JP3921730B2 - カラーフィルター用光重合性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカラーテレビ、液晶表示素子、固体撮像素子、カメラ等に使用される光学的カラーフィルターの製造で使用されるカラーフィルター用光重合性組成物に係り、詳しくは、高遮光性でありながら高感度で現像性に優れたブラックマトリックス製造に適したカラーフィルター用光重合性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーフィルターは、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に黒色のマトリックスを形成し、続いて、赤、緑、青等の3種以上の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成したものである。
パターンサイズはカラーフィルターの用途並びにそれぞれの色により異なるが5〜700μ程度である。また、重ね合わせの位置精度は数μ〜数十μであり、寸法精度の高い微細加工技術により製造されている。
【0003】
カラーフィルターの代表的な製造方法としては、染色法、印刷法、顔料分散法、電着法等がある。これらのうち、特に、色材料を含有する光重合性組成物を、透明基板上に塗布し、画像露光、現像、必要により硬化を繰り返すことでカラーフィルター画像を形成する顔料分散法は、カラーフィルター画素の位置、膜厚等の精度が高く、耐光性・耐熱性等の耐久性に優れ、ピンホール等の欠陥が少ないため、広く採用されている。
【0004】
ブラックマトリックスは赤、緑、青の色パターンの間に格子状、ストライプ状またはモザイク状に配置するのが一般的であり、各色間の混色抑制によるコントラスト向上あるいは光漏れによるTFTトの誤動作を防ぐ役割を果たしている。このため、ブラックマトリックスには高い遮光性が要求される。
従来、ブラックマトリクスはクロム等の金属膜で形成する方法が一般的であった。この手法は透明基板上にクロム等の金属を蒸着しフォトリソ工程を経てクロム層をエッチング処理するものであるため、薄い膜厚で高遮光性が高精度で得られる。その反面、製造工程が長く且つ生産性の低い手法であり高コスト、また、エッチング処理の廃液などによる環境問題が生じる等の問題を抱えている。
【0005】
このため、遮光性の顔料、染料を分散させた感光性樹脂で低コスト、無公害のブラックマトリックス(樹脂ブラックマトリックス)を形成する手法が精力的に研究されている。しかしながら、樹脂ブラックマトリックスは後述するような問題を抱えているため、いまだ実用化できていないのが現状である。
樹脂ブラックマトリクスにおいて、クロム等の金属膜によるブラックマトリクスと同等の遮光性(光学濃度)を発現させるためには、遮光性顔料、染料の含有量を多くするか、あるいは、膜厚を厚くする必要がある。
【0006】
膜厚を厚くする方法においては、ブラックマトリックスリクスの凹凸の影響を受けて、その上に形成するRGBの着色画素の平坦性が損なわれる。このため、液晶セルギャップの不均一化あるいは液晶の配向の乱れを発生させ表示能力の低下を起こす。また、カラーフィルタ上に設ける透明電極ITO膜の断線が発生する等の問題も生じる。
【0007】
また、遮光性顔料、染料の含有量を多くする方法においては、感光性樹脂(ブラックレジスト)の感度、現像性、解像性、密着性等が悪化する問題があり、生産性の低下のみならずカラーフィルターに要求される精度、信頼性が得られなくなる。
すなわち、薄膜、高遮光性の条件下で感度、現像性、解像性、密着性を発揮できる感光材料が実現できていないため樹脂ブラックマトリクスの実用化を阻んでいる。
【0008】
従来、一般的感光性樹脂、あるいは、カラーフィルター用の着色感光組成物等一定の光透過を有する感光樹脂においては感度、現像性、解像性、密着性等の性能を改善する手法について知られているところである。
例えば、特開平1−152449、特開平1−254918、特開平2−153353、特開平2−804では顔料を分散させたカラーフィルター用着色組成物としてバインダー樹脂、多官能アクリルモノマー、開始剤としてトリアジン化合物からなる組成物を、また、特開平6−75372、6−75373では同様な組成において開始剤がビイミダゾールであるものを例示しているが、空気中で露光した場合には酸素による重合阻害を受けるため、実用的な感度とするためにはポリビニルアルコール等の酸素遮断膜を設ける必要があり、製造工程が複雑となる欠点を有している。
【0009】
上記欠点である酸素による重合を低減する手法として特開平4−340965では重合性化合物を多量に含有する着色感光性組成物を提案している。しかしながら、重合性化合物が60%以上と多く、着色成分配合量に制約を受け樹脂ブラックマトリックスのように多量の着色剤が必要な組成に適用するのは困難である。
特開平6−27662、特公平3−36212ではアミノ酸誘導体あるいはリン系化合物を添加することによる重合阻害低減方法を提案しているが、改良効果が十分でなかったり、臭気、安定性等の問題があり実用的ではない。
【0010】
また、解像性、現像性を改良する手法としては、例えば、特開平5−19467に例示の側鎖二重結合を有するバインダー樹脂、特開平6−175362に例示の分子量分布を制御したバインダー樹脂、特開平5−281734に例示の多官能チオールの配合、特開平4−369653に例示の有機カルボン酸の添加等がある。これらは全てカラーフィルターのRGBの着色画素部を形成することを目的とした組成物であるため、カーボンブラック等の遮光性顔料を配合した場合には必要とする解像性、現像性を得ることができない。
【0011】
樹脂ブラックマトリックスのように光全波長領域において遮光能力が要求される場合では、1)露光部分と未露光部分における架橋密度の差をつけるのが著しく困難なこと、2)露光された部分でも膜厚方向に対する架橋密度の差が発生すること、つまり、光照射面で十分硬化しても、基底面では硬化しないこと、3)現像液に不溶な多量の黒色色材を配合するため現像性の低下が著しいこと等、これらが著しく感光特性を付与する上で障害となっている。
【0012】
特に、1)と2)の現象は相反するものであり、露光部分がより硬化する組成にする程、膜厚方向での硬化密度差が大となるため解像力低下に繋がる。また、露光部/未露光部の架橋密度差並びに露光部の硬化密度を均一化できないと溶解力の強い現像液の使用も困難となるため現像性の改良も困難となる。
従来知られているブラックマトリックス形成用感光性組成物としては、このような状況を避けたものであり、例えば、特開平6−51499、特開平6−3518、に記載のように、従来の金属ブラックマトリクスと同程度遮光できる樹脂ブラックマトリクスを形成するのではなく、ある程度光透過させて感光能力をもたせたものであり遮光能力は著しく低く実用的ではなかった。このため、特開平8−44050のように、高膜厚、低遮光性の樹脂ブラックマトリックスを一旦形成したあとキュアー工程における膜収縮により、薄膜で高遮光度をもった樹脂ブラックマトリックスも提案もなされているが、工程が複雑になること、膜収縮時のひずみ蓄積により密着性が低下する等の問題があり実用化が困難である。
【0013】
このように、遮光という、本来、光反応と相反する条件下において光反応を起こすという一見矛盾する課題に対して従来の技術は全く回答を持たなかったこと、また、多量の不溶性色材が配合された感光樹脂に対し現像性をどのよう付与するのか十分な技術的示唆がなかったため樹脂ブラックマトリックスの実現は困難であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題点を解決し薄膜、高遮光性を有するパターンをフォトリソグラフィー法で容易に形成できる十分な感度、解像性、現像性、耐久性をもつレジスト材料を提供するものであり、カラーフィルターの樹脂ブラックマトリックスを高精度、低コストで製造可能とするものである。また、ブラックマトリックスを樹脂化することによりカラーフィルターの高画質化、無公害化をはかるものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を進めた結果、黒色色材、シランカップリング剤及び光重合開始系として少なくとも多官能チオールを配合した光重合性組成物がかかる目的を解決しえることを見出し発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は、(a)黒色色材、(b)シランカップリング剤及び(c)光重合開始系として少なくとも多官能チオール化合物を含有するカラーフィルター用光重合性組成物であって、シランカップリング剤がエポキシシラン及び/又は(メタ)アクリルシランであることを特徴とするカラーフィルター用光重合性組成物に存する。
【0016】
【発明の実施形態】
本発明は必須成分として黒色色材、多官能チオール及びシランカップリング剤を配合するが、光重合組成物とするため通常下記に挙げるバインダー樹脂、光開始系、エチレン性不飽和重結合を少なくとも1個有する化合物、溶剤を配合するのが望ましい。
【0017】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、相溶性、皮膜形成性、現像性、接着性を向上させる結合剤としての機能を奏するものである。このような作用を有するものとして、有機高分子物質が挙げられる。
有機高分子物質としては特に制限はされないが、現像性、基板への密着性、黒色色材との相容性の観点からカルボキシル基を有する高分子物質が好ましい。このような樹脂は、例えば、2重結合とカルボキシル基を併せ有する重合性モノマーの単独あるいは他の性質を有する重合性モノマーとの共重合により得ることができる。
【0018】
また、本発明においては、光線遮光材料であるブラックマトリクスを高感度かつ高精細の画像形成を行い、形成されたマトリクスの皮膜強度を向上させるため、有機高分子物質が側鎖にエチレン性不飽和二重結合を持つ有機高分子物質であるのが好ましく、なかでも、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とヒドロキシル基を有する共重合体がさらに好ましく用いられる。
このような共重合体は、例えば、カルボキシル基を有するスチレン系共重合体、アクリル系共重合体等の高分子に種々の反応を用い上記機能性官能基を導入することにより得られる。
【0019】
本発明に係る有機高分子物質の具体例としては、スチレン、α−メチル−スチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、けいひ酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和基含有カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレートベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のエステル;アクリロニトリル;酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の酸ビニル等の中から少なくとも1種の不飽和基含有カルボン酸をモノマーとして選択した共重合体に通常の高分子反応等により側鎖にエチレン性二重結合を導入することによって容易に得ることができる。
【0020】
側鎖にエチレン性不飽和二重結合を導入する高分子反応は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合、ウレタン結合等の有機結合を起こす反応等を挙げることができる。
導入反応の一例としては、前記有機高分子共重合体の、カルボン酸基及び/またヒドロキシル基の一部又は全部を、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、下記構造(I)の脂環式エポキシ基含有不飽和化合物、等の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物との反応を挙げることができる。この反応は穏和な条件で高収率で行うことができるため、製造が容易且つ低コストであり望ましい。特に、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物は導入反応が容易であり、皮膜強度、現像性、顔料分散性等レジスト特性面において優れた物性を有するため好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル又はメタクリル」を示す。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明において、特に好ましい有機高分子物質としては、基板への接着性を高める目的で、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルスルホアミド等のフェニル基を有する共重合モノマーを10〜90モル%、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは30〜70モル%の割合で含有し、その他(メタ)アクリル酸を2〜50重量%、好ましくは5〜50重量%の割合で含有する共重合体、或いは、全共重合モノマーに対して2〜50モル%、好ましくは5〜40モル%のエポキシ基含有不飽和化合物が付加された反応物が望ましい。
【0023】
このような有機高分子物質の分子量としては、通常重量平均分子量(Mw)で1,000〜1000,000、好ましくは2,000〜300,000、より好ましくは3,000〜100,000の範囲である。有機高分子物質のMwがこの範囲より著しく低いと、現像時に画線部分の膜ベリが生じ、逆に有機高分子物質のMwが著しく高いと現像時に非画線部の抜け性不良を生じる。
【0024】
さらにレジストとしての性能及びカラーフィルタとしての性能を向上させる目的で他の有機・無機高分子を加えても良い。これらの有機・無機高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとのポリエーテル及び共重合ポリエーテル、ポリビニルアルキルエーテル、可溶性ナイロン等のポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリテトラエチレンアジペート、ポリエチレンフマレート等のポリエステル、アセチルセルロース及びポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0025】
(エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物)
エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物(以下「エチレン性化合物」と称す。)は、後述する光重合開始剤系から発生するラジカルにより重合反応が誘起される化合物である。エチレン性化合物としては、単量体又は、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマー、マクロマーのいずれでも良い。
なお、本発明における単量体の意味するところは、所謂高分子物質に相対する概念であり、従って、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーをも包含するものである。
【0026】
エチレン性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物により得られるエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物と不飽和カルボン酸とのエステル化反応、脂肪族ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物と不飽和カルボン酸とのエステル化反応、カプロラクトン変性多価アルコールと不飽和カルボン酸とのエステル、多価アルコールと多価イソシアナートと不飽和カルボン酸との反応物、スチリル末端化合物、含リン酸不飽和化合物、ポリエポキシと不飽和カルボン酸との付加物等が挙げられる。
【0027】
これらのうち、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては具体的には、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステル、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロトネートに代えたクロトン酸エステルもしくはマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0028】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルとしては必ずしも単一物では無いが代表的な具体例としては、アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0029】
その他本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物なども有用である。
なお、前記した主鎖にエチレン性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、例えば、不飽和二価カルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、不飽和二価カルボン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド等がある。
【0030】
また、側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーとしては、側鎖に不飽和結合を持つ二価カルボン酸、例えばイタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸等とジヒドロキシ又はジアミン化合物との縮合化合物がある。また、側鎖にヒドロキシ基やハロゲン化メチル基の如き反応活性を有する官能基をもつ化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエピクロルヒドリン等とアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸との高分子反応により得られるオリゴマーも好適に使用し得る。
【0031】
以上挙げたエチレン性化合物の中で最も好ましいものは同一分子内にエチレン性不飽和基が2個以上、さらに好ましくは3個以上有する有するものである。また、不飽和基としては好ましくは(メタ)アクリル基、さらに好ましくはアクリル基を有するものである。このような化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0032】
(光重合開始剤系)
本発明の光重合開始系は少なくとも多官能チオール化合物を含有することが一つの特徴である。
多官能チオールを開始系の一部として使用することにより、本発明の主眼とする黒色色材を多量に含有したカラーフィルタ用光重合性の組成物において、言い換えると、光の透過性が大幅に制限されたカラーフィルタ用光重合性の組成物において、メカニズムの詳細は不明であるが解像度等の画像形成性を損なうことなく顕著な感度向上を発揮できる。通常、光硬化性レジストにおいては、光の照射された部分のみ重合反応が進み、未照射の部分は重合反応が進まないことを利用して画像を形成する。しかし、本発明のように遮光性顔料(本発明の場合、特には、カーボンブラックなどである)を多量に含む系においては、光照射された部分においても、その光照射された面から膜厚に比例し光透過量は減少し(Lambert-Beerの法則)、裏面への光透過量は、表面の1%〜0.01%以下となり、裏面においてはほとんど重合反応が誘起されていないと思われる。しかしながら、本発明の多官能チオールを添加させた光重合開始剤系を用いた場合、光重合反応が基板との界面であるレジスト膜裏面まで進行し硬化膜を形成するとともに、レジストと基板との密着性を向上させ高感度と画像形成性を達成できる。
【0033】
本発明に使用される多官能チオール化合物は同一分子内に二個以上のメルカプト(SH)基を有するものである。特にSH基がメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。具体的に例示するならば、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。こららの多官能チオールは1種または複数組み合わせて使用することが可能である。
【0034】
多官能チオールの配合量は開始系として用いることから溶剤を除いた全固形分に対して0.01〜10重量%、より好ましくは0.02〜7重量%、さらに好ましくは0.03〜5重量%の範囲で添加するのが望ましい。
配合比率が上記範囲からはずれると感光液の安定性、臭気、感度、解像性、現像性、密着性等が悪化するようになる。低添加量では感度、密着性が低下し、高添加量では安定性、臭気、解像性、現像性が低下する。
【0035】
このような悪化要因について確かなことは不明であるが、多官能チオールがラジカルまたはイオン的に炭素−炭素2重結合にanti-Markownikoff付加する、つまり、モノマー的挙動もとりうる化合物であることと関連するものと思われる。すなわち、モノマーとしての機能は前述した望ましいアクリルモノマーより低いため、通常モノマーと同じような添加量となるとアクリルモノマーの機能を阻害することになるため、上述のように開始剤的に少量添加することにより高機能を発揮すると考えられる。
【0036】
本発明の光重合開始剤は、活性光線によりエチレン性不飽和二重結合を重合させる化合物を更に含有する複合開始系であるのが好ましい。
活性光線によりエチレン性不飽和二重結合を重合させる化合物としては例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、等のハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、2−(2′−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2′−クロロフェニル)−4,5−ビス(3′−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2′−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2′−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4′−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等のイミダゾール誘導体、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4′−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、9−フェニルアクリジン、9−(p−メトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体、9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等のチタノセン誘導体等が挙げられる。
【0037】
これらの化合物の中でビイミダゾール化合物、チタノセン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物が特に多官能チオールとの組み合わせに効果的であり感度、解像性、現像性、密着性に優れた性能を示すため好ましい。
上記活性光線によりエチレン性不飽和二重結合を重合させる化合物の配合量は全固型分に対して0.03〜5重量%の範囲で添加するのが好ましい。
【0038】
また、本発明の光開始系には上記成分以外にさらに増感色素を加えることもできる。増感色素の添加により感光波長の広域化、さらなる高感度化を達成することができるため添加するのは好ましい。このような増感色素としては例えば特開平3−239703号公報、特開平5−289335号公報に記載の複素環を有するクマリン化合物、特開昭63−221110号公報に記載されている3−ケトクマリン化合物、特開平4−221958号公報、特開平4−219756号公報に記載のキサンテン色素、特開平6−19240号公報に記載のピロメテン色素、特開昭47−2528号公報、特開昭54−155292号公報、特開昭56−166154号公報、特開昭59−56403号公報に記載の(p−ジアルキルアミノベンジリデン)ケトン、スチリル系色素、特願平5−83588号に記載のジュロリジル基を有する増感色素、特願平7−10109記載のジアミノベンゼン化合物等を挙げることができる。
【0039】
これらの増感色素のなかで特に好ましいのはアミノ基及含有増感色素であり、より具体的には、アミノ基及びフェニル基を同一分子内に有する化合物である。具体的に例示するならば、例えば、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔4,5〕ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔6,7〕ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、2−(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、2−(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジンなどのp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等を挙げることができる。
【0040】
(色材料)
黒色色材は単色で黒色の色材の単独もしくは複数の使用または、赤、緑、青色等の混合による黒色色材が使用可能である。また、これら色材は無機または有機の顔料、染料の中から適宜選択することができる。
混合使用可能な色材の具体例としてはビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッド7B4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)、リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6)、リオノーゲンレッドGD(ピグメントレッド168)、リオノールグリーン2YS(ピグメントグリーン36)等が挙げられる(なお、上記の( )内の数字は、カラーインデックス(C.I.)を意味する)。
【0041】
また、さらに他の混合使用可能な顔料についてC.I.ナンバーにて示すと、例えば、C.I.黄色顔料20,24,86,93,109,110,117,125,137,138,147,148,153,154,166、C.I.オレンヂ顔料36,43,51,55,59,61、C.I.赤色顔料9,97,122,123,149,168,177,180,192,215,216,217,220,223,224,226,227,228,240、C.I.バイオレット顔料19,23,29,30,37,40,50、C.I.青色顔料15,15:1,15:4,22,60,64、C.I.緑色顔料7、C.I.ブラウン顔料23,25,26等を挙げることができる。
【0042】
また、単独使用可能な黒色色材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。
これらの中で、特にカーボンブラックが遮光率、画像特性の観点から好ましい。カーボンブラックの例としては、以下のようなカーボンブラックが挙げられる。
【0043】
三菱化学社製:MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、MA230、#52、#50、#47、#45、#2700、#2650、#2200、#1000、#990、#900
デグサ社製:Printex95、プリンテックス90、Printex85、Printex75、Printex55、Printex45、Printex40、Printex30、Printex3、PrintexA、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack350、SpecialBlack250、SpecialBlack100
【0044】
キャボット社製:Monarch460、Monarch430、Monarch280、Monarch120、Monarch800、Monarch4630、REGAL99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、BLACK PEARLS480、PEARLS130
コロンビヤン カーボン社製:RAVEN11、RAVEN15、RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040
なお、上記のカーボンブラックは、他の黒色または有色の無機、有機顔料と併用しても良い。他の顔料は、カーボンブラックより遮光性または画像特性が低いため自ずと混合比率は制限される。
【0045】
(シランカップリング剤)
本発明で使用されるシランカップリング剤は分子中に2個以上の異なる反応基を有する珪素含有化合物である。即ち、ガラス等の無機材料に化学結合する反応基と有機材料に化学結合する反応基を有する珪素化合物である。ガラス等の無機材料と化学結合する反応基としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられ、有機材料と化学結合する反応基としてはビニル基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基が挙げられる。
【0046】
具体的に例示するならば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、等のエポキシシラン類が挙げられる。これらの(メタ)アクリルシラン類及びエポキシシラン類は感光液の中での安定性が高く、且つ、感光性組成物の現像性、解像性等も特に良好である。また、カラーフィルターを形成した場合の耐久性向上効果も高いので好ましい。
【0047】
(溶剤)
本発明において、溶剤としては前述の各成分を溶解・分散させるものであれば特に制限はないが、具体的に、ジイソプロピルエーテル、ミネラルスピリット、n−ペンタン、アミルエーテル、エチルカプリレート、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、イソプレン、エチルイソブチルエーテル、ブチルステアレート、n−オクタン、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、アプコシンナー、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキセン、メチルノニルケトン、プロピルエーテル、ドデカン、Socal solvent No.1およびNo.2、アミルホルメート、ジヘキシルエーテル、ジイソプロピルケトン、ソルベッソ#150、酢酸ブチル(n、sec、t)、ヘキセン、シェル TS28 ソルベント、ブチルクロライド、エチルアミルケトン、エチルベンゾネート、アミルクロライド、エチレングリコールジエチルエーテル、エチルオルソホルメート、メトキシメチルペンタノン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソブチレート、ベンゾニトリル、エチルプロピオネート、メチルセロソルブアセテート、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピルアセテート、アミルアセテート、アミルホルメート、ビシクロヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジペンテン、メトキシメチルペンタノール、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、プロピルプロピオネート、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、カルビトール、シクロヘキサノン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールアセテート、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の有機溶剤が挙げられる。
【0048】
溶剤は沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点をもつものである。これらの溶剤は単独もしくは混合して使用される。
本発明のカラーフィルター用光重合性組成物の各構成要素の含有量は、溶剤及び黒色色材を除いた固形分に対して、バインダー樹脂の配合量は0〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物の配合量は0〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%、多官能チオール化合物を含有する光重合開始剤系の配合量は0.1〜40重量%、特に0.5〜30重量%、とりわけ0.5〜20重量%とするのが好ましい。なお、多官能チオールの配合量は前述した通りである。シランカップリング剤の配合量は0.05〜15重量%の範囲が好ましい。黒色色材料配合量は、溶剤を除いた光重合性組成物中の全固形分に対して20〜80重量%、特に30〜70重量%の範囲とするのが好ましい。また、特に黒色顔料としてカーボンブラックを用いるときは、膜厚1μmにおける遮光率が3.0、さらには3.5以上の高遮光率のブラックマトリクス形成させるために前記カーボンブラックの配合量は、光重合性組成物中の全固形分に対して30〜80重量%、好ましくは35〜75重量%、さらに好ましくは40〜70重量%の範囲とするのが好ましい。
【0049】
また、本発明の光重合性組成物は、これらの溶剤を用いて、固形分濃度が5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲となるように調液するのが望ましい。
なお、本発明では以上説明した成分以外に例えばF系界面活性剤等の塗布性改良剤、顔料誘導体、界面活性剤、高分子等の顔料分散剤、感光液の安定化をはかるための重合禁止剤等の成分を好適に添加することができる。
【0050】
次に本発明のカラーフィルター用光重合性組成物の製造方法について説明する。本発明においては、通常黒色色材はあらかじめペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いて分散処理するのが好ましい。分散処理により黒色色材が微粒子化されるためレジストの遮光能力向上及び塗布特性の向上が達成される。
【0051】
分散処理においては黒色色材と溶剤または分散機能を有するバインダー樹脂、あるいは分散剤をさらに併用した系にて処理するのが好ましい。特に高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。また、レジスト液として配合する全成分を混合した液での分散処理は、分散時に生じる発熱のため高反応性の成分が変性するおそれがある。
【0052】
サンドグラインダーで分散させる場合には、0.1から数ミリ径のガラスビーズ又はジルコニアビーズが好ましく用いられる。分散させる条件は、通常、温度は0℃から100℃であり、好ましくは、室温から80℃の範囲である。分散時間はインキの組成(黒色色材、溶剤、分散剤)及びサンドグラインダーの装置サイズ等により適正時間が異なるため適宜調節する。
【0053】
次に上記分散処理により得られた黒色インキとレジスト成分として必要な上記の他の成分を添加、混合し均一な溶液とする。製造工程においては微細なゴミが感光液に混じることが多いため、得られたレジスト感光液はフィルター等により濾過処理するのが望ましい。
続いて、本発明のカラーフィルター用光重合性組成物を用いたカラーフィルターの製造方法について説明する。
【0054】
まず、透明基板上に、本発明の遮光膜用光重合性組成物をスピナー,ワイヤーバー,フローコーター,ダイコーター,ロールコーター,スプレー等の塗布装置により塗布して乾燥した後、該試料の上にフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光,現像,必要に応じて熱硬化或いは光硬化により遮光用ブラックマトリクス画像を形成させ、さらにこの操作をRGB3色について各々繰り返し、カラーフィルター画像を形成させる。
【0055】
なお、本発明の光重合性組成物を用いてカラーフィルターの画素を形成する場合には、非常に高感度、高解像力であるため、ポリビニルアルコール等の酸素遮断層を設けることなしに露光、現像して画像を形成することが可能である。
ここで用いる透明基板は、カラーフィルター用の透明基板であり、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンの熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート、或いは各種ガラス板等を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板、耐熱性プラスチックが好ましく用いられる。
【0056】
このような透明基板には、表面の接着性等の物性を改良するために、あらかじめ、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤やウレタンポリマー等の各種ポリマーの薄膜処理等を行うこともできる。
塗布方法は特に限定されないが、塗布、乾燥後の樹脂ブラックマトリックスの膜厚が0.1〜2μ、好ましくは0.1〜1.5μ、さらに好ましくは0.1〜1μの範囲とするのが良い。
【0057】
乾燥においてはホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いることができ、好ましい乾燥条件は40〜150℃、乾燥時間は10秒〜60分の範囲である。
また、露光に用いる光源は、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。
特定の照射光の波長のみを使用する場合には光学フィルターを利用することもできる。
【0058】
現像処理は、未露光部のレジスト膜を溶解させる能力のある溶剤であれば特に制限は受けない。例えばアセトン、塩化メチレン、トリクレン、シクロヘキサノン等の有機溶剤を使用することができる。しかしながら、有機溶剤は環境汚染、人体に対する有害性、火災危険性などをもつものが多いため、このような危険性の無いアルカリ現像液を使用するの方が好ましい。このようなアルカリ現像液として、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機のアルカリ剤、或いはジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩等の有機のアルカリ剤を含有した水溶液が挙げられる。
アルカリ現像液には、必要に応じ、界面活性剤、水溶性の有機溶剤、水酸基又はカルボン酸基を有する低分子化合物等を含有させることもできる。特に、界面活性剤は現像性、解像性、地汚れなどに対して改良効果をもつものが多いため添加するのは好ましい。
【0059】
例えば、現像液用の界面活性剤としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウム基、ベンゼンスルホン酸ナトリウム基を有するアニオン性界面活性剤、ポリアルキレンオキシ基を有するノニオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム基を有するカチオン性界面活性剤等を挙げることができる。
現像処理方法については特に制限は無いが、通常、10〜50℃、好ましくは15〜45℃の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法により行われる。
【0060】
【実施例】
以下実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
合成例−1
トリレンジイソシアネートの三量体(三菱化学(株)製マイテックGP750A、樹脂固形分50wt%、酢酸ブチル溶液)32gと触媒としてジブチルチンジラウレート0.02gをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)47gで希釈溶解した。攪拌下に片末端がメトキシ基となっている分子量1,000のポリエチレングリコール(日本油脂(株)製、ユニオックスM−1000)14.4gと分子量1,000のポリプロピレングリコール(三洋化成工業(株)製、サンニックスPP−1000)9.6gと混合物を滴下した後、70℃でさらに3時間反応させた。次に、N,N−ジメチルアミノ−1、3−プロパンジアミン1gを加え、40℃でさらに1時間反応させた。
このようにして得られた分散樹脂を含有する溶液のアミン価を中和滴定によりもとめたところ14mgKOH/gであった。また樹脂含有量をドライアップ法(150℃で30分間、ホットプレート溶剤を除去し重量変化量により樹脂濃度を算出)により求めたところ樹脂含有量は40wt%であった。)
【0062】
合成例−2
酸価200、分子量5,000のスチレン・アクリル酸樹脂20g、p−メトキシフェノール0.2g、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40gをフラスコに仕込み、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート7.6gを滴下し100℃の温度で30時間反応させた。反応液を水に再沈殿、乾燥させて樹脂を得た。KOHによる中和滴定を行ったところ樹脂の酸価は80であった。
【0063】
実施例1〜11および比較例1〜7
カーボンブラックの分散
カーボンブラックMA−220(三菱化学社製)50重量部、合成例−1に示した分散樹脂を固形分として5重量部の割合で固形分濃度が50wt%となるようにPGMEAを加えた。分散液の重量は50gであった。これを攪拌機によりよく攪拌しプレミキシングを行った。
次に、ペイントシェーカーにより25〜45℃の範囲で6時間分散処理を行った。ビーズは0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液と同じ重量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離した。
【0064】
レジスト液の調合
上述したカーボンブラック分散インキを用いて固形分として下記の配合割合となるように各成分を加えスターラーにより攪拌、溶解させ、ブラックレジスト感光液を調整した。
1)レジストの組成
【0065】
【表1】
顔料
カーボンブラック MA−220 50g
多官能チオール
表−1に記載
シランカップリング剤
表−1に記載
バインダー樹脂(合成例−2で合成) 25g
アクリルモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15g
光重合開始剤系(表−1に記載) 全量で4g
溶剤
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 300g
高分子分散剤(合成例−1) 5g
【0066】
2)レジストの評価
評価条件−1
ブラックレジスト感光液をスピンコーターにてガラス基板(7059、コーニング社製)に塗布し、ホットプレートで80℃、1分間乾燥した。乾燥後のレジストの膜厚を触針式膜厚計(α−ステップ、テンコール社製)で測定したところ1μであった。
次に、このサンプルをマスクを通して高圧水銀灯で露光量を変えて像露光した。温度25℃、濃度0.05%の水酸化カリウム水溶液に1分間浸漬現像しレジストパターンを得た。
【0067】
1.感度
20μのマスクパターンを寸法通り形成できる露光量(適正露光量)をもって感度とした。すなわち、露光量の少ないレジストは低露光量で画像形成が可能であるため高感度であることを示す。
【0068】
2.解像力
20μのマスクパターンを忠実に再現する露光量における解像可能なレジスト最小パターン寸法を200倍の倍率で顕微鏡観察した。最小パターン寸法が10μ以下を解像力○、10μを超えるものを×とした。
【0069】
3.遮光性
画線部の光学濃度をマクベス反射濃度計 TR927(コルモルグン社製)(OD)で測定した。なお、OD値は遮光能力を示す数値であり数値が大きい程高遮光性であることを示す。
【0070】
4.密着性
セロテープ試験(セロテープをレジストパターン上に貼り付けた後セロテープを引き剥がす)により密着性を評価した。レジストパターンが剥離しないものを○、剥離のみられるものを×とした。
評価条件−2
評価条件−1の適正露光量に固定し、現像時間を可変にした以外の条件は評価条件−1にあわせてレジストの画像形成を行い下記による評価基準に基づいて現像ラチチュード及び耐久性を求めた。
【0071】
5.現像ラチチュード
マスク寸法20μにあたるレジストパターンが20±1μの幅で形成できる現像時間の幅をもって現像ラチチュードとした。すなわち、現像時間の幅が大きい程許容できる現像幅が大きいことを示す。
【0072】
6.耐久性評価
パターニングした20μのパターンサンプルを200℃、10分間熱硬化した後2気圧、120℃の水蒸気雰囲気下に2時間暴露し、4.と同様にしてセロテープ試験を行った。レジストパターンに剥離のみられないものを耐久性○、みられるものを×とした。
なお、結果は表−1に示す。尚、実施例1〜11のブラックレジスト感光液を使用してガラス基板上にブラックマトリックスを形成し、次いで赤、緑、青の各画素を形成することにより遮光性に優れたブラックマトリックスを有するカラーフィルターを製造できた。
【0073】
【表2】
【0074】
【0075】
【発明の効果】
本発明カラーフィルター用レジスト組成物は、薄膜において高遮光性でありながら感度、現像性、解像性、密着性、耐久性に優れるため、低コストで高品質の樹脂ブラックマトリックスを形成することができる。また、現像ラチチュードも広いため、生産管理も容易である。
本発明の樹脂ブラックマトリクスを用いたカラーフィルターは精度、平坦性、耐久性において優れるため、従来以上に液晶素子の表示品位を向上させることができる。
また、製造工程およびカラーフィルター自体にも有害な物質を含まないため、人体に対する危険性を低減し環境安全性を向上させるものである。
Claims (10)
- (a)黒色色材、(b)シランカップリング剤及び(c)光重合開始系として少なくとも多官能チオール化合物を含有するカラーフィルター用光重合性組成物であって、シランカップリング剤がエポキシシラン及び/又は(メタ)アクリルシランであることを特徴とするカラーフィルター用光重合性組成物。
- (d)バインダー樹脂、(e)エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物及び(f)溶剤をさらに含有する請求項1に記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- バインダー樹脂が側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する有機高分子物質である請求項2に記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- バインダー樹脂がエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とヒドロキシル基を有する共重合体である請求項2又は3に記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- バインダー樹脂がエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とヒドロキシル基を有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体である請求項2〜4のいずれかに記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- 光重合開始系が更にビイミダゾール誘導体を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物が、3個以上のアクリル基を含有する化合物である請求項2〜6のいずれかに記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- 溶剤が120〜170℃の範囲の沸点を有するものである請求項2〜7のいずれかに記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- 黒色色材が少なくともカーボンブラックを含有する請求項1〜8のいずれかに記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
- 黒色色材の含有量が溶剤を除いた全固形分の30〜80重量%である請求項1〜9のいずれかに記載のカラーフィルター用光重合性組成物。
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