JP3923561B2 - 内燃式ディーゼル・エンジン用エマルジョン混合・供給方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃式ディーゼル・エンジンのための水及び燃料からなるエマルジョンを混合し、かつ供給する方法及び装置、並びにこれらを利用する内燃式ディーゼル・エンジン及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
水を燃焼室内へ噴射してシリンダ内の燃焼温度を低下させることにより、内燃式ディーゼル・エンジンの運転時における窒素酸化物(NOx)の排出量を低減させることは周知である。この種の処理の問題点としては、燃料噴射装置の他に水を噴射する第2の装置を要する点が挙げられる。
【0003】
更に、水及び燃料を混合してエマルジョンを形成し、次いで同エマルジョンを従来の燃料ポンプを用いてシリンダ内へ供給することにより、内燃式ディーゼル・エンジンの運転時における窒素酸化物の排出量を低減させることが知られている。この種の装置では、燃料ポンプからの供給量は混合された水の量に応じて増加する。同装置の問題点としては、噴射システム全体を最大供給量に対して整合させるか、または同噴射システムの供給能力を固定する必要が挙げられる。噴射システム全体を最大供給量に対して整合させる場合、装置のコストが高くなるとともに、同装置の設置に更に大きな空間が必要になる。また、噴射システムの供給能力を固定した場合、供給可能な燃料の最大量は混合された水の量によって削減された燃料の量に等しくなり、エンジンの運転は出力の低下をともなう。
【0004】
本発明の目的は内燃式ディーゼル・エンジンにおける窒素酸化物の生成を抑制するとともに、同エンジンを全負荷範囲において効果的に運転可能にする水及び燃料からなるエマルジョンを混合し、かつ供給する方法と、同方法を実現する安価、かつ小型の装置と、これらの方法及び装置を利用する内燃式ディーゼル・エンジンと、その運転方法とを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法では、水及び燃料からなるエマルジョンを混合して同エマルジョンを内燃式ディーゼル・エンジン、より詳細には大型ディーゼル・エンジンに対して供給し、内燃式ディーゼル・エンジンの状態をセンサによって検出し、エマルジョンの組成、即ち水及び燃料の比率を供給するエマルジョンの量が一定またはほぼ一定となるようにセンサの信号に基づいて変更する。また、エマルジョンの供給量はエンジンの運転状態を示すパラメータ、より詳細にはエンジン出力が所定の閾値を下回る際は実測信号に基づいて変更し、さらに所定の閾値を上回る際は一定またはほぼ一定に維持し得る。更に、エマルジョンに含まれる水及び燃料の比率は、内燃式ディーゼル・エンジンの排気ガス中の窒素酸化物の比率が最小となるように制御可能である。
【0006】
内燃式ディーゼル・エンジンにおいて、噴射ポンプは燃料を燃焼室内へ高圧にて噴射すべく使用される。ディーゼル・エンジンに使用する従来の噴射ポンプはディーゼル・エンジンを部分負荷で運転する際、燃料を供給する余剰能力を有しており、本発明でも同種の噴射ポンプが使用される。本発明の方法は燃料に対して水を混合し、これによって形成された燃料及び水からなるエマルジョンを供給するために前記の余剰能力を利用する。即ち、水及び燃料の総量をディーゼル・エンジンの負荷範囲内において一定に維持するとともに、噴射ポンプを最大出力で連続的に運転する。この際、エンジンに対して供給される燃料の量は燃料ポンプの出力によって制御されない。寧ろ、燃料の量は燃料に混合される水の量によって制御される。
【0007】
本発明の方法では、部分負荷の増加時に更に多量の水をディーゼル・エンジンに対して供給可能になる。また、本発明の方法では、噴射システムの供給能力の変更を要しない。更に、本発明の方法では噴射される水及び燃料からなるエマルジョンの量が広い負荷範囲にわたって一定に維持されるため、同エマルジョンを燃焼室内へ噴射する燃料噴射ノズルはエマルジョンを噴霧化すべく広い負荷範囲にわたって好適な寸法に形成可能となる。所定の閾値、一般的には最大負荷の50%を下回る低い部分負荷範囲では、水の比率が高すぎるため、噴射するエマルジョンの量を一定に維持できない。このため、エマルジョンの供給量はセンサからの実測信号に基づいて変更される。また、水及び燃料の所定の最大比率が存在する。水及び燃料の比率が同最大比率を上回る場合、エンジンの安定した運転を保証できなくなる。従って、水及び燃料の比率が最大比率を上回る場合、同最大比率を越えないように燃料及び水の量が同時に低減される。これにより、内燃式ディーゼル・エンジンを最小負荷から最大負荷までの全負荷範囲において運転可能になる。
【0008】
また、本発明では、内燃式ディーゼル・エンジンのためのエマルジョンを混合して供給する装置であって、水を乳化システムへ供給する送出しポンプと、燃料を乳化システムへ供給する送出しポンプと、前記乳化システム内で形成されたエマルジョンを内燃式ディーゼル・エンジンの燃焼室内へ供給する高圧ポンプと、内燃式ディーゼル・エンジンの状態を検出するセンサに対して電気信号線を通じて接続され、さらには形成されたエマルジョンに含まれる水及び燃料の比率を調整すべく電気信号線を通じて前記送出しポンプに接続された制御及び調整装置とを含む装置が提供される。
【0009】
更に、本発明では、本発明の方法に基づいて運転されるか、または本発明の装置を有する内燃式ディーゼル・エンジン、より詳細には大型ディーゼル・エンジンが提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明を添付図面に基づいて以下に詳述する。図1では、噴射ポンプからの供給量をエンジン出力の関数として示す。直線aは従来の方法に基づいて運転された噴射ポンプを示しており、供給された流体は全て燃料からなる。この際、供給量はエンジン出力に基づいて変更される。直線bは水及び燃料からなるエマルジョンを混合し、かつ供給する本発明の方法をエンジン出力の関数として示す。内燃式ディーゼル・エンジンのエンジン出力はセンサによって検出される。最大負荷の約0〜50%の範囲である低いエンジン出力範囲Iでは、噴射ポンプへ供給される水及び燃料からなるエマルジョンの総量が直線bに示す量に一致するように、水は供給される燃料の量に比例して混合される。
【0011】
エンジン出力範囲Iでは、水の比率が高すぎる場合、エンジンの順調な運転を保証できない。この結果、混合される燃料及び水の量を同時に変更する必要がある。エンジン出力Sでは、供給されるエマルジョンの量は噴射ポンプの定格出力に一致している。エンジン出力Sから最大エンジン出力Mmaxまでの範囲である高いエンジン出力範囲IIにおいて、噴射ポンプへ供給されるエマルジョンの総量は直線bに示すように一定に維持される。この間、燃料の量は直線aに示すようにエンジン出力の関数として変更される。そして、追加される水の量は、水及び燃料からなるエマルジョンの総量が一定またはほぼ一定となるように制御される。
【0012】
図1に示すように、エマルジョンの総量及び組成はエンジン出力の関数として変更される。内燃式ディーゼル・エンジンの運転に関連する他のパラメータをエンジン出力に代えて使用できる。このパラメータの例としては、センサによる検出が可能なエンジンの回転速度、給気圧、シリンダ内の燃焼圧、排気温度、排気ガスに含まれる特定成分の濃度及びトルクのうちのいづれか1つが挙げられる

【0013】
更に、内燃式ディーゼル・エンジンの別の状態パラメータは、エンジン及びエマルジョンの組成の制御に適する制御装置を使用することにより実測パラメータから算出できる。
【0014】
図2は燃料及び水からなるエマルジョンを混合して供給する装置を示す概略図である。内燃式ディーゼル・エンジンの状態を検出するセンサ31は電気信号線40を介して制御装置30に対して接続されている。2つの送出しポンプ1,9の回転速度は対応する電気信号線41,42を介して制御装置30によって決定される。燃料は燃料を充填したタンク13から管路11及び送出しポンプ9を通じて乳化システム8へ供給される。水は水を充填したタンク5から管路3及び送出しポンプ1を通じて乳化システム8へ供給される。乳化システム8は水及び燃料からなるエマルジョンを形成すべく水を燃料と混合する。エマルジョンは管路19を通じて噴射ポンプ16へ送られる。噴射ポンプ16はエマルジョンを管路19aを通じて内燃式ディーゼル・エンジン20の燃焼室内へ供給する。制御装置30はセンサ31及び必要とされる他のセンサを監視するとともに、送出しポンプ1,9を制御することにより、図1に示す範囲II内においてエマルジョンの供給量を一定に維持するとともに、同エマルジョンに含まれる水及び燃料の混合比を変更する一方で、範囲I内においてエマルジョンの供給量を変更するとともに、同エマルジョンに含まれる水及び燃料の混合比を一定に維持する。
【0015】
図3は本発明の別の装置をより詳細に示す。一方のタンク5は水の供給源として機能する。フィルタ2は送出しポンプ1の手前に配置されている。水は送出しポンプ1にて導出され、さらには管路3を通過して緩衝タンク4内へ流入する。フィルタ7は定量ポンプ6の手前に配置されている。水は定量ポンプ6によって緩衝タンク4から送出され、さらには乳化プラント8内へ流入する。水は乳化プラント8内において燃料と混合される。定量ポンプ6は制御装置30(図3における図示略)によって制御される。他方のタンク13は燃料の供給源として機能する。フィルタ10は送出しポンプ9の手前に配置されている。燃料は送出しポンプ9によって導出され、さらには管路11を通過して燃料緩衝タンク12内へ流入する。次いで、燃料は燃料緩衝タンク12から管路14内を案内され、さらには乳化プラント8内へ流入する。必要とされるエンジン出力に基づいて制御される定量ポンプ6の供給量は、乳化システム8内のエマルジョンに含まれる水の比率を決定する。エマルジョンは乳化システム8を通過した後、高圧ポンプ15によって噴射ポンプ16へ供給される。エマルジョンは任意にてヒータ17及びフィルタ18のうちの少なくともいづれか一方を通過し得る。次いで、エマルジョンは噴射ポンプ16から管路19aを通過して内燃式ディーゼル・エンジン20の燃焼室内へ供給される。高圧ポンプ15により噴射ポンプ16へ送られた余剰のエマルジョンは、戻り管路21内を案内されて分離システム22内へ流入する。エマルジョンは分離システム22内において水及び燃料へ分離される。水は管路23を通過して緩衝タンク4内へ案内される。燃料は管路24を通過して燃料緩衝タンク12内へ送られる。送出しポンプ1,9,6,15,16は電気信号線を通じて制御装置30に対して接続され、かつ同制御装置30によって制御される。更に、状態パラメータは送出しポンプ1,9,6,15,16を適切に制御すべくセンサ31を介して制御装置30によって検出される。
【0016】
使用する燃料の量に基づいてエマルジョンの安定性を保証すべく、同エマルジョンに対する乳化剤の添加を要する場合がある。また、高い粘度を備えた燃料を使用する場合、燃料、即ちエマルジョンを100℃を越えて加熱する必要がある。この加熱を実現するためには、燃料システムを閉鎖システムとして形成する必要がある。これにより、エマルジョンを噴射ポンプを用いて供給し得る。
【0017】
更に、本発明の内燃式ディーゼル・エンジン、より詳細には大型ディーゼル・エンジンは本発明の方法に基づいて運転されるか、または本発明の装置を有する。
【0018】
以上詳述したように、本発明の方法では、部分負荷の増加時に更に多量の水をディーゼル・エンジンに対して供給し得る。これにより、窒素酸化物の生成量を効果的に削減し得る。この方法に基づいて運転されるディーゼル・エンジンは沿岸及び港など窒素酸化物の排出が望ましくない地域において部分負荷で運転できる。従って、同ディーゼル・エンジンは生態学的観点から特に好ましい。
【0019】
本発明の方法の別の効果としては、噴射システムの供給能力の変更を要しないという事実が挙げられる。この結果、噴射システムを安価、かつ小型に形成できる。そして、従来のディーゼル・エンジンを容易に転用できるとともに、新たなディーゼル・エンジンに対する供給能力の増加を必要としない。
【0020】
更に、本発明の方法では噴射される水及び燃料からなるエマルジョンの量が広い負荷範囲にわたって一定に維持されるため、同エマルジョンを燃焼室内へ噴射する燃料噴射ノズルをエマルジョンを噴霧化すべく広い負荷範囲において好適な寸法に形成できるという効果が得られる。燃料噴射ノズルの寸法はディーゼル・エンジンの煙及び粒状排出物の量を決定する。広い負荷範囲において一定に維持された噴射燃料の量は燃料噴射ノズルを好適な寸法に設定することを可能にするとともに、低公害を実現させ得る。
【0021】
低い部分負荷範囲、一般的には最大負荷の50%未満の部分負荷では、水の比率が高すぎるため、噴射する燃料の量を一定に維持できない。また、水及び燃料の所定の最大比率が存在する。水及び燃料の比率が同最大比率を上回る場合、エンジンの順調な運転を保証できなくなる。従って、水及び燃料の比率が最大比率を上回る場合、同最大比率を越えないように燃料及び水の量を同時に削減する必要がある。これにより、内燃式ディーゼル・エンジンを最小負荷から最大負荷までの全負荷範囲において効果的に運転できる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、内燃式ディーゼル・エンジンにおける窒素酸化物の生成を抑制するとともに、同エンジンを全負荷範囲において効果的に運転できるうえ、これを実現する装置を安価かつ、小型に形成できるという優れた効果を発揮する

【図面の簡単な説明】
【図1】噴射ポンプからの供給量をエンジン出力の関数として示す線図。
【図2】エマルジョンを混合し、かつ供給する装置の概略図。
【図3】エマルジョンを混合し、かつ供給する別の装置の概略図。
【符号の説明】
1,9…送出しポンプ、8…乳化システム、15…高圧ポンプ、31…センサ、40,41,42…信号線、30…制御及び調整装置、S…閾値。

Claims (8)

  1. 内燃式ディーゼル・エンジンのための水及び燃料からなるエマルジョンを混合して供給する方法であって、前記ディーゼル・エンジンの運転状態を示すパラメータをセンサにて検出し、エマルジョンに含まれる水及び燃料の比率はエマルジョンの総必要量がほぼ一定となるように前記パラメータに基づいて変更する方法。
  2. 前記エマルジョンの総必要量を前記パラメータ、より詳細にはエンジン出力が所定の閾値(S)を下回る際は実測信号に基づいて変更し、さらにエンジン出力が前記所定の閾値(S)を上回る際はほぼ一定に維持する請求項1に記載の方法。
  3. 前記エンジン出力が所定の閾値(S)を下回る際、前記水及び燃料の比率を前記パラメータに比例して変更する請求項2に記載の方法。
  4. 前記センサが検出する信号は、エンジンの回転速度、給気圧、シリンダ内の燃焼圧、排気温度、排気ガスに含まれる特定成分の濃度及びトルクのうちの少なくともいずれか1つのパラメータを含む請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記内燃式ディーゼル・エンジンを、水及び燃料の比率を変更することにより、エマルジョンの総必要量を一定に維持した状態で制御する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記エマルジョンに含まれる水及び燃料の比率を、内燃式ディーゼル・エンジンの排気ガス中の窒素酸化物の比率が最小となるように制御する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 内燃式ディーゼル・エンジンのためのエマルジョンを混合して供給する装置であって、水を乳化システム(8)へ供給する送出しポンプ(1)と、燃料を乳化システム(8)へ供給する送出しポンプ(9)と、ライン(19)とを備え、そのライン(19)を通じて、前記乳化システム(8)内で形成されたエマルジョンが、該エマルジョンを前記ディーゼル・エンジンの燃焼室内へ供給する高圧ポンプ(15)に供給され、前記ディーゼル・エンジンの状態を検出するセンサ(31)に対して電気信号線(40)を介して接続され、さらには生成されたエマルジョンに含まれる水及び燃料の比率を調整すべく電気信号線(41,42)を通じて前記送出しポンプ(1,9)に接続された制御及び調整装置(30)を備え、前記制御及び調整装置(30)は、前記エンジンの状態を示すパラメータについて所定の閾値を上回る範囲で前記エマルジョンの総必要量がほぼ一定となるように、前記所定の閾値を下回る範囲では前記燃料及び水の量が実測信号に基づいて減少するように、前記エマルジョンの総必要量を変更する装置。
  8. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法に基づいて運転されるか、または請求項7に記載の装置を有する内燃式ディーゼル・エンジン、より詳細には大型ディーゼル・エンジン。
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