JP3921713B2 - インクリボン巻取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テープ状の長尺部材を巻き取る部材収容カセットのリールに係合して長尺部材の強度に応じて巻き取り力を異ならせて巻き取るテープ巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば熱転写式のプリンタのインクリボン巻取装置がある。プリンタには、未使用のインクリボンとこのインクリボンが使用されるに応じてその使用済みのインクリボンを巻き取るリールとを内蔵したリボンカセットが装着される。上記のインクリボン巻取装置は、使用済みのインクリボンを巻き取るリールに係合して、この巻取リールに駆動源からの動力をクラッチ機構を介して伝達する。このクラッチ機構はスプリングの押圧荷重によって発生する摩擦力により回転駆動を伝達する構造になっており、巻き取り抵抗が一定の限度を越えると空転するようになっている。この構造によって、クラッチ機構は、インクリボンが巻き取られるに従って径が大きくなることによる回転差を吸収し、かつ、インクの溶融・転写によって印刷用紙に密着しているインクリボンを印刷用紙から引き剥がすことができる巻き取り力を維持している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、熱転写方式のプリンタにおける使用済みインクリボンの巻き取りにおいて、印刷用紙からのインクリボンの剥離抵抗は、印刷濃度及びインクリボンの幅等に対応して夫々異なる。したがって、例えば、インクリボンの幅に対して必要な空転トルク(摩擦力に抗して滑りが発生する限界トルク)は、インクリボンの幅が狭ければその幅の狭いことに応じて低く、幅が広ければその幅の広いことに応じて高くしなければならない。
【0004】
しかしながら、上述したようにクラッチ機構の空転トルクが一定であるために幅の広いインクリボンでは回転トルクが不足する虞があり、それであるからといって、空転トルクを高くして回転トルクを強くすると、幅の狭いインクリボンの場合にトルクが大き過ぎ、巻き取りの途中でインクリボンが切断してしまうという問題が発生する。
【0005】
この問題の解決にあたっては、工場から出荷する前に、幅の広いインクリボンと幅の狭いインクリボンとを夫々実際に巻き取り試験を行って、丁度よい空転トルクを有するものだけを出荷するという試行錯誤的な選抜方法をとっていた。そして、結果の思わしくなかったものについては、クラッチ機構の摩擦力発生部分の各部材を適宜に交換するなどして再び実地試験を繰り返すという極めて手数のかかる手法を採用せざるを得なかった。
【0006】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、インクリボンの引っ張りの強弱に応じた空転トルクで常に安定した巻き取りを行うインクリボン巻取装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下に、本発明に係わるインクリボン巻取装置の構成を述べる。本発明は、インクリボンを巻き取るリールを備えたインクリボン収容カセットが、上下方向の装着位置を規制する規制部材による規制のもとに装置本体に装着されたとき上記リールに係合し装置本体の駆動源からの回転駆動をリールに伝達すべく装置本体に配設されるインクリボン巻取装置に適用される。
【0008】
本発明のインクリボン巻取装置は、上記リールの孔に嵌入して該リールに係合し該リールを巻き取り方向に駆動すべく回転する回転体と、該回転体を軸方向に摺動自在に且つ軸に対する回転を禁止して支持しこの支持部の反対側端部に回転部を一体に形成した回転可能な回転軸と、該回転軸に外嵌し上記回転部に摩擦部材を介して圧接し上記装置本体から回転駆動を伝達される中継部材と、該中継部材と上記回転体との間に介在して該回転体と上記中継部材を互いに離隔する方向へ付勢する付勢部材とを備え、幅の狭いインクリボンを収容した上記インクリボン収容カセットを装着したときに、上記規制部材により上記付勢部材の付勢力を小さくして上記回転体に弱い回転トルクを発生させ、幅の広いインクリボンを収容した上記インクリボン収容カセットを装着したときに、上記規制部材により上記付勢部材の付勢力を大きくして上記回転体に強い回転トルクを発生させるように構成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施の形態におけるテープ巻取装置の構成を示す側断面図である。同図に示すように、テープ巻取装置1は、装置本体のシャーシ2に固定された支持軸3と、この支持軸3に外嵌する回転軸4と、この回転軸4に外嵌し回転軸4の上端に配置されたリボン巻取トップ5(回転体)と、回転軸4に外嵌し回転軸4の下端に配置された巻取駆動ギア6(中継部材)と、この巻取駆動ギア6とリボン巻取トップ5の間に位置して回転軸4に外嵌するクラッチスプリング7(付勢部材)を備えている。
【0010】
上記のリボン巻取トップ5は、回転軸4に外嵌している胴部5−1と、胴部5−1の周囲に突設する複数(通常は3個乃至6個)のリール係合部5−2と、胴部5−1の下端に一体に形成されたフランジ5−3とから成る。図では見えないが、胴部5−1の内周面に突設されたボスが、回転軸4の外周面に軸方向に沿って削設されている溝に滑動自在に係合している。
【0011】
これによって、回転軸4は、リボン巻取トップ5を軸方向に摺動自在に且つ軸に対する回転を禁止して軸支している。この回転軸4は、自由な状態(リボンカセットに係合していない状態)では、上記のリボン巻取トップ5を軸の上端部に支持している。この支持部の反対側端部となる下端にはクラッチプレート4−1(円板状回転部)が一体に形成されている。回転軸4は、支持軸3の上端に係止するカットワッシャ(C座金)8によって逸脱を禁止され回転自在に支持軸3に支持されている。
【0012】
クラッチスプリング7は、押し付勢力を有しており、リボン巻取トップ5を上方に押圧し、巻取駆動ギア6をワッシャ9を介して下方に押圧している。すなわち、リボン巻取トップ5と巻取駆動ギア6を互いに離隔する方向へ付勢している。これに対して、リボン巻取トップ5は、その胴部5−1の上端が回転軸4の上端に係止するカットワッシャ11に当接して逸脱を禁止され、クラッチスプリング7の押し付勢力に抗している。一方、巻取駆動ギア6は、クラッチスプリング7の押し付勢力に対応する力でフェルト12を介してクラッチプレート4−1を押圧している。巻取駆動ギア6は、特には図示しないが、装置本体の駆動系のギアに噛合して回転駆動を伝達されるようになっている。
【0013】
上記のクラッチスプリング7の高さ(丈)は、リボン巻取トップ5の下面(フランジ5−3の下面)の高さ(位置)が変わることに応じて伸縮する。リボン巻取トップ5が、図1に示すように、回転軸4の上端にあるときクラッチスプリング7の縮み量は最も小さく、したがって、巻取駆動ギア6がフェルト12を介してクラッチプレート4−1を押圧する力が最も弱い。そして、リボン巻取トップ5の下への下がり量が大きい程、クラッチスプリング7の潰れ量(縮み量)が大きくなり、クラッチスプリング7の反発力つまり付勢力が増大する。これにより、巻取駆動ギア6がフェルト12を介してクラッチプレート4−1を押圧する力が増大する。すなわち、フェルト12の摩擦力が増大して、巻取駆動ギア6からフェルト12及びクラッチプレート4−1を介して回転軸4に伝達される巻き取りトルクが増大する。
【0014】
図2(a),(b) は、上記の構成におけるテープ巻取装置1の動作状態を示す図である。同図(a) は、テープ巻取装置1に、幅の狭い長尺部材15(例えばインクリボン)を巻き取るリボンカセット16を装着した状態を示している。同図(a) に示すように、テープ巻取装置1のリボン巻取トップ5の胴部5−1が、リボンカセット16のリール16−1の孔に嵌入し、リール係合部5−2によってリール16−1に係合している。リボンカセット16は、装着後に閉成される装置本体の蓋17の裏面に配設されている位置規制部材18によって全体の上下位置が固定される。リボンカセット16のリール16−1の下端は、リボン巻取トップ5のフランジ5−3に当接して、リボン巻取トップ5の上昇を制止している。
【0015】
これにより、リボン巻取トップ5と巻取駆動ギア6の間に在るクラッチスプリング7の長さが、リボンカセット16の厚さに対応する一定の長さに設定される。すなわち、クラッチスプリング7の付勢力がリボンカセット16の厚さに対応する一定の力に設定される。
【0016】
同図(a) の場合、リボンカセット16の厚さが、巻き取る長尺部材15のテープ幅に対応して薄いから、リボン巻取トップ5の下がり量が小さく、したがって上記設定されるクラッチスプリング7の付勢力は比較的小さい。クラッチスプリング7の付勢力が小さいと巻取駆動ギア6がフェルト12を介してクラッチプレート4−1を押圧する力が弱く、このクラッチプレート4−1を押圧する力が弱いとフェルト12の摩擦力は低下する。すなわち、回転軸4の回転トルクは弱い。
【0017】
この厚さの薄いリボンカセット16に巻き取られる長尺部材15はテープ幅が狭い分だけ引っ張り強さ弱く、上記の弱い回転トルクに設定された回転軸4の回転駆動は、上記の引っ張り強さの弱いテープの巻き取りに丁度見合っている。
【0018】
そして、同図(b) はテープ巻取装置1に、幅の広い長尺部材21(例えば、幅広のインクリボン)を巻き取るリボンカセット22を装着した状態を示している。この場合も、同図(b) に示すように、テープ巻取装置1のリボン巻取トップ5の胴部5−1が、リボンカセット22のリール22−1の孔に嵌入してリール22−1に係合している。この場合も、リボンカセット22は、装置本体の蓋17の裏面の位置規制部材18によって全体の上下位置を固定される。そして、リボンカセット22のリール22−1の下端はリボン巻取トップ5のフランジ5−3に当接してリボン巻取トップ5を下方に押し下げ、位置を固定している。
【0019】
これにより、リボン巻取トップ5と巻取駆動ギア6の間に在るクラッチスプリング7の長さが、リボンカセット22の厚さが厚い分だけ圧縮されて一定長に設定される。同図(b) の場合、リボンカセット22の厚さが、巻き取る長尺部材21の広いテープ幅に対応して厚いから、リボン巻取トップ5の下がり量が大きく、したがって上記設定されるクラッチスプリング7の付勢力は大きい。すなわち回転軸4の回転トルクが強い。
【0020】
このように、テープ巻取装置1のリール回転駆動力(回転トルク)は、巻き取る長尺部材にテープ幅に応じて変化する。すなわち、テープ幅が狭ければ回転トルクは弱く、テープ幅が広ければ回転トルクは強くなる。これによって、常に長尺部材の引っ張り強さに対応する適切な回転トルクでリールを駆動することができる。
【0021】
ところで、長尺部材の引っ張り強さは、必ずしもテープ幅に比例するわけではない。例えば一巻きのインクリボンで出来るだけ多量の印刷を行えるようにしたいという場合には、インクリボンのベースフィルムを極力薄く形成し、この上に塗布するインクも許容され得る限り薄く塗布する。そうすると、テープの体積が減少するから、同じ大きさのリボンカセットに、より長いインクリボンを収容することができる。インクリボンが長いほど印刷できる量が増加する。ところが、このようにインクリボンの構成が全体として薄いと引っ張り強さが弱くなる。
【0022】
図3(a) は、そのようなテープ幅が広くて薄い(つまりテープ幅は広いが引っ張り強さが弱い)長尺部材のリボンカセットの構成と、このリボンカセットとテープ巻取装置1との係合状態を示す図である。同図(a) に示すリボンカセット25は、テープ幅が広くて薄い長尺部材26を捲き取るリール25−1を備えている。このリール25−1は、長尺部材26を巻着する胴輪部25−2は長尺部材26のテープ幅の広さに対応して長いが、リボン巻取トップ5との係合部が下方を切り欠かかれていて短く形成されている。その短く切り欠かかれている分だけリボン巻取トップ5が上方に上がっており、リボン巻取トップ5が上方に上がった分だけ クラッチスプリング7の圧縮量が少なくなっている。したがって、回転軸4の回転トルクは比較的弱い。この回転トルクは、このテープ幅は広いが引っ張り強さが弱い長尺部材26の巻き取りに丁度見合っている。
【0023】
ところで、装置本体にテープカセットを装着する際、内部に収容されている長尺部材のテープ幅には拘わりなくテープカセットの厚さを一定に形成した方が取り扱うのに便利な場合がある。このようなテープカセットを用いると、例えば、テープカセットを位置決めする部材として、蓋17の裏面の規制部材を、テープカセットを挟み持つような構成の規制部材として、蓋17を開成してその挟持部材にテープカセット27を装着し、蓋17を閉成するとテープカセットが自動的にリボン巻取トップ5に係合するような構成にすることができる。
【0024】
図3(b) は、そのような、収用している長尺部材のテープ幅は狭いがカセットの厚さが最大に設定されているリボンカセットとテープ巻取装置1との係合状態を示す図である。同図(b) に示すリボンカセット27は、内部に収容する長尺部材28の狭いテープ幅に拘わりなくカセットの厚さが一定(最大)である。しかし、長尺部材28を捲き取るリール27−1は狭いテープ幅に対応して、カセットの厚さよりも下方を切り欠いて短く形成されている。したがって、リボン巻取トップ5との係合部は、その短く切り欠かかれている分だけ上方に上がっている。これにより、リボン巻取トップ5は、リボンカセット27の厚い厚みに関係なく、内部に収用されている長尺部材28の狭いテープ幅に応じてカセット内部に入り込んだ位置でリール27−1と係合する。そして、リボン巻取トップ5がカセット内部に入り込んだ分だけクラッチスプリング7の圧縮量が少なく、したがって、回転軸4の回転トルクは弱い。この回転トルクは、このテープカセット27は、厚い厚みになっているが収用しているテープ幅が狭い、つまり引っ張り強さが弱い長尺部材28の巻き取りに丁度見合っている。
【0025】
尚、図2(a),(b) に示した実施の形態においては、巻取トップがリボンの幅(リボンカセットの厚さ)に対応して上下するように構成しているが、巻取トップの上下位置は固定とし、この巻取トップと螺旋ばねの間に適宜のプレートを配設して、このプレートにリボンカセットの下面が当接するようにした構成とすることもできる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、部材収容カセットに収容されて巻き取られるテープ状の長尺部材の引っ張り強度に応じてクラッチ機構のスプリング荷重が変わるので、長尺部材の引っ張り強度に適応する巻き取りトルクが得られ、したがって、常に安定した巻き取りを実現することができる。また、長尺部材の引っ張り強度に適応する巻き取りトルクが自動的に得られるので、組立て完了後に良品を選別する作業が不要となり、したがって、工数が減って原価が低下すると共に作業時間が短縮されて作業の能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態におけるテープ巻取装置の構成を示す側断面図である。
【図2】 (a),(b) はテープ巻取装置の動作状態を示す図である。
【図3】 (a) はテープ幅が広くて薄い長尺部材のリボンカセットの構成とテープ巻取装置の係合状態を示す図、(b) はテープ幅の狭い長尺部材を厚いリボンカセットに収納した場合のテープ巻取装置の係合状態を示す図である。
【符号の説明】
1 テープ巻取装置
2 装置本体のシャーシ
3 支持軸
4 回転軸
4−1 クラッチプレート(円板状回転部)
5 リボン巻取トップ(回転体)
5−1 胴部
5−2 リール係合部
5−3 フランジ
6 巻取駆動ギア(中継部材)
7 クラッチスプリング(付勢部材)
8 カットワッシャ
9 ワッシャ
11 カットワッシャ
12 フェルト
15 幅の狭い長尺部材
16 薄いリボンカセット
16−1 リール
17 装置本体の蓋
18 位置規制部材
21 幅の広い長尺部材
22 厚いリボンカセット
22−1 リール
25 リボンカセット
25−1 リール
25−2 胴輪部
26 テープ幅が広くて薄い長尺部材
27 リボンカセット
27−1 リール
28 長尺部材
Claims (1)
- インクリボンを巻き取るリールを備えたインクリボン収容カセットが、上下方向の装着位置を規制する規制部材による規制のもとに装置本体に装着されたとき前記リールに係合し前記装置本体の駆動源からの回転駆動を前記リールに伝達すべく該装置本体に配設されるインクリボン巻取装置において、
前記リールの孔に嵌入して該リールに係合し該リールを巻き取り方向に駆動すべく回転する回転体と、
該回転体を軸方向に摺動自在に且つ軸に対する回転を禁止して支持しこの支持部の反対側端部に回転部を一体に形成した回転可能な回転軸と、
該回転軸に外嵌し前記回転部に摩擦部材を介して圧接し前記装置本体から回転駆動を伝達される中継部材と、
該中継部材と前記回転体との間に介在して該回転体と前記中継部材を互いに離隔する方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
幅の狭いインクリボンを収容した前記インクリボン収容カセットを装着したときに、前記規制部材により前記付勢部材の付勢力を小さくして前記回転体に弱い回転トルクを発生させ、
幅の広いインクリボンを収容した前記インクリボン収容カセットを装着したときに、前記規制部材により前記付勢部材の付勢力を大きくして前記回転体に強い回転トルクを発生させることを特徴とするインクリボン巻取装置。
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