剤として使用した場合に、配合量が多くなりぎ、不経済である。また、多すぎる場合は、分散が困難になる。
【0034】
分散装置としては、公知のものが使用でき、例えば、ホモミキサー、攪拌機、グラインドミル、ボールミル等が挙げられる。
【0035】
本発明によって得られる水性ポリイソシアネート分散液は、水性塗料の硬化剤に最適である。また、水性塗料の主剤や、水性の接着剤、シール材、インキ、繊維・ガラスファイバー処理剤、サイジング剤、目止め剤、プライマー、固結剤、アンカーコート剤、各種バインダー等の主剤や硬化剤として使用することができる。
【0036】
【実施例】
本発明について、実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例において「部」は全て「質量部」を意味し、「%」は全て「質量%」を意味する。
【0037】
(イソシアヌレート基変性ポリイソシアネートの合成)
合成例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、及び冷却器を装着した反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)300部と、1,3−ブタンジオール2.8部とを入れた後、該反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、同温度で2時間反応させた。この反応液のイソシアネート基含有量を測定したところ、48.6%であった。次に触媒としてカプリン酸カリウム0.06部、助触媒としてフェノ−ル0.3部を加え、60℃で6時間イソシアヌレート化反応を行った。この反応液に停止剤としてリン酸を0.042部加え、反応温度で1時間攪拌して、その後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、130℃、26.7Paで薄膜蒸留し、遊離のイソシアネートモノマーを除去して、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートP−1を得た。P−1は、淡黄色透明液体、イソシアネート基含有量20.8%、25℃における粘度は2,000mPa・s、遊離HDI含有量0.3%、平均官能基数3.8であり、FT−IR(パーキンエルマー社製、商品名:FT−IR1600シリーズ)及び13C−NMR(バリアン社製、商品名:FT−NMR ユニティ500)からイソシアネート基、イソシアヌレート基及びウレタン基の存在が確認された。
【0038】
(活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとの反応による水性ポリイソシアネートの合成)
合成例2
プラネタリーミキサーに、P−1を100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコールを16部仕込んで、70℃にて3時間反応させて、水性ポリイソシアネートAを得た。水性ポリイソシアネートAのイソシアネート基含有量は16.6%、25℃における粘度は2,500mPa・sであった。
【0039】
合成例3
プラネタリーミキサーに、P−1を100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコールを20部、リシノール酸メチルを18部仕込んで、70℃にて3時間反応させて、水性ポリイソシアネートBを得た。水性ポリイソシアネートBのイソシアネート基含有量は11.9%、25℃における粘度は3,000mPa・sであった。
【0040】
[消泡性試験]
実施例2
水性ポリイソシアネートB:400部、EHAP:0.2部、イオン交換水:600部を容器に仕込み、ホモミキサーにて2000rpm・30秒間高速攪拌して泡立たせ、この状態で静置して泡がなくなるまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例1〜3
表1に示す配合で、実施例2と同様にして試験した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
消泡性の評価基準
A:30分以内で泡が消える。
(B:30分〜2時間で泡が消える。)
C:2〜5時間で泡が消える。
【0044】
(水性塗料用ポリイソシアネート分散液のポットライフ測定)
実施例4
水性ポリイソシアネートB:100部と、EHAP:0.2部を混合した。この混合物:100部とイオン交換水:400部を、ホモミキサーにて2,000rpm・30秒間で分散して、水性塗料用ポリイソシアネート分散液を調製した。この分散液の分散直後のpH及び1時間毎に分散液のイソシアネート含量を測定し、イソシアネート含量が0%となった時点をポットライフ時間とした。結果を表2に示す。
【0045】
比較例4〜5
表2に示す組み合わせで、実施例4と同様にして水性塗料用ポリイソシアネート分散液の調製及びこの分散液のポットライフを測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例6
イオン交換水:100部にクエン酸:0.1部を溶解させた。このクエン酸水溶液のpHは3.0であった。このクエン酸水溶液:400部と、水性ポリイソシアネートA:100部をホモミキサーにて2,000rpm・30秒間で分散して、水性塗料用ポリイソシアネート分散液を調製した。その後、1時間毎に分散液のイソシアネート含量を測定し、イソシアネート含量が0%となった時点をポットライフ時間とした。結果を表3に示す。
【0048】
実施例6〜8
表3に示す組み合わせで、実施例5と同様にして水性塗料用ポリイソシアネート分散液の調製及びこの分散液のポットライフを測定した。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例9
水性ポリイソシアネートA:100部とイオン交換水:400部をホモミキサーにて2,000rpm・30秒間で分散した後、クエン酸:0.4部を添加して、水性塗料用ポリイソシアネート分散液を調製した。その後、1時間毎に分散液のイソシアネート含量を測定し、イソシアネート含量が0%となった時点をポットライフ時間とした。結果を表4に示す。
【0051】
実施例10
表4に示す組み合わせで、実施例5と同様にして水性塗料用ポリイソシアネート分散液の調製及びこの分散液のポットライフを測定した。結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
実施例11
水性ポリイソシアネートA:100部とEHAP:0.1部を混合した。イオン交換水:100部にEHAP:0.1部溶解させた。このクエン酸水溶液400部と、クエン酸を混合した水性ポリイソシアネートA100部をホモミキサーにて2,000rpm・30秒間で分散して、水性塗料用ポリイソシアネート分散液を調製した。その後、1時間毎に分散液のイソシアネート含量を測定し、イソシアネート含量が0%となった時点をポットライフ時間とした。結果を表5に示す。
【0054】
【0055】
【表5】
【0056】
各参考例、実施例、比較例、表1〜5において
PTSI:パラトルエンスルホニルイソシアネート
EHAP:2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(酸性リン酸エステル)
モノエステル/ジエステル=4/6(質量比)
SLS :ラウリル硫酸ナトリウム
【0057】
[塗料評価]
実施例14
サンドグラインドミルに下記塗料成分を仕込み、1時間分散させて水性塗料を調製した。この水性塗料に含有される水酸基に対して当量になるように、実施例4で調製した水性塗料用ポリイソシアネート分散液を配合して、塗料評価用サンプルAP−2を調製した。
各塗料成分の配合比は以下の通りである。
<ポリイソシアネート配合前の水性塗料配合比>
マクリナールVSM2521 640部
酸化チタンペースト※ 335部
キョーワノールM(協和発酵製) 25部
マクリナールVSM2521:ヘキスト合成製のアクリルエマルジョン
固形分=42%
水酸基価=140mgKOH/g
酸価=40mgKOH/g
※酸化チタンペースト配合比
酸化チタン(石原産業製、タイペークR−630) 709部
水 179部
界面活性剤(日本乳化剤製、25%Newcol723aq) 85部
分散剤(アーコケミカル製、SMA−1440H) 20部
アンモニア水 6部
防腐剤(ゼネカ製、ブロキセルBDN) 1部
【0058】
このAP−2をボンデ鋼板に乾燥膜厚30〜40μmになるように塗装し、25℃で2週間の条件で硬化させた。この塗装サンプルの各塗膜物性を測定した。測定項目は以下の通りである。結果を表6に示す。
・光沢 :JIS K5660−1995に準じて60°鏡面光沢度を測定。
・耐水性:JIS K5400−1995に準じて測定。
・密着性:JIS K5400−1995(碁盤目剥離試験法)に準じて測定。・耐溶剤性:キシレンをしみ込ませた脱脂綿にて塗装面をこすり、塗膜外観が破 壊されるを回数を測定(キシレンラビング試験)。
【0059】
実施例15〜21
実施例4で調製した水性ポリイソシアネート分散液を実施例5〜11で調製した水性塗料用ポリイソシアネート分散液に変える以外は実施例14と同様にして試験した。結果を表6、7に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
表6、7において、
光沢の評価
60°鏡面光沢度の値が大きいほど良好。
耐水性の評価基準
○:塗膜外観の変化がほとんど確認できない。
×:塗膜外観の変化が確認できる。
密着性の評価
碁盤目剥離試験において、残存部の面積比率が大きいほど良好。
耐溶剤性の評価
キシレンラビング試験において、その値が大きいほど良好。
【0063】
【発明の効果】
本発明の方法による水性塗料用ポリイソシアネート分散液はポットライフが長く、また、水性ポリイソシアネートを水に分散した後の、分散液の消泡性も良好であるので、消泡剤を用いなくても作業性は良好となる。また、本発明による塗料用水性ポリイソシアネート分散液は、あらゆるタイプのエマルジョンを主剤とした塗料の硬化剤として好適である。
Claims (4)
- 酸性物質が添加された水性ポリイソシアネートを水に分散させ、かつ、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量% - 水性ポリイソシアネートを、酸性物質が添加された水に分散させ、かつ、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量% - 水性ポリイソシアネートを水に分散させた後、該分散液に酸性物質を添加し、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量% - 酸性物質が添加された水性ポリイソシアネートを、酸性物質が添加された水に分散させ、かつ、以下に示す(イ)〜(ハ)の要件を満たす水性塗料用ポリイソシアネート分散液の安定化方法。
(イ)少なくとも活性水素基含有ノニオン性界面活性剤と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる水性ポリイソシアネート
(ロ)以下に示す群から選択される酸性物質:
酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル
(ハ)酸性物質総使用量:水性ポリイソシアネートに対して0.01〜10質量%
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