JP3923191B2 - 車両の走行安全装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダー装置等の物体検出手段を用いて自車が対向車に接触するのを防止する車両の走行安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両の走行安全装置は、特開平7−14100号公報により既に知られている。
【0003】
上記公報に記載されたものは、自車が対向車線に進入して対向車と衝突する可能性がある場合に、ドライバーに自発的な衝突回避操作を促すための警報を発したり、自車を自動的に制動したりした対向車との衝突を回避するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のものはドライバーの覚醒度を考慮せずに衝突回避制御を行なっているため、ドライバーの覚醒度が低く自発的な衝突回避操作が困難である場合を想定して衝突回避制御の強さや制御開始のタイミングを決定すると、覚醒度が高い場合に過剰な衝突回避制御が実行されてドライバーに違和感を与える問題がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、対向車との接触を回避するために操舵装置を自動的に操舵するものにおいて、ドライバーの覚醒度に応じた衝突回避制御を行なってドライバーの違和感を解消することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、自車の進行方向に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の車速を検出する車速検出手段と、物体検出手段による検出結果および車速検出手段で検出した自車の車速に基づいて対向車を判別するとともに、自車と対向車との相対位置、相対距離および相対速度よりなる相対関係を算出する相対関係算出手段と、相対関係算出手段により算出した前記相対関係に基づいて自車および対向車の接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、接触可能性判定手段により接触の可能性があると判定されたときに接触を回避すべく自車の操舵装置を自動的に操舵する操舵制御手段と、ドライバーの覚醒度を検出する覚醒度検出手段と、自車の車速および対向車との相対速度が小さい場合に操舵制御手段による操舵角抑制制御を行い、自車の車速および対向車との相対速度が大きい場合に操舵制御手段による操舵制御の開始を遅らせるタイミングディレー制御を行う制御変更手段とを備え、前記制御変更手段は、前記覚醒度検出手段により検出されたドライバーの覚醒度が低いときに前記操舵角抑制制御および前記タイミングディレー制御の何れかを選択するための閾値を該操舵角抑制制御が選択され易くなるように変更し、前記覚醒度が高いときに前記閾値を該タイミングディレー制御が選択され易くなるように変更することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、制御変更手段により、自車の車速および対向車との相対速度が小さいために操舵角が大きくなる場合には操舵角抑制制御を行い、自車の車速および対向車との相対速度が大きいために操舵角が小さくなる場合にはタイミングディレー制御を行うことができる。そしてドライバーの覚醒度が低い場合には、衝突回避のための自動操舵の開始によって覚醒度が高められる可能性があるため、操舵角抑制制御をタイミングディレー制御に優先して行わせてドライバーの覚醒を促すことができ、逆に覚醒度が高い場合はドライバーが自発的な衝突回避操作を行うことが考えられ、自動操舵と干渉することが予想されるので、タイミングディレー制御を優先させて自動操舵を遅らせることができ、これにより操舵制御が早めに開始されるのを防止してドライバーの違和感を解消することができる。
【0008】
また請求項に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、相対関係算出手段により算出した前記相対関係および予め設定された適正横距離に基づいて自車が対向車と適正にすれ違うための自車の適正進路を設定する適正進路設定手段と、自車が対向車に接触する接触予測位置を前記相対関係および自車の車速に基づいて予測する接触位置予測手段とを備えてなり、前記接触可能性判定手段は、前記接触予測位置を前記適正進路と比較して自車および対向車の接触可能性を判定することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、相対関係算出手段により算出した前記相対関係および予め設定された適正横距離に基づいて自車が対向車と適正にすれ違うための自車の適正進路を設定するとともに、前記相対関係および自車の車速に基づいて自車が対向車に接触する接触予測位置を推定し、この接触予測位置を自車の適正進路と比較して自車および対向車の接触可能性を判定するので、物体検出手段により自車と対向車との相対関係を連続的に検出することなく、物体検出手段で対向車を判別した時点で接触可能性を判定することができる。その結果、自車および対向車の相対速度が大きいために接触までの時間的余裕がない正面衝突を効果的に回避することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図23は本発明の第1実施例を示すもので、図1は走行安全装置を備えた車両の全体構成図、図2は走行安全装置のブロック図、図3は車両の操舵装置の斜視図、図4は電子制御ユニットの機能の説明図、図5は電子制御ユニットの回路構成を示すブロック図、図6はメインルーチンのフローチャート、図7は正面衝突回避制御ルーチンのフローチャート、図8は旋回時衝突回避制御ルーチンのフローチャート、図9は正面衝突判断ルーチンのフローチャート、図10は警報制御ルーチンのフローチャート、図11は回避操舵制御ルーチンのフローチャート、図12は旋回時衝突回避制御の内容を示す図、図13は横偏差δdを算出する手法の説明図(衝突が発生する場合)、図14は横偏差δdを算出する手法の説明図(自車が対向車の左側を通過する場合)、図15は横偏差δdを算出する手法の説明図(自車が対向車の右側を通過する場合)、図16は横偏差δdの補正係数を検索するマップ、図17は衝突回避のための基準操舵角の算出手法の説明図、図18は操舵角補正値δ(θ)を検索するマップ、図19は最大操舵角を検索するマップ、図20はアクチュエータの制御系のブロック図、図21は操舵角の抑制制御およびタイミングディレー制御の選択基準の説明図、図22は操舵角の抑制制御の説明図、図23は操舵角のタイミングディレー制御の説明図である。
【0012】
図1および図2に示すように、左右の前輪Wf,Wfおよび左右の後輪Wr,Wrを備えた車両は、操舵輪である左右の前輪Wf,Wfを操舵するためのステアリングホイール1と、ドライバーによるステアリングホイール1の操作をアシストする操舵力および衝突回避のための操舵力を発生する電動パワーステアリング装置2とを備える。電動パワーステアリング装置2の作動を制御する電子制御ユニットUには、物体検出手段としてのレーダー装置3と、ステアリングホイール1の操舵角を検出する操舵角センサS1 と、ステアリングホイール1に入力される操舵トルクを検出する操舵トクルセンサS2 と、車体の横加速度を検出する横加速度センサS3 と、車体のヨーレートを検出する自車ヨーレートセンサS4 と、各車輪Wf,Wf;Wr,Wrの回転数を検出する車速センサS5 …と、本発明の覚醒度検出手段を構成する覚醒度センサS6 とからの信号が入力される。覚醒度センサS6 は、ドライバーのまばたきをカメラで捕らえて覚醒度を検出するもの、車両のヨーレートのふらつきに基づいて覚醒度を検出するもの等の、既存の居眠り運転防止用のセンサを用いることができる。電子制御ユニットUは、レーダー装置3および各センサS1 〜S6 からの信号に基づいて電動パワーステアリング装置2の作動を制御するとともに、液晶ディスプレイよりなる表示器4およびブザーやランプよりなる警報器5の作動を制御する。
【0013】
レーダー装置3は、自車前方の左右方向所定範囲に向けて電磁波を送信し、その電磁波が物体に反射された反射波を受信することにより、自車と物体との相対距離、自車と物体との相対速度、物体の方向を検出する。本実施例では、1回の送受信で自車と物体との上記相対関係を検出することができるミリ波レーダーが用いられる。
【0014】
図3は操舵装置11の構造を示すもので、ステアリングホイール1の回転はステアリングシャフト12、連結軸13およびピニオン14を介してラック15に伝達され、更にラック15の往復動が左右のタイロッド16,16を介して左右の前輪Wf,Wfに伝達される。操舵装置11に設けられた前記電動パワーステアリング装置2は、アクチュエータ17の出力軸に設けた駆動ギヤ18と、この駆動ギヤ18に噛み合う従動ギヤ19と、この従動ギヤ19と一体のスクリューシャフト20と、このスクリューシャフト20に噛み合うとともに前記ラック15に連結されたナット21とを備える。従って、アクチュエータ17を駆動すれば、その駆動力を駆動ギヤ18、従動ギヤ19、スクリューシャフト20、ナット21、ラック15および左右のタイロッド16,16を介して左右の前輪Wf,Wfに伝達することができる。
【0015】
図4に示すように、電子制御ユニットUは電動パワーステアリング制御手段22と、正面衝突回避制御手段23と、切換手段24と、出力電流決定手段25とを備える。通常時は切換手段24が電動パワーステアリング制御手段22側に接続されており、電動パワーステアリング装置2は通常のパワーステアリング機能を発揮する。すなわち、操舵トルクセンサS2 の出力に基づいて算出される操舵トルクが車速センサS5 …の出力に基づいて算出される車速に応じた所定の値になるように出力電流決定手段25がアクチュエータ17への出力電流を決定し、この出力電流を駆動回路26を介してアクチュエータ17に出力することにより、ドライバーによるステアリングホイール1の操作がアシストされる。一方、自車が対向車と正面衝突する可能性がある場合には切換手段24が正面衝突回避制御手段23側に接続され、正面衝突回避制御手段23でアクチュエータ17の駆動を制御することにより、対向車との正面衝突を回避するための自動操舵が実行される。この自動操舵の内容は後から詳述する。
【0016】
次に、クレーム対応図である図5に基づいて正面衝突回避制御手段23の構成と、その機能の概要を説明する。
【0017】
正面衝突回避制御手段23は、相対関係算出手段M1と、接触可能性判定手段M2と、操舵制御手段M3と、制御変更手段M4と、適正進路設定手段M5と、接触位置予測手段M6とから構成される。
【0018】
相対関係算出手段M1は、物体検出手段(レーダー装置3)および車速検出手段(車速センサS5 …)の出力に基づいて、自車Aiと対向車Aoとの相対角度(相対位置)θ、相対距離Lおよび相対速度Vsを算出する。適正進路設定手段M5は、自車Aiが対向車Aoと適正にすれ違うための自車Aiの本来の適正進路Rを設定する。接触位置予測手段M6は、自車Aiが対向車Aoとすれ違う接触時刻において自車Aiが対向車Aoに接触する接触位置Pを予測する。そして接触可能性判定手段M2は、前記接触位置Pを前記適正進路Rと比較して自車Aiと対向車Aoとの接触可能性を判定する。操舵制御手段M3は、自車Aiと対向車Aoとが接触する可能性があると判定されたとき、接触を回避すべく操舵装置11のアクチュエータ17を自動的に作動させる。
【0019】
制御変更手段M4は、覚醒度検出手段(覚醒度センサS6 )で検出したドライバーの覚醒度に応じて、操舵制御手段M3が操舵装置11のアクチュエータ17に出力する目標操舵量の大きさや目標操舵量の出力タイミングを変更する。
【0020】
次に、本実施例の作用を図6〜図11のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0021】
先ず、図6のメインルーチンのステップS11で操舵角センサS1 、操舵トクルセンサS2 、横加速度センサS3 、自車ヨーレートセンサS4 および車速センサS5 …の出力に基づいて自車の状態を検出する。続くステップS12で、レーダー装置3で対向車の状態を検出する。レーダー装置3は対向車以外にも前走車、歩道橋、標識、キャッツアイ等を検出するが、自車との相対速度に基づいて対向車を他の物体から識別することができる。続くステップS13で、自車の状態および対向車の状態を表示器4に表示する。
【0022】
続くステップS14で、レーダー装置3および各センサS1 〜S5 …の検出結果に基づいて正面衝突回避制御が適切に行われているか否かをチェックする。正面衝突回避制御はドライバーが過度な走行を行っていない場合だけ実行されるもので、例えばオーバースピードでの走行時には、ステップS15でシステムの作動を中止するとともに、その旨を表示器4でドライバーに報知して適切な運転を促す。また前記ステップS14のシステムチェックの結果、ドライバーが対向車との正面衝突を回避すべく自発的なステアリング操作を行ったことが検出された場合には、ステップS16で正面衝突回避制御を中止して通常の電動パワーステアリング制御に復帰するとともに、その旨を表示器4でドライバーに報知する。これにより、ドライバーによる自発的なステアリング操作と正面衝突回避制御の自動操舵制御とが干渉するのを回避することができる。
【0023】
前記ステップS14のシステムチェックの結果が正常であれば、ステップS17で自車の走行状態を判定する。自車が直進に近い走行状態にあり、レーダー装置3および各センサS1 〜S5 …の検出結果に基づいて対向車とすれ違う(衝突する)時刻と、そのときの自車および対向車の位置関係とが的確に推定可能な場合であれば、ステップS18に移行して正面衝突回避制御を実行する。一方、過度な走行ではないが自車の旋回の度合いが強く、対向車とすれ違う(衝突する)時刻と、そのときの自車および対向車の位置関係が的確に推定できない場合であれば、ステップS19に移行して旋回時衝突回避制御を実行する。そしてステップS20で、自車と対向車との衝突を回避すべく、正面衝突回避制御あるいは旋回時衝突回避制御に基いて電動パワーステアリング装置2のアクチュエータ17を作動させる。
【0024】
次に、前記ステップS18の「正面衝突回避制御」の内容を、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
先ずステップS21で、自車および対向車が衝突する可能性の程度を表す衝突判断パラメータを、すなわち自車および対向車がすれ違う時刻(あるいは衝突する時刻)における自車と適正進路Rとの横偏差δdを算出する。そしてステップS22で、前記横偏差δdを後述する閾値と比較することにより衝突の可能性の有無を判定し、衝突の可能性があり且つその可能性が小さい場合には、ステップS23で警報器5を作動させてドライバーに警報を発する。また衝突の可能性があり且つその可能性が大きい場合には、警報を発するとともに、ステップS24でアクチュエータ17を駆動して対向車を回避するための自動操舵を実行する。前記ステップS22の「衝突判断」、前記ステップS23の「警報制御」および前記ステップS24の「回避操舵制御」の具体的な内容は、図9、図10および図11に基づいて後から詳述する。
【0026】
次に、前記ステップS19の「旋回時衝突回避制御」の内容を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
先ずステップS31で旋回時における衝突危険度を算出する。衝突危険度は、図12に示すように、自車の旋回半径および対向車の旋回半径の差に基づいて判断されるもので、その差が大きくなるに伴って危険度が高いと判断される。そしてステップS32で、前記衝突危険度に応じた警報制御および車線逸脱防止制御を実行する。旋回時には、対向車とすれ違う(衝突する)時刻や、そのときの自車および対向車の位置関係を的確に推定することが難しいため、その衝突回避制御は直進時のそれに比べて弱いものとなる。
【0028】
図12に示すように、旋回時における衝突危険度はレベル1、レベル2およびレベル3の3段階に設定されており、それらのレベルは、例えば左側通行の場合、自車が右旋回中であれば対向車旋回半径−自車旋回半径に基づいて判定され、自車が左旋回中であれば自車旋回半径−対向車旋回半径に基づいて判定される。危険度が低いレベル1では警報器4による警報だけを実行し、危険度が中程度のレベル2では警報器4による警報およびアクチュエータ17による弱い車線逸脱防止制御を実行し、危険度が高いレベル3では警報器4による警報およびアクチュエータ17による強い車線逸脱防止制御を実行する。車線逸脱防止制御は、ドライバーが車線を逸脱する方向への操舵を行ったとき、電動パワーステアリング装置2のアクチュエータ17を駆動して前記操舵を妨げるような操舵反力を発生させて車線逸脱を防止するものである。
【0029】
尚、「旋回時衝突回避制御」における警報は、「正面衝突回避制御」における警報と区別すべく、警報器5のブザーの音色やランプの色を異ならせている。
【0030】
次に、前記ステップS22の「衝突判断」の内容を、図9のフローチャートおよび図13〜図15の説明図に基づいて説明する。
【0031】
先ず、ステップS41で車速センサS5 …の出力に基づいて自車Aiの車速Viを算出し、ステップS42で自車ヨーレートセンサS4 の出力に基づいて自車Aiのヨーレートγiを算出し、ステップS43でレーダー装置3の出力に基づいて自車Aiと対向車Aoとの相対距離Lを算出し、ステップS44でレーダー装置3の出力に基づいて自車Aiと対向車Aoとの相対速度Vsを算出し、ステップS45でレーダー装置3の出力に基づいて自車Aiと対向車Aoとの相対角度θを算出する。続くステップS46で、対向車と衝突せずにすれ違うための自車Aiの本来の適正進路Rを、現在の対向車Aoの位置から測った適正横距離daに基づいて設定する。この適正横距離daは予め設定されており、その値は例えば3mとされる。続くステップS47で、自車Aiの車速Viおよびヨーレートγiと、自車Aiに対する対向車Aoの相対位置関係から、対向車Aoのヨーレートγoを算出する。そしてステップS48で、自車Aiが対向車Aoとすれ違う位置(接触位置P)における自車Aiと適正進路Rとの間の横偏差δdを算出する。以下、この横偏差δdを算出する過程を、図13に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図13は、左側通行の道路で自車Aiが誤って対向車Ao側の車線に進入しようとする状態を示している。ここで、適正横位置Ai′は、自車Aiの適正進路R上であって、現在の対向車Aoの位置の横方向に対応する位置であり、その適正横位置Ai′と対向車Aoとの間の距離は適正横距離da(例えば3m)である。Lは自車Aiと対向車Aoとの相対距離であってレーダー装置3の出力に基づいて算出される。θは自車Aiと対向車Aoとの相対角度であってレーダー装置3の出力に基づいて算出される。εは自車Aiの適正進路Rの方向と対向車Aoの方向との成す角度であって、相対距離Lおよび適正横距離daに基づいて幾何学的に求められる。Viは自車Aiの車速であって、車速センサS5 …の出力に基づいて算出される。Vsは自車Aiの車速Viと対向車Aoの車速Voとの差に相当する相対車速であって、レーダー装置3の出力に基づいて算出される。
【0033】
図13において、斜線を施した三角形において、
X cos(θ+ε)=L sinθ …(1)
が成立し、これをXについて解くと、
X=L sinθ/ cos(θ+ε) …(2)
が得られる。また現在を基準として計った接触時間tc(すれ違い時刻あるいは衝突時刻までの経過時間)は、相対距離Lを相対速度Vsで除算した値として得られる。
【0034】
tc=L/Vs …(3)
また自車Aiから接触位置P(すれ違い位置あるいは衝突位置)までの距離Lcは、車速Viと接触時間tcとの積として得られる。
【0035】
Lc=Vi・tc=L(Vi/Vs) …(4)
図13から明らかなように、自車Aiの位置において角度θ+εの頂点を共有する2つの直角三角形の相似関係から、
Lc′:L=δd:da+X …(5)
が成立し、更にLc′ cosε=Lc cos(θ+ε)の関係と、前記(2)式、(4)式および(5)式とから、横偏差δdが次式のように得られる。
【0036】
【数1】
Figure 0003923191
【0037】
(6)式の右辺における5つの変数のうち、Viは常に算出可能であり、且つVs,L,θ,εはレーダー装置3の1回の送受信で算出可能であるため、レーダー装置3で最初に対向車Aoを判別した時点で速やかに横偏差δdを算出することができる。従って、自車Aiおよび対向車Aoが相互に接近するために接触時間tcに余裕がない場合でも、速やかに接触可能性の判定を行なって衝突回避制御を開始することができる。
【0038】
而して、図9のフローチャートのステップS49で、前記横偏差δdを予め設定した接触判定基準値と比較し、横偏差δdが第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxの間にあれば、すなわちδdn<δd<δdxが成立すれば、ステップS50で自車Aiが対向車Aoに衝突する可能性があると判定する(図13参照)。一方、図14に示すようにδd≦δdnであれば、あるいは図15に示すようにδd≧δdxであれば、ステップS51で自車Aiが対向車Aoに衝突する可能性がないと判定する。図15の状態は、例えば自車Aiが分岐路に進入するために対向車Aoの車線を斜めに横切るような場合に相当する。
【0039】
尚、前記第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxは自車Aiの車幅等に応じて適宜設定されるもので、例えば第1接触判定基準値δdn=1.5m、第2接触判定基準値δdx=4.5mとされる。
【0040】
以上の説明では横偏差δdを算出する際に自車Aiのヨーレートγiおよび対向車Aoのヨーレートγoを考慮していないが、それらヨーレートγi,γoを考慮することにより、更に精度の高い衝突回避が行われる。
【0041】
自車Aiが車速Vi、ヨーレートγiで走行するとViγiの横加速度が発生するため、このViγiを2回積分することにより自車Aiの横方向移動量yiが算出される。従って、接触時間tc=L/Vsにおける自車Aiの横方向移動量yiは、
yi=(Vi・γi/2)・(L/Vs)2 …(7)
で与えられる。
【0042】
同様に、対向車Aoが車速Vo、ヨーレートγoで走行するとVoγoの横加速度が発生するため、このVoγoを2回積分することにより対向車Aoの横方向移動量yoが算出される。従って、接触時間tc=L/Vsにおける対向車Aoの横方向移動量yoは、
yo=(Vo・γo/2)・(L/Vs)2 …(8)
で与えられる。
【0043】
而して、前記(6)式の横偏差δdを自車Aiの横方向移動量yiおよび対向車Aoの横方向移動量yoで補正した次式を用いることにより、横偏差δdの精度を一層高めることができる。
【0044】
【数2】
Figure 0003923191
【0045】
対向車Aoのヨーレートγoは、レーダー装置3の出力に基づいて対向車Aoの位置を複数回検出して該対向車Aoの旋回軌跡を推定すれば、その旋回半径と対向車Aoの車速Voとに基づいて算出される。従って、対向車Aoのヨーレートγoはレーザー装置3の1回の送受信では検出することができず、(9)式における対向車Aoのヨーレートγoを用いた補正を行うには若干の演算時間が必要になる。但し、図6のフローチャートのステップS17で説明したように、この正面衝突回避制御は自車Aiが実質的に直線走行しているとき(直線路を走行しているとき)に行われるもので、このとき対向車Aoのヨーレートγoが大きな値を持つことは稀である。このことから、対向車Aoのヨーレートγoを用いた補正を行わなくても充分な精度を確保することができる。
【0046】
ところで、前記第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxを固定値とする代わりに、第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxを横偏差δdを算出した時点における自車Aiおよび対向車Aoの走行状態で補正すれば、正面衝突回避制御を更に精度良く行うことができる。すなわち、第1接触判定基準値δdnの補正は、3つの補正係数k1n,k2n,k3nを用いて、
δdn←k1n・k2n・k3n・δdn …(10)
のように行われ、第2接触判定基準値δdxの補正は3つの補正係数k1x,k2x,k3xを用いて、
δdx←k1x・k2x・k3x・δdx …(11)
のように行われる。
【0047】
補正係数k1n,k1xは、図16(A)に示すマップから衝突までの時間(接触時間tc)に基づいて検索される。接触時間tcが小さいために横偏差δdの算出誤差が小さいと推定される領域では、補正係数k1n,k1xは1に保持される。接触時間tcが大きいために横偏差δdの算出誤差が大きいと推定される領域では、補正係数k1nは接触時間tcの増加に伴って1から増加するとともに、補正係数k1xは接触時間tcの増加に伴って1から減少する。これにより、横偏差δdの算出誤差が大きい領域で第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxの間の幅を小さくし、不確実な正面衝突回避制御が行われるのを回避することができる。
【0048】
補正係数k2n,k2xは、図16(B)に示すマップから自車Aiと対向車Aoとの相対距離Lに基づいて検索される。相対距離Lが小さいために横偏差δdの算出誤差が小さいと推定される領域では、補正係数k2n,k2xは1に保持される。相対距離Lが大きいために横偏差δdの算出誤差が大きいと推定される領域では、補正係数k2nは相対距離Lの増加に伴って1から増加するとともに、補正係数k2xは相対距離Lの増加に伴って1から減少する。これにより、横偏差δdの算出誤差が大きい領域で第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxの間の幅を小さくし、不確実な正面衝突回避制御が行われるのを回避することができる。
【0049】
補正係数k3n,k3xは、図16(C)に示すマップから自車Aiのヨーレートγiに基づいて検索される。自車Aiのヨーレートγiが0であって横偏差δdの算出誤差が小さいと推定されるときには、補正係数k3n,k3xは1に設定される。自車Aiのヨーレートγiの増加に伴って横偏差δdの算出誤差が増加すると補正係数k3nは1から増加するとともに、補正係数k3xは1から減少する。これにより、横偏差δdの算出誤差が大きい領域で第1接触判定基準値δdnおよび第2接触判定基準値δdxの間の幅を小さくし、不確実な正面衝突回避制御が行われるのを回避することができる。
【0050】
次に、前記ステップS23の「警報制御」の内容を、図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0051】
先ず、ステップS61で衝突情報を受信する。衝突情報とは、接触時間tc(衝突までの時間)、接触位置Pでの自車Aiおよび対向車Aoの走行状態、横偏差δd等である。続くステップS62で一次警報の判断を行い、接触時間tcが例えば4秒未満になると、ステップS63で警報器5を作動させて一次警報を開始する。続いてステップS64で二次警報の判断を行い、接触時間tcが例えば3秒未満になると、ステップS65で警報器5を作動させて二次警報を開始する。一次警報は衝突までの時間的余裕が比較的に大きい場合に実行され、また二次警報は衝突までの時間的余裕が比較的に小さい場合に実行されるもので、その差異をドライバーに認識させるべくブザーの音色等やランプの色を変化させる。ドライバーは警報器5による警報により衝突の危険を認識して自発的な回避操作を行うことができる。
【0052】
次に、前記ステップS24の「回避操舵制御」の内容を、図11のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
先ず、ステップS71で、前記ステップS61と同様に衝突情報を受信した後に、続くステップS72で操舵開始の判断を行い、接触時間tcが前記二次警報の閾値である3秒よりも短い閾値τ0 (ドライバーに操舵開始が早すぎると感じさせない値で、例えば2.2秒)未満になると、ステップS73以降の操舵開始処理に移行する。先ずステップS73で衝突回避のための必要横移動量を算出する。この必要横移動量は、基本的に前記ステップS48で算出した横偏差δdの今回値が充てられるが、誤差を除去するために前回値を用いて平均化処理を行う。
【0054】
先ずステップS74で、自車Aiの車速Viに基づいてドライバーに違和感を与えない目標操舵角δhを求める。図17(A),(B)に示すように、回避運動は自車Aiが対向車Aoを回避した後に自車Aiの元の進路上に復帰するように行われるもので、接触時間tc(閾値τ0 )が経過した時点での横移動量の基準値を、衝突回避の効果と最終的に車線を逸脱しないこととを考慮して例えば2mに設定する。また回避操舵により発生する最大横加速度YGが大き過ぎたり、操舵速度が速過ぎたりしてドライバーに違和感を与えないようにし、且つ操舵開始よりτ0 が経過したときに2mの横移動を行うようにしなければならない。以上のことから本実施例では、例えば最大横加速度YGを0.15G程度に設定し、操舵周期を4秒(0.25Hz)程度に設定する。
【0055】
而して、衝突回避のための目標操舵角δhは、Nをステアリングギア比とし、Ksをスタビリティファクターとして、次式により与えられる。
【0056】
【数3】
Figure 0003923191
【0057】
前記(12)式で与えられる基準操舵角δhで自動操舵することにより、自車の車速に応じてドライバーに違和感を与えない車両挙動変化と操舵速度とを保ち、且つ衝突回避に必要な横移動量を確保できるが、自車Aiおよび対向車Aoの相対角度θの方向が自車Aiから対向車Ao側を向いていると、衝突回避を行なうために不足する場合が考えられる。そこで、前記相対角度θに基づく目標操舵角補正値δ(θ)(図18参照)で前記(12)式の基準操舵角δhを補正する。
【0058】
【数4】
Figure 0003923191
【0059】
続くステップS75で,図19に示すマップに基づいて上記基準操舵角δhの最大値δhxを算出し、ステップS76で基準操舵角δhが最大値δhxを越えていれば、ステップS77で前記最大値δhxで基準操舵角δhの上限値を制限するように補正を行なう。この補正により、基準操舵が横加速度を基に決められるために自車の車速が低い場合に極端に大きな目標操舵角δhが採用されてドライバーに違和感を与えるのを防止することができる。
【0060】
続くステップS78で、覚醒度センサS6 により、ドライバーの覚醒度を高い、普通、低いの3段階のレベルに別けて判別する。ドライバーの覚醒度が高いときはドライバーの自発的な衝突回避操作が期待できるので衝突回避のための自動操舵のレベルを低めに変更し、ドライバーの覚醒度が低いときはドライバーの自発的な衝突回避操作が期待できないので衝突回避のための自動操舵のレベルを高めに変更する。その詳細は後から詳述する。
【0061】
続くステップS79で、前記ステップS73で算出した必要横移動量(すなわち横偏差δd)と、前記ステップS74〜S77で算出した基準操舵角δhにより発生する基準横移動量とを比較する。その結果、前者の必要横移動量(すなわち横偏差δd)よりも後者の基準横移動量が大きい場合には、つまり、基準操舵角δhにより発生する横移動量が衝突回避に必要な必要横移動量よりも大きい場合には、基準操舵角δhを減少方向に補正したものを目標操舵角として出力するか、基準操舵角δhを目標操舵角として出力するタイミングを遅らせる。逆に、前者の必要横移動量(すなわち横偏差δd)よりも後者の基準横移動量が小さい場合には、つまり、基準操舵角δhにより発生する基準横移動量が衝突回避に必要な必要横移動量よりも小さい場合には、基準操舵角δhの補正や出力タイミングの変更は行なわない。言い換えれば、基準操舵角δh以上の操舵を行って車両挙動変化を大きくしたり、基準タイミングより早く操舵を開始することでドライバーに違和感を与えるような変更は行わない。このとき、前記ステップS78で検出したドライバーの覚醒度に応じて基準操舵角δhの補正を行うか、基準操舵角δhのタイミングディレーを行うかの判定基準を持ち替える。
【0062】
図21に示すように、自車Aiの車速Viと、自車Aiおよび対向車Aoの相対速度Vsとをパラメータとするマップにおいて、車速Viおよび相対速度Vsが小さい領域では前記基準操舵角δhの抑制(減少)制御が選択され、車速Viおよび相対速度Vsが大きい領域では前記基準操舵角δhの出力タイミングを遅らせるタイミングディレー制御が選択される。これにより、操舵角が大きくなる低車速時に基準操舵角δhの操舵角抑制制御が選択され、操舵角が小さくなる高車速時にタイミングディレー制御が選択されることになる。
【0063】
更に操舵角抑制制御およびタイミングディレー制御の何れかを選択するための閾値となるラインが、ドライバーの覚醒度に応じて変更される。すなわち、覚醒度が低い場合には前記ラインが右上方向に移動して操舵角抑制制御が選択され易くなり、覚醒度が高い場合には前記ラインが左下方向に移動してタイミングディレー制御が選択され易くなる。その理由は、ドライバーの覚醒度が低い場合には、衝突回避のための自動操舵の開始によって覚醒度が高められる可能性があるため、操舵角抑制制御をタイミングディレー制御に優先して行わせてドライバーの覚醒を促し、逆に覚醒度が高い場合はドライバーが自発的な衝突回避操作を行うことが考えられ、自動操舵と干渉することが予想されるので、タイミングディレー制御を優先させて自動操舵を遅らせる。
【0064】
而して、ステップS79で基準操舵角δhの抑制制御が選択されると、ステップS80で、前記基準操舵角δhを減少方向に補正したものを目標操舵角として出力する。そしてステップS84で、対向車Aoとの衝突を回避すべく、前記目標操舵角に応じて操舵装置11のアクチュエータ17の駆動を制御する。すなわち、図20に示すように、目標操舵角およびステアリング装置11の実操舵角の偏差が入力されたPIコントローラは、前記偏差をゼロに収束させるべくステアリング装置11のアクチュエータ17をフィードバック制御する。
【0065】
一方、前記ステップS79でタイミングディレー制御が選択されると、ステップS81で基準操舵角δhを目標操舵角として出力するタイミングを遅らせ、その分だけ操舵周期を早める。ステップS81で目標操舵角がタイミングと操舵周期とを補正されて出力されると、続くステップS82で衝突の可能性を再確認する。この衝突再確認は、図9のフローチャートに基づいて最新のデータにより行なわれるもので、その結果、衝突の可能性が有ると判定されると、ステップS83で操舵開始のタイミングを判定する。そして操舵開始時刻に達するまでの間は前記衝突再確認を繰り返し、操舵開始時刻に達したときに依然として衝突可能性が有ると判定されていれば、ステップS83で目標操舵角を出力して自動操舵を開始する。
【0066】
図22は、操舵角抑制制御の一例を示すもので、破線は基準操舵角δhをそのまま出力する場合、実線は操舵角抑制制御を行なう場合に対応している。図22(A)において、縦軸の下側ほど自車Aiおよび対向車Aoの車線側への逸脱の程度が大きいことを示している。操舵角抑制制御を行なう場合は行なわない場合に比べて、制御開始初期の自車Aiの対向車線側への逸脱が小さくなっているため、図22(B)に示すように、操舵角抑制制御を行なう場合は行なわない場合に比べて、操舵角の振幅を小さくして自車Aiの横移動を小さくする。操舵角の振幅を小さくする割合は、正面衝突回避制御の操舵自体がそれほど大きな車両挙動を起こす必要がなく(車両挙動の応答が線型領域内)、また操舵角抑制制御の有無に関わらず操舵時間(操舵速度)は変わらないので、回避に必要な横移動量が基準横移動量に比べて減少した割合だけ操舵角を減少させれば、図22(A)に示すように、衝突時刻での横位置および最終的な横位置を基準操舵の場合とほぼ一致させることができる。
【0067】
図23は、タイミングディレー制御の一例を示すもので、破線は基準操舵角δhをそのまま出力する場合、実線はタイミングディレー制御を行なう場合に対応している。タイミングディレー制御では、操舵角の振幅を変化させずに操舵開始タイミングを遅らせることにより横移動量を減少させる。横移動量の大小は操舵角の時間積分値(操舵角波形の内側の面積)に比例するため、前記時間積分値に基づいて操舵開始タイミングを決定することができる。操舵開始タイミングを遅らせると、それに伴って操舵速度も増加するので、横移動の開始は遅れるが横移動の応答性が前記操舵角抑制制御の場合に比べて速くなり、接触位置での横位置や最終的な横位置を基準操舵の場合とほぼ一致させることができる。
【0068】
タイミングディレー制御を行なう場合には、その操舵時間τ1 が、ドライバーに違和感を与えないように予め設定された基準操舵の操舵時間τ0 よりも短くなり、ドライバーに違和感を与える可能性がある。但し、上述したようにタイミングディレー制御は操舵振幅が小さい場合に行なわれるため、単位時間当たりの操舵角変化量は小さくなり、ドライバーに与える違和感も小さくなる。またタイミングディレー制御を実行する際に、横移動量が小さいために操舵時間τ1 が著しく小さくなる場合に備えて、最小操舵時間(例えば3秒)を設定しておき、この最小操舵時間を下回るタイミングディレー制御は行なわずに操舵角抑制による補正を加えても良い。
【0069】
以上のように、衝突回避のための警報を行なったにも拘わらずドライバーが自発的な回避操作を実行しない場合でも、自動操舵を実行して的確な接触回避を図ることができる。また自動操舵の操舵角や操舵タイミングがドライバーに違和感を与えないように制御されるので、自動操舵とドライバーの運転操作との干渉を最小限に抑えることができる。
【0070】
また自動操舵の開始がドライバーにとって早すぎると感じられるような場合に、タイミングディレーを行なうことによりドライバーが受ける違和感を解消することができる。しかもタイミングディレーを実行している間に衝突の可能性が繰り返し判定されるので、誤判定を防止するとともに不要な自動操舵が実行されるのを回避することができる。
【0071】
次に、図24〜図26に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
【0072】
図11に示す第1実施例では、ステップS78の覚醒度補正がステップS76の後あるいはステップS77の後に実行されるが、図24に示す第2実施例では、ステップS78の覚醒度補正がステップS71の衝突情報受信の後に実行される。そして、第2実施例では覚醒度に応じて基準操舵量と基準の操舵開始タイミングとが変更される。
【0073】
図25において、実線はドライバーの覚醒度が高い場合を、破線はドライバーの覚醒度が普通の場合をそれぞれ示している。覚醒度が高い場合の制御開始タイミングは、通常時の衝突時刻のτ0 =2.2秒前に対して、衝突時刻のτ2 =1.7秒前まで遅らされ、それに伴って操舵時間が4秒から3秒に変更されるとともに操舵周波数が0.25Hzから0.33Hzに変更される。そして最終的な横移動量が変化しないように操舵振幅が増加方向に補正され、その結果、発生する横加速度は通常の0.15Gから0.2Gに増加する。覚醒度が高い場合の上記制御は、ドライバーが自発的な回避操作を行なう可能性が高いことを考慮し、操舵開始のタイミングを遅らせて自動操舵との干渉を回避することを狙っている。
【0074】
図26において、実線はドライバーの覚醒度が低い場合を、破線はドライバーの覚醒度が普通の場合をそれぞれ示している。覚醒度が低い場合の制御開始タイミングは、通常時の衝突時刻のτ0 =2.2秒前に対して、衝突時刻のτ3 =3.2秒前まで早められ、それに伴って操舵時間が4秒から6秒に変更されるとともに操舵周波数が0.25Hzから0.17Hzに変更される。そして最終的な横移動量が変化しないように操舵振幅が減少方向に補正され、その結果、発生する横加速度は通常の0.15Gから0.1Gに減少する。覚醒度が低い場合の上記制御は、ドライバーが自発的な回避操作が期待できないことを考慮し、操舵開始のタイミングを早めてドライバーの覚醒度を高めることを狙っている。
【0075】
以上のように、ドライバーの覚醒度に応じて回避操舵制御を変更することにより、より適切な操舵量および操舵タイミングを実現してドライバーの自発的な回避操作との干渉を最小限に抑えることができる。
【0076】
尚、衝突回避のための自動操舵の強さや開始タイミングを変更するのと同様にして、ドライバーに対する警報の強さや開始タイミングを変更することも可能である。
【0077】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0078】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、制御変更手段により、自車の車速および対向車との相対速度が小さいために操舵角が大きくなる場合には操舵角抑制制御を行い、自車の車速および対向車との相対速度が大きいために操舵角が小さくなる場合にはタイミングディレー制御を行うことができる。そしてドライバーの覚醒度が低い場合には、衝突回避のための自動操舵の開始によって覚醒度が高められる可能性があるため、操舵角抑制制御をタイミングディレー制御に優先して行わせてドライバーの覚醒を促すことができ、逆に覚醒度が高い場合はドライバーが自発的な衝突回避操作を行うことが考えられ、自動操舵と干渉することが予想されるので、タイミングディレー制御を優先させて自動操舵を遅らせることができ、これにより操舵制御が早めに開始されるのを防止してドライバーの違和感を解消することができる。
【0079】
また請求項に記載された発明によれば、相対関係算出手段により算出した前記相対関係および予め設定された適正横距離に基づいて自車が対向車と適正にすれ違うための自車の適正進路を設定するとともに、前記相対関係および自車の車速に基づいて自車が対向車に接触する接触予測位置を推定し、この接触予測位置を自車の適正進路と比較して自車および対向車の接触可能性を判定するので、物体検出手段により自車と対向車との相対関係を連続的に検出することなく、物体検出手段で対向車を判別した時点で接触可能性を判定することができる。その結果、自車および対向車の相対速度が大きいために接触までの時間的余裕がない正面衝突を効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 走行安全装置を備えた車両の全体構成図
【図2】 走行安全装置のブロック図
【図3】 操舵装置の斜視図
【図4】 電子制御ユニットの機能の説明図
【図5】 電子制御ユニットの回路構成を示すブロック図
【図6】 メインルーチンのフローチャート
【図7】 正面衝突回避制御ルーチンのフローチャート
【図8】 旋回時衝突回避制御ルーチンのフローチャート
【図9】 正面衝突判断ルーチンのフローチャート
【図10】 警報制御ルーチンのフローチャート
【図11】 回避操舵制御ルーチンのフローチャート
【図12】 旋回時衝突回避制御の内容を示す図
【図13】 横偏差δdの算出手法の説明図(衝突が発生する場合)
【図14】 横偏差δdの算出手法の説明図(自車が対向車の左側を通過する場合)
【図15】 横偏差δdの算出手法の説明図(自車が対向車の右側を通過する場合)
【図16】 横偏差δdの補正係数を検索するマップ
【図17】 衝突回避のための目標操舵角の算出手法の説明図
【図18】 目標操舵角補正値δ(θ)を検索するマップ
【図19】 最大操舵角を検索するマップ
【図20】 アクチュエータの制御系のブロック図
【図21】 操舵角の抑制制御およびタイミングディレー制御の選択基準の説明図
【図22】 操舵角の抑制制御の説明図
【図23】 操舵角のタイミングディレー制御の説明図
【図24】 本発明の第2実施例に係る、前記図11に対応するフローチャート
【図25】 覚醒度が高い場合の制御の説明図
【図26】 覚醒度が低い場合の制御の説明図
【符号の説明】
Ai 自車
Ao 対向車
da 適正横距離
L 相対距離
M1 相対関係算出手段
M2 接触可能性判定手段
M3 操舵制御手段
M4 制御変更手段
M5 適正進路設定手段
M6 接触位置予測手段
P 接触予測位置
R 適正進路
5 車速センサ(車速検出手段)
6 覚醒度センサ(覚醒度検出手段)
Vi 自車の車速
Vs 相対速度
θ 相対角度(相対位置)
3 レーダー装置(物体検出手段)
11 操舵装置

Claims (2)

  1. 自車(Ai)の進行方向に存在する物体を検出する物体検出手段(3)と、
    自車(Ai)の車速(Vi)を検出する車速検出手段(S5 )と、
    物体検出手段(3)による検出結果および車速検出手段(S5 )で検出した自車(Ai)の車速(Vi)に基づいて対向車(Ao)を判別するとともに、自車(Ai)と対向車(Ao)との相対位置(θ)、相対距離(L)および相対速度(Vs)よりなる相対関係を算出する相対関係算出手段(M1)と、
    相対関係算出手段(M1)により算出した前記相対関係に基づいて自車(Ai)および対向車(Ao)の接触の可能性を判定する接触可能性判定手段(M2)と、
    接触可能性判定手段(M2)により接触の可能性があると判定されたときに接触を回避すべく自車(Ai)の操舵装置(11)を自動的に操舵する操舵制御手段(M3)と、
    ドライバーの覚醒度を検出する覚醒度検出手段(S6 )と、
    自車(Ai)の車速(Vi)および対向車(Ao)との相対速度(Vs)が小さい場合に操舵制御手段(M3)による操舵角抑制制御を行い、自車(Ai)の車速(Vi)および対向車(Ao)との相対速度(Vs)が大きい場合に操舵制御手段(M3)による操舵制御の開始を遅らせるタイミングディレー制御を行う制御変更手段(M4)とを備え、
    前記制御変更手段(M4)は、前記覚醒度検出手段(S 6 )により検出されたドライバーの覚醒度が低いときに前記操舵角抑制制御および前記タイミングディレー制御の何れかを選択するための閾値を該操舵角抑制制御が選択され易くなるように変更し、前記覚醒度が高いときに前記閾値を該タイミングディレー制御が選択され易くなるように変更することを特徴とする車両の走行安全装置
  2. 相対関係算出手段(M1)により算出した前記相対関係および予め設定された適正横距離(da)に基づいて自車(Ai)が対向車(Ao)と適正にすれ違うための自車(Ai)の適正進路(R)を設定する適正進路設定手段(M5)と、
    自車(Ai)が対向車(Ao)に接触する接触予測位置(P)を前記相対関係および自車(Ai)の車速(Vi)に基づいて予測する接触位置予測手段(M6)と、
    を備えてなり、前記接触可能性判定手段(M2)は、前記接触予測位置(P)を前記適正進路(R)と比較して自車(Ai)および対向車(Ao)の接触可能性を判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
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