JP3923622B2 - 金属−セラミックス複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属に強化材を複合させた金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関し、特に平滑性に優れた表面を有する金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス繊維または粒子で強化されたセラミックスと金属の複合材料は、セラミックスと金属の両方の特性を兼ね備えており、例えばこの複合材料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックスの優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の優れた特性を備えている。このように、従来から難しいとされていたセラミックスと金属の両方の特性を備えているため、機械装置メーカ等の業界から次世代の材料として注目されている。
【0003】
この複合材料、特に金属としてアルミニウムをマトリックスとする複合材料の製造方法は、粉末冶金法、高圧鋳造法、真空鋳造法等の方法が従来から知られている。しかし、これらの方法は、強化材であるセラミックスの含有量を多くできない、あるいは大型の加圧装置が必要である、もしくはニアネット成形が困難である、コストが極めて高いなどの理由により、いずれも満足できるものではなかった。
【0004】
そこで最近では、上記問題を解決する製造方法として、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属浸透法が特に注目されている。この方法は、SiCやAl2O3などのセラミックス粉末で形成されたプリフォームに、Mgを含むアルミニウムインゴットを接触させ、これをN2雰囲気中で700〜900℃に加熱して溶融したアルミニウム合金をプリフォームに浸透させる方法である。これは、合金中のMgが揮発し、N2と反応してセラミックス粉末の表面に窒化マグネシウムが生成(N2+3Mg→Mg3N2)され、このMg3N2がAlと極めて反応し易い(Mg3N2+2Al→2AlN+3Mg)ため、溶融したアルミニウム合金がプリフォームに加圧しなくても浸透していくものである。この反応で生成した窒化アルミニウム(AlN)は、セラミックス表面に薄い層となって沈積し、Mgはアルミニウム合金中に溶け込み、このMg濃度が高いほどプリフォーム中へのアルミニウム合金の浸透速度が大となり、浸透時間を短縮する働きを持つ。
【0005】
また、この方法では、セラミックスの含有率を30〜85vol%と広く、かつ高い範囲まで変えることができ、しかも、この方法で形成されたプリフォームは、その形状の自由度が高いので、かなり複雑な形状をニアネットで作ることも可能である。このようにこの方法は、加圧装置が不要であり、セラミックスの含有率を高くすることができ、ニアネット成形も可能となる方法であるので、前記した問題が解決される優れた方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この複合材料を摺動材のような用途に用いる場合、その表面の平滑性が劣るという問題があった。それは、この複合材料の表面を研削、研磨すると複合材料中の軟らかい金属マトリックスが先に削り取られて凹凸が生じ、さらにそれを最終仕上げしても、難削材であるセラミックス部分が凸として一部残存し、望むような平滑さにならないからである。この平滑性が悪いと摺動時に発生する高い摩擦力のため、複合材料自身が摩耗しなくても相手材の摩耗を早めてしまう等の問題が生じ、前述した耐摩耗性、高靱性等のメリットを考慮してもこの複合材料を現状のままで摺動材として用いるのは難しい。
【0007】
本発明は、上述した金属−セラミックス複合材料が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、平滑性に優れた表面を有する金属−セラミックス複合材料を提供しその製造方法も提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、複合材料の表面をSiO2膜で被覆し、そのSiO2膜の表面を研磨すれば、平滑性に優れた表面を有する金属−セラミックス複合材料が得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(1)SiC、Al2O3またはAlN粉末とアルミニウム合金から成る金属−セラミックス複合材料において、該複合材料の表面が、SiO2膜で被覆され、かつそのSiO2膜の表面が研磨されていることを特徴とする金属−セラミックス複合材料(請求項1)とし、また、
(2)SiO2膜の研磨後の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の金属−セラミックス複合材料(請求項2)とし、さらに、
(3)表面がSiO2膜で被覆され、かつそのSiO2膜の表面が研磨されているSiC、Al2O3またはAlN粉末とアルミニウム合金から成る金属−セラミックス複合材料の製造方法において、該SiO2膜の被覆方法が、複合材料の表面に有機けい素を含む溶液を塗布し、これを熱硬化させる方法であり、その被覆されたSiO2膜の表面をダイヤモンド等の砥粒で研磨することを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項3)とし、さらにまた、
(4)SiO2膜の研磨後の表面粗さが、Raで0.1μm以下であることを特徴とする請求項3記載の金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項4)とすることを要旨とする。
以下さらに詳細に説明する。
【0010】
上記複合材料としては、その表面がSiO2膜で被覆され、かつそのSiO2膜の表面が研磨されていることとする金属−セラミックス複合材料とした(請求項1)。複合材料の表面をSiO2膜で被覆することにより、単一な成分を有する表面となり、また硬さも膜全面で均一となるので、この表面を研削、研磨することにより、均一に研削、研磨され、凹凸の少ない平滑な表面が得られることになる。また、気孔の少ないSiO2膜で被覆されているので、複合材料の素面で認められたポアが表面に出現せず、これも平滑な表面とすることに役だっている。
【0011】
そのSiO2膜の表面粗さとしては、中心線平均粗さ(以降、Ra)で0.1μm以下とした(請求項2)。表面が望みの平滑性にあればどんな平滑性であっても構わないが、スライドガイド等の表面の如く格段の平滑性が要求される場合には、その表面粗さはRaで0.1μm以下が必要となるため、それに対応できる平滑性にするものであり、0.1μmより大きいと対応でき難い。
【0012】
上記複合材料の製造方法としては、先ず複合材料の表面に有機けい素を含む溶液を塗布し、これを熱処理してSiO2膜を被覆することとし、この被覆したSiO2膜の表面をダイヤモンド等の砥粒で研磨することとする金属−セラミックス複合材料の製造方法とした(請求項3)。このように、複合材料の表面に有機けい素を含む溶液を塗布し、それを熱処理すれば、堅牢なSiO2膜が形成され、その形成されたSiO2膜の表面をダイヤモンド等の砥粒で研磨すれば、平滑な表面を有する複合材料が得られる。そのSiO2膜の表面粗さとしては、前述したと同様にRaで0.1μm以下とした(請求項4)。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法をさらに詳しく述べると、先ず強化材としてSiC、Al2O3もしくはAlN粉末を用い、金属にはアルミニウム合金を用いて金属−セラミックス複合材料を作製する。作製方法はどんな方法でも差し支えないが、前記したように優れた方法である非加圧金属浸透法が推奨される。
【0014】
得られた複合材料の表面を平にするため研削または研磨する。その後、表面に付着している油分や塵埃を除くためエタノールなどの揮発性有機溶媒で洗浄し、80℃程度の温度で乾燥する。乾燥は塵埃の再付着を防ぐために清浄な環境下で行わなくてはならない。次いで、その面に溶液状の有機けい素を筆などで塗布する。膜厚はその膜の表面粗さより厚くしなければならないので、1回の塗布で十分な厚さの膜が得られない場合には、それを乾燥してさらに重ね塗りをし、これを所望の膜厚が得られるまで繰り返せばよい。但し、膜厚をあまり厚くしすぎると、熱膨張率の違いが出て膜に亀裂が入るなどの不具合が生じる恐れがあるため、膜厚の上限としては、20μm程度である。
【0015】
次いでそれを熱処理する。熱処理は、例えば塗布した有機けい素を先ず乾燥し、その乾燥した有機けい素をさらに加熱処理して熱硬化させる。乾燥は、80℃程度の温度で10分間程度行えばよい。熱硬化は、例えば、大気中で250℃程度の温度で2時間程度加熱すれば、硬化した堅牢なSiO2膜が形成される。その形成されたSiO2膜をダイヤモンド等の砥粒で研磨することにより、平滑な表面を有する複合材料が得られる。
【0016】
以上の方法で金属−セラミックス複合材料を作製すれば、平滑性に優れた表面を有する金属−セラミックス複合材料とすることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
(実施例)
(1)金属−セラミックス複合材料の作製
強化材として平均粒径が15μmの市販SiC粉末を用い、金属としてAl−12Si−2Mg組成のアルミニウム合金を用い、これらから200×200×厚さ20mmの板状で粉末充填率が70vol%の金属−セラミックス複合材料を非加圧金属浸透法で作製した。
【0019】
(2)SiO2膜の形成
得られた複合材料の表面を#600のダイヤモンド砥粒により表面粗さがRaで0.5μm程度に研磨した後、その研磨面をエタノールで洗浄し、それを80℃で乾燥後、その面に有機けい素溶液(エヌ・イーケムキャット社製、品名HERVIC LT 20%)を筆を用いて約5μmの厚さに塗布し、それを80℃で10分間乾燥した後、250℃で2時間加熱処理してSiO2膜を形成した。その膜の表面を粒径1μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨した。
【0020】
(3)評価
得られた複合材料表面の表面粗さを東京精密社製のサーフコムで計測した。その結果、Raで0.02μmであった。
【0021】
(比較例)
実施例と同じ複合材料を用い、その表面にはSiO2膜を被覆せずに直接複合材料の表面を研削し、研磨した面を同様に評価した。その結果、表面粗さは、Raで0.5μmと実施例に比べて非常に粗かった。このことは、複合材料の表面をSiO2膜で被覆すれば、優れた平滑性を有する表面が得られることを示している。
【0022】
【発明の効果】
本発明の金属−セラミックス複合材料であれば、平滑性に優れた表面を有する金属−セラミックス複合材料とすることができ、表面平滑性を必要とする摺動材のような用途にも十分適用できるようになり、工業的利用の範囲が非常に広がった。
Claims (4)
- SiC、Al2O3またはAlN粉末とアルミニウム合金から成る金属−セラミックス複合材料において、該複合材料の表面が、SiO2膜で被覆され、かつそのSiO2膜の表面が研磨されていることを特徴とする金属−セラミックス複合材料。
- SiO2膜の研磨後の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の金属−セラミックス複合材料。
- 表面がSiO2膜で被覆され、かつそのSiO2膜の表面が研磨されているSiC、Al2O3またはAlN粉末とアルミニウム合金から成る金属−セラミックス複合材料の製造方法において、該SiO2膜の被覆方法が、複合材料の表面に有機けい素を含む溶液を塗布し、これを熱硬化させる方法であり、その被覆されたSiO2膜の表面をダイヤモンド等の砥粒で研磨することを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法。
- SiO2膜の研磨後の表面粗さが、Raで0.1μm以下であることを特徴とする請求項3記載の金属−セラミックス複合材料の製造方法。
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